- 1 -主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 原告に対する保険医療機関の指定を取り消す旨の青森社会保険事務局長による平成17年5月10日付け処分を取り消す。 原告に対する保険医の登録を取り消す旨の青森社会保険事務局長による平成17年5月10日付け処分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 第2事案の概要本件は,青森社会保険事務局長が,健康保険法80条1号,2号,3号及び6号に基づき,原告を開設者とする青森県A市所在のB歯科医院(以下「本件A歯科医院」という。)の保険医療機関の指定を平成17年5月10日付けで取り消す処分をするとともに,同法81条1号及び3号に基づき,原告の保険医の登録を同日付けで取り消した処分(以下,両処分を併せて「本件各取消処分」という。)について,原告が,被告に対し,本件各取消処分の取消しを求めた事案である。 その中心的争点は,(1) 原告が本件A歯科医院において「重大な過失により,不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったもの」(平成12年5月31日付け保発第105号厚生省保険局長通知における保険医療機関等の指定及び保険医等の登録の取消事由に該当する行為をしたもの)といえるかどうか,(2) 本件各取消処分が比例原則に反する違法なものであるかどうか,(3) 本件各取消処分に係る手続に瑕疵があったかどうかである。 前提事実(1) 原告の保険医登録及び本件A歯科医院の保険医療機関の指定- 2 -原告は,昭和60年6月4日付けで保険医(歯科医師)として登録され,その開設に係る青森県A市所在のB歯科医院(本件A歯科医院)は,平成9年8月1日付けで保険医療機関の指定を受けていた(甲1,2)。 (2) 本件監査の実施平成16 保険医(歯科医師)として登録され,その開設に係る青森県A市所在のB歯科医院(本件A歯科医院)は,平成9年8月1日付けで保険医療機関の指定を受けていた(甲1,2)。 (2) 本件監査の実施平成16年11月27日及び同月28日,青森社会保険事務局長は,本件A歯科医院に対して健康保険法78条等に基づく監査(以下「本件監査」という。)を実施した(乙8,乙21の1~3)。 本件監査の結果,本件A歯科医院については,保険医療機関として,実際に実施した保険診療分のほかに,実施していない保険診療分を付け増して診療報酬を不正に請求していたこと(以下「付増請求」という。),自費診療を実施して患者から料金を受領したにもかかわらず,これについて保険診療を行ったかのように装い,診療報酬を二重に不正請求していたこと(以下「二重請求」という。)などが認められると判断され,原告についても,保険医として,保険医療機関に付増請求や二重請求をさせたこと等が認められると判断された(乙8,乙21の1~3)。 (3) 本件聴聞の実施平成17年4月21日,青森社会保険事務局長は,本件各取消処分に係る行政手続法の規定による聴聞(以下「本件聴聞」という。)を開催し,原告は,これに一人で出頭した。 (4) 本件各取消処分及びその通知平成17年4月26日,青森社会保険事務局長は,別紙1又は2の「不利益処分の原因となる事実」各記載のとおり,本件A歯科医院において診療報酬の不正請求等が行われ,「保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について」(平成12年5月31日付け保発第105号厚生省保険局長通知)において保険医療機関等の指定及び保険医等の登録の取消事由とされている「重大な過失により,不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったも- 3 -の。」に各該当することを理由として,平成1 通知)において保険医療機関等の指定及び保険医等の登録の取消事由とされている「重大な過失により,不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったも- 3 -の。」に各該当することを理由として,平成17年5月10日付けで本件各取消処分を行い,原告に対してその通知をした(甲1,2,6,乙3)。 原告の主張(1) 本件各取消処分の前提とされた取消事由が存在しないことア患者N.A(乙6の1)について担当医である原告又はC医師(以下「C医師」という。)からカルテの入力担当者に対して自費治療に切り替わったことが伝わらなかったため,二重請求の事態が生じたにすぎず,重過失には当たらない。 イ患者R.N(乙6の2及び3)について担当医であるC医師からカルテの入力担当者に対して自費診療に切り替わったことが伝わらなかったため,保険適用という処理が取り消されないままであったにすぎず,重過失には当たらない。 ウ患者H.J(乙6の4及び5)について使用材料に関するカルテの記載等(甲14の4及び5)からすれば,インプラント破折のため受診をしたが,有床義歯床破折の修理も併せて行われたがい然性が高く,そのこと自体は格別不自然ではないから,そもそも不正請求には該当しない。 仮にインプラント破折の修理しか行われなかったとしても,担当医である原告から歯科助手又はカルテの入力担当者への単なる連絡ミスであって,重過失には当たらない。 エ患者S.K(乙6の6~24)について義歯に関する指導等に言及している平成14年中のカルテの記載(甲14の21)からすれば,そのころには当該患者はまだ義歯を装着しており,その洗浄,保管及び着脱についてカルテ記載のとおりの指導が実際にされていたとみるのが自然であり,「7,8年前に上下8本インプラント治療をした。」という当該患者の供述(乙 者はまだ義歯を装着しており,その洗浄,保管及び着脱についてカルテ記載のとおりの指導が実際にされていたとみるのが自然であり,「7,8年前に上下8本インプラント治療をした。」という当該患者の供述(乙15の1)のみに依存して平成12- 4 -年2月から平成14年3月までの期間中に当該患者が義歯を装着していなかったものと認定することはできないから,そもそも不正請求ではない。 オ患者K.Y(乙6の25~28)について不正請求については,平成15年8月に義歯を作成・装着したが,この時点においてはインプラント治療の予定がなく,同年10月8日,当該患者がインプラント治療を希望したため,同日以降,インプラント治療が行われたのであって,インプラント治療予定であるにもかかわらず義歯を作成したという認定は誤りである。平成15年10月に行われたインプラント治療の自費診療額は100万円であるが,その一部を治療の3か月前である同年7月1日に支払うはずがない。仮に平成15年7月1日の時点でインプラント治療の予定になっていたとしても,実際に治療が行われるまでの3か月間について義歯治療の費用を患者本人に全額負担させるというのでは,保険の意味がない。 不当請求については,保険適用でのニッケルの前装冠装着を選択した時点での予測に反し,実際に装着してみると違和感を感じたため,自費でのキャディム装着に替えたのであって,このような場合,当初のニッケルの前装冠装着の費用まで当該患者に負担させるというのでは,保険の意味がない。いったん保険適用による治療を受けた場合には,違和感があっても我慢するか,自費治療をせよと患者に強いるのは酷である。 カ患者Y.K(乙6の31及び32)について担当医であるD医師(以下「D医師」という。)がジャケット冠からキャディムに変更になったことをカ 我慢するか,自費治療をせよと患者に強いるのは酷である。 カ患者Y.K(乙6の31及び32)について担当医であるD医師(以下「D医師」という。)がジャケット冠からキャディムに変更になったことをカルテ入力担当者に伝えるのを忘れたため,以後のカルテもジャケット冠を前提とするものとなったのであり,重過失があるとはいえない。 