平成7(ネ)3577 立木所有権確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成8年3月28日 東京高等裁判所
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判決文本文7,028 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 第一申立一控訴人(主位的申立) 1 原判決を取り消す。 2 本件を東京地方裁判所に差し戻す。 (予備的申立) 1 原判決を取り消す。 2 控訴人と被控訴人との間で、別紙物件目録一ないし八二記載の各土地(以下「本件土地」と総称する。)に生立している各立木(以下「本件立木」と総称する。)が控訴人の所有に属することを確認する。 3 被控訴人は、本件立木につき、控訴人が明認方法を施行することを妨害し、かつ、控訴人が施行した明認方法を除去してはならない。 4 被控訴人は、本件立木を伐採又は搬出してはならない。 5 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。 二被控訴人主文同旨第二事案の概要一本件は、控訴人が、株式会社真里谷(以下「真里谷」という。)に対する貸付金債権の担保として、同社から本件立木の譲渡を受け、その後、本件立木の所有権を確定的に取得したと主張して、真里谷に対する会社更生法に基づく保全管理人による管理を命ずる旨の決定(以下「保全管理決定」という。)に伴い保全管理人に選任されたA、真里谷に対して更生手続が開始された後においては、その開始決定と同時に管財人に選任された被控訴人に対し、前記第一の一の予備的申立2ないし4のとおりの裁判を求めている事案であって、当事者双方の主張は次のとおりである。 二控訴人の請求原因 1 真里谷は、東京地方裁判所平成五年(ミ)第一号、第一三号会社更生申立事件につき、同年八月五日、保全管理決定を受け、Aが保全管理人に選任された後、同六年一二月二日、更生手続開始決定を受け、被控訴人が管財人に選任されている。 2(一) 控訴人は、平成三年二月二八 立事件につき、同年八月五日、保全管理決定を受け、Aが保全管理人に選任された後、同六年一二月二日、更生手続開始決定を受け、被控訴人が管財人に選任されている。 2(一) 控訴人は、平成三年二月二八日、真里谷との間で、(1)控訴人が真里谷に対し、二〇〇〇万円を利息年六パーセント、弁済期同五年一二月三一日、真里谷が第三者から差押え・仮差押えを受けるなどしたときは、期限の利益を失うとの約定で貸し渡し(以下「本件消費貸借契約」という。)、(2)本件消費貸借契約上の債務を担保するため、真里谷が所有していた本件土地に生立している本件立木を譲り受け、真里谷が右債務を遅滞したときは、控訴人が本件立木の所有権を確定的に取得し、その評価に従い、右債務の清算をする旨のいわゆる帰属清算の約定の契約(以下「本件譲渡担保契約」という。)を締結した。 (二) 真里谷は、平成三年七月三一日、その所有する有価証券につき株式会社オリックスから仮差押えを受け、前記期限の利益を失ったのに、控訴人に対し本件消費貸借契約上の債務の弁済を遅滞したので、控訴人は、本件立木の所有権を確定的に取得したところ、真里谷は、その際、控訴人が本件譲渡担保契約に基づき本件立木の所有権を確定的に取得したことを異議なく確認しているだけでなく、同年八月二〇日には、本件立木の価格が二〇五〇万円と評価され、前記約定に基づき控訴人が真里谷に対し支払うべき清算金が存しないことを異議なく承諾している。 3 控訴人は、平成六年一月六日、本件立木の大部分につき、「当地全域の立木全部は控訴人の所有である」などと記載した約五〇センチメートル四方大のベニヤ板等(以下「本件ベニヤ板等」という。)を釘で打ち付けたが、これは立木の譲渡についての対抗要件である明認方法を施行したものというべきである。 4 しかし、真里谷の保全管 センチメートル四方大のベニヤ板等(以下「本件ベニヤ板等」という。)を釘で打ち付けたが、これは立木の譲渡についての対抗要件である明認方法を施行したものというべきである。 