令和5年4月13日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(行ウ)第16号生活保護変更決定処分取消等請求事件(以下「第1事件」という。)平成29年(行ウ)第10号生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件(以下「第2事件」という。) 口頭弁論終結日令和4年12月15日判決別紙当事者目録のとおり 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第1事件⑴ 別紙一覧表1の「処分庁」欄記載の各処分庁が「原告」欄記載の各被保護者 に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条2項に基づく保護変更決定を取り消す。 ⑵ 被告国は、第1事件原告らに対し、それぞれ1万円及びこれに対する平成25年5月16日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第2事件 ⑴ 別紙一覧表2の「処分庁」欄記載の各処分庁が「原告」欄記載の各被保護者に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条2項に基づく保護変更決定を取り消す。 ⑵ 被告国は、第2事件原告らに対し、それぞれ1万円及びこれに対する平成27年3月31日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、別紙一覧表の処分庁欄記載の市内に居住し、生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けている原告らが、それぞれ平成25年厚生労働省告示第174号及び平成27年厚生労働省告示第227号(以下「本件各告示」という。)による保護基準の改定(以下「本件保護基準改定」という。)に伴い、処分行政庁から生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定( 号及び平成27年厚生労働省告示第227号(以下「本件各告示」という。)による保護基準の改定(以下「本件保護基準改定」という。)に伴い、処分行政庁から生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定(以下「本件各決定」という。)を 受けたところ、本件各決定は、生活保護法8条等に違反するものである旨主張して、被告大津市に対し、その取消を求めるとともに、本件各決定の根拠となった本件保護基準改定は国家賠償法(以下「国賠法」という。)上違法であると主張して、被告国に対し、国賠法1条1項に基づき、それぞれ1万円(附帯請求は、本件各告示の発出日を起算日とする平成29年法律第44号による改正前の民法 所定の遅延損害金)の支払を求める事案である。 1 関係法令等の定め別紙法令等のとおり 2 前提事実⑴ 生活扶助基準について 生活保護法は、保護の種類の1つとして生活扶助を定め、その内容を、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの及び移送の範囲内において行うものと定めている(同法11条、12条)。 その上で、生活扶助基準(別表第1)は、基準生活費と加算とに大別される。 基準生活費は、食費や被服費など個人単位に消費される経費である「第1類費」と、光熱水費や家具什器費といった世帯単位で消費される経費である「第2類費」とに分けられ、第1類費は年齢別に、第2類費は世帯人員別に基準額が定められており、さらにこれらの基準額について、級地に応じた地域差が定められている。これを前提に、生活扶助基準は、まず標準世帯(現在は33歳、2 9歳、4歳の3人世帯)の最低生活費を具体的な金額として設定し、これを、 一般世帯を参考にして第1類費と第2類費とに分解 。これを前提に、生活扶助基準は、まず標準世帯(現在は33歳、2 9歳、4歳の3人世帯)の最低生活費を具体的な金額として設定し、これを、 一般世帯を参考にして第1類費と第2類費とに分解し、第1類費については年齢別の栄養所要量を参考とした指数を、第2類費については世帯人員別の消費支出を参考にした指数をそれぞれ設定して適用し、年齢階層別の第1類費の額と世帯人員別の第2類費の額をそれぞれ算定するとともに、級地に応じて1級地-1との比較をして設定された一定の指数(なお、原告らの居住地は1級地 ―2に属する。)を適用した算定をすることにより求められる。 このように、生活扶助基準は、標準世帯の最低生活費の「水準」の設定をした上で、これを踏まえて他の年齢階層や世帯人員に応じた調整や、級地に応じた調整をするという「展開」に係る算定をして定められるものである。 ⑵ 本件保護基準改定の概要 本件保護基準改定は、① 厚生労働省の審議会である社会保障審議会の下に設置された生活保護基準部会(以下「基準部会」という。)の検証結果を踏まえ、生活扶助基準の年齢階級、世帯人員及び級地別の展開のための指数と一般低所得世帯の消費実態とのかい離の調整(以下「ゆがみ調整」という。)を行うこと、② デフレ傾向が続く中、消費者物価指数の動向を勘案した調整(以下 「デフレ調整」という。)を行うこと、③ これらの調整をすることに伴う激変緩和措置として平成25年の基準部会の検証結果の反映を2分の1にとどめ、本件保護基準の改定を平成25年度から3年間にわたり段階的に実施するとともに、①と②を合わせた世帯の増減額の幅がプラスマイナス10%を超えないように調整するなどの方策を講じることとしたものであり、具体的には以下 のとおりである。( 間にわたり段階的に実施するとともに、①と②を合わせた世帯の増減額の幅がプラスマイナス10%を超えないように調整するなどの方策を講じることとしたものであり、具体的には以下 のとおりである。(甲2、3、乙3、6、16、17)アゆがみ調整 平成23年2月、基準部会が設置され、生活扶助基準と一般低所得者世帯の消費実態の均衡が適切に図られているか等について検証が行われ、年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活扶助基準額と消費実態とのかい離を 分析し、様々な世帯に展開するための指数についての検証が行われた。そ して、基準部会は、平成25年1月18日、この結果を取りまとめ、社会保障審議会生活保護基準部会報告書(以下「平成25年報告書」といい、同報告に係る検証及びその結果を「平成25年検証」という。)として公表した。平成25年報告書においては、生活扶助基準の展開部分が一般低所得世帯の消費実態と乖離している旨が指摘されていた。(甲3、乙6、2 1) 厚生労働大臣は、平成25年検証の結果を受けて、調査対象者を年間収入額順に10等分した場合に収入額が最も低い層である年間収入階級第1・十分位層(以下「第1・十分位層」といい、収入額の低い方から順に数字を付して同様に表記する。)の世帯の消費実態と生活扶助基準の年齢、 世帯人員別、居住地域別の較差を是正するため生活扶助基準の改定(ゆがみ調整)をすることとした。(甲1、2、乙3)イデフレ調整また、厚生労働大臣は、デフレ傾向が続く中で、生活扶助基準額が据え置かれてきたことを踏まえ、消費者物価指数の動向を勘案した生活扶助基 準額の見直しを行った。 まず、総務省が作成、公表している消費者物価指数(以下「総務省CPI」という。)は、指数の計算 置かれてきたことを踏まえ、消費者物価指数の動向を勘案した生活扶助基 準額の見直しを行った。 まず、総務省が作成、公表している消費者物価指数(以下「総務省CPI」という。)は、指数の計算の対象とする品目の価格指数(基準時の値を100として価格の時間的な変化を示した数値)に、ウエイト(家計の消費支出全体に占める各品目の支出金額の割合)を乗じ、これらを合計した 上で、ウエイトの総数で除して平均することで算出される。また、総務省CPIは、現実の消費の構造を反映したものとするため、5年に1度、品目とウエイト等の見直しが行われており(以下「総務省CPI基準改定」という。なお、特定の時期の改定については年を付して表す。)、本件保護基準改定の直近では、平成17年、平成22年、平成27年に改定が行わ れていた。(乙26、27) 厚生労働大臣は、平成22年の総務省CPIの品目から、生活扶助以外の扶助で賄われる品目(家賃、教育費、医療費など)を除外し、かつ、原則として保有が認められていない、支払が免除されているなどの理由から、生活保護受給世帯において支出することが想定されていない品目(自動車関係費、NHK受信料など)を除外して、その余の品目を指数品目として 消費者物価指数を算出し直すこととした(以下、この指数を「生活扶助相当CPI」という。)。その上で、同大臣は、平成20年における指数品目485品目と、平成23年における指数品目517品目につき、平成22年の価格を100としたそれぞれの品目指数を求め、平成22年の家計調査による支出割合をもってウエイトの参照時点として計算した。その結果、 平成20年の生活扶助相当CPIは104.5、平成23年の生活扶助CPIは99.5となり、平成20年から平成23年にかけての による支出割合をもってウエイトの参照時点として計算した。その結果、 平成20年の生活扶助相当CPIは104.5、平成23年の生活扶助CPIは99.5となり、平成20年から平成23年にかけての変動率(下落率)はマイナス4.78%となった。(乙26ないし29)ウ本件保護基準改定の実施以上を前提に、厚生労働大臣は、生活扶助基準の展開部分と一般低所得世 帯の消費実態とのかい離の解消を図るとともに、平成20年から平成23年までの物価下落率を考慮したマイナス4.78%の生活扶助基準の引き下げをすることとした。 その上で、同大臣は、生活保護受給世帯に対する激変緩和措置として、改定は、平成25年度から3年間にわたって段階的に実施し、改定の影響を一 定程度抑えるため、増減額の幅がプラスマイナス10%を超えないように調整し、ゆがみ調整による増減額の幅は、基準部会がした平成25年検証によって得られた比率の2分の1とすることにした(以下、増減額の幅を2分の1とした処理を「2分の1処理」という。)。 以上を前提に、同大臣は、平成25年から平成27年にかけて、本件各告 示をして、生活扶助基準の改定を内容とする本件保護基準改定を実施した (以下、「平成25年改定」などという。)。(甲1ないし3、乙3、6、16)⑶ 本件各決定と訴えの提起ア第1事件原告らは、別紙一覧表1の「処分庁」欄記載の処分行政庁から、「処分日」欄記載の年月日付けで平成25年改定を理由とする生活保護法25条2項に基づく保護変更決定(以下「平成25年決定」という。)を受けた。 イ第2事件原告らは、別紙一覧表2の「処分庁」欄記載の処分行政庁から、「処分日」欄記載の年月日付けで平成27年改定を理由とする生活保護法25条2項に基づく保 5年決定」という。)を受けた。 イ第2事件原告らは、別紙一覧表2の「処分庁」欄記載の処分行政庁から、「処分日」欄記載の年月日付けで平成27年改定を理由とする生活保護法25条2項に基づく保護変更決定(以下「平成27年決定」という。)を受けた。 ウ第1事件原告らは、別紙一覧表1のとおり、平成25年決定に係る審査請 求及び再審査請求を経て、平成26年10月31日に第1事件の訴えを提起し、第2事件原告らは、別紙一覧表2のとおり、平成27年決定に係る審査請求及び再審査請求を経て、平成29年9月22日に第2事件の訴えを提起した。 3 争点 ⑴ 本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に、裁量権の逸脱濫用があるかア裁量権の範囲、審査方法等の判断枠組みイデフレ調整をしたことウゆがみ調整をしたことエゆがみ調整とデフレ調整を併せてしたこと オ本件保護基準改定に至る手続の不備や動機の不正⑵ 本件保護基準改定は国賠法上違法であるか 4 争点⑴(本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に、裁量権の逸脱濫用があるか)についての原告らの主張⑴ 争点⑴ア(裁量権の範囲、審査方法等の判断枠組み)について 本件保護基準改定は、生活保護法8条1項の委任を受けた基準の改定として 行われるものであり、同条2項が、生活保護基準を「要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これをこえないもの」と定めていることに照らすと、生活保護基準を定める際の厚生労働大臣の裁量は合目的的な範囲にとどまる限定的なものというべきであって、生活保護法に よって限定された裁量に過ぎない。 えないもの」と定めていることに照らすと、生活保護基準を定める際の厚生労働大臣の裁量は合目的的な範囲にとどまる限定的なものというべきであって、生活保護法に よって限定された裁量に過ぎない。 そして、生活保護法に基づく保護が、憲法25条に規定される理念に基づき、困窮するすべての国民が、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないとされていること(生活保護法1条、3条)や、既に実施されている保護の基準が引き下げられる場合、受給者にとって、生活の質の 低下が強いられることになることからすれば、以下のとおり、同大臣の有する裁量権にはさらに制約があるというべきである。 ア国は、憲法25条に基づき、健康で文化的な最低限度の生活を国民に保障しなければならず、生活保護法3条及び8条2項も、同様の定めを設けて、受給者において、健康で文化的な最低限度の生活の需要が確実に満た されるような保障がされるよう、保護の下限を画している。 また、不利益変更の禁止を定める同法56条は、保護基準の改定についての規律ではないが、生活保護利用者の立場からすると、法的根拠の相違に関わらず、生活保護費が減額されることによって現実に受ける不利益に差異がないことに照らせば、保護基準の改定も、同条の法意を踏まえ、「正 当な理由」がある場合に限り許されるというべきである。 上記解釈は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会権規約」という。)からも導かれる。 すなわち、社会権規約2条1項は、規約の各締結国に対し、「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完 全な実現を漸進的に達成する」ために行動する義務を課し、同9条は、社 会保障についてのすべ 締結国に対し、「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完 全な実現を漸進的に達成する」ために行動する義務を課し、同9条は、社 会保障についてのすべての者の権利を保障し、同11条1項は、相当な生活水準と生活条件の不断の改善についてのすべての者の権利を保障している。