キ患者R.H(乙6の33~35)について担当医であるD医師が自費診療でキャディムを装着したことをカルテ入- 5 -力担当者に伝えるのを忘れたため,ジャケット冠での保険請求がされたものであり,重過失があるとはいえない。 クかかりつけ歯科医初診料・再診料について本件A歯科医院においては,中央に切取線を入れたA4の説明文書用紙の左右に主な病名等を記入した後,切取線で切った半分をカルテとともに保存し,残りの半分を受付担当者が患者に渡すことをもって文書による情報提供としていたが,受付担当者がわざわざ記入して半分を切り取った説明文書用紙を患者に渡していないということは通常は考えられない。前記患者らは,患者調査の際,「説明文書は受け取っていない。」旨供述しているが,説明文書は保険医や保険医療機関にとっては重要な文書であるが患者にとってはその重要性を認識することができない書類であるから,受け取った説明文書を紛失してしまい,説明文書を受け取ったという記憶もなかったため,監査担当者に対して「説明文書を受け取っていない。」旨の誤った供述をしてしまったのであって,「患者に説明文書を交付していない。」という事実認定は誤りである。説明文書の控えが保存されている患者に対しては説明文書が渡されているとみるのが自然であるし,かかりつけ歯科医初診料・再診料が問題とされていない患者についてまで説明文書の控えを作成する必要がないことからすれば,これ 保存されている患者に対しては説明文書が渡されているとみるのが自然であるし,かかりつけ歯科医初診料・再診料が問題とされていない患者についてまで説明文書の控えを作成する必要がないことからすれば,これを事後的に作成したとは考えられない。 また,仮に被告の認定のとおりの不正請求がされていたとしても,かかりつけ歯科医初診料・再診料について不当請求であるとされた66回のうち,原告が関わっているのは8回にすぎず,本件A歯科医院における医療法10条所定の管理者がC医師であることからすれば,原告の過失は極めて小さい。 ケ原告自身に「重大な過失」が存在しないこと(ア) 原告が担当医ではなかったこと- 6 -被告は,患者N.A,患者R.N,患者Y.K及び患者R.Hについて,各患者の診療を担当した歯科医師についての複数の注意義務違反(過失)を指摘し,これらをもって原告に「重大な過失」があると主張するが,患者N.Aの担当医はC医師であり,その余の患者の担当医はD医師であるから,これらの患者については原告自身に上記過失があるわけではない。 (イ) 原告が本件A歯科医院の管理者ではなかったこと被告は,前記患者らに関する金銭授受担当者の注意義務違反(過失)を指摘し,これを原告に「重大な過失」が認められる事情の一つとして指摘しているが,本件A歯科医院における医療法10条所定の管理者はC医師であり,同法15条1項の監督義務を負うのはC医師なのであるから,週に1回診療を行っていたにすぎない原告が,本件A歯科医院の金銭授受担当者の過失について責めを問われる理由はない。 コ「重大な過失」「しばしば」とは評価できないこと平成6年9月30日保険発第131号記載の「(3)行政措置の運用」(甲6の7枚目)においては,「行政措置をとるべき該当事由と,かかる事由に該当する場 「重大な過失」「しばしば」とは評価できないこと平成6年9月30日保険発第131号記載の「(3)行政措置の運用」(甲6の7枚目)においては,「行政措置をとるべき該当事由と,かかる事由に該当する場合に,すべて取り消すという行政処分をとるべきであるか否かは,おのずから別個の問題であり,その裁量に当たっては都道府県知事の適正な行政運用が要請されるのである。行政措置として法定のものは,指定の『取消し』,登録の『取消し』のみであるにもかかわらず,その外に行政運用上,『戒告』及び『注意』の制度が設けられているのも,一挙に『取消し』という保険診療に関する法律上の効果の発生する行政処分をとらず,ケース・バイ・ケースによって指導的意味の行政措置に止めることが妥当であろうという考え方に基づくものである」と記載されているところ,その趣旨は,取消処分が保険医あるいは保険医療機関にとって致命的に重大な処分であることから,付増請求等の取消事由に該当する請- 7 -求がされた場合にも,なお慎重な運用を求めるものと解される。 「重大な過失」の認定においては,故意の場合の情状の悪質性による認定と異なり,不正診療,不正請求の件数,回数,金額の多寡等の客観的数値の高低が重視されなければならない。平成11年11月から平成16年10月までの間の別件E歯科医院及び本件A歯科医院における診療点数のある患者数は延べ3万0199名であるから,この間の両歯科医院における不正請求及び不当請求の件数が265件であるとしても,それらは全体の0. 88%にすぎない。また,平成12年度から平成16年度までの間の原告の保険診療収入は合計5億1932万0155円であり,返還金額を52万3016円としても,それは全体の0.1%にすぎない。さらに,平成11年11月から平成16年10月までの間に合計1 までの間の原告の保険診療収入は合計5億1932万0155円であり,返還金額を52万3016円としても,それは全体の0.1%にすぎない。さらに,平成11年11月から平成16年10月までの間に合計1万3356名の患者を診療した別件E歯科医院については,本件各取消処分の原因となった事実と同種の事例は一つも発見されなかった。これらの事実は,本件の不正又は不当な報酬請求が「重大な過失」に基づくものではないことを示している。「重大な過失」が原因となって不正又は不当な報酬請求がされたとしたら,同様の請求事例が頻発し,件数及び金額ともにもっと高い数字を示すはずだからである。加えて,件数及び金額に照らすと,本件の不正又は不当な報酬請求が「しばしば」されたものとは到底評価できない。 また,「重大な過失」の認定においては,従前の指導又は監査の実績等も判断材料とされなければならない。原告は,平成10年2月21日に集団指導を,平成11年3月3日に集団的個別指導を,平成12年12月6日には個別指導を,それぞれ受けたが,個別指導の結果は「概ね妥当」であり,重大な問題点を指摘されておらず(乙21の1の5枚目等),その後は,監査はもちろん個別指導も受けていないことからすると,原告について「重大な過失」があると認定することには無理がある。 さらに,軽過失と重過失とは質的に違うのであり,複数の軽過失が競合- 8 -すれば全体として重過失になるというものではない。 (2) 本件各取消処分が比例原則に反し違法であること本件A歯科医院の保険医療機関指定及び原告の保険医登録について,青森社会保険事務局の当初の処分意見はいずれも「戒告」相当であり,厚生労働省保険局医療課医療指導監査室との1回目の医療事務打合せにおいて,同省からの「取消」相当との問題提起を受けて再検討をした後も, 森社会保険事務局の当初の処分意見はいずれも「戒告」相当であり,厚生労働省保険局医療課医療指導監査室との1回目の医療事務打合せにおいて,同省からの「取消」相当との問題提起を受けて再検討をした後も,青森社会保険事務局が「戒告」相当との処分意見を変えなかったことからすると,「戒告」という処分意見こそが妥当である(乙21の1及び2)。 故意に基づかない不正又は不当請求については,従前の指導又は監査において同様の誤りを指摘されていない場合は,数十万円規模の返還しか要しない程度の事故は,たとえそれが重過失に基づいてしばしばされたものであっても,取消処分には本来該当しない。原告の返還額は34万6210円であり,厚生労働省からの回答にある平成13年度から平成16年度までにおける取消事例の中で飛びぬけて少なく,このような原告に対して取消処分を科すのは,比例原則に明らかに反する。 (3) 本件各取消処分に係る手続に瑕疵があることア本件聴聞には原告代理人である弁護士の出頭の機会や準備の期間が確保されておらず,また,原告に本件各取消処分の主観的要件や評価的要件についての弁明の機会が保障されていなかったから,行政手続法16条又は同法20条に違反する。 