主文 被告人を懲役13年に処する。 未決勾留日数中360日をその刑に算入する。 押収してあるライター1個(平成13年押第6号の1)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 建造物を焼損しようと企て, 1 平成11年9月29日午前2時30分ころ,栃木県足利市a町b番地所在のA所有の現に人が住居に使用せず,かつ,人の現在しない木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建作業所(床面積約31.40平方メートル)北東側軒下において,同所に置かれていた鋸屑等入り紙袋にライターで火を放てば,上記作業所を焼損した上,その北側に近接して建てられているBほか1名が現に住居に使用している木造瓦葺2階建家屋(床面積合計約56.70平方メートル)等に延焼することを認識しながら,あえてその放火を決意し,所携のライターで上記紙袋に点火して放火し,同紙袋からベニヤ板等を介し,上記作業所東側板壁に燃え移らせ,同作業所を全焼させた上,これを経て上記B方家屋,同作業所南側に近接して建てられているCが現に住居に使用している木造瓦葺平家建家屋(床面積約71.415平方メートル),上記作業所西側に近接して建てられているDほか2名が現に住居に使用している木造瓦葺2階建家屋兼木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建工場(床面積合計約120.07平方メートル)に順次燃え移らせ,よって,上記B方家屋,C方家屋及びD方家屋兼工場を全焼させ,これを焼損し, 2 平成12年7月9日午前2時50分ころ,同市b町c番地所在のEほか1名が現に住居に使用している木造瓦葺2階建建物(床面積合計約169.29平方メートル)の南東側軒下において,同建物が現に人の住居に使用され,又は人の現在するものであることを認識しないまま,同建物南東に取り付けられた木製ショーケース上部の石膏ボード壁付近 約169.29平方メートル)の南東側軒下において,同建物が現に人の住居に使用され,又は人の現在するものであることを認識しないまま,同建物南東に取り付けられた木製ショーケース上部の石膏ボード壁付近に新聞紙を差し込み,同木製ショーケースの上部にライター用のオイルを撒いた上,所携のライターで同新聞紙に点火して放火し,同新聞紙を介して同建物の柱・天井等に燃え移らせ,よって,同建物の柱・天井等(合計約93.96平方メートル)及び同建物東側に近接するF所有の現に人が住居に使用せず,かつ,人の現在しない木造瓦葺2階建倉庫(床面積合計約123.48平方メートル)の屋根等(合計約51.03平方メートル)を焼損し, 3 同月23日午前1時ころ,同市c町d丁目e番f所在のGほか2名所有の現に人が住居に使用せず,かつ,人の現在しない木造瓦葺平家建物置(床面積約39.66平方メートル)南側軒下において,雨戸の破損部分にトイレットペイパーを差し込み,ライター用オイルを同トイレットペイパーに染み込ませた上,同所付近に放置されていたゴミ屑が入った買い物用ポリ袋を同トイレットペイパーに接着させて置き,所携のライターで同買い物用ポリ袋に点火して放火し,その火を上記物置の柱等に燃え移らせ,よって,同物置を全焼させ,これを焼損し, 4 同月24日午前零時40分ころ,同市de丁目f番地g所在の株式会社H(代表取締役I)所有の現に人が住居に使用せず,かつ,人の現在しない木・土蔵造瓦葺2階建建物(床面積合計約214.92平方メートル)南側軒下において,木製戸袋の中にライター用オイルを撒いた上,同戸袋の中にあった雨戸の間に新聞紙を差し込み,所携のライターで同新聞紙に点火して放火し,よって,上記建物を全焼させ,これを焼損し, 5 同年8月8日午前零時50分ころ,同市e町f番gない いた上,同戸袋の中にあった雨戸の間に新聞紙を差し込み,所携のライターで同新聞紙に点火して放火し,よって,上記建物を全焼させ,これを焼損し, 5 同年8月8日午前零時50分ころ,同市e町f番gないしh所在のJほか3名所有の現に人が住居に使用せず,かつ,人の現在しない木造瓦葺平家建建物(床面積約100.44平方メートル)の北側軒下において,便所下窓から手を差し入れて同便所内にライター用オイルを撒いた上,同窓枠部分に新聞紙を置き,所携のライターで同新聞紙に点火して放火し,よって,上記建物を焼損しようとしたが,近隣住民に発見されて消し止められたため,同便所の根太等(約0.068平方メートル)を焼損したに止まり,その目的を遂げず, 6 同月21日午後11時15分ころ,同市f町g番地所在のK株式会社資材置場東側において,有限会社L(代表取締役M)所有の現に人が住居に使用せず,かつ,人の現在しない鉄骨平屋建テント倉庫(床面積約189平方メートル)北側に近接して積まれていた木製パレットにライター用オイルを撒いた上,所携のライターで同パレットの間に挟まれていた段ボール様紙片に点火して放火し,その火を上記パレットを介し,上記テント倉庫の屋根及び壁部分のテント膜材に燃え移らせ,よって,同テント膜材(合計約123.9平方メートル)を焼損し, 