平成25(ワ)4638 損害賠償請求事件,請負代金等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年4月18日 名古屋地方裁判所
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判決文本文46,945 文字)

- 1 -平成29年4月18日判決言渡損害賠償請求事件(以下「甲事件」という。)請負代金等請求事件(以下「乙事件」という。)損害賠償請求事件(以下「丙事件」という。)主文 1 原告会社の甲事件請求及び乙事件請求をいずれも棄却する。 原告会社,被告A及び被告Bは,被告会社に対し,連帯して,18億1687万2168円並びにこれに対する原告会社及び被告Aについては平成26年5月4日から,被告Bについては同月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告会社のその余の丙事件請求を棄却する。 3 訴訟費用は,原告会社に生じた費用,被告会社に生じた費用の5分の3及び被告Bに生じた費用の5分の3を原告会社の負担とし,被告Aに生じた費用及び被告会社に生じた費用の5分の1を被告Aの負担とし,被告Bに生じたその余の費用及び被告会社に生じたその余の費用を被告Bの負担とする。 4 この判決は,2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 甲事件請求 被告会社及び被告Bは,原告会社に対し,連帯して,11億4264万4868円及びこれに対する平成26年2月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告Bは,原告会社に対し,858万5850円及びこれに対する平成26年2月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 乙事件請求- 2 -被告会社は,原告会社に対し,1557万6750円及びうち574万9800円に対する平成25年5月1日から,うち982万6950円に対する同年6月1日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 丙事件請求原告会社,被告A及び被告Bは,被告会社に対し,連帯して,18億2192 1日から,うち982万6950円に対する同年6月1日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 丙事件請求原告会社,被告A及び被告Bは,被告会社に対し,連帯して,18億2192万2168円並びにこれに対する原告会社及び被告Aについては平成26年5月4日から,被告Bについては同月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,次のとおりの甲事件に乙事件及び丙事件が併合された事案である。 甲事件において,原告会社は,①平成17年3月から平成25年2月までの間,被告会社の元従業員である被告Bから,架空循環取引(被告会社が,原告会社に対し,直接又は被告会社の取引先αを介して架空の工事を発注し,代金を支払う,原告会社が,被告会社の取引先βに対し,上記代金を上回る代金で,当該工事を発注し,その代金を支払う,被告会社が,被告会社の取引先βから当該工事の発注を受け,その代金を受け取るというもの)を強いられるとともに,税務調査の際,上記架空循環取引に係る反面調査が被告会社に及ばないようにする目的で,税負担を強要されたと主張して,被告Bにつき,不法行為による損害賠償として,被告会社につき,使用者責任(民法715条)による損害賠償として,被告会社及び被告Bに対して,連帯して,11億4264万4868円(架空循環取引そのものによる損害額〔上記の代金と上記の代金の差額及びそれに伴う手形割引料の合計〕9億7281万9858円及び負担を強いられた税金額1億6982万5010円の合計)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年2月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,②被告Bに対して,平成21年1月21日から平成24年6月19日までの間に る訴状送達の日の翌日である平成26年2月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,②被告Bに対して,平成21年1月21日から平成24年6月19日までの間に合計858- 3 -万5850円を貸し付けた旨主張して,金銭消費貸借契約に基づく返還請求として,858万5850円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年2月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 乙事件において,原告会社は,被告会社に対して,平成24年11月30日から平成25年4月24日までの間に締結した請負契約に基づく報酬支払請求ないし製品の売買契約に基づく代金支払請求として,1557万6750円並びにうち574万9800円に対する弁済期の翌日である同年5月1日から,うち982万6950円に対する弁済期の翌日である同年6月1日から各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 丙事件において,被告会社は,原告会社,被告A及び被告Bが共謀して,前記の架空循環取引がいつかは破綻して被告会社に多額の損害を与えるものと認識しながら,前記の架空循環取引を行ったと主張して,原告会社,被告A及び被告Bにつき,不法行為による損害賠償として,原告会社につき,選択的に会社法350条による損害賠償として,原告会社,被告A及び被告Bに対して,連帯して,前記の架空循環取引に係る支払の停止によって回収できなくなった売掛金に対応する仕入代金額の合計18億3734万2500円の内金(乙事件に係る相殺後の残額)18億2192万2168円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(原告会社及び被告Aにつき平成26年5月4日,被告Bにつき同月5日)から支払済みまで民法所定の 00円の内金(乙事件に係る相殺後の残額)18億2192万2168円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(原告会社及び被告Aにつき平成26年5月4日,被告Bにつき同月5日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 当事者- 4 -ア原告会社は,省力機器,専用装置及び環境関連機器の設計,製作及びメンテナンス等を目的とする株式会社であり,被告Aは,平成19年4月から,後記刑事事件により懲役3年の刑に処せられ,欠格事由(会社法331条1項4号)に該当して退任するまで,原告会社の代表取締役であった者であり,現在は刑事施設に収容されている。(争いのない事実,甲52)イ被告会社は,各種機械器具及びその部分品並びに付属品の販売業等を目的とする株式会社であり,被告Bは,平成25年に懲戒解雇されるまで,被告会社の名古屋支店(以下「名古屋支店」という。)に勤務していた者であり,平成18年4月,システム営業部部長に就任し,平成23年,同支店に置かれた中日本営業本部のSD(SalesDivision)長に就任した。 (争いのない事実,丙6)架空循環取引ア被告Bは,平成10年10月頃以降,共同で担当した案件を通じて,原告会社の代表取締役(当時)であり,被告Aの叔父であるCに対し,取引先への接待交通費及び個人的な遊興費等を捻出する方法として,原告会社に対する水増し発注又は架空発注(以下「現金化」という。)を持ちかけ,平成17年頃までこれを行った。 被告Bは,平成13年頃,Cから資金繰りの相談を受けるようになり,未だ検収が行われていない商品につき,検収が行われた旨の虚偽の納品書及 現金化」という。)を持ちかけ,平成17年頃までこれを行った。 被告Bは,平成13年頃,Cから資金繰りの相談を受けるようになり,未だ検収が行われていない商品につき,検収が行われた旨の虚偽の納品書及び請求書を作成して原告会社に対する支払を早める手法(以下「先行検収」という。)を用いて,原告会社の資金繰りを助けるようになった。また,原告会社は,検収ができない取引について,被告会社に対する売掛債権を対象とする債権譲渡担保を用いて金融機関から融資を受けていたところ,被告Bは,架空の債権が存在するように見せかけて,原告会社が金融機関から融資を受けることができるよう手助けをした(以下「架空債権譲渡担保融資」という。)。 - 5 -また,平成15年5月頃以降は,現金化により原告会社が得た金銭を原告会社にプールして,被告会社の原告会社に対する正規発注案件における発注額の削減に用いたり,被告Bらの私費の領収証の付替えの穴埋めに用いたりしていた(以下「プール金取引」という。)。(以上につき,乙1)イ被告Bは,平成17年3月頃,前記アの先行検収及び架空債権譲渡担保融資が困難となったことから,新たな資金繰りの援助の方法として,次のような架空の循環取引(以下「本件架空循環取引」という。)を考案し,開始した。 すなわち,本件架空循環取引の各商流は,①原告会社が被告会社の取引先7社(以下「本件売掛先7社」という。)のうちの1社に対して架空の装置製作を発注し,②上記売掛先1社が被告会社に対してこれを発注し,③被告会社が被告会社の取引先4社(以下「本件仕入先4社」という。)のうちの1社に対してこれを発注し,④上記仕入先1社が原告会社に対してこれを発注するというものである(なお,③及び④に代わり,被告会社が原告会社に対して直接発注する場合もある。 入先4社」という。)のうちの1社に対してこれを発注し,④上記仕入先1社が原告会社に対してこれを発注するというものである(なお,③及び④に代わり,被告会社が原告会社に対して直接発注する場合もある。)。(乙1) 本件架空循環取引の発覚の経緯被告会社においては,平成23年9月以降,本件売掛先7社のうちの1つであるD株式会社(以下「D」という。)への受注残が多額に上ることが問題となり,被告Bに対する聴取調査等が行われていたところ,平成25年2月14日の被告会社内の打合せにおいて,Dとの間の取引が与信限度以上に及んでいることなどを理由に,上記取引からの撤退が強く指示され,同月及び同年3月中の新規取引を控えることが決定された。被告Bは,上記指示及び決定により,本件架空循環取引の継続が困難となったことから,同月13日,当時営業統括本部長であったE取締役専務執行役員(以下「E」という。)に対し,本件架空循環取引を行っていたことを申告した。(乙1) 被告A及び被告Bの刑事事件- 6 -被告A及び被告Bは,共謀して,平成19年12月27日頃から平成21年7月30日頃までの間に,複数回にわたり,原告会社の取引先会社から被告会社に対する請求がいずれも正当なものと誤信させ,被告会社振出に係る約束手形13通を送付させて受領したとして,詐欺罪により,被告Aが懲役3年.被告Bが懲役3年6月の有罪判決を受けた(以下「本件刑事事件」という。)。 (甲52,丙4) 被告会社と原告会社との間の請負契約(乙事件関係)ア原告会社と被告会社との間で,平成24年11月30日から平成25年3月28日までの間に,別紙1の「注文日付・契約締結日」欄記載の日,同別紙「工事内容」欄記載の工事内容又は製品について,その代金額を同別 告会社と被告会社との間で,平成24年11月30日から平成25年3月28日までの間に,別紙1の「注文日付・契約締結日」欄記載の日,同別紙「工事内容」欄記載の工事内容又は製品について,その代金額を同別紙「金額(税込)(円)」欄記載金額(合計574万9800円)として,その納期を同月31日,その代金支払期限を同年4月30日とするという内容で,工事請負契約又は製品の売買契約を締結した(以下まとめて「本件契約1」という。)。(争いのない事実)原告会社は,同年3月31日までに本件契約1に基づき,各工事を全て完成し,被告会社に対し,各工事内容又は製品を同別紙「伝票日付」欄記載の日にそれぞれ引き渡した。(争いのない事実)イ原告会社と被告会社との間で,平成25年2月28日から同年4月24日までの間に,別紙2の「注文日付・契約締結日」欄記載の日,同別紙「工事内容」欄記載の工事内容又は製品について,その代金額を同別紙「金額(税込)(円)」欄記載金額(合計982万6950円)として,その納期を同月30日,その代金支払期限を同年5月31日とするという内容で,工事請負契約又は製品の売買契約を締結した(以下まとめて「本件契約2」という。)。(争いのない事実)原告会社は,同年4月30日までに本件契約2に基づき,各工事を全て完成し,被告会社に対し,各工事内容又は製品を同別紙「伝票日付」欄記載の- 7 -日にそれぞれ引き渡した。(争いのない事実) 3 争点及びこれに関する当事者の主張 被告Bの原告会社に対する不法行為(甲事件損害賠償請求(民法709条,715条)に係る請求原因)の成否 (原告会社の主張)ア被告Bの不法行為その1(本件架空循環取引の実行)被告Bは,平成17年3月頃から平成25年3月 害賠償請求(民法709条,715条)に係る請求原因)の成否 (原告会社の主張)ア被告Bの不法行為その1(本件架空循環取引の実行)被告Bは,平成17年3月頃から平成25年3月までの間,被告会社,本件売掛先7社及び本件仕入先4社に利益が生じ,原告会社に損害が集中するよう本件架空循環取引の仕組みを構築し,本件架空循環取引の全ての案件において,取引先の算定,取引金額,仕入計上及び売上計上の時期等の全ての決定を行い,C及び被告Aに対して指示を行って,本件架空循環取引に係る書類の準備及び偽造並びに発注及び支払の管理等の実行行為を行っており,これは原告会社に対する不法行為に該当する。 