- 1 -主文 原判決を取り消す。 被控訴人らの請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 2(主位的申立て)被控訴人らの訴えを却下する。 (予備的申立て)被控訴人らの請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 第2事案の概要 本件は,徳島県鳴門市(以下「鳴門市」という。)の住民である被控訴人らが,鳴門市長であったAにおいて市税の徴収に関して義務を怠り,B株式会社(旧商号は「C株式会社」。以下,新旧商号を通じて「C」という。)が鳴門市に対して納税義務を負う特別土地保有税につき適切な法的措置等を執ることなく時効消滅させた結果,鳴門市に上記税額合計3757万2300円及びこれに対する各納期限の日の翌日から時効消滅の日の前日までの延滞金合計2709万9800円の損害を与えたものであって,Aが鳴門市に対して不法行為に基づき上記損害額の合計6467万2100円につき損害賠償責任を負うと主張し,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,控訴人に対して,Aに対する損害賠償請求権を行使するよう求めた住民訴訟である。原審が被控訴人らの請求を認容したため,控訴人が控訴した。 本件における前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の- 2 -全趣旨により容易に認められるもの)は次のとおりである。 (1)当事者等ア被控訴人らは,いずれも鳴門市の住民である。 イAは,平成11年4月30日から平成19年4月30日まで鳴門市長の職にあった者である。 (2)特別土地保有税の課税等アCは,控訴人に対し,平成10年9月1日,「平成9年1月1日より平成9年12月31日までの土地取得に対し ら平成19年4月30日まで鳴門市長の職にあった者である。 (2)特別土地保有税の課税等アCは,控訴人に対し,平成10年9月1日,「平成9年1月1日より平成9年12月31日までの土地取得に対して課する特別土地保有税申告書」と題する書面及び「平成9年7月1日より平成10年6月30日までの土地取得に対して課する特別土地保有税申告書」と題する書面を提出し,さらに,同年9月17日,「平成10年度分の土地に対して課する特別土地保有税申告書」と題する書面を提出し(乙4),本件各保有税につき申告し,これにより,鳴門市は,Cに対し,以下のとおり,平成10年度の特別土地保有税を課税した(以下「本件各保有税」という。)。 (ア)平成9年12月取得分税額492万3100円納期限平成10年3月2日(イ)平成9年12月保有分税額230万0400円納期限平成10年6月1日(ウ)平成10年2月及び5月取得分税額3034万8800円納期限平成10年8月31日(エ)合計3757万2300円イ本件各保有税についての納期限の日の翌日から時効消滅の日の前日ま- 3 -での延滞金は次のとおりである(計算方法は原判決別紙のとおり)。 (ア)平成9年12月取得分355万0900円(イ)平成9年12月保有分165万8900円(ウ)平成10年2月及び5月取得分2189万0000円(エ)合計2709万9800円(3)監査請求ア被控訴人らは,鳴門市監査委員に対し,平成16年5月28日付けで,法242条1項に基づき,A及び鳴門市徴税吏員が本件各保有税の徴収を怠り,鳴門市に本件各保有税の合計税額3720万円及びこれに対する延滞金相当額の損害を与えたとして,控訴人がA及び鳴門市徴税吏員に対して上記合計税額,延滞金相当 鳴門市徴税吏員が本件各保有税の徴収を怠り,鳴門市に本件各保有税の合計税額3720万円及びこれに対する延滞金相当額の損害を与えたとして,控訴人がA及び鳴門市徴税吏員に対して上記合計税額,延滞金相当額及びこれらに対する支払済みまでの遅延損害金の損害賠償を請求することを求める監査請求をした(甲1。 以下「本件監査請求」という。)。 イ鳴門市監査委員は,平成16年7月22日,鳴門市に損害が発生していないことを理由に本件監査請求を却下する旨の決定をした(甲2。以下「本件監査結果」という。)。 (4)本件訴訟の提起と訴えの一部取下げ等被控訴人らは,本件監査結果を不服として,平成16年8月2日,控訴人に対する本件訴訟を徳島地方裁判所に提起した。