令和6(わ)1488 建造物侵入、器物損壊、強盗致傷、窃盗

裁判年月日・裁判所
令和7年9月5日 横浜地方裁判所
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判決文本文4,761 文字)

主文 被告人を懲役6年6月に処する。 未決勾留日数中230日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実) 第1(令和6年9月27日付け起訴状記載の公訴事実)被告人は、金品を強奪しようと考え、A、B及び氏名不詳者らと共謀の上、令和6年9月3日午後6時36分頃、有限会社C取締役Dが看守する神奈川県鎌倉市ab丁目c番d号有限会社Cに、出入口自動ドアから侵入し、その頃、同所において、同店店員E(当時41歳)に対し、その面前で、前記有限会社 C所有の同店ショーケースを手に持っていたバールでたたき割る(損害見積額9万8890円)などして同人を脅迫し、もって他人の物を損壊するとともに、その反抗を抑圧して、前記D管理の腕時計2個(販売価格合計2万2000円)を強奪し、その際、前記Eが大声で叫んで助けを求めながら前記Aを取り押さえようとしたため、同人が前記Eの頭部を左手等で押さえつけながら、その口 を右手で塞ぐなどの暴行を加え、同人に治癒まで約2週間を要する見込みの口唇打撲傷、左上腕擦過傷等の傷害を負わせた。 第2(令和6年12月16日付け追起訴状記載の公訴事実)被告人は、前記B、F及び氏名不詳者らと共謀の上、金品窃取の目的で、令和6年9月4日午後8時頃から同月5日午前5時30分頃までの間に、一般社 団法人G代表理事Hが看守する神奈川県座間市ef丁目g番h号G倉庫内に、北東側引き戸の施錠を工具を用いるなどして開錠して侵入し、その頃、同所において、同人管理の現金約30万円及びノートパソコン等6点(時価合計約26万100円相当)を窃取した。 (事実 号G倉庫内に、北東側引き戸の施錠を工具を用いるなどして開錠して侵入し、その頃、同所において、同人管理の現金約30万円及びノートパソコン等6点(時価合計約26万100円相当)を窃取した。 (事実認定の補足説明) 1 争点 本件の争点は、強盗致傷等の事件について、① 被告人の故意及び共犯者らとの意思連絡が認められるか、② ①が認められた場合に、被告人に共同正犯が成立するか、幇助犯が成立するにとどまるかである。 2 故意及び意思連絡について(争点①)⑴ 当事者間に争いがなく関係証拠により認められる客観的事実 被告人は、SNSを通じて運搬関係の仕事に応募し、「シグナル」を通じて氏名不詳者から指示を受け、事件当日は被告人が所有する自動車を運転して待ち合わせ場所に行き、AとBを同車両に乗せた。なお、AとBもSNSで仕事に応募し、それぞれの氏名不詳の指示役からの指示でその場に集まっていた。 Aは、同人の指示役と連絡を取りながら、指示された行先を随時被告人に伝 えて、被告人はそのとおり運転し、Aが行先の各店舗で包丁や手袋を購入した後、被告人は、I の駐車場に駐車されたレクサスの後ろに被告人車両を駐車させた。被告人ら3名がレクサスに乗り込むと、Aがレクサスの運転席にいた男に対して、「タタキをやるのか」という趣旨の言葉を怒鳴るなどし、運転席の男はレクサスから降車して歩き去った。被告人、A及びBは、再び被告人車両 に乗って複数の店舗を回り、Aはバールやトートバッグ等を購入した。その後、後記で認定する犯行手順や駐車場所に関する指示等があった。 そして、被告人は被告人車両を本件質屋近くの月極駐車場に停車させ、AとBはそれぞれバールや包丁をトートバッグに入れて持って、本件質屋に行き、強盗致傷等の犯行に及んだ。 に関する指示等があった。 そして、被告人は被告人車両を本件質屋近くの月極駐車場に停車させ、AとBはそれぞれバールや包丁をトートバッグに入れて持って、本件質屋に行き、強盗致傷等の犯行に及んだ。 犯行後、Aは犯行現場で取り押さえられたため、Bのみが被告人車両に戻ってくると、被告人は車両のエンジンをかけた状態で待機しており、Bを乗せて発車した。