平成22(ワ)5063 特許権移転登録手続請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年11月8日 大阪地方裁判所
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判決文本文12,134 文字)

- 1 -平成23年11月8日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年(ワ)第5063号特許権移転登録手続請求事件口頭弁論終結日平成23年7月14日判決原告株式会社マルミ同訴訟代理人弁護士長添 節被告株式会社転生同訴訟代理人弁護士佐野正幸同畑 良武同堀井昌弘同上田 憲同小池裕樹同隈元暢昭同齋藤友紀同阪口博教同野間あや同蝶野弘治同安田浩章 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」という。)の移転登録手続をせよ。 第2 事案の概要 - 2 -本件は,本件特許権に係る特許を受ける権利(以下「本件特許を受ける権利」という。)を有していた原告が,原告から株式会社日清(以下「日清」という。),日清から被告に出願人名義が変更された結果,本件特許権の権利者として登録された被告に対し,原告から被告に至る出願人名義変更の原因とされた譲渡はいずれも通謀虚偽表示により無効であるから,被告が本件特許権を有することは法律上の原因に基づかず,また,これにより原告は損失を受けたと主張して,不当利得に基づき本件特許権の移転登録を求めた事案である。 1 判断の基 示により無効であるから,被告が本件特許権を有することは法律上の原因に基づかず,また,これにより原告は損失を受けたと主張して,不当利得に基づき本件特許権の移転登録を求めた事案である。 1 判断の基礎となる事実以下の各事実は,当事者間に争いがないか,又は掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる。 (1) 当事者ア原告は,平成4年11月に設立された,食品製造加工機の製作及び販売等を目的とする株式会社である。 イ被告は,平成19年8月6日に設立された,食品製造加工機の製作及び販売等を目的とする株式会社である。 (2) 原告の事業内容及び事実上の倒産ア原告は,創業当初は,大手量販店向けに,わかめ・ひじき・もずくなどの海草類や加工農産物,魚加工品の販売を主たる事業としていたが,平成13年以降,食品リサイクル事業に参入し,瞬時におからを乾燥する装置の販売事業や,豆腐製造過程で発生したおからを引き取った上で当該装置を利用して粉末状に加工して販売する事業などを営むようになった。原告は,これらの事業のため,平成14年7月22日,株式会社エム・テックから,発明の名称を豆腐殻乾燥装置とする特許発明(特許第3182627号。以下「別件特許発明」という。)に係る特許権(以下「別件特許権」という。)を譲り受け,平成17年4月30日,P1から,本件特許を受ける権利を譲り受けた(後記(4)参照)。 - 3 -イその後,原告は,設備投資のための借入金に係る支払利息の負担増などから資金繰りが悪化し,平成19年4月26日に1 回目の手形不渡りを出し,同年5月9日に2回目の手形不渡りを出して銀行取引停止処分を受け,事実上,倒産した。 (3) 被告の設立被告は,平成19年8月6日,原告の食品リサイクル事業 26日に1 回目の手形不渡りを出し,同年5月9日に2回目の手形不渡りを出して銀行取引停止処分を受け,事実上,倒産した。 (3) 被告の設立被告は,平成19年8月6日,原告の食品リサイクル事業を承継する目的で設立された。設立時には,原告の常務取締役であったP2が代表取締役に就任し,原告の代表取締役であるP3は従業員となった。 (4) 本件特許を受ける権利の移転及び特許登録ア P1は,平成10年11月16日,発明の名称を「含水物質の乾燥装置」とする発明について特許出願した(平成10年特許願第342343号。 以下「本件特許出願」という。甲6)。 