平成24(行ウ)216 行政文書一部不開示決定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年12月11日 大阪地方裁判所 情報公開
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判決文本文24,366 文字)

- 1 -平成26年12月11日判決言渡平成24年(行ウ)第216号行政文書一部不開示決定処分取消等請求事件主文 1 処分行政庁が,原告に対し,平成24年5月1日付けでした行政文書の一部不開示決定のうち,不開示とした部分(別紙記載の部分)を取り消す。 2 処分行政庁は,原告に対し,別紙記載の部分の開示決定をせよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が,平成24年3月1日付けで,処分行政庁に対し,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)に基づき行政文書の開示を請求したところ(以下「本件開示請求」という。),同年5月1日,処分行政庁から,本件開示請求に係る行政文書のうち,別紙記載の部分(以下「本件不開示部分」という。)を開示しない旨の決定(以下「本件一部不開示決定」という。)を受けたため,本件一部不開示決定のうち本件不開示部分を不開示とした部分は違法であるとして同部分の取消しを求めるとともに,本件不開示部分の開示決定の義務付けを求めた事案である。 1 法の定め(1) 法1条は,国民主権の理念にのっとり,行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により,行政機関の保有する情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする旨定めている。 (2) 法3条は,何人も,法の定めるところにより,行政機関の長に対し,当 - 2 -該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる旨定めており,法4条1項は,同開示の請求は同項各号に掲げる事項を記載した書面を行政機関の長に提出してしなければな 対し,当 - 2 -該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる旨定めており,法4条1項は,同開示の請求は同項各号に掲げる事項を記載した書面を行政機関の長に提出してしなければならない旨定めている。 (3) 法5条は,行政機関の長は,上記(2)の開示請求があったときは,開示請求に係る行政文書に同条各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該行政文書を開示しなければならない旨定めている。 同条が定める不開示情報で,本件に関係するものは以下のとおりである。 ア 5号国の機関,独立行政法人等,地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議,検討又は協議に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの。 イ 6号国の機関,独立行政法人等,地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,同号イないしホに掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの。 2 前提事実(当事者間に争いがない(争うことを明らかにしない事実を含む。)か,各項掲記の証拠により容易に認められる事実等)(1) 第1回調査の概要ア環境省は,平成23年3月11日に発生した東日本大震災によって生じた災害廃棄物(以下「災害廃棄物」という。)の処理について,平成23年度,災害廃棄物の種類,発生量及び被災地の各地方公共団体における処理能力と,被災地以外の各地方公共団体の受入可能性とを総合的に勘案し, - 3 - 災害廃棄物」という。)の処理について,平成23年度,災害廃棄物の種類,発生量及び被災地の各地方公共団体における処理能力と,被災地以外の各地方公共団体の受入可能性とを総合的に勘案し, - 3 -被災地の各地方公共団体と,それ以外の各地方公共団体とを組み合わせ,両者間の協議に向けた道筋をつけることを目的とした広域処理体制の構築(以下「マッチング」という。)を行うこととし,被災地の各地方公共団体において発生する災害廃棄物の種類,発生量及び被災地の各地方公共団体における処理能力と,被災地以外の各地方公共団体において災害廃棄物の受入れを行うとした場合の物理的に可能な受入量,受入場所及び処理方法等を把握するため,同年4月8日,各都道府県廃棄物主管部(局)宛に,同日付け環境省災害廃棄物対策特別本部事務連絡「東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理体制の構築に関する調査について(依頼)」(乙1)を発出し,「災害廃棄物受入処理調査票」に該当事項を記入して同月14日を期限として回答するよう依頼した(以下「第1回調査」という。)。 イ環境省は,第1回調査において地方公共団体から提出を受けた災害廃棄物受入処理調査票のうち,公表することについて了承を得たものについては,地方公共団体名を含めてこれを公表した。 (2) 本件記事の掲載株式会社P1は,週刊誌「P2」の平成23年▲月▲日号(▲巻▲号)において,環境省が第1回調査において災害廃棄物受入処理調査票について地方公共団体から提出された回答として公表した上記(1)イの内容(当該地方公共団体名を含む。)を取りまとめた記事を,「○」と題して掲載した(以下,当該記事を「本件記事」という。乙5)。 (3) 第2回調査についてア平成23年8月18日,東日本大震災で被害を受けた市町村に代わって 。)を取りまとめた記事を,「○」と題して掲載した(以下,当該記事を「本件記事」という。乙5)。 (3) 第2回調査についてア平成23年8月18日,東日本大震災で被害を受けた市町村に代わって国が災害廃棄物を処理するための特例等を定めた,東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法(以下「特別措置法」という。)が公布された。環境省は,特別措置法6条1項に基づき,同年10 - 4 -月7日,都道府県廃棄物行政主管部(局)宛に,同日付け環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課事務連絡「東日本大震災により生じた災害廃棄物の受入検討状況調査について」(乙9)を発出し,「災害廃棄物受入検討状況調査票」(以下「本件調査票」という。)に該当事項を記入して同月21日を期限として回答するよう依頼した(以下「第2回調査」という。また,これに対する地方公共団体の回答が記載された文書を,以下「本件回答文書」という。)。 イ本件調査票の記入事項は以下のとおりである。なお,下記(ウ)について,検討状況のAは「既に受入れを実施している」,Bは「被災地への職員派遣や検討会議の設置等の具体的な検討を行っている」,Cは「被災地への職員派遣や検討会議の設置等は行っていないが,受入れに向けた検討を行っている」との状況をそれぞれ意味する。