また、社会権規約の解釈として一般的通用力を有する経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の一般的意見(以下「一般的意見」という。)も、その3において、社会権規約の諸規定が締約国に法的義務を課 し、規約上の権利が具体的権利であることを明らかにし、同19第42項において、後退的措置は規約に基づき禁じられているとの強い推定が働き、後退的措置をとる場合は、すべての選択肢を最大限慎重に検討した後に導入されたものであること、及び、締約国の利用可能な最大限の資源の完全な利用に照らして規約に規定された権利全体との関連によってそれが正 当化されることを証明する責任を負うとし、後退的措置は原則として社会権規約2条1項及び9条に反するとしている。 以上によれば、いったん「最低限度の生活の需要」を満たすために必要として設定された生活保護基準を引き下げることは原則として許されず、厚生労働大臣が生活扶助基準の引き下げを行う場合には、国において、具 体的な必要性及び相当性を主張立証しない限り、裁量権の逸脱又は濫用に当たるというべきである。 イまた、憲法25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」が抽象的・相対的な概念であって、たとえその具体的内容の判断につき行政庁に裁量権があるとしても、最低限度の生活が国の財政事情によって変化するものではな いことからすれば、保護の基準を定めるときに国の財政事情を考慮することは許されないし、 的内容の判断につき行政庁に裁量権があるとしても、最低限度の生活が国の財政事情によって変化するものではな いことからすれば、保護の基準を定めるときに国の財政事情を考慮することは許されないし、仮に、考慮される場合があるとしても、そのような事情によって専門技術的にされた考察を否定することは許されない。 同様に、保護の実施に対する国民感情や、政権与党の公約がどうであったかといった事情も、生活保護法が予定する考慮要素ではない。このことは、 同法の立法時に、保護の基準について厚生大臣と大蔵大臣が協議をするとい う意見が採用されなかった経緯や、国民の声を反映させる審議会を設置する意見が採用されなかった経緯があることからしても明らかである。 したがって、厚生労働大臣が、以上のような点を考慮して本件保護基準改定をしたというのであれば、その改定は、裁量権の逸脱濫用に当たる。 ウ以上からすれば、保護の基準を改定し、その引下げをすることが許される のは、最低限度の生活を維持する上での需要が、引下げに見合う程度に減少している場合であり、引下げ後の受給者における生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものである場合でなければならない。そして、その判断は、統計上の客観的な数値等と合理的に関連した、高度の専門的技術的考察に基づくものである必要があり、かかる点が、司法 審査の対象とされなければならない。 ⑵ 争点⑴イ(デフレ調整をしたこと)についてア生活扶助相当CPIの比較年度の選択が不合理であること 厚生労働大臣は、前提事実⑵イのように、比較年度として平成20年と平成23年を選択したのであるが、平成20年は、原油価格の高騰によ って相対的に物価が高くなった年であった こと 厚生労働大臣は、前提事実⑵イのように、比較年度として平成20年と平成23年を選択したのであるが、平成20年は、原油価格の高騰によ って相対的に物価が高くなった年であった一方で、平成23年は、物価が下落した年であり、総務省統計局の分析によっても、これらの年度における物価の上昇と下落は近年稀にみる大きな変動であった。したがって、これらの年を基準にすると、生活扶助相当CPIの下落率が大きくなることは明らかであった。 そもそも、総務省CPIの推移をみると、平成16年度に対して、平成17年度はマイナス0.3、平成18年度は0.3、平成19年度は0. 0と、ほぼ横ばいで推移していて、物価が下落したのは平成17年度だけであった。それ故、生活扶助基準の見直しをすべきとした平成19年11月30日付けの「生活扶助基準に関する検討会報告書」(以下「平成19 年報告書」という。)自体が不合理なものであったというべきである。ま た、上記と同様に平成16年度に対するCPI上昇率は、平成20年度は1.4、平成21年度はマイナス1.4であった。そうすると、平成19年報告書を前提にデフレ調整の検討をするとしても、平成20年を基準とする合理性はないのであり、平成19年度と同水準のCPIである平成16年度又は平成21年度の総務省CPIを基準として採用するべきであ った。 このように、厚生労働大臣が、デフレ調整において生活扶助相当CPIの比較の期首を平成20年として算定した生活扶助相当CPIは不合理というべきであり、厚生労働大臣に裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎づける事情というべきである。 イ生活扶助相当CPIが国際的な指数の算出方法と異なること 生活扶助相当CP というべきであり、厚生労働大臣に裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎づける事情というべきである。 イ生活扶助相当CPIが国際的な指数の算出方法と異なること 生活扶助相当CPIが国際規準から逸脱していること消費者物価指数においては、① 基準時は、対象となる時系列間の期首であり起点である必要があり、他方、比較時は、当該時系列の期首以降期末までの各時点でなければならず、基準時の指数を100としなければな らない、② いわゆるマーケットバスケット方式によらなければならず、その必然的な結果として、基準時と比較時とにおいて対象とする品目は完全に同一でなければならない、とするのが国際規準である。 ところが、厚生労働大臣は、価格の基準年を平成22年としてその指数値を100とし、これに遡って比較年を平成20年として生活扶助相当C PIの平成20年総合指数を計算するとともに、同大臣は、平成20年については485品目を対象としつつ、平成23年については517品目を対象として各年の総合指数を計算した。 このように、厚生労働大臣は、国際規準から逸脱した方法によって生活扶助相当CPIを算出した。 指数の接続が行われていないこと 総務省統計局が作成した、平成17年基準消費者物価指数の作成時の品目は、平成22年のウエイトの更新以降の品目と異なっていて、28品目の追加と22品目の廃止があった。そして、マーケットバスケット方式に合致させるのであれば、廃止品目を排除するのではなく、平成17年を基準とする指数系列と、平成22年を基準とする指数系列を作成し、これら の換算をして接続する処理をしなければならない。 ところが、厚生労働大臣は、このような処理をせず、追加品目については平成20 数系列と、平成22年を基準とする指数系列を作成し、これら の換算をして接続する処理をしなければならない。 ところが、厚生労働大臣は、このような処理をせず、追加品目については平成20年の価格指数を「0」とする処理をし、廃止品目については排除する処理をして、生活扶助相当CPIを算出した。 被告らは、厚生労働大臣がした算定方法は、消費者物価指数マニュアル に記載されたロウ指数に基づくものであり、合理性があると主張するが、ロウ指数は、基準時と比較時を固定された同じバスケットで比較するものであるところ、本件では、上記のとおり平成20年と平成23年とで対象品目が異なり、適切な接続がされていないから、ロウ指数に基づく算定ということはできない。 異なる指数を組み合わせる不合理な計算をしていることCPIの比較をする場合、比較する期間の期首における支出や数量等をウエイトとして使用するラスパイレス式によって算出するべきものである。また、ラスパイレス式と、比較する期間の期末における支出や数量等をウエイトとして使用し、遡った計算をしようとするパーシェ式とでは、 平均の性質が異なり、その計算式が有するバイアス(パーシェ式では下降バイアスが生じる)も異なるから、このような異なる指数を組み合わせてCPIを算出することは、統計学上誤りであるし、そもそもCPIの算出においてパーシェ式を用いることは例がない。 ところが、厚生労働大臣は、平成20年と平成23年とを比較する生活 扶助相当CPIを算出するに際し、平成22年をウエイト参照時点とする 算出をした。このような算出をすると、平成20年についてはパーシェ式を用いた算出がされ、平成23年についてはラスパイレス式を用いた算出がされること し、平成22年をウエイト参照時点とする 算出をした。このような算出をすると、平成20年についてはパーシェ式を用いた算出がされ、平成23年についてはラスパイレス式を用いた算出がされることになるのであって、その算出は不合理である。 ウ生活保護受給世帯の消費実態と乖離した算定不適切なデータの選択 消費者物価指数の動向は、品目により異なり、消費実態も所得階層により異なるのであるから、デフレにより生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加しているか否かを判断するためには生活保護受給世帯の消費実態を反映したウエイトに基づいて指数の計算をする必要がある。 生活扶助相当CPIの算出に用いられたウエイトは、総務省が行う家計 調査の結果における一般世帯の品目別消費支出金額を基に算出されたものであるが、生活保護受給世帯は、一般世帯よりも消費支出の絶対額が低く、「食料」「住居」「光熱・水道」等の費目の支出割合が高く、「保健医療」「交通・通信」「教育」「教養娯楽」などの費目の支出割合が低いといった一般世帯と異なる消費支出構造の特徴がある。 したがって、総務省が行う家計調査の結果における一般世帯の品目別消費支出金額を基に作成された生活扶助相当CPIは、生活保護受給世帯の消費実態とかい離したものであり、物価指数が生活保護受給者に及ぼした影響を示しているとはいえない。 生活保護受給者の消費実態を示す公的な調査としては、厚生労働省が実 施する社会保障生計調査があり、これが生活保護受給世帯の生活実態に即したものであるから、そのデータにより生活保護受給世帯の消費者物価の変動率を計算するべきであった。 不合理な指数品目の選定平成20年から平成22年にかけては、パソコン類について、品質調整 に伴う価格低下と のデータにより生活保護受給世帯の消費者物価の変動率を計算するべきであった。 不合理な指数品目の選定平成20年から平成22年にかけては、パソコン類について、品質調整 に伴う価格低下と購入量増加という事情が、テレビについて、地上波放送 のデジタル化による大きな買換需要という事情があったため、これらが物価下落をもたらす要因となった。しかし、生活保護受給世帯は、家電製品を購入する金銭的余裕がなく、パソコンやテレビの物価下落の恩恵を受ける割合が小さいというべきである。このことは、教養娯楽費について、一般世帯と生活保護受給世帯とでウエイト比に大きなかい離(5.1%)が あることからも明らかである。また、テレビ放送のデジタル化に関して、生活保護受給世帯にはチューナーが無料配布されたという事情もあった。 しかし、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIの算出に際し、これらの事情も考慮しなかった。 本件各決定が実態に反していること 厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIに基づき、生活保護受給世帯が、マイナス4.78%もの物価下落に伴う恩恵を受けていると算出したが、そのような実態がない。 原告らは、厚生労働大臣が生活扶助相当CPIを算定する際に採用した対象品目は妥当と考えないが、仮に、その対象品目を前提にするとしても、 総務省CPIのウエイト基準年である平成17年と平成22年を基準年として、生活扶助相当品目を対象に、マーケットバスケット式に則り、必要な接続をした算定をすると、平成20年から平成22年にかけての生活扶助相当CPIの変動率はマイナス2.26に止まっている。また、社会保障生計調査のウエイトを用いた場合、単身世帯においては、マイナス1. 27%、二人以上世帯においてはマイナス1 かけての生活扶助相当CPIの変動率はマイナス2.26に止まっている。また、社会保障生計調査のウエイトを用いた場合、単身世帯においては、マイナス1. 27%、二人以上世帯においてはマイナス1.83%の変化率となり、家計調査を用いた上で、第1・五分位のウエイトを用いた変化率はマイナス1.95%、第1・十分位のウエイトを用いた変化率はマイナス1.78%となる。 これらの計算と比較すると、厚生労働大臣がした生活扶助相当CPIに おけるマイナス4.78%の下落という算定結果は異常なものであり、不 適当である。 エ小括以上のとおり、厚生労働大臣がしたデフレ調整は、その判断の過程及び手続に過誤ないし欠落があり、裁量権の逸脱又は濫用に当たることが明らかである。 ⑶ 争点⑴ウ(ゆがみ調整をしたこと)についてア第1・十分位の世帯を比較対象としたことゆがみ調整を行うに当たり、基準部会は、第1・十分位の消費実態と生活保護基準を比較して生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかの検証を行っている。 しかし、水準均衡方式は、生活保護受給世帯の消費水準を一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準であるとし、その均衡を維持することを目的とした検証形式であり、第1・十分位と生活扶助基準を比較することは想定されていない。そもそも、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている「漏給層(生活保護制度の利用資格のある者のうち現に利用していない者)」が 大量に存在する現状においては、低所得層の消費支出が生活保護水準以下となるのは当然である。それにもかかわらず、最下位層の消費水準との比較を根拠に生活保護基準を引き下げることを許せば、保護基準が際限なく引き下がるとい においては、低所得層の消費支出が生活保護水準以下となるのは当然である。