- 1 – 主文 被告人を懲役3年6月に処する。 未決勾留日数中440日をその刑に算入する。 理由 [罪となるべき事実]被告人は、A(以下「A」という。)と共謀の上、第1 法定の除外事由がないのに、別表1(省略)記載のとおり、令和3年3月9日頃から同年9月29日頃までの間、8回にわたり、不特定かつ多数の相手方であるBほか2名から、岡山市a 区株式会社C銀行岡山支店に開設された被告人名義の普通預金口座に振込入金を受ける方法又は岡山市a 区ほか2箇所において交付を受ける方法により、現金合計7599万9450円を元本保証する旨を約して受け入れ、もって業として預り金をした。 第2 内閣総理大臣の登録を受けないで、業として、別表2(省略)記載のとおり、令和3年3月9日頃から同年9月1日頃までの間、前記Bら2名との間で、市場デリバティブ取引である日経225オプション取引等に関する投資一任契約を締結し、同契約に基づき、同年3月9日頃から同年9月1日頃までの間、日本国内において、インターネットを通じて、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて市場デリバティブ取引に係る権利に対する投資として、株式会社D証券に開設されたE名義の証券口座において、同人名義による市場デリバティブ取引を行って前記Bら2名の金銭を運用し、もって無登録で金融商品取引業を営んだ。 第3 下記の被害者らからそれぞれ投資運用名目で現金をだまし取ろうと考え、真実は、被告人及びA(以下「被告人ら」という。)の過去の投資運用における累計の運用実績は赤字であり、かねてそれぞれ被害者 - 2 – から預託を受けた投資金の運用でも利益は出ていないにもかかわらず、あたかも、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねてそ 字であり、かねてそれぞれ被害者 - 2 – から預託を受けた投資金の運用でも利益は出ていないにもかかわらず、あたかも、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねてそれぞれ被害者から預託を受けた投資金の運用で利益が出ているように装い、かつ、それぞれの被害者から預託を受ける現金の一部ないし全部を投資運用に用いることなく自己の用途に費消する意図であるのに、その情を秘し、 1 被告人が、令和3年9月14日及び同年10月11日、F(当時74歳)に対し、携帯電話機のメッセージアプリを使用し、「来年9月までのお預かりの運用につきましては、前回の8月のご報告の評価額から17.0%のプラスとなりました」「9月SQ(+17%)11,700,000円」「来年9月までのお預かりの1000万円運用につきましては、前回の9月のご報告の評価額から21.0%のプラスとなりました」「10月SQ(+21%)14,157,000円」などと内容虚偽のメッセージを送信し、いずれもその頃、これを兵庫県内にいた前記Fに閲読させるとともに、令和3年10月8日頃、岡山市b 区所在のレストランにおいて、前記Fに対し、「運用も順調ですし、さらに期待に応えることができると思います」「今回は長期の1000万円でいかがでしょうか」旨うそを言い、前記Fに、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねて預託した投資金の運用により利益が出ており、かつ、被告人らに現金を交付すれば、同現金の全額が投資運用に充てられ、後日利益の配当等を確実に受けられるものと誤信させ、よって、令和3年11月2日、前記Fに、株式会社C銀行岡山支店に開設された被告人名義の普通預金口座に現金999万9120円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 2 被告人 と誤信させ、よって、令和3年11月2日、前記Fに、株式会社C銀行岡山支店に開設された被告人名義の普通預金口座に現金999万9120円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 2 被告人が、令和3年10月11日、G(当時65歳)に対し、携帯電話機のメッセージアプリを使用し、「来年9月までのお預かりの運用に - 3 – つきましては、前回の9月のご報告の評価額から21%のプラスとなりました」「当初お預かり額、70,000,000円」「9月SQ(+21%)369,375,709円」などと内容虚偽のメッセージを送信し、その頃、これを東京都内にいた前記Gに閲読させるとともに、Aが、令和3年11月11日、前記Gに対し、前記メッセージアプリを使用し、「今日は今までで1番期間の短いスプレッドが取れたのでご連絡させていただきました。