(乙9,10)(ア) 都道府県名(イ) 市区町村名(ウ) 検討状況(A~C)(エ) 検討内容等(オ) 想定される受入処理能力等a 受入れが想定される廃棄物b 処理施設名(処理内容)c 1日当たり処理可能量d 年間最大受入可能量(カ) 担当a 所属b 氏名c 電話d メール - 5 -(4) 本件一部不開示決定等ア原告(なお,行政文書開示請求書の 日当たり処理可能量d 年間最大受入可能量(カ) 担当a 所属b 氏名c 電話d メール - 5 -(4) 本件一部不開示決定等ア原告(なお,行政文書開示請求書の「氏名又は名称」欄には,「P3会代表 P4」と記載されているところ,これは,原告が,「P3会代表」との肩書きを付して請求したものである。)は,法3条及び4条1項に基づき,平成24年3月1日付けで,処分行政庁に対し,開示を請求する行政文書の名称等を「平成23年10月に環境省が実施した東日本大震災により生じた災害廃棄物の受入検討状況調査に係る起案及び結果文書一切。」として,第2回調査に係る行政文書の開示請求(本件開示請求)をした(甲4)。 イ処分行政庁は,法10条2項に基づき,平成24年4月4日付けで開示決定等の期限を延長した上で,同年5月1日付けで,原告に対し,本件開示請求に係る文書のうち,地方公共団体名,施設名及び担当情報(本件不開示部分)については,法5条5号及び6号柱書きに該当するとして不開示とし,その余の部分については開示する旨決定し(本件一部不開示決定),原告に通知した(甲5,6,乙10)。 (5) 本件訴えの提起等ア原告は,平成24年10月3日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 イ平成26年3月31日までに,災害廃棄物の広域処理が終了した(甲15)。 3 争点(1) 本件不開示部分の法5条5号該当性(2) 本件不開示部分の法5条6号柱書き該当性(3) 義務付けの訴えの適法性等 4 当事者の主張(1) 争点(1)(本件不開示部分の法5条5号該当性)について - 6 -(被告の主張)ア率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあったこと(ア) 本件不 1) 争点(1)(本件不開示部分の法5条5号該当性)について - 6 -(被告の主張)ア率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあったこと(ア) 本件不開示部分は,本件回答文書中の地方公共団体名,施設名及び担当情報であるところ,東日本大震災の災害廃棄物の受入れについて検討等を行っている旨回答した地方公共団体名,施設名及び担当情報を公表すれば,災害廃棄物処理に伴う放射能拡散についての誤解や憶測を招き,受入れに反対する住民等から地方公共団体に対し多くの反対意見や苦情等が寄せられ,その結果,当該地方公共団体が,その内部において十分な検討をすることができず,また,住民に対し,受入れの必要性,災害廃棄物処理の安全性及び地域住民の健康に与える影響等に関する詳細かつ正確な情報提供や,住民との十分な意見交換を行うことが困難となることによって,当該地方公共団体内部における率直な意見の交換等を十分行うことが妨げられ,意思決定の中立性が損なわれるおそれがあった。 また,受入れに向けた検討等を行っている旨回答した地方公共団体が,誤解や憶測に基づく反対意見や苦情等による干渉,圧力を受け,地方公共団体における率直な意見の交換や意思決定の中立性が損なわれることとなれば,環境省が,マッチングに関する地方公共団体との間の率直な意見交換や,地方公共団体の率直な意見に基づいたマッチングを行うことが困難となるから,国の内部におけるマッチングに係る率直な意見の交換や意思決定の中立性が損なわれるおそれがあった。 他方,本件不開示部分は,本件回答文書のうちの一部にとどまっており,開示された部分からは災害廃棄物の受入れについて検討を行っている地方公共団体の数やその検討状況及び検討内容等を把握することができ,全国レベルでの災害廃棄物 本件回答文書のうちの一部にとどまっており,開示された部分からは災害廃棄物の受入れについて検討を行っている地方公共団体の数やその検討状況及び検討内容等を把握することができ,全国レベルでの災害廃棄物の受入検討状況については十分 - 7 -理解することができる。そうすると,本件不開示部分を不開示とすることによる不利益は限定的なものであり,これを不開示することによる利益は,これを不開示とすることによる不利益を上回るというべきである。 (イ) 第1回調査の結果を公表した際には,本件記事が掲載されるなどしたことにより,地方公共団体や環境省に対し,受入れに反対する住民等から,災害廃棄物が放射能に汚染されているとの誤った理解に基づく多数の抗議や問合せ等が寄せられ,正確な情報に基づく冷静な議論が行われることなく災害廃棄物の受入れ自体を断念せざるを得なくなった地方公共団体が多数生じた。その結果,第1回調査に対しては572の地方公共団体が災害廃棄物の受入れに前向きな回答をしたにもかかわらず,第2回調査においてはその数が54に激減した。また,本件一部不開示決定直前の平成24年4月頃においても,災害廃棄物の受入れの可否について検討する意向を示していた市長に対し,災害廃棄物の受入れに反対する旨の脅迫状が届く事件も発生していた。 そうすると,第1回調査の結果の公表から約9か月しか経っていない本件一部不開示決定時においても,本件不開示部分を公にすれば同様の事態が生じる可能性があったことが客観的に認められるから,上記(ア)の率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれは客観的かつ現実に予想されるものであったといえる。 イ不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあったこと上記ア(イ)のとおり,第1回調査の結果が公表された際には,環 性が不当に損なわれるおそれは客観的かつ現実に予想されるものであったといえる。 イ不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあったこと上記ア(イ)のとおり,第1回調査の結果が公表された際には,環境省や地方公共団体に対し,多数の抗議や問合せ等が寄せられ,地方公共団体において災害廃棄物の受入れを断念せざるを得なくなる事態が生じたが,これは,災害廃棄物の放射能濃度等に関する不正確な情報が広まっていたこととあいまって,国民に,広域処理の対象に放射能に汚染された災害廃棄 - 8 -物が含まれており,自己の居住する地域においてこれが処理されるのではないかとの誤解や憶測を招いたためであったということができる。 そうすると,本件一部不開示決定時においても,第2回調査の結果を公表することにより,国民に上記のような誤解や憶測を招き,国民の間に混乱を生じさせるおそれがあったと認められる。 ウ本件サイトに掲載された情報との関係について原告は,環境省が同省のウェブサイトに「広域処理情報サイト」というサイト(以下「本件サイト」という。)を設け,そこで災害廃棄物の受入れを表明している地方公共団体名を公表していることからも,本件不開示部分を開示しても,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれたり,不当に国民の間に混乱を生じさせたりするおそれはない旨主張する。 しかしながら,本件サイトに掲載されていた地方公共団体は,災害廃棄物の受入表明(都道府県知事又は市町村長が災害廃棄物の受入時期・種類・数量等の具体的提示を含んだ表明を行うことをいう。以下同じ。)