イ本件聴聞に先立って求めた患者個別調書(乙6の1~36)の閲覧が認められず,閲覧が認められた資料についても謄写が認められなかったが,本件各取消処分に対する防御活動の準備としてこの程度の事前準備の機会しか与えられないのでは適正手続の要請は到底充たされない。 被告の主張(1) 本件各取消処分の前提とされた取消事由が存在すること- 9 -ア患者N.A(乙6の1)について本件においては,①診療を担当した歯科医師がカルテの入力担当者に対して自費診療への切替えを伝達しなかったこと,②金銭授受担当者が患者の負 存在すること- 9 -ア患者N.A(乙6の1)について本件においては,①診療を担当した歯科医師がカルテの入力担当者に対して自費診療への切替えを伝達しなかったこと,②金銭授受担当者が患者の負担金について診療を担当した歯科医師に対して確認をしなかったこと(乙13参照),③診療を担当した歯科医師が保険診療カルテの入力内容を点検しなかったこと,④診療を担当した歯科医師が自費診療のカルテを作成しなかったこと,⑤診療を担当した歯科医師がカルテとレセプトの突合・確認を行わなかったこと等の複数の注意義務違反が原因となって不正請求(二重請求)をしたものであるから,単なる伝達ミスとは到底評価し得るものではなく,重大な過失によるものというべきである。 イ患者R.N(乙6の2及び3)について本件においては,①診療を担当した歯科医師がカルテの入力担当者に対して自費診療への切替えを伝達しなかったこと,②金銭授受担当者は患者の負担金について診療を担当した歯科医師に対して確認をしなかったこと,③診療を担当した歯科医師は保険診療カルテの入力内容を点検しなかったこと,④診療を担当した歯科医師がカルテとレセプトの突合・確認を行わなかったこと等の複数の注意義務違反が原因となって,漫然と保険請求を行ったものであり,重大な過失によるものといわざるを得ない。 ウ患者H.J(乙6の4及び5)について当該患者は,患者調査の際,治療はインプラントのみであり,保険診療分の一部負担金も支払っていないと供述している(乙14)。また,義歯修理は口腔外で行うものであり,義歯をいったん外したにもかかわらず当該患者がそのことに気が付かなかったということは有り得ない。さらに,インプラント治療(修理,前装印象及び装着)を行った平成16年7月26日,同月27日,同年8月5日及び同月12日の4 もかかわらず当該患者がそのことに気が付かなかったということは有り得ない。さらに,インプラント治療(修理,前装印象及び装着)を行った平成16年7月26日,同月27日,同年8月5日及び同月12日の4日(甲14の5)について,それぞれ全く同じ日に,保険診療として義歯修理,リベース,義- 10 -歯調整・指導を行っているが(甲14の4),インプラント治療のため来院した患者の義歯が,4日とも同じ日にその都度不具合が生じるということは,極めて不自然なことである。以上から,有床義歯床破折の修理は,実際には行われていなかったといわざるを得ない。 それにもかかわらず,①金銭授受担当者が患者の負担金について診療を担当した歯科医師に確認をしなかったこと,②診療を担当した歯科医師が保険診療カルテの入力内容を点検しなかったこと,③診療を担当した歯科医師がカルテとレセプトの突合・確認を行わなかったこと等の複数の注意義務違反が原因となって不正請求(付増請求)をしているのであるから,単なる連絡ミスであるとは到底評価し得ず,重大な過失によるものといわざるを得ない。 しかも,仮に,原告の主張するとおり,「インプラント破損の修理に来た患者が,ついでに義歯修理を行」ったというのであれば,それは,いわゆる混合診療(一連の診療行為の中に,保険診療と自由診療を自由に混在させること。乙19)となるのであって,現在は認められていない。すなわち,インプラントの治療は原則自費診療であり,当然それに関連する管理や治療も含まれ,その全体が自費診療になるのである。そのうちの一部である義歯修理だけ取り出して保険診療で行うことは,混合診療にほかならない。したがって,インプラント治療と併行して保険で行う治療は混合診療にあたることから,保険請求はできないものである。 エ患者S.K(乙6の6~2 取り出して保険診療で行うことは,混合診療にほかならない。したがって,インプラント治療と併行して保険で行う治療は混合診療にあたることから,保険請求はできないものである。 エ患者S.K(乙6の6~24)について当該患者は,「7,8年前に160万円で上下8本のインプラント治療をした。」と供述しており(乙15の1),160万円という高額の治療費を支払っていることからすれば,治療時期に関する患者の記憶は正確であると認められる。そうすると,当該患者は数年前には義歯からインプラントに替えていたのであって,当時には義歯を装着しておらず,義歯治療- 11 -を受けるはずがない。原告は当該患者が当時義歯を装着していたと主張するが,原告は自費カルテを作成していないので,その主張には何の裏付けもない。なお,原告自身,本件監査の際には「これは私も今回調べたら,間違っていたのが判りまして,謝ろうと思って来ました。間違って伝わったと思います。」と述べており(乙15の2),不正請求の事実自体を認めていた。 オ患者K.Y(乙6の25~28)について不正請求については,原告が当該患者からインプラントの治療費として20万円を徴収したのは平成15年7月1日のことであるから(乙16),義歯を作成・装着したとする同年8月の時点では既にインプラント治療予定の段階であったことが明らかである。 不当請求については,いくら保険料を負担している被保険者ではあっても,貴重な保険財源から保険給付したものを,わずか12日後に,舌側が冷たい感じがするというだけの理由で除去して自費診療に切り替えること(甲14の27)は,安易に認められるものではない。そもそも,歯科医が歯科治療の開始に当たり,適切な治療計画を策定し,患者に対する十分な説明をしていればこのような事態は起こり得ないことであり, こと(甲14の27)は,安易に認められるものではない。そもそも,歯科医が歯科治療の開始に当たり,適切な治療計画を策定し,患者に対する十分な説明をしていればこのような事態は起こり得ないことであり,だからこそ,同一部位に対して短期間で保険適用治療から自費治療に切り替える場合は保険適用治療分の支払請求をすることができないこととされているのである。原告が最初の段階で患者に対し十分な説明をしておけば,このような事態は避けることができたはずであるし,まして,原告はかかりつけ歯科医になっており,通常より重い説明責任が課されているのであるからなおさらである。原告は,以前に当該患者が左下の1~2番及び右下1~2番に前装鋳造冠を装着した際,「舌側のメタルの冷めたい感じがイヤだ。」との訴えにより,自らキャディムに変更しておきながら,その半年後に,右下3番及び左下3番に再び金属製の前装鋳造冠を装着し,わずか- 12 -12日後にキャディムに変更するという治療を実施したというのであるから,当該患者に対し,装着時の違和感の可能性について,事前に十分な説明をすることは可能であり,かつ,容易であったことが明らかである。キャディムは保険給付外の材料使用による自費診療であるから,前装鋳造冠の装着に係る保険請求は,昭和51年7月29日保文発352号,同年11月26日保険発115号通知「保険給付外の材料使用による自費診療の取扱い」(乙22)によれば,「当該治療を患者が希望した場合に限り,歯冠修復にあっては歯冠形成(支台築造を含む。)以降,欠損補綴にあっては補綴時診断以降を保険給付外の扱いとするものである。」とされているところ,当該患者については,平成16年8月24日に自費診療であるキャディムに移行しているため,同通知により,前装鋳造冠(ニッケル)装着のため歯冠形成 険給付外の扱いとするものである。」とされているところ,当該患者については,平成16年8月24日に自費診療であるキャディムに移行しているため,同通知により,前装鋳造冠(ニッケル)装着のため歯冠形成を行った同月5日の時点まで遡及して保険給付外とする取扱いをしなければならないのであって,同月24日に自費診療に切り替えるまでの診療について保険請求をしたことは,不当請求に当たる。 