昭和49(ワ)1275等 日本アルミ建材工業出勤停止

裁判年月日・裁判所
昭和58年2月15日 横浜地方裁判所
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【DRY-RUN】主   文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。        事   実 第一 当事者の求める裁判 一 請求の趣旨 (甲事件) 1 被告が原告Aに対してした昭和四九年七月

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主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 第一当事者の求める裁判一請求の趣旨(甲事件) 1 被告が原告Aに対してした昭和四九年七月一二日付三日間の出勤停止処分は無効であることを確認する。 2 被告が原告Bに対してした昭和四九年七月一二日付一日間の出勤停止処分は無効であることを確認する。 3 被告は原告Aに対し一万二二三五円、原告Bに対し四二一六円及びそれぞれ右各金員に対する昭和四九年八月二六日から右各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 5 第3項につき仮執行の宣言(乙事件) 1 被告が原告Aに対してした昭和五〇年八月二五日付三日間の出勤停止処分は無効であることを確認する。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 二請求の趣旨に対する答弁(甲事件、乙事件)主文と同旨第二当事者の主張一請求の原因 1 被告は肩書地に本店、工場を有し、資本金二億円、従業員数約六五〇名で、主としてアルミニウム建材等の製作、販売を業とする会社である。 原告両名はいずれも被告の従業員であり、原告Aは昭和三六年被告に雇用されて現在計画部外注課に所属し、原告Bは昭和四一年被告に雇用されて現在建材製品課に所属している。 2(一) 被告は昭和四九年七月一二日付で原告Aに対し出勤停止三日の懲戒処分をしたと主張し、同月一五日から同月一七日までの間(ただし、同月一七日のうち四時間四五分間を除く。)原告Aの就労を拒絶したが、その間労働していれば原告Aが得られたはずの賃金額は一万二二三五円であり、その支払期日は同年八月二五日である。 (二) 被告は昭和四九年七月一二日付で原告Bに対し出勤停止一日の懲戒処分をしたと主張し、同月一五日原告Bの就労を拒絶したが、その日に原告Bが 二二三五円であり、その支払期日は同年八月二五日である。 (二) 被告は昭和四九年七月一二日付で原告Bに対し出勤停止一日の懲戒処分をしたと主張し、同月一五日原告Bの就労を拒絶したが、その日に原告Bが労働していれば得られたはずの賃金額は四二一六円であり、その支払期日は同年八月二五日である。 (三) 被告は昭和五〇年八月二五日付で原告Aに対し出勤停止三日の懲戒処分をしたと主張している。 よつて、原告Aは、昭和四九年七月一二日付三日の出勤停止処分、昭和五〇年八月二五日付三日の出勤停止処分の各無効確認を求めるとともに、民法五三六条二項に基づき賃金一万二二三五円及びこれに対する支払期日の翌日である昭和四九年八月二六日から右支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求め、原告Bは、昭和四九年七月一二日付一日の出勤停止処分の無効確認を求めるとともに、民法五三六条二項に基づき賃金四二一六円及びこれに対する支払期日の翌日である昭和四九年八月二六日から右支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 二請求の原因に対する認否 1 請求の原因1の事実は認める。 2 同2の(一)ないし(三)のうち、原告両名主張のとおり被告が各懲戒処分をしたと主張していることは認め、その余は争う。ただし、計算の基礎となつた原告両名の各賃金額は争わない。 三抗弁 1 原告両名はいずれも日本アルミ労働組合(以下「組合」という。)の組合員であり、組合伊勢原支部(以下「支部」という。)に所属している。 2 被告と組合との間の労働協約(以下「本件労働協約」という。)一八条は、「 会社は組合員の政治的活動並びに公職就任の自由を認める。但し組合員は労働時間中及び社内においては一切の政治的活動を行わない。」