イ原告は,平成17年4月30日,P1から,上記発明に係る特許を受ける権利(本件特許を受ける権利)を譲り受け,同年6月1日,特許庁長官に対し,原告を出願人とする旨の出願人名義変更届を提出した(甲5)。 ウ原告は,同年11月14日,本件特許出願について審査請求をした(甲16)。 エ日清は,平成19年5月22日,特許庁長官に対し,日清を出願人とする旨の出願人名義変更届を提出した(甲8・1枚目)。 オ特許庁審査官は,同年8月24日付けで,本件特許出願について,「拒絶理由を発見しない」として特許査定をした(甲14)。 カ本件特許出願の出願代理人である弁理士P6(以下「P6弁理士」という。)は,同年9月5日,特許庁長官から上記査定の謄本の送達を受けた(甲23)。 キ被告は,特許査定の後である同年9月14日,特許庁長官に対し,被告を出願人とする旨の出願人名義変更届を提出し(甲13・1枚目), - 4 -同月18日,その権利の承継を証明する文書として同年8月25日付けの譲渡証書等を提出した(甲13・2,3枚目)。 ク同年10月26 願人名義変更届を提出し(甲13・1枚目), - 4 -同月18日,その権利の承継を証明する文書として同年8月25日付けの譲渡証書等を提出した(甲13・2,3枚目)。 ク同年10月26日,本件特許権につき,権利者を被告として設定登録がされた(甲15)。 2 争点原告から被告に至る本件特許を受ける権利の出願名義人変更の原因とされた譲渡は,いずれも通謀虚偽表示により無効であることを理由として,原告は被告に対し,不当利得に基づき,本件特許権の移転登録請求ができるか。 第3 争点に関する当事者の主張【原告の主張】 1 原告が有していた本件特許を受ける権利は,形式上,原告から日清,日清から被告に譲渡されているものの,以下のとおり,原告は,本件特許を受ける権利を日清や被告に真実譲渡したわけではなく,これらの譲渡は,日清や被告の名義を借用するための虚偽表示であった。 (1) 平成19年4月頃,原告が倒産の危機に瀕したことから,原告代表者であるP3は,日清の実質的な経営者であったP4に相談し,P4の指示により,原告の資産(売掛金債権や動産等)を保全するために名義人を変更することとし,これらを日清あるいは株式会社日清精糖(以下「日清精糖」という。)に譲渡する旨の合意書(乙1,2)を作成した。 本件特許を受ける権利の出願名義人が原告から日清に変更されたのもこのような理由によるものであって,真実譲渡されたものではなく,ただ名義を変更したという意味合いしかないものである。 (2) その後,原告は,平成19年8月6日に被告を設立し,被告名義で事業を展開し,被告の収益及びスポンサーからの資金で原告の債権者に対する配当を実施することとした。 原告は,同年9月12日,日清,日清精糖及びP4との間で,日清ある - 立し,被告名義で事業を展開し,被告の収益及びスポンサーからの資金で原告の債権者に対する配当を実施することとした。 原告は,同年9月12日,日清,日清精糖及びP4との間で,日清ある - 5 -いは日清精糖に対する原告の資産(売掛金債権や動産等)の譲渡についての契約を合意解除し,これらの資産を原告に戻す旨の確認書を締結した(甲12)。 このとき,本件特許を受ける権利については,原告の債権者との関係で,原告に戻す必要まではなく,むしろ被告に譲渡することが原告の再建のために便宜であると考えられたことから被告名義に変更されたものである。 なお,日清から被告に譲渡する旨の譲渡証書が作成されているが,P4及び日清の代表取締役であるP5はその作成に関与していない。 (3) 以上のとおり,本件特許を受ける権利は,もともと原告の権利であるところ,原告の日清に対する譲渡は,真実譲渡する旨の合意ではないため虚偽表示により無効であり,また,日清の被告に対する譲渡も,真実譲渡する旨の合意ではないため虚偽表示により無効である。 2 また,原告が本件特許を受ける権利を取得した後,特許取得手続に最後まで関与したP6弁理士は,平成19年5月22日に,原告の依頼で,出願人名義を日清に変更する手続を行った。