又は受入検討(都道府県知事若しくは市町村長が災害廃棄物の受入れの検討を行う旨の発言・表明をすること又は都道府県知事若しくは市町村長が具体的提示は含まないが災害廃棄物の受入れを行う旨の発言・表 。)又は受入検討(都道府県知事若しくは市町村長が災害廃棄物の受入れの検討を行う旨の発言・表明をすること又は都道府県知事若しくは市町村長が具体的提示は含まないが災害廃棄物の受入れを行う旨の発言・表明をすることをいう。以下同じ。)をした地方公共団体のうち,本件サイトに掲載をすることにつき了承を得たものに限られていた。また,本件サイトに掲載されていた情報は,あくまでその時点における広域処理の状況に関するものであり,本件不開示部分に記載されている情報とは異なるものであるから,前者を公表しているからといって,後者を公表しても差し支えないと判断していたということにはならない。さらに,本件サイトに掲載されていた地方公共団体には,第2回調査時には災害廃棄物の受入れに向けた検討を行っていなかったものも含まれていた。 - 9 -そして,本件不開示部分に記載されている情報は,災害廃棄物の受入れに消極的な意向を示す地方公共団体に関する情報が少なくなかったのに対し,その後の本件一部不開示決定の時点において本件サイトに掲載されていた情報は,災害廃棄物の受入れについて積極的な意向を示す地方公共団体の情報であったことからすると,本件不開示部分に記載されている情報と本件サイトに掲載されていた情報とは,その情報がいつの時点におけるものかという点に加え,実質的な内容においても相違しているから,本件サイトで災害廃棄物の受入表明又は受入検討をした地方公共団体名を公表していることは,本件不開示部分の法5条5号該当性を否定するものではない。 エ原告は,法5条5号該当性の判断に当たっては,開示を求められている情報が意見に関わるものか事実に関わるものかという点が重要な考慮要素となるところ,本件不開示部分は意見に関する情報ではなく事実に関する情報であるから,同号に該 判断に当たっては,開示を求められている情報が意見に関わるものか事実に関わるものかという点が重要な考慮要素となるところ,本件不開示部分は意見に関する情報ではなく事実に関する情報であるから,同号に該当しない旨主張する。しかしながら,意見と事実の区別は困難である上,本件不開示部分は,被災地以外の各地方公共団体における災害廃棄物の受入可能性を把握するための調査に対する回答文書であって,同文書には,当該地方公共団体の災害廃棄物の受入れに係る検討状況といった中間的な形成過程の未成熟な意見が記載されているから,原告の主張には理由がない。 オ原告は,脅迫等の行為は刑事事件として対応すべきであるから法5条5号該当性を判断する際の考慮要素にはならない旨主張するが,刑事事件として対応すべきことと,同号該当性を判断する際の考慮要素となるかどうかということはあくまで別個の事柄であり,第1回調査結果が公表されたことを端緒として脅迫等の行為が多数生じたという事情も,同号該当性を判断する際の考慮要素となることは当然である。 (原告の主張) - 10 -ア地方公共団体が災害廃棄物を受け入れるか否かは,広く市民に対し,全ての情報を公表した上で検討すべき問題であって,本件不開示部分を公表したとしても地方公共団体が不当な圧力を加えられることは考えられず,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ又は不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれは皆無である。大阪府では,本件不開示部分とほぼ同じ情報を公開しているが,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれたり,不当に国民の間に混乱を生じさせたりするような事態は何一つ発生していない。民主主義,住民自治の観点からすれば,災害廃棄物の受入れについて住民が反対意見を述べることは不当では 性が不当に損なわれたり,不当に国民の間に混乱を生じさせたりするような事態は何一つ発生していない。民主主義,住民自治の観点からすれば,災害廃棄物の受入れについて住民が反対意見を述べることは不当ではないから,かかる反対意見が寄せられることを理由として,本件不開示部分が法5条5号に該当するということはできない。 また,災害廃棄物の受入れは地域住民にとって重大な問題であり,開示の必要性が高く,この点からも本件不開示部分が同号に該当するということはできない。 被告は,不十分な情報に基づく誤った民意の圧力などによって,住民との十分な意見交換等を行うことが困難になると主張するが,災害廃棄物の受入れの検討の手順は地方公共団体が自ら決すべき事項であるし,被告の主張によっても,住民に対する説明の前に地方公共団体の長が災害廃棄物を受け入れる旨を表明するのであって,この時点で不正確な情報に基づく「誤った」民意が形成されることになるはずであり,被告の主張は不可解である。 イ環境省は,現在,災害廃棄物の受入れを表明している地方公共団体を本件サイトに掲載しているのであるから,本件不開示部分を開示したとしても,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれはない。被告は,公開しているのは災害廃棄物の受入検討又は受入表明をした地方公共団体のうち,本件サイトに掲載することにつき了承が得られた - 11 -ものに限られる旨主張するが,かかる地方公共団体の検討状況も最終結論に至る前のものである以上,被告の主張に従えば意思決定が歪められるおそれがあるはずであり,被告の主張は不合理である。 ウ法5条5号該当性に関する判断に当たっては,開示を求められている情報が意見に関わるものか事実に関わるものかという点が重要な考慮要素となるところ,本件不開示部 であり,被告の主張は不合理である。 ウ法5条5号該当性に関する判断に当たっては,開示を求められている情報が意見に関わるものか事実に関わるものかという点が重要な考慮要素となるところ,本件不開示部分は意見に関する情報ではなく事実に関する情報であることは明らかであるから,同号に該当しない。 エ脅迫等の行為は,警察等の警備によって被侵害者の保護が図られ,警察等により侵害者が取り締まられるべきものであって,法5条5号に該当するか否かの判断において考慮すべきではない。 (2) 争点(2)(本件不開示部分の法5条6号柱書き該当性)について(被告の主張)ア上記(1)(被告の主張)のとおり,住民に対し正確な情報を提供できておらず内部の検討も不十分な状況で本件不開示部分を公にすれば,災害廃棄物の受入れに向けた検討を行っている旨回答していた地方公共団体が,誤解や憶測に基づく反対意見や苦情等による干渉,圧力を受け,地方公共団体における率直な意見の交換や意思決定の中立性が損なわれ,ひいては,環境省が地方公共団体との間で率直な意見交換を行ってマッチングを進めることが困難となる蓋然性が認められた。 そして,かかる蓋然性は,そもそも環境省が行う広域処理に関するマッチングが,各地方公共団体における検討ないし十分な意見の交換等がなされないと適正に行うことができないという性質を有していることに起因するものである。 これらのことからすると,開示の必要性を考慮しても,なお,本件不開示部分を公にすることにより,地方公共団体及び国の事務又は事業の性質上,その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあったといえるから,本件不 - 12 -開示部分は法5条6号柱書きに該当する。 