4 しかし、真里谷の保全管理人に選任されたAは、本件立木が真里谷の所有に属すると主張して、平成六年四月下旬、控訴人が釘打ちした本件ベニヤ板等を撤去し、真里谷の管財人に選任された被控訴人も、本件立木が真里谷の所有であると主張して、控訴人が本件立木に明認方法を施行することを禁止しているので、控訴人が改めて本件立木に明認方法を施行しても、これが被控訴人によって除去されるおそれは高く、また、被控訴人が自ら本件立木を伐採又は搬出するおそれもある。 5 よって、控訴人は、本件立木の所有権に基づき、被控訴人に対し、本件立木が控訴人の所有に属することの確認、本件立木につき、控訴人が明認方法を施行することの妨害及び控訴人が施行した明認方法の除去の禁止、本件立木の伐採及び搬出の禁止を求める。 三請求原因に対する被控訴人の認否 1 請求原因1の事実は認める。 2 請求原因2のうち、真里谷が株式会社オリックスから控訴人主張の仮差押えを受けた事実、真里谷が控訴人に対し本件消費貸借契約上の債務の弁済をしていない事実は認めるが、その余の事実は否認する。 3 請求原因3のうち、控訴人が本件立木に本件ベニヤ板等を釘打ちした事実は認めるが、その釘打ちが立木の譲渡についての対抗要件である明認方法を施行したものであるとの主張は争い、その余の事実は否認する。 4 請求原因4のうち、被控訴人が本件立木を伐採して搬出するおそれがあるとの事実は否認し、その余の事実は認める。 5 請求原因5は争う。 四被控訴人の抗弁 1 本件消費貸借契約及び本件譲渡担保契約の無効仮に控訴人と真里谷との間で本件消費貸借 出するおそれがあるとの事実は否認し、その余の事実は認める。 5 請求原因5は争う。 四被控訴人の抗弁 1 本件消費貸借契約及び本件譲渡担保契約の無効仮に控訴人と真里谷との間で本件消費貸借契約及び本件譲渡担保契約が締結されたとしても、両者の通謀してした虚偽表示によるものであって、無効である。 2 控訴人が本件立木に施行した対抗要件の否認仮に控訴人が平成三年七月三一日に本件立木の所有権を確定的に取得したとしても、本件立木に本件ベニヤ板等を釘打ちしたことによって控訴人主張の明認方法を施行したのは同六年一月一六日であるところ、控訴人は、当時、真里谷に対する会社更生申立事件において保全管理人が選任されたことを知っていたから、被控訴人は、会社更生法八〇条一項の規定に基づき、控訴人が本件立木に施行した対抗要件を否認する。 控訴人は、この点につき、立木の譲渡についての対抗要件である明認方法の施行は単独行為であるとして、右否認の対象とならないように主張するが、明認方法も、所有権の取得を対抗するための公示方法である以上、譲受人の所有権の取得を外部的・客観的に表示する譲渡人の意思に基づくものであることを要するのであって、明認方法が単独行為であるといわれているのは、事実行為としての明認方法の施行については譲渡人が行う必要がなく、譲受人が行って差し支えないというにとどまり、これが対抗要件として有効となるためには、譲受人の事実行為としての明認方法の施行につき譲渡人の明示又は黙示の同意があることを要するものというべきであるから、控訴人が単独で本件立木に本件ベニヤ板等を釘打ちしても、これによって本件立木の所有権の取得を第三者に対抗しうるものではない。 また、控訴人は、保全管理人のいわゆる第三者性を争うが、保全管理決定には会社財産に対する差押えの効力が ニヤ板等を釘打ちしても、これによって本件立木の所有権の取得を第三者に対抗しうるものではない。 また、控訴人は、保全管理人のいわゆる第三者性を争うが、保全管理決定には会社財産に対する差押えの効力があるから、保全管理人は、会社財産につき権利を主張する者に対して第三者の地位に立つものというべきであって、この点からしても、保全管理決定時に本件立木につき対抗要件を充足していない控訴人がその所有権の取得を保全管理人に対抗する余地がないことは明らかである。 五抗弁に対する控訴人の認否 1 抗弁1の事実は否認する。 2 抗弁2の主張は争う。 