この訴えは,当初,控訴人においてCに対する本件各保有税の徴収を怠る事実の違法確認を求めるとともに,控訴人及びCに対して本件各保有税及びこれに係る延滞金の支払を請求するよう求めるものであったところ,後記(5)のCによる本件各保有税及び延滞金等の払込みを受けて,被控訴人らは,平成17年1月17日の原審第4回口頭弁論期日において,上記怠る事実の違法確認の訴え及びCに対して損害賠償を請求するよう求める訴えを取り下げるとともに,Aに対して請求すべき損害賠償額を上記Cによる払込みに係る6875万- 4 -5300円と改めたが,さらに同年4月8日の原審第6回口頭弁論期日において,上記損害賠償額を本件各保有税3757万2300円及びこれに対する5年分の延滞金2709万9800円の合計6467万2100円と改めた。 (5)本件各保有税の払込みCは,鳴門市に対し,平成16年8月6日,還付請求をすることを予告した上,次のとおり,本件各保有税の合計税額,督促手数料及び同日までの延滞金総計6878万5300円を納付した(乙 件各保有税の払込みCは,鳴門市に対し,平成16年8月6日,還付請求をすることを予告した上,次のとおり,本件各保有税の合計税額,督促手数料及び同日までの延滞金総計6878万5300円を納付した(乙34の3・5枚目。以下「本件納付」という。)。 ア平成9年12月取得分(乙1の2)税額492万3100円督促手数料100円延滞金407万8900円合計900万2100円イ平成9年12月保有分(乙1の1)税額230万0400円督促手数料100円延滞金198万9300円合計428万9800円ウ平成10年2月及び5月取得分(乙1の3)税額3034万8800円督促手数料100円延滞金2514万4500円合計5549万3400円(6)誤納金還付請求アCは,鳴門市に対し,平成16年9月3日付けの内容証明郵便により,- 5 -本件納付が誤納であるとして,本件納付に係る金員について還付請求をした(甲6)。 イCは,平成16年12月27日,本件納付に係る金員等につき誤納金であるとして,地方税法17条に基づき鳴門市に対してその還付等を求める訴えを東京地方裁判所に提起したところ(平成16年(行ウ)第562号。以下「別件訴訟」という。),同裁判所は,平成19年9月14日,Cの上記請求を棄却する旨の判決を言い渡し(乙44),Cはこれに対して控訴した(乙45)。 争点及びこれに対する当事者の主張(1)本件訴えの適法性(控訴人)被控訴人らは,当初,法242条の2第1項3号に基づき,控訴人がCに対する本件各保有税の徴収を怠る事実の違法確認を求めていたものの,Cによる本件納付に伴って訴えを変更し,控訴人の本件各保有税に係る徴収権が時効消滅している以上,Cからの払込みについては誤納金とし に対する本件各保有税の徴収を怠る事実の違法確認を求めていたものの,Cによる本件納付に伴って訴えを変更し,控訴人の本件各保有税に係る徴収権が時効消滅している以上,Cからの払込みについては誤納金として返還すべきものであって,Aが控訴人に対して徴収し得べき本件各保有税等につき不法行為に基づく損害賠償請求責任を負うとして,同項4号に基づき,Aに対して上記損害賠償請求をするよう求める訴えに変更したものである。 しかるところ,被控訴人らによる本件監査請求においては,上記怠る事実の確認請求に係る主張しかされておらず,Aに対する損害賠償請求に係る主張については,課税の適否のほか,時効中断の有無,Cによる不正行為の有無等につき検討する必要があるにもかかわらず,その主張がされていないため,これに対応した監査も行われていないのであるから,被控訴人らの後者の訴えは監査請求前置の要件を欠く不適法なものである。 また,本件各保有税の納税義務については,鳴門市とCとの間の別件訴- 6 -訟において争われており,Aの行為によって鳴門市に損害が生じ,これにより鳴門市がAに対する損害賠償請求権を確実に有しているとまではいえないところ,こうした状況の下では,被控訴人らの後者の訴えは不適法というべきである。 (被控訴人ら)被控訴人らの本件請求は,当初から,控訴人がCに対する本件各保有税の徴収を怠る事実の違法確認を求めるとともに,Aが適切な法的措置を執らず本件各保有税の徴収権を時効消滅させたことにより鳴門市に被らせた損害の賠償をA及びCに対して請求するよう求めるものであり,被控訴人らは,Cの本件納付に伴い,前者の訴え及び後者の訴えのうちCに対して請求するよう求める部分を取り下げるとともに,損害賠償額を訂正したにすぎず,後者の訴えのうちAに対して不法行為に基づく損害賠償 訴人らは,Cの本件納付に伴い,前者の訴え及び後者の訴えのうちCに対して請求するよう求める部分を取り下げるとともに,損害賠償額を訂正したにすぎず,後者の訴えのうちAに対して不法行為に基づく損害賠償を請求するよう求める部分は,当初の訴え提起時から何ら変わっていない。