イ被告Bの不法行為その2(税負担の強要)原告会社は,平成18年8月に千種税務署の税務調査(以下「第2回税務調査」という。)を,平成21年8月に豊田税務署の税務調査(以下「第3回税務調査」という。)を,平成24年7月に名古屋国税局の税務調査(以下「第4回税務調査」という。)を受け,それぞれにおいて,税務署等から被告会社に対する架空発注や架空循環取引を明らかにするよう求められ,その都度,被告会社への反面調査が行われそうになった。被告Bは,原告会社に対し,被告会社への反面調査が及ぶことを避けるため,使途秘匿金扱いの税負担を強要した(以下「本件税負担強要」という。)。 ウ原告が被告Bの不法行為によって被った損害原告会社は,被告Bが行った本件架空循環取引のうち別紙3記載の取引(以下「本件架空循環取引1」という。)によって,①通常生ずべき損害として,原告会社が本件仕入先4社から支払を受けた金額と原告会社が本件売- 8 -掛先7社に対して支払った金額の差額の合計9億2752万1647円(税抜)及びこれに伴う手形割引手数料4529 害として,原告会社が本件仕入先4社から支払を受けた金額と原告会社が本件売- 8 -掛先7社に対して支払った金額の差額の合計9億2752万1647円(税抜)及びこれに伴う手形割引手数料4529万8211円の合計9億7281万9858円の損害を被り,さらに,②前記イの税務調査という特別の事情によって計1億6982万5010円(第2回税務調査において7973万4500円,第3回税務調査において7336万7900円,第4回税務調査において1672万2610円の合計)の税負担を強いられたが,これは,被告Bが行った現金化,プール金取引及び本件架空循環取引に係る税務調査を受け,その都度,被告Bの要請によって被告会社への反面調査を避ける目的で行ったものであるから,被告Bの不法行為と因果関係を有する。 エ被告B及び被告会社の後記主張に対する反論被告B及び被告会社は,原告会社が被告Bと共謀して,自らの意思で本件架空循環取引を行った旨主張するが,原告会社は,被告Bから,本件架空循環取引により原告会社が被った損害を実取引における利益で補填するとか,本件架空循環取引を5年間でなくすなどと約束をされ,これを信じたために,本件架空循環取引を行ったものである。また,被告Bは,被告会社のSD長という地位にあり,原告会社が被告Bの指示・命令に異議を唱えることができないことを利用して,原告会社に対し,本件架空循環取引を強要したのである。 (被告Bの主張)ア被告Bと被告Aは,共謀の上,共同して被告会社に対する詐欺行為を行っているのであり,被告会社と原告会社の間の取引による不法行為者は原告会社と被告Bであって,原告会社は被害者ではない。したがって,被告Bの原告会社に対する不法行為は存在しない。 被告A及び被告Bが被告会社から約 社と原告会社の間の取引による不法行為者は原告会社と被告Bであって,原告会社は被害者ではない。したがって,被告Bの原告会社に対する不法行為は存在しない。 被告A及び被告Bが被告会社から約2200万円をだまし取った詐欺行為を行ったとして有罪判決を受けたこと,本件架空循環取引が架空のものであること,被告Aが本件架空循環取引に係る請求書等を被告B名義で賃借し- 9 -ていたアパートに持参するなど本件架空循環取引が秘密裏に行われていることを認識していたことの各事情に照らすと,被告Aも本件架空循環取引が詐欺行為であることを認識していたのであり,被告Bは,原告会社に対しては賠償義務を負わない。 イ本件では原告会社に損害が生じた事実はなく,その立証もない。 ウ仮に,原告会社に何らかの損害が生じているとしても,原告会社は代表者らの自由意思による判断で被告会社との取引や本件架空循環取引を継続していたのであるから,その損害と被告Bや被告会社の何らかの行為との間に因果関係はない。 エ原告会社は,本件架空循環取引が被告Bから強要されたものであるかのような主張をするが,被告Bは被告会社の一従業員にすぎないし,本件架空循環取引は,原告会社の倒産防止目的で行われていたもので,実質的には原告会社に対する融資であった上,被告Aも個人的な費用を捻出するために本件架空循環取引等を行う必要があった。また,原告会社は,被告Bとは無関係な会社を介在させて水増し発注を行っていた。これらの事実から,本件架空循環取引等は,被告Bから強要されたものではないことが明らかである。 (被告会社の主張)ア原告会社は,本件架空循環取引によるところの利害得失を十分に認識した上で,自らの意思で本件架空循環取引等を行ったにすぎず,原告会社に発生し ないことが明らかである。 (被告会社の主張)ア原告会社は,本件架空循環取引によるところの利害得失を十分に認識した上で,自らの意思で本件架空循環取引等を行ったにすぎず,原告会社に発生した負担なるものは,原告会社の承諾に基づき発生したものであるから,「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」(民法709条)事実が存在せず,被告Bの原告会社に対する不法行為が成立する余地はない。 イ本件架空循環取引の個別の取引について原告会社の資金の出入りのみを取り上げて見れば原告会社に一定の負担は生ずるものの,いずれの時点であれ,ある特定の時点において,それまでの全ての本件架空循環取引により生じるはずだった原告会社の資金不足は,以降の個別の架空循環取引での被告- 10 -会社の支払が直接又は経由先を介して間接に原告会社へ入金されることで解消されることになる。したがって,原告会社に損害又は損失は生じていない。 甲事件損害賠償請求(民法709条)に対する被告Bの過失相殺の抗弁の当否 (被告Bの主張)被告Bが原告会社に対し,被告Aから提示された見積額を下回る額で発注をすることがあったが,被告Bが強制的に受注をさせることはなく,受注するか否かはC及び被告Aが任意の判断で行っていた。また,原告会社は,被告会社の従業員であるFの依頼を受けて,被告Bが関与することなく,被告会社との取引を行っており,被告会社以外の会社との間でも現金化を行っていた。したがって,原告会社は,自発的に,自らの判断において不正取引に関与し,その損害額を増加させており,仮に原告会社が被告Bに対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有するとしても,過失相殺される。 (原告会社の主張)ア民法722条1項は,被害者に過失があったときには 増加させており,仮に原告会社が被告Bに対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有するとしても,過失相殺される。 (原告会社の主張)ア民法722条1項は,被害者に過失があったときにはそれを勘案して加害者の賠償責任を減額することが可能であるとするが,債務不履行と異なり,その相殺は義務的ではない。 イ原告会社は,被告Bの勧誘により設立され,設立当初から被告会社が主要な取引先であり,被告会社営業責任者である被告Bの強い影響力を受けていたところ,被告Bは,その立場を利用して,本件架空循環取引を立案及び実行した。原告会社は,被告Bが本件架空循環取引で原告会社に生じた損害を被告会社からの直接発注工事で埋め合わせると約束したため,これを信用して本件架空循環取引や反面調査を避けるための税負担に応じたのであるから,原告会社には,損害賠償額を減額させるほどの帰責性は認められない。 また,原告会社の落ち度はもともと被告Bによって誘発されたものであるか- 11 -ら,原告会社が誘発に応じたという事実よりも,被告Bの帰責性の方がはるかに大きい。被告Bは,被告Bが損失補填してくれるものと誤信した原告会社の行為を利用しており,その行為の違法性に着目すれば,被告Bの減責主張を認めることは正義に反しているのであり,被告Bに係る過失相殺は認めるべきではない。 甲事件損害賠償請求(民法709条)に対する被告Bの信義則違反の抗弁の当否(争点)(被告Bの主張)本件刑事事件における被告Bの共同被告人は被告Aであり,被告Aの行為は原告会社自身の行為と擬制できるから,本件刑事事件は,いずれも原告会社側の積極的かつ自発的な協力や共犯行為がなければなしえない犯行である。そうすると,原告会社は自ら不正を行ったものであり,クリーンハンズの原則 身の行為と擬制できるから,本件刑事事件は,いずれも原告会社側の積極的かつ自発的な協力や共犯行為がなければなしえない犯行である。そうすると,原告会社は自ら不正を行ったものであり,クリーンハンズの原則に基づき,信義則上,請求権の存在を主張し得る資格がない。 (原告会社の主張)本件刑事事件は,形式的には循環になっていない取引のみについて起訴したものであり,その余の架空循環取引とは区別されなければならない。原告会社は,当該取引に係る回収が完了した取引(本件刑事事件の対象となった取引を含む。)において,被告会社及び当該取引に介在した各社が得た利益分の損害を被っているのである。したがって,原告会社の被告会社及び被告Bに対する請求は信義則に反しない。 甲事件損害賠償請求(使用者責任)に対する被告会社の事業執行性に係る抗弁の当否(争点)(被告会社の主張)被用者のなした取引行為が,その行為の外形からみて,使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても,その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく,かつ,その行為の相手方がこれを知り- 12 -ながら,又は,少なくとも重大な過失によりこれを知らないで,当該取引をしたと認められるときは,その行為に基づく損害は民法715条にいう「被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害」とはいえない。 本件架空循環取引は,形式的には被告Bの担当職務の範囲であるとしても,実在取引ではない違法なものであるから,被告Bに本件架空循環取引を行う決裁権限はなく,そのことは,被告Bと共謀して本件架空循環取引を継続していた被告Aにも認識可能だったはずであるから,本件架空循環取引を被告Bと共謀し,実行した加害者である原告会社らに対し,被害者である被告会社が使用者 ことは,被告Bと共謀して本件架空循環取引を継続していた被告Aにも認識可能だったはずであるから,本件架空循環取引を被告Bと共謀し,実行した加害者である原告会社らに対し,被害者である被告会社が使用者責任を負うはずがない。 (原告会社の主張)本件架空循環取引は,有効な金融取引であり,またその外形からみて,使用者の事業の範囲内に属するものと認められるところ,本件架空循環取引の各取引のほとんどが約500万円以上1000万円未満の金額で設定されており,被告Bが当時の職務権限内において適法に決裁することができたものである。 原告会社は,被告Bが被告会社における決裁権限に基づき適法に本件架空循環取引を行っていたと認識していたのであるから,職務権限内において適法に行われたものではないと知りながら又は少なくとも重大な過失により知らないで,当該取引をしたと認められない。 甲事件損害賠償請求(使用者責任)に対する被告会社の民法715条1項ただし書の抗弁の当否 (被告会社の主張)ア被告Bは,本件架空循環取引のための作業を業務時間外に社外アパートで行ったり,部下及び取引先の担当者の印章並びに見積書,注文書等の取引文書及び社内伝票等を偽造したりした。また,被告Bは,被告会社の会計監査人であった有限責任G監査法人(以下,単に「会計監査人」という。)がDに対して送付した在庫の残高確認書を取り戻し,D名義の残高確認書を偽造- 13 -して,会計監査人にこれを送付し,被告会社管理部門によるヒアリングに対しても,本件架空循環取引が実在するかのように偽るため,最終納入先の受領書,工程表等を偽造して被告会社に示したほか,別の取引の商品の図面,出荷前写真等を駆使して当該取引の実在性を偽った。さらに,被告Bは,1000万円以上の 実在するかのように偽るため,最終納入先の受領書,工程表等を偽造して被告会社に示したほか,別の取引の商品の図面,出荷前写真等を駆使して当該取引の実在性を偽った。さらに,被告Bは,1000万円以上の取引については,その注文書を客先から経理部門へ提出するという被告会社の規定を潜脱するため,本件架空循環取引の各取引を意図的に1000万円未満に設定していた。被告会社は,このような被告Bの隠蔽工作のため,平成25年3月まで本件架空循環取引に気づくことができなかった。 イ被告会社の平成17年当時の監査役であったHは,同年頃,被告会社と原告会社との関係が「変則的な融資状態」とも考えられる旨指摘したが,これは,前払による仕掛在庫が多額かつ長期のものになっていることについての指摘であって,架空循環取引とは全く無関係である。前払による仕掛在庫自体はそれほど珍しいものではないので,これが少々あったとしても,架空循環取引を疑うべき事情には当たらない。 (原告会社の主張)ア原告会社は,被告Bが被告Aに対して被告会社との直接取引を持ちかけたことをきっかけに設立され,その経営には被告Bが強い影響力を持っていた。被告会社は,被告Bが自由に操作できる関連会社を作るのを防ぐための対策を採っておらず,被告Bが行う事業について相当な注意をしていたとは認められない。 イ被告会社は,平成10年10月頃から平成15年頃までの間に被告Bが原告会社に行わせていた現金化,平成17年頃から開始した本件架空循環取引等を防ぐ対策を採っておらず,被告Bが行う事業について相当な注意をしていたとは認められない。 