平成27(わ)470 窃盗

裁判年月日・裁判所
平成29年7月19日 東京地方裁判所 立川支部
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判決文本文24,274 文字)

平成29年7月19日宣告 窃盗被告事件 主文 被告人両名をそれぞれ懲役4年に処する。 被告人Aに対し,未決勾留日数中580日をその刑に算入する。 被告人Bに対し,未決勾留日数中630日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)第1(平成27年2月24日付け起訴状記載の公訴事実「横浜事件」)被告人Bは,氏名不詳者と共謀の上,平成26年10月7日午前3時5分頃,横浜市甲区駐車場において,同所に駐車中のC所有の普通乗用自動車1台(時価約80万円相当)を窃取した。 第2(平成27年9月30日付け追起訴状記載の公訴事実「D商店事件」)被告人Aは,平成26年11月10日午前2時頃から同日午前3時2分頃までの間に,静岡県富士市所在のD商店西側駐車場において,同所に駐車中のEが管理する普通貨物自動車1台(時価約70万円相当)を窃取した。 第3(平成27年5月1日付け起訴状記載の公訴事実「F鉄工事件」)被告人両名は,共謀の上,平成26年11月15日午前2時45分頃,静岡県富士市所在の株式会社F鉄工営業所敷地内において,同所に駐車中の同社代表取締役F2が管理する普通貨物自動車1台等4点(時価合計約69万5000円相当)を窃取した。 第4(平成27年6月8日付け追起訴状記載の公訴事実「ホテルG事件」)被告人両名は,共謀の上,平成26年12月5日午後11時21分頃から同月6日午前1時46分頃までの間に,山梨県笛吹市所在のホテルG第1駐車場において,同所に駐車中の株式会社H取締役H2が管理する普通乗合自動車1 台(時価約150万円相当)を窃取した。 第5(平成27年7月28日付け追起訴状記載の公訴事実「I自動車事件」)被告人両名は,共謀の上,平成26年12月10日午前0時17分 乗合自動車1 台(時価約150万円相当)を窃取した。 第5(平成27年7月28日付け追起訴状記載の公訴事実「I自動車事件」)被告人両名は,共謀の上,平成26年12月10日午前0時17分頃から同日午前1時10分頃までの間に,甲府市所在の有限会社I自動車整備工場西側車両置き場において,同所に駐車中の同社取締役I2が管理する普通貨物自動車1台(時価約200万円相当)を窃取した。 (証拠排除の主張に対する判断)第1 各弁護人の主張被告人両名の各弁護人はいずれも,最高裁平成28年(あ)第442号同29年3月15日大法廷判決に依拠して,次のように主張する。すなわち,捜査機関は,本件各被告事件(判示第2ないし第5に係る各公訴事実をいう。以下同じ。)において,被告人らの使用車両にGPS端末を取り付け,その位置情報を取得する捜査(以下,捜査対象者の使用車両にGPS端末を取り付け,その位置情報を取得する捜査を単に「GPS捜査」といい,本件各被告事件におけるGPS捜査を「本件GPS捜査」という。)を行っているところ,GPS捜査は,憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,令状がなければ行うことのできない強制の処分であるから,甲50,51,56,58ないし68,74,78ないし98,107ないし109,111,116,117,127,128,130ないし160,166,168,169,174ないし177,179ないし196,乙14ないし18,乙27,乙32ないし48,証人J,同K,同Lの各証言(以下,公判手続の更新によって書証に転化したものも単に証言と表記する。)のうち本件GPS捜査により知り得た体験に基づく証言部分(以下,これらを「本件各証拠」という。)は,本件GPS捜査によって直接得られた証拠ないしこれと密接な関連性を有する ものも単に証言と表記する。)のうち本件GPS捜査により知り得た体験に基づく証言部分(以下,これらを「本件各証拠」という。)は,本件GPS捜査によって直接得られた証拠ないしこれと密接な関連性を有する証拠であるから,証拠能力がなく,証拠として排除されるべきであるというのである。 そこで,本件各被告事件においてGPS捜査が行われたことは争いなく認め られるので,以下,上記各捜査の違法性及び本件各証拠の排除相当性について判断する。 第2 GPS捜査の違法性個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる(最高裁昭和50年(あ)第146号同51年3月16日第三小法廷決定参照)とともに,一般的には,現行犯人逮捕等の令状を要しないものとされている処分と同視すべき事情があると認めるのも困難であるから,令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである(最高裁平成28年(あ)第442号同29年3月15日大法廷判決参照)。本件GPS捜査は,強制処分であるにもかかわらず,令状の発付を受けることなく行われており,違法である。 第3 違法収集証拠該当性について 1 各弁護人の主張の概要前記のとおり,本件GPS捜査は違法と認められるところ,各弁護人は,本件各証拠は,違法捜査によって得られた証拠及び派生的証拠であって,これらを証拠として許容することは将来における違法捜査抑制の見地からして相当でないから,証拠能力がなく,証拠として排除されるべきであると主張しているので,以下,本件各証拠 拠及び派生的証拠であって,これらを証拠として許容することは将来における違法捜査抑制の見地からして相当でないから,証拠能力がなく,証拠として排除されるべきであると主張しているので,以下,本件各証拠と本件GPS捜査との関連性及び本件GPS捜査の違法の重大性について検討する。 2 関連性について 甲56,78,79,130,160,174(両被告人方玄関及びその周辺を撮影したビデオカメラ画像の解析結果報告書等)ア各弁護人は,警察官がGPS端末を被告人らの使用車両に取り付けた後に, 被告人らの使用車両が被告人らの住居を出発し,帰宅したことを撮影する目的でビデオカメラを設置し,その結果を証拠化したものであるから,これらの証拠は本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠であると主張する。 イ甲56,79,130,160(被告人A方の玄関及びその周辺を撮影したビデオカメラ画像の解析結果報告書等)についてみると,警視庁刑事部捜査第三課(以下「捜査三課」という。)警察官らは,平成26年7月9日に実施した監視検問により,被告人Aを自動車窃盗グループの容疑者と特定し,同月15日に被告人Aの住居を特定した後に,同月16日より本件GPS捜査に移行したことから,上記各証拠については,本件GPS捜査との関連性が認められない。 甲78(被告人B方の玄関及びその周辺を撮影したビデオカメラ画像のプリントアウト報告書)についてみると,捜査三課警察官らは,平成26年8月5日から6日にかけて被告人Aに対して行った行動確認中に,被告人Bが自動車窃盗グループの関係者であると特定し,同年10月頃から被告人Bの住居等の撮影を行ったから,上記証拠については本件GPS捜査との関連性が認められる。