と規定し、同条覚書は「1 本条にいう「政治的 という。)一八条は、「 会社は組合員の政治的活動並びに公職就任の自由を認める。但し組合員は労働時間中及び社内においては一切の政治的活動を行わない。」と規定し、同条覚書は「1 本条にいう「政治的活動並びに公職就任の自由を認める」とは、政治的活動並びに公職就任について不利益な取扱いをしないことを意味する。但し社内における政治的活動に関しては、組合はその都度会社に事前に了解を求め、会社は差支えない場合これを認める。 2 前項の政治的活動とは、選挙運動及び政党その他の政治団体の名に於て行う宣伝、入党勧誘、基金寄附金物品等の募集、集会、掲示及び各種印刷物の配布等の活動をいう。」と規定する。 また被告の就業規則(以下「本件就業規則」という。)八五条は「 次の各号の一に該当するときは懲戒解職する。ただし情状によつて出勤停止、減給降格に止めることがある。 5 業務上の命令に理由なく従わず、職場の秩序を乱したとき 9 数回訓戒または懲戒を受けたにも拘らず、なお改悛の見込みがないとき 11 事業場の風紀または規律を乱したとき」と規定する。 3(一) 原告両名は昭和四九年六月一二日の昼の休憩時間中である午後零時五分ころから同四〇分すぎまでの約三五分間以上にわたり、被告構内において、①日本共産党神奈川県北部地区委員会宣伝部発行の赤旗読者ニユース第三七号、②「赤旗」「日本共産党」などを引用した「選挙期間中でも自由にできる政治活動」「選挙期間中だれにでもできる選挙運動」と題した印刷物、③革新共同発行の「Cの十五の公約」と題した印刷物の三種類のビラ(以下「赤旗選挙ビラ」という。)をそのとき行われていた支部職場委員選挙の選挙立会人、選挙管理委員その他の被告従業員に、「C氏をよろしく。」「こういう事だから頼むよ。」「お願いします。」などといつて相当多数配布し、かつ という。)をそのとき行われていた支部職場委員選挙の選挙立会人、選挙管理委員その他の被告従業員に、「C氏をよろしく。」「こういう事だから頼むよ。」「お願いします。」などといつて相当多数配布し、かつ一部従業員についてはその受取りを拒否したにもかかわらず無理矢理配布した。 (二) 原告両名の赤旗選挙ビラ配布によりそのビラ配布態様や内容を見た被告従業員らは組合事務所で組合の支持政党と異なる日本共産党のビラ配布の当否、本件労働協約に違反するビラ配布によつて爾後の参議院議員選挙活動などで社内が混乱する虞れなどについて騒ぎ出し、その騒ぎは被告の全従業員のほとんどに及んだだけでなく、一部の職場では午後の作業開始の時間にもかかわらず赤旗選挙ビラを読んで作業に取りかかろうとしなかつたなど、同日午後零時四五分からの就業に著しい障害を及ぼした。 (三) 原告両名は同年六月一八日の被告の事情聴取に対し、ビラ配布の事実及びそれが本件労働協約一八条に違反することを認めたので、被告は原告両名に対し同月二二日午前中までに始末書を提出するよう業務命令を出し、当日である同月二二日にも重ねて同内容の業務命令を出したが、原告両名はこれに応じなかつた。 (四) 原告らはその後連日のように被告の門前で被告や組合に抗議するビラを配布するようになり、ますます従業員の心理に動揺を与え、従業員間の政治的対立を深めただけでなく、同月二六日被告に内容証明郵便を送付して右事情聴取を非難し、それがすやま後援会に対する不当なスパイ行為であるとか、始末書の提出を求めるのは表現の自由、結社の自由を侵害するものであるなどと主張して被告に対し反抗的態度をとり続けた。 (五) よつて、被告は原告両名の右各行為につき、それが本件就業規則八五条五号、一一号に該当するとして同年七月一二日付で原告Aに対し三日の出勤停 あるなどと主張して被告に対し反抗的態度をとり続けた。 (五) よつて、被告は原告両名の右各行為につき、それが本件就業規則八五条五号、一一号に該当するとして同年七月一二日付で原告Aに対し三日の出勤停止、原告Bに対し一日の出勤停止とする懲戒処分をした。 4(一) 被告は前項のとおり昭和四九年七月一二日付で原告Aに対し出勤停止三日の懲戒処分をしたことがある。 (二) 原告Aは昭和五〇年四月一〇日ころ被告構内において被告従業員に対し神奈川県知事選挙候補者であるDを紹介したビラ(以下「Dビラ」という。)を配布した。 (三) 原告Aは同月二六日の就業時間中である午前九時ころ職務のため被告住宅建材製造課部品管理の職場に赴いた際、翌二七日が投票日である伊勢原市議会議員選挙に立候補しているEを当選させる目的でその投票依頼のため、同課作業員Fを介し「E」の氏名を記入したメモ(以下「Eメモ」という。)