また,同弁理士は,同年9月5日に特許査定の謄本の送達を受けた際も,原告代表者であるP3に連絡しており,これを受けて,P3は,同月10日に,P6弁理士に,特許権取得に必要な費用を送金するとともに,出願人名義を被告に変更するよう旨依頼しており,P6弁理士は,原告から送金された費用をもって,本件特許を受ける権利について3年分の特許料の納付を行うとともに,出願人名義を被告に変更する手続をとった。 このように,本件特許を受ける権利の名義人を原告から日清, 原告から送金された費用をもって,本件特許を受ける権利について3年分の特許料の納付を行うとともに,出願人名義を被告に変更する手続をとった。 このように,本件特許を受ける権利の名義人を原告から日清,日清から被告にそれぞれ変更する手続は,すべて原告代表者であるP3とP6弁理士との間のやり取りで実行されており,被告はこれに全く関与していない。 このような事情からしても,本件特許を受ける権利の譲渡手続が,すべて原告代表者であるP3の意思に基づいて実行されたものであることは明ら - 6 -かであり,被告は,本件特許を受ける権利を有していない。 3 上記のとおり,本件では,被告は,本件特許を受ける権利を有していなかったにもかからず本件特許権を取得しており,その点に法律上の根拠がないことに加え,本件特許を受ける権利の出願人名義を被告に変更した時点(平成19年9月18日)では,既に特許査定がされていた(同年8月24日)という事情も存する。 これらの事情からすると,本件においても,最高裁判所平成13年6月12日判決(民集55巻4号793頁。以下「最高裁平成13年判決」という。)と同様に,被告の有する特許権者の地位を原告に承継させて,原告を本件特許権の権利者として扱うのが相当であり,そのための方法としては,被告から原告への本件特許権の移転登録を認めるのが最も簡明かつ直接的である。 よって,原告の被告に対する不当利得に基づき本件特許権の移転登録請求権が認められるべきである。 【被告の主張】 1 特許法では,冒認出願をして特許権の設定登録を受けた場合に,本来特許権者となるべきであった者から冒認出願による特許登録を得た者に対する特許権の移転登録を求める権利は当然には認められていない。 最高裁平成13年判決は,真の権利者による特許権移転請求を 合に,本来特許権者となるべきであった者から冒認出願による特許登録を得た者に対する特許権の移転登録を求める権利は当然には認められていない。 最高裁平成13年判決は,真の権利者による特許権移転請求を認めることに理論的な問題点があるといわざるを得ないことを前提としつつも,具体的な事実関係の下で真の権利者の請求を棄却することが不当であると判断したものであって,事例判断であることから,本件にその射程は及ばない。 2 また,本件特許を受ける権利は,原告から日清,日清から被告へと真実譲渡されているのであるから,いずれにしても原告の請求には理由がない。 (1) 本件において,原告は,真実,日清に事業を承継させ,かつ本件特許を受ける権利を含む資産を日清及び日清精糖に譲渡した。 すなわち,P3とP4は,原告の資産保全という意味もあったが,原告 - 7 -が営んでいたおから乾燥事業を日清に承継させることを第一の目的として,日清及び日清精糖に資産を譲渡しており,日清としては,原告が営んでいたおから乾燥事業を一日も中断させることができなかったので,承継して直ちに事業を開始している。P3及びP4は,原告が事業を再開するのは事実上不可能と考え,当分の間,日清で事業を行うつもりであった。 このようなP3及びP4の事業承継及び資産譲渡の合意が虚偽であるはずがなく,原告は,真実,日清に対して事業を承継させ,資産を譲渡したのである。 なお,P3とP4との間では,本件特許を受ける権利の譲渡が無償であると認識されていた可能性はあるが,他の関係者は,事実上の倒産となった原告の代表者P3が日清の顧問となり,顧問料が支払われること,及び日清が原告の従業員を雇い入れることをもって,対価と認識していた。 (2) また,被告は,真実,日清から本件特許を受ける権利を譲り受けた。 代表者P3が日清の顧問となり,顧問料が支払われること,及び日清が原告の従業員を雇い入れることをもって,対価と認識していた。 (2) また,被告は,真実,日清から本件特許を受ける権利を譲り受けた。 すなわち,P7弁護士の指導により,おから乾燥機の製造販売等の事業は日清から,P2らが設立した被告へ承継されることとなった後,実際に,被告では,本件特許権の特許発明を用いた乾燥機を製造販売し,また,P3は被告の従業員として被告の事業に従事していたのであり,被告が本件特許を受ける権利を譲り受けていたことは明らかである。 なお,本件特許を受ける権利の対価については,被告が日清の代表取締役であるP5を雇い入れ,他の従業員に比して高額の給与を支払うことになっており,これがいわば譲渡の対価と認識されていた。 3 以上のとおり,本件特許を受ける権利は,原告から日清,日清から被告に真実譲渡されており,被告が本件特許権を有することは法律上の原因に基づくものであるから,原告の被告に対する不当利得に基づく本件特許権の移転登録請求には理由がない。 第4 当裁判所の判断 - 8 - 1 掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) P3は,原告の1回目の手形不渡りの際,知り合いのP4に対応を相談し,P4の提案を受けて,原告の売掛金債権や動産に対する債権者からの差押えを免れるために,それらの資産をP4が実質的に経営する日清及び日清精糖に移転することとした。 そして,上記資産移転が実態に即したものであることを仮装するため,P3は,平成19年4月24日付けで,原告と日清精糖との間で,同社の原告に対する貸付金が1億2000万円であることを確認し,原告の売掛金合計7857万2835円を1000万円で日清精糖に譲渡し,当 P3は,平成19年4月24日付けで,原告と日清精糖との間で,同社の原告に対する貸付金が1億2000万円であることを確認し,原告の売掛金合計7857万2835円を1000万円で日清精糖に譲渡し,当該譲渡代金と上記貸付金債権とを相殺する旨の合意書を作成し,また,同月25日付けで,原告と日清精糖との間で,原告の動産等を850万円で日清精糖に譲渡し,当該譲渡代金と上記貸付金債権とを相殺する旨の合意書を作成した(乙1,2,証人P4,原告代表者P3)。 (2) P4の提案を受けたP3は,原告の食品リサイクル事業のうち,特におからを引き取って食品会社に販売する事業についても,日清に移転することとし,平成19年4月に,原告名義で,原告の食品部門を日清に営業譲渡した旨記載した「販売体制の変更とお願い」と題する文書を,取引先に送付した(乙4)。 また,日清も,同じく取引口座を日清名義の口座に変更するよう依頼する旨の文書を取引先に送付した(乙5,6)。 (3) 本件特許を受ける権利は,平成19年4月20日付けの原告から日清に譲渡する旨の譲渡証書に基づき,同年5月22日,出願人の名義変更がされた(甲8・2枚目)。また,上記事業に必要な別件特許権についても原告は,同年5月23日,日清に移転登録された(甲4)。 (4) P3は,平成19年6月,原告名義で,原告は同月1日に乾燥機器事業を日清に移管し,以後は,特許等を継承した日清が事業を推進していく - 9 -旨記載した「販売体制の変更のご報告」と題する文書を,取引先に送付した(乙8)。 また,日清も,同月,同様の内容を記載した「事業継承のご挨拶」と題する文書を,取引先に送付した(乙7)。 (5) 日清は,その当時,休眠中の会社であったが,原告から上記営業譲渡を受けた後,自社名義 た,日清も,同月,同様の内容を記載した「事業継承のご挨拶」と題する文書を,取引先に送付した(乙7)。 (5) 日清は,その当時,休眠中の会社であったが,原告から上記営業譲渡を受けた後,自社名義で,別件特許発明を用いた食材乾燥機の仕様確認書(乙12)や食品リサイクル事業のパンフレット(乙11の1・2)を作成しているほか,平成19年5月と7月には,これらの事業に係る提案書(乙13)や見積書(乙14)を取引先宛に提出するなどして,現実に日清名義で事業を営み始めた。 (6) P3は,原告が手形不渡りを出す前後から,P7弁護士にも法律問題を相談した。 