イ本件不開示部分が明らかになれば,本件サイトに掲載された地方公共団体のうち本件一部不 に支障を及ぼすおそれがあったといえるから,本件不 - 12 -開示部分は法5条6号柱書きに該当する。 イ本件不開示部分が明らかになれば,本件サイトに掲載された地方公共団体のうち本件一部不開示決定の時点で災害廃棄物の受入れの決定に至っていなかった地方公共団体において,受入れの可否に関する方針が一貫しないなどの非難を受けるなどして,率直な意見の交換や意思決定の中立性が不当に損なわれ,また,本件サイトに掲載された地方公共団体のうち同時点で災害廃棄物の受入れを決定していた地方公共団体においても,政策の実施等に不当な影響が出るおそれがあったといえ,ひいては,環境省において災害廃棄物の広域処理を進めることも困難となるおそれがあったから,本件不開示部分は,法5条6号柱書きに該当する。 ウ前記(1)(被告の主張)オと同様に,脅迫等の行為についても,法5条6号柱書き該当性の考慮要素になる。 (原告の主張)ア公開した情報に対する反対意見等が出されるのは民主主義社会において当然のことであり,それにより災害廃棄物の受入れに前向きな地方公共団体の数が減少したとしても,適正な事務又は適正な事業の遂行に支障が出たとはいえないから,本件不開示部分に記載されている情報は法5条6号柱書きに該当しない。被告の主張を前提とすると,受入表明の最終段階にならない限り住民に対し情報が提供されないことになり,相当でない。 イ前記(1)(原告の主張)エのとおり,脅迫等の行為は,法5条6号柱書きに該当するか否かの判断において考慮すべき事柄ではない。 (3) 争点(3)(義務付けの訴えの適法性等)について(原告の主張)上記(1),(2)の各(原告の主張)のとおり本件一部不開示決定は取り消されるべきであるから,本件不開示部分の開示の義務付けを求める訴えは適法 義務付けの訴えの適法性等)について(原告の主張)上記(1),(2)の各(原告の主張)のとおり本件一部不開示決定は取り消されるべきであるから,本件不開示部分の開示の義務付けを求める訴えは適法である。 - 13 -そして,平成26年3月31日には災害廃棄物の広域処理は終了しており,本件訴訟の口頭弁論終結時において,本件不開示部分が法5条5号及び6号柱書きに該当しないことは明らかであるから,処分行政庁は本件不開示部分を開示すべきである。 (被告の主張)上記(1),(2)の各(被告の主張)のとおり本件一部不開示決定は適法であり取り消されるべきではないから,本件不開示部分の開示の義務付けを求める訴えは訴訟要件を欠き不適法である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実及び各項掲記の証拠によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件記事の内容「P2」に掲載された本件記事には,「国が主導する放射性物質の「2次拡散」」,「環境省の前提は,「汚染はない」だが,稲わら,腐葉土のようなことはないのか。不安が広がっている。」との見出しが付され,がれき処理(焼却・破砕・埋め立て)を担うと表明した自治体・一部事務組合として,第1回調査に対して廃棄物の受入れが可能である旨回答した地方公共団体名並びに廃棄物の処理能力(1日処理可能量及び年間最大受入可能量)のうち,公表されたものの一覧が掲載された(乙5)。 (2) 災害廃棄物の受入れに対する反応等(乙6,7)ア本件記事が掲載された「P2」の発売後,本件記事において災害廃棄物の受入れを表明したと掲載された地方公共団体に対して,災害廃棄物の受入れに反対する住民等からの反対意見等が寄せられた。また,本件記事とは別に災害廃棄物の受入れを表明した地方公共団体に対しても,同様の反 入れを表明したと掲載された地方公共団体に対して,災害廃棄物の受入れに反対する住民等からの反対意見等が寄せられた。また,本件記事とは別に災害廃棄物の受入れを表明した地方公共団体に対しても,同様の反対意見等が寄せられた。これらの反対意見等や,それに対する地方公共団体の対応には,以下のようなものがあった。 - 14 -(ア) 川崎市長が災害廃棄物の受入れを表明したところ,このことが報じられた平成23年4月8日以降,同月18日までの間に,同市に対し4770件の意見が寄せられた。これらの意見のうち,当初寄せられたものは災害廃棄物の受入れに反対するものが大半であったが,後には災害廃棄物の受入れに賛同する意見も増加した。 (イ) 岐阜市に対して,平成23年8月22日,岐阜県内の8人で作る市民団体から,放射能汚染の基準や焼却灰を同市内の処分場に埋め立てるのか否か等に関する質問書が提出された。 (ウ) 岐阜県中津川市に対して,本件記事が掲載された後,平成23年8月23日までに,「本当に受け入れるのか」など3件の問合せがあった。 (エ) 市長が災害廃棄物の受入れを表明した北海道苫小牧市(平成23年6月25日に受入れを表明)及び北見市(同年5月16日に受入れを表明)に対して,同年8月25日までに,それぞれ150件,100件を超える意見が寄せられ,そのほぼ全てが災害廃棄物の受入れに反対するものであった。 (オ) 岐阜県大垣市は,本件記事の掲載をきっかけに市民から災害廃棄物の受入れに対する不安を訴える意見が寄せられたことを理由として,平成23年8月26日,災害廃棄物を受け入れる方針を撤回した。 (カ) 岐阜県下呂市は,市民から災害廃棄物の受入れに対する不安を訴える意見が寄せられたことを理由として,平成23年8月31日,災害廃棄物を受け入れる 6日,災害廃棄物を受け入れる方針を撤回した。 (カ) 岐阜県下呂市は,市民から災害廃棄物の受入れに対する不安を訴える意見が寄せられたことを理由として,平成23年8月31日,災害廃棄物を受け入れる方針を撤回し,受け入れない方針を発表した。 (キ) 広島県尾道市に対して,平成23年9月1日,市民団体から,災害廃棄物の受入れに反対する261人分の署名が提出された。 (ク) 高知県高岡郡α町は,災害廃棄物の受入拒否を求める意見が約20件寄せられたこと等から,平成23年9月5日までに,災害廃棄物 - 15 -の受入れを拒否することとした。 (ケ) 福岡市やその近郊の市民団体など27団体は,平成23年9月19日までに,同市市議会議長に対し,放射性廃棄物を受け入れないことや情報公開を求める請願を提出した。 (コ) 東京都が,平成23年9月28日,岩手県宮古市から災害廃棄物合計1万1000トンを受け入れる旨を表明したところ,短文投稿サイト「○」に担当者の名前と電話番号とともに「抗議が殺到すれば(受入れを)止められるかもしれない」との書込みがあり,東京都に対して,同月29日に162件(電話129件,電子メール33通),同月30日に283件(電話222件,電子メール61通)の意見が寄せられ,その大半が災害廃棄物の受入れに反対するものであった。 イ以下のように,災害廃棄物の受入れを表明した地方公共団体やその長に対して,災害廃棄物の受入れに反対する者からの脅迫がされた(乙13)。 (ア) 佐賀県武雄市が災害廃棄物の受入れを表明した平成23年11月28日以降,同市に対し,電子メール,電話,同市市長のブログへの書込みにより1000件を超える意見が寄せられ,そのほとんどが災害廃棄物の受入れに対する抗議と批判であった。これらの意見の約7割がインター 日以降,同市に対し,電子メール,電話,同市市長のブログへの書込みにより1000件を超える意見が寄せられ,そのほとんどが災害廃棄物の受入れに対する抗議と批判であった。