を被告の従業員であるGに交付した。 (四) Eメモの交付を受けたGは、これを見て大変なものをもらつたと言つて上司である工場長Hに見せ、同人も勤務中に選挙運動が行われているのは大変なことであるとしてEメモを上司の作業長Iに見せ、その処理について相談するなどした。 (五) 原告Aは同年五月二二日の被告の事情聴取に対し、Dビラ配布及びEメモ交付の各事実を認めたので、被告は原告Aに対し同月二六日までに始末書を提出するよう業務命令を出したが、原告Aはこれに応じなかつた。 (六) よつて被告は原告Aの右各行為につき、それが本件就業規則八五条五号、九号、一一号に該当するとして同年八月二五日付で原告Aに対し三日の出勤停止とする懲戒処分をした。 四抗弁に対する認否 1 抗弁1の事実は認める。 2 同2の事実は認める。 3 同3の(一)のうち、原告両名が昭和四九年六月一二日の昼の休憩 五日付で原告Aに対し三日の出勤停止とする懲戒処分をした。 四抗弁に対する認否 1 抗弁1の事実は認める。 2 同2の事実は認める。 3 同3の(一)のうち、原告両名が昭和四九年六月一二日の昼の休憩時間中に被告構内において被告主張の②③のビラをそのとき行われていた支部職場委員選挙の選挙立会人、選挙管理委員その他の被告従業員に配布したことは認め、配布した時間、原告両名が被告主張の①のビラを配布したこと、「C氏をよろしく。」といつて相当多数配布し、かつ一部従業員についてはその受取りを拒否したにもかかわらず無理矢理配布したことは否認する。同3の(二)の事実は否認する。同3の(三)のうち、原告両名が被告主張の事情聴取に対しビラ配布の事実を認めたこと、原告両名が始末書を提出しなかつたことは認め、その余の事実は否認する。同3の(四)のうち内容証明郵便で被告に抗議した事実は認め、その余の事実は否認する。同3の(五)の事実は認める。 4 同4の(一)の事実は認める。ただし、被告主張の懲戒処分は横浜地方裁判所昭和四九年(ヨ)第六五三号地位保全仮処分申請事件の仮処分決定によりその効力が停止されている。同4の(二)、(三)の事実は認める。同4の(四)の事実は知らない。同4の(五)、(六)の事実は認める。 五原告らの反論 1 憲法二一条は集会、結社の自由を保障し、国民が政治活動の自由を有することを認めているが、憲法の定める自由権的基本権に対する私人間の侵害行為は民法九〇条にいう公序良俗に反するものとして私法上の効力を否定されると解すべきである。そして、政治活動の自由に対する制限については、明白かつ現在の危険に準じた根拠が要求され、仮にそうでないとしても極めて慎重でなければならないから、労働時間中及び社内での政治的活動の一般的禁止を定める本件労働協約一八条は公 対する制限については、明白かつ現在の危険に準じた根拠が要求され、仮にそうでないとしても極めて慎重でなければならないから、労働時間中及び社内での政治的活動の一般的禁止を定める本件労働協約一八条は公序に反するものであつて無効である。 2 労働基準法三四条三項は休憩時間自由利用の原則を定めるが、この規定は使用者が休憩時間中労働者に対して作為を命じてはならないだけでなく、原則として労働者の行為を制限する不作為の命令をもなし得ないという趣旨の規定と解すべきであり、また、使用者の施設管理権を根拠とする労働者の休憩時間自由利用に対する制限、禁止は、物的施設そのものの維持管理に最低限必要なものに限られるべきであるから、休憩時間中のビラ配布行為を一律に政治的活動にあたるとして禁止する本件労働協約一八条は労働基準法三四条三項に違反し、その限度で無効である。 3 労働者は企業秩序、職場規律に服する義務を負うが、この義務は企業の目的から合理的にみて必要な範囲に限られるべきであるから、本件労働協約一八条によつて禁止される政治的活動も具体的に経営秩序紊乱等の結果を生じさせる行為に限定されるべきであり、本件各処分の対象となつた原告両名の各行為はいずれもこれに該当しない。 4 本件各処分は、原告両名が共産党支持者であるというその思想、信条を理由としてされたものであるから、憲法一四条、労働基準法三条に違反するものであつて、無効である。 5 以下の諸事情によれば、本件各処分は被告の懲戒権の濫用によるものであつて許されるべきでない。 (一) 本件各処分の対象となつた原告両名の各行為によつて被告の施設管理権や労務指揮権が妨げられたことはなく、被告の生産が妨げられたり、生産体制、生産能率に支障をきたしたこともなく、被告の職場秩序に具体的な混乱を生じさせたこともないのであるから、 よつて被告の施設管理権や労務指揮権が妨げられたことはなく、被告の生産が妨げられたり、生産体制、生産能率に支障をきたしたこともなく、被告の職場秩序に具体的な混乱を生じさせたこともないのであるから、被告には実害が全く生じていない。 (二) それに対して、原告両名が本件各処分によつて受ける不利益は賃金という経済的なものにとどまらず、国民が等しく享受し得べき政治活動の自由を奪われたことになるのであるから極めて重大である。 (三) 従前の会社内における政治活動についてみると、被告は組合が行う政治活動、特に組合が推薦を機関決定した候補者についてのビラ、経歴書、後援会ニユース等の配布や投票依頼等の選挙活動は被告への届出なしに、休憩時間中であるか否かを問わず許してきており、これらの行為について、被告はこれまで本件労働協約一八条の存在にもかかわらず、注意をする程度で、懲戒処分を問題にすることなど全くなつた。 また、従前、原告両名は昼の休憩時間中に、原告両名が参加している「日本アルミ労働者後援会」の会員(当時職場には約七〇人いた。)に「赤旗」を配布したり選挙運動を公然と行つたりしていたが、被告からも組合からもこれをとがめられることはなかつた。 (四) 原告AのDビラ配布行為について、当時神奈川県知事選挙において組合もDを推薦していたのであり、原告Aが配布したDビラも組合から渡されたものであり、組合執行部も同じビラを配布していたのであるから、原告Aの行為のみを捉えて懲戒処分の対象にするのは不当である。 (五) 原告AのEメモ交付行為について、被告においては、就業時間中であつても、会社の運動会の準備、兎や鶏の飼育、麻雀やゴルフの打合せなど被告の生産体制、生産能率に支障をきたさない程度の私用は黙認されており、原告AのEメモ交付行為もそれ自体を外形的にみると通常 中であつても、会社の運動会の準備、兎や鶏の飼育、麻雀やゴルフの打合せなど被告の生産体制、生産能率に支障をきたさない程度の私用は黙認されており、原告AのEメモ交付行為もそれ自体を外形的にみると通常の黙認されている私用と異ならないから、これのみを懲戒処分の対象にするのは不当である。 六原告らの反論に対する認否 1 原告らの反論1の主張は争う。 2 同2の主張は争う。 3 同3の主張は争う。 4 同4は否認し又は争う。 5 同5の第一文の主張は争う。同5の(一)の事実は否認する。原告両名の赤旗選挙ビラ配布行為により前記三の3の(二)のとおりの混乱が生じただけでなく、当時、支部執行委員選挙の選挙規則をめぐつて原告両名を含むグループ支部執行部との間にあつた対立が熾烈化し、原告両名を支持するグループはその後連日のように被告や支部を非難するビラを被告の門前で配布して従業員の心を動揺させ、また、赤旗選挙ビラ配布のため、支部は原告両名の役職解任のための支部臨時大会を開くまでに至り、その関係で勤務時間内の組合活動が多くなつて被告の生産販売活動に支障をきたし、さらに、被告が昭和四九年六月一八日原告両名に対してした事情聴取後も、原告両名は右事情聴取自体を非難して被告に対し反抗的態度をとり続け、外部の政治勢力からも抗議がきて被告従業員に動揺を与えた。また、原告AのEメモ交付行為により、前記三の4の(四)のとおり、一時的ではあつてもF、G、その上司の作業を妨げ、職場や作業を混乱させた。同5の(二)の主張は争う。同5の(三)の前段の事実は否認する。被告は本件労働協約一八条覚書一項を守つており、従来、組合が機関決定をして組合員間に対立のおそれのない政治的活動は認めていたが、個々の従業員の政治的活動は認めていなかつた。同5の(四)、(五)の主張は争う。 第三証拠関係 書一項を守つており、従来、組合が機関決定をして組合員間に対立のおそれのない政治的活動は認めていたが、個々の従業員の政治的活動は認めていなかつた。同5の(四)、(五)の主張は争う。 第三証拠関係(省略) 理由 一被告が肩書地に本店、工場を有し、資本金二億円、従業員約六五〇名で、主としてアルミニウム建材等の製作、販売を業とする会社であること、原告両名がいずれも被告の従業員であり、原告Aは昭和三六年被告に雇用され、現在計画部外注課に所属していること、原告Bは昭和四一年被告に雇用され、現在建材製品課に所属していること、原告両名がいずれも日本アルミ労働組合(以下「組合」という。)の組合員であり、組合伊勢原支部(以下「支部」という。)