P7弁護士は,P3から,日清に事業譲渡して食品リサイクル事業を継続することを聞いていたが,原告の債権者にP4の風評等を聞き,次第に日清への事業譲渡には問題があると考えるようになった。そこで,P7弁護士は,P3に対し,原告の債権者の理解を得るため,原告従業員を主体にした新会社を設立し,新会社が受け皿として事業を継続していく形を採るべきことを提案した。 (7) P3は,上記提案を受けて,常務取締役であったP2に新会社の代表取締役となるように申し向け,平成19年8月6日,P2を代表取締役とする被告が設立された(証人P7,原告代表者P3,被告代表者P2)。 (8) 平成19年8月24日,本件特許出願につき特許査定がされ,同年9月5日には,P6弁理士がその査定の謄本の送達を受け,また同日中に,P3にその旨が伝えられた(甲23)。 (9) P7弁護士は,平成19年9月5日,原告の債権者に対する説明の場において,資産保全のために日清又は日清精糖に移転していた資産を原告 - 10 -に戻した後,被告に営業譲渡し,原告については清算的民事再生をする旨の説明をした(甲19,20,証人P7)。 場において,資産保全のために日清又は日清精糖に移転していた資産を原告 - 10 -に戻した後,被告に営業譲渡し,原告については清算的民事再生をする旨の説明をした(甲19,20,証人P7)。 そして,原告及び日清は,同月,取引先に対し,原告の社員と日清との協議の結果,原告の社員が設立した新会社が事業を継続する旨記載した「販売体制変更とお願い」と題する文書を,取引先に送付した(乙10)。 また,被告も,同月,同様の内容を記載した「新会社設立のご挨拶」と題する文書を,取引先に送付した(乙9)。 (10) 原告,日清,日清精糖及びP4は,平成19年9月12日付けで,同年4月24日付け合意書(原告・日清精糖)に基づく債権譲渡契約及び同月27日付け「動産等の譲渡に関する合意書」(原告・日清)について,いずれも合意解約すること,別件特許権を原告に戻すこと,日清精糖,日清及びP4は,原告の事業を被告が継続することに協力すること等を確認する確認書を作成した(甲12,乙16)。 (11) 他方,本件特許を受ける権利については,平成19年8月24日付けで特許査定がされていたが,同事実をP3から知らされていなかったP7弁護士は,同権利については,債権者との関係では資産価値がないという説明が可能であると考え,P3に対し,本件特許を受ける権利の存在を原告の債権者に公開しなくても問題ないだろうと話していた(証人P7)。 P3は,日清から原告へ資産を戻すよう指導したP7弁護士も本件特許を受ける権利の処理について余り問題にしなかったことから,被告での事業で利用するため本件特許を受ける権利を原告名義に戻さず,日清から被告に移転することとし(原告代表者P3),被告名義で,特許庁長官に対し,特許査定の後である同年9月14日,被告を出願人とする旨の出 業で利用するため本件特許を受ける権利を原告名義に戻さず,日清から被告に移転することとし(原告代表者P3),被告名義で,特許庁長官に対し,特許査定の後である同年9月14日,被告を出願人とする旨の出願人名義変更届を提出し(甲13・1枚目),同月18日,その権利の承継を証明する文書として同年8月25日付けの譲渡証書等を提出した(甲13・2,3枚目)。 なお,上記一連の手続は,いずれも原告代表者のP3が,日清代表者及び - 11 -被告代表者に代わって,P6弁理士に対し,書類作成等を依頼して処理した(甲23)。 (12) 被告は,本件特許権を実施して事業を営み,P3は,法的には被告の従業員との立場で被告の事業に関与していたが,被告設立後1年くらいが経過してから,被告代表者のP2と対立するようになり,結局,平成21年6月 1 日をもって被告を退職した(原告代表者P3,被告代表者P2)。 (13) P3は,以上のような経過の後,被告に対し,原告代表者として,本件特許権は本来原告に帰属すべきものである旨を主張するようになった。 