平成16(わ)247 贈収賄被告

裁判年月日・裁判所
平成16年11月4日 甲府地方裁判所
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判決文本文4,197 文字)

出席検察官佐藤方生同弁護人私選弁護人細田浩〔被告人A〕私選弁護人石川恵(主任),中込博〔被告人B〕私選弁護人田中利彦(主任),山岡通浩〔被告人C〕 主文 被告人Aを懲役2年に,被告人Bを懲役10月に,被告人Cを懲役1年に各処する。 被告人らに対し,この裁判が確定した日から3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 被告人Aから甲府地方検察庁で保管中の1万円札100枚(平成16年領第366号符号25)を没収する。 被告人Aから金120万円を追徴する。 理由 【認定事実】(被告人らの身分関係)被告人Aは,平成3年4月30日から平成16年6月16日までの間,山梨県北巨摩郡a村村長として,所属職員を指揮監督し,同村発注にかかる下水道工事等について,指名業者の選定,入札の執行及び工事請負契約の締結等の職務を統轄掌理していたもの,Dは,土木,建築工事の請負等を業とする有限会社E工務所(平成14年4月1日,E株式会社に組織変更)の代表取締役として同社の業務全般を統轄掌理していたもの,Fは,上記Dの実父,被告人Cは,土木,建築工事の請負等を業とする有限会社Gの代表取締役として同社の業務全般を統轄掌理していたもの,被告人Bは,被告人Cの知人で,被告人Aの義弟である。 (犯罪事実)第1 E関係被告人Aは,前記a村が発注する下水道工事等に関し,指名競争入札における入札参加業者に前記E工務所を指名するなど有利かつ便宜な取り計らいを得たい趣旨のもとに供与されるものであることを知りな 係被告人Aは,前記a村が発注する下水道工事等に関し,指名競争入札における入札参加業者に前記E工務所を指名するなど有利かつ便宜な取り計らいを得たい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら, 1 平成13年8月上旬ころ,同村bc番地被告人A方において,前記Fと情を通じた前記Dから,仕立券付き紳士服地1着分(販売価格20万円)の供与を受け, 2 平成14年4月中旬ころ,前記被告人A方において,前記Fから,現金100万円(1万円札100枚(甲府地方検察庁平成16年領第366号符号25))の供与を受け,もって自己の職務に関して賄賂を収受した。 第2 G関係 1 被告人Aは,平成15年5月中旬ころ,前記被告人A方において,被告人Cの意を受けた被告人Bから,前記a村が発注する下水道工事等に関し,指名競争入札における入札参加業者に前記Gを指名するなど有利かつ便宜な取り計らいを得たい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら,妻のHを介して現金100万円の供与を受け,もって自己の職務に関して賄賂を収受した。 2 被告人C,被告人Bは,共謀の上,第2の1記載の日時場所において,被告人Aに対し,同記載の趣旨のもとに,同被告人の妻のHを介して現金100万円を供与し,もって同被告人の職務に関して賄賂を供与した。 【法令の適用】 1 被告人Aについて被告人Aの判示第1の1・2及び判示第2の1の各所為は,いずれも,平成15年法律第138号(仲裁法)附則14条により同法による改正前の刑法197条1項前段に該当するところ,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第1の2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役2年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定 条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第1の2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役2年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し,甲府地方検察庁で保管中の1万円札100枚(平成16年領第366号符号25)は,同被告人が判示第1の2の犯行により収受した賄賂であるから,同法197条の5前段によりこれを同被告人から没収し,判示第1の1及び判示第2の1の各犯行により同被告人が収受した賄賂はいずれも没収することができないので,同法197条の5後段によりその価額合計金120万円を同被告人から追徴することとする。 2 被告人Bについて被告人Bの判示第2の2の所為は,刑法60条,198条(前記改正前の刑法197条1項前段)に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で同被告人を懲役10月に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとする。 3 被告人Cについて被告人Cの判示第2の2の所為は,刑法60条,198条(前記改正前の刑法197条1項前段)に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で同被告人を懲役1年に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとする。 