それにもかかわらず、最下位層の消費水準との比較を根拠に生活保護基準を引き下げることを許せば、保護基準が際限なく引き下がるという不合理が生じる。 したがって、第1・十分位の消費実態と生活保護基準を比較した基準部会 の検証内容に基づいたゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断は、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性」を欠くものである。 イ 2分の1処理が不合理であること2分の1処理は、基準部会の検証結果を恣意的に改変した点と、本来であれば生活扶助費が増加する60~69歳及び70歳~の単身世帯の生活扶 助費の上げ幅を大幅に圧縮し、ゆがみ調整の趣旨を没却する点において許さ れない。 すなわち、2分の1処理によって、ゆがみ調整は、基準部会の検証結果どおりであれば生活扶助基準額が上がるはずであった世帯、とりわけ生活保護受給世帯の大半を占める60歳以上の単身世帯の生活扶助費の上げ幅を大幅に圧縮するものであり、大多数の生活保護受給世帯に多大な不利益を与え るものであった。また、ゆがみ調整の目的は、年齢階級別、世帯人員別、級地別(地域別)に、生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態とのかい離を指数化して分析し、そのかい離(ゆがみ)を是正することにあったが、この2分の1処理によってゆがみの是正が半分にとどまり、半分は是正されないままとなった。そもそも、本件保護基準改定においては、引き下げ幅を最 大10%とする激変緩和措置が組み込まれているから、激変となる世帯はこの措置により救済されるはずであるし、増額世帯の増額幅を2分の1にする合理的理由がない。 ウ小括以上のとおり、厚生労働大臣がしたゆがみ調整は、単身高齢世帯につき、 から、激変となる世帯はこの措置により救済されるはずであるし、増額世帯の増額幅を2分の1にする合理的理由がない。 ウ小括以上のとおり、厚生労働大臣がしたゆがみ調整は、単身高齢世帯につき、 本来あるべき生活扶助基準の内容を一部実現させず、その点についての合理性を欠くものであり、その判断過程に過誤ないし欠落があるから、裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるものである。 ⑷ 争点⑴エ(ゆがみ調整とデフレ調整を併せてしたこと)についてアゆがみ調整は、平成21年の全国消費実態調査の個票データを基礎として、 生活扶助基準と第1・十分位層の消費支出との比較検証を行ったものであるところ、全国消費実態調査の個票データは、対象世帯の消費支出の実額が記載されたデータであり、物価変動の影響を反映した値である。そして、ゆがみ調整において、上記のとおり、物価変動の影響を反映した消費支出の統計値に基づいて基準表レベルでの保護基準の上げ下げをしたのであるから、こ れに加えて物価を考慮したデフレ調整を行うことは物価変動の二重評価と なる。被告らは、ゆがみ調整が水準を設定するものではないと主張するが、基準部会は水準検証を年齢、世帯人員体系及び級地のゆがみ調整の中で一体化して行っているから、ゆがみ調整には相対水準の調整のみならず絶対水準の調整が含まれているというべきである。そうすると、ゆがみ調整とデフレ調整は、いずれも絶対水準の調整をするものであり、これらを併せて行うこ とは物価変動を二重に評価するものということになる。 イまた、ゆがみ調整の改定率は、本件保護基準改定による改定前の第1類費及び第2類費を前提に算出されたものであるにもかかわらず、これをデフレ調整後の第1類費及び第2類費に乗じた結果、ゆがみ調整が イまた、ゆがみ調整の改定率は、本件保護基準改定による改定前の第1類費及び第2類費を前提に算出されたものであるにもかかわらず、これをデフレ調整後の第1類費及び第2類費に乗じた結果、ゆがみ調整が全く無意味となっている。 ウ以上のとおり、デフレ調整とゆがみ調整を併せて行った本件保護基準改定は著しく不合理であり、厚生労働大臣の裁量権の逸脱又は濫用に当たるものである。 ⑸ 争点⑴オ(本件保護基準改定に至る手続の不備や動機の不正)についてア手続の不備があったこと 生活保護法8条1項の立法過程においては、専門家の判断を必ず踏まえることによって裁量判断の正当性が根拠づけられるとされていたこと、現に保護基準の改定は専門家からなる審議会の検討結果を踏まえて行われてきたこと、特に現行の水準均衡方式の下では、審議会における検討を踏まえることが強く要請されており、基準部会が「学識経験者による定期的な生活保護 基準の専門的かつ客観的な評価・検証を行うこと」を目的として社会保障審議会の下に設置されたことからすれば、保護基準の改定について、基準部会等の専門家からなる審議会の検討を踏まえることは、処分基準に準じる確立した行政慣行であった。 また、生活保護の基準の作成における厚生労働大臣の裁量権は、健康で文 化的な最低限度の生活が抽象的、相対的概念であり、その具体的内容は文化 の発達、国民経済の進展に伴って向上するのはもとより多数の不確定要素を総合考慮して初めて決定できるものであることから専門家による専門技術的な検討を必要とする点に由来するから、物価を考慮した算定を行う以上、基準部会に物価統計の専門家を加えるなどしてその専門的な検討を尽くすべきであった。そもそも保護基準の改定は、昭和59 よる専門技術的な検討を必要とする点に由来するから、物価を考慮した算定を行う以上、基準部会に物価統計の専門家を加えるなどしてその専門的な検討を尽くすべきであった。そもそも保護基準の改定は、昭和59年4月以降本件保護基 準改定に至るまで、長年にわたって水準均衡方式に基づき行われてきたのであるから、その改定方式を変更するのであれば、基準部会における専門的審議を踏まえる手続が不可欠であった。 しかるに、厚生労働大臣は、基準部会の検討に付議することが容易であったにもかかわらず、基準部会に付議をせず、その専門的立場からの検討が尽 くされることもないまま、デフレ調整と2分の1処理をしたのであり、厚生労働大臣がした本件保護基準改定には、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったというべきである。 イ不正な動機があったこと平成24年12月に行われた衆議院議員選挙において、自由民主党が「生 活保護給付水準の10%引き下げ」を選挙公約としていたこと、基準部会での検証が行われている最中の同月27日及び28日の記者会見において、当時の厚生労働大臣が、生活扶助費の1割削減という選挙公約に一定の制約を受ける旨発言したこと、平成25年1月16日に開催された第12回基準部会会合において、事務局から提出された報告書案には、「他に合理的な説明 が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい。」との記載があったこと、この文言は、委員からの異論があり、調整されたが、基準部会が報告書をとりまとめた9日後の同月27日に、厚生労働省がデフレ調整を含む「平成25年予算案の概要」を発表し、同月29日に平成25年度予算案が閣議決定されたこと、その際2分の1処理について 公表されなかったことなどの事情に照らせば、デ 厚生労働省がデフレ調整を含む「平成25年予算案の概要」を発表し、同月29日に平成25年度予算案が閣議決定されたこと、その際2分の1処理について 公表されなかったことなどの事情に照らせば、デフレ調整と2分の1処理に よって行われた総額670億円の引き下げは、同党の選挙公約を実現させるという政治的意図に基づくものであり、あえて基準部会への付議を回避して行われたものである。 このような事情に基づき、結論を先取りし、本来必要な調査・検討を怠ってされた本件保護基準改定は、不正な動機に基づくものとして、厚生労働大 臣の裁量権の逸脱又は濫用に当たる。 5 争点⑴(本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に、裁量権の逸脱濫用があるか)についての被告らの主張⑴ 争点⑴ア(裁量権の範囲、審査方法等の判断枠組み)についてア生活保護法3条及び8条にいう最低限度の生活とは、抽象的かつ相対的な 概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるから、保護基準の改定においては、高度な専門技術的な考察を踏まえ、単純に比較することが困難な多元的な諸利益を評価し、それらを比較衡量した政策的価値判断を行う必要がある。したがって、本件保護基準改定に係る 厚生労働大臣の判断には、専門技術的かつ政策的な観点からの広範な裁量がある。そして、保護基準の改定に係る上記の事情からして、本件保護基準改定において採用した方法が唯一絶対のものでないことは当然であって、改定の手法には様々なものが想定できるところ、本件保護基準改定の手法と比較して、他の手段、手法を採用することが合理的で妥当であるなどとして本件 保護基準改定に係る判断を いことは当然であって、改定の手法には様々なものが想定できるところ、本件保護基準改定の手法と比較して、他の手段、手法を採用することが合理的で妥当であるなどとして本件 保護基準改定に係る判断を評価し、論じることは、専門技術的かつ政策的な観点から広範な裁量が与えられた趣旨を没却するものであり、相当でない。 イそれ故、厚生労働大臣がした本件保護基準改定において裁量権の逸脱濫用があったかの審査は、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落があるか否かといった観点から、統計等の客観的な数値等 の合理的関連性や専門的知見との整合性について検討することにより行わ れるべきものである。 ウ原告らは、前記4⑴のように、憲法や生活保護法、社会権規約の規定からすれば、厚生労働大臣は、受給者における需要が引下げに見合う程度に減少しているような正当な理由がない限り保護基準の減額を内容とする改定は許されず、改定の検討において財政事情や国民感情、政権与党の公約等を考 慮することが許されないなどと主張する。 しかし、健康で文化的な最低限度の生活というものが、極めて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、多数の不確定要素を総合して初めて判断できるものであること、そもそも保護基準は、最低限度の生活の需要を満たすものである必要がある一方で、これを超えてはならないものである こと、それ故、上記の規定を前提にしても、社会情勢の変化等に対応した保護基準の引下げは当然に想定されているし、社会権規約が、社会保障政策の推進をするべき政治的責任の宣明であって個人に具体的権利を付与するものでなく、一般的意見に法的拘束力がないことからすれば、原告らの主張は失当である。 ⑵ 争点⑴イ(デフ 社会保障政策の推進をするべき政治的責任の宣明であって個人に具体的権利を付与するものでなく、一般的意見に法的拘束力がないことからすれば、原告らの主張は失当である。 ⑵ 争点⑴イ(デフレ調整をしたこと)についてアデフレ調整をした判断過程の合理性生活扶助基準の水準については、検討会が、平成19年報告書において、一般所得世帯と比べ、生活扶助基準が高いとする報告をしていた。しかし、その後のリーマンショックに端を発する世界金融危機による影響等を踏ま え、平成20年以降、賃金、物価、家計消費等がいずれも下落する経済情勢にあったにもかかわらず、生活扶助基準の減額改定はされなかった。そのため、生活保護受給世帯の基準額が相対的に高い状態にあり、基準額を減額して不均衡を是正すべき状況になっていたが、平成25年検証では、展開部分の検証がされたものの、水準の検証がされなかった。そこで、厚生労働大臣 は、生活扶助基準の適正化を図ることとし、信頼性、客観性の高い総務省C PIのデータのうち、生活扶助に相当する品目のデータを用い、平成20年以降の不均衡の是正という観点から同年を始期、平成25年改定当時の総務省CPIの最新データであった平成23年を終期として、総務省CPIのウエイトのより新しいデータとして利用可能な平成22年のウエイトを用いる判断をすることにした。その結果、生活扶助による支出が想定される品目 の物価変動率がマイナス4.78%と算出され、一般国民との不均衡是正のため、その変動を生活扶助基準に反映させることとした(激変緩和措置については後述)。 このような経緯で、厚生労働大臣はデフレ調整による生活扶助基準の水準の適正化を図ったのであって、その判断過程は合理的であり、論理の飛躍や せることとした(激変緩和措置については後述)。 このような経緯で、厚生労働大臣はデフレ調整による生活扶助基準の水準の適正化を図ったのであって、その判断過程は合理的であり、論理の飛躍や 欠落等はない。 イ原告らの主張に理由がないこと 原告らは、比較年度の選択が不合理であると主張するが、その選択が合理的なものであったことは上記アのとおりである。 原告らは、生活扶助相当CPIの算出が国際規準から逸脱していると主 張する。 しかし、基準年の選択については、確かに、基準時となる価格参照時点が比較時より過去となる算定がされる例が多いものの、相対的な価格変化を見ようとするのである以上、基準時は任意の時点に置くことができるというべきであり、国際労働機関等が編纂する消費者物価指数マニュアルな ど、消費者物価指数の計算において広く用いられるロウ指数の考え方においても、比較する期間のいずれの時点をウエイト参照時点とするかが一義的に定められていない。そして、基準時と比較時の間にウエイトを置く中間年ロウ指数も、基準時の置き方を変えて二つの指数に分解して表現したロウ指数として許容された、妥当な算式であるから、厚生労働大臣が平成 22年を基準時として平成20年の生活扶助相当CPIを算出したこと が国際規準に反していて許されないということはできない。 また、同大臣は、平成22年を基準時であるウエイト参照時点として、平成22年と平成20年とを同じ品目数(平成20年の485品目)として平成20年の生活扶助相当CPIを算出し、平成22年と平成23年とを同じ品目数(平成23年の517品目)として平成23年の生活扶助相 当CPIを算出しているから、基準時に品目を固定するマーケ て平成20年の生活扶助相当CPIを算出し、平成22年と平成23年とを同じ品目数(平成23年の517品目)として平成23年の生活扶助相 当CPIを算出しているから、基準時に品目を固定するマーケットバスケット方式によっている。