なお,仮に前装鋳造冠からキャディムに途中で切り替えたとすると,キャディムは前装鋳造冠より肉厚であるため,歯冠形成に当たっては,前装鋳造冠を装着した場合よりも,支台歯を多めに削合するのが通常であり,新たにキャディム装着のための歯冠形成を行う必要があったにもかかわらず,本件においては,前装鋳造冠のための歯冠形成は行われているものの,キャディム装着のための歯冠形成が新たに行われた記録がないのに実際にキャディムが装着されていることに照らすと,当初からキャディムを装着することを念頭に置いて歯冠形成を行っていたのではないかという疑いがある。 カ患者Y.K(乙6の31及び32)について本件において,①診療を担当した歯科医師からカルテの入力担当者に対して自費診療への切替えが伝わらなかったとすれば,そのこと自体が重大- 13 -な注意義務違反であるし,本件においては,②金銭授受担当者が患者の負担金について診療を担当した歯科医師に対して確認をしなかったこと,③診療を担当した歯科医師が保険診療カルテの入力内容を点検しなかったこと,④診療を担当した歯科医師がカルテとレセプトの突合・確認を行わなかったこと等の複数の注意義務違反が原因となって不正請求(二重請求)をしているものであるから,単なる伝達ミスにとどまるものではなく,重大な過失によるものといわざるを得ない。 キ患者R.H(乙6の かったこと等の複数の注意義務違反が原因となって不正請求(二重請求)をしているものであるから,単なる伝達ミスにとどまるものではなく,重大な過失によるものといわざるを得ない。 キ患者R.H(乙6の33~35)について前記カと同様に単なる伝達ミスにとどまるものではなく,前記アと同様に重大な過失によるものというべきである。 クかかりつけ歯科医初診料・再診料について患者調査の対象となった患者全員がことごとく説明文書を受け取ったかどうかについて覚えていないということは有り得ないことであって,原告の主張は根拠を欠いた推測にすぎない。仮に説明文書を受け取ったのであれば,治療方針に関心を持つ患者は当該文書を読んだはずであり,受け取っていながら覚えていないなどということの方がむしろ考え難い。説明文書用紙をプリントアウトして半分切り取ることはいつでもできることであるから,これをもって説明文書を患者に渡したとする根拠にはならない。 ケ原告自身に「重大な過失」が存在すること被告は,原告のいう医療法の規定に基づく管理者の監督義務違反をもって本件各取消処分を行ったものではない。本件各取消処分は,原告が保険医療機関及び保険医として保険請求をするに当たり,各種の点検・確認を怠ったことが,健康保険法,療担規則等の規定に違反する不正又は不当な保険請求であるという理由でされたものであり,医療法上の管理者でなければ保険医療機関及び保険医としての責任を免れるなどという関係にはない。 原告は,指定を受けた保険医療機関の開設者であり,かつ,登録した保- 14 -険医なのであるから,保険診療に関するルールの内容は当然知っていなければならないのであって,付増請求,二重請求などといった通常起こり得ない診療報酬の請求をしていること自体が原告に重大な過失があったことの徴表である。 ,保険診療に関するルールの内容は当然知っていなければならないのであって,付増請求,二重請求などといった通常起こり得ない診療報酬の請求をしていること自体が原告に重大な過失があったことの徴表である。原告には,保険請求に当たって,保険医及び保険医療機関として,療担規則等にのっとってレセプトとカルテとの突合・確認等を行うことにより,誤った請求を未然に防止すべき責務があるのであり,原告の主張は,原告が開設者として,当該保険医療機関の保険請求事務を含む保険診療全般にその責があるという基本的なことを失念しているといわざるを得ない。 コ「重大な過失」「しばしば」との評価が適切であること故意の判断は,「必ずしも不正診療,不正請求の件数,回数,金額の多寡,事故率等のみによって判断せず」「情状が悪質と認められるか否かによって判断し」とされ,「重大な過失の判断も故意の場合とほぼ同様」とされているとおり(甲6参照),重過失の場合であっても,故意の場合と同様に,情状が悪質か否かの判断が基本になるのであって,客観的数値のみがことさらに重視されるものではないところ,本件A歯科医院における請求は,単なる請求事務担当者への連絡ミスで済まされるような態様のものではなく,その情状が極めて悪質な不正・不当請求である。本件各取消処分の対象となった本件A歯科医院と別件E歯科医院は,単に開設者が同一であるというだけであって本件各取消処分の理由と相互に関連するものではないし,監査対象は,一部の患者に対する診療について特定の期間の事実確認を行ったにすぎないものであるから,別件E歯科医院において本件各取消処分の原因となった事実と同種の事例が一つも発見されていないとの原告の主張は当を得たものではない。そもそも付増請求,二重請求等といった診療報酬の請求は通常は起こり得ないものであり, おいて本件各取消処分の原因となった事実と同種の事例が一つも発見されていないとの原告の主張は当を得たものではない。そもそも付増請求,二重請求等といった診療報酬の請求は通常は起こり得ないものであり,そのことのみをもってしても原告に「重大な過失」のあったことが強く推認される。また,本件監査に- 15 -おける不正又は不当な報酬請求に係る患者は10数名に上り,さらに,同一の患者(患者S.K)について,平成12年2月から平成14年3月までの間にほぼ毎月のように不正な診療報酬の請求を繰り返していた事実が確認されているのであり(乙6の6~24),このことからもこれらの不正又は不当な診療報酬の請求が「しばしば」されたものと判断することができる。 また,集団指導は新規登録の保険医を指導するために行うものであり,集団的個別指導は青森県内の診療科別の平均請求点数の上位8パーセントの保険医療機関の中から機械的に選定して指導するものである(乙24)。 監査対象となる保険医療機関等の選定基準は複数あり,度重なる個別指導によっても診療内容又は診療報酬の請求に改善が見られない場合というのはその選定基準のひとつにすぎないのであって(乙3),個別指導は必ずしも監査の前提とされているものではない。 (2) 本件各取消処分は比例原則に反するものではないことそもそも,比例原則とは「ある目的を達成するために必要最小限度を超えた不利益を課するような手段を用いることを禁ずる原則」であるから,他の医師に対する処分と原告の処分とを比較して比例原則違反とする原告の主張は,比例原則の理解を誤ったものというべきである。 また,行政上の措置の量定は監査時において確認された事故内容に基づいて判断するものであるところ,厚生労働省からの回答の金額は,各保険医療機関等が取消処分を受けた後に不正請求や ものというべきである。 また,行政上の措置の量定は監査時において確認された事故内容に基づいて判断するものであるところ,厚生労働省からの回答の金額は,各保険医療機関等が取消処分を受けた後に不正請求や不当請求をしたものを精査した返還金額であるから,その金額を比較してみたところで,原告の処分が重きに失するとの根拠にはなり得ない。 さらに,青森県での最近の事例では,付増請求及び振替請求により監査時に判明した不正不当の金額が29万7090円で保険医療機関の指定の取消し,保険医の登録の取消しに至った例がある(乙23)。 加えて,本件が「重大な過失により不正又は不当な診療報酬の請求をしば- 16 -しば行ったもの」との処分基準に該当する以上,本件各取消処分は比例原則の観点からも適正である。 (3) 本件各取消処分に係る手続に瑕疵がないことア原告が本件監査の過程を含めて不利益処分の内容を熟知していたことにかんがみれば,聴聞期日の3週間前に通知がされている本件においては,原告において十分な防御の機会が認められていたのであり,これに加えて更に期日を変更することは,不利益処分の性質からみて甚だしく公益を害するものである。