期間は明日から19日までの6営業日です。 過去最短で30%取れます。」「きちんと20%ロールで回っておりますのでご安心下さい。」などと内容虚偽のメッセージを送信し、その頃、これをインドネシア共和国内にいた前記Gに閲読させ、同人に、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねて預託した投資金の運用により利益が出ており、かつ、被告人らに現金を交付すれば、同現金の全額が投資運用に充てられ、後日利益の配当等を確実に受けられるものと誤信させ、よって、同月12日、前記Gに、株式会社C銀行岡山支店に開設された被告人名義の普通預金口座に現金1100万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 3 被告人が、令和3年10月26日、岡山市b 区所在のH方において、同人(当時75歳)に対し、被告人らの運用実績が黒字であるとする内容虚偽の資料を交付して閲覧させた上、「Aはチャートが読めて投資が 被告人が、令和3年10月26日、岡山市b 区所在のH方において、同人(当時75歳)に対し、被告人らの運用実績が黒字であるとする内容虚偽の資料を交付して閲覧させた上、「Aはチャートが読めて投資が上手い」「私たちに預からせてもらえませんか」「1000万円投資してくれませんか」旨うそを言い、前記Hに、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、被告人らに現金を交付すれば、同現金の全額が投資運用に充てられ、後日利益の配当等を確実に受けられるものと誤信させ、よって、令和3年11月2日、前記H方において、同人から、現金500万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を - 4 – 交付させた。 4 前記Hが前記第3の3のとおり誤信していることに乗じて、更に同人から投資運用名目で現金をだまし取ろうと考え、被告人が、令和3年12月14日、前記Hに対し、携帯電話機のメッセージアプリを使用し、「来年9月までお預かりをさせていただくことになりました500万円の運用につきましては、11月SQ時点から57.0%のプラスとなりました。」「12月SQ(+57%)7,850,000円」などと内容虚偽のメッセージを送信し、その頃、これを岡山県内にいた前記Hに閲読させるとともに、令和3年12月中旬頃、携帯電話機を使用して、岡山県内にいた前記Hに対し、「20パーセントの利益が確定した運用があります」「200万円お願いできませんか」「1カ月後には必ずお返しします」旨うそを言い、前記Hに、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねて預託した投資金の運用により利益が出ており、かつ、被告人らに現金を交付すれば、同現金の全額が投資運用に充てられ、後日利益の配当等を確実に受けられるものと誤信させ、よって、同月22日、前記H方において 託した投資金の運用により利益が出ており、かつ、被告人らに現金を交付すれば、同現金の全額が投資運用に充てられ、後日利益の配当等を確実に受けられるものと誤信させ、よって、同月22日、前記H方において、同人から、現金200万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。 5 被告人が、令和3年12月14日、I(当時65歳)に対し、携帯電話機のメッセージアプリを使用し、「来年9月までのお預かりをさせていただくことになりました1240万円運用につきましては、11月時点から57.0%のプラスとなりました。」「11月SQ(+15%)14,260,000円 12月SQ(+57%)22,388,200円」などと内容虚偽のメッセージを送信し、その頃、これを岡山県内にいた前記Iに閲読させるとともに、令和3年12月23日、岡山県倉敷市所在の前記I方において、同人に対し、「追加で私たちに運用を - 5 – 任せていただけませんか。現在お預かりしている運用も順調ですし、さらに期待に応えることができるはずです。Iさんには損はさせません。短期運用ですでに35パーセントの利益が確定してますので、35パーセントの利益をつけることができます。」