平成15(行コ)247 退去強制令書発付処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成12年(行ウ)第211号)

裁判年月日・裁判所
平成16年3月30日 東京高等裁判所 警察関係
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判決文本文33,807 文字)

主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの控訴人らに対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求めた裁判一控訴人ら主文と同旨の判決を求める。 二被控訴人ら 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 との判決を求める。 第二事案の概要一本件は,控訴人法務大臣から出入国管理及び難民認定法(平成元年法律第79号による改正後のもの。以下「法」という。)49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の各裁決(以下「本件各裁決」という。)を受け,控訴人東京入国管理局主任審査官(以下「控訴人主任審査官」という。)から,退去強制令書の各発付処分(以下「本件各退令発付処分」という。)を受けた被控訴人らが,本件各裁決には,控訴人法務大臣が裁量権の範囲を逸脱し又は濫用して在留特別許可を付与などの違法があり,本件各裁決を前提としてされた本件各退令発付処分も違法であるとして,本件各裁決及び本件各退令発付処分の取消しを求める事案である。 二前提となる事実(証拠を掲記しない事実は,当事者間に争いがない。) 1 当事者被控訴人A(昭和○年○月○日生。以下「被控訴人夫」という。)はイラン・イスラム共和国(以下「イラン」という。)国籍を有する男性であり,被控訴人B(昭和○年○月○日生。以下「被控訴人妻」という。)は同国国籍を有する女性であって,両人は,夫婦である。被控訴人C(昭和○年○月○日生。以下「被控訴人長女」という。)及び被控訴人D(平成○年○月○日生。以下「被控訴人二女」という。)は,いずれも被控訴人夫 籍を有する女性であって,両人は,夫婦である。被控訴人C(昭和○年○月○日生。以下「被控訴人長女」という。)及び被控訴人D(平成○年○月○日生。以下「被控訴人二女」という。)は,いずれも被控訴人夫と同妻の間に生まれた女児であり,同国国籍を有する者である。 2 被控訴人らの入国及び在留の経緯(一) 被控訴人夫は,平成2年5月21日,イランのテヘランからイラン航空機で成田空港に到着し,東京入国管理局(以下「東京入管」という。)成田支局入国審査官に対し,外国人入国記録の渡航目的の欄に「Business」等と,日本滞在予定期間の欄に「9DAYS」と記載して上陸申請を行い,同入国審査官から法(平成元年法律第79号による改正前のもの)4条1項4号に定める在留資格及び在留期間90日の許可を受け,我が国に上陸した。 被控訴人夫は,在留資格の変更又は在留期間の更新の許可申請を行うことなく,在留期限である平成2年8月19日を超えて我が国に不法残留している。 (二) 被控訴人妻及び被控訴人長女は,平成3年4月26日,シンガポールからシンガポール航空機で成田空港に到着し,東京入管成田支局審査官に対し,外国人入国記録の渡航目的の欄に「TOURIST」,日本滞在予定期間の欄に「oneweek」と記載して上陸申請を行い,それぞれ同入国審査官から法別表第1に規定する在留資格「短期滞在」及び在留期間90日の許可を受け,我が国に上陸した。 被控訴人妻及び被控訴人長女は,在留資格の変更又は在留期間の更新の許可申請を行うことなく,在留期限である平成3年7月25日を超えて我が国に不法残留している。 (三) 被控訴人妻及び被控訴人長女は,平成6年1月5日,埼玉県本庄市長に対し,居住地を埼玉県本庄市α- 行うことなく,在留期限である平成3年7月25日を超えて我が国に不法残留している。 (三) 被控訴人妻及び被控訴人長女は,平成6年1月5日,埼玉県本庄市長に対し,居住地を埼玉県本庄市α-3-19として,外国人登録法に基づく新規登録申請を行い,同年1月24日,外国人登録証明書の交付を受けた。 被控訴人夫は,平成7年4月11日に埼玉県本庄市長に対し,居住地を埼玉県本庄市β-15-5として,外国人登録法に基づく新規登録申請を行い,同年5月17日外国人登録証明書の交付を受けた。 (四) 被控訴人二女は,平成8年9月9日,群馬県藤岡市所在のE産婦人科小児科医院において,被控訴人夫及び同妻の間に出生したが,在留資格の取得の申請を行うことなく出生から60日を経過した平成8年11月8日を超えて我が国に在留し,不法残留している。 (五) 被控訴人二女は,平成9年5月22日に群馬県藤岡市長に対し,居住地を群馬県藤岡市γ1253として,外国人登録法に基づく新規登録申請を行い,同日,外国人登録証明書の交付を受けた。 (六) 被控訴人妻は,平成8年10月31日,群馬県藤岡市長に対し,居住地を藤岡市γ1253として,外国人登録法に基づく居住地変更登録をした(乙20)。 (七) 被控訴人夫は,平成11年1月13日及び同年11月17日に,埼玉県本庄市長及び群馬県藤岡市長に対し,居住地をそれぞれ埼玉県本庄市β-16-9及び群馬県藤岡市γ1253として,外国人登録法に基づく居住地変更登録をした。 被控訴人長女は,平成11年11月25日,群馬県藤岡市長に対し,居住地を藤岡市γ1253として,外国人登録法に基づく居住地変更登録をした(乙38)。 3 被控訴人らの退去強制手続の経緯 被控訴人長女は,平成11年11月25日,群馬県藤岡市長に対し,居住地を藤岡市γ1253として,外国人登録法に基づく居住地変更登録をした(乙38)。 3 被控訴人らの退去強制手続の経緯(一) 被控訴人らは,平成11年12月27日,東京入管第2庁舎に出頭し,不法残留事実について申告した。 (二) 被控訴人夫(1) 東京入管入国警備官は,平成12年1月27日被控訴人夫について,違反調査を実施した結果,同被控訴人が法24条4号ロ(不法残留)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして,同年2月22日,控訴人主任審査官から収容令書の発付を受け,同月24日,同令書を執行して,同被控訴人を東京入管収容場に収容し,同被控訴人を法24条4号ロ該当容疑者として東京入管入国審査官に引き渡した。控訴人主任審査官は,同日,同被控訴人に対し,請求に基づき仮放免を許可した。 (2) 東京入管入国審査官は,平成12年2月24日及び同年3月7日被控訴人夫について違反審査をし,その結果,同日,同被控訴人が法24条4号ロに該当する旨の認定をし,同被控訴人にこれを通知したところ,同被控訴人は,同日,東京入管特別審理官による口頭審理を請求した。 (3) 東京入管特別審理官は,平成12年4月24日,被控訴人夫について,口頭審理をし,その結果,同日,入国審査官の前記認定は誤りがない旨判定し,同被控訴人にこれを通知したところ,同被控訴人は,同日,控訴人法務大臣に対し,異議の申出をした。 (4) 控訴人法務大臣は,平成12年6月26日,被控訴人夫からの異議の申出については理由がない旨裁決し,同裁決の通知を受けた控訴人主任審査官は,同月30日,同被控訴人に同裁決を告知するとともに,退去強制令書 訴人法務大臣は,平成12年6月26日,被控訴人夫からの異議の申出については理由がない旨裁決し,同裁決の通知を受けた控訴人主任審査官は,同月30日,同被控訴人に同裁決を告知するとともに,退去強制令書を発付した。 (三) 被控訴人妻(1) 東京入管入国警備官は,平成12年1月27日及び同年2月15日,被控訴人妻について違反調査を実施した結果,同被控訴人が法24条4号ロ(不法残留)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして,同月22日,控訴人主任審査官から収容令書の発付を受け,同月24日,同令書を執行して,同被控訴人を東京入管収容場に収容し,同被控訴人を法24条4号ロ該当容疑者として東京入管入国審査官に引き渡した。控訴人主任審査官は,同日,同被控訴人に対し,請求に基づき仮放免を許可した。 (2) 東京入管入国審査官は,平成12年2月24日及び同年3月15日被控訴人妻について違反審査をし,その結果,同日,同被控訴人が法24条4号ロに該当する旨の認定をし,同被控訴人にこれを通知したところ,同被控訴人は,同日,東京入管特別審理官による口頭審理を請求した。 (3) 東京入管特別審理官は,平成12年4月26日,被控訴人妻について,口頭審理をし,その結果,同日,入国審査官の前記認定は誤りがない旨判定し,同被控訴人にこれを通知したところ,同被控訴人は,同日,控訴人法務大臣に対し,異議の申出をした。 (4) 控訴人法務大臣は,平成12年6月26日,被控訴人妻からの異議の申出については理由がない旨裁決し,同裁決の通知を受けた控訴人主任審査官は,同月30日,同被控訴人に同裁決を告知するとともに,退去強制令書を発付した。 (四) 被控訴人長女及び同二女(1) 東京入管入 決し,同裁決の通知を受けた控訴人主任審査官は,同月30日,同被控訴人に同裁決を告知するとともに,退去強制令書を発付した。 (四) 被控訴人長女及び同二女(1) 東京入管入国警備官は,被控訴人長女及び同二女について違反調査を実施した結果,被控訴人長女が法24条4号ロ(不法残留)に,同二女が法24条7号にそれぞれ該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして,平成12年2月22日,控訴人主任審査官から収容令書の発付を受け,同月24日,同令書を執行して,同被控訴人らを東京入管収容場に収容し,被控訴人長女を法24条4号ロ該当容疑者,被控訴人二女を法24条7号該当容疑者として東京入管入国審査官に引き渡した。控訴人主任審査官は,同日,同被控訴人らに対し,請求に基づき仮放免を許可した。 (2) 東京入管入国審査官は,平成12年2月24日及び同年3月15日被控訴人長女及び同二女について違反審査をし,その結果,同日,被控訴人長女が法24条4号ロに,被控訴人二女が法24条7号にそれぞれ該当する旨の認定をし,同被控訴人らにこれを通知したところ,同被控訴人らは,同日,東京入管特別審理官による口頭審理を請求した。 (3) 東京入管特別審理官は,平成12年4月26日,被控訴人長女及び同二女について,口頭審理をし,その結果,同日,入国審査官の前記認定は誤りがない旨判定し,同被控訴人らにこれを通知したところ,同被控訴人らは,同日,控訴人法務大臣に対し,異議の申出をした。 (4) 控訴人法務大臣は,平成12年6月26日,被控訴人長女及び同二女からの異議の申出については理由がない旨裁決し,同裁決の通知を受けた控訴人主任審査官は,同月30日,同被控訴人らに同裁決を告知するとともに,退去強制令書を発付した。 6日,被控訴人長女及び同二女からの異議の申出については理由がない旨裁決し,同裁決の通知を受けた控訴人主任審査官は,同月30日,同被控訴人らに同裁決を告知するとともに,退去強制令書を発付した。 三争点 1 本件各裁決の適法性について(一) 被控訴人らの主張(1) 在留特別許可を付与しなかった判断の違法性についてア在留特別許可に関する法務大臣の裁量権の範囲日本国憲法は,国会を国権の最高機関と定めていることから,国家の裁量は,第一義的には国会に属するものとして立法裁量に現れることとなる。その立法裁量の結果として,特定の場合には外国人に入国・在留を許可すべく行政庁に義務付けをすることもあり,行政庁に裁量を与えつつ,許可内容に制約を付すこともある。そして,憲法の精神や「法律による行政の原理」からすれば,行政庁に全くの自由裁量が付与されることなどあり得ないのであって,一定の裁量権が与えられたとしても,その根拠となる法律の目的及び趣旨等によって覊束裁量となるのである。この点,法は,「出入国の公平な管理」を目的としており(1条),「出入国の公平な管理」とは,国内の治安や労働市場の安定など公益並びに国際的な公正性,妥当性の実現及び憲法,条約,国際慣習,条理等により認められる外国人の正当な利益の保護を図るための管理を意味する。法50条1項の趣旨も,この公益目的と外国人の正当な権利・利益の調整を図ることにあり,法務大臣の裁量権もこの趣旨の範囲内で認められるにすぎない。 法務大臣の裁量権は,法の目的及び法50条1項の趣旨に覊束されるものであり,法も平成元年の法改正によって各在留資格に関する審査基準を省令で定めて交付し,行政の裁量の幅を減少させようとしている 法務大臣の裁量権は,法の目的及び法50条1項の趣旨に覊束されるものであり,法も平成元年の法改正によって各在留資格に関する審査基準を省令で定めて交付し,行政の裁量の幅を減少させようとしているところであり,在留特別許可の制度に恩恵的な面があるとしても,そこから法務大臣の「極めて広範な裁量権」が導かれるものではない。 イ本件における裁量権の逸脱又は濫用の存在(ア) 帰国した場合の被控訴人らの不利益被控訴人夫は,イランでの生活を維持するのが困難になり,やむなく来日したものであり,イランはいまだ政情も経済状況も不安定(イラン国内の失業率は25%を超えることが確実であるとされる。)であり,同国を10年以上も離れていた被控訴人夫が同国で新たな職を得るのは極めて困難である。また,女性の社会進出が困難である同国において,被控訴人妻が職を得ることは更に困難であって,そうすると,被控訴人ら一家は帰国すれば路頭に迷うこととなる。さらに,日本で十数年生活した被控訴人夫婦が,イランに帰った場合にイランの環境に適応できなくなっている可能性もある。 (イ) 帰国による控訴人長女及び同二女への影響イランは,1979年のイスラム革命以後,イスラム教の聖典であるコーランが最高法規となるなど,イスラム教文化という我が国とはかけ離れた文化をもち,イスラム教国の中でも特に厳格な規律を重んじる国であって,基本的人権の保障においても,強い制約が存在し,特に女性は男性と比較して差別された地位に置かれている。一方,被控訴人二女は出生時より,被控訴人長女も物心付かない2才の時から我が国に居住し続け,日本語を使用し,日本の文化になじんだ人格形成を行い,我が国の憲法 と比較して差別された地位に置かれている。一方,被控訴人二女は出生時より,被控訴人長女も物心付かない2才の時から我が国に居住し続け,日本語を使用し,日本の文化になじんだ人格形成を行い,我が国の憲法で保障された男女平等,平和主義,自由主義に基づく教育を受けているところであり,言語,生活習慣,文化等の点で我が国とあまりにもかけ離れたイランでの生活になじむことが非常に困難であることは明白である。 被控訴人長女は,日本語を用いた学習により,その教育制度に適応してその中で優秀な成績を上げ,さらには高等教育を受けることを望み,その将来においては通訳等の職業に就くことを思い描いているものであり,被控訴人長女がイランに帰国した場合,上記のような困難な事態が生ずるために,被控訴人長女が学習を継続することは不可能であり,そのために被控訴人長女は精神的に危機的状態に置かれ,自殺の危険さえ生じかねない。 (ウ) 長期間平穏かつ公然と在留している事実の評価被控訴人らは,入国後,本件各退令発付処分の原因となった法違反以外には何ら法を犯すことはなく,善良な市民として地域社会にとけ込んだ生活を送ってきたものであり,被控訴人らの我が国における在留資格を認めることによって,日本の善良な風俗・秩序に好影響を与えることこそあれ,悪影響を及ぼすことは想定し難い。すなわち,被控訴人らは形式的には法違反という違法性を帯びた行為を行ってはいるものの,実質的な法益侵害に及んだ事実はなく,自ら入国管理局に出頭して違反事実を申告したものであり,このような者に在留資格を付与すること自体が直ちに在留資格制度の根幹を揺るがすとは考えられない。また,外国人をいわゆる「単純労働」を行う労働力として受け入れる必要性は高く,アメリカ,フランス,イタリアと うな者に在留資格を付与すること自体が直ちに在留資格制度の根幹を揺るがすとは考えられない。また,外国人をいわゆる「単純労働」を行う労働力として受け入れる必要性は高く,アメリカ,フランス,イタリアといった諸外国も非正規滞在者の大規模な正規化を行っているところであり,被控訴人らに在留資格を認めないことによって保護されるべき国の利益は何ら存在しないといえる。 (エ) 被控訴人らの居住の自由の侵害日本国憲法22条1項は,居住・移転の自由(恣意的に住居の選択を妨害されない権利)を定めているところ,外国人であっても日本国にあってその主権に服している者については,居住・移転の自由の保障が及ぶから,在留資格を有しない者も,退去強制の合理性の判断なしに恣意的に住居の選択を妨害されない権利を憲法上保障されているというべきである。ところが,控訴人法務大臣による本件各裁決は,被控訴人らが日本に生活の基盤を有して住居を構えている事実を考慮に入れておらず,居住の自由を侵害する違法なものであり,この点に裁量権の逸脱又は濫用がある。 (オ) 児童の権利に関する条約違反児童の権利に関する条約3条は,「児童に関するすべての措置をとるに当たっては,公的若しくは私的な社会施設,裁判所,行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても,児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定しているところ,日本の自由な社会で人格形成を行い,日本文化を身につけた控訴人長女及び同二女の状況にかんがみれば,控訴人らに在留特別許可を認めなかった本件各裁決は,控訴人長女及び同二女の「最善の利益」を全く考慮しておらず,児童の権利に関する条約3条に違反する。 ( 女の状況にかんがみれば,控訴人らに在留特別許可を認めなかった本件各裁決は,控訴人長女及び同二女の「最善の利益」を全く考慮しておらず,児童の権利に関する条約3条に違反する。 (カ) 公平原則違反被控訴人らに先立ち,平成11年9月11日に在留特別許可を求めて集団出頭した外国人家族の中には,被控訴人らと同様,小学6年に在学中の長女と5才の長男を含むイラン人家族が含まれており,この家族には平成12年2月に法務大臣より在留特別許可がされているところ,家族構成や日本での滞在期間等条件がほぼ同じ被控訴人らについて異なった判断をすることは,公平の原則に反する。 (2) 裁決書の不作成について出入国管理及び難民認定法施行規則(平成13年法務省令第76号による改正前のもの。以下「規則」という。)43条は,「法第49条第3項に規定する法務大臣の裁決は,別記第61号様式による裁決書によって行うものとする。」と定めている。同条は,単に口頭で行われた裁決の存在を確認・記録することを求めているのではなく,裁決が裁決書という書面によってされなくてはならないこと,つまり,裁決が書面による様式行為であることを定めているのである。 とすると,裁決書が作成されていない本件各裁決には極めて重大かつ明白な手続上の瑕疵があり,本件各裁決の取消しは免れない。 (二) 控訴人らの主張(1) 在留特別許可を付与しなかった判断の適法性についてア在留特別許可に関する法務大臣の裁量権の範囲憲法上,外国人は,我が国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん,在留の権利ないし引き続き我が国に在留することを要求する権利 可に関する法務大臣の裁量権の範囲憲法上,外国人は,我が国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん,在留の権利ないし引き続き我が国に在留することを要求する権利を保障されているものでもない。在留特別許可を与えるか否かも外国人の出入国に関する処分であるから,法務大臣の自由裁量にゆだねられているものと解すべきである。法務大臣は,異議の申出に対する裁決に当たって,異議の申出に理由がないと認める場合でも,特別に在留を許可すべき事情があると認めるときは,その者の在留を特別に許可することができるところ(法50条1項3号),このような在留特別許可は,退去強制事由に該当することが明らかで,当然に我が国からの退去を強制されるべき者に対し,特別に在留を認める処分であって,その性質は,恩恵的なものである。