まして,原告が引用する行政手続法16条及び同法20条は,聴聞期日への代理人の出席を必要的なものとは規定していない。 イ原告は,本件聴聞に先立って,監査における患者個別調書を含む各文書の閲覧をしているのであって(乙18),これらの文書には個別具体的に,不正・不当事項を特定した記載があり,これを前提に原告は,自らが保険医として各々弁明書を作成して弁明しているのであるから,具体的事実の告知及び弁明の機会が十分に保障されていたというべきである。また,行政庁が不利益処分を行う場合,当該処分の当事者等によって原因資料を閲覧した際に,当該資料の複写 明しているのであるから,具体的事実の告知及び弁明の機会が十分に保障されていたというべきである。また,行政庁が不利益処分を行う場合,当該処分の当事者等によって原因資料を閲覧した際に,当該資料の複写を認めるか否かについては,行政手続法上,複写を禁止するものではないものの,事務負担の問題から一律に認めるものではなく,その判断は行政庁の裁量にゆだねられているものと解されている(乙20)。 第3当裁判所の判断 裁判所が認定した事実前記前提事実のほか,証拠(甲1~6,甲9の1及び2,甲11の1~甲15の20,乙3,乙6の1~乙10,乙12,乙15の1及び2,乙18,乙21の1~3)及び弁論の全趣旨により認めることができる事実を加えると,本件の事実経過は,以下のとおりである。 (1) 原告の保険医登録及び本件A歯科医院の保険医療機関の指定原告は,昭和60年6月4日付けで保険医(歯科医師)として登録され,- 17 -その開設に係る青森県A市所在のB歯科医院(本件A歯科医院)は,平成9年8月1日付けで保険医療機関の指定を受けていた(甲1,2)。 (2) 本件監査を行うに至った経緯青森社会保険事務局は,本件A歯科医院において,「インプラントなのに義歯を作成しているとして請求,自費診療の患者について保険請求,フラップオペを実施していないのに請求」等の不正請求等をしているという内容の情報提供を受けたため,平成16年10月1日から同月13日にかけて,青森県と共同で30名について患者調査を実施した。その結果,そのうち9名について診療報酬の不正請求が行われている疑いが濃厚であると判断し,平成16年11月27日及び同月28日に本件A歯科医院に対して健康保険法78条等に基づく監査(本件監査)を実施することとした(乙8,乙21の1~3)。 (3) 本件監査の実 いが濃厚であると判断し,平成16年11月27日及び同月28日に本件A歯科医院に対して健康保険法78条等に基づく監査(本件監査)を実施することとした(乙8,乙21の1~3)。 (3) 本件監査の実施本件監査の結果,本件A歯科医院については,保険医療機関として,実際に実施した保険診療分のほかに,実施していない保険診療分を付け増して診療報酬を不正に請求していたこと(付増請求),自費診療を実施して患者から料金を受領したにもかかわらず,これについて保険診療を行ったかのように装い,診療報酬を二重に不正請求していたこと(二重請求)等が認められると判断され,原告についても,保険医として,保険医療機関に付増請求や二重請求をさせたこと等が認められると判断された(乙8,乙21の1~3)。そして,本件監査の結果を受け,平成16年11月28日付けで,原告の弁明等が記載された患者個別調書(乙6の1~36)及び弁明書(乙7)が作成された。 なお,平成16年11月25日及び同月26日,本件監査の実施に先立ち,原告を開設者とする青森県E市所在のB歯科医院(別件E歯科医院)に対しても,健康保険法78条等に基づき同様の監査が行われた(甲3)。 - 18 -(4) 本件各取消処分の前提となった本件監査担当者の意見ア患者N.A(乙6の1)について自費診療であるキャディム(補綴物)の装着を行いその費用を徴収したにもかかわらず,保険が適用されるジャケット冠による治療をしたとして保険請求をした不正請求(二重請求)である。 イ患者R.N(乙6の2及び3)について同一部位の治療に関し,保険適用治療であるブリッジから自費治療のエステニアに変更したことについて,本来は保険適用治療分については請求をすることができないにもかかわらず,保険請求をした不当請求である。 ウ患者H.J(乙 ,保険適用治療であるブリッジから自費治療のエステニアに変更したことについて,本来は保険適用治療分については請求をすることができないにもかかわらず,保険請求をした不当請求である。 ウ患者H.J(乙6の4及び5)について義歯を作成していないにもかかわらず,これを作成したとして有床義歯調整・指導料,有床義歯床修理等を請求した不正請求(付増請求)である。 エ患者S.K(乙6の6~24)について作成していない義歯を作成したとして,作成に係る費用等を保険請求した不正請求(付増請求)である。 オ患者K.Y(乙6の25~28)について①自費診療であるインプラント治療の予定で代金を徴収したにもかかわらず,義歯を作成・装着したとして保険請求をした不正請求(付増請求)である(乙6の25)。また,②前装冠を作製したとしてその保険請求をしておきながら,短期間でこれを除去し,自費治療でキャディムの装着を行った不当請求である(乙6の28)。 カ患者Y.K(乙6の31及び32)について自費治療であるキャディムの装着を行いその費用を徴収したにもかかわらず,同一部位について保険が適用されるジャケット冠による治療をしたとして保険請求をした不正請求(二重請求)である。 キ患者R.H(乙6の33~35)について- 19 -自費診療であるキャディムの装着を行いその費用を徴収したにもかかわらず,同一部位について保険が適用されるジャケット冠による治療をしたとして保険請求をした不正請求(二重請求)である。 クかかりつけ歯科医初診料・再診料について患者R.N(乙6の2及び3),患者K.Y(乙6の25~28),患者K.H(乙6の29及び30),患者Y.K(乙6の31及び32),患者R.H(乙6の33~35)及び患者K.M(乙6の36)について,かかりつけ歯科医としての要件 者K.Y(乙6の25~28),患者K.H(乙6の29及び30),患者Y.K(乙6の31及び32),患者R.H(乙6の33~35)及び患者K.M(乙6の36)について,かかりつけ歯科医としての要件を満たしていないのにかかりつけ歯科医としての初診料・再診料を保険請求した不当請求である。 なお,かかりつけ歯科医に対しては,通常より高額の初診料と引替えに重い説明義務を負わせており,かかりつけ歯科医初診料を請求するためには,患者に対する文書による情報提供が要件となっている(乙17参照)。 (5) 本件聴聞の実施青森社会保険事務局長は,原告の上記弁明内容等を踏まえて検討した結果,本件A歯科医院の保険医療機関の指定及び原告の保険医の登録をいずれも取り消すことが相当であると最終的に判断し(乙21の1~3),厚生労働省保険局長の了承を得た上(乙8),平成17年4月21日に上記各不利益処分に係る行政手続法の規定による聴聞(本件聴聞)を開催することとし,原告に対し,その旨や不利益処分の原因となる事実等を記載した聴聞通知書を発送した(甲4,5)。 原告は,平成17年4月2日に上記聴聞通知書を受け取ると(乙10),同月12日に本件聴聞への対応等について弁護士(原告訴訟代理人F弁護士)に相談し,予定される不利益処分の内容が重大であったことから,同弁護士を代理人として選任した上で本件聴聞に臨みたいと考えたが,本件聴聞が予定されていた同月21日には同弁護士の都合が付かなかったため,同月14日ころ,青森社会保険事務局に電話をして聴聞期日の変更を申し入れた- 20 -が,その変更は認められなかった(甲19の1)。 原告は,平成17年4月14日,青森社会保険事務局長に対し,本件聴聞に関する文書として,社会保険医療担当者監査調査書,開設者,管理者,保険医,歯科衛生士,歯 の変更は認められなかった(甲19の1)。 