旨うそを言い、前記Iに、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねて預託した投資金の運用により利益が出ており、かつ、被告人らに現金を交付すれば、同現金の全額が投資運用に充てられ、後日利益の配当等を確実に受けられるものと誤信させ、よって、同日、前記I方において、同人から、現金1000万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。 6 前記Fが前記第3の1のとおり誤信していることに乗じて、更に同人から投資運用名目で現金をだまし取ろうと考え、被告人が、令和3年12月14日、前記Fに対し、 もって人を欺いて財物を交付させた。 6 前記Fが前記第3の1のとおり誤信していることに乗じて、更に同人から投資運用名目で現金をだまし取ろうと考え、被告人が、令和3年12月14日、前記Fに対し、携帯電話機のメッセージアプリを使用し、「来年9月までのお預かりの2000万円運用につきましては、前回の11月のご報告の評価額から57.0%のプラスとなりました」「12月SQ(+57%)46,815,531円」などと内容虚偽のメッセージを送信し、その頃、これを兵庫県内にいた前記Fに閲読させるとともに、令和3年12月下旬頃、携帯電話機を使用して、兵庫県宝塚市にいた前記Fに対し、「運用は順調にいっています」「500万円でも大丈夫ですよ」「短期となりますが、まだ20パーセントの利益は確定しています」旨うそを言い、前記Fに、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねて預託した投資金の運用により利益が出ており、かつ、被告人らに現金を交付すれば、同現金の全額が投資運用に充てられ、後日利益の配当等を確実に受けられるものと誤信させ、よって、同月27日、前記Fに、株式会社C銀行岡山支店に開設された被告人名義の普通預金口座に現金499万9120 - 6 – 円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 7 Aが、令和4年1月18日、岡山市c 区所在の有限会社J商店において、K(当時41歳)に対し、「利益確定のポジションを持っています。」「ここにある2800万円に200万円をプラスして3000万円で運用しませんか。」「収益は同じく50パーセントです。」「こんなに良い話はありません。」旨うそを言い、前記Kに、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねて預託した投資金の運用により利益が出ており、かつ、被告 0パーセントです。」「こんなに良い話はありません。」旨うそを言い、前記Kに、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねて預託した投資金の運用により利益が出ており、かつ、被告人らに現金を交付すれば、同現金の全額が投資運用に充てられ、後日利益の配当等を確実に受けられるものと誤信させ、よって、同日、前記J商店において、前記Kから現金2896万8500円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。 8 被告人が、令和4年1月27日、前記J商店において、L(当時68歳)に対し、「Aが、含み益を抱えたオプションを持っています。」「今、お金を出してもらえたら、1か月20パーセントの収益を付けることができます。」「絶対に損はしないので、投資しませんか。」旨うそを言い、前記Lに、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねて預託した投資金の運用により利益が出ており、かつ、被告人らに現金を交付すれば、同現金の全額が投資運用に充てられ、後日利益の配当等を確実に受けられるものと誤信させ、よって、同月28日、前記J商店において、前記Lから現金1000万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。 9 被告人が、令和4年3月17日、M(当時56歳)に対し、携帯電話機のメッセージアプリを使用し、「今年9月までお預かりをさせていただいております1200万円の運用につきましては、2月SQ時点から32.0%のプラスとなりました。」