確かに、平成20年と平成23年とで品目数は異なるが、指数の対象となる品目数が消費生活の内容に応じて変化し、適宜見直しがされることは自明であって、品目数が違う点を捉えて算出が不当であることにはならないし、欠価格品目についても他の品目の物価の動き と同様であったと仮定して同じ買い物かごを比較する計算をするべきところ、同大臣も同様の算出をしている。 原告らは、厚生労働大臣が不適切なデータの選択等をし、実態に反した生活扶助相当CPIを算出したと主張する。 しかし、まず、総務省CPIには、生活扶助による支出が想定されない 品目が含まれているから、これを除いた品目によるデータをもって生活扶助相当CPIを算出することは合理的である。また、ウエイトが家計の消費支出全体に占める支出の割合であることからすれば、特定の品目を除外した場合に残りの品目のウエイトが相対的に増加し、その結果、除外された品目に係る下落率と除外されなかった品目に係る下落率の相違に起因 する算定結果の相違が生じても、その算定方法の合理性は否定されない。 そして、生活保護受給世帯の消費実態を反映させた生活扶助相当CPIの計算をするときに、品目ごとに最低限の生活として必要な物品や数量を判断するのは、個人の嗜好や事情が千差万別で、個人差が大きく、定量化が極めて困難であることや、かかる判断をしようとすると、恣意的な抽出 となり、デフレ調整の目的に反するおそれがあることからすれば、厚生労 働大臣が 千差万別で、個人差が大きく、定量化が極めて困難であることや、かかる判断をしようとすると、恣意的な抽出 となり、デフレ調整の目的に反するおそれがあることからすれば、厚生労 働大臣が、全国の世帯の平均的な消費構造を参照した判断をしたことは合理的である。 原告らは、社会保障生計調査を用いるべきであったと主張するが、同調査は、サンプル数が必ずしも多くなく、調査世帯の選定に地域等による偏りがある可能性があること、同調査は、詳細な品目ごとのウエイトの把握 を目的としたものでないこと、そもそも生活扶助基準は、従前、水準均衡方式によって、一般国民の消費を表す家計調査のデータを用いて検討されていたことからすれば、同調査を用いなければならなかったといえる理由がない。 したがって、同大臣が不適切なデータの選択等をした事実はなく、その 判断に過誤や欠落があったということはできない。 ⑶ 争点⑴ウ(ゆがみ調整をしたこと)についてアゆがみ調整をした判断過程の合理性生活扶助基準は、前提事実⑴のとおり、標準世帯の最低生活費の「水準」の設定をした上で、これを踏まえて他の年齢階層や世帯人員に応じた調整や、 級地に応じた調整をするという「展開」に係る算定をして定められるから、適正な生活扶助基準を設定するためには、上記の「水準」と「展開」のいずれもが適正でなければならない。 基準部会は、本件保護基準改定に先立ち平成19年に行われた検証において、生活扶助基準の体系に関する評価・検証は、世帯構成等が異なる生活保 護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で必要な見直しを行うべきとした上で、年齢別には、60歳代を基準として 世帯構成等が異なる生活保 護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で必要な見直しを行うべきとした上で、年齢別には、60歳代を基準としてみると、生活扶助基準額が20歳から59歳が相対的にやや低めであり、70歳以上がやや高めであること、世帯人員が4名以上の多人数世帯に有利で、世帯人員が少ない世帯に不利であること、 このように一般低所得世帯の消費実態の反映に問題はあるが、社会経済情勢 等を踏まえ、見直しはしないことを検証結果としていた。その上で、平成25年検証では、世帯構成が異なる生活保護受給者間の公平が図られているかを確認するため、上記の「展開」に関する指数について検証することとし、平成21年全国消費実態調査のデータを基に、一般低所得世帯である第1・十分位の生活扶助相当支出額を指数化し、仮に第1・十分位のサンプル世帯 が全て生活保護を受給した場合の生活扶助基準額の平均と、当該サンプル世帯の実際の生活扶助相当消費支出の平均とが同額となるようにした上で、年齢、世帯人員及び級地の違いが、生活扶助基準の水準にどのように影響しているのかを評価した。その結果、第1類費(食費、被服費等)について、生活扶助基準額による指数と消費実態による指数との間に、年齢階級間の指数 にかい離があること、第1類費と第2類費(光熱費、家具什器費等)について、両指数には、世帯人員が増えるにつれてかい離が拡大する傾向があることなどが確認されるとの結果が導かれた。 そこで、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果を踏まえたゆがみ調整をすることとした。その上で、検証結果をそのまま反映させた場合は、子供が いる世帯への影響が大きくなることが見込まれたことから、反映の比率を2分の1 、平成25年検証の結果を踏まえたゆがみ調整をすることとした。その上で、検証結果をそのまま反映させた場合は、子供が いる世帯への影響が大きくなることが見込まれたことから、反映の比率を2分の1とする(2分の1処理)内容のゆがみ調整を行ったのであり、同大臣がした判断過程は合理的である。 イ原告らの主張に理由がないこと 原告らは、ゆがみ調整に際し、第1・十分位の世帯を比較対象としたこ とが不合理である旨主張する。 しかし、基準部会は、平成25年検証において、一般低所得世帯の消費構造を手掛かりとして、それを生活扶助基準の展開部分に反映させることによって、世帯構成等が異なる生活保護受給者間の実質的な給付水準の均衡を図ろうとしたのであって、かかる検証の目的からすれば、生活保護受 給世帯と消費構造が近い第1・十分位の世帯を比較対象としたことは、そ れ自体合理的である。 原告らは、2分の1処理をしたことが不合理である旨主張する。 この点、平成25年検証の結果を前提に、増額となる部分については検証結果どおりとし、減額となる部分についてだけ2分の1とする処理をすることはあり得ようが、そもそも平成25年検証や、それに基づくゆがみ 調整が、生活保護受給世帯間の公平を図る観点から行われているものであることからすると、かかる処理をすることは、かえってゆがみ調整の本質部分を改変することになり不相当である。また、当時、生活扶助基準の展開部分についてさらなる検証が予定されていたという事情があった。厚生労働大臣は、これらの事情を踏まえて、平成25年検証の結果を前提に、 2分の1処理をすることにしたのであり、かかる厚生労働大臣の判断に裁量の逸脱や濫用があったとはいえない。 情があった。厚生労働大臣は、これらの事情を踏まえて、平成25年検証の結果を前提に、 2分の1処理をすることにしたのであり、かかる厚生労働大臣の判断に裁量の逸脱や濫用があったとはいえない。 ⑷ 争点⑴エ(ゆがみ調整とデフレ調整を併せてしたこと)についてデフレ調整は生活扶助基準の水準の設定を適正にするものであり、ゆがみ調整はすでに水準が定まっていることを前提に、当該水準の展開を適正にするた めのものであるから、デフレ調整とゆがみ調整による見直しの重複はないし、デフレ調整がゆがみ調整を無意味にするという関係もない。むしろデフレ調整とゆがみ調整を併せて行うことによって生活扶助基準を適正にすることが可能になるものであるから、これらを併せて行うことは不合理でない。 ⑸ 争点⑴オ(本件保護基準改定に至る手続の不備や動機の不正)について ア手続の不備について原告らは、前記4⑸アのとおり、厚生労働大臣が基準部会への付議をしないままデフレ調整と2分の1処理をしたことが許されない旨主張する。 しかし、そもそも保護基準の改定において、基準部会等の専門家の意見を聴くことは法令上求められていない。基準部会等の役割は、生活扶助基準と 一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかなどにつき定 期的な検証を行うものであって、その検証結果を踏まえた保護基準の改定は、厚生労働大臣の政策判断に委ねられている。したがって、基準部会の検討等を経ていないことをもって、本件保護基準改定が違法となるものではない。 基準部会自体が、平成25年報告書において、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、 その上で他に合理的な説 なるものではない。 基準部会自体が、平成25年報告書において、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、 その上で他に合理的な説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」と意見を示していることからしても、厚生労働大臣が、平成25年検証の結果を踏まえた上で、他の合理的な事情を踏まえた総合的な判断をすることに問題はなく、本件保護基準改定に手続違反があったとはいえない。 イ動機の不正について原告らは、前記4⑸イのとおり、厚生労働大臣が政権与党の選挙公約を実現させようとする政治的意図に基づき、必要な調査検討をせずに本件保護基準改定をしたものである旨主張する。 しかし、同大臣がしたデフレ調整とゆがみ調整が合理的な理由に基づくも のであったことは、上記⑵及び⑶で主張したとおりであるし、そもそも平成19年報告書の当時から、生活扶助基準の見直しが必要であるとされながら、原油価格の高騰や世界金融危機の影響等を考慮して、その見直しが見送られていたにすぎなかった。同大臣は、生活扶助基準の見直しが、基準部会等の検討を踏まえたものであって、政権与党の選挙公約に盲従するものでないこ とを明らかにしているし、現に、本件保護基準改定における生活扶助基準の見直しは、当該選挙公約とは異なり、3年間で生活保護費全体の2.3%を削減するというものに止まっている。 このように、本件保護基準改定が、不正な動機に基づくものという事実は存在しない。 6 争点⑵(本件保護基準改定は国賠法上違法か)について ⑴ 原告らの主張争点⑴で主張したとおり、本件各告示に基づく本件 に基づくものという事実は存在しない。 6 争点⑵(本件保護基準改定は国賠法上違法か)について ⑴ 原告らの主張争点⑴で主張したとおり、本件各告示に基づく本件保護基準改定は、厚生労働大臣が、その裁量権を逸脱又は濫用して行った違法なものであり、本件生活保護基準改定に基づいて処分行政庁が行った本件各決定も違法である。 厚生労働大臣には、争点⑴で主張したように、適切な保護基準の策定のため、 生活保護受給者の実情を正確に把握するとともに、それ以外の事情を考慮してはならず、かつ、専門的知見との整合性を含めた合理的な判断を、裁量権を逸脱ないし濫用することなく行うべき注意義務があったが、同大臣はこれを怠り、本件保護基準改定を行う旨の本件各告示を発出した。 同大臣がした本件保護基準改定は、国賠法1条1項の適用上違法というべき である。 ⑵ 被告らの主張争点⑴で主張したとおり、厚生労働大臣がした本件保護基準改定は、合理的な理由に基づくものであり、その判断に裁量権の逸脱又はその濫用などの違法はない。 第3 当裁判所の判断 1 前記前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 ⑴ 本件保護基準改定に至る経緯等ア生活扶助基準の改定方式について 生活扶助基準の改定の方法については、憲法が公布された昭和21年以降、昭和58年にかけて、標準生計費方式(経済安定本部が定めた世帯人員別の標準生計費を基に算出する方法)、マーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な個々の品目を積み上げて最低生活費を算出する方法)、エンゲル方式(栄養所要量を満たし得る食品に係るエンゲル係 数の理論値から逆算して算出する方法 ットバスケット方式(最低生活を営むために必要な個々の品目を積み上げて最低生活費を算出する方法)、エンゲル方式(栄養所要量を満たし得る食品に係るエンゲル係 数の理論値から逆算して算出する方法)、格差縮小方式(一般国民の消費 水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方法)が順次採用されてきた。(甲3、乙6、7の2) 中央福祉社会審議会は、昭和58年12月23日、「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(以下「昭和58年意見具申」という。) を発表した。昭和58年意見具申では、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであるとした上で、昭和58年意見具申当時の生活扶助基準は、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達している一方、国民の生活水準は今後も向上することが見込まれるので、生活保護世帯及び低所 得者の生活実態を常時把握し、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要があること、生活扶助基準の改定に当たっては、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費水準との調整がはかられるよう適切な措置をとることが必要であること、当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、 政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当であることとの意見を述べる一方、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは参考資料にとどめるべきであるとした。 (乙8) 昭和58年意見具申において、当時、生活扶助基準が一般国民の消費実 態との均衡上ほぼ妥当であると評価されたことを踏まえ 、その伸びは参考資料にとどめるべきであるとした。 (乙8) 昭和58年意見具申において、当時、生活扶助基準が一般国民の消費実 態との均衡上ほぼ妥当であると評価されたことを踏まえ、昭和59年4月以降、生活扶助基準の改定は、一般国民生活における消費水準との比較において相対的に均衡を図るという観点から、当該年度に想定される一般国民の消費動向(民間最終消費支出)を、前年度までの一般国民の消費実績を踏まえつつ評価し、その動向を指標として一般国民の生活水準との均衡 を図ろうとする水準均衡方式が導入された。