そして,在留特別許可の判断をするに当たっては,当該外国人の個人的事情のみならず,その時々の国内の政治・経済・社会等の諸事情,外交政策,当該外国人の本国との外交関係等の諸般の事情を総合的に考慮すべきものであることから,在留特別許可に係る法務大臣の裁量の範囲は極めて広範なものであり,当該裁量権の行使が違法となるのは,法務大臣がその付与された権限の趣旨に明らかに背いて裁量権を行使したものと認め得るような特別の事情がある場合等,極めて例外的な場合に限られる。 イ本件における裁量権の逸脱又は濫用の不存在被控訴人夫,同妻及び同長女は,イランで出生,生育し,来日するまで我が国とは何らのかかわりのなかった者であったが,渡航目的を偽って我が国に上陸し,被控訴人夫及び被控訴人妻は,その後間もなく不法就労を開始しているところ,不法残留に至った経緯は極めて計画的であって,不法就労を行った期間も長く,出 た者であったが,渡航目的を偽って我が国に上陸し,被控訴人夫及び被控訴人妻は,その後間もなく不法就労を開始しているところ,不法残留に至った経緯は極めて計画的であって,不法就労を行った期間も長く,出入国管理行政上看過し難いものがある。被控訴人夫及び同妻の親兄弟は,イラン本国に在住し,本件各裁決当時には,不法就労で得た金銭で本国に自宅まで購入しているのであって,被控訴人らがイランに帰国したとしても本国での生活に支障はない。また,被控訴人長女及び同二女は,未だ可塑性に富む年代にあり,仮に当初は言語や生活習慣の面で多少の困難を感じることがあるとしても(現地での生活を経験することが言語や生活習慣を身につける最善の方法であり,両親の我が国からの退去がやむを得ないものである以上,その年齢にかんがみると,一刻も早い帰国が望まれるというべきである。),両親とともに帰国するのが子の福祉又は最善の利益に適うところであることは明らかであり,他の親族の在住するイランでの生活に慣れ親しむことは十分に可能であると見込まれるのであって,被控訴人らについて,我が国への在留を認めなければならない特別な事情が存在するとは認められない。 確かに,被控訴人らは,我が国に不法に残留する間に一定の安定した生活状態を形成したものといえなくもないが,そもそも不法残留は,処罰の対象となる違法行為であり,被控訴人夫及び同妻が我が国において長期間不法就労活動を行ったという事実は,違法行為が長期間に及んだことを意味するものであるから,控訴人法務大臣が被控訴人らの在留特別許可の可否を判断する上で,当該事実を有利な事情と解しなければならない理由はないのであり,むしろ,長期にわたる不法残留事実や不法就労事実等が在留特別許可の判断において消極的要素として評価されるべきものであ 否を判断する上で,当該事実を有利な事情と解しなければならない理由はないのであり,むしろ,長期にわたる不法残留事実や不法就労事実等が在留特別許可の判断において消極的要素として評価されるべきものである。 以上のような諸事情を考慮すれば,控訴人法務大臣が本件各裁決に当たって付与された権限の趣旨に明らかに背いて裁量権を行使したものと認め得るような特別の事情が存在するとは認められない。 ウ被控訴人らの主張に対する反論(ア) 被控訴人らの出身国であるイランの教育や福祉等に係る状況をみても,児童の生育上特段の問題があると認められず,被控訴人長女及び同二女を送還することが在留特別許可の権限を法務大臣に認めた趣旨に反する非人道的なものであるといった事情は何ら存しないばかりか,被控訴人らは,イランに自宅を購入した時期までは,イランに帰国する意思を有していたが,当時小学校2年生であった被控訴人長女が帰国したがらなかったため,そのまま不法残留を継続するに至ったのであり,帰国を前提とした生活設計をしていたというべきである。 (イ) 国際連合は,平成2年12月18日「すべての移住労働者とその家族構成員の権利保護に関する国際条約」を採択し,その30条は,移住労働者の子が公立学校で教育を受ける権利を有することを定め,そのような権利は,移住労働者である両親又は子の滞在が適法でないことを理由に拒否又は制限されない旨の規定を置いているが,同条約については受け入れ国側の懸念が強く,採択から10年以上経過した平成14年末においても,未だ批准国が20か国に達していないため効力の発生にも至っておらず,しかも,そのような条約でさえ,上記30条のような規定は不法に滞在する子の在留の適法化に関する権利 上経過した平成14年末においても,未だ批准国が20か国に達していないため効力の発生にも至っておらず,しかも,そのような条約でさえ,上記30条のような規定は不法に滞在する子の在留の適法化に関する権利を含むものと解してはならないとしているのであるから(同条約35条),国際的にも不法就労者の子女が流入先の国において教育を受ける利益を得ているとしても,流入先の国がこれを理由に当該不法就労者及びその子女の在留を適法化すべきであるなどという合意がされている状況が存在しないことは明らかである。 (ウ) イスラム社会においても,男性の場合とは異なり,女性の性器切除(女性割礼)をイスラム教徒の義務とする見解はごく少数であり,女性割礼は北東アフリカ,西アフリカ,アラビア半島やマレーシアの一部などに限定された習慣であるとされ,イランの国内情勢に関する英国移民局の報告書は,「児童の虐待について知られた類型はない」とし,女性割礼について何ら触れていないのであるから,イランにおいて女性割礼が法的又は社会的に義務とされている状況があるとは認め難い。 (エ) 被控訴人らと同様,出頭申告当時小学生だった子を有する不法残留外国人の家族について在留特別許可がされた例はあるが,他方,被控訴人らとともに,平成11年12月27日に東京入管に出頭申告した不法残留中のイラン人5家族については被控訴人らを含む4家族が在留特別許可を受けることなく退去強制令書発付処分を受けている。 そもそも,在留特別許可は諸般の事情を総合的に考慮した上で個別的に決定されるべき恩恵的措置であって,その許否を拘束する行政先例ないし一義的,固定的基準なるものは存在しないのであって,類似事例において在留特別許可がされているからといって,直ちに 慮した上で個別的に決定されるべき恩恵的措置であって,その許否を拘束する行政先例ないし一義的,固定的基準なるものは存在しないのであって,類似事例において在留特別許可がされているからといって,直ちに本件各裁決が違法になるとはいえない。また,仮に,本件各裁決が実務に反するものであるとしても,前記アの裁量の本質が実務によって変更されるものではなく,原則として当不当の問題が生ずるにすぎない。 (オ) 不法残留者を中心とする不法就労者が我が国に多数存在するのは事実であるが,それは多数の不法就労者が新たに発生し続けている結果であって,不法就労活動が我が国の社会に容認されているからでもなければ,厳格な取締りが行われていないからでもない。被控訴人らの居住地である群馬県でも不法就労活動が容認されているなどという事実はなく,平成12年の群馬県議会においては「大量の不法滞在者が存在するということは,来日外国人による犯罪の温床となっている。」,「入国管理局との合同取締りということに重点を置いて」いるとして,平成11年には41人を,平成12年には11月末までに366人を摘発して不法滞在者の定着化の阻止と減少を図っていることが報告されており,平成12年に全国で警察に検挙された法違反者は5862人である。群馬県において法違反者の摘発が積極的に行われていないことはない。また,平成12年に退去強制手続を採った不法就労者4万4190人中,群馬県で稼働していたものは1769人,平成13年に退去強制手続を採った不法就労者3万3508人中,群馬県で稼働していた者は1448人となっており,いずれも全国都道府県中8位となっている。さらに,平成14年11月に全国の地方入国管理官署が行った法違反外国人の一斉摘発において摘発された法違反者855名中,群馬県で摘発さ は1448人となっており,いずれも全国都道府県中8位となっている。さらに,平成14年11月に全国の地方入国管理官署が行った法違反外国人の一斉摘発において摘発された法違反者855名中,群馬県で摘発された者は58名であり,これは,大阪,東京,埼玉に次いで全国都道府県中4位という高い順位となっているのであり,中小企業・零細企業を中心に「単純労働者」を望む声が強く,日本政府は厳格な形で外国人労働者による不法就労の取締りを行っていないということはない。 エ以上のとおり,控訴人法務大臣が本件各裁決に当たって付与された権限の趣旨に明らかに背いて裁量権を行使したものと認め得るような特別の事情が存在するとは認められないから,本件各裁決に何らの違法性もない。 (2) 裁決書の不作成について本件各裁決に当たり,裁決書は作成されていないが,このことは,退去強制手続における控訴人法務大臣への異議の申出に対する裁決の効力に影響するものではない。 すなわち,法は,法49条3項の裁決を行うに当たり,文書によって行うべきことを規定しておらず,法49条3項の裁決については,外部への表示は,主任審査官による容疑者の放免(法49条4項)又は主任審査官が容疑者に対して法務大臣が異議の申出は理由がないと裁決した旨を知らせること(法49条5項)によって行われるのであって,裁決はこれにより有効に成立している。規則43条においては,「法第49条3項に規定する法務大臣の裁決は,別記第61号様式による裁決書によって行うものとする。」とされているが,これは法49条3項の裁決に当たっての意思決定における内部的手続を定めたものにすぎず,その不作成は,法49条3項の裁決自体の効力には何らの影響を及ぼすものではない。 行うものとする。」とされているが,これは法49条3項の裁決に当たっての意思決定における内部的手続を定めたものにすぎず,その不作成は,法49条3項の裁決自体の効力には何らの影響を及ぼすものではない。 