「11月SQ(+15%)13, - 7 – 800,000円 12月SQ(+57%)21,666,000円1月SQ(+27%)27,515,820円 2月SQ(+31%)36,045,724円 3月SQ(+32%)47,580,355円」などと内容虚偽のメッセージを送信し、 )21,666,000円1月SQ(+27%)27,515,820円 2月SQ(+31%)36,045,724円 3月SQ(+32%)47,580,355円」などと内容虚偽のメッセージを送信し、その頃、これを岡山県内にいた前記Mに閲読させるとともに、令和4年3月27日、岡山県美作市所在の前記M方において、同人に対し、「今いい時なので解約するのは勿体ないです」「1000万円追加投資しませんか」「500万円でも大丈夫です」旨うそを言い、前記Mに、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねて預託した投資金の運用により利益が出ており、かつ、被告人らに現金を交付すれば、同現金の全額が投資運用に充てられ、後日利益の配当等を確実に受けられるものと誤信させ、よって、同月30日、前記Mから、株式会社N銀行岡山支店に開設された被告人名義の普通預金口座に現金500万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 10 前記Fが前記第3の1及び第3の6のとおり誤信していることに乗じて、更に同人から投資運用名目で現金をだまし取ろうと考え、被告人が、令和4年3月17日、前記F(当時75歳)に対し、携帯電話機のメッセージアプリを使用し、「今年9月までのお預かりの2000万円につきましては、前回の2月のご報告から32.0%のプラスとなりました」「3月SQ(+32%)102,810,837円」などと内容虚偽のメッセージを送信し、その頃、これを兵庫県内にいた前記Fに閲読させるとともに、令和4年3月下旬頃、携帯電話機を使用して、前記場所にいた前記Fに電話をかけ、同人に対し、「運用は順調にいっています」「今回は長期の1000万円でいかがでしょうか」旨うそを言い、前記Fに、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねて 記Fに電話をかけ、同人に対し、「運用は順調にいっています」「今回は長期の1000万円でいかがでしょうか」旨うそを言い、前記Fに、被告人らの過去の投資運用における累計の運用実績が黒字であり、かねて預託した投資金の運用により利益が出て - 8 – おり、かつ、被告人らに現金を交付すれば、同現金の全額が投資運用に充てられ、後日利益の配当等を確実に受けられるものと誤信させ、よって、同年4月7日、前記Fに、株式会社N銀行岡山支店に開設された被告人名義の普通預金口座に現金999万9120円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 [証拠の標目] 省略[事実認定の補足説明]第1 争点 1 判示第1について出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反の罪が、また、判示第2について金融商品取引法違反の罪がそれぞれ成立することに争いはなく、関係証拠からも認められる。 2 また、判示第3の1ないし10(以下これらを総称して「本件各詐欺事件」という。)について、Aが、自己の用途に費消する意図であるのにこれを秘し、各被害者から投資運用名目で現金の交付を受けるという詐欺を行ったことは、関係証拠上優に認められ、被告人及び弁護人も積極的には争っていない。しかし、被告人は、Aに預けられた顧客の投資金が全額投資運用に用いられ、かつ、Aが行っていた投資運用の実績が、Aから伝えられたとおり黒字であると信じており、顧客をだますという認識はなかった旨述べ、弁護人も、被告人には詐欺の故意がないから、詐欺罪は成立せず、被告人は無罪である旨主張する。本件各詐欺事件の争点は、被告人に詐欺の故意及びAとの共謀が認められるか否かである。 第2 本件各詐欺事件に至るまでの経緯A及び被告人が行っていた投資運用事業の経過等について、被告人供述を含 。本件各詐欺事件の争点は、被告人に詐欺の故意及びAとの共謀が認められるか否かである。 第2 本件各詐欺事件に至るまでの経緯A及び被告人が行っていた投資運用事業の経過等について、被告人供述を含む関係証拠によれば、次の事実が認められる。 1 被告人らは、かつてO株式会社(以下「O」という。)で勤務していたが、被告人は、令和3年(以下、日付については、特に断りのない限り令 - 9 – 和3年のことである。)3月頃、Oを退職して、AとP株式会社(以下「P社」という。)を設立し、共同して、投資運用事業を始めた。P社の投資運用事業の役割分担は、被告人が顧客を勧誘して投資金を集め、被告人が集めた投資金をAが投資運用するというものであった。