に所属していること、被告と組合との間の労働協約(以下「本件労働協約」という。)一八条が、「会社は組合員の政治的活動並びに公職就任の自由を認める。但し組合員は労働時間中及び社内においては一切の政治的活動を行わない。」と規定し、同条覚書が、「1 本条にいう「政治的活動並びに公職就任の自由を認める」とは、政治的活動並びに公職就任について不利益な取扱いをしないことを意味する。但し、社内における政治的活動に関しては、組合はその都度会社に事前に了解を求め、会社は差支えない場合これを認める。 2 前項の政治的活動とは、選挙運動及び政党その他の政治団体の名に於て行う宣伝、入党勧誘、基金寄附金物品等の募集、集会、掲示及び各種印刷物の配布等の活動をいう。」と規定すること、被告の就業規則(以下「本件就業規則」という。)八五条が、「 次の各号の一に該当するときは懲戒解職する。ただし情状によつて出勤停止、減給降格に止めることがある。 5 業務上の命令に理由なく従わず、職場の秩序を乱したとき 9 数回訓戒または懲戒を受 五条が、「 次の各号の一に該当するときは懲戒解職する。ただし情状によつて出勤停止、減給降格に止めることがある。 5 業務上の命令に理由なく従わず、職場の秩序を乱したとき 9 数回訓戒または懲戒を受けたにも拘らず、なお改悛の見込みがないとき 11 事業場の風紀または規律を乱したとき」と規定すること、被告が昭和四九年七月一二日、本件就業規則八五条五号、一一号により、原告Aに対し出勤停止三日、原告Bに対し出勤停止一日の各懲戒処分(以下「本件第一処分」という。)をしたこと、被告が昭和五〇年八月二五日、本件就業規則八五条五号、九号、一一号により、原告Aに対し、出勤停止三日の懲戒処分(以下「本件第二処分」という。)をしたことはいずれも当事者間に争いがない。 二そこで本件各処分につきその懲戒事由の存否を判断するに、まず本件第一処分については、原告両名が昭和四九年六月一二日の昼の休憩時間中に被告構内において「赤旗」「日本共産党」などを引用した「選挙期間中でも自由にできる政治活動」「選挙期間中だれにでもできる選挙運動」と題した印刷物、革新共同発行の「Cの十五の公約」と題した印刷物をそのとき行われていた支部職場委員選挙の選挙立会人、選挙管理委員その他の従業員に配布したことは当事者間に争いがなく、証人J、同K、同Lの各証言、原告A、同B各本人尋問の結果、成立に争いがない乙第四ないし第六号証、第二二号証、第二三号証、第四五号証の一、証人Jの証言によつて真正に成立したと認められる乙第二六号証、弁論の全趣旨とこれによつて真正に成立したと認められる乙第四〇号証を総合すれば、原告Aが昭和四九年六月一二日昼の休憩時間中である午後零時一五分ころから四〇分ころまでの間、被告構内のタイムカード室付近、食堂入口付近、グランドなどで、①日本共産党神奈川県北部地区委員会宣伝部発行 原告Aが昭和四九年六月一二日昼の休憩時間中である午後零時一五分ころから四〇分ころまでの間、被告構内のタイムカード室付近、食堂入口付近、グランドなどで、①日本共産党神奈川県北部地区委員会宣伝部発行の赤旗読者ニユース第三七号、②「赤旗」「日本共産党」などを引用した「選挙期間中でも自由にできる政治活動」「選挙期間中だれにでもできる選挙運動」と題した印刷物、③革新共同発行の「Cの十五の公約」と題した印刷物の三種類のビラ(以下「赤旗選挙ビラ」という。)三枚一組とした約二、三十部をその時行われていた支部職場委員選挙の選挙立会人、選挙管理委員その他の被告従業員に配布し、その際被告の従業員Mに対しては同人の拒否にもかかわらずこれを無理矢理押しつけて受け取らせたこと、原告Bが同日昼の休憩時間中である午後零時二〇分すぎころ被告構内の建材工場において三枚一組となつた赤旗選挙ビラ三部を被告従業員に配布したこと、Cは、当時、近く行われることになつていた参議院議員選挙の立候補予定者であつたことが認められ(右認定を覆すに足りる証拠はない。)(なお、右認定の一部の事実は前記のとおり当事者間に争いがない。)、右事実によれば、原告両名の赤旗選挙ビラ配布行為は、本件労働協約一八条覚書二項にいう選挙運動及び政党の名に於て行う印刷物の配布に該当するものであつて同条但書に違反し、かつ、本件労働協約の同条但書に違反することは被告における事業場の規律を乱すことになると解すべきものであるから、右行為は、本件就業規則八五条一一号の「事業場の規律を乱したとき」に該当すると解される。 