ウ被告会社は,Hが平成17年10月11日,原告会社との取引額及び回収- 14 -方法に改善策が見当たらず,変則的な融資状態とも考えられることを指摘 相当な注意をしていたとは認められない。 ウ被告会社は,Hが平成17年10月11日,原告会社との取引額及び回収- 14 -方法に改善策が見当たらず,変則的な融資状態とも考えられることを指摘し,その指摘を受けたI財経部大阪財経室長(当時)が名古屋支店の常務理事装置営業部長(当時)であったJに対し,メールで原告会社の平成17年3月期決算書を見た瞬間に粉飾と思ったなどの認識を伝え,直送品の存在場所について疑問を呈した。しかし,被告会社は,Iが架空循環取引品ではないかと疑った直送品の現物確認をしておらず,被告Bが行う事業について相当な注意をしていたとは認められない。 エ被告Bは,原告会社に対する第2回税務調査(平成18年8月),第3回税務調査(平成21年8月)及び第4回税務調査(平成24年7月)の際,原告会社に対し,被告会社への反面調査を避け,原告会社が税負担を負うことで解決するよう要請した。被告会社は,各税務調査の際,被告Bに適切な対応を採らせておらず,被告Bが行う事業について相当な注意をしていたとは認められない。 甲事件損害賠償請求(使用者責任)に対する被告会社の消滅時効の抗弁の当 (被告会社の主張)仮に原告会社が主張するような各損害が存在するとしても,原告会社は,当該損害の発生と同時に,損害及び加害者を知っていたことが明らかであるところ,原告会社が甲事件を提起したのは平成25年10月21日である。したがって,少なくとも平成22年10月21日以前に発生した損害については,消滅時効が完成しているから,これを援用する。 (原告会社の主張)原告会社の損害は,平成25年2月に本件架空循環取引が破綻したことによって発生したものであるから,原告会社の請求権に対する消滅時効の起算点は,同月であ 用する。 (原告会社の主張)原告会社の損害は,平成25年2月に本件架空循環取引が破綻したことによって発生したものであるから,原告会社の請求権に対する消滅時効の起算点は,同月である。原告会社は,同年10月21日に甲事件を提起したから,消滅時効は完成していない。 - 15 - 被告Bに対する甲事件貸金返還請求の当否(争点 (原告会社の主張)ア原告会社は,被告Bから,被告Bが賃借していた愛知県愛知郡a町bc番地所在のde号室(所在地名は,平成13年10月当時のもの。以下「本件アパート」という。)の賃料等(月8万7000円。以下「本件賃料」という。)について,一時的な借入を懇請され,平成21年3月頃から平成24年6月19日までの間に計41回にわたり,各8万7000円を貸し付けた。その際,被告Bは,原告会社に対し,自らの意思で,各8万7000円の貸付につき,その約1.5倍に当たる13万円を返済する旨約束した(以下「本件貸付1」という。)。 イ原告会社は,被告Bから,飲食代金,航空機チケット代金等について,一時的な借入を懇請され,平成21年1月21日,同年3月頃及び同年8月5日頃,被告Bに対し,それぞれ24万3000円,8万2500円,15万6000円を貸し付けた。その際,被告Bは,原告会社に対し,自らの意思で,各貸付金の約1.65倍に当たるそれぞれ40万1000円,13万6000円,25万7400円を返済する旨約束した(以下順に「本件貸付2」,「本件貸付3」及び「本件貸付4」という。)。 ウ原告会社は,第3回税務調査において税務署職員に発見された被告Bへの出金175万円について,被告Bから一時的な借入を懇請され,平成21年4月頃,被告Bに対し,175万円を貸し付けた(以下,「本件貸付5」とい ,第3回税務調査において税務署職員に発見された被告Bへの出金175万円について,被告Bから一時的な借入を懇請され,平成21年4月頃,被告Bに対し,175万円を貸し付けた(以下,「本件貸付5」という。)。 エ原告会社は,被告Bから,被告Bの海外旅行の航空機チケット代金の一時的な借入を懇請され,その代金として,平成23年4月6日,同年7月13日及び同年8月7日,被告Bに対し,それぞれ32万0450円,6万9500円,13万1000円を貸し付けた(以下順に「本件貸付6」,「本件貸付7」及び「本件貸付8」という。)。 - 16 -オ原告会社は,被告Bに対し,平成21年10月30日,同年9月2日及び同年10月3日,それぞれ33万8500円,35万円,15万円を貸し付けた(以下順に「本件貸付9」,「本件貸付10」及び「本件貸付11」という。)。 カ原告会社は,前記アないしオの貸付について,被告Bから,計64万8000円の返済を受けた。したがって,被告Bは,原告会社に対し,前記アないしオの貸付金合計額から上記返済金額を控除した858万5850円の支払義務を負う。 キ原告会社は,本件請求に係る被告Bとの間の合意の法的性質について,立替との主張を撤回し,貸付であると主張する。両者に係る客観的事実に全く変遷はなく,原告会社は,事実の法的評価を変更したものである。 (被告Bの主張)原告会社は,被告Bが作成したメモからこのような請求ができるはずであるとして,想像し得る請求額を請求しているだけである。上記メモは,いわば詐欺によって取得した金銭の原告会社と被告Bとの間の分配及び税務署に対する説明内容を記載したものであり,被告Bと原告会社との間の契約書等でもなければ,請求権の発生や存在を基礎づけるものでもない。 原告会社は,被告Bに 金銭の原告会社と被告Bとの間の分配及び税務署に対する説明内容を記載したものであり,被告Bと原告会社との間の契約書等でもなければ,請求権の発生や存在を基礎づけるものでもない。 原告会社は,被告Bに対する金銭支払請求の法的性質について立替から貸金へと変更したところ,両者の客観的事実は同一とはいえず,主張が変遷しており,被告Bに対する金銭支払請求の元となる事実を認識していなかった。 甲事件貸金返還請求に対する被告Bの弁済の抗弁の当 (被告Bの主張)原告会社が不正な取引によって得た金銭を一時的に被告Bに「貸付」し,後に行われた架空循環取引等の不正な取引によって得た金銭のうち被告Bが得る金銭で「返済」したとして消込みの処理を行い,原告会社の帳簿上では被告Bが返済したことにしている。したがって,被告Bは,弁済を行っていること- 17 -になる。 (原告会社の主張)被告Bの主張は争う。 甲事件貸金返還請求に対する被告Bの不法原因給付の抗弁の当否(争点)(被告Bの主張)原告会社が被告Bに返還を求める金銭は,被告Aと被告Bが共謀して行われた被告会社に対する詐欺行為によって得た違法不当な収益のうち,原告会社の取り分である。そして,原告会社は,被告Bの協力を得て一連の詐欺行為を継続する目的で,犯罪によって得た利益の分配行為として,被告Bに対して金銭授受を行っていた。 したがって,原告会社の被告Bに対する貸付は全て不法原因給付であり,被告Bには返還義務がない。 (原告会社の主張)原告会社の被告Bに対する貸付金は,本件架空循環取引とは別の金銭消費貸借契約に基づいて交付されたものであり,本件架空循環取引により原告会社が得た利益の一部ではないから,不法な原因で 主張)原告会社の被告Bに対する貸付金は,本件架空循環取引とは別の金銭消費貸借契約に基づいて交付されたものであり,本件架空循環取引により原告会社が得た利益の一部ではないから,不法な原因で得た金銭ではない。 甲事件貸金返還請求に対する被告Bの信義則違反の抗弁の当否(争点)(被告Bの主張)前記と同じ。 (原告会社の主張)前記と同じ。 甲事件貸金返還請求に対する被告Bの強行規定違反又は公序良俗違反の抗弁の当 (被告Bの主張)ア原告会社が主張する被告Bとの間の消費貸借契約は,約1か月で元本の0.5倍,つまり月5割の利息の支払を求めるものであり,利息制限法が定- 18 -める利率を大幅に上回るものである。そうすると,同消費貸借契約に基づく請求は,利息制限法に反する利率の利息を求めるものであることを超えて,明らかな暴利を求めるものであって,公序良俗に反し無効である。 イ原告会社は,本件賃料の約1.5倍の金額を返還する旨を被告B自らが提案した旨主張するが,利息制限法は,利息額を年率換算した場合に元本の一定割合を超える額となるような場合には,当事者の合意等にかかわらず,その利息の超過部分を無効とするものである。 (原告会社の主張)ア利息制限法は,その超過部分を無効とするものであり,契約自体を無効にするものではない。 また,本件では,利率についての期間が決まっていないから,その年率は不明であり,月率又は年率に換算して利息制限法に違反する旨の被告B主張は失当である。 イ被告Bは,自ら本件賃料の約1.5倍額を返済する旨述べたのであり,原告会社が明らかな暴利を求めたという主張は,被告Bの作成したメモ等とも矛盾しており,信用性を欠く。 は失当である。 イ被告Bは,自ら本件賃料の約1.5倍額を返済する旨述べたのであり,原告会社が明らかな暴利を求めたという主張は,被告Bの作成したメモ等とも矛盾しており,信用性を欠く。 甲事件貸金返還請求に対する被告Bの過失相殺の抗弁の当)(被告Bの主張)仮に,原告会社が被告Bに対して貸金返還請求権等を有するとしても,それは被告Bと原告会社及び被告A(以下「被告Aら」という。)との間で被告会社から金銭を詐取する過程において生じたものでしかないから,その請求は過失相殺される。 (原告会社の主張)原告会社の被告Bに対する貸付返還請求権は,本件架空循環取引とは無関係なものであり,被告会社から金銭を詐取する過程において生じたものではない。したがって,被告Bの過失相殺の主張は,明らかに失当である。 - 19 - 乙事件における被告会社の相殺の抗弁の当否(争点)(被告会社の主張)ア被告会社は,原告会社に対し,売掛金債権15万6418円(①注文番号TMK151102及びTMK151074R1に係る取引に基づく平成25年4月末日を支払期限とする売掛金債権3万5668円並びに②注文番号TMK0621-MT04に係る取引に基づく同年5月末日を支払期限とする売掛金債権12万0750円の合計。以下「本件自働債権1」という。)を有していた。 イまた,被告会社は,原告会社が行った「株式会社K郡山工場向け(2.8tホイストクレーン)」という件名の架空循環取引(以下「本件架空循環取引γ」という。)により損害を被ったため,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権として2730万円の債権(以下「本件自働債権2」という。)を有していた。 ウそこで,被告会社は,原告会社 引γ」という。)により損害を被ったため,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権として2730万円の債権(以下「本件自働債権2」という。)を有していた。 ウそこで,被告会社は,原告会社に対し,平成25年6月28日,同月27日付けの相殺通知書により,本件自働債権1及び本件自働債権2をもって,原告会社が有する本件契約1及び本件契約2に基づく代金支払債権(以下「本件各代金支払債権」という。)とその対当額において相殺するとの意思表示をした。 (原告会社の主張)ア本件自働債権2に関する主張は,ある。 イ被告会社が原告会社に対し,被告会社の主張ウ記載の相殺の意思表示をしたことは認める。 乙事件における被告会社の相殺の抗弁に対する原告会社の反対の意思表示の再抗弁(民法505条2項)の当否(争点)(原告会社の主張)本件各代金支払債権に係る請負契約は,原告会社が被告会社から,本件架空- 20 -循環取引の発覚後,必ず請負代金を支払うため工事を進めてほしいと依頼されて,その仕事を完成させたものであるから,本件各代金支払債権を受働債権として対当額で相殺することは認められない。 (被告会社の主張)原告会社の主張は争う。 乙事件における被告会社の相殺の抗弁に対する下請代金支払遅延等防止法4条1項2号の再抗弁の当否(争点)(原告会社の主張)下請代金支払遅延等防止法4条1項2号より,親事業者は,下請業者に対して製造委託等をした場合,下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないことは許されないのであるから,被告会社が相殺を理由に本件各代金支払債権に係る請負代金の支払を拒絶することは許されない。 (被告会社の主張)原告会社の主張は争う。 原告会社及び被告Aの被告会 ないのであるから,被告会社が相殺を理由に本件各代金支払債権に係る請負代金の支払を拒絶することは許されない。 (被告会社の主張)原告会社の主張は争う。 原告会社及び被告Aの被告会社に対する不法行為(丙事件請求原因)の成否(争点 (被告会社の主張)ア本件架空循環取引の破綻を防ぐには,原告会社が,原告会社における資金不足額を架空循環取引ではなく実取引における利益として取得するか,金融機関から資金不足額の借入れを続けるしかない。しかし,原告会社の実取引による損益は毎月300万円程度の赤字が累積する状態であり,金融機関からの借入れは常時8億円程度であったから,本件架空循環取引の額を増大させて,より大きな資金が原告会社に入るようにする他ない。一方で,本件架空循環取引の額を無限に大きくすることはできないのであるから,いつかは本件架空循環取引が破綻せざるを得ず,その場合には被告会社が多大な損害を被ることになることは明らかであり,原告会社及び被告Aにも十分に予見- 21 -可能であった。 イ被告会社は,被告Bの担当する取引先に対する未収売掛金債権の増加等の不審な事情がうかがわれたため,平成25年2月,新規取引を中止させたところ,本件架空循環取引における代金の循環が停止し,被告会社が仕入先に代金を支払済みであるのに売掛先から当該代金の支払を受けられない取引が相当数発生した。このような取引は,別紙4のとおりであり,被告会社は,少なくとも当該取引に係る支払済みの仕入代金額相当の損害を被った。