被告人らが勧誘の際に説明していた投資の内容は、日経225のオプション取引と先物取引を用いるというもので、投資の期間に応じて異なる利益率を設定し、投資期間1か月で想定収益20パーセント、投資期間3か月で想定収益50パーセント、投資期間1年で収益の最大化を追求とし、期限を迎えたら元本と利益を償還するというものであった。被告人は、顧客に投資を勧誘するとともに、返済期日及び返済額を把握し、返済期日が迫ってきたものについてはその都度、Aに、返済期日及び返済額をSNSアプリ上のメッセージで伝えていた。 2 被告人らは、6月上旬頃、5名の顧客に対して、6月末を返済期日とし、50パーセントの利益率で運用するという内容で投資を勧誘し、合計7700万円の投資の預託を受けており、7月2日時点において、他の顧客に対する返済分を含め、総額約1億1200万円を返済しなければならない状況にあった。しかし、被告人らは、7月6日に1名の顧客に約700万円を返済した以外には、顧客に対する元利金の返済をすることができなかった。被告 含め、総額約1億1200万円を返済しなければならない状況にあった。しかし、被告人らは、7月6日に1名の顧客に約700万円を返済した以外には、顧客に対する元利金の返済をすることができなかった。被告人は、7月7日、返済ができない理由について、Aから、急に大きい金額の取引をしたので、銀行が口座にセキュリティロックを掛け、出金できないなどと伝えられた。被告人は、7月8日、顧客に対してセキュリティロックの経緯を説明するための説明案を作成し、これに対するAからの修正案に基づいて、顧客に対し、口座のセキュリティロックがかかったので返済できない旨説明した。 3 被告人は、Aには数十億円程度の資産があると思っていたので、7月9日、Aに対し、電話で、Aの資産を切り崩してでも顧客に元利金を返 - 10 – 済した方がよい旨提案した。しかし、Aはこれに対し烈火のごとく怒って、資産の切り崩しを拒否した。 4 被告人は、7月末頃、Aから、顧客への返済が滞っている理由について、過度な入出金によるセキュリティロックではなく、金融庁からインサイダー取引の疑いを持たれたことによる口座凍結だと分かった、この口座凍結は、口座に入金することや先物取引及びオプション取引をすることはできるものの、出金することはできない旨伝えられた。被告人は、Aのこの説明どおり、8月6日、顧客に対し、返済できない理由について、Aが金融庁からインサイダー取引の疑いをかけられ、その結果銀行口座が凍結された旨説明した。他方で、被告人は、別の顧客に対しては、9月13日に返済できなかった理由として、Aの指示を受けて、セキュリティロックにかかった旨説明した。 なお、セキュリティロックという理由についてはAの使用していた銀行口座がセキュリティロックされたという事実がないことから、また、口座凍結 の指示を受けて、セキュリティロックにかかった旨説明した。 なお、セキュリティロックという理由についてはAの使用していた銀行口座がセキュリティロックされたという事実がないことから、また、口座凍結という理由については金融庁にはインサイダー取引の疑いのある捜査対象者の口座凍結を行う権限がないことから、いずれも虚偽であると認められる。 5 被告人は、8月下旬頃、Aから、4億円の利益が出る案件がある旨聞かされ、さらに、2人で手分けして1億2000万円の投資金を集めるように指示を受けた。Aから、投資を勧誘する際には、1週間で30パーセントの利益を付ける旨言ってもよいと言われたので、被告人は、その旨顧客に言って勧誘し、顧客5名から5900万円の投資金を集めた。被告人は、集めた投資金を持ってAが待つ東京に行き、9月7日、Aは前記案件を紹介した芸能人と面会し、同人に、被告人が集めた投資金と合わせて合計1億2000万円を渡した。しかし、Aは、9月8日、被告人に対し、自らのミスで1億2000万円を持ち去られたことを伝えて謝り、被告人 - 11 – がそれまでに見たことがないほど取り乱して大泣きしていた。被告人らは、この1億2000万円を元手に収益を上げ、元利金の返済等に充てる予定であったが、1億2000万円を失ったので、収益を上げることはできず、また、集めた投資金について新たな元利金の返済への対応に追われることになった。 