原告は,平成17年4月14日,青森社会保険事務局長に対し,本件聴聞に関する文書として,社会保険医療担当者監査調査書,開設者,管理者,保険医,歯科衛生士,歯科助手,受付事務職員及び請求事務職員に係る各聴取調書,内議資料並びに患者個別調書の閲覧を請求した上(乙18),同月21日,通知どおりの期日に開催された本件聴聞に一人で出頭した。 (6) 本件各取消処分及びその通知平成17年4月26日,青森社会保険事務局長は,本件A歯科医院の保険医療機関の指定の取消し及び原告の保険医の登録の取消しについて,青森地方社会保険医療協議会に諮問し(乙8),同日,諮問のとおり了承するとの答申を得たことから(乙9),同日,別紙1又は2の「不利益処分の原因となる事実」各記載のとおり,本件A歯科医院において診療報酬の不正請求等が行われ,「保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について」(平成12年5月31日付け保発第105号厚生省保険局長通知)別添2「監査要綱」において保険医療機関等の指定及び保険医等の登録の取消事由とされている「重大な過失により,不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったもの。」に各該当することを理由として,平成17年5月10日付けで本件各取消処分を行い,原告に対してその通知をした(甲1,2,6,乙3)。 なお,青森社会保険事務局長は,別件E歯科医院については,「保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について」(平成7年12月22日付け保発第117号厚生省保険局長通知)において保険医療機関等の指定の戒告事由とされている「重大な過失により,不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの。」に該当することを理由として,平成17年4月26日付けで戒告を行った(甲3)。 (7) 診療報酬の返還同意青森社会保険事務 されている「重大な過失により,不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの。」に該当することを理由として,平成17年4月26日付けで戒告を行った(甲3)。 (7) 診療報酬の返還同意青森社会保険事務局長は,別件E歯科医院及び本件A歯科医院に対する前- 21 -記各監査の結果,両歯科医院において診療報酬の不正請求及び不当請求が認められたとして,原告に対し,平成11年11月分から平成16年10月分までの間の診療報酬請求について自主点検を行った上,返還同意書を作成して提出するよう通知した(甲9の1及び2)。原告がこれに応じて作成・提出した返還同意書によれば,返還同意に係る診療報酬請求の最終的な内訳は,別件E歯科医院については96件(返還金額13万7809円),本件A歯科医院については162件(返還金額34万6210円)であった(甲11の1~甲13の2,乙12)。 本件各取消処分の前提となった取消事由(「重大な過失により,不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行った」こと)の存否について(1) 患者N.A(乙6の1)に係る保険請求ついて自費診療であるキャディム(補綴物)の装着を行いその費用を徴収したにもかかわらず,保険が適用されるジャケット冠による治療をしたとして保険請求がされていることを認めることができる(乙6の1)。そうすると,たとえ原告主張のとおり本件A歯科医院内の連絡ミスにより生じたものであったとしても,それは不正な請求(二重請求)であったといわざるを得ない。 (2) 患者R.N(乙6の2及び3)に係る保険請求ついて①同一部位の治療に関し,7月2日に保険適用治療であるブリッジを仮に装着したが,同日自費治療に切り替え,同月10日に自費治療のエステニアを装着したことで,本来は保険適用治療分については請求をすることができないにもかかわ ,7月2日に保険適用治療であるブリッジを仮に装着したが,同日自費治療に切り替え,同月10日に自費治療のエステニアを装着したことで,本来は保険適用治療分については請求をすることができないにもかかわらず,保険請求がされていること,②本件A歯科医院の担当医がこの請求に関して「連絡のミスで誤りが生じました。」と述べ,不当な請求であることを自認していたこと,以上の事実を認めることができる(乙6の2及び3)。そうすると,たとえ原告主張のとおり本件A歯科医院内の連絡ミスにより生じたものであったとしても,それは不当な請求であったといわざるを得ない。 - 22 -(3) 患者H.J(乙6の4及び5)に係る保険請求ついて①本件A歯科医院において当該患者に対し有床義歯床修理,有床義歯調整・指導料等の療法及び処置名目で保険請求がされていたこと(乙6の4及び5),②当該患者に係る歯科診療録には,インプラント治療(修理等)を行ったのと同じ日である平成16年7月26日,同月27日,同年8月5日及び同月12日に,それぞれ義歯治療(有床義歯床修理,有床義歯調整・指導等)を行ったとの記載があること(甲14の4及び5),③当該患者は,平成16年10月5日に実施された患者調査の際,治療はインプラントのみであり,保険診療分の一部負担金も支払っていないと供述していること(乙14)を認めることができる。 当該患者がわずか2か月前に受けた治療の内容について誤った供述をするとは考え難いことからすれば,当該患者に対しては,その供述のとおり,インプラント治療のみが行われ,義歯治療が行われなかったことを認めることができるから,上記認定に反する上記歯科診療録の記載に基づく原告の主張はたやすく採用することができない。 以上によれば,当該患者について,義歯治療をしていないにもかかわらずこれ ったことを認めることができるから,上記認定に反する上記歯科診療録の記載に基づく原告の主張はたやすく採用することができない。 以上によれば,当該患者について,義歯治療をしていないにもかかわらずこれを行ったとして保険請求をした不正請求(付増請求)があったものと認めることができる。 (4) 患者S.K(乙6の6~24)に係る保険請求ついて①本件A歯科医院において当該患者に対し19回にわたって有床義歯製作による加算,有床義歯調整・指導料等の療法及び処置名目で保険請求がされたこと(乙6の6~24),②当該患者に係る歯科診療録には,平成12年2月以降に継続的に義歯治療を行ったとの記載があること(甲14の6等),③当該患者は,平成16年10月5日に実施された患者調査の際,上記義歯治療に係る部位を含めて「7,8年前に上下8本の歯について160万円でインプラント治療をした。」旨の供述をしており,実際に合計8本の歯につ- 23 -いてインプラント治療が行われていることが確認されたこと(乙15の1),④原告自身が,本件監査の際,「これは私も今回調べたら,間違っていたのが判りまして,謝ろうと思って来ました。間違って伝わったと思います。」などと述べて不正請求の事実を認めていたこと(乙15の2)を認めることができる。 上記インプラント治療に係る歯の本数が多く,その費用も少額ではないことからすれば,その治療時期についての当該患者の記憶もおおむね正確であるとみるのが相当であり,これに本件監査の際には原告自身が不正請求の事実を認めていたことを併せて考慮すれば,遅くとも平成12年2月の時点においては,上記インプラント治療が行われて義歯が取り外されており,それ以降は義歯治療が行われていなかったことを認めることができる。これに反する上記歯科診療録の記載は,前記のとおり 12年2月の時点においては,上記インプラント治療が行われて義歯が取り外されており,それ以降は義歯治療が行われていなかったことを認めることができる。これに反する上記歯科診療録の記載は,前記のとおり別の患者(患者H.J)に係る歯科診療録にも事実に反する記載がされていることに照らして信用することができず,これに基づく原告の主張はたやすく採用することはできない。 