もっとも,被告人Bの住居の特定に際し,本 Bが自動車窃盗グループの関係者であると特定し,同年10月頃から被告人Bの住居等の撮影を行ったから,上記証拠については本件GPS捜査との関連性が認められる。もっとも,被告人Bの住居の特定に際し,本件GPS捜査の結果が用いられた事実は見当たらないことからすれば,本件GPS捜査によらなければ被告人Bの住居を特定できなかったとはいえず,上記証拠が本件GPS捜査と密接な関連性を有するとは認められない。 甲174は,被告人Aの使用車両がM駅ロータリーに駐車しているなどした状況を撮影したものであるが,捜査三課警察官らは,被告人Aの使用車両の行動確認をした際,前日に駐車していた場所から少し離れた位置に反応があったことから付近を検索して被告人Aの使用車両を現認したものである。そうすると,捜査三課警察官らの探索によって被告人Aの使用車両が発見されたことを踏まえても,本件GPS捜査によらなくとも被告人Aの使用車両を発見できた とはいえないから,上記証拠は本件GPS捜査と密接な関連性を有すると認められる。 甲61,62,80,81,93ないし96,131ないし137,154,155,175,183ないし185(N料金所及びO料金所に設置されたビデオカメラ画像の解析結果報告書等)ア各弁護人は,警察官が本件GPS捜査により被告人らの移動経路を把握することができた結果,その経路中に存在した料金所のビデオカメラ映像や高速道路通行券等を証拠として得ることができたから,これらの証拠は本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠であると主張する。 イ捜査三課警察官らは,本件各犯行時に,尾行途中で被告人らの行方を見失った際に再度車両の位置情報を得るためGPS端末を用いるなどして尾行を続けていたから,本件各犯行に及ぶ際の被告人 と主張する。 イ捜査三課警察官らは,本件各犯行時に,尾行途中で被告人らの行方を見失った際に再度車両の位置情報を得るためGPS端末を用いるなどして尾行を続けていたから,本件各犯行に及ぶ際の被告人らの通行経路や立ち寄り先は,GPS端末を使用した尾行により判明したものといえ,これらの証拠と本件GPS捜査との関連性が認められる。そして,被告人らの行動を本件GPS捜査により確認しなければ,被告人らが一定の時間帯にインターチェンジを通過することを把握し得ず,あらかじめ警察官がインターチェンジの料金所に設置していたビデオカメラを動作させて撮影し続けること(以下,このように警察官がビデオカメラを設置して密かに行う形態の撮影を「秘匿撮影」という。)は困難であったと考えられることからすれば,秘匿撮影によって得られた証拠及び同証拠を元に行った鑑定の結果等の証拠(甲81,132ないし137)は,本件GPS捜査と密接な関連性を有するといえる。 他方で,捜査三課警察官らは,本件GPS捜査が開始される前から,被告人らが連続自動車窃盗事件の関係者であることや高速道路を利用していたことを監視検問等の基礎捜査により把握するとともに,首都圏中央連絡自動車道Nインターチェンジや東名高速道路Oインターチェンジが被告人らの行動範囲内にあったことを把握していたと認められる。かかる経緯に照らせば,本件GPS 捜査によらなくとも,各事件の発生を受けて,捜査三課警察官らが上記インターチェンジの料金所を対象とした捜査を行うことによって,料金所に設置された防犯カメラ映像や通行券等の証拠を入手し得たといえるから,これらの証拠が本件GPS捜査と密接な関連性を有するとは認められない(ただし,甲96のうち,捜査員の現認に基づく捜査状況に関する記載部分は後記のとおり本件GPS捜査と密 拠を入手し得たといえるから,これらの証拠が本件GPS捜査と密接な関連性を有するとは認められない(ただし,甲96のうち,捜査員の現認に基づく捜査状況に関する記載部分は後記のとおり本件GPS捜査と密接な関連性を有するといえる。)。 甲58ないし60,63,64,66,82ないし92,96,97,98,138ないし144,146ないし153,156,157,166,176,177,179ないし182,186,191ないし196(各被害現場付近の料金所や立ち寄り先等に設置された防犯カメラ画像解析結果報告書等)ア各弁護人は,警察官が本件GPS捜査により被告人らの移動経路を把握することができた結果,その経路中や立ち寄り先に存在したビデオカメラ映像や遺留した被害車両の付属物を証拠として得ることができたから,これらの証拠は本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠であると主張する。 イ捜査三課警察官らは,本件各犯行時に,尾行途中で被告人らの行方を見失った際に再度被告人らの位置情報を得るためGPS端末を用いるなどして尾行を続けていたから,本件各犯行に及ぶ際の被告人らの通行経路や立ち寄り先は,GPS端末を使用した尾行により判明したものといえ,これらの証拠と本件GPS捜査との関連性が認められる。そして,被害発生当時の被告人らの行動を本件GPS捜査により確認しなければ,被告人らが一定の時間帯に特定の地点を通過することを把握し得ず,ビデオカメラで秘匿撮影したり,張り込みを行うことは困難であったと考えられることからすれば,秘匿撮影によって得られた証拠や秘匿撮影に関連する証拠,被告人らの使用車両を現認したこと自体もしくは現認した資料を元に作成された報告書等(甲63の2頁4行目から最終行まで並びに3頁16行目から18行目ま 影によって得られた証拠や秘匿撮影に関連する証拠,被告人らの使用車両を現認したこと自体もしくは現認した資料を元に作成された報告書等(甲63の2頁4行目から最終行まで並びに3頁16行目から18行目まで,甲66,甲82の2頁2行目か ら9行目まで,甲83の2頁3行目から12行目まで,甲84の2頁3行目から11行目まで,甲88の4頁20行目から5頁6行目まで,同頁8行目「捜査員が」から9行目「における、」まで,6頁3行目から12行目まで,資料1中「捜査状況」欄のうち証拠資料に「捜査員の現認」を含むものの記載部分(ただし,「入口料金所」欄,「出口料金所ブース機械に高速道路通行券を挿入した日時」欄を除く。),甲89の2頁2行目から12行目まで,甲96の7頁11行目から8頁4行目まで,同頁6行目「捜査員が」から8行目「における、」まで,9頁9行目から18行目まで,資料1中「捜査状況」欄のうち証拠資料に「捜査員の現認」を含むものの記載部分(ただし,「入口料金所」欄を除く。),甲138の2頁3行目から13行目まで,甲147の2頁2行目から13行目まで,甲148,甲149,甲150の2頁2行目から13行目まで,甲151,甲152,甲156,甲157,甲176の1頁10行目「本職ら」から11行目「現認した」まで,同頁15行目「本職らが」から「現認する前、」まで,2頁7行目から14行目まで,甲181,甲186,甲191の4頁20行目から5頁6行目まで,同頁8行目「捜査員が」から「における、」まで,6頁2行目から11行目まで,資料1中「捜査状況」欄のうち証拠資料に「捜査員の現認」を含むものの記載部分(ただし,「入口料金所」欄,「出口料金所ブース機械に高速道路通行券を挿入した日時」欄を除く。),甲192の7頁12行目から8頁5行目まで,同頁7行目「捜 