なお,別紙4記載の取引(以下「本件架空循環取引2」という。)に係る不法行為に基づく損害賠償請求権の額(被告会社が本件仕入先4社に対して支払った支入代金額)の合計は18億3734万2500円であるが,上記損害賠償請求 引(以下「本件架空循環取引2」という。)に係る不法行為に基づく損害賠償請求権の額(被告会社が本件仕入先4社に対して支払った支入代金額)の合計は18億3734万2500円であるが,上記損害賠償請求権のうち本件架空循環取引γ に係る不法行為に基づく損害賠償請求権(本件自働債権2)のうち1542万0332円は,乙事件において相殺に供したから(前記),丙事件においては,その残額である18億2192万2168円の支払を求める。 ウ被告Aらは,被告会社が本件架空循環取引について架空のものであることを知っていた旨主張するが,否認する。被告会社が平成25年3月まで本件架空循環取引を認識できなかったことについては,前記の被告会社の主張記載のとおりである。 エ被告Aらは,原告会社らの行為には違法性が認められないと主張するが,被告会社は,本件架空循環取引を全て違法なものと考えており,関係する売上,利益を全て取り消している。 また,被告Aらは,本件架空循環取引について,原告会社から本件売掛先7社に対する支払及び本件売掛先7社から被告会社に対する支払(以下「回収スキム」という。)により被告会社に利益をもたらすものであり,いずれ行き詰まるという認識も全くなかった旨主張するが,本件のような架空循環取引は違法な金融取引であり,どこかで行き詰まって露見するものであるこ- 22 -とは,誰でも分かることである。 被告Aらは,本件売掛先7社との間の取引を取り消したのは被告会社であり,仮にそれによって被告会社に損害が発生したとしても,それは被告会社自身が負担すべきものであると主張するが,本件架空循環取引はそもそも売買の対象物が存在しないのであるから本来無効であり,取り消すまでもなく,被告会社において本件売掛先7社に対してその代 れは被告会社自身が負担すべきものであると主張するが,本件架空循環取引はそもそも売買の対象物が存在しないのであるから本来無効であり,取り消すまでもなく,被告会社において本件売掛先7社に対してその代金を請求することは法的にできない。実際にも,本件売掛先7社は,原告会社から代金支払を受けた上で被告会社に対して代金支払を行うことになっているところ,原告会社が本件売掛先7社に対する代金支払を止めているから,本件売掛先7社が被告会社に対して代金を支払うことはあり得ない。 さらに,被告Aらは,本件架空循環取引発覚後,被告会社が本件売掛先7社及び本件仕入先4社のうちの1社であるL株式会社(当時。以下「L」という。)に対し,同社が本件架空循環取引において得た取引差益の返還を求め,同社から2603万円の返還を受けたこと,被告会社が「念書差入分和解」として,本件売掛先7社及び本件仕入先4社のうちの2社であるM株式会社(以下「M」という。)及び株式会社N(以下「N」という。)に対し,総額1億7472万円を支払ったことから,本件架空循環取引における利益及び損害が帰属すべき主体者は,被告会社である旨主張する。もっとも,被告会社は,Lから,Lが本件架空循環取引において得た取引差益計2603万円の返還を受けたものの,これは,Lが本件架空循環取引の全てを解消する目的で行ったものであり,被告会社がLに対して返還を求めたことによるものではない。また,「念書差入分和解」は,被告BがM及びNに対し,本件架空循環取引に係る支払代金の支払を約束する念書を差し入れており,その効力を否定することができなかったために,解決金として,念書による取引額の一部を支払ったり,その全部又は一部を後日の話合いによって返還してもらうよう申し入れた上で仮払したりしたものである。上記事実 の効力を否定することができなかったために,解決金として,念書による取引額の一部を支払ったり,その全部又は一部を後日の話合いによって返還してもらうよう申し入れた上で仮払したりしたものである。上記事実から,被- 23 -告会社が本件架空循環取引の主体者であるとはいえない。 (被告Aらの主張)ア被告会社名古屋支店長は,本件架空循環取引に係る契約締結にかかる内部決裁に添付された一連の関係会社が作成した注文書,見積書等によって本件架空循環取引が架空取引であることを知っていた。また,本件架空循環取引は,被告会社名古屋支店の事実上の決裁権限を有する被告Bが企画実行しており,被告会社自身が架空であることを知った上で行われていたと評価できる。被告会社は,本件架空循環取引により利益を得るようになっており,実際,当該利益を正規の売上として計上していたのであるから,本件架空循環取引を違法な取引と主張することは論理矛盾である。 また,被告Bの原告会社に対する指示書記載の金額と被告会社が本件仕入先4社に対して支払ったと主張する金額に差額がある場合,その差額(以下「本件差額部分」という。)は,被告Bが当該仕入先との間の合意によって現金化のために上乗せしたものと疑われるのであり,その部分は,本来企画実行された本件架空循環取引を超えるものであり,被告Aらは,それに関与していない。したがって,その部分については,そもそも被告Aらの行為と評価することはできない。 イ被告Aらは,本件架空循環取引を金融取引と捉えており,回収スキムにより被告会社に利益をもたらすものと認識していたのであるから,被告会社に対して違法であるという認識はなかったし,被告Bが原告会社の損害を補うような効率のよい仕事を発注すると約束していたから,回収スキムがいずれ行 利益をもたらすものと認識していたのであるから,被告会社に対して違法であるという認識はなかったし,被告Bが原告会社の損害を補うような効率のよい仕事を発注すると約束していたから,回収スキムがいずれ行き詰まるという認識もなかった。 さらに,本件差額部分は,本来企画実行された架空循環取引を超えるものであり,被告Aらは関与していないから,これについての故意又は過失等認められるはずもない。 ウ被告会社の主張する損害は,被告会社が本件売掛先7社との間の契約を取- 24 -り消したために被ったものであるから,被告会社が負担すべきものである。 また,被告会社が上記契約を取り消していないとしても,上記損害は,被告会社が自らの判断で,本件売掛先7社に対し,回収スキムに係る契約に基づく権利行使をしなかった結果であって,被告Aらがもたらした損害ではないから,被告Aらとは無関係に生じたものである。 また,本件架空循環取引を発案・実行したのは被告Bであること,本件架空循環取引発覚後,被告会社がLに対し,同社が本件架空循環取引において得た取引差益の返還を求め,同社から2603万円の返還を受けたこと,被告会社が「念書差入分和解」として,M及びNに対し,総額1億7472万円を支払ったことに照らすと,本件架空循環取引の主体者は,被告会社である。そして,本件架空循環取引における利益及び損害は,本件架空循環取引の主体者である被告会社に帰属するから,被告会社は,被告Aらに対して損害賠償請求をすることはできない。 丙事件における原告会社の過失相殺の抗弁の可否(争点)(原告会社の主張)仮に,被告会社の原告会社に対する損害賠償請求が認められるとしても,被告会社には本件架空循環取引に関して過失が認められるから,これを考慮しなければならな 点)(原告会社の主張)仮に,被告会社の原告会社に対する損害賠償請求が認められるとしても,被告会社には本件架空循環取引に関して過失が認められるから,これを考慮しなければならない。このことは,被告会社がNに対し,同会社が被告会社に対して被告Bの不法行為による被告会社の使用者責任を主張するとしても,Nが本件架空循環取引を認識しうる立場にあり,相応の過失相殺がなされるべきであると考える旨述べたことから明らかである。 (被告会社の主張)ア記載のとおりである。 イ故意の不法行為者である原告会社が過失相殺の主張をすることは,過失相殺制度の根本にある公平の理念に鑑みて許されない。 - 25 -また,本件において,被告会社側の事情を斟酌して損害額を減額することは,原告会社らの違法な手段で取得した利得の保持を許容するものであり,妥当でない。 丙事件における被告Bの過失相殺の抗弁の可否等(争点)(被告Bの主張)被告Bは,被告Aらとともに詐欺行為を行い,被告会社に多大な損害を与えたこと自体を争うものではない。 もっとも,被告Bらが本件架空循環取引等を長期間継続して行うことができたのは,被告会社の管理監視体制が甘かったためである。また,被告Bが本件架空循環取引等を始めたきっかけは,原告会社が倒産することにより被告会社に損害を与えることを避けようとしたことにある。これらの事情は,被告会社の過失等として考慮されるべきである。 (被告会社の主張)被告Bの主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 本件架空循環取引に至る経緯ア被告Aは,平成2年2月から,被告会社の取 裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 本件架空循環取引に至る経緯ア被告Aは,平成2年2月から,被告会社の取引先であったO株式会社において,外注設計者として勤務していたところ,被告会社とO株式会社との間の取引を通じて,当該取引の発注担当者(当時)であった被告Bと知り合った。被告Aは,平成10年4月,被告Bの勧めもあり,Cの出資を得て,Cを代表取締役として,原告会社を設立した。設立当初,原告会社においては,金融機関に勤務していたCが経理を担当し,被告Aが専務として,設計業務等の実務を行っていた。被告会社は,原告会社の設立当初から,原告会社の- 26 -主要な取引先であった。(争いのない事実,乙1,丙6)イ被告B及び名古屋支店装置部課長(当時)であったFは,平成10年10月頃以降,共同で担当した案件を通じてCに対し,遊興費等に充てるために被告会社から金員を詐取すべく,現金化を持ちかけ,これを行った。現金化は,①実在取引について,被告会社が原告会社に対し,水増しした金額で発注し,被告会社から原告会社に対して支払われたその報酬を原告会社及び被告B又はFが取得するというものと②実在取引に付加して,被告会社が原告会社に対し,架空発注を行い,被告会社から原告会社に対して支払われたその報酬を原告会社及び被告B又はFが分配するというものである。平成14年頃からは,被告Aも原告会社の経理を把握するようになり,現金化に関与するようになった。また,被告Bは,平成15年5月頃以降,プール金取引を行った。(乙1)ウ原告会社は,平成13年頃,税務調査を受け(以下「第1回税務調査」という。),税務署から被告会社との間の取引について指摘を受けたため,現金化の継 5月頃以降,プール金取引を行った。(乙1)ウ原告会社は,平成13年頃,税務調査を受け(以下「第1回税務調査」という。),税務署から被告会社との間の取引について指摘を受けたため,現金化の継続が困難になり,現金化が被告会社に露見するおそれが生じた。 (甲54,丙6)同年頃,被告Bは,Cから資金繰りの相談を受けるようになり,先行検収を行って,原告会社の資金繰りを助けるようになった。原告会社は,検収ができない取引については,債権譲渡担保を用いて金融機関から融資を受けていた(架空債権譲渡担保融資を含む。)。(乙1)エしかし,先行検収によって支払われる金員は運転資金に用いられることが多かったため,製品製作のための部材費が不足し,未だ製作されていないにもかかわらず帳簿上は製品がある状態の在庫が増加し,被告会社の原告会社に対する先行検収による資金繰り援助も限界を迎えた。また,債権譲渡担保を用いた融資も,融資枠に達したため,原告会社が架空債権譲渡担保融資により金融機関から融資を受けることも困難になった。被告Bは,被告A及び- 27 -Cに対し,上記の経緯により原告会社の資金繰りが悪化した平成17年3月頃,原告会社の資金繰りを維持する目的で,本件架空循環取引を提案し,被告A及びCの了承を得て,これを開始した。(乙1,被告B本人) 本件架空循環取引の流れア本件架空循環取引の具体的な流れは,次のとおりである。(乙1)被告B及び被告Aは,本件架空循環取引に先立ち,原告会社における翌月の資金不足を算出する。 被告Bは,当該不足額を補填できるよう,取引金額が数百万円から数千万円となる装置製作の商流を複数設定することとし,各商流について,適当なエンドユーザー名及び物件名を選定する。 被告Bは,各商流に加わる会社 当該不足額を補填できるよう,取引金額が数百万円から数千万円となる装置製作の商流を複数設定することとし,各商流について,適当なエンドユーザー名及び物件名を選定する。 被告Bは,各商流に加わる会社を,本件売掛先7社から1社(以下「売掛先Δ 社」という。),本件仕入先4社から1社(以下「仕入先ε社 」という。)を選定する。なお,被告Bは,本件売掛先7社に対し,原告会社に対する売掛債権枠が決まっているため,被告会社と原告会社との取引の間に入ってもらいたい旨説明し,本件仕入先4社に対しては,原告会社への発注枠が決まっているため,間に入ってほしい旨説明し,一定の手数料(マージン)を支払うことを条件に,各商流に入ってもらっていた。そして,被告Bは,各商流において,本件売掛先7社が得る手数料率を概ね4パーセント,本件仕入先4社が得る手数料率を概ね3パーセントに設定していた。 被告Bは,売掛先Δ 社が原告会社から架空の発注を受けることを前提に,売掛先Δ 社から注文書を入手し,その発行日付から逆算して,見積書(原告会社から仕入先ε 社に宛てたもの,仕入先ε 社から被告会社に宛てたもの及び被告会社から売掛先Δ 社に宛てたもの)の日付及び内示書(売掛先Δ社から被告会社に対するもの,被告会社から仕入先ε社に宛てたもの)の日付を遡及させて決めて,それぞれの作成を依頼する。 - 28 -被告Bは,原告会社が,当月に,当該商流に係る製品を当該エンドユーザーへ現地搬入(直送)したという形にして,原告会社から仕入先ε 社に宛てた納品書及び仕入先ε 社から被告会社に宛てた請求書を送付してもらう。 被告Bは,被告会社をして,検収を行ったとする月の翌月末日,仕入先ε 社に対し,仕入代金を支払わせ,仕入先ε 社は,原告会社に対して,代金を支払う。なお,被告 に宛てた請求書を送付してもらう。 被告Bは,被告会社をして,検収を行ったとする月の翌月末日,仕入先ε 社に対し,仕入代金を支払わせ,仕入先ε 社は,原告会社に対して,代金を支払う。なお,被告会社から仕入先ε 社に対する支払は,当該製品が現地に納入されたとされる段階で契約代金の9割を支払い,当該製品の試運転及び現地調整がなされたとされる後の段階で残りの1割を支払うという形で行われていた。 被告Bは,被告会社における売掛先に対する売上計上が現地での試運転完了時とされていたことを利用して,当該製品の納品先での試運転及び現地調整等に時間がかかるという形にして,原告会社の売掛先Δ 社に対する支払及び売掛先Δ 社の被告会社に対する支払を,仕入先ε 社から原告会社に対する支払の約6か月後に設定していた。その後,原告会社の資金繰りが悪化するにつれ,原告会社の売掛先Δ 社を介した被告会社に対する支払は,原告会社が仕入先ε 社から支払を受ける約1年後に設定されるようになった。 イ本件架空循環取引においては,本件仕入先4社が原告会社に対して支払う代金,被告会社が本件仕入先4社に対して支払う代金,本件売掛先7社が被告会社に対して支払う代金,原告会社が本件売掛先7社に対して支払う代金の順で高額になるように設定されており,被告会社,本件売掛先7社及び本件仕入先4社が本件架空循環取引の中で支払う代金と受領する代金との差額分の利得を得るのに対し,原告会社は,本件架空循環取引の中で支払う代金と受領する代金との差額(被告会社,本件売掛先7社及び本件仕入先4社それぞれが本件架空循環取引において得る利得の合計額)分の損失を被るこ- 29 -とになる。しかし,原告会社は,先行検収や架空債権譲渡担保融資による資金繰りが困難になった後,本件仕入先4社から受領し ぞれが本件架空循環取引において得る利得の合計額)分の損失を被るこ- 29 -とになる。しかし,原告会社は,先行検収や架空債権譲渡担保融資による資金繰りが困難になった後,本件仕入先4社から受領した上記製品代金を6か月後又は約1年後まで保有することによって,短期借入れを行った場合と同様の利益を得ることを目的として,本件架空循環取引を開始,継続した。(乙1)被告Bは,本件架空循環取引を行わなければ原告会社が倒産する可能性が高く,原告会社が倒産すれば,これまで行ってきた現金化の継続が困難になるのみならず,これまで行ってきた不正行為の全てが明らかになる結果,被告会社の従業員としての地位及び生活を失うことになるため,これを阻止すべく,本件架空循環取引を開始及び継続した。(乙1,被告B本人)ウ被告Bは,被告Aとともに原告会社における翌月の資金不足額を算出した後(前記ア),一人で,本件架空循環取引の各商流を記載した書面を手書きで作成し,被告Aらに対し,各商流において用いる見積書,注文書,納品書,請求書等を作成するよう指示していた。被告Bは,上記見積書等を作成する際,被告会社,本件売掛先7社及び本件仕入先4社等の社員名及び印鑑を不正に使用して,上記見積書等を偽造していた。 被告Aは,被告Bが手書きで作成した上記書面をパソコンでまとめ,また,被告Bの上記指示に従って請求書等を作成した。(以上につき,甲3,23ない31〔いずれも枝番号を含む。〕,丙5,被告B本人)本件架空循環取引開始後の経緯等ア平成19年4月,原告会社の代表取締役がCから被告Aへ交代したが,被告B及び原告会社は,引き続き本件架空循環取引等の不正な行為を継続した。被告Aが代表取締役に就任した頃,原告会社の負債額は,既に8億円程度であり,その後増減を繰り返し がCから被告Aへ交代したが,被告B及び原告会社は,引き続き本件架空循環取引等の不正な行為を継続した。被告Aが代表取締役に就任した頃,原告会社の負債額は,既に8億円程度であり,その後増減を繰り返しつつも,大きく減ることはなかった。(被告A本人)被告Bは,原告会社に対し,原告会社の負債を減少させるため,ボーイン- 30 -グ787関連の三菱重工業株式会社,川崎重工業株式会社向け生産設備や,空港の格納庫に設置される航空機の点検用スライド床等の大型設備に係る発注を行った。また,被告Bは,原告会社に対し,将来的には発注可能な案件として,山口大学とMが特許出願中の放射能遮蔽ボックス量産設備の案件やリサイクル可能なコンクリート型枠のリサイクル拠点の案件を提案したが,これらはいずれも具体的な取引には至っていなかった。(甲54,被告A本人,被告B本人)イ原告会社は,平成18年8月頃,第2回税務調査を受け,架空発注や水増し発注による原告会社,C,被告A及び被告Bに対する現金還流が指摘された。その際,原告会社は,被告Bから,反面調査が被告会社に及ぶことを防ぐため,原告会社から被告Bに対する現金還流を使途秘匿金の扱いで税務処理してもらうよう依頼され,これにしたがって納税した。第2回税務調査後,被告Bらは,原告会社に対する架空発注及び水増し発注を行うことができなくなった。(乙1,弁論の全趣旨)また,原告会社は,平成21年8月頃,第3回税務調査を受け,被告Aの親族が経営する会社に対する架空発注による現金化について指摘を受けた。 被告Aは,被告Bに対し,第3回税務調査の期間中の同月6日,原告会社の膨大な負債(当時13億円)の原因及び責任はどこにあると考えているか,第3回税務調査に係る納税についても被告Aの責任で納税するこ 被告Aは,被告Bに対し,第3回税務調査の期間中の同月6日,原告会社の膨大な負債(当時13億円)の原因及び責任はどこにあると考えているか,第3回税務調査に係る納税についても被告Aの責任で納税することになるのか等の質問を記載した電子メールを送信し,回答を求めた。これに対し,被告Bは,被告Aに対し,同月8日,①本件架空循環取引には,1つの商流を終えるのに約1年かかり,その間に,被告会社の会計士,コンプライアンス及び内部統制室のチェック等,精神的に良くないことが多いこと,②被告Bが原告会社を建て直すことしか考えておらず,原告会社が倒産した場合には「死ぬしかないだろう」と思っていること,③原告会社の負債の大きな原因が被告Bの遊興費の現金化処理を依頼したことにあるかもしれないこと,- 31 -④原告会社に対し,第3回税務調査に係る納税を無理に依頼するつもりはないこと等を記載した電子メールを送信した。(甲15の1・2,乙1)被告Bは,原告会社に対し,第3回税務調査後の同月11日,架空取引による13億円の負債を5年間でなくすとの目標や原告会社の再建に今まで以上に真剣に取り組むことを記載した書面を作成し,原告会社にこれを交付した。(甲13) 本件架空循環取引に対する被告会社の認識ア商社である被告会社においては,販売先の検収を待たずに装置本体の完成時に仕入先に対する支払を先行させること(以下「先行支払」という。)自体は行われていたものの,商社の機能を超えて仕入先の資金受領を満たすためだけに継続的資金融通が行われることのないよう,個々の取引ごとに,先行支払の必要性と妥当性を検討する必要があった。すなわち,仮に,財務状況が脆弱な仕入先との取引において,資金繰りを援助する目的で取引が継続された場合,販売先からの注文が取 よう,個々の取引ごとに,先行支払の必要性と妥当性を検討する必要があった。すなわち,仮に,財務状況が脆弱な仕入先との取引において,資金繰りを援助する目的で取引が継続された場合,販売先からの注文が取り消されたり,製品の不具合によって検収が困難になったりする場合,当該仕掛在庫は不良在庫となり,販売先からの売掛金の回収が困難となるなどの事態が生ずるから,先行支払の合理的理由(回収見込みがあるか,仕入先に品質を担保できる技術力が備わっているか,知的財産権を有するなど代替不可能な事情があるか,事業継続性に疑義はないかなど)を検討する必要があった。(乙17)イ被告会社においては,営業担当者が顧客との交渉,発注先の選定,発注手続,仕入検収,仕入代金の支払,売掛債権回収等の一連の業務全てに関与することが基本になっているため,職務分掌が細分化された組織と比較して相互牽制及び監視が働きにくくなっていた。(乙1)ウH及びIは,平成17年10月11日,名古屋支店を訪問し,名古屋支店長(当時)であったPと面談した。Hは,名古屋支店経理部門から原告会社を仕入先とする装置製作案件の仕掛在庫(製造途中又は未販売の製- 32 -品)の増加が報告されたため,原告会社に係る営業部門に対し,仕掛在庫の合理性を確認する必要があると考え,Pから,原告会社との関係を聴取した。Pは,H及びIに対し,金融機関の勤務経験があるCが経理部門を担当しているため,原告会社の財務面を信用しているものの,原告会社の規模及び財務面は極めて脆弱である一方,原告会社の製作物は良好であること,原告会社の売上の7割ないし8割が被告会社との取引によるものであることを説明した。(甲8の1・2,証人I)Hは,原告会社の規模と比較して仕掛在庫金額が多額であったこと,前 あること,原告会社の売上の7割ないし8割が被告会社との取引によるものであることを説明した。(甲8の1・2,証人I)Hは,原告会社の規模と比較して仕掛在庫金額が多額であったこと,前払時期と納期の間の滞留期間が長いことを踏まえ,原告会社との取引について,取引額及び回収方法に改善策が見当たらず,変則的な融資状態とも考えられると指摘した。(甲8の1・2,証人I) Iは,原告会社との間の取引を担当する装置営業部門の責任者であったJに対し,平成17年10月20日,前記の面談で発覚した問題に係る面談を行うため,Jの都合を尋ねる内容の電子メールを送信した。Iは,同電子メールに,原告会社の同年3月期決算書を見た瞬間に粉飾だと思ったこと,原告会社が自力で再生するのは不可能と思われるため,同年9月末時点における原告会社の仕掛在庫12件(以下「本件仕掛在庫」という。)の中で残すべきものだけを残し,その他は損失として処理すること,I,H及びJの面談において,Hから,本件仕掛在庫に係る売掛先からの注文書の有無,納入,売上,売掛金回収の時期,現物の状態,完成度合い等について質問がなされると思われるため準備しておいてもらいたいこと,今後,原告会社との取引においては,売掛先からの内示書等の文書受領後に発注し,出来高払以外を認めず,原告会社の財務内容への関与は避け,一線を画し,距離を置いた取引とし,営業上の貸借を行わないようにすべきであることを記載した。(甲9の1・2,乙17,証人I,弁論の全趣旨) H及びIは,同年10月25日,J及び営業担当者であったQと面談し,- 33 -本件仕掛在庫(計1億4874万円)について,注文書(内示書),議事録(製品完成写真),工程表を検討したところ,売掛先の事情の変化及び要請に伴う売 及び営業担当者であったQと面談し,- 33 -本件仕掛在庫(計1億4874万円)について,注文書(内示書),議事録(製品完成写真),工程表を検討したところ,売掛先の事情の変化及び要請に伴う売上予定時期並びに回収予定等について理解することができた。また,H及びIは,J及びQとの間で,原告会社に対する今後の対応についての意見交換を行い,原告会社の財務面の脆弱性に関する問題は残っており,取引を継続するにあたっては,変則的融資となっていないか再度確認することを含め,原告会社社長との面談が必要という結論になり,取引先に対する与信管理担当部門であるコンプライアンス室(以下,単に「コンプライアンス室」という。)が担当することになった。(甲10の1・2,甲11の1・2,乙17,証人I,弁論の全趣旨) コンプライアンス室は,J,被告Bらに対し,平成17年10月26日,原告会社との取引に係る売掛金回収予定等について確認するメールを送信した。(甲12の1・2)また,コンプライアンス室は,Cに対し,売掛金の内訳,仕掛金の内訳及び借入金についてヒアリングを行いたいとして,Cとの面談を依頼した。これを受けて,Cは,被告Aに対し,同年11月1日,上記依頼を受けていることを連絡するとともに,上記面談において,コンプライアンス室に対しては,銀行対策の目的で先行支払を受けているが,今後は利益を積み重ねて,原告会社を安定した会社にしたいと説明することを提案し,個々の売掛金に関する説明内容を相談した。その際,Cは,被告Aに対し,Jの意見として,被告会社においては,根拠があれば一定量の先行支払も認められる旨伝えた。(甲38,42の1・2) コンプライアンス室室長(当時)のR,同室次長(当時)のS,P,J及び被告Bは,平成17年 告会社においては,根拠があれば一定量の先行支払も認められる旨伝えた。(甲38,42の1・2) コンプライアンス室室長(当時)のR,同室次長(当時)のS,P,J及び被告Bは,平成17年12月1日,Cと面談した。Cは,Rらに対し,同年3月期決算において,決算が赤字になると銀行との関係に支障を来すため,売掛金と仕掛工事の双方に計上したものがあることを認め,また,- 34 -仕掛在庫が増加した理由を説明した。Rら及びCは,原告会社が被告会社の東海地区における重要な仕入先として,今後の取引を通常の取引条件で拡大することが大切であると確認した。コンプライアンス室は,Hらに対し,同年12月6日,原告会社が同年3月期決算において約3500万円の赤字であったと考えられること,今後は原告会社に仕掛在庫を発生させないよう資金的な努力を含めて改善してもらうこと,当分の間,同室においても,原告会社向けの売上債権,発注残,仕掛品の状況等をチェックすることを報告した。