そして,本件監査請求は,A及び鳴門市徴税吏員が徴税義務を履行しなかったために本件各保有税につき時効が成立して不納欠損が生じたので,鳴門市はA及び徴税吏員に対し,これに係る損害賠償請求をすることを求めるものであったから,本件訴えにおける請求と本件監査請求の同一性は明らかである。 (2)本件各保有税の徴収権の時効消滅ないし鳴門市の損害の有無(控訴人)鳴門市は,Cから本件納付を受けて,その金員を鳴門市会計規則及び鳴門市公金収納事務取扱規則に基づき鳴門市の歳入として適正に処理しており,これをCに還付ないし返納していないのであるから,鳴門市には何ら損害は生じていない。また,本件各保有税の徴収権の消滅時効の成否については,別件訴訟において鳴門市とCとの間で争われており,その成否が確定していない以上鳴門市に既に損害が生じているとはいえないにもかか- 7 -わらず,上記損害発生を前提とする被控訴人らの本件訴訟における主張は失当であるし,そもそも本件訴訟においてこの点を争点とすべきでない。 仮に本件各保有税の徴収権の消滅時効の成否が本件訴訟の争点となるとしても,後述のとおり消滅時効は成立していない。 アCは,平成11年6月24日付けで鳴門市総務部税務課長あてに「鳴門市α××番所在土地の取得に関する地方税法第602条の適用認定に係る土地取得経過について」と題する書面(以下「本件書面」という。 乙5)を発送し,また,平成13年3月28日には,C側のD氏が鳴門市総務部税務課(以下「税務課」と する地方税法第602条の適用認定に係る土地取得経過について」と題する書面(以下「本件書面」という。 乙5)を発送し,また,平成13年3月28日には,C側のD氏が鳴門市総務部税務課(以下「税務課」という。)に来庁し,本件各保有税につき地方税法602条1項1号ハの規定が適用されるべきである旨主張しているところ,こうしたC側の行為は,本件各保有税につき納税義務を負っていることを前提とした上で,納税義務の免除を求めようとするものであるから,民法147条3号所定の承認に当たり,これにより時効が中断されている。 そして,控訴人は,Cに対し,平成16年6月14日付けで,本件各保有税の納付を求める督促状を送付し,そのころCに到達したから,これにより時効が中断し,督促状発送日から起算して10日経過した日から更に時効が進行することなる。 イ前記前提事実(2)アのCの本件各保有税の申告においては,本来申告すべきものの一部しか申告されておらず,その内容やその後のCの対応等に照らすと,上記申告は,単純な過少申告ではなく,地方税法17条の5第4項に定める「偽りその他不正の行為により,その全部若しくは一部の税額を免れ」ようとしたものに当たるから,これについての更正決定は,法定納期限の翌日から起算して7年を経過する日まですることができるところ,控訴人は,平成17年7月20日,平成9年12月,平成10年2月及び5月各取得分に係る特別土地保有税につき更正をした- 8 -(乙16)。これにより本件各保有税につき消滅時効が中断した。 (被控訴人ら)本件各保有税の法定納期限は,平成9年12月保有分につき平成10年6月1日,平成9年12月取得分につき平成10年3月2日及び平成10年2月及び5月各取得分につき同年8月31日であるところ,それぞれの法定納期限から地方税法18 平成9年12月保有分につき平成10年6月1日,平成9年12月取得分につき平成10年3月2日及び平成10年2月及び5月各取得分につき同年8月31日であるところ,それぞれの法定納期限から地方税法18条1項所定の消滅時効期間である5年間,鳴門市からCに対して本件各保有税の徴収手続は全く執られておらず,本件各保有税に係る鳴門市の徴収権は時効により消滅しており,消滅時効の完成と同時に,本件各保有税及びこれに係る時効期間満了時までの延滞金の徴収ができなくなったことによる鳴門市の損害は確定的に発生している。 Cからの本件納付に係る金員は,本件各保有税の徴収権が時効消滅した後に徴収されたものであって,誤納金として還付すべきものであるから,鳴門市に既に生じた損害を左右するものではない。 控訴人は,原審第6回口頭弁論期日において,時効中断に関する主張はしない旨明言していたにもかかわらず,当審に至って時効中断に関する主張をすることは,民訴法157条ないし同条の2に反する時機に後れた攻撃防御方法として,これを却下すべきである。 仮に本件各保有税の徴収権の消滅時効の中断の有無が本件訴訟の争点となるとしても,後述のとおり消滅時効は成立している。 