拠資料に「捜査員の現認」を含むものの記載部分(ただし,「入口料金所」欄,「出口料金所ブース機械に高速道路通行券を挿入した日時」欄を除く。),甲192の7頁12行目から8頁5行目まで,同頁7行目「捜査員が」から8行目「における、」まで,9頁11行目から20行目まで,資料1中「捜査状況」欄のうち証拠資料に「捜査員の現認」を含むものの記載部分(ただし,「入口料金所」欄,「出口料金所ブース機械に高速道路通行券を挿入した日時」欄を除く。),甲193の4頁19行目から5頁5行目まで,同頁7行目「捜査員が」から「における、」まで,6頁8行目から17行目まで,資料1中「捜査状況」欄のうち証拠資料に「捜査員の現認」を含むものの記載部分(ただし,「入口料金所」欄,「入口料金所通過日時」欄,「出口料金所ブ ース機械に高速道路通行券を挿入した日時」欄を除く。),甲194の7頁11行目から21行目まで,同頁23行目「捜査員が」から8頁2行目「における、」まで,9頁7行目から16行目まで,資料1中「捜査状況」欄のうち証拠資料に「捜査員の現認」を含むものの記載部分(ただし,「入口料金所」欄,「出口料金所」欄を除く。),甲195の4頁19行目から5頁2行目まで,同頁4行目「捜査員」から5行目「における、」まで,6頁6行目から15行目まで,資料1中「捜査状況」欄のうち証拠資料に「捜査員の現認」を含むものの記載部分(ただし,「出口料金所」欄,「出口料金所ブース機械に高速道路通行券を挿入した日時」欄を除く。),甲196の7頁10行目から16行目まで,同頁18行目「捜査員」から20行目「における、」まで,8頁17行目から9頁3行目まで,資料1中「捜査状況」欄のうち証拠資料に「捜査員の現認」を含むものの記載部分(ただし,「入口料金所」欄,「入口料金所通過日時」欄を 」から20行目「における、」まで,8頁17行目から9頁3行目まで,資料1中「捜査状況」欄のうち証拠資料に「捜査員の現認」を含むものの記載部分(ただし,「入口料金所」欄,「入口料金所通過日時」欄を除く。))は,本件GPS捜査と密接な関連性を有するといえる。 他方,犯罪による被害が発生し,捜査機関が被害を認知した際に,犯人が通過し立ち寄る可能性がある周辺の経路や施設等の防犯カメラ映像を精査することは,この種事案でなくとも一般的に行われている捜査手法であるといえる。 また,自動車を被害品とする窃盗事件が発生し,同事件が広域的,組織的に行われたものである疑いがあれば,被害車両のナンバープレートを不正なものに付け替えるという手口の窃盗事件が発生していることを捜査三課警察官らが把握していたことをも併せ考えると,犯人グループが高速道路を走行して被害車両を運搬する可能性やその途中でナンバープレートを付け替える可能性を考慮して捜査を遂げたものと認められる。さらに,捜査機関が被害現場近くのインターチェンジを利用していることを把握した場合,前記2の証拠と合わせ,被告人らの行動範囲内に所在するインターチェンジとの間のサービスエリア等に立ち寄る可能性を考慮し,同所に設置された防犯カメラ映像等を精査する,サービスエリア内に遺留された物件を探索するといった捜査を遂げたものと認 められる。そうすると,本件GPS捜査がなくとも,捜査三課警察官らは周辺のインターチェンジの料金所に設置された防犯カメラ映像等を精査し,これらの捜査により得られた証拠を元にした人物の異同識別に関する鑑定やナンバープレートに関する捜査関係事項照会等の捜査を行い得たと認められる。以上によれば,これらの証拠は本件GPS捜査があったことによってより容易に収集できた証拠とはいえるが,本件GP に関する鑑定やナンバープレートに関する捜査関係事項照会等の捜査を行い得たと認められる。以上によれば,これらの証拠は本件GPS捜査があったことによってより容易に収集できた証拠とはいえるが,本件GPS捜査がなくとも収集し得た証拠といえ,本件GPS捜査と密接な関連性を有するとは認められない。 甲50,51,65,74,116,117,168,169(各被害者等の供述調書等)ア各弁護人は,各被害者等の供述調書等は,本件GPS捜査が行われなければ発見することのできなかった証拠と評価することができるから,これらの証拠は本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠であると主張する。 イ捜査三課警察官らは,本件各犯行時に,尾行途中で被告人らの行方を見失った際に再度車両の位置情報を得るためGPS端末を用いるなどして尾行を続けていたから,本件各事件現場は,GPS端末を使用した尾行により判明したものといえ,これらの証拠と本件GPS捜査との関連性が認められる。 しかし,被害の申出がなされ,捜査機関が被害事実を認知した場合,捜査機関が被害関係者から被害の状況を確認するのが通常であって,防犯カメラ映像等を確認した上で供述している部分についても,本件GPS捜査と密接な関連性が認められない防犯カメラ映像等を確認した上で供述している部分については,本件GPS捜査と密接な関連性を有するとは認められない。同様に,かかる供述を元に防犯カメラ映像をプリントアウトした報告書についても,本件GPS捜査と密接な関連性を有するとは認められない。他方,上記本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠を確認した上で供述している部分等(甲50の5頁15行目から6頁2行目まで並びに8頁から 11頁まで,甲116の5頁5 記本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠を確認した上で供述している部分等(甲50の5頁15行目から6頁2行目まで並びに8頁から 11頁まで,甲116の5頁5行目から6行目まで,同頁11行目から17行目まで並びに7頁及び9頁,甲117の3頁10行目から4頁1行目まで並びに8頁及び9頁,甲168の3頁19行目から4頁6行目まで並びに9頁及び10頁)については,本件GPS捜査によって得られた捜査結果がなければ供述し得ない内容であるから,本件GPS捜査と密接な関連性を有すると認められる。 甲111(参考人の供述調書)被告人Bが自動車窃盗グループの関係者であると特定した際に,被告人Aに対して本件GPS捜査を用いて行った行動確認の結果が用いられた可能性も否定できないことからすれば,参考人に被告人Bの使用車両の写真を示して得られた供述が含まれる上記証拠と本件GPS捜査との関連性が認められる。 しかし,上記証拠は,被告人Bの内妻(当時)が被告人Bの使用車両の使用状況や同一性等について供述したものであり,参考人に示した写真は記憶喚起の縁由になったにすぎないと評価できるから,本件GPS捜査と密接な関連性を有するとは認められない。 