もっとも、民間最終消費支出 の予測は、あくまで予測である以上、実態との間にかい離が生じる場合があるし、消費は下落しているが賃金や物価が上昇している場合や、その逆の場合があるように、民間最終消費支出のみで把握できない事情もあることから、実際にされた生活扶助基準の改定率は、民間最終消費支出の変動と一致するものではなかった。(甲3、8、乙6、59) イ本件保護基準改定に先立つ検証の経緯 昭和61年頃以降のいわゆるバブル景気と、その後のいわゆるバブル崩壊に伴う景気の低迷を経た平成15年、厚生労働省の審議会である社会保障審議会では、生活保護制度の在り方を検討する必要性が指摘されることとなり、生活保護制度全般についての検討を目的とする専門委員会が、社 会保障審議会の福祉部会に設置された。 そして、専門委員会は、同年12月に中間取りまとめを公表したところ、そこでは、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであり、具体的には、第1・十分位の世帯の消費水準に着目することが適当であるとして、 第1・十分位の消費 すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであり、具体的には、第1・十分位の世帯の消費水準に着目することが適当であるとして、 第1・十分位の消費水準と生活扶助基準額との比較が行われた。また、上記中間取りまとめでは、生活扶助基準の改定の在り方は、例えば5年間に一度のように、一定の頻度で生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要であること、定期的な検証を行うまでの毎年の改定は、民間最終消費支出の見通しと実績に相違があり、実績の確定が遅くなる点を 踏まえると、分かりやすい指標として、年金の改定と同じように消費者物価指数の利用が考えられることなどが示された。(乙12、13) 専門委員会は、平成16年12月、生活保護制度の在り方について報告書を取りまとめ、公表した。 同報告書では、水準均衡方式を前提とする手法により、勤労3人世帯の 生活扶助基準を、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価し たところ、その水準は基本的に妥当であったこと、しかし、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要があること、その検証は、地域別、世帯類型別等に分けるとともに、調査方法及び評価手法について専門家の知見を踏まえること が妥当であること、生活扶助基準は、世帯人員数分を単純に足し上げて算定される第1類費と、スケールメリットを考慮し、世帯人員数に応じて設定されている第2類費とを合算する仕組みであるため、多人数になるほど生活扶助基準額が割高になるなど、世帯人員別にみたときに、一般低所得世帯の消費実態を反映していない面があること、そこ 員数に応じて設定されている第2類費とを合算する仕組みであるため、多人数になるほど生活扶助基準額が割高になるなど、世帯人員別にみたときに、一般低所得世帯の消費実態を反映していない面があること、そこで、第2類費の構成 割合や多人数世帯の換算率に関する見直しをする必要があることなどが報告された。(乙4) 生活扶助基準は、平成17年度から平成19年度まで、民間最終消費支出の伸び率を基礎として、一般国民の消費水準との調整を行った結果、据え置かれた。(乙61ないし63) 平成19年、生活扶助基準について専門的な分析と検討を行うため、学識経験者等によって構成される、生活扶助基準に関する検討会が設置され、同年11月、同検討会は報告書を取りまとめた。 同報告書では、生活扶助基準の水準は、勤労3人世帯において、第1・十分位におけるそれらの世帯の生活扶助基準相当支出額よりやや高め(約 1.1%)であること、60歳以上の単身世帯において、第1・十分位におけるそれらの世帯の生活扶助相当支出額より高い(約13.3%)こと、従前、生活扶助基準額について、第1・十分位の消費水準と比較するのが適当とされているところ、第1・十分位の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していて、必需的な消費品目の購入頻度も 平均的な世帯と比較して概ね遜色ない状況にあるので、これを変更する理 由はないことが指摘された。また、世帯人員別にみると、4人以上の多人数世帯に有利で、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態があること、年齢別にみると、60歳台の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額をそれぞれ1としたときの比率が、20~30歳及び40~59歳で相対的にやや低めである一方、70歳以上で相対 なっている実態があること、年齢別にみると、60歳台の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額をそれぞれ1としたときの比率が、20~30歳及び40~59歳で相対的にやや低めである一方、70歳以上で相対的にやや高めであること、地 域別にみると、現行(当時)の級地制度における地域差を設定した昭和59年の消費実態と直近の消費実態を比較した場合の地域差は縮小している傾向があることなどが指摘された。(乙5、14) 上記のような検討会の報告がされたことを踏まえ、厚生労働大臣は、生活扶助基準の見直しについて検討した。しかし、平成19年に、原油価 格の著しい高騰が発生し、平成20年に、世界的な金融危機(いわゆるリーマンショック)が発生するなど、日本経済は極めて不安定な状況に陥り、完全失業率が急激に増加し、生活保護受給者が急激に増加する一方、賃金、物価及び家計消費は継続的に下落するデフレ状況となるなど、様々な影響が表れるに至った。具体的には、総務省CPIの上昇率は、前年比で、平 成17年がマイナス0.3%、平成18年が0.3%、平成19年が0. 0%、平成20年が1.4%、平成21年がマイナス1.4%、平成22年がマイナス0.7%、平成23年がマイナス0.3%、平成24年が0. 0%と推移した。一般勤労世帯の賃金は、前年比で、平成17年が0.6%、平成18年が0.3%、平成19年がマイナス1.0%、平成20年がマ イナス0.3%、平成21年がマイナス3.9%、平成22年が0.5%、平成23年がマイナス0.2%、平成24年がマイナス0.7%と推移した。全国勤労者世帯家計収支のうち家計消費支出は、前年比で、平成17年がマイナス0.6%、平成18年がマイナス2.8%、平成19年が1. 0%、平成20年が0.5%、平成21年がマイ 0.7%と推移した。全国勤労者世帯家計収支のうち家計消費支出は、前年比で、平成17年がマイナス0.6%、平成18年がマイナス2.8%、平成19年が1. 0%、平成20年が0.5%、平成21年がマイナス1.8%、平成22 年がマイナス0.2%、平成23年がマイナス3.0%、平成24年が1. 6%と推移した。すなわち、平成20年以降は、賃金、物価及び家計消費がいずれも下落していく傾向が生じていた。しかし、同大臣は、これらの事情が社会に与える影響を見極める必要があると判断して直ちに見直しをすることをせず、結果的に、平成24年度まで生活扶助基準は据え置かれることとなった。(甲3、9、乙6、11、64ないし68) ウ基準部会の設置と検証上記イのような状況にあった平成23年2月、学識経験者による定期的な保護基準の専門的かつ客観的な評価、検証を行うことを目的として、社会保障審議会に常設部会として生活保護基準部会(基準部会)が設置された。(甲70、乙21) 基準部会は、上記イのように、平成16年と平成19年に、生活扶助基準のいわゆる展開部分について不均衡がある旨指摘されていたことを踏まえ、平成21年の全国消費実態調査のデータを用いて、年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活扶助基準額と一般低所得者世帯の消費実態のかい離を分析し、様々な世帯構成に展開する指数について検証を行うこととし た。(甲3、70、乙6、21)まず、基準部会は、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であり、第1・十分位の平均消費水準が、中位所得階層の約6割に達し、必需的な耐久消費財の普及状況が、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されていて、第1・十分位と第2・十分位と の間に消費の大 あり、第1・十分位の平均消費水準が、中位所得階層の約6割に達し、必需的な耐久消費財の普及状況が、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されていて、第1・十分位と第2・十分位と の間に消費の大きな変化があることなどの諸事情を考慮して、対比する一般低所得世帯を第1・十分位層とした。また、第1・十分位層には、生活保護受給世帯が含まれるところ、前記のように、生活扶助基準のいわゆる展開部分における不均衡を検証しようとする点に目的があることを踏まえ、年齢、世帯人員及び級地の違いが検証結果に反映されるようにするた め、平成21年の全国消費実態調査のデータを基に第1・十分位の生活扶 助相当支出額を指数化し、仮に、第1・十分位のサンプル世帯の全てが生活保護を受給した場合の生活扶助基準額の平均と、当該サンプル世帯の実際の生活扶助相当消費支出の平均が同額となるようにした上で比較をする手法が採られた。 その上で、基準部会は、年齢階級別に設定されている生活扶助基準の第 1類費につき、異なる年齢階級間の比率(指数)が、消費実態を比べてどれほどのかい離があるかの検証をするため、年齢階級ごとの一人当たりの消費の推計値を算出して60代を1とした指数にし、各年齢階級の第1類費基準額の指数を比較した。その際、様々な年代の世帯人員からなる世帯の消費のデータから年齢階級別の世帯員一人当たりの消費額を算出する 回帰分析を用いた検証がされた。また、スケールメリットが最大に働く場合として世帯の年間収入を基に第1・十分位を設定したデータ(データ①)と、②スケールメリットが最小に働く場合として、世帯の年間収入を世帯人員数で除した世帯一人当たりの年間収入を基に第1・十分位を設定したデータ(データ②)という二通りのデータを設定し、それぞれのデ )と、②スケールメリットが最小に働く場合として、世帯の年間収入を世帯人員数で除した世帯一人当たりの年間収入を基に第1・十分位を設定したデータ(データ②)という二通りのデータを設定し、それぞれのデータを 用いて行った指数の平均値を用いた判断がされた。 次に、基準部会は、世帯人員体系について検証するため、世帯人員ごとに世帯の消費の平均値(第1類費相当支出、第2類費相当支出別)を算出して単身世帯を1とした指数にし、各世帯人員の基準額の指数を比較した。 その際、第1類費(食費や被服費等)の支出額は、年齢構成による影響が あると想定されることから、上記のようにして検証される年齢階級別の指数を踏まえ、実際の年齢構成に関わらず平均並みの消費がされる状態に補正をして、年齢構成による影響を除去する処理がされた。 そして、基準部会は、級地間格差について検証するため、各級地に居住する世帯の第1類費相当支出と第2類費相当支出の合計の生活扶助相当 支出の平均値を算出して全級地平均を1とした指数にし、各級地の基準額 の指数を比較した。その際、上記の各検証結果を踏まえ、年齢階級別の相違や世帯人員による相違による影響を除去する処理がされた。(以上について、甲3、乙6、37) 基準部会は、平成25年1月18日、「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(平成25年報告書)を公表した。 平成25年報告書では、まず、年齢階級別の生活扶助基準額(第1類費)の水準については、その指数と、第1・十分位の消費実態による指数とを比べると、各年齢階級間の指数にかい離があり、6歳から59歳までの間において、当時の生活扶助基準額よりも消費実態のほうが小さいと報告された。 また、世帯 消費実態による指数とを比べると、各年齢階級間の指数にかい離があり、6歳から59歳までの間において、当時の生活扶助基準額よりも消費実態のほうが小さいと報告された。 また、世帯人員別の生活扶助基準額(第1類費及び第2類費)の水準については、その指数と、第1・十分位の消費実態による指数とを比べると、世帯人員が増えるにつれてかい離が拡大する傾向があり、具体的には、単身世帯の消費実態を1としたときの各世帯人員別の指数の差が、第1類費については、単身世帯についてのみ、現行基準額より消費の実態を反映し た水準の方が上回っているものの、世帯人員が増すにつれて、消費の実態を反映した水準の方が現行基準額を下回っていること、第2類費については、単身世帯についてのみ、現行基準額より消費の実態を反映した水準の方が下回っているものの、世帯人員が増すにつれて、消費の実態を反映した水準の方が現行基準額を上回っていることが報告された。 そして、級地別の生活扶助基準額の水準については、その指数と、第1・十分位の消費実態による指数とを比べると、1級地の1や1級地の2などにおいて、現行基準額より消費の実態を反映した水準の方が下回っていることが報告された。 平成25年報告書は、これらの検証結果を報告するとともに、これらの 検証結果を生活扶助基準額に反映させた場合の各世帯に与える影響は、年 齢、世帯人数、居住地域の組み合わせによって様々であり、仮に、検証結果を完全に生活扶助基準額に反映させた場合の生活扶助基準額と、現行の生活扶助基準額を比較した結果を平均値で表すと、夫婦と18歳未満の子1人の世帯ではマイナス8.5%、夫婦と18歳未満の子2人の世帯ではマイナス14.2%、母親と18歳未満の子1人の世 準額と、現行の生活扶助基準額を比較した結果を平均値で表すと、夫婦と18歳未満の子1人の世帯ではマイナス8.5%、夫婦と18歳未満の子2人の世帯ではマイナス14.2%、母親と18歳未満の子1人の世帯(母子世帯)では マイナス5.2%、20歳から50歳代の単身世帯ではマイナス1.7%となる一方、60歳以上の単身世帯ではプラス4.5%、共に60歳以上の高齢夫婦世帯ではプラス1.6%となることが報告された。