アCが平成11年6月24日付けで税務課長あてに発送した本件書面は,鳴門市の意向に沿って行われた土地取得の経過を述べた上で,鳴門市が特別土地保有税を課したこと自体の不当性を強調し,納税義務の不存在を訴える内容のものであって,納税義務の承認には当たらない。また,平成13年3月28日にC側のD氏が税務課を訪れた際のやりとりについても,D氏の立場や権限,その来庁時の発言内容が不明であり,これをもって納税義務の承認には当たらない。 - 9 -イ控訴人が平成17年7月20日にした更正は,前記前提事実(2)アのCの申告において未 ,D氏の立場や権限,その来庁時の発言内容が不明であり,これをもって納税義務の承認には当たらない。 - 9 -イ控訴人が平成17年7月20日にした更正は,前記前提事実(2)アのCの申告において未申告となっていた分に係る特別土地保有税の徴収権についての消滅時効を中断するにすぎず,本件各保有税の徴収権についてまで消滅時効を中断する効力を有するものでない(地方税法20条の9の2,国税通則法73条1項1号参照)。 (3)Aの責任(被控訴人ら)鳴門市においては,Cに対して本件各保有税に係る督促状の送付も行っておらず,平成15年8月15日の段階では,本件各保有税につき徴収を行うことなく,消滅時効の完成を待って不納欠損処理をする方針であり,これにつきAも了承していたところ,平成16年6月に被控訴人らから本件監査請求が出されたため,Aが自らの責任を回避するためにやむなく上記方針を変更し,Cに対して既に時効消滅している本件各保有税等の納付を迫り,本件納付に至ったものである。 Aは,本件各保有税につき不徴収との方針を示し,自ら又は市税の徴収等の行為につき権限を委任した税務課の職員において適切な法的措置等を執ることなく本件各保有税の徴収権を時効消滅させたものであり,自ら地方公共団体の事務を誠実に管理,執行すべき義務に違反し,又は部下職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反して,本件各保有税の徴収を怠ったものである。 なお,控訴人は,Aにおいて本件各保有税につき不徴収との方針を採ったことはなく,平成15年8月13日には,Cに対して本件各保有税につき督促状を発送して時効中断の措置を講じるよう政策監兼総務部長から税務課長に指示がされ,税務課長から担当の税務副課長に指示が出されたものの,督促状が出されずに終わったと主張するけれども,同月 税につき督促状を発送して時効中断の措置を講じるよう政策監兼総務部長から税務課長に指示がされ,税務課長から担当の税務副課長に指示が出されたものの,督促状が出されずに終わったと主張するけれども,同月15日の段階で前記のとおり本件各保有税につき不徴収の方針が決定されていたこと,- 10 -行政組織において上司の指示に反して督促状を発送しないという事態はあり得ないこと,同年10月21日に督促状が発送されていないことが発覚した後も特段の措置が講じられた形跡も見当たらないことなどからすれば,督促状発送の指示はなかったものと見るのが自然である。 (控訴人)Aが税務課長から本件各保有税に関する説明を受けて協議したのは,平成13年7月13日であり,その当時の税務課の判断は,Cに対して本件各保有税の課税を免除するのが相当であるというものであったが,Aは徴収を指示しており,被控訴人ら主張のように,平成15年8月15日に不徴収の方針が確認された事実はない。 鳴門市では,地方税等につき滞納処分を行うこと及び特別土地保有税に関する納税義務の免除又は徴収の猶予を決定することについては,その額の如何を問わず,税務課長において専決するものとされているところ(鳴門市事務決裁規程・昭和41年12月15日訓令10号。乙22),上記のとおり,本件各保有税につき徴収を図るとの方針の下に,政策監兼総務部長が税務課長に対し,本件各保有税につきCに対する督促状の送付を指示し,これを受けた税務課長が部下の副課長にその旨の指示をしているのであるから,Aにつき部下職員に対する指揮監督上の過失があったとはいえない。確かに,上記指示にもかかわらずCに対する督促状が発送されていないけれども,指示を受けた副課長において,滞納繰越原簿上平成11年6月24日付けのCの債務承認行為があり,平成1 があったとはいえない。確かに,上記指示にもかかわらずCに対する督促状が発送されていないけれども,指示を受けた副課長において,滞納繰越原簿上平成11年6月24日付けのCの債務承認行為があり,平成16年6月23日まで時効期間が延長されていると認識していたことなどがその原因である。