甲68,188ないし190,乙14ないし18,27,32ないし48(被告人両名及びPの供述調書等)ア各弁護人は,被告人両名及びPの逮捕状の発付には,本件GPS捜査により直接得られた証拠である行動確認結果報告書等が疎明資料として添付されているから,これを用いて発付された逮捕状により身柄を拘束し,身柄拘束中に得られた証拠については密接な関連性を有すると主張する。 イ被告人両名及びPの逮捕状請求の際の疎明資料には,行動確認結果報告書等本件GPS捜査を用いて直接 逮捕状により身柄を拘束し,身柄拘束中に得られた証拠については密接な関連性を有すると主張する。 イ被告人両名及びPの逮捕状請求の際の疎明資料には,行動確認結果報告書等本件GPS捜査を用いて直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠が用いられているから,身柄拘束中に作成された供述調書や供述について裏付捜査をした結果に関する報告書等については,本件GPS捜査との関連性が認められる。 被告人両名の逮捕手続についてみると,被告人Aの逮捕に向けた所在確保のためにGPS端末を用いたことは認められるものの,元々本件GPS捜査によらずに被告人Aの住居を確認しているだけでなく,取り付けたGPS端末が圏外になるなどして被告人Aの所在を推測することができなくなっており,また,被告人Bについても,本件GPS捜査によらなければ被告人Bの住居を特定できなかったとはいえないから,本件GPS捜査を用いなければ被告人両名の身柄拘束をできなかったとは認められない。また,被告人両名及びPの逮捕状請求の疎明資料となっている本件GPS捜査を用いて直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠が,逮捕状発付の判断にあたって必要不可欠であったとは認められない。そして,被告人両名及びPは,供述調書や引当り捜査報告書の作成に当たって任意に供述ないし説明しており,本件GPS捜査の結果により,これらの者の供述等がなされたわけではない。供述について裏付捜査をした結果に関する報告書についても同様であり,本件GPS捜査の結果を直接用いて裏付捜査を行った事実も認められない。以上を踏まえると,被告人両名及びPの供述調書等が本件GPS捜査と密接な関連性を有するとは認められない。他方,上記本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠を確認した上で供述してい まえると,被告人両名及びPの供述調書等が本件GPS捜査と密接な関連性を有するとは認められない。他方,上記本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠を確認した上で供述している部分(甲188の2頁19行目から3頁12行目まで及び7頁)については,本件GPS捜査によって得られた捜査結果がなければ供述し得ない内容であるから,本件GPS捜査と密接な関連性を有すると認められる。 甲67,107ないし109,127,128,145,158,159,187(捜索差押許可状等の発付により得られた各証拠について)ア各弁護人は,被告人両名を被疑者とする捜索差押許可状及び差押許可状(以下「捜索差押許可状等」という。)の発付には,本件GPS捜査により直接得られた証拠である行動確認結果報告書等が疎明資料として添付されているから,これを用いて発付された捜索差押許可状等を用いて得られた証拠については密 接な関連性を有すると主張する。 イ被告人両名を被疑者とする捜索差押許可状等請求の際の疎明資料には,行動確認結果報告書等本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠が用いられているから,捜索差押許可状等に基づき差し押さえられるなどして得られた証拠については,本件GPS捜査との関連性が認められる。 被告人Aの使用車両の捜索差押手続についてみると,被告人Aの使用車両の位置情報を本件GPS捜査により把握する以前から,被告人Aの使用車両の存在や所在を把握しており,被告人Aの使用車両に関係する捜索差押のために本件GPS捜査を用いたとは認められない。また,上記捜索差押許可状等請求の疎明資料となっている本件GPS捜査を用いて直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠が,捜索差押許可状等発付の判断 めに本件GPS捜査を用いたとは認められない。また,上記捜索差押許可状等請求の疎明資料となっている本件GPS捜査を用いて直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠が,捜索差押許可状等発付の判断に当たって必要不可欠であったとは認められない。そして,捜索差押許可状等により得られた証拠についても,その所在等を把握するために本件GPS捜査が用いられたとは認められず,本件GPS捜査によらなければこれらの証拠を収集できなかったとは認められない。なお,甲109及び158は,捜査三課警察官らがGPS端末を用いて被告人らを追尾していた時間帯に関する通話状況の解析結果であるが,仮に本件GPS捜査を行っていなくとも,被害時刻等を手がかりとして被告人らの当該時間帯における通話状況を解析することも可能であったといえる。以上を踏まえると,捜索差押許可状等の発付により得られた各証拠が本件GPS捜査との間に密接な関連性を有するとは認められない。 J,K,Lの各証言ア各弁護人は,いずれも警察官であるJ,K,Lが被告人らの使用車両の追尾状況につき証言している内容につき,その内容はいずれも本件GPS捜査によって直接得られた情報を元に追尾した状況を証言したものであり,各証言は,本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠であ ると主張する。 イこの点,第11回公判のJ証言についてみると,同人の証人尋問は,立証趣旨を,被告人両名の使用車両にGPS端末を設置するに至る経緯及びその後の同GPS端末の利用状況等として採用されたものであり,本件GPS捜査によって直接得られた情報を元に追尾した状況に関する事項を含んでいないから,本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠であるとは認められない。 第 り,本件GPS捜査によって直接得られた情報を元に追尾した状況に関する事項を含んでいないから,本件GPS捜査により直接得られた証拠ないし密接な関連性を有する証拠であるとは認められない。 第13回公判のK証言,第14回公判のL証言,第15回公判のJ証言についてみると,同人らの証人尋問は,いずれも立証趣旨を,事件当時の被告人らの行動確認状況等として採用されたものであり,捜査三課警察官らは,被告人らの張り込みや探索を開始するに当たりGPS端末を使用し,その後の追尾に当たっても失尾するなどした際にGPS端末を使用しているから,張り込みや探索を開始して以降の被告人らの行動確認に関する証言(第13回公判のK証人尋問速記録2頁2行目から16頁21行目まで,第14回公判のL証人尋問速記録2頁2行目から26頁20行目まで,44頁17行目から25行目まで並びに添付書面全て,第15回公判のJ証人尋問速記録2頁7行目から21頁2行目まで,22頁16行目から40頁6行目まで,59頁2行目から60頁2行目まで)については,いずれも本件GPS捜査により直接得られた証拠といえる。 