(乙14)エ被告会社においては,平成18年2月,Fが,名古屋支店勤務中の平成15年5月から平成17年4月までの間に,仕入先と通謀して,架空仕入を計上し,合計約3375万円を被告会社に支払わせ,そのうち計約2300万円をFが取得して私的に費消したことが発覚した(以下「F事件」という。)。 会計監査人は,F事件後,前記イのリスクを指摘して,内部管理体制や内部監査の強化等の対策による再発防止へ向けての留意が特に重要と思われる旨の指摘を行ったが,F事件と同種の不正行為が他に存在しないか調査せず,上記対策の検討もしなかった。(乙1)オ被告会社の社内ルールでは,課長以上の職員が受注・発注に係る伝票を起案しないこととされている。しかし,被告Bは,部長又はSD長とい しないか調査せず,上記対策の検討もしなかった。(乙1)オ被告会社の社内ルールでは,課長以上の職員が受注・発注に係る伝票を起案しないこととされている。しかし,被告Bは,部長又はSD長という部下を管理する立場にありながら,自ら積極的に営業活動に携わる一方,受注した案件について部下に注文番号の記載を依頼したり,部下の注文番号を使用したりして伝票を作成し,事実上自ら決裁する形でこれを用いて仕入発注から債権回収までの手続を全て一人で行っていた。また,被告Bが担当する案件の有無及び内容については,長期間にわたり,被告Bの上司によるチェックが行われていなかった。(乙1)カ被告Bが所属していた被告会社装置営業部では,1000万円以下の注文につき,受注時にその注文書を経理課に提出する必要がなく,また,当該注- 35 -文に基づいた仕入先に対する1000万円以下の発注につき,装置営業部部長等の上司の決裁を受ける必要がなく,課長権限で行うことができた。被告Bは,これを利用し,本件架空循環取引に係る取引について,経理課の確認や装置営業部部長の決裁を受けることなく,自らの判断で行うことができるよう,本件架空循環取引に係る取引のほとんどを1000万円以下に設定していた。 また,商社である被告会社における通常の取引は,売掛先からの注文を受けた後,これに対応する発注を仕入先に対して行うという順序であるところ,本件架空循環取引においては,仕入先に対する支払が先行した後,売掛先から注文を受けるという順序になることから,被告Bは,本件架空循環取引に係る見積書,注文書等の書類の日付をさかのぼらせるなどの方法で,本件架空循環取引と実取引と区別を困難にしていた。実際,本件売掛先7社及び本件仕入先4社から,本件架空循環取引について不審がら 環取引に係る見積書,注文書等の書類の日付をさかのぼらせるなどの方法で,本件架空循環取引と実取引と区別を困難にしていた。実際,本件売掛先7社及び本件仕入先4社から,本件架空循環取引について不審がられることはなかった。(以上につき,甲39,乙1,弁論の全趣旨)キ被告会社の一部の幹部職員は,本件架空循環取引が不正なものと認識していたが,他の上級職員,経営幹部,監査役等に対してこれを具申,相談しなかった。(乙1)ク前記アないしキの結果,被告会社は,平成25年3月に被告Bから本件架空循環取引を行っていた旨の申告を受けるまで,本件架空循環取引を認識することができなかった。(甲39,乙1,被告B本人)本件架空循環取引の発覚の経緯等ア被告会社においては,平成23年9月頃,本件架空循環取引の売掛先であるDへの直送品在庫(以下「D直送品在庫」という。)が多額に上ることが問題になり,会計監査人がDに対して文書による在庫の残高確認を行ったが,被告Bが残高確認書の封入された郵便物をDから取り戻し,D名義で偽造した残高確認書を会計監査人に返送した。被告会社コンプライアンス室- 36 -は,同年12月,被告Bに対し,ヒアリングを行い,D直送品在庫の現物確認(以下「本件現物確認」という。)を強く求めたが,被告Bは,取引関係上,現地確認は困難であるとしてこれを拒絶した。(乙1,被告B本人)イ平成24年1月26日,J,コンプライアンス室長(当時),被告B等が参加して,D直送品在庫の管理に関する打合せが行われ,被告Bに対し,現在の在庫状況,120日以上の滞留在庫を抱えている理由等についてヒアリングを行った。被告Bは,直送品在庫が9億2615万円分あり,滞留在庫の理由のほとんどは納期変更によるものであると回答した。被告会社は 在庫状況,120日以上の滞留在庫を抱えている理由等についてヒアリングを行った。被告Bは,直送品在庫が9億2615万円分あり,滞留在庫の理由のほとんどは納期変更によるものであると回答した。被告会社は,被告Bに対し,ヒアリング結果を踏まえた改善策として,Dからの注文書に納入先,支払条件を記載し,担当者印ではなく,社印・職印の押捺を求めること,決裁については全てJの承認を得ること等を求めた。上記ヒアリングが行われたこと及び上記改善策を実行中であることは,同年3月22日,被告会社のリスクマネジメント委員会においても報告された。(乙1)ウ被告会社名古屋経理課は,Dに対し,平成24年5月及び同年11月,会計監査人の了解の下,会計監査人名義の残高確認書による直送品在庫の残高確認を行った。しかし,被告Bは,上記残高確認書の封入された郵便物を郵便局から取り返した上,D名義の残高確認書を偽造して,これを会計監査人に対して返送した。(乙1)エ平成24年9月19日,被告会社中日本営業本部において,中日本営業本部長(当時)であったJ,被告Bらが参加して,D直送品在庫の管理に関する打合せが行われ,前記イの改善策の実施状況の報告や今後の対応策についての協議が行われた。被告Bは,納入先の受領書や工程表を受領した旨報告したが,これらはいずれも被告Bにより偽造されたものであった。また,被告Bは,Dとの取引が金融取引ではないかと問われた際,これを否定した。 同打合せにおいて,取引先ごとの累積与信限度設定を行うこと,被告Bが被告会社の監査役(以下,単に「監査役」という。)による現物確認の機会を- 37 -設けることが決定された。 同年10月19日,被告会社中日本営業本部において,J,被告B,及び監査役が参加して,D直送品在庫の管理に関する打合せが 」という。)による現物確認の機会を- 37 -設けることが決定された。 同年10月19日,被告会社中日本営業本部において,J,被告B,及び監査役が参加して,D直送品在庫の管理に関する打合せが行われ,会計監査人の監査役に対する報告書において,D直送品在庫の現物管理(実在性の確認等)に関する指摘がなされていたことを受けて,経理課への提出資料に,仕入先の工場出荷前写真を追加すること,内示書発行の際にJの承認を得ること,本件現物確認を同年11月下旬ないし12月に実施すること等を決定し,被告Bに対し,その旨の指示がなされた。 同月11日,監査役から被告Bに対するヒアリングが行われ,被告Bは,本件現物確認について,その申入れは行ったもののDから承諾を得ておらず,取引中止も覚悟してDと再度交渉する旨述べた。監査役は,被告Bに対し,平成25年1月末までにDから本件現物確認を行うことが認められれば同年2月又は同年3月に実施すること,仮にDの承諾を得られない場合には監査役が独自に本件現物確認を行うことを伝えた。 平成24年12月25日,被告会社中日本営業本部において,J,被告B,監査役等が参加して,D直送品在庫の管理に関する打合せが行われた。被告Bは,本件現物確認について,Dに同意を求めているが,Dに対する発注元であるT株式会社(以下「T」という。)の会計監査時にも本件現物確認に応じていないことから同意を得るのは難しいこと,また,Tもエンドユーザーに対して本件現物確認の申入れはできないと述べたことを説明し,難色を示した。これに対し,監査役は,平成25年3月末までに必ず本件現物確認を実施したい旨を伝えた。 同年1月21日,被告会社中日本営業本部において,被告B,監査役等が参加して,D直送品在庫の管理に関する打合せが行われたが,被告Bは,本件現 3月末までに必ず本件現物確認を実施したい旨を伝えた。 同年1月21日,被告会社中日本営業本部において,被告B,監査役等が参加して,D直送品在庫の管理に関する打合せが行われたが,被告Bは,本件現物確認について,従前からの説明を繰り返して困難である旨説明した。 (以上につき,乙1)- 38 -被告Bは,上記経過の中で,被告会社から,Dとの間の本件架空循環取引に係る製品の写真や図面等を提出するよう求められるようになると,原告会社が保有している他の製品の写真や図面のデータを流用して写真や図面等の提出を行い,当該取引が実取引であるかのように装った。(甲39,被告B本人)オ平成25年2月14日,被告会社中日本営業本部において,被告会社のU常務執行役員(以下「U」という。),J,監査役等が参加して,D直送品在庫の管理に関する打合せが行われた。Uは,Dに関する取引が被告会社本来の装置営業から逸脱していること,与信限度以上の取引が行われていること,被告Bが全ての案件を把握できているか疑問であること等の理由で,取引からの撤退を強く指示した。そこで,Jと被告BにおいてDとの取引を継続するか否か協議した上でEに報告すること,同月及び同年3月中の新規取引を控えることが決定された。 被告Bは,同月13日,上記指示及び決定により,本件架空循環取引の継続が困難となったため,Eに対し,本件架空循環取引を行っていた旨申告した。(以上につき,乙1,被告B本人)カ被告会社は,本件架空循環取引2につき,本件仕入先4社に対し,計18億3734万2500円を支払ったが,前記オの申告により本件架空循環取引が停止したため,これに対応する売掛金を本件売掛先7社から受領することができなかった。なお,被告会社が支払った上記金額の一部は,前記オの申告により本件架 払ったが,前記オの申告により本件架空循環取引が停止したため,これに対応する売掛金を本件売掛先7社から受領することができなかった。なお,被告会社が支払った上記金額の一部は,前記オの申告により本件架空循環取引が判明した後,支払ったものである(後記イ)。(甲32の1・2,弁論の全趣旨) 本件架空循環取引の発覚後の被告会社の対応ア被告会社は,本件架空循環取引が発覚した平成25年3月13日以降,Lから,Lが本件架空循環取引において得た利益計2603万円の返還を受けた。そのうち,Lが本件架空循環取引2において得た利益は,計505万円- 39 -である。(争いのない事実,甲32の1・2,弁論の全趣旨)イ被告会社は,被告BがM及びNを仕入先とする本件架空循環取引について,後日必ず被告会社からの支払が実行される旨の念書を差し入れていたため,その支払期日が本件架空循環取引発覚後である取引について,Mとの間で支払額の減額を条件に和解したり,Nとの間で支払後に返還について改めて協議することを約した上で仕入代金を仮に支払ったりした。(争いのない事実,甲48ないし49の7) 被告Bの賃借物件ア被告Bは,現金化等の不正取引の書類等を原告会社の工場に保管していたところ,平成13年の夏頃,原告会社が第1回税務調査を受けたため,上記書類を上記工場に保管しておくと不正取引が発覚するおそれがあると考えた。被告Bは,被告Aに相談した上,同年10月27日,上記書類の保管場所として,V株式会社(以下「V」という。)から本件アパートを,賃貸期間を同日から平成15年10月26日までとし,本件賃料(1か月8万7000円)を毎月末日限り翌月分を支払うとの約定で借り受けた(以下「本件賃貸借契約」という。)。被告Aは,Vとの間で,同日 ,賃貸期間を同日から平成15年10月26日までとし,本件賃料(1か月8万7000円)を毎月末日限り翌月分を支払うとの約定で借り受けた(以下「本件賃貸借契約」という。)。被告Aは,Vとの間で,同日,本件賃貸借契約の賃借人である被告Bと連帯して,被告Bと同一内容の債務を負担し,賃貸人であるVの受ける損害についても無条件で責任を負うことを,書面で約した(以下「本件保証契約」という。)。なお,本件賃貸借契約及び本件保証契約に際して作成された契約書(丙1)の連帯保証人欄には,被告Bが被告Aの氏名等を記載し,被告Aが被告Aの実印を押捺した。(乙1,丙1,6,被告A本人,被告B本人)イ被告Bは,本件アパートにおいて,本件架空循環取引の事務作業を行い,本件架空循環取引に関して作成した書類を保管していた。被告Aは,本件架空循環取引に係る書類を,被告会社名古屋支店ではなく,本件アパートに持参していた。なお,被告Bは,本件賃貸借契約締結以降,本件アパートに愛- 40 -人を住まわせたことがあった。(甲54,乙1,丙6,被告A本人,被告B本人)ウ原告会社は,平成20年頃,本件賃貸借契約に基づく本件賃料を被告Bに代わって支払うことを申請する旨の家賃負担者変更申請書(丙2)に原告会社名のゴム印及び社印を押捺した。(丙2,被告A本人,被告B本人)エ被告Bは,前記ウ以降,Vに対して現金交付の形で本件賃料を支払い,Vから原告会社宛の領収証を受領して,当該領収証と引替に原告会社から本件賃料相当額を受領する場合に加え,原告会社からあらかじめ本件賃料相当額を受領しておき,Vに対し,現金交付の形で本件賃料を支払い,Vから原告会社宛の領収証を受領する場合があった。(甲47〔枝番号を含む。〕,丙3の1・2,被告B本人) 事実認定 本件賃料相当額を受領しておき,Vに対し,現金交付の形で本件賃料を支払い,Vから原告会社宛の領収証を受領する場合があった。(甲47〔枝番号を含む。〕,丙3の1・2,被告B本人) 事実認定に関する補足説明被告Aらは,被告会社が本件架空循環取引について架空取引である旨認識していた旨主張し,被告Aは,その本人尋問において,被告Bが絶えず直属の上司であるJに相談していたこと及び本件架空循環取引が営業会議の話題に上っていなかった分野において突然,高額の受注予定をもたらすものであることからすると,Jが本件架空循環取引を認識していなかったはずがない旨供述する。 