実際には,前記(2)で控訴人が主張したとおり,Cの承認により本件各保有税の徴収権につき時効が中断しており,徴収権が存続しているうちに本件納付を受けたものである。 (4)損害額- 11 -(被控訴人ら)鳴門市は,本件各保有税の徴収権がいずれも時効消滅したことにより,合計税額相当額である3757万2300円の損害を被ったほか,Aが徴収を怠らなければ本件各保有税に係る各延滞金についても徴収することができたのであるから,本件各保有税がそれぞれ時効消滅した日の前日までの各延滞金相当額である2709万9800円についても損害を被ったというべきである。 (控訴人)争う。前記(2)において控訴人が主張したとおり,鳴門市には損害は生じていない。 第3当裁判所の判断 本件訴えの適法性について前記前提事実のとおり,被控訴人らによる本件監査請求は,A及び鳴門市徴税吏員が本件各保有税の徴収を怠り,鳴門市に本件各保有税の合計税額3720万円及びこれに対する延滞金相当額の損害を与えたとして,控訴人がA及び鳴門市徴税吏員に対して上記合計税額,延滞金相当額及びこれらに対する支払済みまでの遅延損害金の損害賠償を請求することを求めるものであり,これに対する本件監査結果が鳴門市に損害が発生していないことを理由に本件監査請求を却下するというものであったため,これを不服として被控訴人らが本件訴訟を提起し,控訴人がCに対する本件各保有税の徴収を怠る事実の違法確認を求めるとともに,控訴人及び いないことを理由に本件監査請求を却下するというものであったため,これを不服として被控訴人らが本件訴訟を提起し,控訴人がCに対する本件各保有税の徴収を怠る事実の違法確認を求めるとともに,控訴人及びCに対して本件各保有税及びこれに係る延滞金の支払を請求するよう求めていたが,その後,本件納付を受けて,上記怠る事実の違法確認の訴え及びCに対して損害賠償を請求するよう求める訴えが取り下げられ,Aに対して請求すべき損害賠償額につき最終的に本件各保有税3757万2300円及びこれに対する5年分の延滞金2709万9800円の合計6467万2100円と改められたものである。 - 12 -以上のとおり,被控訴人らは,本件監査請求及び本件訴訟を通じ一貫して,Aに対して本件各保有税の徴収懈怠を理由として不法行為に基づく損害賠償を請求するよう求めているものであり,本件監査請求において対象とされた行為と本件訴訟において訴えの対象とされた行為は同一であるといえるから,Aに対する損害賠償請求権の行使を求める上記訴えは,監査請求の前置を欠くものではない。 なお,控訴人は,本件各保有税の納税義務につき鳴門市とCとの間の別件訴訟において争われており,鳴門市がAに対する損害賠償請求権を確実に有しているとまではいえない状況の下では,控訴人の上記訴えは不適法である旨主張するけれども,特別土地保有税の納税義務をめぐって地方公共団体と納税者との間の訴訟で争われているからといって,そのことから直ちに,当該税の徴収に関して住民が提起した地方公共団体の長個人に対する損害賠償請求権の行使を求める住民訴訟がその訴訟要件を欠くものとはいえないから,控訴人の上記主張は失当である。 本件各保有税の徴収権の時効消滅の有無について(1)本件各保有税の徴収権は法定納期限の翌日から起算して5年間 る住民訴訟がその訴訟要件を欠くものとはいえないから,控訴人の上記主張は失当である。 本件各保有税の徴収権の時効消滅の有無について(1)本件各保有税の徴収権は法定納期限の翌日から起算して5年間これを行使しないことによって時効消滅することになるところ,徴収権の時効消滅については,時効の援用を要せず,かつ,時効の利益の放棄もできないとされており,時効期間の経過により確定的に徴収権消滅の効果が生じるものである(地方税法18条)。そこで,以下においては,控訴人主張の時効中断事由の有無につき検討を加える。 なお,控訴人は,本件納付により鳴門市には損害が生じておらず,本件各保有税の徴収権の時効消滅の点は本件訴訟における争点とすべきでないと主張するけれども,上記のとおり本件各保有税の徴収権の時効消滅の効果は当事者による時効の援用を待つことなく確定的に生じるものである以上,この点は鳴門市の損害の発生と表裏一体の関係に立つものであって,- 13 -本件納付があったとの一事をもって直ちに鳴門市に損害が生じていないとすることはできないから,本件各保有税の徴収権の時効消滅,とりわけ時効中断の有無の点が本件訴訟において審理判断を要する事項であることは明らかであり,納税義務者とされるCと課税権者である鳴門市との間の別件訴訟においてこの点が争われていることは前記判断を左右するものではない。 