2 本件各退令発付処分の適法性について(一) 被控訴人らの主張(1) 本件各裁決の違法を承継することによる違法前記のとおり,本件各裁決が違法である以上,これに基づいてされた本件各退令発付処分も違法である。 (2) 本件各退令発付処分固有の違法ア退去強制令書発付処分が裁量行為であること(ア) 法24条の規定法24条は「次の各号のいずれかに該当する外国人については,次章に規定する手続により,本邦からの退去を強制することができる。」と規定し,これらは,単に退去強制事由を列挙したにすぎないと解するのは相当でなく,具体的な担当行政庁の権限行使のあり方をも同時に規定しているととらえるべきである。 そして,同条の文言が「することができる」と規定されていることによれば,裁量の幅がいかなるものかはともかく,24条各号に該当する外国人について,退去強制手続を開始し最終的に退去強制令書を発付するかについては,立法者が行政庁に対して一定の幅の効果裁量を認めたものというほかない。また,本件各退令発付処分のように侵害的行政行為であって,第三者に対する関係でも受益的な側面をもたないものについては,裁量の範囲自体は当該行政行為の目的等に従って自ずと定まるにしても,上記の法律の文言を裁量を示すものと解することに何ら支障がない。 (イ) 行政法の伝統的解釈からの説明行政法の解 的等に従って自ずと定まるにしても,上記の法律の文言を裁量を示すものと解することに何ら支障がない。 (イ) 行政法の伝統的解釈からの説明行政法の解釈においては,伝統的に権力発動要件が充足されている場合行政庁はこれを行使しないことができるとの考え方(行政便宜主義)が一般的であり,特に,外国人の出入国管理を含む警察法の分野においては,一般に行政庁の権限行使の目的は公共の安全と秩序を維持することにあるから,その権限行使はこれを維持するための必要最小限度にとどまるべきであると考えられている(警察比例の原則)ところであり,退去強制令書発付について担当行政庁に裁量が与えられるということは,伝統的な解釈に沿うものである。 (ウ) 退去強制令書発付処分についての裁量の必要性退去強制令書の発付について裁量権を認めないと,本国及び市民権のある国に送還することができず,しかも第三国への入国許可を受けていない外国人など退去強制令書を発付しても執行が不能であることが明らかな場合にも,主任審査官は退去強制令書を発付しなければならないという背理を生ずる。 (エ) 手続の実際法第5章の手続規定を見ると,主任審査官の行う退去強制令書の発付が,当該外国人が退去を強制されるべきことを確定する行政処分として規定されており(法47条4項,48条8項,49条5項),退去強制についての実体規定である法24条の認める裁量は,具体的には,退去強制に関する上記規定を介して主任審査官に与えられているというべきである。 (オ) 他の機関の裁量との関係退去強制の各段階で,統計上「中止処分」や「その他 関する上記規定を介して主任審査官に与えられているというべきである。 (オ) 他の機関の裁量との関係退去強制の各段階で,統計上「中止処分」や「その他」といった分類がされる事案が存在するとおり,退去強制手続が開始されたからといって,必ずしも退去強制令書発付など法の定める終局処分を行わなくてもよい場合があり,違反調査の段階,違反審査の段階,口頭審理の段階,裁決の段階といった退去強制手続の各段階において,それぞれの担当者が裁量権を有していることは明らかである。そして,退去強制手続においては,退去強制の執行方法や送還先の指定を初めて行い,我が国から退去すべき義務を具体的に確定するものと解される点で,一連の手続において法が各行政庁に対して与えた裁量が集約しているものであるということができる。 これらの事情によれば,退去強制手続を進行させるかどうかについては,国家の裁量権があり,その各段階においても担当者に裁量権があることから,その最終段階である退去強制令書の発付の段階でも主任審査官に裁量があることは明らかである。主任審査官には,退去強制令書を発付するか否か(効果裁量),発付するとしてこれをいつ発付するか(時の裁量)につき,裁量が認められており,比例原則に違反してはならないとの規範も与えられているのである。 イ比例原則違反(ア) 比例原則比例原則違反は,法治国家原理,基本権の保障等を根拠とする憲法上の法原則であり,過剰な国家的侵害から私人の法益を防御することにあり,我が国でも,その根拠には諸説あるものの,権力行政一般について適用されることについては異論がないとされている。具体的には,適合性の原則(目的を り,過剰な国家的侵害から私人の法益を防御することにあり,我が国でも,その根拠には諸説あるものの,権力行政一般について適用されることについては異論がないとされている。具体的には,適合性の原則(目的を達成するための手段が意図した目的達成の効果を持ちうること),必要性の原則(目的を達成するための手段が当事者にとって最も負担の少ないものでなければならないこと),狭義の比例性(手段と目的との均衡が取れていること,要するに,当該手段を用いることによって得られる利益が当該手段によって損なわれる利益を上回っていること)等が内容となる。 (イ) 本件における比例原則違反a 本件各退令発付処分により損なわれる利益本件各退令発付処分により,被控訴人らが政情も経済状況も不安定なイランに帰国し極めて困難な生活を強いられること,被控訴人長女及び同二女が物心ついてから慣れ親しんだ我が国の文化とはかけ離れたイランでの生活を行うこととなること等,本件各退令発付処分により損なわれる利益は極めて大きい。 b 本件各退令発付処分により得られる利益前記のとおり,被控訴人らは,入国後,本件各退令発付処分の原因となった法違反以外には何ら法を犯すことはなく,善良な市民として地域社会にとけ込んだ生活を送ってきたものであり,被控訴人らの我が国における在留資格を認めることにより,日本の善良な風俗・秩序に好影響を与えることこそあれ,悪影響を及ぼすことは想定し難く,被控訴人らに在留資格を認めないことによって保護されるべき国の利益は何ら存在しない。 c 小括以上によれば,本件各退令発付処分によって損なわ 被控訴人らに在留資格を認めないことによって保護されるべき国の利益は何ら存在しない。 c 小括以上によれば,本件各退令発付処分によって損なわれる利益と得られる利益とを比較衡量すると,前者の方がはるかに大きいのは明らかであり,本件各退令発付処分には比例原則違反があるといえる。 (二) 控訴人らの主張退去強制手続において,法務大臣から「異議の申出は理由がない」との裁決をした旨の通知を受けた場合,主任審査官は,退去強制令書を発付するにつき裁量の余地はないから,本件各裁決が違法であるといえない以上,本件各退令発付処分も適法である。 在留特別許可の判断をするに当たっては,当該外国人の個人的事情のみならず,その時々の国内の政治・経済・社会等の諸事情,外交政策,当該外国人の本国との外交関係等の諸般の事情を総合的に考慮すべきものであることは前記のとおりであるから,法務大臣から「異議の申出は理由がない」との裁決をした旨の通知を受けた主任審査官は,時機を逸することなく,速やかに退去強制令書発付処分をしなければならず,そうであるからこそ,法49条5項も「すみやかに当該容疑者に対し・・・退去強制令書を発付しなければならない」とするものであって,退去強制令書の発付時期について主任審査官に裁量権があるとはいえない。 法は,法務大臣が在留特別許可の権限を行使するか否かの判断を行う過程においてのみ,退去強制事由に該当する外国人の在留を例外的に認める裁量を認めており,異議の申出を受けた法務大臣が,在留特別許可に関する権限を発動せず,異議の申出に理由がないとの裁決を行った場合には,それは我が国が国家として当該外国人を退去強制すべきとする最終的な意思決定をした り,異議の申出を受けた法務大臣が,在留特別許可に関する権限を発動せず,異議の申出に理由がないとの裁決を行った場合には,それは我が国が国家として当該外国人を退去強制すべきとする最終的な意思決定をしたことを意味するものであって,上級行政機関である法務大臣の意思決定を同大臣の指揮監督を受ける下級行政機関である主任審査官が,その独自の判断に基づいて覆し,あるいはその適用時期を考慮できるとすることは行政組織法上の観点からして考えられず,法がこのような立法政策を採用しているとは考えられない。また,法は,在留資格のない外国人が我が国に適法に在留することは,明文で定められた例外を除いて予定していないところ,主任審査官が裁量により退去強制令書を発付しない場合に,当該外国人が引き続き我が国に在留するための法的地位を定める手続規定は存在しないのであって,法は,主任審査官の裁量により退去強制令書を発付しないという事態を想定していないというべきである。 したがって,主任審査官に退去強制令書を発付するか否かに係る裁量権限がある旨の被控訴人らの主張には理由がないというべきである。 第三当裁判所の判断一本件各裁決の取消しを求める訴えの適否について 1 行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)は,抗告訴訟につき,「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」と規定し(3条1項),その具体的な類型として,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」の取消しを求める訴え(行訴法3条2項),「審査請求,異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の行為」の取消しを求める訴え(行訴法3条3項)等を定めている。 そして,行訴法3条2項にいう「公権力の行使に当たる行為」とは,行政庁がその優越的地位に基づき公権力の発動 裁決,決定その他の行為」の取消しを求める訴え(行訴法3条3項)等を定めている。 