6 その後、被告人らは、顧客から新たな投資金を集めるとともに、既に投資金を預かっていた顧客に対しては、セキュリティロックにかかって返済できないと説明したり、ロールオーバー(投資金の期限が到来した際に、投資金を返還することなく引き続き投資運用を任せること)をさせたりして、元利金をほとんど返済することなく、9月14日から令和 て返済できないと説明したり、ロールオーバー(投資金の期限が到来した際に、投資金を返還することなく引き続き投資運用を任せること)をさせたりして、元利金をほとんど返済することなく、9月14日から令和4年4月7日までに、本件各詐欺事件のとおり、各被害者から投資金を集めたが、本件各詐欺事件の期間中も、元利金をほとんど返済できず、また、投資運用事業の収益が回復したとか、返済の見込みが立ったというようなことはなかった。 第3 検討 1 被告人は、自ら顧客に対する投資運用の勧誘を行い、顧客から投資金を預かってAに交付するとともに、各顧客に対する返済期日及び返済額を把握しており、7月上旬には、返済すべき元利金の額が極めて多額になっているのに、期限に元利金をほとんど返済できていないことを認識していた。 2 被告人は、顧客に元利金を返済できない理由について、7月7日、Aから、過度な入出金によりセキュリティロックがかかったという説明を受け、翌8日には、顧客に対する説明案を作成し、これに対するAからの修正案に基づいて、顧客に対し、口座のセキュリティロックがかかったので返済できない旨説明した。ところが、7月末頃には、被告人は、Aから、返済が滞っている理由はセキュリティロックではなく、金融庁からインサ - 12 – イダー取引の疑いを持たれたことによる口座凍結である旨、以前と異なる説明を受け、顧客に対しても説明ぶりを変更した。Aが言う口座凍結の内容は、入金や先物取引、オプション取引はできるものの、出金することだけはできないという、あまりに都合が良すぎ、明らかに不合理なものであった。しかも、被告人は、ある顧客にはインサイダー取引の疑いで口座が凍結されたと説明しつつ、別の顧客にはAの指示を受けて、以前と同様に、セキュリティロックによって返済で ぎ、明らかに不合理なものであった。しかも、被告人は、ある顧客にはインサイダー取引の疑いで口座が凍結されたと説明しつつ、別の顧客にはAの指示を受けて、以前と同様に、セキュリティロックによって返済できない旨説明するなど、顧客によって説明ぶりを変えていた。返済できない理由が相手によって変わることはあり得ないから、被告人はAとともに説明ぶりを場当たり的に変えていたものといわざるを得ない。 そうすると、セキュリティロックもインサイダー取引による口座凍結という理由もいずれも場当たり的で不自然、不合理なものであって、長年Oや金融機関で勤務した経験があり、金融や証券取引に関する知識経験が豊富であった被告人としては、これが虚偽であると疑いをもってしかるべきであったといえるから、遅くとも9月13日頃の時点では、被告人は、Aが返済できない理由として言っていたセキュリティロックも口座凍結も、いずれも虚偽であると認識したと強く推認できる。 3 顧客への返済が滞った際に、被告人は、7月9日、Aの資産を切り崩してでも顧客に約1億円の元利金を返済した方がよい旨提案しているところ、顧客に期限どおりに元利金を返済することは投資運用事業を営む上で最も基本的なことであるから、この提案は至極真っ当なものであるし、Aが真実数十億円の資産を有しているのなら、1億円程度の返済は決して無理なことではないはずである。しかし、Aは被告人の提案に激高して資産の切り崩しを拒否したのであり、このことは、被告人が、Aには本当は資産などないのではないかという疑いを持つのに十分な事実といえる。 4 そして、被告人は、9月8日、Aが芸能人との金銭トラブルで1億 - 13 – 2000万円を失ったことを知らされ、予定していた収益を上げることができなくなっただけでなく、このために集めた投 そして、被告人は、9月8日、Aが芸能人との金銭トラブルで1億 - 13 – 2000万円を失ったことを知らされ、予定していた収益を上げることができなくなっただけでなく、このために集めた投資金の元利金返済義務までをも負ったことを認識し、その際、被告人が見たこともないほどAが取り乱している様子も目の当たりにした。これまで投資勧誘してきた顧客に対する高額の元利金の返済を果たせない状況において、自分の資産を切り崩して元利金を返済しようとすることもせず、ただ取り乱すだけのAの様子を見た被告人としては、P社の投資運用事業で収益が上げられておらず、今後も元利金を返済できる見込みがないことを認識し得たといえる。 5 以上によれば、被告人は、遅くとも9月8日から同月13日の時点で、過去の投資運用事業が収益を上げられておらず、今後も同様に投資運用事業により収益を上げられる見込みも、Aの個人資産から元利金を返済できる見込みもないことを認識したと推認できる。