主文 被告人両名をそれぞれ懲役3年に処する。 被告人両名に対し,未決勾留日数中各180日を,それぞれその刑に算入する。 被告人両名に対し,この裁判が確定した日から5年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。 理由 (犯罪事実)被告人両名は,統合失調症を患っていた実妹のV(当時26歳)を入院先のA病院から退院させ,平成15年2月13日から,兵庫県洲本市Ba丁目b番c号Cハイツd号の被告人両名の自宅で看病していたものであるが,病態が悪化した同女が大声を張り上げたり,足をばたつかせて暴れたりするのに強いいらだちを覚えるとともに,何とかこれを制止しようと考え,共謀の上,被告人Xが,同年4月25日午後4時過ぎころ,上記自宅の6畳和室において,同女に対し,その口をタオルでふさいでその上からベルトを巻き付けて縛り,さらに,同女の両手首及び身体をゴムホースで縛って,その両足をベルトで絞めるなどし,次いで,同日午後9時ころ,同女をそのままの状態で,同室からふろ場に連行して浴槽内に押し込め,引き続き,被告人両名が,同日午後11時40分ころ,上記ふろ場内において,浴槽内に押し込められている同女の顔面に二つ折りにしたバスタオル2枚を数回巻き付けて,その頭部にシャワーの水を掛け,さらに,同女の頭部にポリバケツをかぶせて,上記ゴムホースと上記ポリバケツをビニールひもで十字に結んだ上,同女の身体上に布団2枚をかぶせるなどして,同月26日午前1時ころまで,同女を上記浴槽から脱出することが不可能な状態に置き,もって,同女を不法に逮捕監禁し,よって,そのころ,同所において,上記の一連の逮捕監禁行為によって,同女を酸 などして,同月26日午前1時ころまで,同女を上記浴槽から脱出することが不可能な状態に置き,もって,同女を不法に逮捕監禁し,よって,そのころ,同所において,上記の一連の逮捕監禁行為によって,同女を酸素欠乏に基づく窒息により死亡させた。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人両名の判示所為はいずれも包括して刑法60条,221条に該当するところ,いずれも同法10条により同法220条所定の刑と同法205条所定の刑とを比較し,重い傷害致死罪の刑により処断し,その所定刑期の範囲内で被告人両名をそれぞれ懲役3年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中各180日をそれぞれその刑に算入し,情状により同法25条1項を適用して,被告人両名に対し,この裁判が確定した日から5年間それぞれその刑の執行を猶予し,被告人両名について生じた訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項本文,182条により被告人両名に連帯して負担させることとする。 (量刑の理由) 1 事案の概要本件は,兄弟である被告人両名が,統合失調症を患っていた妹である被害者(当時26歳)を自宅に引き取って,看病をするうち,同女の症状が悪化し,同女が暴れたりしたことから,その対応に窮し,同女をベルトで縛るなどした上,ふろ場に押し込め,顔面にタオルを巻き付けて水を掛け,布団をかぶせるなどした結果,同女を窒息死させたという逮捕監禁致死の事案である。 2 量刑上考慮した事情(1) 本件犯行に至る経緯等被害者は,平成14年11月25日,統合失調症の診断により医療法人A病院に入院し,治療を受けていたが,平成15年2月13日,外出許可を得て,被告人両名の自宅を訪れた際,薬の副作用等により腰が曲がり,よだれを流すなどの状況を呈していたことから,これを見た被告人両名は,同女の入院先の治療内容 ていたが,平成15年2月13日,外出許可を得て,被告人両名の自宅を訪れた際,薬の副作用等により腰が曲がり,よだれを流すなどの状況を呈していたことから,これを見た被告人両名は,同女の入院先の治療内容が不相当であると決めつけ,退院させて自宅に引き取り,3人で生活を始めた。同女は,身体的には回復しているように見えたものの,同年4月中旬ころから,その精神症状が急に悪化し,叫んだり暴れたりするようになった。しかし,被告人両名は,同女に医師の診察を受けさせるなどの対応をとらなかったため,同女の病状は悪化の一途をたどり,被告人両名は,次第にいらだちを募らせ,被告人Xが同女に暴行をふるうなどして負傷させたこともあり,また,世間体を気にする余り,被告人両名は,同女を病院に連れていくこともしないまま, ついに自宅で昼夜を問わず騒ぎ続けるようになった同女を何とか押さえつけようとして,本件犯行に及んだ。 (2) 本件犯行に至る経緯等は上記(1)のとおりであり,被告人両名が,本件犯行に至るまでに,被害者のことを思って必死に看病していた面があることは否定できないとしても,同女から治療の機会を奪った上に,死にまで至らせたことは,強く非難されるべきものである。そして,被害者を幾重にも縛り,浴槽内に押し込め,顔面にバスタオルを巻き付け,水を掛け,バケツをかぶせ,布団2枚をかぶせるという本件犯行態様は,執拗であるのみならず,いささか常軌を逸するものであり,被害者が呼吸困難に陥ることが容易に想像できる明らかに危険なものであって,非常に悪質である。加えて,被害者は当時26歳の女性であり,本件に至るまでにも被告人Xから暴行を受け,その傷跡もいえないうちに,信頼していた実兄である被告人両名から,幾重にも縛られ,狭い浴槽に押し込まれるなどした結果,窒息して絶命したもの 歳の女性であり,本件に至るまでにも被告人Xから暴行を受け,その傷跡もいえないうちに,信頼していた実兄である被告人両名から,幾重にも縛られ,狭い浴槽に押し込まれるなどした結果,窒息して絶命したものであり,被害者が死ぬまでの間に耐えた苦痛や抱いた無念さには想像を絶するものがある。 また,本件犯行が,精神病患者を抱え,懸命にその療養に尽くしている多くの家族に与えた衝撃は計り知れない。 以上の事情に照らすと,被告人両名の刑事責任は重いといわなければならない。 しかしながら,他方,前述のとおり,本件犯行に至る経緯において,被告人両名なりに被害者の介護に努めていたことには同情の余地があること,被告人両名とも逮捕当時から事実関係を一貫して認め,公判廷において被害者に謝罪したいなどと涙ながらに述べているなど,誠実な反省の情が顕著に認められること,被告人両名の妹が当公判廷で,本件犯行に至る経緯において,被告人両名に被害者を入院させるよう説得すべきだったと後悔の念を述べている一方,被害者の遺族として被告人両名に対し厳罰を求めているわけではないこと,被告人両名ともに前科が全くないことなど各被告人にとって有利な事情も認められる。 3 結論そこで,以上諸般の事情を総合して考慮し,被告人両名に対しては,主文の懲役刑に処し,その刑事責任の所在を明確にした上で,社会内で更生の機会を与えるとともに,被害者の供養の日々を送らせるため,それぞれその刑の執行を5年間猶予することとした。 (求刑・被告人両名につきいずれも懲役6年)平成16年2月9日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官浦島高広 9日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官浦島高広裁判官谷口吉伸
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