【量刑の理由】 1 本件は,a村が発注する下水道工事等をめぐり,指名競争入札における入札参加業者に贈賄者側企業を指名するなど有利かつ便宜な取り計らいを得たいという趣旨で,同村村長であった被告人Aが,前後3回にわたり,現金合計200万円及び仕立券付き紳士服地1着分(販売価格20万円)を賄賂として収受したという収賄の事案(判示 つ便宜な取り計らいを得たいという趣旨で,同村村長であった被告人Aが,前後3回にわたり,現金合計200万円及び仕立券付き紳士服地1着分(販売価格20万円)を賄賂として収受したという収賄の事案(判示第1の1・2及び判示第2の1)と,前記賄賂のうち,有限会社Gの代表者であった被告人Cが,その友人であり被告人Aの親族である被告人Bと共謀して,前同様の趣旨で,1回に現金100万円を供与したという贈賄の事案(判示第2の2)とからなる事件である。 被告人らの行為は,a村の公共工事の受注における,公正かつ自由な競争,業者の適格性及び工事執行能力等の確保という行政目的を阻害しかねないものであり,村政を担う村長の職務の廉潔性とその職務に対する村民の信頼を著しく裏切ったものというほかない。地域社会に与えた衝撃も軽視できない。 したがって,被告人らの刑事責任は重いものである。 2 被告人Aについては,a村村長という要職にありながら,自らを厳しく律しなければならない公務員の立場を忘れて,安易に本件各賄賂を収受したものであり,収賄に対する規範意識が鈍磨していたとの非難を免れない。しかも,異なる2社の業者から3回にわたり賄賂を収受しているところ,1回につき100万円ずつの合計200万円もの多額の現金と,販売価格20万円の仕立券付き紳士服地という高価な品物を受け取っており,犯行態様も悪質といわざるを得ない。 他方,被告人A自らが賄賂を積極的に要求したことはなく,収受はいずれも受動的なものであったこと,収受した賄賂のうち100万円は費消せずにそのまま保管していたこと,本件を契機に村長の職を辞し,また本件を広く報道されたこと等によりそれなりの社会的制裁を受けていること,本件で逮捕,勾留され,真摯に反省しており,その親族も今後の監督を誓約していること,これ たこと,本件を契機に村長の職を辞し,また本件を広く報道されたこと等によりそれなりの社会的制裁を受けていること,本件で逮捕,勾留され,真摯に反省しており,その親族も今後の監督を誓約していること,これまでに禁錮以上の刑に処せられたことがないこと,その他被告人Aの年齢など,被告人Aにとって酌むべき事情も認められる。 3 被告人Cについては,公共事業が業務の主体であるという背景事情があるにせよ,村長に賄賂を贈ってまで自らが役員をしている会社の利益を実現しようとしたものであり,利欲的かつ自己中心的との非難を免れず,酌量の余地はない。しかも,被告人Aの親族である被告人Bを利用するなど本件犯行に他人を積極的に巻き込んでいるほか,1回に100万円もの多額の金額を供与しており,犯行態様も悪質である。 他方,本件を契機に,会社が指名停止処分を受け,また本件を広く報道されたこと等によりそれなりの社会的制裁を受けていること,本件で逮捕,勾留され,真摯に反省し,会社役員を辞任して,二度とこのようなことがないように後継者に会社を託していること,これまでに禁錮以上の刑に処せられたことがないこと,その他被告人Cの年齢など,被告人Cにとって酌むべき事情も認められる。 4 被告人Bについては,悪いことと知りながら被告人Cの申し出を承諾して,被告人A宅に賄賂を届けている上,最終的にはその報酬として20万円を受け取り,全額遊興費等に費消してしまっており,犯情は芳しくない。 他方,本件贈賄を主導したのは被告人Cであり,被告人Bは,被告人Cとの人間関係の中で同被告人の頼みを断り切れずに,本件贈賄に関与してしまったものであること,報酬として20万円を受領しているが,これは被告人Bが積極的に欲したものではなく,同被告人にとって,本件犯行は利欲的動機に基づく犯行で 断り切れずに,本件贈賄に関与してしまったものであること,報酬として20万円を受領しているが,これは被告人Bが積極的に欲したものではなく,同被告人にとって,本件犯行は利欲的動機に基づく犯行ではないこと, 被告人Bは,報酬として20万円を受け取り遊興費等に費消してしまったことの罪滅ぼしとして同一金額を贖罪寄付していること,本件を広く報道されたこと等によりそれなりの社会的制裁を受けていること,本件で逮捕,勾留され,真摯に反省しており,その息子も今後の監督を誓約していること,これまでに前科前歴がないこと,その他被告人Bの年齢や健康状態など,被告人Bにとって酌むべき事情も認められる。 5 そこで,当裁判所は,これらの被告人らにとって有利,不利な一切の事情を考慮し,いずれの被告人に対しても,社会内で更生する機会を与えるのを相当と認めて,主文のとおりの刑を量定した次第である。 (求刑懲役2年,没収,追徴〔被告人A〕,懲役10月〔被告人B〕,懲役1年〔被告人C〕)平成16年11月4日甲府地方裁判所刑事部裁判長裁判官川島利夫裁判官柴田誠裁判官肥田薫

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