しかし,前記オ及び同カのとおり,被告Bが本件架空循環取引の発覚を防ぐために本件架空循環取引を上司の決裁が不要な金額に設定し,仕入発注から債権回収までの手続を全て一人で行っていたことに照らすと,被告Aの上記供述はにわかに採用できない。そして,前示カのとおり,被告Bが本件架空循環取引の発覚を防ぐために,本件架空循環取引に係る書類を偽造したりしていたこと,前示ウないし同オのとおり,被告Bの上司並びに被告会社の監査役及びコンプライアンス室による監査において本件架空循環取引を発見することができなかったこと,前示キのとおり,本件架空循環取引を認識していた- 41 -被告会社の一部の幹部職員も他の上級職員,経営幹部,監査役等に対してこれを具申,相談しなかったこと,前示のとおり,被告Bが本件架空循環取引発覚直前まで本件架空循環取引の隠匿を図っていたことに照らすと,被告会社が本件架空循環取引について架空取引である旨認識していた旨の主張は採用できない。 2 被告Bの原告会社に対する不法行為(甲事件損害賠償請求に係る請求原因)の成否等について 本件架空循環取引1に 架空循環取引について架空取引である旨認識していた旨の主張は採用できない。 2 被告Bの原告会社に対する不法行為(甲事件損害賠償請求に係る請求原因)の成否等について 本件架空循環取引1についてア前示1及び同のとおり,被告Bは,原告会社の代表取締役であったC及び被告Aと共謀して,原告会社の資金繰りを維持する目的で,本件架空循環取引1を含む本件架空循環取引を行っており,かつ,C及び被告Aは,書類の作成等を通じて,本件架空循環取引1に係る各取引の取引額等を認識していたことに照らせば,C及び被告Aは,本件架空循環取引1の仕組みが,最終的には,被告会社,本件売掛先7社及び本件仕入先4社の利得の合計額相当の損失を原告会社に被らせるものであることを十分に認識しながらも,原告会社の当面の資金繰りの維持のため,本件架空循環取引1を繰り返し行っていたものと認められる。 そうすると,被告Bが本件架空循環取引1を行ったことによって,原告会社が本件仕入先4社から支払を受けた代金額と本件売掛先7社に対して支払った代金額の差額等の本件架空循環取引1に起因する損失を被る結果になっても,前示のとおり,原告会社の代表者であるC及び被告Aは,そのような結果になることを認識しながらも,原告会社の当面の資金繰りの維持のため,被告Bと共謀して,本件架空循環取引1を行っていたのであるから,本件架空循環取引1は,原告会社自身の判断によるものということができる。以上により,被告Bが原告会社の代表者と共謀して本件架空循環取引1を行った結果,原告会社に上記損失が発生したからといって,これを被告B- 42 -の原告会社に対する不法行為(同社の財産権に対する侵害行為)と評価することはできないというべきである。 イこの点,原告会社は,被告Bから,本件 したからといって,これを被告B- 42 -の原告会社に対する不法行為(同社の財産権に対する侵害行為)と評価することはできないというべきである。 イこの点,原告会社は,被告Bから,本件架空循環取引により原告会社が被った損害を実取引における利益で補填するとか,本件架空循環取引を5年間でなくすなどと約束をされ,これを信じて本件架空循環取引1を行った旨主張するが,のとおり,被告Bが原告会社に対し,本件架空循環取引1による原告会社の損失を補填したり,本件架空循環取引なしに原告会社の経営を成り立たせたりする具体的かつ現実的な手法を提案したことを認めるに足りる証拠はないから(,原告会社の上記主張は採用できない。むしろ,原告会社は,同社の資金繰りに窮した状況の下において,当面の資金繰りを維持するためには,本件架空循環取引1を行うほかなかったとみるのが相当である。 また,原告会社は,被告Bから本件架空循環取引1を強要された旨主張し,被告A作成の陳述書(甲54)は,同主張に沿うものである。しかし,被告会社が原告会社の主要な取引先であったこと及び被告Bが平成23年以降,被告会社のSD長であったことは認められるものの(前記前提事実,前示1),原告会社が本件架空循環取引1を行うことにより資金繰りを繋いで被告Aも約8年間にわたり,本件架空循環取引,被告Aが本人尋問において,名古屋支店のナンバー2まで上り詰めていた被告Bに付いていくしかないと思っていた旨供述したことに照らすと,被告Bが原告会社に対し,本件架空循環取引1を強要したとは考えにくく,被告A作成の上記陳述書の記載は,にわかに採用できないから,原告会社の上記主張は理由がない。 ウよって,被告Bは,原告会社に対し,本件架空循環取引1につき,不法行為責任を負わない。 くく,被告A作成の上記陳述書の記載は,にわかに採用できないから,原告会社の上記主張は理由がない。 ウよって,被告Bは,原告会社に対し,本件架空循環取引1につき,不法行為責任を負わない。 - 43 - 本件税負担強要について原告会社は,第2回税務調査,第3回税務調査及び第4回税務調査の際,被告Bから,被告会社への反面調査が及ぶことを避けるため,使途秘匿金扱いの税負担を強要された旨主張する。しかし,被告Aが本人尋問において「できれば,税金は負担するので原告会社のところで止めておいてほしいという指示」を受けたと供述するにとどまること,被告Bが原告会社に対し,第3回税務調査の際,納税を無理に依頼するつもりはないことを記載した電子メールを送信)に照らすと,被告Bが本件税負担強要を行ったと認めることはできず,他に被告Bが税負担を強要したことを認めるに足りる証拠もない。 したがって,被告Bは,原告会社に対し,本件税負担強要を理由とする不法行為責任を負わない。 小括(被告B及び被告会社に対する甲事件損害賠償請求の当否の結論)アのとおり,被告Bの不法行為の成立が認められないから,争(いずれも被告Bの抗弁の当否)について判断するまでもなく,原告会社の被告Bに対する甲事件損害賠償請求(民法709条)は理由がない。 イ前示アのとおり,被告Bの不法行為責任が認められない以上,原告の被告会社に対する甲事件損害賠償請求(使用者責任)は,その前提を欠くから,(いずれも被告会社の抗弁の当否)について判断するまでもなく,理由がない。 3 被告Bに対する甲事件貸金返還請求の当否 本件貸付1についてアV,賃借人を被告Bとする賃料月8万7000円の本件賃貸借契約が締結され,平成 断するまでもなく,理由がない。 3 被告Bに対する甲事件貸金返還請求の当否 本件貸付1についてアV,賃借人を被告Bとする賃料月8万7000円の本件賃貸借契約が締結され,平成20年頃,本件賃貸借契約に基づく本件賃料を被告Bに代わって原告会社が支払う- 44 -ことを申請する旨の家賃負担者変更申請書(丙2)が提出されたことが認められる。 一方,被告B作成の資料(甲5の2ないし7の3,47〔枝番号を含む。〕)には,本件賃料に係る原告会社宛の領収書及び原告会社が被告B宛に発行した摘要を「アパート代」とする金額8万7000円の出金伝票が添付されており,また,上記資料には,「7月分のアパート代(87,000円)受取希望(伝票処理返済:130,000)」との記載(甲47の5の1枚目)があること等が認められる。 イ被告A及び被告Bは,平成18年12月頃から,被告Bの私費の領収証を原告会社宛で取得して,その金額を原告会社に支払わせ,その後,実在取引において,原告会社が被告会社に対し,本来の発注金額に上記領収証記載の金額の1.65倍の金額を水増しした金額で発注し,当該水増し分で原告会社の上記負担分を補填していた(以下「本件私費分水増し発注」という。)。 領収証記載の金額に6割5分上乗せした金額が支払われている趣旨は,本件私費分水増し請求による原告会社の税金負担分等を考慮したものである。 (乙1)そうすると,前記アの各資料は,本件私費分水増し発注等の手法も含めた,原告の資金繰りに関する金銭の移動についての資料であり,被告Bが作成し,原告会社に対して提示したものであると認められる。 ウ前示より,被告B及び被告Aは,Vとの間で,平成20年以降,原告会社が本件賃料を支払う責任を負う旨合意している。そ り,被告Bが作成し,原告会社に対して提示したものであると認められる。 ウ前示より,被告B及び被告Aは,Vとの間で,平成20年以降,原告会社が本件賃料を支払う責任を負う旨合意している。そして,Vから本件賃料に係る原告会社宛の領収書を得た後,本件私費分水増し発注又はこれと同様の不正取引により,被告会社に本件賃料の約1.65倍にあたる13万円を支出させ,これを原告会社に受領させていたことが認められる。 そうすると,原告会社がいったんは本件賃料月8万7000円を負担し,その後,被告Bが原告会社に対し,13万円を支払う旨合意していたとして- 45 -も,これは金銭消費貸借の趣旨ではなく,本件私費分水増し発注又はこれと同様の不正取引の一環として行われていたものと認められる。なお,前記アの資料には,本件賃料額等について「借金」「返済」等の記載が認められるものの,上記の資料の作成趣旨に照らすと,上記支出が不正なものであることを隠す意図で,「借金」「返済」等の記載をしたとも考えられるから,当該記載から直ちに上記資料記載の金銭の移動が金銭消費貸借の趣旨でなされたものであると認めることはできない。 したがって,本件貸付1は認められない。 本件貸付2ないし4についてア原告会社は,被告Bに対し,本件貸付2ないし4を行ったと主張し,その証拠として被告B作成の資料(甲47の2の1の6枚目,7枚目,甲47の5の1枚目)を提出する。上記資料には,①「未精算(原告会社殿へ伝票処理精算要す)」と記載された項目の中に「1/21日付W243,000→伝票処理金額:401,000」との記載(甲47の2の1の6枚目),②「別紙:82,500(3/25日付,X)82,500×1.65≒136,000」との記載(甲47の2の1の7 W243,000→伝票処理金額:401,000」との記載(甲47の2の1の6枚目),②「別紙:82,500(3/25日付,X)82,500×1.65≒136,000」との記載(甲47の2の1の7枚目。なお,「X」とは甲47の2の1の8枚目に添付された領収証を発行した店の名称である。)及び③「W領収書(私とYの6月渡比代)~伝票処理にて返済します(156,000×1.65=257,400)」(甲47の5の1枚目)がある。 イ前示イより,原告会社は,被告A及び被告Bが行っていた本件私費分水増し発注の一環として,被告Bの私費をいったん支払っていたことが認められる。前示アを含む被告B作成の資料(甲47〔枝番号を含む。〕)に原告会社宛の飲食店の領収書が添付されており,上記資料に「×1.65」の記載があることに照らすと,上記資料は,本件私費分水増し発注に係る金銭処理のために作成されたものであると認められる。 そうすると,上記資料に記載されている金銭の移動は,金銭消費貸借の趣- 46 -旨で行われたものではなく,本件私費分水増し発注の一環として行われたものであると認められる。なお,上記資料には,「借金」「返済」等の記載が認められるものの,上記の資料の作成趣旨に照らすと,当該記載から直ちに上記資料記載の金銭の移動が金銭消費貸借の趣旨でなされたものと認めることはできない。 ウしたがって,原告会社が本件貸付2ないし4における金銭授受であると主張する各金銭の移動(原告会社による被告Bの私費の立替)が認められるとしても,それは,本件私費分水増し発注の一環として行われたものであり,金銭消費貸借に係る金銭授受として行われたものとは認められない。 よって,本件貸付2ないし4はいずれも認められない。 本件貸付5につ 私費分水増し発注の一環として行われたものであり,金銭消費貸借に係る金銭授受として行われたものとは認められない。 よって,本件貸付2ないし4はいずれも認められない。 本件貸付5について原告会社は,被告Bに対し,本件貸付5を行ったと主張し,その証拠として,被告Aが作成した被告Bとの面談のメモ(平成24年8月5日付)を提出する(甲5の1の2)。 しかし,上記メモには「H21/4~f175万」「g235万」との記載やその合計額410万円について「gへの貸付金(帳簿上)」等の記載があるにとどまること,上記メモの作成日付が原告会社主張の本件貸付5の日付の約3年後であること等に照らすと,上記メモから本件貸付5の事実を認めることはできない。 本件貸付6ないし8について原告会社は,被告Bに対し,本件貸付6ないし8を行ったと主張し,その証拠として被告B宛の出金伝票及び原告会社宛の領収書(甲6〔枝番号を含む。〕)を提出する。 しかし,被告B宛の出金伝票及び原告会社宛の領収書のみから本件貸付6ないし8の事実を認めることはできない。 本件貸付9ないし11について- 47 -ア原告会社は,被告Bに対し,本件貸付9ないし11を行ったと主張し,その証拠として,本件貸付9ないし11に係る証拠として被告B宛の出金伝票が添付された被告B作成の資料(甲7〔枝番号を含む。〕)を提出する。上記資料には「原告会社より借入(被告Aの仮払い)⇒現金で返金を要す」との記載がある(甲7の1)。 イしかし,上記資料にはの記載や「Zくんのプール」等の記載があること(甲7の1),その体裁において,前示被告B作成の資料と類似していること等に照らすと,上記資料(甲7〔枝番号を含む。〕)は,本件私費分水増し発注等の不正取引に係る金銭の移動に関 等の記載があること(甲7の1),その体裁において,前示被告B作成の資料と類似していること等に照らすと,上記資料(甲7〔枝番号を含む。〕)は,本件私費分水増し発注等の不正取引に係る金銭の移動に関して作成されたものであると認めることができる。 ウしたがって,前上記資料に「借入」,「返金」等の記載があるからといって,直ちに上記資料及びこれに添付された出金伝票に記載された金銭の移動が金銭消費貸借における金銭授受として行われたものと認めることはできない。 よって,本件貸付9ないし11はいずれも認められない。 