以上によれば,当該患者について,義歯治療をしていないにもかかわらずこれを行ったとして保険請求をした不正請求(付増請求)があったものと認めることができる。 (5) 患者K.Y(乙6の25~28)に係る保険請求ついて①本件A歯科医院において,原告は,平成15年7月1日に当該患者からインプラントの治療費として20万円を徴収していたにもかかわらず(乙16),当該患者について,有床義歯(局部5~8),有床義歯調整・指導料等の療法及び処置をしたとして,保険請求をしていたこと(乙6の25),②本件A歯科医院において,原告は,前装鋳造冠等の療法及び処置名目での保険請求もしていること(乙6の28),③当該患者は,同年10月10日,左下1番から2番及び右下1番から2番まで前装鋳造冠(12%金パラ)を装着したが(甲14の25),その約3か月後である平成16年1月20日,- 24 -「舌側のメタルの冷めたい感じがイヤだ。」と訴えたため,キャディムに切り替えたこと(甲14の25の10枚目),④当該患者は,その半年後の同年7月21日に右下3番に前装鋳造冠(ニッケル)を,同年8月12日に左下3番に同様の前装鋳造冠(ニッケル)をそれぞれ装着したが,同月24日,「舌側のメタルが冷たい感じがする。」と訴えたため,右下3番及び左下3番の両方ともキャディムに切り替えたこと(甲14の27),以上の事実を認めることができ ッケル)をそれぞれ装着したが,同月24日,「舌側のメタルが冷たい感じがする。」と訴えたため,右下3番及び左下3番の両方ともキャディムに切り替えたこと(甲14の27),以上の事実を認めることができる。 そうすると,当該患者について,上記①のとおり,自費診療であるインプラントの治療予定で代金を徴収しておきながら,仮義歯として保険請求をすることができないものについて,義歯治療として保険請求をしたという不正請求があったものと認めることができる(乙6の25)。 また,上記②から④までのとおり,原告は,当該患者について,以前に当左下の1~2番及び右下1~2番に前装鋳造冠を装着した際,「舌側のメタルの冷めたい感じがイヤだ。」との訴えにより,自らキャディムに変更しておきながら,その半年後に,右下3番及び左下3番に再び金属製の前装鋳造冠を装着し,わずか12日後にキャディムに変更するという治療を実施したというのであるが,そのような場合の前装鋳造冠の装着に係る保険請求は,昭和51年7月29日保文発352号,同年11月26日保険発115号通知「保険給付外の材料使用による自費診療の取扱い」(乙22)によれば,「当該治療を患者が希望した場合に限り,歯冠修復にあっては歯冠形成(支台築造を含む。)以降,欠損補綴にあっては補綴時診断以降を保険給付外の扱いとするものである。」とされているから,同通知に基づき,前装鋳造冠(ニッケル)装着のため歯冠形成を行った平成16年8月5日の時点まで遡及して保険給付外とする取扱いをしなければならないのであって,同月24日に自費診療に切り替えるまでの診療についても保険請求をした点において,不当請求に当たる。 - 25 -これに対して,原告は,「いったん保険適用による治療を受けた場合には,違和感があっても我慢するか,自費治療をせよと患者 までの診療についても保険請求をした点において,不当請求に当たる。 - 25 -これに対して,原告は,「いったん保険適用による治療を受けた場合には,違和感があっても我慢するか,自費治療をせよと患者に強いるのは酷である。」旨主張するが,医療保険制度は保険料の拠出と国庫の負担を財源として保険給付を行う社会保険制度の一つであることに照らして前記通知の基準内容は合理的なものであるということができる上,本件においては,前記のように当該患者は半年程前にも保険診療から自費診療へ切り替えた経験を有し,今回の装着時にもその違和感の可能性について事前に十分な説明を歯科医師から受け,慎重に判断をすることが可能であったものであり,切り替え時に歯冠形成時以降の治療を保険外診療とされても当該患者にとって特に酷であるとはいえないから,原告の上記主張は理由がない。 以上によれば,当該患者について,上記のとおりの不正請求及び不当請求があったものと認めることができる。 (6) 患者Y.K(乙6の31及び32)に係る保険請求ついて自費治療であるキャディムの装着を行いその費用を徴収したにもかかわらず,同一部位について保険が適用されるジャケット冠による治療をしたとして保険請求がされていることを認めることができる(乙6の31及び32)。 そうすると,たとえ原告主張のとおり本件A歯科医院内の連絡ミスにより生じたものであったとしても,それは不正な請求(二重請求)であったといわざるを得ない。 (7) 患者R.H(乙6の33~35)に係る保険請求ついて自費診療であるキャディムの装着を行いその費用を徴収したにもかかわらず,同一部位について保険が適用されるジャケット冠による治療をしたとして保険請求がされていることを認めることができる(乙6の33~35)。 そうすると,たとえ原告主張のとおり本 を徴収したにもかかわらず,同一部位について保険が適用されるジャケット冠による治療をしたとして保険請求がされていることを認めることができる(乙6の33~35)。 そうすると,たとえ原告主張のとおり本件A歯科医院内の連絡ミスにより生じたものであったとしても,それは不正な請求(二重請求)であったといわざるを得ない。 - 26 -(8) かかりつけ歯科医初診料・再診料について患者調査の際,患者R.N(乙6の2及び3),患者K.Y(乙6の25~28),患者K.H(乙6の29及び30),患者Y.K(乙6の31及び32),患者R.H(乙6の33~35)及び患者K.M(乙6の36)の6名はいずれも,かかりつけ歯科医初診料・再診料に係る説明文書を受け取っていないと供述していることを認めることができ,それら6名がそろって記憶を喪失するなどして誤った証言をすることは考え難く,その信用性を疑わせる事情も認められないから,それらの供述のとおり,上記各患者はいずれも上記説明文書を受け取っていないものと認めるのが相当である。 これに反し,原告は,上記供述をいずれも誤った供述であると主張するが,これを裏付ける事情を認めることができず,その主張をたやすく採用することはできない。 以上によれば,上記各患者について,上記説明文書の交付という要件を充たしていないにもかかわらず,かかりつけ歯科医としての初診料・再診料の保険請求をした不当請求があったものと認めることができる。 (9) 「重大な過失」「しばしば」との評価の適否についてア前記認定のとおり,患者N.A(乙6の1),患者R.N(乙6の2及び3),患者H.J(乙6の4及び5),患者S.K(乙6の6~24),患者K.Y(乙6の25~28),患者K.H(乙6の29及び30),患者Y.K(乙6の31及び32),患者R.H( N(乙6の2及び3),患者H.J(乙6の4及び5),患者S.K(乙6の6~24),患者K.Y(乙6の25~28),患者K.H(乙6の29及び30),患者Y.K(乙6の31及び32),患者R.H(乙6の33~35)及び患者K.M(乙6の36)について,いずれも不正請求又は不当請求があったということができる。 そして,これらの事実を前提に検討すると,本件A歯科医院においては,付増請求や二重請求といった通常では起こり得ないと考えられる形態の保険請求が複数の患者について行われていたばかりか,特定の患者(患者S. K)についてのものとはいえ,2年余りの間に19回にもわたって継続的に- 27 -不正請求が行われていたのであって,これらの事情からすれば,本件A歯科医院における上記の不正請求又は不当請求は,「重大な過失」により「しばしば」行われたものと認めるのが相当である。 イこれに対し,原告は,「別件E歯科医院及び本件A歯科医院における診療点数のある患者数に占める不正請求及び不当請求の件数の割合や,両歯科医院における保険診療収入に占める返還金額の割合を指摘して,上記不正請求等は『重大な過失』に基づくものではないし,『しばしば』行われたものとは到底評価できない。」