その上で、平成25年報告書は、留意事項として、一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要であり、特に、第1・十分位の者にとっては、 全所得階層における年間収入総額に占める構成割合にわずかな減少があっても、その影響が相対的に大きいこと、現実には、第1・十分位の階層には、保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれると想定されること、今後、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖 を防止する観点から、子供のいる世帯に対する影響に配慮する必要があることなどが指摘された。 ところで、平成25年報告書の公表に先立つ平成25年1月16日に開催された第12回基準部会では、厚生労働省社会・援護局保護課から示された報告書案に、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する 際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮した上で、他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい」との記載がされていることについて、委員から、基準部会においては、年齢、人員及び級地という3要素しか議論しておらず、消費者物価指数や賃金の動向について何も議論していないことを明確にするべきで あるなどの意見が ることについて、委員から、基準部会においては、年齢、人員及び級地という3要素しか議論しておらず、消費者物価指数や賃金の動向について何も議論していないことを明確にするべきで あるなどの意見が出された。そこで、平成25年報告書において、上記の 記載は、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」と修正されるに至った。(以上について、甲3、75、乙6、24) エ厚生労働大臣における検討 ところで、上記ウのように基準部会においていわゆる展開部分に関する指数についての検証が行われる一方で、前記イ及びのように、平成19年に行われた検証において、生活扶助基準の水準が、勤労3人世帯や60歳以上の単身世帯において、第1・十分位におけるそれらの世帯の生活 扶助相当支出額より高いと指摘されていながら、原油価格の著しい高騰や世界的な金融危機(いわゆるリーマンショック)などの発生を考慮して見直しがされないままとなり、生活扶助基準は据え置かれていた。また、上記の金融危機(リーマンショック)に端を発して、完全失業率が悪化し、一般勤労世帯の賃金、消費者物価及び家計消費支出が下落していった経緯 があったが(乙11、69、公知の事実)、生活扶助基準は据え置かれたままであった。そこで、厚生労働大臣は、生活扶助基準が据え置かれたままであることにより、一般国民の生活水準ないし消費実態との間に不均衡が生じ、かつ、その不均衡が拡大しているものと捉え、その是正を検討することとした。 厚生労働大臣は、上記のように生活保護受給世帯への生活扶助 活水準ないし消費実態との間に不均衡が生じ、かつ、その不均衡が拡大しているものと捉え、その是正を検討することとした。 厚生労働大臣は、上記のように生活保護受給世帯への生活扶助基準が据え置かれているのに、物価の下落(デフレ)があった場合には、生活保護受給世帯における可処分所得が増えることになるところ、その一方で、上記のように、一般国民の失業率が上がり、賃金が下落している状況があったことから、物価の下落が生活保護受給世帯に与えている影響を検証 することとした。前提事実⑵イのとおり、総務省CPIは、指数の対象 となる品目の価格指数に、家計の消費支出全体に占める支出額割合であるウエイトを乗じ、それを合計した上で、ウエイトの総数で除することで算出される。しかし、この中には、生活保護受給世帯における支出が通常想定されていない品目が含まれているため、厚生労働大臣は、総務省CPIの品目から、住宅扶助が存在する家賃、教育扶助が存在する授業料等、医 療扶助が存在する医療費等、申請があれば生活保護世帯の支払が免除されるNHK受信料、生活保護世帯において原則として保有が前提とされていない自動車関係費用などを除外した品目を対象(指数品目)とし、総務省CPIのウエイトをもって算出する生活扶助相当CPIを算出し、これを指数として用いることとした。(乙26ないし29) その上で、前提事実⑵イのように、総務省CPIは、新たな財及びサービスの出現や嗜好の変化などによる消費構造の変化を反映させるため、5年に1度、基準年(価格参照時点及び指数参照時点)が改定され、指数の対象となる品目とウエイトが見直されているところ(総務省CPI基準改定)、平成25年当時、直近に行われた総務省CPI基準改定は平成2 度、基準年(価格参照時点及び指数参照時点)が改定され、指数の対象となる品目とウエイトが見直されているところ(総務省CPI基準改定)、平成25年当時、直近に行われた総務省CPI基準改定は平成2 2年のものであった。 そこで、厚生労働大臣は、指数の対象となる品目を、平成20年時点の総務省CPIの算出における品目から生活保護受給世帯が支出することが想定されない品目を除外した485品目とし、ウエイトを、直近の平成22年に行われた総務省CPI基準改定のものとし、指数の対象となる品 目の価格指数は、ウエイト参照時点である平成22年の指数値を100とした場合の平成20年時点の価格指数として、平成20年の生活扶助相当CPIを算出した。なお、平成20年の生活扶助相当CPIを算出したのは、平成19年に行われた検証の後、平成20年以降の物価下落によって生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加し、一般国民との 不均衡が生じているものと判断したためであった。かかる前提の下、平成 20年の生活扶助相当CPIは104.5(=平成22年基準消費者物価指数の品目から一部を除外したもの〔485品目〕の平成20年時点の各価格指数×品目ごとの平成22年のウエイト)の合計÷平成22年のウエイトの総数=646627.9÷6189)と算出された。 また、厚生労働大臣は、平成23年の総務省CPIが平成24年1月に 公表されていたことから、これに基づき平成23年の生活扶助相当CPIを算出することとした。具体的には、平成20年の生活扶助相当CPIの算出と同様に、まず、指数の対象となる品目について、平成23年時点の総務省CPIの算出における品目から、生活保護受給世帯における支出が通常想定されていない品目を除外した51 年の生活扶助相当CPIの算出と同様に、まず、指数の対象となる品目について、平成23年時点の総務省CPIの算出における品目から、生活保護受給世帯における支出が通常想定されていない品目を除外した517品目とし(なお、総務省CP Iにおいて、基準改定に伴う品目の追加と廃止があったところ、当該517品目には、平成22年の総務省CPI基準改定の際に追加された32品目が含まれている。これらは平成20年の生活扶助相当CPIの算出では含まれていなかったものである。)、ウエイトを、直近の平成22年に行われた総務省CPI基準改定のものとし、指数の対象となる品目の価格指数 は、ウエイト参照時点である平成22年の指数値を100とした場合の平成23年時点の価格指数として、平成23年の生活扶助相当CPIを算出した。かかる前提の下、平成23年の生活扶助相当CPIは99.5(=平成22年基準消費者物価指数の品目から一部を除外したもの〔517品目〕の平成23年時点の各価格指数×品目ごとの平成22年のウエイト) の合計÷平成22年のウエイトの総数=635973.1÷6393)と算出された。 以上の結果、厚生労働大臣は、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIとを比較した変動率がマイナス4.78%(=(99.5-104.5)÷104.5×100)であると算出した。 (以上につき、甲9、乙26ないし29) オ物価指数についてところで、物価指数とは、ある基準となる時点の物価を100(または1)として、その時点から比較する時点までの物価の変動を指数値で示したものであり、代表的な指数として、以下のロウ指数、ラスパイレス指数、パーシェ指数などがある。(甲125、126、乙25、27、74) 点から比較する時点までの物価の変動を指数値で示したものであり、代表的な指数として、以下のロウ指数、ラスパイレス指数、パーシェ指数などがある。(甲125、126、乙25、27、74) ロウ指数ロウ指数とは、比較される時点間において、一般に「買い物かご」と言われるある一定量の数量を購入するために要する全費用の割合の変化として指数を定義することによって得られる物価指数である。価格をp、数量をq、品目をⅰ、品目の集合をⅠ、基準時点(物価算定の基準となる時 点であり、原則として、価格が指数計算の分母となる「価格参照時点」及び指数が100に設定される「指数参照時点」を指す。)を0、比較時点をt、ウエイト参照時点(当該指数計算に用いる品目のウエイトを参照する時点を指す。)をbとした場合、ロウ指数(P)は、以下のとおり定義される。なお、指数が価格参照時点より後に計算されるのであれば、ウエイト 参照時点は、価格参照時点と比較時点の間のどの時点でも良いとされている。また、後述のラスパイレス指数とパーシェ指数は、どの時点のウエイトをもって算出するかの相違であり、いずれもロウ指数の定義式で表すことができるとされている。 Σi∈IPitqib P=Σi∈IPi0qibラスパイレス指数ラスパイレス指数は、基準時点(期首)のウエイトを使用することで求められる指数であり、総務省CPIが用いている指数である。 ラスパイレス指数による場合、比較時点における数量の情報を調査する 必要がないため、速報性に優れているとされるが、他方、基準時点を期首にすることに起因して、その後の消費構造の変化による影響が考慮されず、物価上昇率 、比較時点における数量の情報を調査する 必要がないため、速報性に優れているとされるが、他方、基準時点を期首にすることに起因して、その後の消費構造の変化による影響が考慮されず、物価上昇率を過大に評価する上方バイアスがあるとされている。 厚生労働大臣が、上記エのように算出した生活扶助相当CPIのうち、平成23年の生活扶助相当CPIは、ラスパイレス指数と一致する算出で あったといえる。 パーシェ指数パーシェ指数は、比較時点(期末)のウエイトを使用することで求められる指数である。 パーシェ指数による場合、当該期間に生じた経済の変化に応じて常に最 新のウエイトを反映されることができる点で優れているとされるが、他方、大量にある対象品目の比較時点(期末)のウエイトを調査しなければ算出することができないため、調査コストが大きく、速報性に欠けることや、物価下落率を過大に評価する下方バイアスがあるとされている。 厚生労働大臣が、上記エのように算出した生活扶助相当CPIのうち、 平成20年の生活扶助相当CPIは、パーシェ指数と一致する算出であったといえる。 ⑵ 本件保護基準改定の実施以上の検討を経て、厚生労働大臣は、本件保護基準改定を行うこととしたところ、その概要は、前提事実⑵で摘示したとおりであって、生活扶助基準の水 準について、平成19年報告書において高いとの指摘がされていながら生活扶助基準が据え置かれていて、生活扶助相当CPIを用いた検証をすると上記⑴エのとおり平成20年以降マイナス4.78%の物価下落があり、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したと評価できる状況にあることから、これを生活扶助基準に反映させる改定をし(デフレ調整)、基準部会による平成 25年検証の結 8%の物価下落があり、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したと評価できる状況にあることから、これを生活扶助基準に反映させる改定をし(デフレ調整)、基準部会による平成 25年検証の結果に基づき、生活保護受給世帯間の公平を図るため、年齢階級 別、世帯人員別及び級地別の区分ごとに改定率を算出して乗じることとし(ゆがみ調整)、これらの調整をそのまま全て行うと影響が大きくなり過ぎることから、ゆがみ調整における平成25年検証の結果の反映比率を、増額分と減額分のいずれについても2分の1とし(2分の1処理)、かつ、現行の生活扶助基準から生じる増減額の幅が10%を超えないようにし、さらに、生活扶助基準 の引下げについては、平成25年度から、3年間にわたって段階的に実施するという激変緩和措置を講じるという内容である。なお、厚生労働大臣は、上記の激変緩和措置を講じることやその内容について、基準部会等に対する諮問は特段行っていない。 厚生労働大臣は、平成25年5月16日付け(平成25年改定)、平成26 年3月31日付け(平成26年改定)及び平成27年3月31日付け(平成27年改定)の各告示をもって、本件保護基準改定を実施した。(以上について争いがない)⑶ 本件各決定等第1事件原告らは、平成25年改定を理由とする平成25年決定を受け、 それぞれその受給額が相当額減額となった。 また、第2事件原告らは、平成27年改定を理由とする平成27年決定を受け、それぞれその受給額が相当額減額となった。 2 争点⑴(本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に、裁量権の逸脱濫用があるか)について ⑴ 争点⑴ア(裁量権の範囲、審査方法等の判断枠組み)についてア生活保護法3条によれ 2 争点⑴(本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に、裁量権の逸脱濫用があるか)について ⑴ 争点⑴ア(裁量権の範囲、審査方法等の判断枠組み)についてア生活保護法3条によれば、同法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ、同法8条2項によれば、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度 の生活の需要を満たすに十分なものでなければならないし、かつ、これを超 えないものでなければならないとされている。また、これらの規定における最低限度の生活とされるものは、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件や、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基 づいた政策的判断を必要とするものである(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁参照)。 