【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。 被上告人の主位的請求中上告人が昭和四八年三月三一日付で被上告人に 対してした高消許第四六三号給油取扱所変更許可処分が存在し、か
主 文 原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。 被上告人の主位的請求中上告人が昭和四八年三月三一日付で被上告人に 対してした高消許第四六三号給油取扱所変更許可処分が存在し、かつ、その効力を 有することの確認請求を棄却する。 被上告人のその余の主位的請求に係る訴えをいずれも却下する。 原判決中被上告人の予備的請求に関する部分につき本件を神戸地方裁判 所に差し戻す。 被上告人の主位的請求に関する訴訟の総費用は被上告人の負担とする。 理 由 上告代理人後藤三郎、同坂本義典、同大西裕子の上告理由について 行政処分が行政処分として有効に成立したといえるためには、行政庁の内部にお いて単なる意思決定の事実があるかあるいは右意思決定の内容を記載した書面が作 成・用意されているのみでは足りず、右意思決定が何らかの形式で外部に表示され ることが必要であり、名宛人である相手方の受領を要する行政処分の場合は、さら に右処分が相手方に告知され又は相手方に到達することすなわち相手方の了知しう べき状態におかれることによつてはじめてその相手方に対する効力を生ずるものと いうべきである(最高裁昭和二六年(れ)第七五四号同二九年八月二四日第三小法 廷判決・刑集八巻八号一三七二頁参照)。 これを本件についてみるのに、原審の適法に確定した事実は、次のとおりである。 すなわち、被上告人は昭和三二年三月三一日高消許第三二号給油場の許可を得てい たが、昭和四八年三月初め頃上告人に対し、消防法一一条一項の規定に基づき給油 取扱所変更許可申請(以下「本件変更許可申請」という。)をしたところ、同月三 〇日右申請が受理された。上告人(主管・高砂市消防本部)は、本件変更許可申請 - 1 - に対し昭和四八年四月六日、遡及した日付である同年三 申請(以下「本件変更許可申請」という。)をしたところ、同月三 〇日右申請が受理された。上告人(主管・高砂市消防本部)は、本件変更許可申請 - 1 - に対し昭和四八年四月六日、遡及した日付である同年三月三一日付で高消許第四六 三号給油取扱所とした変更許可書の原本とその写し(甲第一一号証の四)を作成し、 被上告人の元売会社であるD石油株式会社(以下「D石油」という。)E支店のF 課長に右許可書の写しを交付した。右写しは、その後大阪通商産業局長宛に提出さ れた。この間の経緯は、次のとおりである。すなわち、上告人は、昭和四五年以降、 給油取扱所の変更許可申請の際、事前に隣接住民の同意書を提出させていたので、 前記被上告人の本件変更許可申請についても、昭和四八年三月三一日被上告人に対 し隣接住民であるGの同意書の提出が本件変更許可申請に係る許可処分(以下「本 件変更許可処分」という。)の条件になる旨連絡し、その提出を求めたが、被上告 人は終始これを拒否していた。他方、被上告人は格別D石油に対し本件変更許可申 請手続に関する代理権を与えていたわけではなかつたが、上告人は同会社E支店を 被上告人の代理人と考えて応待していたところ、右E支店及び同じく被上告人の元 売り会社である兵庫県H漁業協同組合連合会(以下「H漁連」という。)から、隣 接住民の同意書を後日提出するので昭和四八年三月三一日付で本件変更許可処分を してもらいたい旨の懇請を受けた。その理由は、被上告人が通商産業省から昭和四 七年度の給油取扱所の変更の枠を得るためには、昭和四八年三月三一日までに本件 変更許可処分が効力を生じていなければならなかつたからである。そこで、上告人 は、昭和四八年四月六日が本件変更許可処分の許可書の写しを添付して大阪通商産 業局長宛に昭和四七年度の前記変更の枠の申請手続をする最終日であつたので、D 石 ければならなかつたからである。そこで、上告人 は、昭和四八年四月六日が本件変更許可処分の許可書の写しを添付して大阪通商産 業局長宛に昭和四七年度の前記変更の枠の申請手続をする最終日であつたので、D 石油らの前記懇請により、例外的に隣接住民の同意書の提出がないまま許可するこ ととし、右同日、同年三月三一日付で本件変更許可処分の許可書の原本とその写し を作成したが、その際、上告人は、右写しの条件欄に隣接住民の同意書を提出すべ き旨を記載すると前記変更の枠が流れてしまうので、その旨を記載しない代りに、 D石油E支店とH漁連から連名で、「工事に関する貴市指定隣接住民の同意書を提 - 2 - 出するまで本件変更許可書の受理につき異議を申しません。