3 違法の重大性について 各弁護人の主張の概要被告人両名の弁護人らは,本件GPS捜査には重大な違法があり,本件各証拠を証拠として許容することが将来における違法捜査抑制の見地からして相当ではない旨主張する。 検討前記のとおり,GPS捜査は,対象車両の使用者のプライバシーを大きく侵 害するものであり,本件GPS捜査の実施期間,規模及び態様からすれば,本件GPS捜査は,現に被告人両名のプライバシーを大きく侵害するものであった。また,GPS捜査の性質等を踏まえると,GPS捜査について,刑訴法197条1項ただし書の「この法律に特別の定のある場合」に当たると S捜査は,現に被告人両名のプライバシーを大きく侵害するものであった。また,GPS捜査の性質等を踏まえると,GPS捜査について,刑訴法197条1項ただし書の「この法律に特別の定のある場合」に当たるとして同法が規定する令状を発付することには疑義がある(最高裁平成28年(あ)第442号同29年3月15日大法廷判決参照)と考えられることからすれば,本件GPS捜査を,令状等の選択を適切に行うなどして適法に行い得たという事情も見当たらない。本件GPS捜査の違法の程度は大きいと認められる。また,警察官らは,本件GPS捜査を行ったことを秘匿するとともに,本件GPS捜査の実施状況等を十分に記録化していなかったという事実も認められる。 そうすると,被告人らに対し所要の行動確認等を行っていく上では,尾行や張り込みだけではなく,それと併せて,GPS捜査を実施する必要性が認められる状況にあったこと,本件GPS捜査が行われていた頃までに,これを強制処分と解する司法判断が示されたり,定着したりしていたわけではなかったこと,その他検察官の主張を併せ考えても,本件GPS捜査の違法の程度は,令状主義の精神を潜脱し,没却する重大なものであるといわざるを得ない。 4 結論そうすると,本件各証拠のうち,本件GPS捜査によって直接得られた証拠ないしこれと密接な関連性を有する証拠と認められた上記各証拠の証拠能力は否定すべきであり,刑訴規則207条により排除するのが相当である。 第4 以上によれば,本件各証拠のうち,本件GPS捜査によって直接得られた証拠ないしこれと密接な関連性を有する証拠と認められた上記各証拠については排除し,その余の証拠については排除しないことが相当である。 (事実認定の補足説明)第1 判示第1の事実(横浜事件)について被告人Bの弁護人は,被告人 する証拠と認められた上記各証拠については排除し,その余の証拠については排除しないことが相当である。 (事実認定の補足説明)第1 判示第1の事実(横浜事件)について被告人Bの弁護人は,被告人Bと犯人の同一性(犯人性)を争うので,以下 検討する。 1 前提事実関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 Cは,横浜市甲区駐車場に,エンジンキーが付いていない状態で普通乗用自動車1台(以下「横浜事件被害車両」という。車種はクレスタである。)を駐車していたところ,平成26年10月7日午前3時5分頃,同車両は何者かによって乗り去られた。 被告人Bは,同日午前5時22分頃,乙所在のセブンイレブン駐車場において,横浜事件被害車両に乗車していた。 横浜事件被害車両は,同月11日午前1時40分頃,神奈川県大和市所在の駐車場内で施錠された状態で発見された。また,運転席側ドアの鍵穴下部が広げられており,上記車両の鍵では運転席側ドアを開けることができず,運転席キーシリンダー部分が壊されており,上記車両の鍵を差し込んでもエンジンを掛けることができず,キーシリンダーの中身をラジオペンチでひねるとエンジンが掛かる状態であった。 上記発見時,横浜事件被害車両の車内には,目出し帽,たばこ(マルボロ)の吸い殻が遺留されていたところ,上記目出し帽の付着物と上記たばこの吸い殻の付着物のDNA型(16座位)が被告人Bから採取した血液のDNA型と一致した。 Q警察署敷地内に駐車されていた横浜事件被害車両は,同月11日午前10時頃から同月14日午後7時30分頃までの間に,装着されていた前後のナンバープレートが何者かによって持ち去られ,消火器が車内に噴霧され,Q警察署敷地の内外を隔てるフェンスも,その頃,切断されていた。 2 前記1の前提事実によ 0分頃までの間に,装着されていた前後のナンバープレートが何者かによって持ち去られ,消火器が車内に噴霧され,Q警察署敷地の内外を隔てるフェンスも,その頃,切断されていた。 2 前記1の前提事実によれば,被告人Bは,横浜事件被害車両が盗難されてから,約2時間17分後において同車に乗車していたことになるが,午前3時から午前5時という深夜から早朝の時間帯に,自動車という取引価格が一般的に 高額となるものを犯人もしくはその関係者から譲り受けるとは考え難い。 また,横浜事件被害車両は,発見時に施錠されており,その車内には,被告人BとDNA型が一致する付着物の付いた目出し帽とたばこの吸い殻が遺留されていたことからすると,同車両は,前記駐車場に遺留されるまでの間,被告人Bの管理下にあったものと認定できる。そうすると,被告人Bは,犯行後の約2時間17分後から約4日後に発見されるまで,横浜事件被害車両を管理していたものと推認できる。そして,横浜事件被害車両は,盗難時にエンジンキーが付いていない状態であったところ,発見時には運転席キーシリンダー部分が破損しており,上記車両のエンジンキーを差し込んでもエンジンが掛からず,キーシリンダーの中身をラジオペンチでひねるとエンジンが掛かる状態であったことからすると,犯人は,盗難時に,同車のキーシリンダー部分を破壊して,同車を運び出し,発見時まで特段修理等をしていなかったと推認できる。そうすると,犯人がそのような状態の車を第三者に譲り渡すとも到底考え難いところ,被告人Bは,そのような状態の車を,犯行後の約2時間17分後から約4日後に発見されるまで,管理していたことになり,被告人Bが犯人もしくはその関係者ではないとは考え難い。 以上の事実によれば,被告人Bが横浜事件被害車両を盗難した犯人であると強く推認で 分後から約4日後に発見されるまで,管理していたことになり,被告人Bが犯人もしくはその関係者ではないとは考え難い。 以上の事実によれば,被告人Bが横浜事件被害車両を盗難した犯人であると強く推認できる。 3 被告人Bの犯行告白について後記のとおり信用できる証人Rの証言によれば,被告人Bが,被告人Bの実弟であるSに対し,平成26年10月10日頃,Tの方でクレスタを盗んだ旨言ったこと,同月17日,盗んだクレスタが警察に持って行かれたので,フェンスを切って警察署に入り,ナンバープレートを取って,車の中に消火器をまいた旨言ったことが認められる。 R証言の信用性について検討すると,その証言内容は具体的であり,前記前提事実には,その証言に沿う客観的事実も認められ,その信用性は高い。この 点,被告人Bの弁護人は,その証言経緯が不自然であり,虚偽供述の動機があると指摘する。