被告は本件就規業規則八五条五号に該当する原告両名の行為として、赤旗選挙ビラ配布行為につき被告が同年六月一八日原告両名から事情聴取した上、原告両名に対し同月二二日午前中までに始末書を提出するよう業務命令を出し 就規業規則八五条五号に該当する原告両名の行為として、赤旗選挙ビラ配布行為につき被告が同年六月一八日原告両名から事情聴取した上、原告両名に対し同月二二日午前中までに始末書を提出するよう業務命令を出し、当日である同月二二日にも重ねて同内容の業務命令を出したが、原告両名がこれに応じなかつたことを主張するのであるが、右始末書提出命令は被告の労務指揮権の範囲内に属するものとはいい難いからこれをもつて業務上の命令と解することはできず、したがつて、原告両名がこれに応じなかつたことが本件就業規則八五条五号に該当するとは解されず、この点に関する被告の主張は理由がない。 次に、本件第二処分については、前記のとおり、原告Aが赤旗選挙ビラ配布行為などを理由として被告から出勤停止三日の懲戒処分を受けたものであるところ、原告Aが昭和五〇年四月一〇日ころ被告構内において被告従業員に対し神奈川県知事選挙候補者であるDを紹介したビラ(以下「Dビラ」という。)を配布したこと、原告Aが同年四月二六日の就業時間中である午前九時ころ職務のため被告住宅建材製造課部品管理の職場に赴いた際、翌二七日が投票日である伊勢原市議会議員選挙に立候補しているEを当選させる目的でその投票依頼のため、同課作業員Fを介し、「E」の氏名を記入したメモ(以下「Eメモ」という。)を被告の従業員であるGに交付したことはいずれも当事者間に争いがなく、証人Jの証言によつて真正に成立したと認められる乙第一二号証、第一三号証、第一五号証の三によれば、原告AがDビラを配布したのは昼の休憩時間中であつたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。そして、右事実によれば、原告AのDビラ配布行為及びEメモ交付行為はいずれも本件労働協約一八条覚書二項にいう選挙運動に該当するものであつて同条但書に違反し、かつ、本件労働 を覆すに足りる証拠はない。そして、右事実によれば、原告AのDビラ配布行為及びEメモ交付行為はいずれも本件労働協約一八条覚書二項にいう選挙運動に該当するものであつて同条但書に違反し、かつ、本件労働協約の同条但書に違反することは被告における事業場の規律を乱すことになると解すべきこと前記のとおりであるから、本件就業規則八五条九号の「数回懲戒を受けたにも拘らず、なお改悛の見込みがないとき」及び同条一一号の「事業場の規律を乱したとき」に該当すると解される。 原告Aは、本件第一処分が横浜地方裁判所昭和四九年(ヨ)第六五三号地位保全仮処分申請事件の仮処分決定によりその効力が停止されていること(成立に争いのない甲第二四号証により、このことを認めることができる。)を主張して、同人のDビラ配布行為、Eメモ交付行為が本件就業規則八五条九号に該当することを争うが、懲戒処分の効力を停止する旨の仮処分決定は右仮処分申請事件の被申請人である被告の任意の履行に期待する仮処分にすぎず、これによつて本件第一処分の効力が当初に遡つて失わされるいわれはなく、まして、本件第一処分がなかつたものと評価されるわけのものでもないから、原告Aの右主張は理由がない。また、被告は本件就業規則八五条五号に該当する原告Aの行為として、Dビラ配布行為、Eメモ交付行為につき被告が同年五月二二日原告Aから事情聴取した上、原告Aに対し同月二六日までに始末書を提出するよう業務命令を出したが、原告Aがこれに応じなかつたことを主張するのであるが、右始末書提出命令をもつて業務上の命令と解することはできず、したがつて、原告Aがこれに応じなかつたことが本件就業規則八五条五号に該当するとは解されないこと前記のとおりであるから、この点に関する被告の主張は理由がない。 なお、この点につき、原告両名は、企業秩序、 つて、原告Aがこれに応じなかつたことが本件就業規則八五条五号に該当するとは解されないこと前記のとおりであるから、この点に関する被告の主張は理由がない。 なお、この点につき、原告両名は、企業秩序、職場規律に服するという労働者の義務は企業の目的から合理的にみて必要な範囲に限られるべきであるから、本件労働協約一八条によつて禁止される政治的活動も具体的に経営秩序紊乱等の結果を生じる行為に限定されるべきであり、本件各処分の対象となつた原告両名の各行為はいずれもこれに該当しないと主張するのであるが、本件労働協約一八条の趣旨が従業員間の政治的対立を未然に防止し、もつて会社内の秩序の維持を目的とするものであると解されること及び同条の文言からすれば、同条にいう「政治的活動」を原告両名主張のごとく限定して解することは相当でない。 