他方,被控訴人らは,控訴人の時効中断に関する主張を時機に後れたものとして却下すべきであると主張するけれども,本件の事案の特質,本件訴訟の経過等に照らし,これを採用することはできない。 (2)ア証拠(乙3,5,34の3・4,35ないし37)及び弁論の全趣旨によれば,税務課が平成10年2月13日ころにCに対して平成9年12月取得分及び保有分に係る特別土地保有税の申告書用紙 ない。 (2)ア証拠(乙3,5,34の3・4,35ないし37)及び弁論の全趣旨によれば,税務課が平成10年2月13日ころにCに対して平成9年12月取得分及び保有分に係る特別土地保有税の申告書用紙等を送付したところ,平成10年2月24日,CE支店事務部総務課長代理であったFは,G株式会社のHとともに,鳴門市環境衛生部長室を訪ね,I環境衛生部長に対して上記特別土地保有税の納付の要否について確認したこと,その際同室に呼ばれた税務課職員は,鳴門市から先行取得の要請を受けて取得した土地につき特別土地保有税を納付する必要がないとするFらに対し,特別土地保有税の申告書を出す必要がある旨説明するとともに,正式に土地の先行取得の依頼を受けたことを示す書類が提出されれば,納税義務が免除になる旨教示したこと,上記Fは,平成10年9月ころ,税務課職員から,本件各保有税につき地方税法602条所定の納税義務免除の要件を充足していないのではないかとの指摘を受けたことから,同年11月6日,上記藤井とともに税務課に赴き,同課職員と同条の解釈につき議論したほか,平成11年6月3日にも税務課を訪れて,税務課長との間で同条に基づく納税義務免除について話合いをしたこと,Cは,この話合いを踏まえて,G株式会社との連名による本件書- 14 -面を税務課長に対して送付したこと,本件書面には,本件各保有税の課税対象土地につき鳴門市からの働き掛けを受けてCらが購入し,その後J公社に譲渡した旨の取得経過が記載され,「以上の経緯にも拘わらず,先般,突然に課税に値するとのご指導をいただき非常に困惑している状況であります。現時点で問題となっております本土地の購入者でありますJ公社の買取り証明等につきましては,前述の経過及び本事業の特殊性を鑑み,実態把握の上,ご判断を賜りますようお願い に困惑している状況であります。現時点で問題となっております本土地の購入者でありますJ公社の買取り証明等につきましては,前述の経過及び本事業の特殊性を鑑み,実態把握の上,ご判断を賜りますようお願い申しあげます。」との記載がされていること,鳴門市の滞納繰越原簿(乙3)には,平成11年6月24日に承認があった旨の記載がされていることが認められる。 イ特別土地保有税は,土地又はその取得に対し,当該土地の所有者又は取得者に課されるものであり,土地の取得に対するものは土地の移転の事実自体に着目して課されるいわゆる流通税であり,土地に対するものは取得に引き続いて土地を所有している事実自体に着目して課されるいわゆる財産税であって,いずれも土地の取得者又は所有者が当該土地を使用,収益,処分することにより得られるであろう利益に着目して課されるものではなく,地方税法585条1項にいう土地の取得とは,所有権の移転の形式により土地を取得するすべての場合を含み,その経過的事実に則してとらえた土地所有権取得の事実をいうのであって,土地の所有についても同様に解するのが相当である(最高裁平成13年(行ツ)第205号,同年(行ヒ)第202号同14年12月17日第三小法廷判決・判例時報1812号76頁参照)。したがって,特別土地保有税の課税要件ないしその外延は極めて明確であって,証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によれば,Cによる本件各保有税の課税対象土地の取得ないし保有が特別土地保有税の課税要件を充足していることは明らかであり,Cによる本件各保有税に係る税務申告書の提出(前記前提事実(2)ア)も- 15 -上記課税要件の充足を前提としてその申告を行ったものと認めるのが相当である。 ウ前記イで説示したとおり,Cによる本件各保有税の課税対象土地の取得ないし保有が特別 前提事実(2)ア)も- 15 -上記課税要件の充足を前提としてその申告を行ったものと認めるのが相当である。 