しかし,Rは,被告人Bが車を盗んでいると聞いたこと等から,被告人BやSと共に働いていた会社を辞めようとしたところ,それを伝えたSから脅されたため警察に相談することとし,その際に被告人Bの前記発言等を警察に伝えたのであり,その供述経過に不自然な点はない。また,被告人Bと特段のトラブルはなく,虚偽供述の動機があるとまではいえない。したがって,被告人Bの弁護人の指摘はいずれも採用できない。 被告人BがSに対し盗んだ旨述べた車種は,横浜事件被害車両と同じクレスタである。そして,前記前提事実記載のとおり,Q警察署のフェンスが切断されており,同署敷地内で駐車していた横浜事件被害車両は,ナンバープレートが取り外され,車内で消火器が噴霧されていたところ,被告人BがSに対し,盗んだクレスタについて,フェンスを切って警察署内に入って,ナンバープレートを取って,車の中に消火器をまい は,ナンバープレートが取り外され,車内で消火器が噴霧されていたところ,被告人BがSに対し,盗んだクレスタについて,フェンスを切って警察署内に入って,ナンバープレートを取って,車の中に消火器をまいた旨述べていることからすると,被告人BがSに対し盗んだ旨述べているクレスタは,横浜事件被害車両であると推認できる。 以上によれば,被告人Bは,自らが横浜事件被害車両を盗んだことを自認していると認められ,このことも前記推認を補強する。 4 被告人Bの弁護人の主張について被告人Bの弁護人は,被告人Bが犯人ではない旨主張し,その根拠として,①横浜事件被害車両から被告人Bの所有物以外の物が発見されていること,②被告人Bが同車に乗っていたのは窃取されてから約2時間17分後であることを根拠に挙げる。 しかし,上記①については,横浜事件被害車両の車内には,所有者が明らかではないグローブ等が遺留されていたものの,同車内で発見された目出し帽,たばこ(マルボロ)の吸い殻の付着物のDNA型(16座位)が被告人Bから採取した血液のDNA型と一致していることからすると,上記事情は,被告人 B以外にも同車を利用した者がいることを示唆するものにすぎず,被告人Bが犯人であることを否定するものではない。 上記②については,被告人Bが同車に乗っていたのは窃取されてから約2時間17分後であるが,前判示のとおり,午前3時から午前5時という深夜から早朝の時間帯に,自動車という取引価格が一般的に高額となるものを犯人もしくはその関係者から譲り受けるとは考え難く,上記事情は,むしろ被告人Bが犯人であることを強く推認させるものである。 したがって,被告人Bの弁護人の上記主張は,採用することができない。 5 被告人Bの供述について被告人Bは,平成26年10月7日午前4時 ろ被告人Bが犯人であることを強く推認させるものである。 したがって,被告人Bの弁護人の上記主張は,採用することができない。 5 被告人Bの供述について被告人Bは,平成26年10月7日午前4時半頃に,横浜事件被害車両を見ず知らずの外国人から借りたものであり,自らが窃取したものではない旨供述する。 しかし,既に説示したとおり,午前4時半頃という深夜から早朝の時間帯に,自動車という取引価格が一般的に高額となるものを,連絡先も知らない外国人から,連絡先も教えずに借りるということ自体,不自然というほかはなく,証人Aが被告人Bの供述に沿う証言をしていることを踏まえても,この評価は左右されない。 よって,証人Aの供述は信用できず,被告人Bの供述も信用できない。 6 以上によれば,被告人Bは,判示第1の事実の犯人といえる。 第2 判示第2の事実(D商店事件)について被告人Aの弁護人は,被告人Aに窃盗の故意がない旨主張するので,以下検討する。 1 前提事実関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 被告人Aは,平成26年11月10日午前2時頃から同日午前3時2分頃までの間に,Pと共に,静岡県富士市所在のD商店西側駐車場に行き,同所に駐 車中の普通貨物自動車1台(以下「D商店被害車両」という。)の管理者であるE等に確認することなく,同車に乗車して,運び出した。 D商店被害車両のエンジンキーは2本しかないところ,同エンジンキーは,同車が運び出された後においても,いずれもE方に保管されたままであった。 被告人Aは,同日午前2時頃から同日午前5時頃までの間に,D商店被害車両のナンバープレートから別のナンバープレートに付け替えた。 2 前記1の前提事実のとおり,D商店被害車両のエンジンキーは2本しかなく,いずれも被害者方に から同日午前5時頃までの間に,D商店被害車両のナンバープレートから別のナンバープレートに付け替えた。 2 前記1の前提事実のとおり,D商店被害車両のエンジンキーは2本しかなく,いずれも被害者方に保管されたままであったにもかかわらず,被告人Aが同車を運び出したことに照らすと,被告人Aは,エンジンキーを用いずに,エンジンを作動させて,同車を運び出したと考えられる。 上記事実及び前記1の前提事実によれば,被告人Aは,人の少ない深夜に,管理者等に確認することなく,D商店被害車両を持ち出していることに加え,同車を運び出す際に,エンジンキーを用いずにエンジンを作動させており,その後同車のナンバープレートを付け替えたと認められるところ,上記行為は,同車を運び出す権限を有する者の行動として極めて不自然であり,窃盗の故意が強く推認される。 3 被告人Aの供述について被告人Aは,Uという外国人から買い取って運搬しただけで,窃盗の故意はなかった旨供述する。 しかし,前判示のとおり,被告人AがD商店被害車両を持ち出した際の態様は,同車を運び出す権限を有する者の行動として極めて不自然である。また,被告人Aは,Uは携帯電話を持っていないから連絡をすることができない旨供述するが,一般的に高価である自動車を買い取った相手方の連絡先を把握していないということが不自然・不合理である。 したがって,被告人Aの供述は,信用することができない。 4 以上によれば,被告人Aは窃盗の故意が認められる。 第3 判示第3の事実(F鉄工事件)について被告人両名の弁護人らは,被告人両名に窃盗の故意がなく,共謀も成立しない旨主張するので,以下検討する。 1 前提事実被告人両名は,自動車に乗車して,平成26年11月15日午前2時45分頃,静岡県富士市所在の株 らは,被告人両名に窃盗の故意がなく,共謀も成立しない旨主張するので,以下検討する。 1 前提事実被告人両名は,自動車に乗車して,平成26年11月15日午前2時45分頃,静岡県富士市所在の株式会社F鉄工営業所敷地(以下「F鉄工被害現場」という。)付近に向かい,被告人両名のいずれかが,その頃,F鉄工被害現場において,普通貨物自動車1台(以下「F鉄工被害車両」という。)の管理者である同社代表取締役F2等に確認することなく,同所に駐車中の同車を運び出し,被告人両名のうちもう一方が,その頃,F鉄工被害現場まで乗車してきた自動車を運転してその場から去った。 F鉄工被害現場の出入口門扉は,同日午前1時22分頃,異常がなかったが,同日午前2時57分頃,上記出入口門扉に巻かれた鎖の一部が切断されて,上記出入口門扉が開いたままになっていた。 