他方で、本件各詐欺事件の期間中も、元利金の返済はほとんどできず、投資運用事業の収益が回復したとか、返済の見込みが立ったというような事情はなく、前記推認を妨げる事情は見い出せない。そうすると、本件各詐欺事件の各犯行時において、被告人は、顧客から預託を受けた投資金が返済できないであろうことを認識したにもかかわらず、それでも構わないとあえて顧客に対し、確実に元利金が返済される旨述べて投資勧誘を行い、現金の交付を受けた、すなわち被告人には詐欺の未必の故意ひいてはAとの共謀があったと推認される。 第4 被告人供述の検討 1 被告人は、Aから毎月報告を受けていたSQ値が順調であったし、実際、Aから10月19日に送信を受けた証券口座の画像(以下「本件証券口座画像」という。なお、関係証拠によれば、本件 人供述の検討 1 被告人は、Aから毎月報告を受けていたSQ値が順調であったし、実際、Aから10月19日に送信を受けた証券口座の画像(以下「本件証券口座画像」という。なお、関係証拠によれば、本件証券口座画像は内容虚偽のものであった。)では評価損益合計額が4億円余りのプラスとなっていたから、顧客に対する返済は全く問題ないと思っていた旨述べ、弁護人 - 14 – も、Aの報告を受けて、被告人はAの投資運用実績が黒字であると認識していた旨主張する。しかし、本件証券口座画像には「信用建玉」「保有証券」との表示があり、それは株の信用取引に関するものであって、Aが投資運用していたという日経225の先物取引やオプション取引に関するものでないことは、証券会社で長年勤務していた被告人なら当然認識し得たし、他にも、本件証券口座画像は、被告人が過去にAから共有された証券口座の画像と仕様が異なるなど、本件証券口座画像には被告人が当然気づくはずの不審な点が複数存在した。被告人は、Aから報告を受ける投資運用実績が黒字であるにもかかわらず、顧客への元利金の返済がほとんどできず、顧客から返済を求められているという事実を認識していたのだから、Aの投資運用実績には強い関心を抱いていたはずであるのに、これら複数の不審な点をAに指摘するなどせず看過していたことは不自然で、被告人の供述は信用できず、弁護人の主張も理由がない。むしろ、このような不審な点を看過していたことは、かえって、この時点において、被告人が詐欺の認識があったことを裏付けるものであるといえる。 2 次に、被告人は、Aに十分な資産背景があると信じており、実際、12月15日にはAから残高約64億円程度の銀行口座の画像(以下「本件残高画像」という。なお、関係証拠によれば、本件残高画像は内容虚偽のもの 、被告人は、Aに十分な資産背景があると信じており、実際、12月15日にはAから残高約64億円程度の銀行口座の画像(以下「本件残高画像」という。なお、関係証拠によれば、本件残高画像は内容虚偽のものであった。)を受信していた旨述べ、弁護人も、被告人は、口座凍結等があったとしても最終的にはAの巨額の個人資産で対処できるから投資運用には影響がないと考えており、被告人には詐欺の故意がない旨主張する。しかし、前述のとおり、被告人は本件残高画像を受信する前から、7月9日にAが激高して個人資産の切り崩しを拒否したことや、Aが芸能人との金銭トラブルで1億2000万円を失ったことによって、9月8日に、被告人らがますます顧客に元利金を返済できなくなった事実に直面したこと等、Aが巨額の資産を有していることとは矛盾する事実を複数認識して - 15 – いたのであるから、本件残高画像の内容を信じていたという被告人の供述は信用できず、弁護人の主張も理由がない。 3 その他被告人及び弁護人は縷々主張するが、いずれも被告人の詐欺の故意に合理的な疑いを生じさせるものではなく、理由がない。 第5 結論以上より、本件各詐欺事件のいずれの事実についても被告人に詐欺の故意及びAとの共謀が認められるから、被告人には詐欺罪が成立する。 [法令の適用]罰条第1別表1各番号の各行為包括して刑法60条、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律8条3項1号、2条1項第2別表2各番号の各行為刑法60条、金融商品取引法197条の2第10号の4、29条第3の1ないし10の各行為いずれも刑法60条、246条1項刑種の選択第1及び第2の罪についていずれも懲役刑を選択併合罪の処理刑法45 0号の4、29条第3の1ないし10の各行為いずれも刑法60条、246条1項刑種の選択第1及び第2の罪についていずれも懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い第3の7の罪の刑に法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の処理刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)[量刑の理由] 