これらの意見の約7割がインターネット経由によるもので,電話によるものは約310件であり,市職員が尋ねた限りでは,これらの電話は大半が市外ないし県外からかけられたものであった。これらの意見の中には,「がれきを引き受けるならその苦しみを職員に与える」,「イベントを妨害する」といった脅迫を伴うものも含まれており,同市市長は,同年12月1日,災害廃棄物の受入れを見送る意向を表明した。 (イ) 平成23年12月19日,インターネット掲示板に,(災害廃棄物の受入れを止めるには)「暗殺や脅しくらいしか手段がない」,「市長のガキが誘拐されたりすれば」と静岡県島田市長を脅迫する書込みがさ - 16 -れた。 (ウ) 平成24年3月7日及び同年4月2日,金沢市長に対し,「がれきを受け入れたら殺す」という内容のはがきが合計3通送付された。 (3) 福島県内の災害廃棄物の処理方針の取りまとめとガイドラインの策定環境省は,平成23年5月2日,福島県内で生じた災害廃棄物の処理について当面の対応を取りまとめ(「福島県内の災害廃棄物の当面の取扱い」。 乙2),さらに,同年6月23日,同県内で生じた災害廃棄物の処理の方針について取りまとめ(「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」。乙3),それぞれ公表した。 また,環境省は,平成23年8月11日,広域処理の対象となる災害廃棄物の広域処理における安全性の考え方や災害廃棄物を搬出する側における安全性の確認方法等について取りまとめたガイドラインである「災害廃棄物の広域処理の推進について(東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライ 方や災害廃棄物を搬出する側における安全性の確認方法等について取りまとめたガイドラインである「災害廃棄物の広域処理の推進について(東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン)」(以下「ガイドライン」という。乙4(ただし,乙4は平成24年1月11日一部改訂後のもの))を策定し,公表した。 なお,ガイドラインは,上記公表後改訂がされ,上記改訂が三度目のものである。(乙4)(4) 第2回調査の実施環境省は,特別措置法6条1項に基づき,平成23年10月7日,関係都道府県廃棄物行政主管部(局)宛に,同日付け環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課事務連絡「東日本大震災により生じた災害廃棄物の受入検討状況調査について」(乙9)を発出して第2回調査を実施した。 なお,同事務連絡には,各地方公共団体における災害廃棄物の受入検討状況を把握し,得られた情報を用いて具体的なマッチングを実施することを目的として調査を実施すること,調査の結果について,個別の地方公共団体名は公表しないこととしている旨の記載が存する。(前記前提事実(3)ア,乙 - 17 -9)第2回調査の結果,災害廃棄物の受入れに前向きな回答をした地方公共団体の数は54(既に受入済みの6地方公共団体を含む。)となり,第1回調査において,572の地方公共団体が災害廃棄物の受入れに前向きな回答をしていたことと対比すると大幅に減少した(乙25)。 (5) 大阪府による災害廃棄物の受入検討状況の公開原告は,平成23年11月29日,第1回調査及び第2回調査の際に大阪府が作成・取得した行政文書の開示を求めたところ,大阪府知事は,同年12月12日付けで開示請求に係る行政文書の全部を公開した(甲7ないし9)。なお,この時公開された行政文書には,第2回調査にお 大阪府が作成・取得した行政文書の開示を求めたところ,大阪府知事は,同年12月12日付けで開示請求に係る行政文書の全部を公開した(甲7ないし9)。なお,この時公開された行政文書には,第2回調査において大阪府内の地方公共団体の検討状況として回答した本件回答文書が含まれていた(甲9)。 (6) ウェブサイトへの掲載(乙24,26,証人P5)環境省は,平成24年1月頃,同省のウェブサイトに「広域処理情報サイト」(本件サイト)を設け,そこに「広域処理に関する地方自治体の状況」と題する文書を掲載し,その後,その内容を随時更新していた。 本件サイトに掲載されていた地方公共団体は,災害廃棄物の受入表明又は受入検討をした地方公共団体のうち,本件サイトに掲載することにつき当該地方公共団体の了承を得られたものに限られており,平成24年4月25日時点では,4都県において既に災害廃棄物を受け入れ,22道府県において,地方公共団体が災害廃棄物の受入表明又は受入検討をした旨が掲載されていた。 2 争点(1)(本件不開示部分の法5条5号該当性)について(1) 法5条5号の趣旨及び解釈等被告は,本件不開示部分は,国の機関,独立行政法人等,地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議,検討又は協議に関する - 18 -情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれや不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあるものであるとして,法5条5号の不開示情報に該当する旨を主張する。 そこで,同号の趣旨についてみるに,法による開示の対象となる行政文書は,行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書等で,当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして,当該行政機関が保有しているものをいう(組 趣旨についてみるに,法による開示の対象となる行政文書は,行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書等で,当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして,当該行政機関が保有しているものをいう(組織共用文書。法2条2項)ことから,国の機関や地方公共団体等の内部又は相互間における審議,検討又は協議に関する情報が記録された文書等であって,決裁等がされ,事案の処理が終了する前の段階のものであっても法の適用を受けることになるところ,これらの情報が時期尚早な段階で開示されることによって,外部からの干渉,圧力等により率直な意見の交換や意思決定の中立性が損なわれたり,未成熟な情報が確定的情報と誤解され国民の間に混乱を生じさせたりなどすることがあり得るものといえる。他方,国民主権の理念にのっとり,行政機関の保有する情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資するという法の目的(法1条)に照らせば,むしろ最終的な意思決定前の情報であっても,これを開示することが必要な場合も少なくないというべきである。したがって,審議,検討又は協議に関する情報の公開に際しては,上記のような政府の諸活動を国民に説明する責務の観点からこれを開示することによる利益と,最終的な意思決定前の情報を開示することにより生じる支障等とを比較衡量する必要があるところであって,法5条5号が掲げる不開示情報について「不当に」という文言が付加されているのも,上記のような比較衡量を念頭において,開示することによる利益を斟酌しても,開示することにより生じる支障等が重大であり,不開示とすることに合理性が認め - 19 -られる場合に不開示とすることができるとの趣旨によるものと において,開示することによる利益を斟酌しても,開示することにより生じる支障等が重大であり,不開示とすることに合理性が認め - 19 -られる場合に不開示とすることができるとの趣旨によるものと解される。 