そして,行訴法3条2項にいう「公権力の行使に当たる行為」とは,行政庁がその優越的地位に基づき公権力の発動として行う行為であって,国民の権利義務,法律上の地位に直接具体的な影響を与えるものをいい,行訴法3条3項にいう「裁決」とは,行政庁の処分その他公権力の行使に関し相手方その他の利害関係人が提起した審査請求,異議申立てその他の不服申立てに対して,行政庁が義務として審理判定した行為をいうものと解されるところ,この「裁決」には,行政不服審査法で定める審査請求及び再審査請求に対する裁決並びに異議申立てに対する決定のほか,他の法令で定める特別の不服申立てに対する義務的な応答行為も含まれるものというべきである。 2(一) ところで,退去強制手続において入国審査官,特別審理官及び法務大臣がそれぞれ行う認定,判定及び裁決に関する法の規定は,次のとおりである。 (1) 入国審査官は,法44条の規定により容疑者の引渡しを受けたときは,容疑者が法24条各号の一に該当するかどうかをすみやかに審査し(法45条1項),審査の結果,容疑者が法24条各号のいずれかにも該当しないと認定したときは,直ちにその者を放免しなければならず(法47条1項),逆に,法24条各号のいずれかに該当すると認定したときは,すみやかに理由を付した書面をもって,主任審査官及びその者にその旨を知らせなければならない(同条2項)。 (2) 上記通知を受けた容疑者は,上記認定に異議があるときは,通知を受けた日から3日以内に,口頭をもって,特別審理官に対し,口頭審理の請求をすることができ(法48条1項),特別審理官は,口頭審理の結果,同認定が事実に相違すると判定したときは,直ちにその者を 通知を受けた日から3日以内に,口頭をもって,特別審理官に対し,口頭審理の請求をすることができ(法48条1項),特別審理官は,口頭審理の結果,同認定が事実に相違すると判定したときは,直ちにその者を放免しなればならず(同条6項),逆に,同認定に誤りがないと判定したときは,すみやかに主任審査官及び当該容疑者にその旨を知らせるとともに,当該容疑者に対し,法49条の規定により異議を申し出ることができる旨を知らせなければならない(同条7項)。 (3) 上記通知を受けた容疑者は,上記判定に異議があるときは,通知を受けた日から3日以内に,法務省令で定める手続により,不服の事由を記載した書面を主任審査官に提出して,法務大臣に対し異議を申し出ることができ(法48条1項),法務大臣は,その異議の申出を受理したときは,異議の申出が理由があるかどうかを裁決して,その結果を主任審査官に通知しなければならない(同条3項)。 (4) 主任審査官は,法務大臣から異議の申出が理由があると裁決した旨の通知を受けたときは,直ちに当該容疑者を放免しなければならず(同条4項),異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは,すみやかに当該容疑者に対し,その旨を知らせるとともに,法51条の規定による退去強制令書を発付しなければならない(同条5項)。 (二) 上記のとおり,法44条の規定により引渡しを受けた容疑者が法24条各号のいずれかに該当する旨の入国審査官の認定は,私人を名宛人とし,退去強制という強度の侵害作用の要件である退去強制事由を認定するものであり,これを受けた容疑者は,以後,すみやかに退去強制令書を発付され,実力をもって退去を強いられることとなるのであるから,上記認定は,入国審査官がその優越的地位に基づき,公権力の発動として行う のであり,これを受けた容疑者は,以後,すみやかに退去強制令書を発付され,実力をもって退去を強いられることとなるのであるから,上記認定は,入国審査官がその優越的地位に基づき,公権力の発動として行う行為であって,容疑者の法律上の地位に直接具体的な影響を与えるものとして,抗告訴訟の対象となる行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に該当するものというべきである。 また,口頭審理の請求を受けた特別審理官による判定は,入国審査官の認定に対する不服申立てに対して義務として応答するものであるから,行訴法3条3項の「裁決」に当たるものというべきである。 そして,法49条1項の異議の申出を受けた法務大臣による裁決も,特別審理官の判定に対する不服申立てに対して義務として応答するものであるから,やはり,行訴法3条3項の「裁決」に当たるものというべきである。 3(一) もっとも,前記のとおり,法49条3項の法務大臣の裁決の結果は,法49条1項の異議の申出に理由がある場合及び理由がない場合のいずれにおいても,直接当該容疑者に対して通知するのではなく,主任審査官に対して通知すべきものとされており(法49条3項),法務大臣がその名において異議の申出をした当該容疑者に対し直接応答すべきものとはされていない。 しかし,法は,主任審査官は,法務大臣から異議の申出が理由があると裁決した旨の通知を受けたときは,直ちに当該容疑者を放免しなければならず(法49条4項),法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは,すみやかに当該容疑者に対し,その旨を知らせるべきこととしている(同条5項)のであり,これらは,法49条3項の法務大臣の裁決があったことを告知する行為にほかならず,処分権者と通知者とが異なるという ,すみやかに当該容疑者に対し,その旨を知らせるべきこととしている(同条5項)のであり,これらは,法49条3項の法務大臣の裁決があったことを告知する行為にほかならず,処分権者と通知者とが異なるというにすぎないのであって,この点を理由に法49条3項の法務大臣の裁決が行訴法3条3項の裁決に該当しないということはできない。 (二) また,法49条1項は,法48条7項の特別審理官の判定についての法務大臣に対する不服申立てについて,行政不服審査法上の用語である「異議の申立て」を用いずに,「異議の申出」との用語を用いている。 しかし,前記のとおり,行訴法3条3項の「裁決」には,行政不服審査法で定めている審査請求及び再審査請求に対する「裁決」,異議申立てに対する「決定」のほか,他の法令で定める特別の不服申立てに対する応答行為も含まれるのであり,その応答行為が行訴法3条3項の「裁決」に該当するかどうかは,当該不服申立ての名称によって決まるものではなく,行政庁の処分その他公権力の行使に関し,相手方その他の利害関係人が提起した不服申立てに対して,行政庁が義務として審理判定した行為といえるかどうかという性質によって決まるというべきである。 そして,外国人の出入国に関する処分は,行政不服審査法の対象外とされていること(同法4条1項10号)にも照らすと,法49条1項が法48条7項の特別審理官の判定についての法務大臣に対する不服申立てについて,「異議の申出」という用語を用いているからといって,それが行政不服審査法にいう異議申立て,審査請求又は再審査請求と性質を異にするものであり,それに対する応答行為が行訴法3条3項の裁決に当たらないということはできないものというべきである。 (三) なお,法には,在留特別許可に 審査請求又は再審査請求と性質を異にするものであり,それに対する応答行為が行訴法3条3項の裁決に当たらないということはできないものというべきである。 (三) なお,法には,在留特別許可について容疑者の申請権を認める規定は存しない。しかし,在留特別許可は,法49条3項の裁決をするに当たってされるものではあるが,同項の裁決そのものではなく,それとは別個の処分であるから,在留特別許可について申請権が認められていないからといって,法49条1項の異議の申出が行訴法3条3項の「審査請求,異議申立てその他の不服申立て」に当たらないということはできず,したがって,それに対する法務大臣の裁決が同項の裁決に当たらないということはできない。 (四) 本件各裁決について,裁決書が作成されていないことは,当事者間に争いがない。しかし,一般に,裁決書が作成されなければ行訴法3条3項の裁決に当たらないということはできず,このことから,法49条3項の法務大臣の裁決が行訴法3条3項の裁決に当たらないということはできない。 4 以上によれば,法49条3項の法務大臣の裁決は,行訴法3条3項の裁決に当たり,取消訴訟の対象となるというべきである。 二本件各裁決の適法性について 1 在留特別許可を付与しなかった控訴人法務大臣の判断の適否について(一) 法50条1項は,法務大臣は,法49条3項の裁決に当たって,異議の申出が理由がないと認める場合でも,当該容疑者が,永住許可を受けているとき(1号),かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき(2号),その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき(3号)のいずれかに該当するときは,その者の在留を特別に許可することができるものとし,同条3項は,この許可は,法49条4項 き(2号),その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき(3号)のいずれかに該当するときは,その者の在留を特別に許可することができるものとし,同条3項は,この許可は,法49条4項の適用については,異議の申出が理由がある旨の裁決とみなすものとしている。 そして,法49条4項が,主任審査官は,法務大臣から異議の申出が理由があると裁決した旨の通知を受けたときは,直ちに当該容疑者を放免しなければならないとし,同条5項が,主任審査官は,法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは,すみやかに当該容疑者に対し,退去強制令書を発付しなければならないとしていることとの整合性を考慮するならば,法務大臣が法50条1項の規定に基づいて在留特別許可を与える場合には,異議の申出が理由がない旨の裁決はしないものとしているものと解するのが相当である。 したがって,在留特別許可を与えないことが裁量権の逸脱又は濫用により違法であるとされる場合において,法務大臣が異議の申出が理由がない旨の裁決をしたときは,同裁決は,これらの規定に違反して違法となるものというべきであり,そうであるからこそ,当該容疑者は,在留特別許可を付与しなかったことが裁量権の逸脱又は濫用に当たるとして,異議の申出が理由がない旨の法務大臣の裁決の取消しを求めることができるものと解するのが相当である。 (二) 在留特別許可に係る裁量権の逸脱又は濫用の存否について(1) 在留特別許可に関する法務大臣の裁量権について国際慣習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく,特別の条約がない限り,外国人を自国内に受け入れるかどうか,また,これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかは,専ら当該国家の立法政策にゆだ 習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく,特別の条約がない限り,外国人を自国内に受け入れるかどうか,また,これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかは,専ら当該国家の立法政策にゆだねられているところであって,当該国家が自由に決定することができるものとされている。 我が国の憲法上も,外国人に対し,我が国に入国する自由又は在留する権利(ないしは引き続き在留することを要求することができる権利)を保障したり,我が国が入国又は在留を許容すべきことを義務付けたりしている規定は存在しない。 ところで,法50条1項は,法務大臣が法49条1項の異議の申出が理由があるかどうかを裁決するに当たって,当該容疑者について法24条各号に規定する退去強制事由が認められ,異議の申出が理由がないと認める場合においても,当該容疑者が法50条1項各号のいずれかに該当するときは,その者の在留を特別に許可することができるとし,法50条3項は,法49条4項の適用については,在留特別許可をもって異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす旨定めているところである。 本件では,被控訴人らが法50条1項3号に該当するかどうかが問題となるところ,前記のとおり,外国人には我が国における在留を要求する権利が当然にはあるわけではないこと,法50条1項3号は,「特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」と規定するだけであって,法には,同号に該当するものとして在留特別許可を付与すべきかどうかを判断するに当たって,必ず考慮しなければならない事項など上記の判断を羈束するような定めは何ら規定されておらず,このことと,上記の判断の対象となる容疑者は,既に法24条各号に規定する退去強制事由に該当し,本来的には我が国から退去を強制されるべき地位にあること,外国人の出入 ような定めは何ら規定されておらず,このことと,上記の判断の対象となる容疑者は,既に法24条各号に規定する退去強制事由に該当し,本来的には我が国から退去を強制されるべき地位にあること,外国人の出入国管理は,国内の治安と善良の風俗の維持,保険・衛生の確保,労働市場の安定などの国益の保持を目的として行われるものであって,このような国益の保護の判断については,広く情報を収集し,その分析の上に立って,時宜に応じた的確な判断を行うことが必要であり,ときに高度な政治的な判断を要求される場合もあり得ることを併せて勘案すれば,上記在留特別許可をすべきか否かの判断は,法務大臣の極めて広範な裁量にゆだねられているものであって,法務大臣は,我が国の国益を保持し出入国管理の公正を図る観点から,当該外国人の在留状況,特別に在留を求める理由の当否のみならず,国内の政治・経済・社会等の諸事情,国際情勢,外交関係,国際礼譲などの諸般の事情を総合的に勘案してその許否を判断する裁量権を与えられているというべきである。 したがって,これらの点からすれば,在留特別許可を付与するか否かに係る法務大臣の判断が違法となるのは,上記判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど,法務大臣に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した場合に限られるというべきである。 そして,上記のとおり,法務大臣が上記の判断を行うについて特に何らの規準が設けられていないこと及び上記在留特別許可は法24条各号の規定する退去強制事由に該当して本来的には我が国からの退去を強制されるべき地位にある者を対象としてされるものであり,当該容疑者に申請権が認められているものでもないことからすれば,上記裁量の範囲は,在留期間更新の場合と比べて,より広範なもので 国からの退去を強制されるべき地位にある者を対象としてされるものであり,当該容疑者に申請権が認められているものでもないことからすれば,上記裁量の範囲は,在留期間更新の場合と比べて,より広範なものであるというべきである。 (2) 本件における控訴人法務大臣の裁量権の逸脱又は濫用についてそこで,上記の判断の枠組みに従って,本件において,被控訴人らに在留を特別に許可すべき事情が認められないとした控訴人法務大臣の判断が,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであるかどうかについて検討する。 ア帰国した場合の被控訴人らの不利益について被控訴人らは,イランは,政情も経済状況も不安定で,就職が困難な状況にあって,日本で十数年生活した被控訴人夫と同妻がイランにおいて職を得ることは困難であり,イランの環境に適応できない可能性もあるなどと主張する。 しかし,被控訴人夫と同妻は,自らの判断においてイランを出国し,我が国に不法在留して不法就労を行うなどしていたものであって,その結果,仮にイランにおける就職が困難になる等その生活基盤が失われたとしても,それは自己責任の問題であり,我が国に解決を求める筋合いのものではないといわざるを得ない。 しかも,証拠(乙5,11,13,23,24,29,31,被控訴人夫)によれば,被控訴人夫は,イランから我が国に出稼ぎに行って帰国した者から,日本で働けば多額の収入を得られるという噂を聞き,イランで会社を起こす資金などを稼ぐ目的で,我が国に入国したものであり,不法残留期間中の不法就労によって得た収入の中から相当額をイランに在住していた被控訴人妻に送金したほか,平成7年ころまでにテヘランに住む父に約300万円を送金し,平成5年こ 国に入国したものであり,不法残留期間中の不法就労によって得た収入の中から相当額をイランに在住していた被控訴人妻に送金したほか,平成7年ころまでにテヘランに住む父に約300万円を送金し,平成5年ころ,同市内に自宅を購入するなどしたこと(もっとも,証拠(甲19)によれば,被控訴人夫は,本件各裁決に前後する平成12年6月ないし7月ころ,その自宅を第三者に売却したことがうかがわれないではないが,仮にそれが事実であるとしても,証拠(被控訴人夫)によれば,その対価として,イランにおける年収の10年分程度の代金が支払われたことが認められる。),本件各裁決当時被控訴人夫にはイランに両親と6人の兄弟がおり,その実家は,テヘラン市内で雑貨店を経営していること,被控訴人妻にはイランに両親と7人の兄弟姉妹がいること,被控訴人夫の2人の弟及び被控訴人妻の兄弟も被控訴人夫及び同妻とほぼ同時期に我が国に入国し,不法残留して不法就労を行っていたが,その後強制送還され,イランで稼働していることが認められ,これらのことからすれば,被控訴人らがイランに生活基盤を有することは明らかである。 イ帰国による被控訴人長女及び同二女への影響について被控訴人らは,イランは,我が国とはかけ離れた文化を持ち,イスラム教国の中でも特に厳格な規律を重んじる国であって,基本的人権の保障においても,強い制約が存在し,特に女性は男性と比較して差別された地位に置かれているとして,我が国の文化になじんだ人格形成をしてきた控訴人長女と同二女が帰国した場合,その精神状態に深刻な影響を生じる危険性があるなどと主張する。 そして,前記前提となる事実のとおり,被控訴人長女は,2歳時に我が国に入国し,被控訴人二女は,平成8年に我が国で出生したものであ な影響を生じる危険性があるなどと主張する。 そして,前記前提となる事実のとおり,被控訴人長女は,2歳時に我が国に入国し,被控訴人二女は,平成8年に我が国で出生したものであるところ,証拠(甲21,22,44,乙24,29,31,40,41,48,59,65,被控訴人夫)によれば,本件各裁決当時,被控訴人長女は小学6年に在学し,被控訴人二女は保育園に通園しており,日本料理を好んで食べること,被控訴人夫と同妻はペルシャ語で会話しており,被控訴人長女と同二女もペルシャ語を話すことができるが,被控訴人長女と同二女が会話をする場合や同被控訴人らが被控訴人夫又は同妻と会話する場合には,日本語を使用すること,被控訴人長女は,引き続き我が国に在留し,勉学を続けることを強く望んでいること,イランの教育制度は,小学校が5年,中学校が3年,高校が4年,大学が2年から4年となっており,中学校までが義務教育とされていることが認められる。なお,証人Fの証言中には,イランでは,女性の地位が低く,婚姻の条件として女性割礼を強要される旨の証言がある。 しかしながら,被控訴人夫及び同妻は,ともにイランにおいて出生,生育し,イランの生活様式,習慣等に習熟しており,また,被控訴人らの親族がイランに在住しているのであるから,被控訴人長女及び同二女は,イランに帰国しても,これらの者から援助や庇護を与えられることが十分に期待し得るところである。また,本件各裁決当時,被控訴人長女及び同二女はいまだ可塑性に富む年齢であり,同被控訴人らに健康上の問題があることもうかがわれない。そして,イランにおける女性の地位が我が国よりも劣り,我が国の文化になじんだ女性にとって,イランで生活することが精神的苦痛を伴うものであるなどとは,一概に断定し得る筋合 があることもうかがわれない。そして,イランにおける女性の地位が我が国よりも劣り,我が国の文化になじんだ女性にとって,イランで生活することが精神的苦痛を伴うものであるなどとは,一概に断定し得る筋合いではないことなども考慮するならば,被控訴人長女及び同二女がイランの生活,社会,文化等に順応することが著しく困難であるとは認められないというべきである。 