旨主張する。しかしながら,「重大な過失」及び「しばしば」の各要件についての該当性の判断に当たっては,不正請求等の件数や回数,割合等のみを考慮するのではなく,その性質や内容等をも考慮するのが相当であるから(甲6参照),原告の上記主張は採用することはできない。 ウまた,原告は,「別件E歯科医院において本件各取消処分の原因となった事実と同種の事例は一つも発見されていない」ことも上記主張の根拠として挙げている。しかしながら,別件E歯科医院は本件各取消処分の対象となった本件A歯科医院と開設者が いて本件各取消処分の原因となった事実と同種の事例は一つも発見されていない」ことも上記主張の根拠として挙げている。しかしながら,別件E歯科医院は本件各取消処分の対象となった本件A歯科医院と開設者が同一であるというだけであり,別件E歯科医院に関する事情は本件各取消処分の認定判断と直接の関連があるものではないし,そもそも別件E歯科医院についての監査は,一部の患者に対する特定の期間における診療について行ったものにすぎないから,別件E歯科医院において不正請求及び不当請求が全くなかったとの前提に立つかのような原告の上記主張は,その前提からしてたやすく採用することができない。 エさらに,原告は,「『重大な過失』の認定においては,従前の指導又は監査の実績等も判断材料とされなければならない。原告は,集団指導,集団的個別指導及び個別指導をそれぞれ受けたが,個別指導の結果は『概ね妥当』であり,重大な問題点を指摘されておらず,その後は,監査はもちろん個別指導も受けていないことからすると,原告について『重大な過失』- 28 -があると認定することには無理がある。」旨主張する。 しかしながら,「重大な過失」の認定に際して,従前の指導又は監査の実績等を考慮しなければならないとする根拠を認めることができず,かえって,監査対象となる保険医療機関等の選定基準は複数あり,度重なる個別指導によっても診療内容又は診療報酬の請求に改善が見られない場合というのはその選定基準の一つにすぎないとされていること(乙3)に照らせば,原告の上記主張は「重大な過失」についての認定を左右するものではない。 (10)原告自身の「重大な過失」の存否について原告は,「原告は直接の担当医ではなく,本件A歯科医院の管理者でもなかったから,被告が指摘する各注意義務違反(過失)は原告自身の過失ではな はない。 (10)原告自身の「重大な過失」の存否について原告は,「原告は直接の担当医ではなく,本件A歯科医院の管理者でもなかったから,被告が指摘する各注意義務違反(過失)は原告自身の過失ではない。」旨主張する。 しかしながら,①原告が本件A歯科医院の開設者であること(甲1),②原告自身も本件A歯科医院において診療を担当していたこと(乙6の1等),③原告のように一人で3か所もの歯科医院を開設して多額の報酬を得ている医師としてはより一層保険診療報酬請求事務の適正さを確保するように特段の配慮をすべきであるということもできることからすれば,本件A歯科医院における不正請求又は不当請求については原告自身に重大な過失があったものと認めるのが相当であり,直接の担当医や管理者ではないことからその責任を免れることはできないというべきである。 (11)小括以上の検討によれば,本件A歯科医院及び原告については,いずれも,「重大な過失により,不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行った」ものと認めるのが相当であり,健康保険法80条1号,2号,3号及び6号にいう保険医療機関の指定取消事由並びに同法81条1号及び3号にいう保険医の登録取消事由があるということができる。 本件各取消処分の比例原則違反の有無について- 29 -原告は,「青森社会保険事務局の当初の処分意見である『戒告』こそが妥当であり,原告に対して取消処分を科すのは比例原則に明らかに反する。」旨主張する。 しかしながら,上記認定のとおり,本件が「重大な過失により不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったもの」との処分基準に該当するものである以上,本件A歯科医院の保険医療機関の指定及び原告の保険医の登録のいずれについても取消処分が可能であること,青森県において付増請求及び振替請求による不 ば行ったもの」との処分基準に該当するものである以上,本件A歯科医院の保険医療機関の指定及び原告の保険医の登録のいずれについても取消処分が可能であること,青森県において付増請求及び振替請求による不正請求額が29万7090円の場合に保険医療機関の指定及び保険医の登録を取り消した事例があること(乙23)に照らせば,本件各取消処分が比例原則に違反する違法なものであると認めることはできない。 本件各取消処分に係る手続的瑕疵の有無についてア原告は,「本件聴聞には原告代理人である弁護士の出頭の機会や準備の期間が確保されておらず,また,原告に本件各取消処分の主観的要件や評価的要件についての弁明の機会が保障されていなかったから,行政手続法16条又は同法20条に違反する。」旨主張する。 しかしながら,そもそも聴聞期日への代理人の出頭は必要的なものとはされていない上,本件聴聞を行うに当たり代理人の出頭自体を拒否されたという事実も認められない。また,前記事実経過に照らせば,原告が聴聞通知書を受領した平成17年4月2日(乙10)から,同月21日の本件聴聞期日までには相応の時間的余裕があり,本件聴聞において原告が本件各取消処分の主観的要件等について弁明を行うことは十分可能であったと認められるから,本件聴聞の手続が行政手続法16条又は同法20条に違反するものであるとはいえない。 イまた,原告は,「本件聴聞に先立って求めた患者個別調書の閲覧が認められず,閲覧が認められた資料についても謄写が認められなかったが,本件各取消処分に対する防御活動の準備としてこの程度の事前準備の機会しか与え- 30 -られないのでは適正手続の要請は到底充たされない。」旨主張する。 しかしながら,原告は,本件聴聞に先立って青森社会保険事務局長に対し他の関係文書とともに患者個別調書の閲 備の機会しか与え- 30 -られないのでは適正手続の要請は到底充たされない。」旨主張する。 しかしながら,原告は,本件聴聞に先立って青森社会保険事務局長に対し他の関係文書とともに患者個別調書の閲覧を申請していること(乙18)からして,患者個別調書のみ閲覧を拒絶されたとはにわかに考え難い。なお,仮に原告に対して患者個別調書の閲覧を認めなかったとしても,患者個別調書の多くはその作成時に原告自身がその内容を確認してから署名押印をしたものである上(乙6の1,乙6の4~28,乙6の30),原告自身が内容を確認して署名押印をしていない残りの患者個別調書についても本件A歯科医院において診療に当たっていた他の歯科医師らがその内容を確認した上で署名押印をしたものであり(乙6の2及び3,乙6の29,乙6の31~36),その歯科医師らを通して原告がその内容を把握することが容易であったと考えられることからすれば,その手続的瑕疵が本件聴聞における原告の弁明内容に重大な影響を及ぼしたものであるとは考え難く,ひいては青森社会保険事務局長の認定判断に重大な影響を及ぼしたとも考え難いから,これが本件各取消処分を違法として取り消す理由になるということはできない。 さらに,行政手続法18条にいう「閲覧」とは文書等の資料を読み又は観察することを意味し,謄写することまでは含まないと解されるから,原告の謄写請求を拒否したことが適正手続の要請に反する手続的瑕疵であるとはいえない。 結論 以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 青森地方裁判所第2民事部裁判長裁判官齊木教朗裁判官澤田久文裁判官西山渉 地方裁判所第2民事部裁判長裁判官齊木教朗裁判官澤田久文裁判官西山渉
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