そして,同号にいう「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」とは,対象情報を公にすることによって,外部からの圧力や干渉等の影響を受ける結果,率直な意見交換や意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれを想定したもので,適正な意思決定手続の確保を保護利益とするものと解される。具体的には,発言者やその家族に対して危害が及ぶおそれがある場合,行政機関内部の政策の検討が十分でない情報が公になり,外部からの圧力により当該政策が不当な影響を受ける場合などが考えられる。また,同号にいう「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」とは,未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報などを公にすることにより,国民の誤解や憶測を招き,不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいい,これらの情報が公にされることによる国民への不当な影響が生じないようにする趣旨と解される。 そうであるところ,法1条の目的(とりわけ行政文書の開示請求権や政府の諸活動を国民に説明する責務等)や,法5条が行政文書は原則として開示しなければならないとし,同条各号所定の不開示情報が記録されている場合に例外的に不開示決定がなされる旨定めていること等に照らすと,同条5号にいうおそれは抽象的な危険性・可能性では足りず,客観的かつ具体的な危険性・可能性があることを要すると解すべきである。 (2) 本件不開示部分の法5条5号該当性について本件不開示部分は,国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間における審議,検討又は協議に関する情報であることは明らかであるので と解すべきである。 (2) 本件不開示部分の法5条5号該当性について本件不開示部分は,国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間における審議,検討又は協議に関する情報であることは明らかであるので,本件不開示部分を開示することによる率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,又は不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれの有無について検討する。 ア率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれの有 - 20 -無(ア) 本件記事の掲載や地方公共団体の長による災害廃棄物の受入れの表明等を契機として,多くの地方公共団体に対して脅迫を含む多数の反対意見等が寄せられていたこと(前記認定事実(2)),災害廃棄物の受入れに前向きな回答をした地方公共団体の数は,第1回調査においては572あったのが,第2回調査においては54(既に受入済みの6地方公共団体を含む。)と大幅に減少したこと(前記認定事実(4))からすると,第2回調査の回答がされた時点(平成23年10月時点(前記前提事実(3)ア))においては,本件不開示部分が開示されると,第2回調査に対して災害廃棄物を受け入れる意向を示した(本件回答文書の検討状況(A~C)欄にB「被災地への職員派遣や検討会議の設置等の具体的な検討を行っている」又はC「被災地への職員派遣や検討会議の設置等は行っていないが,受入れに向けた検討を行っている」と記入した)地方公共団体に対して,多くの反対意見等が寄せられるとともに,脅迫にわたるような場合もあり,これらに接した地方公共団体の中には十分な議論を経ないまま災害廃棄物の受入れの検討を中止することとする地方公共団体が生じた可能性は否定できない。 (イ)a しかしながら,第2回調査が行われた後の平成24年1月頃には,環境省のウ は十分な議論を経ないまま災害廃棄物の受入れの検討を中止することとする地方公共団体が生じた可能性は否定できない。 (イ)a しかしながら,第2回調査が行われた後の平成24年1月頃には,環境省のウェブサイトに「広域処理情報サイト」(本件サイト)が設けられ,そこに「広域処理に関する地方自治体の状況」と題する文書が掲載され,その内容も随時更新されて,本件一部不開示決定がされる前の同年4月25日時点では,4都県において既に災害廃棄物を受け入れ,22道府県の地方公共団体が災害廃棄物の受入表明又は受入検討をした旨が掲載されていたこと(前記認定事実(6))に加え,大阪府も,平成23年12月12日付けで,原告の行政文書公開請求に対して第2回調査の際に大阪府が取りまとめた本件回答文書の全部を - 21 -公開しているところ(前記認定事実(5)),これら本件サイトや大阪府による上記情報公開によって災害廃棄物の受入れを検討していることが公にされた地方公共団体に対して抗議が殺到し,当該地方公共団体内部や,当該地方公共団体と他の地方公共団体との間又は当該地方公共団体と国との間における率直な意見の交換又は意思決定の中立性が損なわれたことを具体的にうかがわせる事情は認められない。 このことからすると,本件記事が掲載された平成23年▲月時点や,第2回調査が行われた同年10月時点と,その後,上記のとおり本件サイトによる災害廃棄物の受入れに関する情報提供等が行われるようになった後である本件一部不開示決定時(平成24年5月1日時点)との間では,災害廃棄物の受入れに関する情報の公開を取り巻く状況は相当程度変化していたものといえる。このことは,平成22年4月から平成24年3月まで環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課で基準係長として勤務し,災害 に関する情報の公開を取り巻く状況は相当程度変化していたものといえる。このことは,平成22年4月から平成24年3月まで環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課で基準係長として勤務し,災害廃棄物広域処理のためのマッチング事業を含む多くの災害廃棄物に関する事務を取り扱っていたP6が,第2回調査が行われた平成23年10月の段階では,寄せられた意見は必ずしも成熟したものではなかった,その後の10月,11月,12月,1月,2月と様々な全国的な運動,動きがあったので,そういった結果から見ても,上記10月時点というのは,まだまだ早い時期だったんじゃないかなと思っている旨証言していること(証人P6)や,災害廃棄物の受入れの表明等をした地方公共団体に対する反対意見や苦情等の状況に係る報道についての被告提出の証拠(乙6,7,13)も,大部分は平成23年段階の報道であることからも裏付けられる。 