三原告らは、労働時間中及び社内での政治活動の一般的禁止を定める本件労働協約一八条が、集会、結社の自由を保障し、国民が政治活動の自由を有することを認めている憲法二一条に実質的に違反し、公序良俗に反するものであつて無効であると主張する。 しかし、職場は業務遂行の場であつて従業員は職場内における政治活動の自由を当然に有するものではないこと、職場内における政治活動は従業員間の政治的対立を生じさせるおそれがあり、また使用者の企業施設管理権を侵害するおそれがあること、とくに就業時間中の政治活動は当該従業員の職場専念義務に違反するだけでなく、他の従業員の職務遂行をも妨げるおそれがあること、休憩時間中の政治活動であつても、それによつて前記のとおり従業員間の政治的対立を生じさせるおそれがある以上、その後における他の従業員の職務遂行を妨げるおそれも否定できないことなどの諸事情に鑑みれば、労働時間中又は社内での政治活動の一般的禁止は、集会結社の 業員間の政治的対立を生じさせるおそれがある以上、その後における他の従業員の職務遂行を妨げるおそれも否定できないことなどの諸事情に鑑みれば、労働時間中又は社内での政治活動の一般的禁止は、集会結社の自由、国民の政治活動の自由に対して企業の秩序、規律維持の必要からされる合理的制約と解されるのであるから、本件労働協約一八条は公序良俗に反するものではない。 四また、原告らは、赤旗選挙ビラ配布行為、Dビラ配布行為に関して、休憩時間中のビラ配布行為をも一律に政治的活動にあたるとして禁止する本件労働協約一八条は労働基準法三四条三項に違反し、その限度で無効であると主張する。 しかし、労働者が休憩時間を自由に利用できるといつても、それが企業施設内でされる場合には、企業秩序、規律維持の必要からされる制約に服すると解されるところ、休憩時間中の政治活動であつても、それが従業員間の政治的対立を生じさせ、ひいてはその後における従業員の職務遂行を妨げるおそれの否定できないこと前記のとおりであるから、休憩時間中にされるものといえども社内における政治活動については、組合が会社に事前に了解を求め、会社がこれを認めた場合にのみこれが許されるとすることは、休憩時間の自由利用に対する合理的な制約というべきであり、したがつて、その旨を定めた本件労働協約一八条が労働基準法三四条三項に違反するものとは解されない。 五さらに、原告両名は、原告両名が共産党支持者であるというその思想、信条を理由として本件各処分がされたものであるから、本件各処分は憲法一四条、労働基準法三条に違反するものであつて無効であると主張するのであるが、本件各処分が原告両名の思想、信条を理由としてされたものであると認めるに足りる適確な証拠はないから、この点に関する原告両名の主張は理由がない。 六そこで、以下、本件 無効であると主張するのであるが、本件各処分が原告両名の思想、信条を理由としてされたものであると認めるに足りる適確な証拠はないから、この点に関する原告両名の主張は理由がない。 六そこで、以下、本件各処分が被告の懲戒権の濫用によるものであるか否かについて判断する。 まず本件第一処分について、原告両名の赤旗選挙ビラ配布行為が被告に与えた影響については、証人J、同K、同Lの各証言によれば、その当時、参議院議員選挙が近く公示されることになつており、右ビラに記載されているCは右選挙に立候補することが予定されていたが、組合は右選挙で社会党を支持する旨既に決定しており、また、組合が支持する旨を決定した右候補者の中にCは含まれていなかつたため、右ビラを見た組合員の中には、なぜそのようなビラ配布が許されるのか、それは組合方針に反するのではないか等の点について組合事務所へ問合せ、抗議に行つた者もあつたこと、同日午後の就業開始時刻である午後零時四五分を過ぎても被告従業員の一部は右ビラを読んでいたこと、その当時、支部においては、昭和四九年五月三〇日施行の支部執行委員選挙にあたり、同月二二日告示の選挙規則をめぐつて原告両名を含むグループと支部執行部との間に対立があつたが、原告両名の配布した赤旗選挙ビラが前記のとおり参議員議員選挙につき組合の支持しない政党及び候補者の紹介、宣伝を目的とするものであつたため、これを契機として原告両名を含むグループと支部執行部との間の対立が熾烈化し、その結果、原告両名を含むグループはその後被告や組合、支部を非難するビラを門前で配布したことが認められ(右認定を覆すに足りる証拠はない。)