小括(被告Bに対する甲事件貸金返還請求の当否の結論)以上に(いずれも被告Bの抗弁の当否)について判断するまでもなく,被告Bに対する甲事件貸金返還請求は理由がない。 4 被告Aらの被告会社に対する不法行為(丙事件請求原因)の成否等。 なお,被告Bは,上記不法行為の成立を争わない。)について(乙事件の請求原因と抗弁の内容に鑑み,丙事件請求の当否を先行して判断することとする。) ア被告Aらの不法行為の成否前示1ののとおり,被告Aらは,被告Bと共謀して,実取引ではない本件架空循環取引を計画・実行し,かつ,原告会社から本件売掛先7社- 48 -に対する代金支払及び本件売掛先7社から被告会社に対する代金支払の時期が,被告会社から本件仕入先4社に対する代金支払及び本件仕入先4社から原告会社に対する代金支払の時期の6か月ないし1年後となるため,本件架空循環取引の実態が露見するなどして,原告会社又は本件売掛先7社が代金を支払うことができなくなったり,代金を支払うことを拒んだ場合には,被告会社が本件仕入先4社に対して支払った代金に対応する売掛金を回収できなくなることを認識していたし,被告会社が代金支払を 社が代金を支払うことができなくなったり,代金を支払うことを拒んだ場合には,被告会社が本件仕入先4社に対して支払った代金に対応する売掛金を回収できなくなることを認識していたし,被告会社が代金支払をする時期と売掛金を回収する時期との間の期間を約6か月ないし1年後に設定しているために,被告会社がその間にわたり,売掛金を回収できないリスクを負うことを認識していたものである。 そして,被告Aらは,上記認識の下,被告Bと共謀して,本件架空循環取引に係る各取引の注文書,見積書等を偽造したり,その作成日付をさかのぼらせたりすることによって,被告会社に対し,本件架空循環取引が実取引であるかのように装って,本件架空循環取引2に係る本件仕入先4社に対する代金支払を行わせたのであるから,被告Aらの行為は,被告会社に対する共同不法行為を構成すると解すべきである。 イ被告会社の損害額前示1カのとおり,被告会社は,被告Aらが行った本件架空循環取引2により,本件仕入先4社に対し,計18億3734万2500円を支払った。 もっとも,前示1アより,被告会社は,本件架空循環取引2のうち,Lを仕入先とするものに関し,Lから,Lが被告会社から受領した金銭と原告会社に支払った金銭の差額計505万円の返還を受けた。 また,被告会社は,本件架空循環取引2のうち別紙4の注文番号5412046の取引(本件架空循環取引γ。支払金額計2730万円)に係る原告会社に対する不法行為請求権の一部(1542万0332円)を乙事件において相殺に供した(後記7)。 - 49 -したがって,被告会社が被告Aらの本件架空循環取引2によって被った損害額は,18億3734万2500円から上記返還分505万円及び上記相殺分1542万0332円を控除した残額である18 したがって,被告会社が被告Aらの本件架空循環取引2によって被った損害額は,18億3734万2500円から上記返還分505万円及び上記相殺分1542万0332円を控除した残額である18億1687万2168円となる。 被告Aらの主張に対する判断アこの点,被告Aらは,被告会社が本件架空循環取引2につき,架空取引であることを知っていたか,知っていたと評価できるなどと主張するが,前示いたとは認められないから,被告Aらの上記主張はその前提を欠き,採用できない。 イ被告Aらは,本件差額部分については被告Aらの行為と評価できないし,これに対する故意も否定される被告Aらは,被告Bと共謀して本件架空循環取引2を企画及び実行していたのであり,本件架空循環取引2のうちの本件差額部分を伴うものについても,それが実取引ではなく,被告会社が代金支払をする時期と売掛金を回収する時期との間の期間において,売掛金を回収できないリスクを負うことを認識していたのであるから,売掛金を回収できなかった場合に被る損害(被告会社が本件仕入先4社に対して支払った代金)の具体的金額まで認識していないとしても,本件架空循環取引2自体が被告Aらの行為と評価されなくなるものではないし,これに対する故意に欠けるものでもない。したがって,被告Aらの上記主張は採用できない。 ウ被告Aらは,本件架空循環取引2について,被告会社に対して違法であるという認識はなかったし,被告Bが原告会社の損害を補うような効率のよい仕事を発注すると約束していたから,回収スキムがいずれ行き詰まるという引ではなく,原告会社又は本件売掛先7社が代金を支払うことができなくな- 50 -ったり,代金を支払うことを拒んだ場合には,被告会社が本件仕入先4社に対して支払った代金に いずれ行き詰まるという引ではなく,原告会社又は本件売掛先7社が代金を支払うことができなくな- 50 -ったり,代金を支払うことを拒んだ場合には,被告会社が本件仕入先4社に対して支払った代金に対応する売掛金を回収できなくなり,損害(被告会社が本件仕入先4社に対して支払った代金)を被ることを認識していたのであるから,本件架空循環取引2に係る不法行為についての故意を欠くことにはならない。 エ被告Aらは,被告会社が主張する損害につき,被告会社が本件売掛先7社との間の契約を取り消したこと又は回収スキムに係る契約に基づく権利行使をしなかった結果であるため,被告Aらがもたらした損害ではない旨主張被告Aらが,被告会社に対し,本件架空循環取引が実取引であるかのように装って,本件架空循環取引2に係る本件仕入先4社に対する代金支払を行わせたことにより発生したものであるから,被告Aらがもたらした損害である。したがって,被告Aらの上記主張は採用できない。 オ被告Aらは,本件架空循環取引を発案・実行したのは被告Bであること,本件架空循環取引発覚後,被告会社がLに対し,本件架空循環取引において得た取引差益の返還を求め,その返還を受けたこと及び被告会社がM及びNに対し,「念書差入分和解」として支払ったことからすると,本件架空循環取引の主体者である被告会社に本件架空循環取引の利益及び損害が帰属する旨主張する。そこで検討するに,前示1のとおり,被告会社がLから,Lが本件架空循環取引において得た利益計2603万円の返還を受けた事実,被告会社が本件架空循環取引発覚後に支払期日を迎えた本件架空循環取引について,Mとの間で支払額の減額を条件に和解したり,Nとの間で支払後に返還について改めて協議することを約した上で仕入代金を仮に支払ったりした事実が 循環取引発覚後に支払期日を迎えた本件架空循環取引について,Mとの間で支払額の減額を条件に和解したり,Nとの間で支払後に返還について改めて協議することを約した上で仕入代金を仮に支払ったりした事実があるものの,これらの事実から,本件架空循環取引の主体者が被告会社であり,本件架空循環取引に係る利益及び損害を被告会社に帰属させるべきであるとはいえない。 - 51 -なお,被告会社は,本件架空循環取引発覚後にM及びNに対する仕入代金の支払を行っているが,これは,被告Aらの本件架空循環取引2が行われた結果,支払を余儀なくされたものであるから,上記支払金額についても,本件架空循環取引2によって被告会社が被った損害といえる。 したがって,丙事件において,被告Aらは,被告会社に対し,共同不法行為責任に基づく損害賠償義務を負う。 5 丙事件における原告会社の過失相殺の抗弁の当 原告会社は,仮に,被告会社の原告会社に対する損害賠償請求が認められるとしても,被告会社には本件架空循環取引に関して過失が認められるから,これを考慮しなければならない旨主張する。 しかし,前示のとおり,被告Aらは,被告会社に対し,本件架空循環取引が実取引である旨積極的に欺罔し,被告会社が本件架空循環取引につき実取引と誤信しているのを利用して,被告会社に対する不法行為を行ったものといえる。したがって,原告会社に過失相殺の主張を許すならば,被告会社の不注意を自己の利益のために利用して行った被告Aらの不法行為について原告会社が負う責任を,被告会社の当該不注意を理由に減責することになり,不合理であるというべきである。 したがって,原告会社の上記過失相殺の抗弁は理由がない。 6 丙事件における被告Bの過失相殺の抗弁の当否 被告Bは,被告Aらとともに本件架空 ることになり,不合理であるというべきである。 したがって,原告会社の上記過失相殺の抗弁は理由がない。 6 丙事件における被告Bの過失相殺の抗弁の当否 被告Bは,被告Aらとともに本件架空循環取引という詐欺行為を行い,被告会社に多大な損害を与えたことを争うものではない。したがって,前示4及び5より,被告Bは,被告会社に対し,被告Aらと連帯して,共同不法行為責任に基づく損害賠償義務を負う。 被告Bは,過失相殺事由として,自身らが本件架空循環取引を長期間継続して行うことができたのは被告会社の管理監視体制が甘かったためである旨主張するが,仮に被告会社の管理監視体制に不十分な点があったとしても,前示- 52 -5と同様に,被告Bによる過失相殺の主張を認めることは不合理である。 したがって,被告Bの上記過失相殺の抗弁は理由がない。 小括(丙事件損害賠償請求の当否の結論)以上により,被告B,被告A及び原告会社は,被告会社に対し,本件架空循環取引2に係る共同不法行為責任に基づき,連帯して,18億1687万2168円の損害賠償義務を負う。 よって,被告会社の丙事件請求は,被告B,被告A及び原告会社に対し,連帯して,18億1687万2168円及びこれに対する原告会社及び被告Aについては平成26年5月4日から,被告Bについては同月5日(いずれも不法行為の日の後である訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 7 乙事件における被告会社の相殺の抗弁の当について 前記前提事実のとおり,原告会社は,被告会社に対し,本件契約1に基づく代金債権計574万9800円及び本件契約2に基づく代金債権計982万6950円の合計1557万675 弁の当について 前記前提事実のとおり,原告会社は,被告会社に対し,本件契約1に基づく代金債権計574万9800円及び本件契約2に基づく代金債権計982万6950円の合計1557万6750円の請負代金債権(本件各代金支払債権)を有する。 他方,前示4ないし6により,被告会社は,原告会社に対し,本件自働債権1(売掛金債権計15万6418円)を有するとともに(弁論の全趣旨),本件自働債権2(本件架空循環取引2のうち別紙4の管理番号N-108,注文番号5412046の取引(本件架空循環取引γ。支払金額計2730万円)に係る原告会社に対する同額の不法行為による損害賠償請求権。なお,同請求権は,遅くとも本件架空循環取引が被告会社の知るところとなった平成25年3月13日(乙1)までには発生した。)を有する。 そして,被告会社は,平成25年6月28日,原告会社に対し,同月27日付けの相殺通知書により,本件自働債権1(債権額15万6418円)及び本- 53 -件自働債権2(債権額2730万円)をもって,原告会社が有する本件各代金支払債権1557万6750円とその対当額において相殺するとの意思表示をした。(争いのない事実) 8 乙事件における被告会社の相殺の抗弁に対する原告会社の反対の意思表示の 原告会社は,本件各代金支払債権について,被告会社から,本件架空循環取引の発覚後,必ず支払う旨言われていたから,これを受働債権として対当額で相殺することは認められない旨主張する。 しかし,本件各代金支払債権について上記事実を認めるに足りる証拠はないし,また,仮に上記事実が認められるとしても,上記事実により,被告会社が代金支払の約束のみならず,本件各代金支払債権の相殺に係る「反対の意思を表示した」とまではいえない。 したがって,原告 はないし,また,仮に上記事実が認められるとしても,上記事実により,被告会社が代金支払の約束のみならず,本件各代金支払債権の相殺に係る「反対の意思を表示した」とまではいえない。 したがって,原告会社の上記再抗弁は理由がない。 9 乙事件における被告会社の相殺の抗弁に対する原告会社の下請代金支払遅延等について 原告会社は,下請代金支払遅延等防止法4条1項2号より,親事業者は,下請業者に対して製造委託等をした場合,下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないことは許されないのであるから,被告会社が相殺を理由に本件各代金支払債権に係る代金の支払を拒絶することは許されない旨主張する。 しかし,同号は,下請事業者が下請代金の支払を受けられない事態を防止するため,親事業者による支払遅延を禁止する規定にすぎず,親事業者が下請事業者に対して相殺の意思表示を行うことを禁ずる規定ではない(同法4条2項1号参照)。 したがって,原告会社の上記再抗弁は理由がない。 小括(乙事件請求の当否の結論)前示7の相殺の意思表示により,乙事件請求に係る原告会社が有する本件- 54 -各代金支払債権は,その相殺適状時(本件契約1に係る部分につき平成25年4月30日,本件契約2に係る部分につき同年5月31日)に遡って,本件自働債権1及び本件自働債権2とその対当額において消滅した。したがって,乙事件請求は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。なお,丙事件請求の棄却部分は僅少であるから,訴訟費用の負担につき民訴法64条ただし書を適用することとする。 名古屋地方裁判所民事第8部 裁判官前田志織 裁判官川 村 久美子 裁判長 名古屋地方裁判所民事第8部 裁判官前田志織 裁判官川村久美子 裁判長裁判官加島滋人は,転補につき,署名押印することができない。 別紙1ないし4は省略

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