もっとも,前記認定の事実によれば,被控訴人長女及び同二女がイランに帰国した場合,同国で教育を受けることにある程度の困難が伴うことは推察に難くない。 しかし,外国で長く生活を送った子女が本国に戻った際に,本国で生活習慣や言語の問題に直面することがあるのは,被控訴人長女及び同二女に限られたものではなく,前記のとおり,本件各裁決当時,同被控訴人らはいまだ可塑性に富む年齢にあること,同被控訴人らは,我が国に滞在中もペルシャ語にある程度接してきており,イランに帰国しても,同国で教育の機会を得ることが可能と考えられることなどに照らすと,同被控訴人らを両親とともにイランに帰国させることが,同被控訴人らの生存や健全な成長を困難にするほど過酷なものであって,社会通念上著しく妥当性を欠くということはできない。 なお,イランでは女性割礼が強要されるとするF証言は,反対趣旨の証拠(乙149)などに照らして容易に信用することができない。 ウ長期間平穏かつ公然に在留したことの評価について被控訴人らは,本件各退令発付処分の原因となった法違反以外には何ら法律に違反したことはなく,長期間平穏かつ公然と在留を継続し,善良な市民として地域社会にとけ込んだ生活を送ってきたものであり,被控訴人らの我が国における在留資 付処分の原因となった法違反以外には何ら法律に違反したことはなく,長期間平穏かつ公然と在留を継続し,善良な市民として地域社会にとけ込んだ生活を送ってきたものであり,被控訴人らの我が国における在留資格を認めないことによって保護されるべき国の利益は何ら存在しないと主張する。 しかし,前記前提となる事実及び証拠(乙5,13,23,24,29,31,被控訴人夫)によれば,被控訴人夫は,日本に不法残留し不法就労してイランに帰国した者から,日本にはたくさん仕事があり,イランの何倍もの収入を得ることができると聞き,平成2年5月21日,当初から就労を目的としながら入国審査官に対して虚偽の申告をして上陸許可を得た上,直後に不法就労を開始して,稼働を続けてきたものであり,被控訴人妻についても,当初から我が国において被控訴人夫と共同生活を営むことを予定しながら,平成3年4月26日,入国審査官に対して虚偽の申告をして上陸許可を得た上,同年8月ころから不法就労を開始していることが認められる。これらの事実に照らせば,被控訴人夫及び同妻が残留期限を超えて我が国に滞在し,不法就労を行ったことは,いずれも計画的な行動であったといわざるを得ない。 そして,我が国が外国人の入国及び在留について,外国人が在留中に従事する活動又は在留中の活動の基礎となる身分若しくは地位に着目して類型化した在留資格を定め,在留資格として定められた活動又は身分若しくは地位を有するものとしての活動を行おうとする場合に限って,その入国及び在留を認める制度を採用しているところ,不法残留者による不法就労は,このような制度の根幹に係わる重大な問題であり,公正な出入国管理の秩序を乱すものというべきであって,被控訴人らに在留特別許可を認めないことによって保護すべき利益が現 ころ,不法残留者による不法就労は,このような制度の根幹に係わる重大な問題であり,公正な出入国管理の秩序を乱すものというべきであって,被控訴人らに在留特別許可を認めないことによって保護すべき利益が現に存することは明らかというべきである。 したがって,仮に,被控訴人らが我が国において本件各退令発付処分の原因となった法違反以外に法律に違反したことがなく,長期間平穏かつ公然と在留してきたものであり,また,退去強制の結果,被控訴人らが我が国において形成してきた生活の基盤が失われるなどの不利益を被るとしても,在留特別許可を付与すべきかどうかの判断において,それらの事情を被控訴人らに有利に考慮すべきであるとはいえず,そのような考慮をしないで,同被控訴人らをイランに帰国させることが,社会通念上著しく妥当性を欠くということはできない。 エ被控訴人らの居住の自由を侵害するとの点について被控訴人らは,控訴人法務大臣による本件各裁決は,被控訴人らが日本に生活の基盤を有している事実を考慮せず,居住の自由を侵害する違法なものであると主張する。 しかしながら,憲法上外国人が我が国に在留を求める権利は保障されていないものと解すべきであるところ,我が国に在留する外国人は,法に基づく外国人在留制度の枠内でのみ,憲法の基本的人権の保障が与えられているにすぎないというべきであって,在留の許否を決定する国家の裁量を拘束するまでの保障が与えられているものと解することはできない(最高裁昭和53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁)。 したがって,被控訴人らが主張する憲法上の居住の自由は,在留制度の枠内でのみ保障されているにすぎないのであるから,本件各裁決が被控訴人ら 法廷判決・民集32巻7号1223頁)。 したがって,被控訴人らが主張する憲法上の居住の自由は,在留制度の枠内でのみ保障されているにすぎないのであるから,本件各裁決が被控訴人らの憲法上の居住の自由を侵害するものであるとする被控訴人らの主張は,理由がない。 オ児童の権利に関する条約に違反するとの点について被控訴人らは,被控訴人らに対して在留特別許可を認めない本件各裁決が,被控訴人長女及び同二女の「最善の利益」を全く考慮しておらず,児童の権利に関する条約3条1に違反し,違法であると主張する。 しかし,前記のとおり,憲法上,外国人が我が国に在留を求める権利は保障されていないものと解すべきであり,外国人の我が国への在留の許否については,国際慣習法上,国家が裁量により決定し得るものとされている。また,児童の権利に関する条約も,9条4において,父母の一方又は双方と児童との分離が,「締約国がとった父母の一方若しくは双方又は児童の抑留,拘禁,追放,退去強制,死亡等のいずれかの措置に基づく場合には,当該締約国は,要請に応じ,父母,児童又は適当な場合には家族の他の構成員に対し,家族のうち不在となっている者の所在に関する重要な情報を提供する。」と規定していることに照らせば,法に基づく退去強制の結果として,児童が父母から分離されることをも予定しており,同条約の規定する児童の「最善の利益」が,在留制度の枠内において図られていることが前提とされているというべきである。 以上の点にかんがみれば,児童の権利に関する条約3条1に規定する「児童の最善の利益」については,在留制度の枠内において主として考慮されるものというべきであって,本件各裁決が被控訴人長女及び同二女の「最善の利 にかんがみれば,児童の権利に関する条約3条1に規定する「児童の最善の利益」については,在留制度の枠内において主として考慮されるものというべきであって,本件各裁決が被控訴人長女及び同二女の「最善の利益」を考慮しないことを理由として違法であるとする被控訴人らの主張は,採用できない。 カ公平原則違反の主張について被控訴人らは,被控訴人らと同様に小学生の子を有する不法残留外国人の家族について在留特別許可がされた例があることを挙げ,本件各裁決は,その例とほとんど変わらない事案について何らの合理的理由もなく在留特別許可を与えなかったものであり,憲法14条に違反すると主張する。 しかし,前記のとおり,在留特別許可を付与するかどうかは,諸般の事情を総合的に考慮した上で個別的に決定されるべきものであり,単に在留特別許可を付与された家族の構成が類似しているとの一事をもって,被控訴人らにこれを付与しないことが公平に反するということはできない。 キ他に,被控訴人らに在留特別許可を付与しなかったことが裁量権の逸脱又は濫用に当たると認めるに足りる証拠はない。 2 裁決書の不作成について(一) 法69条は,法49条3項の法務大臣の裁決を含め,法第2章から第8章までの規定の実施のための手続その他その執行について必要な事項を,法務省令で定めるとしており,規則43条は,法49条3項の裁決を裁決書によって行うものと定めているところ,上記裁決書の記載事項については,規則別記第61号様式により,容疑者の氏名,生年月日等の人定事項,裁決主文,事実の認定,証拠,適用法条,法務大臣の記名押印欄等が定められている。 ところで,法49条3項の法務大臣の裁決は,容疑者から同条1 により,容疑者の氏名,生年月日等の人定事項,裁決主文,事実の認定,証拠,適用法条,法務大臣の記名押印欄等が定められている。 ところで,法49条3項の法務大臣の裁決は,容疑者から同条1項に基づく異議の申出があった場合に,法務大臣がこれに理由があるか否かを判断するものである。そして,前記のとおり,法は,法務大臣が在留特別許可を付与する場合には,異議の申出が理由がない旨の裁決はしないものとしているものと解されるから,異議の申出に理由がない旨の裁決がされたときには,当該容疑者に在留特別許可を付与しないという判断も併せて行われたことになるといえる。しかし,そもそも,この在留特別許可は,「異議の申出が理由がないと認める場合」に行うことができると規定されている(法50条1項)ものであって,異議の申出に理由があるか否かの判断の中に在留特別許可を付与すべきか否かの判断が含まれているものではない。 そして,平成13年法務省令第76号による改正前の規則別記第61号様式においては,法50条1項に規定する在留特別許可に関する事項を記載する欄は設けられていない。 これらのことからすれば,上記の規則改正前において,法49条3項の法務大臣の裁決の判断内容として裁決書に記載すべき事項は,容疑者からの異議の申出に理由があるか否か,すなわち,退去強制事由が存するか否かに関するものであって,在留特別許可を付与すべきか否かに関する事項を上記裁決書に記載することは予定していなかったものと解すべきである。 (二) また,法は,49条3項の法務大臣の裁決について,異議の申出に理由があると裁決したときは,主任審査官が容疑者を直ちに放免することにより(同条4項),また,異議の申出に理由がないと裁決したときは,主任審査官が容疑者に対して 法務大臣の裁決について,異議の申出に理由があると裁決したときは,主任審査官が容疑者を直ちに放免することにより(同条4項),また,異議の申出に理由がないと裁決したときは,主任審査官が容疑者に対して,すみやかにその旨を知らせるとともに,退去強制令書を発付することにより(同条5項),それぞれ,容疑者に告知することとしている一方,法及び規則には,規則43条に規定する裁決に係る裁決書を容疑者に対して交付することを義務付けた規定がないことからすれば,上記裁決書を容疑者に交付することは,法令上,予定されていなかったものというべきである。 そうすると,平成13年法務省令第76号による改正前の規則43条が,「法49条3項に規定する法務大臣の裁決は,別記第61号様式による裁決書によって行うものとする。」としたのは,法49条3項の法務大臣の裁決を書面で行わなければ有効に成立しない要式行為とする旨を定めたものではなく,退去強制手続における外国人の権利保障の観点から,容疑者が退去強制事由に該当するか否かの判断を慎重かつ的確に行わせるとともに,後続する機関への事件の引渡しを確実に行わせることを目的としたものと解すべきである。 (三) 規則43条が裁決書の作成を要することとした趣旨が上記(二)のとおりであることにかんがみれば,法務大臣が法49条3項の裁決を行うに当たり,法令上行うべきものとされた上記裁決書の作成を省略することは,本来許されないというべきであるから,上記裁決書を作成することなく行われた控訴人法務大臣の本件各裁決には,この点において瑕疵があるというべきである。 しかしながら,前記(一)のとおり,規則43条に規定する裁決書に記載される事項が,容疑者による異議の申出の理由があるか否か,すなわち,退去強制事由が存するか否かに関するもの うべきである。 しかしながら,前記(一)のとおり,規則43条に規定する裁決書に記載される事項が,容疑者による異議の申出の理由があるか否か,すなわち,退去強制事由が存するか否かに関するものであることからすれば,上記裁決書は,飽くまでこの点に関する法務大臣の判断が適正に行われることを担保するにとどまるものであるから,本件各裁決に当たり,被控訴人夫,同妻及び同長女に法24条4号,被控訴人二女に同条7号にそれぞれ規定する退去強制事由が存すること自体について被控訴人らが争っていたものとは認められない本件においては,規則43条に規定する裁決書が作成されていないことによって,本件各裁決における控訴人法務大臣の判断の適正の確保の点に影響があったものとは認められない。 そうであるとすれば,本件各裁決について上記裁決書が作成されなかったことをもって,本件各裁決を取り消さなければならないほどの瑕疵が存したとまでいうことはできない。 (四) よって,裁決書が作成されていないことを理由として,本件各裁決を取り消すべきであるとする被控訴人らの主張は,採用することができない。 3 以上のとおりであるから,被控訴人らの控訴人法務大臣に対する本件各裁決の取消請求は,理由がないというべきである。 三本件各退令発付処分の適否について 1 違法性の承継について本件各裁決が違法でないことは,前記のとおりであるから,それが違法であることを前提として,その違法が本件各退令発付処分に承継される旨をいう被控訴人らの主張は,その前提を欠き,失当である。 2 主任審査官の裁量権の存否について(一) 被控訴人らは,法49条1項の異議の申出が理由がないとする法務大臣の裁決がされた場合においても,主任審査官には,退去強制令書を発付するか否 2 主任審査官の裁量権の存否について(一) 被控訴人らは,法49条1項の異議の申出が理由がないとする法務大臣の裁決がされた場合においても,主任審査官には,退去強制令書を発付するか否か(効果裁量),発付するとしてこれをいつ発付するか(時の裁量)につき,裁量が認められており,その裁量権の行使が比例原則に違反してはならないとの規範が存在するとした上,本件各退令発付処分は,比例原則に反して違法であると主張する。 しかしながら,法49条は,主任審査官は,法務大臣から異議の申出が理由があると裁決した旨の通知を受けたときは,直ちに当該容疑者を放免しなければならないとし(法49条4項),法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは,すみやかに当該容疑者に対し,その旨を知らせるとともに,退去強制令書を発付しなければならないとしている(同法5条)のみであり,主任審査官が法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたにもかかわらず退去強制令書を発付しないことを予定した規定を全く用意していない。 これらのことにかんがみるならば,法においては,放免するにせよ,退去強制令書を発付するにせよ,法49条1項の異議の申出を受けた法務大臣の判断にゆだねられているものと解すべきであるから,主任審査官には裁量の余地がないものと解すべきである。 (二)(1) 被控訴人らは,法24条が「本邦からの退去を強制することができる。」と規定していることを根拠として,主任審査官が退去強制令書を発付するかどうかについての裁量権を有すると主張する。 しかし,法24条は,我が国が外国人を退去強制することができる権利ないし権能を有することを確認して宣言した規定であり,併せて,我が国からの退去を強制される外国人 量権を有すると主張する。 しかし,法24条は,我が国が外国人を退去強制することができる権利ないし権能を有することを確認して宣言した規定であり,併せて,我が国からの退去を強制される外国人の類型及び外国人を退去強制する場合には法第5章に定める手続により行うことを明らかにしたにとどまるものであって,特定の行政庁の具体的な権限を規定したものではないから,同条を根拠として,主任審査官が退去強制令書発付について裁量権を有するということはできない。 (2) 被控訴人らは,権力発動要件が具備されている場合にも,行政庁はこれを行使しないことができるとする,いわゆる行政便宜主義からすると,退去強制令書発付についての主任審査官の裁量を認める余地があると主張する。 しかし,行政便宜主義は,行政庁が法令上与えられた権限を行使するかしないかが行政庁の裁量にゆだねられている場合に,行政庁が与えられた権限を行使しないからといって直ちには違法にならないとの原則をいうものにすぎないから,これをもって,行政庁が法令上与えられた権限が行政庁の裁量にゆだねられているかどうかの根拠となし得るものでないことはいうまでもない。 そして,前記のとおり,主任審査官は,法務大臣から異議の申出を理由があると裁決した旨の通知を受けたときは,直ちに,当該容疑者を放免しなければならず(法49条4項),法務大臣から,異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは,すみやかに当該容疑者に対して,退去強制令書を発付しなければならない(同条5項)と規定しているのであるから,退去強制令書発付について,主任審査官に対し行政便宜主義が適用されるものでないことは明らかである。 (3) 被控訴人らは,退去強制の各段階で,統計上「中止処 5項)と規定しているのであるから,退去強制令書発付について,主任審査官に対し行政便宜主義が適用されるものでないことは明らかである。 (3) 被控訴人らは,退去強制の各段階で,統計上「中止処分」や「その他」といった分類がされる事案が存在することを根拠として,退去強制手続が開始されたからといって,必ずしも退去強制令書発付など法の定める終局処分を行わなくてもよい場合があり,退去強制手続の各段階において,それぞれの担当者が裁量権を有していることは明らかであるとの主張をする。 しかし,被控訴人らが指摘する事案が入国審査官において退去強制令書発付についての裁量権を行使したことを示すものであることを認めるに足る証拠はなく,そのような事案の存在を根拠として,主任審査官に裁量があるということはできない。 3 以上のとおり,退去強制令書の発付について主任審査官に裁量権を認める余地はないというべきであるから,その裁量があることを前提として比例原則の違反をいう被控訴人らの主張は,その前提を欠き,理由がない。そして,他に本件各退令発付処分に固有の瑕疵の主張立証がないから,本件各裁決が適法である以上,被控訴人らの控訴人主任審査官に対する本件各退令発付処分の取消請求は理由がないというべきである。 第四結論以上によれば,原判決中,被控訴人らの控訴人法務大臣に対する裁決取消請求を不適法として却下した部分は失当であるから,同部分について,原判決を取り消し,事件を原審に差し戻すべきところ,被控訴人らが本件各裁決の違法事由として主張する控訴人法務大臣が在留特別許可を付与しなかった点の裁量権の逸脱又は濫用の有無については,原審において,当事者双方が十分に主張立証を尽くしており,原判決も,退去強制令書発付処分について主任審査官の裁量権を認め 務大臣が在留特別許可を付与しなかった点の裁量権の逸脱又は濫用の有無については,原審において,当事者双方が十分に主張立証を尽くしており,原判決も,退去強制令書発付処分について主任審査官の裁量権を認めるという誤った前提の下においてではあるものの,控訴人法務大臣が在留特別許可を付与しなかった判断の違法性について実質的に審理判断をしている。そうすると,本件では,本件各裁決の取消請求についての本案の審理が十分に尽くされているということができるから,事件を原審に差し戻すまでもなく,被控訴人らの控訴人法務大臣に対する本件各裁決の取消請求についての判決をすることが許されるものというべきである。 そして,被控訴人らの控訴人法務大臣に対する本件各裁決の取消請求及び控訴人主任審査官に対する本件各退令発付処分の取消請求がいずれも理由がないことは,前記のとおりである。 よって,原判決は失当であり,これを取り消して,被控訴人らの控訴人らに対する請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官村上敬一 裁判官矢尾渉 裁判官岡崎克彦

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