この点,本件一部不開示決定がされた時期に近接する平成24年3月や4月の段階で,災害廃棄物の受入れに積極的な姿勢を示していた - 22 -金沢市長に対し,「がれき受け入れたら殺す」といった脅迫状が2度にわたり送付され(前記認定事実(2)イ(ウ),乙13),また,同年4月に石川県輪島市において,同市庁舎の玄関等に「しちようころす」などの落書きがされていた件について,災害廃棄物の受入方針を表明している同市長に対する反発の可能性もあるとされていること(乙13)からすると,本件一部不開示決定がされた同年5月1日時点においても,災害廃棄物の受入れを検討等していることを明らかにした地方公共団体等に対する脅迫等の事態が絶無であったということはできないが,上記説示したところによれば,災害廃棄物の受入れを検討していること等を表明する地方公共団体の数や,かかる情報 とを明らかにした地方公共団体等に対する脅迫等の事態が絶無であったということはできないが,上記説示したところによれば,災害廃棄物の受入れを検討していること等を表明する地方公共団体の数や,かかる情報の公開の状況,これに対する反対意見や苦情等の状況は,本件記事が「P2」に掲載された平成23年▲月時点や,第2回調査が行われた同年10月時点とは相当程度異なるものといえ,上記のような脅迫事例がなお存したことをもって,本件一部不開示決定がされた平成24年5月1日時点において,災害廃棄物の受入れを検討していること等を明らかにした地方公共団体の内部や,当該地方公共団体と他の地方公共団体との間又は当該地方公共団体と国との間における率直な意見の交換又は意思決定の中立性が損なわれるような状況にあったものとは認められない。 b 一方,地方公共団体側の事情としても,第1回調査が行われたのは,東日本大震災が発生してから約1か月後のことであり,被災地で生じた大量の災害廃棄物についての全国規模での広域処理体制の構築が喫緊の課題とされ,かかる観点から各地方公共団体における受入処理等に対する第1回調査が行われた(乙1)一方で,災害廃棄物が放射性物質に汚染されている可能性や,かかる可能性について住民が感じる不安や反発を考慮していない地方公共団体も少なくなかったことがう - 23 -かがえる(下呂市は第1回調査に対する回答の段階では放射性物質による汚染は念頭になかったとする(乙6)。)ことからすると,第1回調査の段階では,これらの点についての十分な検討を経ないまま受入れに前向きな姿勢を示した地方公共団体も相当数存したものと推測される。これに対し,その後,災害廃棄物が放射性物質に汚染されている可能性を指摘する報道等もされ(「P2」に掲載された本件記事もその一つ れに前向きな姿勢を示した地方公共団体も相当数存したものと推測される。これに対し,その後,災害廃棄物が放射性物質に汚染されている可能性を指摘する報道等もされ(「P2」に掲載された本件記事もその一つといえる。),受入れに前向きな姿勢を示した地方公共団体に対し,これに反対する意見や苦情等が寄せられたこと(前記認定事実(2),乙6,7)等から,一方では,福島県内で生じた災害廃棄物の処理について当面の取扱いや処理方針を定めた「福島県内の災害廃棄物の当面の取扱い」(乙2)や「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」(乙3),あるいはガイドラインが公表されるなどした(前記認定事実(3))ものの,第2回調査においては,災害廃棄物が放射性物質に汚染されている可能性や,かかる可能性について住民が感じる不安や反発を慮って,災害廃棄物の受入れに慎重になる地方公共団体が増加し,その結果,第1回調査から,災害廃棄物の受入れに前向きな回答をする地方公共団体が大幅に減少した(前記認定事実(4))ものと解されるところであって,このことをもって,第1回調査の結果が公表されたことにより地方公共団体内部における率直な意見交換等を十分行うことが妨げられ,意思決定の中立性が損なわれた結果であるとまでいうことはできない。 c また,本件開示請求は,環境省が平成23年10月に行った,東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理についての地方公共団体の受入検討状況等の調査(第2回調査)に対する地方公共団体の回答等の第2回調査に係る行政文書の開示請求であり(前記前提事実(1),(3),(4)),第1回調査の公表を踏まえて掲載された本件記事や,受 - 24 -入れに前向きな地方公共団体に対する反対の意見や苦情等が寄せられたこと(前記認定事実(2),乙6,7)に照らしても,災害廃棄 ),第1回調査の公表を踏まえて掲載された本件記事や,受 - 24 -入れに前向きな地方公共団体に対する反対の意見や苦情等が寄せられたこと(前記認定事実(2),乙6,7)に照らしても,災害廃棄物の受入れについて検討を行っている地方公共団体の数やその検討状況及び検討内容等にとどまらず,具体的にどの地方公共団体においてどのような受入れを検討しているかということについても,重要な情報と位置付けられるものといえる。そして,国民主権の理念にのっとり,行政機関の保有する情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資するという法の目的(法1条)にかんがみると,東日本大震災により生じた大量の災害廃棄物に対する広域処理の必要性が存する一方で,災害廃棄物が放射性物質に汚染されている可能性が存するのではないかとの住民の不安等に照らせば,本件回答文書中の地方公共団体名,施設名及び担当情報(本件不開示情報)は,これを不開示とすることによる不利益は大きいものといわなければならない。 d 以上によれば,本件一部不開示決定当時において,本件不開示部分を開示することにより地方公共団体内部における率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれが存したものと認めることはできず,そうである以上,地方公共団体相互間又は地方公共団体と国との間における率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれが存したものということもできない。 (ウ) これに対し,被告は,本件不開示部分を公表することは,住民に対する正確な情報提供や,住民との十分な意見交換を行うことを妨げるものである旨主張するが,上記(イ)で説示したとおり,少なくとも本件 (ウ) これに対し,被告は,本件不開示部分を公表することは,住民に対する正確な情報提供や,住民との十分な意見交換を行うことを妨げるものである旨主張するが,上記(イ)で説示したとおり,少なくとも本件一部不開示決定がされた平成24年5月1日時点でかかる被告主張のようなおそれが具体的に存したものとはいえないし,また,同説示した法の - 25 -目的や本件不開示部分に係る情報の重要性等にかんがみると,災害廃棄物の受入れに対する反対意見が想定されるような場合に,より一層正確な情報提供や十分な意見交換が必要となるものであって,地方公共団体としては,脅迫等に対しては厳正に対処しつつ,反対意見の存在を前提として住民に対して説明する責務を負うものであるところ,本件不開示部分が公表されることによって,当該地方公共団体内部での十分な検討や,住民に対する上記のような情報提供の機会や意見交換等の機会を持つことすらできないような状況の下,災害廃棄物の受入方針を撤回せざるを得ないような事態に至る具体的なおそれが存したものとは認められない。 また,被告は,本件サイトに掲載されているのは災害廃棄物の受入表明又は受入検討をした地方公共団体のうち,公表することを了承したものに限られるから,本件サイトに災害廃棄物の受入表明又は受入検討をした地方公共団体が掲載されていたとしても,本件不開示部分の法5条5号該当性が否定されるわけではない旨主張する。