会社更生法八〇条一項は、債務者が権利移転の原因行為をしながら、同項所定の相当の期間内に対抗要件を充足させないでおいて、支払の停止又は破産・会社更生手続開始の申立などがあった後、いきなり対抗要件を充足させることは、一般債権者の予測を裏切り、それらの者を害する結果となるため、これを否認しうることにしたものであって、右否認が認められるのは、対抗要件を充足させる債務者の行為であるか、これと同視しうるもの、あるいは、対抗要件の充足につき債務者の協力ないし加功があった場合であることを要するものというべきである。 これに対し、本件で問題となっているのは、控訴人が本件立木に本件ベニヤ板等を釘打ちして施行した明認方法であるところ、立木の譲渡についての対抗要件である明認方法は譲受人である控訴人が単独で施行しうるものであって、譲渡人である真里谷の行為によるものでも、これと同視しうるものでもなく、その施行につき真里谷の協力ないし加功があったわけでもないから、控訴人が本件立木に施行した明認方法が被控訴人の否認の対象となる余地はないものというべきである。 原判決は、控訴人が本件立木の所有権の取得をその敷地の所有権又は管理処分権限を ったわけでもないから、控訴人が本件立木に施行した明認方法が被控訴人の否認の対象となる余地はないものというべきである。 原判決は、控訴人が本件立木の所有権の取得をその敷地の所有権又は管理処分権限を取得した保全管理人に対抗することができるか否かの問題として本件を把握しているが、保全管理決定をもって更生手続開始前の会社から保全管理人に対する権利の移転を擬制する余地はなく、本件は、控訴人と保全管理人との民法一七七条の規定する対抗関係が問題となる場合ではない。 第三証拠(省略) 理由 一前提となる事実関係本件立木が真里谷の所有であったこと、控訴人が本件立木にその主張に係る明認方法として本件ベニヤ板等を釘打ちしたが、真里谷の保全管理人に選任されたAは、本件立木が真里谷の所有に属すると主張して、これを撤去したこと、その後に真里谷の管財人に選任された被控訴人も、本件立木が真里谷の所有に属すると主張して、控訴人が本件立木にその主張に係る明認方法を施行することを禁止していること、以上の各事実は当事者間に争いがない。 二本訴請求の当否 1 控訴人は、本件消費貸借契約及び本件譲渡担保契約に基づき、真里谷から本件消費貸借契約上の債務の担保として本件立木の譲渡を受け、真里谷が右債務を遅滞したため、本件立木の所有権を確定的に取得し、その後、本件ベニア板等を釘打ちして明認方法を施行したと主張するが、控訴人が本件立木の所有権を取得したものであるか否かはともかく、控訴人が本件立木に本件ベニヤ板等を釘打ちしたことは、それ自体をみれば、立木の譲渡についての対抗要件である明認方法の施行と認めるに足るものというべきである。 2 これに対し、被控訴人は、本件ベニヤ板等の釘打ちによって控訴人が本件立木に明認方法を施行したとしても、会社更生法 譲渡についての対抗要件である明認方法の施行と認めるに足るものというべきである。 2 これに対し、被控訴人は、本件ベニヤ板等の釘打ちによって控訴人が本件立木に明認方法を施行したとしても、会社更生法八〇条一項に基づき、これを否認すると主張するので、控訴人が右明認方法の原因として本件立木の所有権を取得したものであるか否かはさておき、以下、被控訴人主張の否認の当否につき検討することとする。 (一) 会社更生法八〇条一項は、対抗要件の否認につき規定しているが、その趣旨は、権利移転の対抗要件は、その原因行為とは別に、それ自体が同法七八条の規定する否認の対象となりうるものであるところ、既に原因行為によって生じた権利移転を完成する行為にすぎないことから、原因行為それ自体に否認の理由がない場合には、できる限り対抗要件を充足させることによって、当事者に所期の目的を達成させようとするとともに、権利の移転があっても、対抗要件を充足しない限り、その譲受人は当該権利の取得を他の一般債権者に対抗することができないので、結局、当該権利は更生会社の財産を構成することになるところ、権利移転が生じた後、対抗要件を充足することもなく推移したのに、その後になって対抗要件が充足された場合には、その間に形成された当該権利が会社財産を構成するものであるとの一般債権者の期待を覆す結果となるため、権利移転の効果が生じた日から一五日を経過した後に悪意でされた対抗要件の充足行為を否認しうるものとしたものである。 (二) 会社更生法八〇条一項の右趣旨・目的に照らし、同項が否認の対象である対抗要件充足行為の主体につき明示的に限定を加えていないことに鑑みると、指名債権譲渡の場合は、その対抗要件制度が当該債務者の譲渡についての認識を通じて第三者に対する公示という構造をとっているため(最高裁判 件充足行為の主体につき明示的に限定を加えていないことに鑑みると、指名債権譲渡の場合は、その対抗要件制度が当該債務者の譲渡についての認識を通じて第三者に対する公示という構造をとっているため(最高裁判所昭和四九年三月七日第一小法廷判決・民集二八巻二号一七四頁参照)、民法四六七条は右債務者が当該譲渡についてした承諾を対抗要件としているが、このような当該権利の譲渡当事者以外の第三者の行為を会社更生法八〇条一項に基づく否認の対象とすることは、同項の予定しないところである(最高裁判所昭和四〇年三月九日第三小法廷判決・民集一九巻二号三五二頁参照)としても、法が、権利の譲受人に対し、譲渡人の承諾のもとに、右譲受人の単独の行為により右権利の譲渡についての対抗要件を充足する行為をすることを認めている場合には、右承諾ではなく、譲受人のした対抗要件充足行為そのものが会社更生法八〇条一項の否認の対象たる対抗要件充足行為と認めるのが相当である。 <要旨>(三) ところで、立木ニ関スル法律一条所定の要件を具備する立木の譲渡につき、同法一六条は、その譲</要旨>受人が、当該立木の存する土地の所有権又は地上権の登記名義人の証明書により右立木が自己の所有に属することを証明するときは、所有権保存登記をすることができるとしているが、この対抗要件充足行為も、会社更生法八〇条一項の否認の対象となりうるものと解すべきであることは、前記説示のとおりであり、したがって、同項所定の期間の経過後に悪意でされたものであるときには、同項により否認しうるものと解するのが相当である。そして、右の理は、立木の所有者とその地盤の所有者とが同一人であり、立木ニ関スル法律に基づき所有権保存登記がされていない場合で、右立木のみについてされた譲渡につき、いわゆる明認方法が譲渡人の承諾のもとに譲受人によって 立木の所有者とその地盤の所有者とが同一人であり、立木ニ関スル法律に基づき所有権保存登記がされていない場合で、右立木のみについてされた譲渡につき、いわゆる明認方法が譲渡人の承諾のもとに譲受人によってされたときにも妥当するものと解すべきであり、右対抗要件の充足行為が譲受人の単独の行為によってされたことそれ自体は、会社更生法八〇条一項に基づく否認権の対象とならないとすべき理由とはならないものと解すべきである。 3 控訴人が、本件譲渡担保契約締結の際、真里谷から、本件立木につき明認方法を施すことの承諾を得ていたとしても、本件ベニヤ板等を釘打ちして本件立木に施行した明認方法は、本件譲渡担保契約の締結時及びこれに基づき控訴人が本件立木の所有権を確定的に取得したと主張する時から約三年ないし二年半も経過した後であって、かつ、真里谷が保全管理決定を受けた後にされたものであるうえ、弁論の全趣旨によると、控訴人において真里谷が保全管理決定を受けたことを知って右明認方法を施したものと認められるから、右明認方法は、会社更生法八〇条一項に基づく否認権の対象となるものというべきである。そして、被控訴人が、原審の第一回口頭弁論期日に右明認方法につき否認権を行使して否認したことは、記録上明らかである。したがって、控訴人は、本件立木の所有権の取得をもって被控訴人に対抗しえないものというべきであるから、控訴人の本訴請求は、いずれもその余の点について判断するまでもなく理由がなく、これを棄却した原判決の結論は相当というべきである。 三よって、本件控訴は理由がないことに帰するので、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官柴田保幸裁判官小林亘裁判官滝澤孝臣)(別紙)物件目録一な これを棄却することとし、控訴費用の負担につき、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官柴田保幸裁判官小林亘裁判官滝澤孝臣)(別紙)物件目録一ないし八二(省略)

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