F鉄工被害車両は,同日午前2時53分頃から同日午前4時30分頃の間に,静岡県沼津市所在の東名高速道路Vパーキングエリアにおいて,同車のナンバープレートから別のナンバープレートに付け替えられた。 2 前記1の前提事実のとおり,被告人両名は,自動車に乗車して,F鉄工被害現場に向かい,被告人両名のうちいずれかがF鉄工被害車両を運転して,もう一方がF鉄工被害現場まで乗車してきた自動車を運転し,その場を去っていることから,被告人両名でF鉄工被害車両を運び出したと評価できる。 前記1の前提事実によれば,被告人両名もしくはいずれか一方が,F鉄工被害車両を運び出す際に,F鉄工被害現場の出入口門扉に巻かれた鎖の一部を切断し,その後,同車のナンバープレートを付け替えたと考えられるところ,これらの行為は被告人両名がF鉄工被害車両を運び出すためになされた行為であ ることからすると,いずれか一方が行った行為であっても の後,同車のナンバープレートを付け替えたと考えられるところ,これらの行為は被告人両名がF鉄工被害車両を運び出すためになされた行為であ ることからすると,いずれか一方が行った行為であっても,被告人両名の了解の下でなされたものと推認できる。 以上によれば,被告人両名は,人の少ない深夜に,管理者等に確認することなく,F鉄工被害車両を持ち出していることに加え,F鉄工被害車両を運び出す際に,F鉄工被害現場の出入口門扉に巻かれた鎖の一部を切断し,同車のナンバープレートを付け替えたと認められるところ,上記行為は,同車を運び出す権限を有する者の行動として極めて不自然であり,被告人両名の窃盗の故意が強く推認される。 3 被告人両名の供述について被告人Aは,Uから買い取って運搬しただけである旨供述し,被告人Bは,被告人Aから依頼されて正当な業務として行ったものである旨供述し,いずれも窃盗の故意を否認する。 しかし,前判示のとおり,被告人両名がF鉄工被害車両を持ち出した際の態様は,同車を運び出す権限を有する者の行動として極めて不自然である。また,被告人Aは,Uは携帯電話を持っていないから連絡をすることができない旨供述するが,一般的に高価である自動車を買い取った相手方の連絡先を把握していないということが不自然・不合理である。被告人Bも,上記のような極めて不自然な状況があったのであるから,正当な業務であると認識していたとは考えられない。 したがって,被告人両名の供述は,信用することができない。 4 以上によれば,被告人両名には窃盗の故意が認められ,共謀が成立する。 第4 判示第4の事実(ホテルG事件)について被告人両名の弁護人らは,被告人両名に窃盗の故意がなく,共謀も成立しない旨主張するので,以下検討する。 1 前提事実被告人両 共謀が成立する。 第4 判示第4の事実(ホテルG事件)について被告人両名の弁護人らは,被告人両名に窃盗の故意がなく,共謀も成立しない旨主張するので,以下検討する。 1 前提事実被告人両名は,平成26年12月5日午後11時21分頃から同月6日午 前1時46分頃までの間に,自動車に乗車して,山梨県笛吹市所在のホテルG第1駐車場(以下「ホテルG被害現場」という。)付近に向かい,被告人両名のいずれかが,その頃,ホテルG被害現場において,普通乗合自動車1台(以下「ホテルG被害車両」という。)の管理者である株式会社H取締役H2等に確認することなく,同所に駐車中のホテルG被害車両を運転して運び出し,被告人両名のもう一方が,その頃,ホテルG被害現場まで乗車してきた自動車を運転した。 ホテルG被害車両のエンジンキーは1本しかないところ,同エンジンキーは,同車が運び出された後においても,ホテルG事務所内のキーボックスに保管されたままであった。 同月5日午後2時頃から同月6日午前3時10分頃までの間に,ホテルG被害車両のナンバープレートは,右から3文字目に「8」を貼り付けたナンバープレートに変えられた。 2 前記1の前提事実のとおり,被告人両名は,自動車に乗車して,ホテルG被害現場に向かい,被告人両名のうちいずれかがホテルG被害車両を運転して,もう一方がホテルG被害現場まで乗車してきた自動車を運転していることから,被告人両名でホテルG被害車両を運び出したと評価できる。 前記1の前提事実のとおり,ホテルG被害車両のエンジンキーは1本しかなく,同エンジンキーは,同車が運び出された後においても,ホテルG事務所内のキーボックスに保管されたままであったにもかかわらず,被告人両名で同車を運び出したことに照らすと,被告人両名のいずれかが, なく,同エンジンキーは,同車が運び出された後においても,ホテルG事務所内のキーボックスに保管されたままであったにもかかわらず,被告人両名で同車を運び出したことに照らすと,被告人両名のいずれかが,エンジンキーを用いずに,エンジンを作動させて,同車を運び出したと考えられる。 また,ホテルG被害車両は,同月5日午後2時頃から同月6日午前3時10分頃までの間に,そのナンバープレートに変更が加えられているが,日常的に利用する際にナンバープレートに変更を加えるとは考え難いため,被告人両名もしくはそのいずれか一方が,同車を運び出した際に,ナンバープレートに変 更を加えたと考えられる。 上記事実及び前記1の前提事実によれば,被告人両名もしくはいずれか一方が,エンジンキーを用いずに,エンジンを作動させて,ホテルG被害車両を運び出し,同車のナンバープレートに変更を加えたと考えられるところ,これらの行為は被告人両名が同車を運び出すためになされた行為であることからすると,いずれか一方が行った行為であっても,被告人両名の了解の下でなされたものと推認できる。 以上によれば,被告人両名は,人の少ない深夜に,管理者等に確認することなく,ホテルG被害車両を持ち出していることに加え,同車を運び出す際に,エンジンキーを用いずにエンジンを作動させており,その後同車のナンバープレートに変更を加えたと認められるところ,上記行為は,同車を運び出す権限を有する者の行動として極めて不自然であり,被告人両名の窃盗の故意が強く推認される。 3 被告人両名の供述について被告人Aは,Uから運搬を依頼されただけである旨供述し,被告人Bは,被告人Aから依頼されて正当な業務として行ったものである旨供述し,いずれも窃盗の故意を否認する。 しかし,前判示のとおり,被告人両名がホ Aは,Uから運搬を依頼されただけである旨供述し,被告人Bは,被告人Aから依頼されて正当な業務として行ったものである旨供述し,いずれも窃盗の故意を否認する。 しかし,前判示のとおり,被告人両名がホテルG被害車両を持ち出した際の態様は,同車を運び出す権限を有する者の行動として極めて不自然である。また,被告人Aは,Uは携帯電話を持っていないから連絡をすることができない旨供述するが,一般的に高価である自動車を買い取った相手方の連絡先を把握していないということが不自然・不合理である。被告人Bも,上記のような極めて不自然な状況があったのであるから,正当な業務であると認識していたとは考えられない。 したがって,被告人両名の供述は,信用することができない。 4 以上によれば,被告人両名には窃盗の故意が認められ,共謀が成立する。 第5 判示第5の事実(I自動車事件)について被告人両名の弁護人らは,被告人両名に窃盗の故意がなく,共謀も成立しない旨主張するので,以下検討する。 