ウ前記イで説示したとおり,Cによる本件各保有税の課税対象土地の取得ないし保有が特別土地保有税の課税要件を充足しており,これを前提としてCがその税務申告を行ったものであるところ,これを踏まえて前記アで認定した本件書面の提出に至る経緯や本件書面の表題や内容等をみると,税務課のみならずC側においても,本件各保有税につき所定の課税要件を充足していることを前提として,その納税義務免除に関する地方税法602条の適用の有無をめぐって議論をしているものと認められるのであって,本件書面についても,本件各保有税の納税義務の存在を前提とした上で,その免除を定めた同条の適用に否定的な税務課に対して再考を促し,同条の適用を主張しているものといわざるを得ない。 そして,民法147条3号所定の承認とは,時効の利益を受けるべき者が,時効により権利を失うべき者に対して,その権利存在の認識を表示することをいうものと解されるところ,上記認定説示したところに照らせば,本件書面の送付によってCが本件各保有税の徴収権の存在を認識している旨を表示したと評価することができるというべきである。 これに対して,被控訴人らは,本件書面の趣旨は本件各保有税の徴収権の存在を認めたものではなく,その納税義務の不存在を主張したものであって,承認には当たらないと主張するけれども,前記のとおり,特別土地保有税の課税要件は明確であり,Cによる本件各保有税の課税対象土地の取得ないし保有がその課税要件を充足することは明らかであることに加えて,本件書面の表題の記載にも照らせば,Cにおいては,本件各保有税につき地方税法602条の適用により納税義務の免除を受けることができるとの立場から,税務課に対 を充足することは明らかであることに加えて,本件書面の表題の記載にも照らせば,Cにおいては,本件各保有税につき地方税法602条の適用により納税義務の免除を受けることができるとの立場から,税務課に対して課税に反対していたものであって,本件各保有税の徴収権の存在を前提とした立論であることは- 16 -否定し難いところであるから,被控訴人らの上記主張は採用することができない。 (3)前記認定説示によれば,本件各保有税の徴収権の時効は,本件書面が提出された平成11年6月24日ころに中断したものというべきである。そして,控訴人がCに対して平成16年6月14日付けで本件各保有税及びこれに係る延滞金の納付を求める督促状を送付しているところ(乙24),地方税の徴収権の時効は,督促状が納税者に送達されたときに中断し,督促状を発した日から起算して10日を経過した日から更に進行するから(地方税法18条の2第1項2号),本件各保有税の徴収権の時効は,上記督促状が送達された同日ころに中断し,その日から10日を経過した日から更に進行することになる。 したがって,本件納付は,本件各保有税の徴収権が時効消滅する前にされたものというべきであるから,本件納付に係る金員につきこれを誤納金としてCに還付すべき理由はなく,鳴門市に被控訴人ら主張の損害が生じていないことは明らかである。 Aの責任について(1)証拠(乙11,13,19ないし21,23の1・2,28,34の3・4,35ないし37)及び弁論の全趣旨によれば,本件各保有税については,平成10年2月と同年9月に税務課からCに対して特別土地保有税の申告書用紙(ただし,税務課においてその記載項目の一部につきあらかじめ記入したもの)等を送付してその申告方を促しており,これを受けて前記前提事実(2)アのとおり,同年 からCに対して特別土地保有税の申告書用紙(ただし,税務課においてその記載項目の一部につきあらかじめ記入したもの)等を送付してその申告方を促しており,これを受けて前記前提事実(2)アのとおり,同年9月に本件各保有税につき税務申告がされたものであること,Cは,本件各保有税の申告書を提出する一方で,本件各保有税の課税対象土地の取得が鳴門市からの先行取得の要請に基づくものであるとして,特別土地保有税の課税免除を求めており,税務課では,地方税法602条1項1号ハ所定の免除の判定につき,徳島県を通じて当- 17 -時の自治省に問い合わせを行い,その回答を踏まえて,平成11年3月ころ,Cに対し,J公社がCに対して土地購入を依頼したことを示す確認申請書を提出するよう指導したものの,その提出がされないままであったこと,同年6月3日,本件各保有税につき課税免除を求めるC側と税務課長との間で同条に基づく納税義務免除について話合いが行われ,これを踏まえて,Cから同月24日付けで本件書面が提出されたことから,税務課ではこれをもって民法147条3号所定の承認があったものとして取り扱うこととし,その旨を滞納繰越原簿(乙3)に記入したこと,C側でも,この話合いを踏まえて,G株式会社との連名による本件書面を税務課長に対して送付したこと,平成13年3月ころにも税務課とCE支店の担当者との間で,本件各保有税の課税免除をめぐって従前と同様のやりとりが行われたこと,同年7月13日,A,助役及び税務課長の間で,本件各保有税の取扱いにつき協議がされ,その際,本件各保有税の課税対象土地のうち,平成10年4月30日に鳴門市議会においてJ公社がごみ処理場用地として購入するにつき債務負担を承認する旨の議決がされた後のものについては課税免除が可能であり,それ以外のものについても同様 