、会社内における政治活動に対する被告の従前の対応については、証人J、同L、同Nの各証言によれば、組合は各選挙毎に包括的にではあるがその支持する政党、候 認められ(右認定を覆すに足りる証拠はない。)、会社内における政治活動に対する被告の従前の対応については、証人J、同L、同Nの各証言によれば、組合は各選挙毎に包括的にではあるがその支持する政党、候補者についての選挙活動の許可を事前に被告に求め、被告は組合が機関決定をしていて従業員間に対立のおそれのないもののみを許可してきたこと、被告が組合を離れた各従業員の会社内における政治活動に許可を与えたことはないことが認められ(右認定を覆すに足りる証拠はない。)、この点につき、原告両名は、本件第一処分がされるまでも昼の休憩時間中、原告両名がその参加している「日本アルミ労働者後援会」の会員に「赤旗」を配布したり選挙運動を公然と行つたりしていたが、被告からも組合からもこれをとがめられることはなかつたと主張するのであるが、仮に右事実が認められるとしても、被告が原告両名の右各行為を知りながら本件労働協約一八条を問題にせず、これを放任又は黙認していたと認めるに足りる適確な証拠はない。また、原告両名は、本件第一処分によつて原告両名の政治活動の自由が奪われたことになるのであるから、その受ける不利益は極めて重大であると主張するのであるが、本件労働協約一八条の定める政治的活動に対する制約が合理性を有するものであることは前記のとおりであるだけでなく、労働時間中又は社内における政治的活動の一般的禁止は、政治活動の自由の内容自体に対する制約ではなく、その行使の一態様について加えられるに過ぎないものであるから、これによる原告両名の政治活動の自由の制約が不合理なものであるとは解されない。よつて、その余についてみるまでもなく、本件第一処分が被告の懲戒権の濫用によるものであるとは認められない。 次に、本件第二処分について、原告AのEメモ交付行為の影響については、証人Hの証言及 ない。よつて、その余についてみるまでもなく、本件第一処分が被告の懲戒権の濫用によるものであるとは認められない。 次に、本件第二処分について、原告AのEメモ交付行為の影響については、証人Hの証言及び成立に争いがない乙第七号証によれば、Eメモの交付を受けたGが就業時間中であるにもかかわらず、右Eメモを持つて自分と同じ課に勤務する被告従業員に対し、伊勢原市議会議員選挙ではEに投票するよう依頼してまわつていたため、これを見とがめた同課の工場長であるHがGに注意してその投票依頼行為をやめさせたが、その六、七分後になつてもまだGが右投票依頼行為をやめなかつたため、作業長のIがEメモを破つてすてたこと、Gは通常の人より知能がやや劣ることが認められ(右認定を覆すに足りる証拠はない。)、右事実によれば、右事態の生じたことは原告AのGに対するEメモ交付行為に起因するものといわざるを得ないこと、原告Aは、被告においては、就業時間中であつても被告の生産体制、生産能率に支障をきたさない程度の私用は黙認されており、原告AのEメモ交付行為もそれ自体を外形的にみると通常の黙認されている私用と異ならないから、これのみを懲戒処分の対象にするのは不当であると主張するのであるが、原告AのEメモ交付行為がそれ自体を外形的にみると通常の黙認されている私用と異ならないとしても、それによつて前記のとおり一時的ではあるにせよ被告従業員であるG、その上司であるH、Iの作業を妨げ、職場を混乱させたものであることからすれば、その余についてみるまでもなく、本件第二処分が被告の懲戒権の濫用によるものであるとは認められない。 七よつて、原告両名の本訴各請求は、その余について判断するまでもなく理由がないので、これをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条一項を適用 あるとは認められない。 七よつて、原告両名の本訴各請求は、その余について判断するまでもなく理由がないので、これをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条一項を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官海老塚和衛嘉村孝佐賀義史)

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