主文 被告人を懲役4年6か月に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、広島弁護士会に所属する弁護士であり第1 平成27年4月1日付けの広島家庭裁判所の審判により成年被後見人Aの成年後見人に選任され、同人の財産管理業務に従事していたものであるが、株式会社B銀行C支店に開設されたA成年後見人D名義の普通預金口座の預金を前記Aのために業務上預かり保管中、別表1(添付省略)記載のとおり、令和2年6月22日及び同年7月6日、2回にわたり、広島市E区FG番H号同銀行F支店において、別件民事事件の依頼人Iに対する立替金として自己の用途に費消するため、同口座から合計5000万円を同銀行J支店に開設されたI名義の普通預金口座に送金し、第2 Kから、被相続人L及び同Mの相続財産の管理及び前記Kへの相続手続について委任を受け、前記Lの預貯金口座及び前記Mの預貯金口座の解約金の受領及び保管等の業務に従事していたものであるが、1⑴ 前記B銀行N支店に開設された前記L名義の預金口座の解約金3102万3882円を同銀行F支店に開設した預り口弁護士D名義の普通預金口座に入金して預金し、同預金を前記Kのために業務上預かり保管中、令和3年12月10日、広島市E区O町P番Q号同銀行R支店において、前記用途に費消するため、同口座から2000万円を前記I名義の預金口座に送金し、⑵ S農業協同組合T支店に開設された前記L名義の貯金口座並びに前記B銀行U支店、同銀行N支店及びS農業協同組合T支店に開設された前記M名義の預貯金口座の解約金合計4118万9457円を前記 預り口弁護士D名義の普通預金口座に入金して預金し、前記第2の1⑴記載の預金の残額とともに前記Kのために業務上預かり保 設された前記M名義の預貯金口座の解約金合計4118万9457円を前記 預り口弁護士D名義の普通預金口座に入金して預金し、前記第2の1⑴記載の預金の残額とともに前記Kのために業務上預かり保管中、別表2(添付省略)記載のとおり、令和4年3月18日から令和5年8月28日までの間、7回にわたり、同銀行F支店ほか4か所において、前記用途に費消するため、同口座から合計4200万円を前記I名義の預金口座に送金し、 2 株式会社V銀行に開設された前記L名義の貯金口座及び前記M名義の貯金口座の解約金合計1906万9352円を同銀行に開設したD名義の通常貯金口座に入金して貯金し、同貯金を前記Kのために業務上預かり保管中、別表3(添付省略)記載のとおり、令和4年2月7日から令和6年5月9日までの間、26回にわたり、広島市E区W町X番Y号Z郵便局ほか9か所において、自動車購入代金又はエステティックサロン代金等として自己の用途に費消するため、合計1860万3120円を送金し又は払い戻して着服し、もって横領した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)罰条判示第1の所為包括して刑法253条判示第2の1の所為包括して刑法253条判示第2の2の所為包括して刑法253条併合罪の加重刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い判示第2の1の罪の刑に法定の加重)(量刑の理由) 被告人は、高い職業倫理を備えた法律専門家である弁護士として、多額の財産を適正に管理するであろうことを前提に、依頼者から委任を受け、また成年後見人に選任されて財産管理等の業務を行っていた。被告人は、その信頼を大きく裏切り、合計約1億3000万円という巨額の預貯 の財産を適正に管理するであろうことを前提に、依頼者から委任を受け、また成年後見人に選任されて財産管理等の業務を行っていた。被告人は、その信頼を大きく裏切り、合計約1億3000万円という巨額の預貯金を横領する本件各犯行に及んだのであり、結果は重大で、社会的に厳しい非難がされるべき犯行である。被告人は、別件民事事件について見るべき業務を行わないまま放置しておきながら、それを依頼者から追及されると、その場をしのごうと考え、順調に進捗していると虚偽の報告をした。そのために、依頼者から立替払いを求められると、これに応じて自費で立替払いを行う中で、多額の立替えに迫られ、一時流用のため第1の犯行に及んだ。この件について、不正を疑われ、令和3年3月に家庭裁判所の審問を受け、同年6月には、弁護士会から預り金の管理が会規に反するとして懲戒に関する調査を開始するとの通知も受けた。それにもかかわらず、被告人は、補填できる具体的な見込みもないのに、その場しのぎの立替払いを続けて第2の1の犯行に及んだ上、預り金を被告人個人名義口座で管理すると、あたかも自己のお金と同じように、生活費や経費等に私的利用する第2の2の犯行に及んだ。確かに、第1及び第2の1の犯行は、自ら利得する目的ではなく、第1については、一時流用した約半年後に全額が補填されている。しかし、前記のような経緯等からすると、被告人は、自身の業務怠慢を糊塗するために依頼者の財産を侵害し続けたのであるから、その意思決定は厳しく非難されるべきであり、本件は刑の執行を猶予するのが相当な事案であるとはいえない。 そこで、以上の事情のほか、第2の被害者との間で、横領金及び謝罪金として合計約8800万円の支払義務があることを認めて、これを支払う旨の合意をし、2000万円が支払われたこと、別件民事事件の業務を引 こで、以上の事情のほか、第2の被害者との間で、横領金及び謝罪金として合計約8800万円の支払義務があることを認めて、これを支払う旨の合意をし、2000万円が支払われたこと、別件民事事件の業務を引き継いだ弁護士が業務を遂行したことにより約3000万円を回収できる 目途が立ち、これを被害弁償に充当できる見込みがあること、別件民事事件に関する不動産が売却できた場合には、残額を完済できる見通しはあること、同被害者が謝罪金等の支払を慮って嘆願書を提出していること、第1の被害者の親族に対して謝罪金として50万円を支払い、同人が宥恕の意思を示していること、被告人が罪を認めていること、当然のことではあるが、今後、弁護士資格喪失という社会的制裁を受けることが確実であること等の事情を刑期の面で考慮して、主文の刑を量定した。 (検察官の求刑懲役5年)令和7年3月5日広島地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官石井寛 裁判官横井裕美 裁判官高田優
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