2(1) 原告は,本件特許を受ける権利の原告から日清,日清から被告への各譲渡はいずれも通謀虚偽表示により無効であることから,本件特許を受ける権利は被告に移転しておらず,したがって,被告が本件特許権を有していることは,法律上の原因に基づかないと主張する。 そもそも原告が,本件特許を受ける権利を,真実,第三者に移転していなかったとした場合においても,本件特許が登録された後,被告に対していかなる権利に基づいて移転登録が請求できるかは一個の問題であるが,その点をさておいても,以下に述べるとおり,原告から被告に至る本件特許を受ける権利の移転は,実態を伴ったものであって虚偽ではないから,原告の本件請求は て移転登録が請求できるかは一個の問題であるが,その点をさておいても,以下に述べるとおり,原告から被告に至る本件特許を受ける権利の移転は,実態を伴ったものであって虚偽ではないから,原告の本件請求はその前提において理由がないというべきである。 (2) まず,原告から日清に本件特許を受ける権利の移転がされた経緯についてみるに,本件特許を受ける権利は,原告が行っていた食品リサイクル事業に必要な権利であるところ,食品リサイクル事業については,原告及び日清が,その取引先に対し,原告から日清への事業譲渡の旨を正式に通知し(上記1(4)),そして日清において,実際に,同事業を営み始めていたことが認められる(上記1(5))。 そして,そもそも原告は,その当時,会社として存続していくことが見込まれていなかったことからすると(証人P7,原告代表者P3),上記移転 - 12 -の動機の一つに原告の債権者からの差押えを免れる点があったとしても(上記1(1)),それは原告の資産を隠匿するために日清名義に移転するという虚偽の外観を作出したのではなく,原告の資産を利用して,第三者において別個の事業を始めるため,日清に移転したものと認めるのが相当である。 すなわち,原告代表者であるP3は,原告がしていたと同じ事業を原告以外の第三者において継続していくために,原告の資産をすべて日清に移転させようとしていたのであるから,原告から日清への本件特許を受ける権利を含む資産の譲渡行為は原告代表者であるP3の真意に基づき,実態を伴ってされたものであって,これが虚偽表示であったとは認められない。 (3) また,本件特許を受ける権利が被告に移転された経緯についてみるに,原告は,日清に本件特許を受ける権利を移転した後,新会社を設立して事業を継続させる れが虚偽表示であったとは認められない。 (3) また,本件特許を受ける権利が被告に移転された経緯についてみるに,原告は,日清に本件特許を受ける権利を移転した後,新会社を設立して事業を継続させるため,日清,日清精糖及びP4との間で,日清又は日清精糖に譲渡していた債権や事業資産等を原告に戻す旨の合意をし(上記1(10)),原告,日清及び被告は,その取引先に対し,日清ではなく被告が事業を継続する旨を通知していることが認められる(上記1(9))。しかし,その際,本件特許を受ける権利については,既に特許査定を受けて実質的な価値が生じていたにもかかわらず(上記1(8)),原告代表者であるP3は,新会社(被告)の事業で利用するために,被告を特許権者とするための出願人名義の変更手続をしたものである(上記(11))。 このような経過からすれば,本件特許を受ける権利が被告に移転されたことが,原告代表者であるP3の意思に基づく結果であることは明らかである。 そして,日清は,当時,原告から譲渡を受けた債権や事業資産等(別件特許権も含む。)を原告に戻すことについて合意していたのであるから,本件特許を受ける権利についても,原告代表者であるP3に対し,同人の意思に基づいて処分する権限を委ねていたといえる。そうすると,日清から被告への本件特許を受ける権利の移転は,原告代表者であるP3が,日清から委ね - 13 -られた処分権限に基づいて行ったものと認められる(原告代表者であるP3は,日清から包括的に委ねられた権限に基づき上記移転手続をしているから,P4及び日清の代表取締役であるP5が,日清から被告への譲渡証書の作成に関与していないことは,上記認定の妨げにはなるものではない。)。 