しかしながら,本件サイトに掲載された地方公共団体においては,災害廃棄物の受入表明又は受入検討をし,公表することを了承したという点を除いては,その検討状況は一様ではなく,本件サイトに掲載されることの意味や影響も地方公共団体ごとに異なるというべきところ,実際に本件サイトに多数の地方公共団体による災害廃棄物の受入表明又は受入検 を除いては,その検討状況は一様ではなく,本件サイトに掲載されることの意味や影響も地方公共団体ごとに異なるというべきところ,実際に本件サイトに多数の地方公共団体による災害廃棄物の受入表明又は受入検討の状況が掲載されたにもかかわらず,本件一部不開示決定時までの間に,これらの地方公共団体において災害廃棄物の受入れの検討等に具体的な支障が生じたと認めるに足る的確な証拠はない。そうすると,本件一部不開示決定時において,地方公共団体における災害廃棄物の受入表明又は受入検討の状況の公表が,当該地方公共団体における災害廃棄物の受入れの検討等に具体的な支障を生じさせる関係にあるとはいえないから,そのこと自 - 26 -体が,本件不開示部分を開示してもかかる支障が生じる具体的なおそれがあるとはいえないことを示す事情であるというべきである。 イ国民の間に混乱を生じさせるおそれ被告は,意思形成過程にある未成熟な情報を開示することで,国民に誤解を与える旨主張する。 しかしながら,第2回調査に対する回答は,災害廃棄物の受入れを検討している場合の回答としては,検討状況についてB又はCの2段階の選択肢があるほか,検討内容等欄に具体的な検討状況や受入れに向けての課題等を記入することも可能であり,例えば,検討状況について「B」と回答した地方公共団体の一つは,検討内容等欄に「岩手県と協議を進めているが,受け入れるにあたっては,以下の懸念材料があると考えており,現時点での受け入れは困難と判断している。」等と記入している(乙10)。 そうすると,本件回答文書の記載を参照すれば,地方公共団体が災害廃棄物の受入れを決定したのか,災害廃棄物の受入れを検討している段階にあるのかは明らかであり,地方公共団体の災害廃棄物の受入れの検討状況について国民の間に混乱を生じさせ 照すれば,地方公共団体が災害廃棄物の受入れを決定したのか,災害廃棄物の受入れを検討している段階にあるのかは明らかであり,地方公共団体の災害廃棄物の受入れの検討状況について国民の間に混乱を生じさせるおそれがあるとは認められない。また,その他に,本件不開示部分を開示することによって国民の間に混乱を生じさせることをうかがわせる事情も見当たらない。 ウ結論したがって,本件不開示部分について,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ又は不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあるとは認められないから,本件不開示部分が法5条5号に該当すると認めることはできない。 3 争点(2)(本件不開示部分の法5条6号柱書き該当性)について(1) 法5条6号の趣旨及び解釈等被告は,本件不開示部分には,国の機関,独立行政法人等,地方公共団体 - 27 -及び地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものが含まれているとして,法5条6号の不開示情報がある旨を主張する。 そこで,同号の趣旨についてみるに,国の機関又は地方公共団体が行う事務又は事業は公共の利益のために行われるものであり,公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については,不開示とする合理的な理由があるとの趣旨によるものと解される。 同号にいう当該事務又は事業の性質上とは,当該事務又は事業の目的,その目的達成のための手法等に照らして,その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるか否かを判断する趣旨であると解され,適正な遂行に支障を及ぼすおそれとは,当該事務又は事業が,その根拠規定や趣旨に照らし,公益的な開 ための手法等に照らして,その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるか否かを判断する趣旨であると解され,適正な遂行に支障を及ぼすおそれとは,当該事務又は事業が,その根拠規定や趣旨に照らし,公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量した上で適正な遂行といえるものであることを求める趣旨であると解される。 そして,同条6号にいう支障の程度は名目的なものでは足りず,おそれの程度も,確率的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性があることを要すると解すべきである。 (2) 本件不開示部分の法5条6号柱書き該当性について前記2のとおり,本件不開示部分を開示することにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれは認められないから,本件不開示部分を公にすることで,環境省におけるマッチングに係る業務の遂行に支障が生じる蓋然性もまた認められないというべきであって,本件不開示部分が法5条6号柱書きに該当するものとは認められない。 4 小括以上によれば,本件不開示部分は,被告が主張する法5条5号,6号柱書きのいずれにも該当しないから,本件一部不開示決定のうち,本件不開示部分を - 28 -不開示とした部分が適法なものとは認められない。 よって,本件一部不開示決定のうち,本件不開示部分を不開示とした部分は取消しを免れない。 5 争点(3)(義務付けの訴えの適法性等)について前記2ないし4のとおり,本件一部不開示決定のうち,本件不開示部分を不開示とした部分は取り消されるべきものであるから,本件不開示部分の開示決定の義務付けを求める訴えは,行政事件訴訟法37条の3第1項2号の要件を満たし,適法であると認められる。そして,前記2ないし4において判示したところに加え,平成26年3月31日に災害廃棄物の広域処理が終了したこと( る訴えは,行政事件訴訟法37条の3第1項2号の要件を満たし,適法であると認められる。そして,前記2ないし4において判示したところに加え,平成26年3月31日に災害廃棄物の広域処理が終了したこと(前記前提事実(5)イ)にも照らせば,本件訴えに係る口頭弁論を終結した同年9月2日時点において,本件不開示部分が法5条5号,6号柱書きのいずれにも該当しないものと認められ,他にこれを不開示とすべき事情も見当たらないから,行政事件訴訟法37条の3第5項の規定により,処分行政庁に対し,本件不開示部分の開示決定をすべき旨を命ずるのが相当である。 6 結論よって,原告の請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官田中健治 - 29 -裁判官新宮智之 裁判官松本諭 - 30 -(別紙) 環境省が平成23年10月7日に実施した,東日本大震災により生じた災害廃棄物の受入検討状況調査に対する回答文書のうち,地方公共団体名,施設名及び担当情報が記載された部分

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