したがって、保護基準のうち生活扶助基準の改定を行う場合、このような改定を行う必要性について、いつ、どのようにしてその判断をするかといったことや、改定後の生活扶助基準の内容をもって健康で文化的な生活水準を 維持することができるかをどのように認定評価をして判断するかということについて、厚生労働大臣には、上記のような専門技術的かつ政策的見地からの裁量権があると認められる。 また、生活扶助基準が改定され、とりわけ支給額が減額されることになると、改定前の受給額を前提に生活設計を立てていた被保護者に関しては多大 な影響 からの裁量権があると認められる。 また、生活扶助基準が改定され、とりわけ支給額が減額されることになると、改定前の受給額を前提に生活設計を立てていた被保護者に関しては多大 な影響が生じる場合があるといわざるを得ないところ、厚生労働大臣においては、生活扶助基準を改定するに当たり、改定の必要性を踏まえつつ、その改定を行う時期を含む具体的な方法について、上記と同様の専門技術的かつ政策的見地からの裁量権があると認められる。 イ以上によれば、本件保護基準改定については、デフレ調整やゆがみ調整に よる生活扶助基準の減額改定につき厚生労働大臣がした判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無という観点からみて裁量権の逸脱濫用があったかが、また、激変緩和措置につき同大臣がした判断に、被保護者の生活への影響等の観点からみて裁量権の逸脱濫用があったかがそれぞれ審査されるべきものと解される(最高裁平成22年 (行ツ)第392号、同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法 廷判決・民集66巻3号1240頁、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。 ウこれに対し、原告らは、前記第2の4⑴のように、厚生労働大臣が有する裁量権は限定的なものであり、生活扶助基準の引下げは、原則として許されず、具体的な必要性と相当性の主張立証がされない限り、裁量権の逸脱濫用 に当たる旨主張する。 しかし、憲法25条等が定める健康で文化的な最低限度の生活という概念が、抽象的かつ相対的なものであって、具体的な内容が、その時々における経済的・社会的条件や、一般的な国民生活の状況等との相関関係で判断決定されるべきものである 健康で文化的な最低限度の生活という概念が、抽象的かつ相対的なものであって、具体的な内容が、その時々における経済的・社会的条件や、一般的な国民生活の状況等との相関関係で判断決定されるべきものであることからすると、原告らが主張するように、憲法25 条等が、生活扶助基準の引下げを原則として許していないなどと解することはできない。そもそも、憲法や生活保護法等の規定において、生活扶助基準の改定について、いつ、どのようにしてその判断をするかや、上記の最低限度の生活についてどのように認定評価をして判断するかについて、厚生労働大臣が行う検討のあり方を制約する具体的な基準が定められているもので もない。 原告らは、社会権規約や一般的意見を根拠として、生活扶助基準の引下げが原則として許されないとの主張もする。 しかし、社会権規約9条は、締約国において、社会保障に関する権利が国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し、国が前記の 権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって、個人に対し、即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。このことは、社会権規約2条1項が締約国において、「立法措置その他すべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」ことを求めていることからも明 らかである。したがって、社会権規約9条により生活扶助基準の改定におけ る厚生労働大臣の裁量権が制約されるということはできない(最高裁昭和60年(行ツ)第92号平成元年3月2日第一小法廷判決・裁判集民事156号271頁参照)。また、一般的意見が直ちに締約国を法的に拘束すると解すべき根拠もない。 したがって、上記ア 裁昭和60年(行ツ)第92号平成元年3月2日第一小法廷判決・裁判集民事156号271頁参照)。また、一般的意見が直ちに締約国を法的に拘束すると解すべき根拠もない。 したがって、上記ア及びイの説示に反する原告らの主張は、いずれも採用 することができない。 ⑵ 争点⑴イ(デフレ調整をしたこと)についてアデフレ調整を行う必要性についてまず、前記1⑴イのとおり、平成19年に、勤労3人世帯や単身高齢世帯における生活扶助基準が、第1・十分位における生活扶助相当支出額より高 めであると検討会から指摘されていながら、厚生労働大臣において、原油価格の著しい高騰や世界的な金融危機が発生し、その後の影響を見極めることを理由に見直しをしていなかったことや、そもそも保護基準が、最低限度の生活の需要を満たすのに必要にして十分なものでありつつ、過分なものであってはならないこと(生活保護法8条2項)からすると、平成25年時点で、 同大臣が、その見直しのための検討をしたことは、合理的な必要性に基づく正当なものであったと認められる。 イ平成20年を期首としたことについて原告らは、厚生労働大臣が平成20年度を期首とする検討をしたことが不合理にして恣意的な判断であり、裁量権の逸脱濫用を基礎付ける事情である 旨主張する。 しかし、そもそも平成19年報告書において、生活扶助基準の水準が高い旨の報告がされていたが、平成19年には、原油価格の高騰という特異な事情が発生したこと、かえって、平成20年以降、世界的な金融危機を契機として、賃金、物価及び家計消費が継続的に下落するデフレ状況になったこと は、前記1イで認定したとおりである。そうすると、厚生労働大臣が、平 成19年において 界的な金融危機を契機として、賃金、物価及び家計消費が継続的に下落するデフレ状況になったこと は、前記1イで認定したとおりである。そうすると、厚生労働大臣が、平 成19年においては、上記の報告に関わらず、原油価格の高騰に伴う影響を踏まえて生活扶助基準の見直しを見送る判断をしたものの、平成20年以降、その見直しをしなかった結果、継続的なデフレ状況の発生に伴って、一般国民の生活水準の変化に比べ、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加している状況にあると考え、その影響を検証するため、同年を期首とする検 討をすることにした判断には合理性があったといえるのであり、その判断が不合理にして恣意的なものであり、裁量権の逸脱濫用を基礎付けるものであると認めることはできない。 ウ平成22年をウエイト参照時点としたことについて原告らは、厚生労働大臣が平成22年をウエイト参照時点としたことが不 合理であり、国際規準に逸脱したものである旨主張する。 しかし、代表的な物価指数であるロウ指数において、ウエイト参照時点は、価格参照時点と比較時点の間のどの時点でも良いとされていることは、前記1⑴オで認定したとおりである。かえって、総務省CPIにおいて、5年に1度、品目とウエイト等の見直しがされていて(総務省CPI基準改定)、本 件保護基準改定の直近における改定が平成22年であったこと(前提事実⑵イ)、ウエイト参照地点から離れるほど現実の国民の消費構造と乖離し、各指数のバイアスによる影響も大きくなることを踏まえると、厚生労働大臣が、平成17年より直近の平成22年のウエイトを使用したことが不合理な判断であったと認めることはできない。 エ基準時点と比較時点における品目に相違があることにつ えると、厚生労働大臣が、平成17年より直近の平成22年のウエイトを使用したことが不合理な判断であったと認めることはできない。 エ基準時点と比較時点における品目に相違があることについて原告らは、マーケットバスケット方式による場合、基準時点と比較時点における品目は同一である必要があるし、そこに相違があるのであれば、廃止品目を排除するのではなく、換算をして接続させる処理をしなければならないところ、厚生労働大臣は、品目が異なるのに、適切な接続をせずに生活扶 助相当CPIを算出しているから、裁量権の逸脱濫用がある旨主張する。 しかし、まず、基準時点と比較時点において品目が同一であることが望ましいことは明らかであるものの、社会経済情勢の変化に伴って、一般的な消費財に変化が生じることは自明の事態である。国際労働機関における消費者物価指数マニュアルにおいては、一部の品目の価格が観察できない状況が生じることを前提にしてその処理方法が定められているし、総務省統計局にお ける消費者物価指数の解説においても、比較時の価格が欠落する場合は、その品目の指数とウエイトを除外して計算するとされている(乙27、75、77)。そうすると、基準時点と比較時点における品目に相違がある点を捉えて、厚生労働大臣がした算出が不当なものであるということはできない。 また、基準時点と比較時点における品目に相違がある場合に、当該品目の指 数とウエイトを除外して計算し得ることは上記のとおりであることや、総務省CPIでは、5年に1度、品目とウエイト等の見直しがされているため(総務省CPI基準改定。前提事実⑵イ)、その前後の指数の比較を可能にするため指数の接続がされているが、本件保護基準改定においては、同じ平成22年をウエ 度、品目とウエイト等の見直しがされているため(総務省CPI基準改定。前提事実⑵イ)、その前後の指数の比較を可能にするため指数の接続がされているが、本件保護基準改定においては、同じ平成22年をウエイト参照時点とする前提の下、一部の品目に相違があったにすぎ ず、追加された32品目に係る支出割合は、全体の約3%(204/6393)にすぎないと認められること(乙26、27、29、78)からすると、同大臣が、生活扶助相当CPIの算出に際して総務省CPI基準改定に倣った指数の接続をしなかったことが不当であり、裁量権の逸脱濫用を基礎付ける事情に当たるとまで認めることはできない。 オ生活扶助相当CPIがロウ指数であるかについて原告らは、厚生労働大臣が本件保護基準改定をする判断の前提とした平成20年と平成23年の各生活扶助相当CPIは、品目が異なっていて同じバスケットでの比較ではなく、適切な接続もされていないから、ロウ指数に当たらない旨主張する。 しかし、上記の各生活扶助相当CPIの算出において、品目に相違があり つつ指数の接続のないことが不当といえないことは上記エで認定説示したとおりである。また、ロウ指数において、ウエイト参照時点は、価格参照時点と比較時点の間のどの時点でも良いとされていることは、前記1⑴オで認定したとおりであるから、厚生労働大臣がしたように、ウエイト参照時点を比較する2時点の間に設定することは、ロウ指数の理論上許容されていると いえる。確かに、同大臣がした算定方法によると、平成23年の生活扶助相当CPIは、ラスパイレス指数と一致する算出となる一方、平成20年の生活扶助相当CPIは、パーシェ指数と一致する算出となるし、ラスパイレス指数とパーシェ指数には、それぞれ速報性と物価 年の生活扶助相当CPIは、ラスパイレス指数と一致する算出となる一方、平成20年の生活扶助相当CPIは、パーシェ指数と一致する算出となるし、ラスパイレス指数とパーシェ指数には、それぞれ速報性と物価上昇率の評価におけるバイアスの相違があるとされているのであるが(前記1⑴オ)、両者の違いが、ウ エイトとして使用する数値が期首のものか、期末のものかの相違であり、上記のように期中のものであっても、ロウ指数としての算出に変わりはないことや、総務省CPIではラスパイレス式が使用される一方で、内閣府のGDPデフレーターにおいてはパーシェ式が、貿易価格指数においては、ラスパイレス式とパーシェ式の各指数を幾何平均するフィッシャー式と呼ばれる 指数がそれぞれ利用されていると認められ(乙25)、そもそも物価指数の算出に明確な正誤が存在しないことからすると、同大臣がした生活扶助相当CPIの算出方法がロウ指数に当たらないとはいえないし、統計学的に誤っていると認めることもできない。 カ総務省がした家計調査の結果が用いられたことについて 原告らは、生活扶助相当CPIの算出に際し、社会保障生計調査ではなく、総務省がした家計調査の結果が用いられたことが不合理である旨主張する。 しかし、家計調査と社会保障生計調査は対象数や調査の精度が異なること(家計調査が、国民生活における家計収支の実態を把握し、国の経済政策・社会政策の立案のためのいわば基幹統計として総務省統計局が実施してい るものであり、全国の市町村を168のグループに分け、各グループから1 市町村ずつ抽出し、抽出された市町村から選定された約9000世帯を対象にして、個別品目ごとの支出額を明らかにする調査であって、総務省CPIの算定に用いられているもので 、各グループから1 市町村ずつ抽出し、抽出された市町村から選定された約9000世帯を対象にして、個別品目ごとの支出額を明らかにする調査であって、総務省CPIの算定に用いられているものであるのに対し、社会保障生計調査は、生活保護受給世帯の生活実態を明らかにし、生活保護制度の運営のための基礎資料を得ることを目的として厚生労働省が行っているものであるものの、生活保 護受給世帯を対象に、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市のうち1ないし3自治体を選定し、そこから1110世帯を抽出して、品目の種類ごとの支出額を明らかにする調査である。(以上につき、甲43、乙71ないし73))、そもそも、デフレ調整が、標準世帯が健康で文化的な最低限度の生活を送ることができるための最低生活費の水 準について、一般国民における生活水準と相対的に比較した推移を検証しようとしたものであったこと、総務省CPIの品目から、生活扶助以外の扶助で賄われる品目を除外するなどして生活扶助相当CPIを算出しようとした以上(前提事実⑵イ)、詳細な品目が確認できる家計調査が適していると解されることといった事情からすると、厚生労働大臣が、生活扶助相当CP Iの算出に際し、家計調査の結果を用いたことが不合理で、裁量権の逸脱濫用を基礎付ける事情に当たると認めることはできない。 キ指定品目の選定について原告らは、平成20年から平成22年にかけて、パソコン類やテレビについて物価下落をもたらす要因となる事情があったものの、生活保護受給世帯 はこれらの恩恵を相対的に受けないのであるから、厚生労働大臣がこれらの事情を考慮しなかったことが不当である旨主張する。 