その上,本件特許を受ける権利を被告に移転させた後,被告 及び日清の代表取締役であるP5が,日清から被告への譲渡証書の作成に関与していないことは,上記認定の妨げにはなるものではない。)。 その上,本件特許を受ける権利を被告に移転させた後,被告を実質的に設立したP3は,被告においては従業員としての地位を得て,被告において本件特許権を実施した事業を営むことに積極的に協力していたものである(上記1(12))から,原告代表者であるP3自身が,本件特許を受ける権利が被告に移転し,被告が名実ともに権利を有することを前提に行動していたものということもできる。 以上の一連の経緯からすると,本件特許を受ける権利は,原告代表者であるP3が日清から委ねられた処分権限に基づき,日清から被告に移転されたものであり,日清から被告への移転は,原告代表者であるP3の真意に基づき,かつ実態を伴ったものであると認められるのであって,これと異なる原告の主張は採用する余地がない。 3 したがって,本件特許を受ける権利が被告に移転する経緯には紆余曲折はあるものの,いずれも実態を伴ったものであると認められるから,原告から日清,日清から被告への譲渡が虚偽表示であるから無効であることを前提とする,原告の被告に対する不当利得に基づく本件特許権の移転登録請求は理由がないというべきである。 4 なお,原告が主張するとおり,本件特許を受ける権利は,名義上,原告から日清,日清から被告に順次移転されているものの,上記の移転に伴う対価を,原告が現実に得た事実は認められず,また被告は対価についてるる説明するが,この点において,この権利移転が事業者間でされたものとしては,不自然であることは否めない。 - 14 -しかしながら,そもそも原告から日清に移転した経緯は,原告の債権者からの差押えを免れて日清で事業継 の権利移転が事業者間でされたものとしては,不自然であることは否めない。 - 14 -しかしながら,そもそも原告から日清に移転した経緯は,原告の債権者からの差押えを免れて日清で事業継続をしようとしていたものであり,被告に移転した経緯についても,原告に戻すべき資産であることが原告の債権者に客観的に明らかになっていない状況を利用して,同様に被告で事業継続をしようとしてされたものである。いずれにしても,これらの移転を主導した原告代表者であるP3の主眼は,別個の会社を利用して事業を継続することにあった様子がうかがえるのであるから,上記指摘の点があったからといって,その権利移転が原告代表者であるP3の真意に基づかないことを推認させるものとはいえない(なお,法人である原告がした意思表示が虚偽表示であるがゆえに無効であるか否かは,代表者のした意思表示に基づき判断するほかないのであり,本件においては,原告代表者であるP3がした意思表示が原告にとって瑕疵ある意思表示とする理由については,虚偽表示以外の主張はされていない。)。 また原告は,日清や被告に譲渡した後も,原告が依頼したP6弁理士が特許取得のための手続を行っていることや,原告自身が特許料を納付していることなどの点をもって,真実譲渡したものではないとも主張するが,いずれも上記認定した原告代表者のP3の意思に基づいてされたものであって,これらの点も被告に本件特許を受ける権利が移転する経緯が原告の真意に基づかないことを推認させる事情とはいえない。 第5 結論以上のとおり,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官森崎英二 - 15 - 裁判 の請求には理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 主文 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官森崎英二 裁判官達野ゆき 裁判官網田圭亮 別紙 特許権目録 特許番号特許第4029132号発明の名称含水物質の乾燥装置出願日平成10年11月16日登録日平成19年10月26日

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