1 前提事実被告人両名は,平成26年12月10日午前0時17分頃から同日午前1時10分頃までの間に,自動車に乗車して,甲府市所在の有限会社I自動車整備工場西側車両置き場(以下「I自動車被害現場」という。)付近に向かい,被告人両名のいずれかが,その頃,I自動車被害現場において,普通貨物自動車1台(以下「I自動車被害車両」という。)の管理者である同社取締役I2等に確認することなく,同所に駐車中のI自動車被害車両に乗車して運び出し,被告人両名のもう一方が,その頃,I自動車被害現場まで乗車してきた自動車を運転した。 I自動車被害現場は,平成26年12月9日午後6時頃,出入口に鎖が張られて出入りできない状態であったが,同月10日午前5時30分頃,同鎖が切断されて 被害現場まで乗車してきた自動車を運転した。 I自動車被害現場は,平成26年12月9日午後6時頃,出入口に鎖が張られて出入りできない状態であったが,同月10日午前5時30分頃,同鎖が切断されていた。 イ切断された鎖の破片の痕跡の一部は,平成27年2月6日,被告人Aが使用する普通乗用自動車内から押収された番線カッターによって印象されたものである。 I自動車被害車両のエンジンキーは1本しかないところ,同エンジンキーは,同車が運び出された後においても,I自動車整備工場事務室内に保管されたままであった。 I自動車被害車両は,平成26年12月10日午前0時17分頃から同日午前1時10分頃までの間に,I自動車被害現場において,そのナンバープレートから別のナンバープレートに付け替えられた。 2 前記1の前提事実のとおり,被告人両名は,自動車に乗車して,I自動車被 害現場に向かい,被告人両名のうちいずれかがI自動車被害車両を運転して,もう一方がI自動車被害現場まで乗車してきた自動車を運転していることから,被告人両名でI自動車被害車両を運び出したと評価できる。 前記1の前提事実のとおり,I自動車被害車両のエンジンキーは1本しかないところ,同エンジンキーは,同車が運び出された後においても,I自動車整備工場事務室内に保管されたままであったにもかかわらず,被告人両名で同車を運び出したことに照らすと,被告人両名のいずれかが,エンジンキーを用いずに,エンジンを作動させて,同車を運び出したと考えられる。 上記事実及び前記1の前提事実によれば,被告人両名もしくはいずれか一方が,I自動車被害現場の出入口を塞いでいた鎖を切断し,エンジンキーを用いずに,エンジンを作動させて,I自動車被害車両を運び出し,同車のナンバープレートを付け替えたと考えら 人両名もしくはいずれか一方が,I自動車被害現場の出入口を塞いでいた鎖を切断し,エンジンキーを用いずに,エンジンを作動させて,I自動車被害車両を運び出し,同車のナンバープレートを付け替えたと考えられるところ,これらの行為は被告人両名が同車を運び出すためになされた行為であることからすると,いずれか一方が行った行為であっても,被告人両名の了解の下でなされたものと推認できる。 以上によれば,被告人両名は,人の少ない深夜に,管理者等に確認することなく,I自動車被害車両を持ち出していることに加え,I自動車被害現場の出入口を塞いでいた鎖を切断し,エンジンキーを用いずに,エンジンを作動させて,同車を運び出し,同車のナンバープレートを付け替えたと認められるところ,上記行為は,同車を運び出す権限を有する者の行動として極めて不自然であり,被告人両名の窃盗の故意が強く推認される。 3 被告人両名の供述について被告人Aは,Uから買い取って運搬しただけである旨供述し,被告人Bは,被告人Aから依頼されて正当な業務として行ったものである旨供述し,いずれも窃盗の故意を否認する。 しかし,前判示のとおり,被告人両名がI自動車被害車両を持ち出した際の態様は,同車を運び出す権限を有する者の行動として極めて不自然である。ま た,被告人Aは,Uは携帯電話を持っていないから連絡をすることができない旨供述するが,一般的に高価である自動車を買い取った相手方の連絡先を把握していないということが不自然・不合理である。被告人Bも,上記のような極めて不自然な状況があったのであるから,正当な業務であると認識していたとは考えられない。 したがって,被告人両名の供述は,信用することができない。 4 以上によれば,被告人両名には窃盗の故意が認められ,共謀が成立する。 (累犯前科 ,正当な業務であると認識していたとは考えられない。 したがって,被告人両名の供述は,信用することができない。 4 以上によれば,被告人両名には窃盗の故意が認められ,共謀が成立する。 (累犯前科)被告人Aは,平成24年2月3日W地方裁判所X支部で覚せい剤取締法違反の罪により懲役1年6月に処せられ,平成25年7月23日その刑の執行を受け終わったものであって,この事実は前科調書(乙21)によって認める。 被告人Bは,平成22年7月6日W地方裁判所Y支部で窃盗罪により懲役3年に処せられ,平成25年3月7日その刑の執行を受け終わったものであって,この事実は前科調書(乙29)によって認める。 (法令の適用)[被告人Bにつき](判示第1,第3ないし第5)罰条いずれも刑法60条,235条刑種の選択いずれも懲役刑を選択累犯加重いずれも刑法56条1項,57条(再犯の加重)併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書[被告人Aにつき](判示第2ないし第5)罰条判示第2 刑法235条 判示第3ないし第5 いずれも刑法60条,235条刑種の選択いずれも懲役刑を選択累犯加重いずれも刑法56条1項,57条(再犯の加重)併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由)被告人両名は,自動車窃盗を連続して行っており,共犯者間 判示第5の罪の刑に法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由)被告人両名は,自動車窃盗を連続して行っており,共犯者間で役割を分担して車を運び出すとともに,ナンバープレートを付け替えるなど非常に手慣れた職業的犯行といえる。被害総額も相当高額である上,被告人Bが窃取した横浜事件被害車両を除き,被害車両はいずれも所在不明になっている。 以上に加え,被告人Aは,前刑終了後1年3か月余りでD商店事件を犯しており,被告人Bは,同種窃盗の前刑終了後約1年7か月後から横浜事件を犯しており,いずれも規範意識の鈍麻が顕著である。 その上,被告人両名は,不合理な弁解に終始し,全く反省の様子が見られない。 そうすると,被告人両名の刑事責任はいずれも重く,被告人両名にはそれぞれ主文の各刑を科すのが相当である。 (検察官黒見知子,同伊藤直子,被告人Aの弁護人松本和英(私選),被告人Bの弁護人渡邉祐太(国選)各出席)(求刑被告人両名いずれも懲役5年)平成29年7月19日東京地方裁判所立川支部刑事第3部 裁判長裁判官宮本孝文 裁判官小坂茂之 裁判官髙田浩平は,職務代行を解かれたため,署名押印できない。 裁判長裁判官宮本孝文

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