しかし、平成22年に行われた調査の結果によれば、社会の変化に 帯 はこれらの恩恵を相対的に受けないのであるから、厚生労働大臣がこれらの事情を考慮しなかったことが不当である旨主張する。 しかし、平成22年に行われた調査の結果によれば、社会の変化に合わせて、生活保護受給世帯においても、パソコンは約4割、ビデオレコーダーは約7割、カラーテレビは約10割の世帯に普及していると認められる(乙3 6)。パソコン類やテレビは、受給者の趣味嗜好等に応じて、その意思で購入 されるものであり、生活保護受給世帯において支出が想定されていない医療費等、NHK受信料、自動車関係費用などと性質を異にすることからすると、パソコン類やテレビについて指定品目の選定から除外しなかった厚生労働大臣の判断が不当で、裁量権の逸脱濫用を基礎付けるものであると認めることはできない。 ク原告らの生活実態に反しているとされることについて原告らは、物価下落によって本件保護基準改定が判断したようなマイナス4.78%もの恩恵があったという実態がない旨主張し、同旨の供述(陳述書における陳述を含む。以下同じ。)をする。 しかし、まず、原告らの主張中、生活扶助基準の水準に係る下落率がマイ ナス1.78%ないしマイナス2.26%に止まると試算する部分については、物価指数においてみたのと同様に、物価の変動の把握の仕方には様々な手法があるといわざるを得ないところ、それらの試算は、厚生労働大臣がした検証等とその前提自体を異にするものであるから、その試算結果をもって同大臣がした判断に過誤があると認めることはできない。また、原告らは、 要旨、生活全般に余裕がないこと、それ故、できるだけ安価なものを購入し、電気代や被服費を節約し、旅行に行かないなど、切り詰めた生活をしているが、なお余裕はなく、貯 できない。また、原告らは、 要旨、生活全般に余裕がないこと、それ故、できるだけ安価なものを購入し、電気代や被服費を節約し、旅行に行かないなど、切り詰めた生活をしているが、なお余裕はなく、貯蓄などできないこと、このような状況にあるため、保護費の減額は不当であるし、増額をしてほしいことなどを供述するのであるが、平成20年以降の物価下落(デフレ)による影響を、生活保護受給世 帯を含む国民全体が受けていながら、その反映がされていなかったのであれば、支給額の見直しがされることはやむを得ないことであるし、原告らの供述によっても、マイナス4.78%ではない生活扶助基準の下落率が具体的に認定できるものではないから、同供述をもって、前記の認定判断を左右させることはできない。 ケ小括 以上によれば、厚生労働大臣が、本件保護基準改定においてしたデフレ調整は、合理的な必要性に基づき、合理的な手法で行われたものと認められるのであって、その判断や内容に不合理な点があり、裁量権の逸脱ないし濫用があったと認めることはできない。 ⑶ 争点⑴ウ(ゆがみ調整をしたこと)について アゆがみ調整を行う必要性についてまず、前記1⑴ウのとおり、基準部会における平成25年検証の結果、生活扶助基準額が、各年齢階級、世帯人員、級地によって、消費の実態を反映した水準との間でかい離が生じている状況にあることが明らかになったこと、生活扶助基準が、標準世帯について定められた最低生活費の水準を基礎 に、年齢階層、世帯人員、級地に応じた調整(展開)をして定められるものであって、本来、これらの属性によって生活扶助基準の水準が変わるべきものではないこと、それ故、上記のようなかい離が生じているとすれば、不公平な生活扶 員、級地に応じた調整(展開)をして定められるものであって、本来、これらの属性によって生活扶助基準の水準が変わるべきものではないこと、それ故、上記のようなかい離が生じているとすれば、不公平な生活扶助がされているものとして改められるべきであることからすると、厚生労働大臣が、平成25年報告書を踏まえ、ゆがみ調整をする検討を したことは、合理的な必要性に基づく正当なものであったと認められる。 イ第1・十分位と比較したことについて原告らは、平成25年検証において、生活扶助基準と第1・十分位の消費水準との比較がされたことが不合理である旨主張する。 しかし、前記1⑴ウで認定したとおり、そもそも基準部会は、平成25年 検証において、標準世帯における生活扶助基準の水準が、年齢階層、世帯人員、級地に応じて調整(展開)される中で、実質的に不均衡が生じているのではないかという検証をしようとしたのであるから、その検証のための比較対象となる一般低所得世帯を最低限度の生活水準にある世帯として第1・十分位としたことは合理的な判断であったというべきである。また、かかる判 断の合理性は、平成15年から平成16年当時に行われた専門委員会におけ る検討においても同様の視点が示されていたこと、平成19年に行われた生活扶助基準に関する検討会における検討も同様であったこと(以上につき前記1⑴イ)、第1・十分位層と第2・十分位層とでは、消費動向に相違があること(同ウ)によっても裏付けられているといえる。 ウ第1・十分位に生活保護受給世帯が含まれていることについて 原告らは、第1・十分位層には生活保護受給世帯も含まれているし、漏給者もいるから、第1・十分位層との比較とすると、生活扶助基準が際限なく下がる不合 給世帯が含まれていることについて 原告らは、第1・十分位層には生活保護受給世帯も含まれているし、漏給者もいるから、第1・十分位層との比較とすると、生活扶助基準が際限なく下がる不合理が生じてしまう旨の主張もする。 しかし、平成25年検証は、あくまで標準世帯を前提に水準を定めた生活扶助基準を、年齢階級別、世帯人員別、級地別にみたときの各指数の分布と、 一般低所得世帯の消費実態による各指数の分布とのかい離を分析し、不公平な調整(展開)になっているか否かを検証しようとしたのであるから、第1・十分位に生活保護受給世帯が含まれているとしても、基準部会がした判断の合理性(上記イ)は変わらないというべきである。 エ 2分の1処理について 原告らは、2分の1処理は、平成25年検証による検証結果を恣意的に改め、本来、生活扶助費の増額を受けられた60歳以上の単身世帯等における増額を半減されるものであるから、不当である旨主張する。 しかし、まず基準部会は、前記1⑴ウで認定したとおり、平成25年報告書において、ゆがみ調整を行う必要性について報告するのと合わせて、その 平成25年検証の結果を生活扶助基準額に反映させた場合の影響は、年齢、世帯人数、居住地域の組み合わせによって様々であること、一般低所得世帯の消費実態についてはなお検証が必要であること、そもそも第1・十分位の者にとっての影響は相対的に大きいこと、それ故、生活扶助基準の見直しに際しては、既受給世帯や、とりわけ子の養育をしている家庭への影響に配慮 する必要があることを指摘しているのであって、平成25年検証の結果を即 時実現させるよう求めているのではない。また、そもそも最低限度の生活とされるものが抽象的かつ相対的な概念であって、 する必要があることを指摘しているのであって、平成25年検証の結果を即 時実現させるよう求めているのではない。また、そもそも最低限度の生活とされるものが抽象的かつ相対的な概念であって、その保護基準における具体化に当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであり、生活扶助基準の改定について、改定を行う時期を含めた具体的な方法について、厚生労働大臣に裁量権があることは前記2⑴で説 示したとおりである。そして、仮に、ゆがみ調整の実施において、生活扶助基準額が減額となる場合にだけ2分の1とし、これが増額となる場合は満額の増額とするとすれば、その判断は、生活保護受給世帯間の公平を図ろうとするゆがみ調整の趣旨に必ずしも添わないものになるといわざるを得ないことが指摘できる。なお、原告らは、引き下げ幅を最大10%とする激変緩 和措置が別途講じられているから、2分の1処理をする合理性がない旨の主張もする。しかし、厚生労働大臣が、平成25年報告書が指摘する影響を踏まえつつ、より慎重に、段階的にゆがみ調整の実現を行おうと判断したとしても、もともと同大臣に前記2⑴のような裁量権があることからすれば、その判断が、裁量権の逸脱や濫用を基礎付ける不合理なものであったと認める ことはできない。 オ小括以上によれば、厚生労働大臣が、本件保護基準改定においてしたゆがみ調整は、合理的な必要性に基づき、合理的な手法で行われたものと認められるのであって、その判断や内容に不合理な点があり、裁量権の逸脱ないし濫用 があったと認めることはできない。 ⑷ 争点⑴エ(ゆがみ調整とデフレ調整を併せてしたこと)について原告らは、ゆがみ調整とデフレ調整が併せて行われたことによって、物価変動の二重 用 があったと認めることはできない。 ⑷ 争点⑴エ(ゆがみ調整とデフレ調整を併せてしたこと)について原告らは、ゆがみ調整とデフレ調整が併せて行われたことによって、物価変動の二重評価がされていることになるし、デフレ調整がされると、平成25年検証の結果に基づくゆがみ調整が無意味になってしまう旨主張する。 しかし、ゆがみ調整が、標準世帯を前提とした生活扶助基準を年齢階級別、 世帯人員別、級地別に調整(展開)しようとする際の指数について検証した結果に基づき、その属性に伴う不均衡を解消しようとしたものであるのに対し、デフレ調整が、生活扶助基準の水準そのものを検証して見直そうとしたものであり、両者が性質及び内容を異にしていることは、前記1で認定したとおりであるし、それぞれの調整の手法に合理性があったと認められることは、争点⑴ イ及びウで認定説示したとおりである。したがって、これらの調整が併せてされることが原因となって、物価変動の二重評価がされたということはできないし、ゆがみ調整が無意味になったと認めることもできない。確かに、ゆがみ調整によって減額されることになる世帯において、デフレ調整による減額と合わせ、その生活に生じる影響が大きかったであろうことは容易に推認されるとこ ろである。しかし、そもそも、当該減額の影響を受ける世帯に対する生活扶助が、標準世帯における最低生活費として想定されている水準額や、標準世帯における生活扶助基準の水準と同程度の水準と比べ、より高い額ないし水準であったと判断されたのであれば、一定の減額自体やむを得ないといわざるを得ないし、厚生労働大臣が、激変緩和措置として、ゆがみ調整における2分の1処 理をするとともに、引き下げ幅を最大10%とする措置を講じていたことも考慮 、一定の減額自体やむを得ないといわざるを得ないし、厚生労働大臣が、激変緩和措置として、ゆがみ調整における2分の1処 理をするとともに、引き下げ幅を最大10%とする措置を講じていたことも考慮すると、ゆがみ調整とデフレ調整が同時にされたという点を捉えて、本件保護基準改定をした判断に裁量権の逸脱ないし濫用があったと認めることもできない。 ⑸ 争点⑴オ(本件保護基準改定に至る手続の不備や動機の不正)について ア審議会等への付議がないことについて原告らは、保護基準の改定に際しては、専門家からなる審議会等の検討を踏まえることが確立した行政慣行になっていたのに、厚生労働大臣が、審議会等への付議をせず、デフレ調整と2分の1処理をしたことが裁量権の逸脱又は濫用である旨主張する。 しかし、生活保護法を含め、生活扶助基準の改定に当たり、基準部会等の 付議を厚生労働大臣に義務付けている規定はないし、その履行をしなければ違法となるといえるような行政慣行が存在していたと認めるに足りる証拠はない。そもそも、審議会等の意見は、厚生労働大臣の判断を法的に拘束するものではなく、その意見は、同大臣がする保護基準の改定に当たっての考慮要素として位置付けられるべきものである(前掲最高裁平成24年4月2 日第二小法廷判決参照)。また、そもそも、平成19年報告書における指摘を反映した生活扶助基準の水準の減額に係る見直しが、同大臣の判断によって見送られ、据え置かれていたという経緯があることや、平成25年報告書において、平成25年検証の結果の即時実現が求められていないことは前記に認定説示したとおりである。 したがって、原告らの上記主張を採用することはできない。 イ不正な動機があったことについ 5年検証の結果の即時実現が求められていないことは前記に認定説示したとおりである。 したがって、原告らの上記主張を採用することはできない。 イ不正な動機があったことについて原告らは、本件保護基準改定は、自由民主党の選挙公約を実現させようとする政治的意図に基づくものであったし、国の財政事情や、生活保護の実施に対する国民世論といった、受給者の最低限度の生活と無関係な事情を考慮 しようとした不正な動機に基づくものであるから、厚生労働大臣には裁量権の逸脱ないし濫用がある旨主張する。 しかし、仮に、厚生労働大臣において、当該選挙公約の存在をはじめとする上記の諸事情があることを念頭に置きつつ検討をした経緯があるという事情があったとしても、争点⑴イないしエに関して認定説示したとおり、同 大臣が行った本件保護基準改定が、合理的な必要性に基づく、合理的な手法で行われたものと認められ、その判断や内容に不合理な点があったと認められないことからすれば、かかる事情があったという点を捉えて、本件保護基準改定が、同大臣の裁量権の逸脱濫用による違法なものであったということはできない。 ⑹ まとめ 以上によれば、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に、裁量権の逸脱又は濫用があるということはできず、本件保護基準改定が違法であると認めることはできない。また、他に、本件各決定の違法性を基礎付けるに足りる事情を認めることはできない。 3 争点⑵(本件保護基準改定は国賠法上違法であるか)について 争点⑴で認定説示したとおり、本件保護基準改定が違法であったと認められない以上、その違法を前提とする原告らの国家賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 第4 争点⑴ で認定説示したとおり、本件保護基準改定が違法であったと認められない以上、その違法を前提とする原告らの国家賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 第4 結論以上の次第であって、原告らの請求は、理由がないからこれらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 大津地方裁判所民事部 裁判官山口美和 裁判長裁判官堀部亮一及び裁判官瀬戸茂峰は、てん補のため、署名押印することができない。 裁判官山口美和
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