地のうち,平成10年4月30日に鳴門市議会においてJ公社がごみ処理場用地として購入するにつき債務負担を承認する旨の議決がされた後のものについては課税免除が可能であり,それ以外のものについても同様の処理を検討する必要がある旨の税務課の意見に対して,Aからは,本件各保有税全部につき徴収すべきであるとの方針が示されたものの,そのころ,ごみ処理場用地としてJ公社が取得した土地の中に当時の鳴門市長ないしその親族の所有する土地が含まれていたため,これを不正な土地の取得であると主張する住民から提起された住民訴訟が控訴審に係属中であったことから,この事件の経過を見て事実関係を確認するとの結論になったこと,平成15年8月13日,鳴門市政策監兼総務部長と本件各保有税の取扱いにつき協議した税務課長は,法定納期限を起算点とする徴収権の時効期間満了が迫っていることから,とりあえず時効中断のためにCに対して督促状を出すよう,政策監兼総務部長から指示を受け,そのころ税務副課長に対してそ- 18 -の旨指示したが,結局督促状の発送はされなかったこと,その背景には,ごみ処理場用地取得をめぐって住民訴訟が提起されるなどしたこともあって,当時の税務課内では,本件各保有税につき課税免除に該当するのではないかとの疑念がなお残存していたことや,督促状を出さなくても,滞納繰越原簿上平成11年6月23日付け承認の記載があるため,時効期間が延長されているとの認識があったことなどの事情が認められる。 (2)鳴門市においては,鳴門市事務決裁規程(乙22)により地方税等につき滞納処分を行うこと及び徴収猶予等を行うことについては,その額の如何を問わず,税務課長において専決するものとされているところ,前記(1)で認定した本件各保有税をめぐるCとの交渉経過やその徴収に至る経緯等に加えて こと及び徴収猶予等を行うことについては,その額の如何を問わず,税務課長において専決するものとされているところ,前記(1)で認定した本件各保有税をめぐるCとの交渉経過やその徴収に至る経緯等に加えて,鳴門市とCとの間の別件訴訟の第1審判決において,平成11年6月24日付けの本件書面の送付をもって民法147条3号所定の承認に当たるとの判断が示されていることにもかんがみれば,仮に,別件訴訟において,本件書面の送付による本件各保有税の徴収権の時効中断が最終的に否定されることになった場合であっても,Aにおいて,市税の徴収につき専決を任されあるいは委任を受けた税務課長ないしその補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反したものとまでは認められないといわざるを得ないから,Aが本件各保有税の徴収権の時効消滅を原因とする損害賠償責任を負うものではないというべきである。なお,被控訴人らは,Aが本件各保有税につき不徴収の方針を示していたと主張し,これに沿う証拠として鳴門市の内部文書という甲14を提出するけれども,甲14の作成者や作成の経緯は明らかでなく,これが鳴門市における正式の文書ないしこれに準ずるものであるとは認められないから,これに基づいて直ちに被控訴人らの主張を肯認することはできず,他にAの上記指揮監督上の過失を基礎付けるべき事情を認めるに足りる的確な証拠もない。 - 19 - 結論 以上の次第で,被控訴人らの本件請求は,その余の点につき判断するまでもなく,失当として棄却を免れないところ,これと異なる原審の判断は不当であって,本件控訴は理由があるから,原判決を取り消した上,被控訴人らの本件請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 高松高等裁判所第4部裁判長裁判官矢延正平裁判官豊澤佳弘裁 あって,本件控訴は理由があるから,原判決を取り消した上,被控訴人らの本件請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 高松高等裁判所第4部裁判長裁判官矢延正平裁判官豊澤佳弘裁判官齋藤聡
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