云々」の念書(乙第一 号証)を差し入れさせ、これと引換えに右許可書の写しをD石油E支店らに交付し、 他方被上告人に対しては許可書原本を交付することなく、終始隣接住民であるGの 同意書を提出することを求めた。 そこで、以上の事実関係の下において、上告人による被上告人に対する有効な変 更許可処分がされたものと認めることができるかどうかを考えるのに、右の事実に よれば、本件許可書の写しのD石油E支店らに対する交付は、同人らの懇請に応じ 大阪通商産業局長に対する関係で昭和四七年度の給油取扱所の変更の枠を確保する ことを目的としてあたかも許可処分があつたかのような状況を作出するためにされ たものにすぎず、被上告人に対する許可処分そのものは隣接住民の同意書の提出を まつて許可書の原本を交付することによつて行うこととされ、D石油らももとより これを了承して許可書の写しの交付を受けたのであるから、右交付をもつて被上告 人に対する許可処分の外部的意思表示がされたものとみることはできない。したが つて、これだけでは、本件許可処分は行政処分として未だ成立していな 可書の写しの交付を受けたのであるから、右交付をもつて被上告 人に対する許可処分の外部的意思表示がされたものとみることはできない。したが つて、これだけでは、本件許可処分は行政処分として未だ成立していないといわざ るをえず、その後この状態に変動がない以上、被上告人に対する有効な許可処分は 存在していないというほかはない。そうすると、被上告人の主位的請求のうち本件 変更許可処分の存在及びその効力の確認を求める部分は理由がないものというべき である。 次に、被上告人が昭和四八年三月三〇日にした給油取扱所内の灯油等専用の一般 取扱所設置許可申請に対する上告人の不作為の違法確認の請求についてみるのに、 右申請は、本件変更許可処分が有効にされたことを前提とし、右変更に係る給油取 扱所内における灯油等専用の一般取扱所設置の許可を求めるものであるところ、前 記のように前提である本件変更許可処分自体が存在しないのであるから、かかる申 請については、これに対する行政庁の不作為があつても、申請者においてその違法 - 3 - の確認を求める訴えの利益はないと解するのが相当である。よつて、被上告人の前 記請求に係る訴えは、不適法として却下すべきものである。 また、被上告人の主位的請求のうち被上告人が本件変更許可処分につき隣接住民 の同意書を提出する義務がないことの確認を求める部分は、本件許可処分があつた ことを前提とし、右許可処分にはこれに関して被上告人に右同意書提出の義務を負 わせるような附款が附されていないこと、仮にかかる附款が附されていたとしても それは無効であるとして右の義務不存在の確認を求めるものであるところ、本件許 可処分自体が存在しないことは前記のとおりであるから、これが存在することを前 提としてこれに関し同意書を提出する義務が被上告人に存在しないことの確認を求 める訴えの利益はな めるものであるところ、本件許 可処分自体が存在しないことは前記のとおりであるから、これが存在することを前 提としてこれに関し同意書を提出する義務が被上告人に存在しないことの確認を求 める訴えの利益はないといわなければならない。よつて、右請求に係る訴えもまた 却下を免れない。 以上の次第であるから、原判決中被上告人の主位的請求を認容した部分を破棄す ることとし、右部分については原審の確定した事実に基づき当裁判所において裁判 をするに熟するものと認められるところ、第一審判決は右主位的請求を原審と同趣 旨の理由で認容しているのでこれを取り消したうえ、被上告人の主位的請求中上告 人が昭和四八年三月三一日付で被上告人に対してした高消許第四六三号給油取扱所 変更許可処分が存在し、かつ、その効力を有することの確認請求を棄却し、被上告 人のその余の主位的請求に係る訴えをいずれも却下することとし、なお被上告人の 予備的請求についてはさらに審理を尽くさせる必要があるから、右部分につき本件 を神戸地方裁判所に差し戻すのを相当とする。 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、四〇七条 一項、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 谷 口 正 孝 - 4 - 裁判官 団 藤 重 光 裁判官 藤 崎 萬 里 裁判官 本 山 亨 裁判官 中 村 治 朗 - 5 - 裁判官 中 村 治 朗 - 5 -
▼ クリックして全文を表示