7 同月23日午後11時30分ころ,同市g町h番地i所在のN所有の現に人が住居に使用せず,かつ,人の現在しない木造瓦葺2階建店舗(床面積合計約76.725平方メートル)南側軒下において,棒状にしたティッシュペイパーをライター用オイル缶の口に入れ,同オイル缶を上記店舗の南側出入り口に立てかけられていた雨戸下に置き,これに火を放てば,人の現住しない上記店舗を焼損した上,その東側に近接して建てられているOほか1名が現に住居 オイル缶の口に入れ,同オイル缶を上記店舗の南側出入り口に立てかけられていた雨戸下に置き,これに火を放てば,人の現住しない上記店舗を焼損した上,その東側に近接して建てられているOほか1名が現に住居に使用している木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建家屋(床面積合計約90.315平方メートル)に延焼することを認識しながら,あえてその放火を決意し,所携のライターで上記ティッシュペイパーに点火して放火し,よって,上記店舗及び上記O方家屋を焼損しようとしたが,自然鎮火したため,上記店舗の雨戸等(合計約0.06805平方メートル)を焼損したに止まり,上記O方家屋を焼損するに至らず, 8 同月24日午後9時30分ころ,前記N所有の現に人が住居に使用せず,かつ,人の現在しない木造瓦葺2階建店舗北側軒下において,同所に置かれていた廃材等にライター用オイルを撒き,これに火を放てば,人の現住しない上記店舗を焼損した上,その東側に近接して建てられている前記Oほか1名が現に住居に使用している木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建家屋に延焼することを認識しながら,あえてその放火を決意し,所携のライターで上記廃材等の間に置かれていた段ボール箱に点火して放火し,同段ボール箱から上記廃材等を介し,上記店舗北側壁等に燃え移らせ,同店舗を全焼させた上,これを経て上記O方家屋に燃え移らせ,よって,同家屋の庇等(合計約2.385平方メートル)を焼損し, 9 同月26日午前1時過ぎころ,同市h町i番地所在のP株式会社(代表取締役Q)所有の現に人が住居に使用せず,かつ,人の現在しないプレハブ造亜鉛メッキ鋼板葺平家建倉庫(床面積約39.96平方メートル)西側において,同倉庫西側窓枠付近にティッシュボックスを置き,ライター用オイルを同ティッシュボックス内に流し込んだ上,同ティッシュボックス内のティッシュ 葺平家建倉庫(床面積約39.96平方メートル)西側において,同倉庫西側窓枠付近にティッシュボックスを置き,ライター用オイルを同ティッシュボックス内に流し込んだ上,同ティッシュボックス内のティッシュペイパーに所携のライター(平成13年押第6号の1)で点火して放火し,よって,上記倉庫を焼損しようとしたが,自然鎮火したため,上記窓枠等(合計約0.0478平方メートル)を焼損したに止まり,その目的を遂げず, 10 同日午前1時30分ころ,同市i町j番地k所在のR所有の現に人が住居に使用せず,かつ,人の現在しない木造瓦葺2階建倉庫(床面積合計約89.48平方メートル)北側において,ライター用オイルをティッシュボックスに流し込んだ上,同ティッシュボックスを同倉庫のコンクリート土台付近に置き,同ティッシュボックス内のティッシュペイパーに所携の前記第1の9記載のライターで点火して放火し,よって,上記倉庫を焼損しようとしたが,自然鎮火したため,同倉庫の土台柱(約0.0482平方メートル)を焼損したに止まり,その目的を遂げず, 11 同日午前2時過ぎころ,同市jk丁目l番地所在のS所有の現に人が住居に使用せず,かつ,人の現在しない木造平家建物置(床面積約16.562平方メートル)南側において,ティッシュボックス内にライター用オイルを流し込んだ上,同ティッシュボックスを同物置南側の塩化ビニールトタン板に立てかけ,同ティッシュボックス内のティッシュペイパーに所携の前記第1の9記載のライターで点火して放火し,よって,上記物置を焼損しようとしたが,警察官に発見されて,消し止められたため,上記塩化ビニールトタン板(約0.1284平方メートル)を焼損したに止まり,その目的を遂げず,第2 酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上のアルコールを身体に保 し止められたため,上記塩化ビニールトタン板(約0.1284平方メートル)を焼損したに止まり,その目的を遂げず,第2 酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で,同日午前2時15分ころ,同市b町m番地n付近道路において,普通貨物自動車を運転したものである。 (証拠の標目)略(法令の適用)罰条判示第1の1,8の各行為刑法108条判示第1の2ないし4,6の各行為刑法109条1項判示第1の5,9ないし11の各行為刑法112条,109条1項判示第1の7の行為刑法112条,108条判示第2の行為道路交通法119条1項7号の2,65条1項,同法施行令44条の3刑種の選択判示第1の1,7,8の各行為につき有期懲役刑を,判示第2の行為につき懲役刑を選択併合罪の加重刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第1の1の罪の刑に同法14条の制限内で加重)未決勾留日数の算入刑法21条没収刑法19条1項2号,2項本文(判示第1の9の行為に供したライター)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,消防団の分団員をしていた被告人が,日頃の様々な鬱憤を晴らす目的の下に,約11か月の間に同一市内において繰り返した現住建造物等放火2件(判示第1の1,8)・同未遂1件(判示第1の7)・非現住建造物等放火4件(判示第1の2ないし4,6)・同未遂4件(判示第1の5,9ないし11)及び判示第1の11の非現住建造物等放火未遂事案を惹起後の逃走中に犯した酒気帯び運転1件(判示第2)の各事案である。 被告 4件(判示第1の2ないし4,6)・同未遂4件(判示第1の5,9ないし11)及び判示第1の11の非現住建造物等放火未遂事案を惹起後の逃走中に犯した酒気帯び運転1件(判示第2)の各事案である。 被告人が敢行した各連続放火の犯行は,厳罰が法定されている現住建造物等放火事案が未遂1件を含め3件あるだけでなく,重罰が法定されている非現住建造物等放火事案も未遂4件を含め8件加わっており,何よりも,各放火の犯行がいずれも罪質自体重大で,かつ,その件数が多いことが指摘されなければならない。次に,各放火の犯行の具体的内容を見ても,まず,動機は,かねてから消防士に憧れて消防団に所属し,火災発生時の消火活動による充足感を得ていた被告人が,あろうことか,自ら建造物に放火して火災を作出し,消火活動に従事することにより,雇用主等との軋轢や生活苦の鬱憤を晴らしたいとの倒錯した心理の下に,本件各犯行に及んだものにほかならず,その歪んだ身勝手な動機に酌量の余地は皆無である。また,各放火の犯行態様は,住民がくつろいだり就寝していることが見込まれる夜間ないしは深夜に敢行されていて,しかも,犯行場所は殆どが住宅密集地域であったばかりでなく,各放火の手段も,大半はライター用オイルを使用している上,途中からは火が確実に建造物に燃え移るとともに,自身が安全に逃走できるだけの時間的余裕が得られ易いような策も弄するなどしており,全体として各放火の犯行態様は悪質かつ危険なものといわざるを得ない。そして,各放火の犯行の結果,現住建造物3棟と非現住建造物4棟が全焼するとともに,非現住建造物3棟が半焼するなど,合計3000万円以上の財産的損害が生じており,程度の差はあるにせよ,居住場所や貴重な財産を失うなどした直接の被災者らが受けた物心両面での打撃が大きかったことはもとより,付近住民に与えた 焼するなど,合計3000万円以上の財産的損害が生じており,程度の差はあるにせよ,居住場所や貴重な財産を失うなどした直接の被災者らが受けた物心両面での打撃が大きかったことはもとより,付近住民に与えた不安感や恐怖感も軽視できないものがあったと認められる。にも拘わらず,被告人による弁償や慰謝の措置は全く講じられないままとなっており,多くの者が厳罰を望んでいるのも当然である。さらに,被告人は,率先して防火や消火活動を担うべき消防団員の立場にありながら,逮捕されるまでの間,言語道断の所業ともいうべき各放火の犯行を重ねていたものであって,その反社会的な犯罪性向は到底看過できず,この点においても強く指弾されなければならない。加えて,本件各放火の犯行により消防団員に対する地域社会における信用を失墜させたことをも併せ考慮すると,被告人の刑事責任は誠に重大である。 したがって,現住建造物等放火事案の犯意はいずれも未必的なものに過ぎなかった上,幸いに,各放火の犯行中の5件は,付近住民や警察官に早期発見されたり,自然鎮火したため,未遂に終わり,焼損部分も小範囲に止まったこと,被告人が,逮捕当初はともかく,捜査段階途中からは,事実を素直に認め,反省の態度や更生の意欲を示していること,被告人が,未だ20代と若く,前歴はさておき,前科としては道路交通法違反罪による罰金刑1犯のほかは有せず,実妹も社会復帰後の更生への援助方を証言していること,そのほか,弁護人指摘の被告人の不遇な生育歴等を最大限勘案しても,主文の刑をもって臨むのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 (検察官の求刑懲役17年,押収してあるライターの没収)平成13年11月27日宇都宮地方裁判所栃木支部裁判長裁判官飯渕進裁判官山田敏 (検察官の求刑懲役17年,押収してあるライターの没収)平成13年11月27日宇都宮地方裁判所栃木支部裁判長裁判官飯渕進裁判官山田敏彦裁判官庄司芳男
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