1 本件は、被告人が、Aと共に投資運用事業を営むに当たり、いずれもAと共謀の上、①法定の除外事由がないのに、8回にわたり、不特定かつ多数の相手方である3名から総額約7600万円を元本保証する旨を約し - 16 – て受け入れ、業として預り金をしたというもの(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)違反(判示第1))、②2名との間で、5回にわたり、市場デリバティブ取引である日経225オプション取引等に関する投資一任契約を締結し、同契約に基づき、市場デリバティブ取引を行って前記2名の金銭合計2650万円を運用し、無登録で金融商品取引業を営んだというもの(金融商品取引法(以下「金商法」という。)違反(判示第2))及び③投資運用名目で7名から合計約9700万円の現金を詐取したというもの(詐欺10件(判示第3の1ないし10))である。 2 まず、量刑の中心となる本件各詐欺事件についてみると、被告人らは、令和3年9月頃から令和4年4月頃までの間に、投資運用名目で7名の被害者から合計約9700万円にのぼる多額の現金を詐取しており、被害結果は重大であるが、被害弁償の見込みは立っていない。被告人らは、各被害者に対し、実態は投資運用により全く収益をあげる見込みもないのに、あたかも累計の投資運用実績が黒字であるかのように言葉巧 、被害結果は重大であるが、被害弁償の見込みは立っていない。被告人らは、各被害者に対し、実態は投資運用により全く収益をあげる見込みもないのに、あたかも累計の投資運用実績が黒字であるかのように言葉巧みに信じ込ませており、その態様は巧妙で、職業的かつ常習的であり、悪質である。 本件各詐欺事件を主導した主犯はAであり、被告人はAから投資運用の詳細を知らされず、本件各詐欺事件において詐欺の故意は未必的なものにとどまるとはいえ、P社の共同運営者として、Aを止めないどころか、Aの指示に唯々諾々とあえて従って、顧客に対する投資勧誘を続け、被害を拡大させたのであるから、その責任は決して軽くない。 3 また、出資法違反及び金商法違反についてみると、被告人らは、不特定多数の者を相手に、元本保証を約して総額約7600万円もの多額の預り金をしたほか、無登録での金融商品取引業を営んだもので、一般市民の財産の保護を通じて社会経済秩序を維持しようとした出資法の趣旨あるいは投資者の保護を図った金商法の趣旨を大きく損ねている。 - 17 – 本件の全体的なスキームはAが立案したものではあるが、被告人は、長年金融業に従事し、これら自身の行為が違法であることは十分わかっていたはずであるにもかかわらず、顧客に積極的に勧誘し、元本保証を約して預り金をし無登録営業をしていたのであるから、Aとの間でその責任に大きな差異はない。 4 被告人は、現実として顧客に返済できない状況が生じてしまったことについては申し訳ないと述べているものの、出資法違反及び金商法違反については顧客のためなら違法な行為をしても構わないと考えていた旨述べ、本件各詐欺事件についてはAの投資手腕を信じていたなどと不合理な弁解に終始していることからすれば、反省が深まっているとはいえない。 5 以上 のためなら違法な行為をしても構わないと考えていた旨述べ、本件各詐欺事件についてはAの投資手腕を信じていたなどと不合理な弁解に終始していることからすれば、反省が深まっているとはいえない。 5 以上からすると、本件の主犯は明らかにAであるとはいえ、被告人の刑事責任も相応に重い。他方で、本件各犯行による利得は、ほぼ全額をAが取得していて、被告人はP社の給料しか得ていない一方で、金銭消費貸借契約の名義人にされるなど、被告人もAに都合良く利用されていた面があることは否定できないこと、被告人には前科前歴がないことという事情もあるので、以上を勘案し、主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑:懲役4年)令和6年6月28日岡山地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官本村曉宏 - 18 – 裁判官杉浦一輝 裁判官横井裕美は、転補のため、署名押印することができない。 裁判長裁判官本村曉宏
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