被告人は、犯行から約4分後には、あらかじめ被告人の指示役から伝達されていた受け渡し場所まで被告人車両を運転して到着し、Bが被害品の腕時計2点の受け渡しをした。 ⑵ 犯行手順や駐車場所等に関する指示の状況 この点、AとBは、「犯行道具等の買い物が終わった後、本件質屋近くの月極駐車場に停車するまでの間に、スピーカーフォンの状態でAの指示役から犯行手順や駐車場所の指示を受けた。Aの指示役は、AとBが包丁とバールを持って本件質屋に入り、ショーケースをバールでたたき割って、店員を包丁で脅し、その隙に貴金属をトートバッグに入れて持ち去ること、犯行は1分以内で 終わらせること、AとBがすぐ逃げられるように、被告人は本件質屋の目の前に被告人車両を駐車すること、という指示をした。この指示を受けて、本件質屋の近くまで被告人車両で行ってみたが、本件質屋の目の前に駐車するのは困難であったため、前記月極駐車場に駐車することにした。」と証言する。 同証言の信用性について検討すると、まず、Aの指示役からの指示状況につ いて、AとBの証言は具体的かつ詳細で一致している。また、犯行を確実に成功させようとしている指示役の立場からすると、関与者それぞれの役割の関係性や重要性を相互に理解させるため、一連の犯行全体について被告人を含む3名全員に説明をすることが合理的であり、その点でAとBの証言は自然で としている指示役の立場からすると、関与者それぞれの役割の関係性や重要性を相互に理解させるため、一連の犯行全体について被告人を含む3名全員に説明をすることが合理的であり、その点でAとBの証言は自然である。 さらに、被告人が、月極駐車場でAとBを送り出した後、被告人車両のエンジ ンをかけた状態で待機しており、数分後にBのみが戻ってくると、ものの数分で回収場所まで移動していることは、被告人を含め事前に犯行手順等の説明を受けていたということと整合的である。 一方、被告人は、犯行手順等の説明は聞いていないと弁解するが、同弁解は、前記の犯行前後の被告人の客観的行動と整合しないほか、Bらの証言から認め られる、指示を受けた際の状況とも整合せず、信用できない。 以上によれば、車内にいる被告人ら3名に聞こえるスピーカーフォンの状態で犯行手順や駐車場所の指示がされた点を含め、AとBの証言は信用できる。 ⑶ 検討被告人は、事件当日にAとBと合流した時点では、指示役からの仕事の説明 が曖昧であることや、メッセージの消去が容易で秘匿性の高い「シグナル」で 連絡が来ることなどの、一般的な仕事とは異なるというべき点を認識していたといえる。レクサスに乗り込んだ場面に至ると、被告人が「タタキをやるのか」という趣旨の言葉の内容を聞き取れた(理解できた)とまでは認められないとしても、他人の車に3名で乗り込んでAが怒鳴り、その怒鳴った相手が被告人ら3名との関わりを拒むべく立ち去った状況を見た被告人としては、被告人ら 3名が関わっている仕事は犯罪かもしれないという可能性は認識したと考えられる。 このような経緯を経て、前記⑵で認定したとおり、被告人ら3名はAの指示役から犯行手順等の指示を受けた。この時点で被告人は、AとBが質屋に侵入し、バ しれないという可能性は認識したと考えられる。 このような経緯を経て、前記⑵で認定したとおり、被告人ら3名はAの指示役から犯行手順等の指示を受けた。この時点で被告人は、AとBが質屋に侵入し、バールでショーケースをたたき割るなどして金品を強奪すること、被告人 自身はその逃走手段として質屋付近で待機する役割であることを明確に認識し、一連の犯行について他の共犯者との意思連絡をしたと認められる。よって、遅くともこの犯行手順等の指示を受けた時点においては、強盗及びそれに伴う建造物侵入や器物損壊についての被告人の故意及び共謀が認められる。 3 共同正犯か幇助犯かについて(争点②) AとBは店員のいる営業中の店舗から金品を強奪するのであるから、店員や通報を受けた警察官から追跡される可能性が高いことは明らかである。犯罪の目的達成のためには、実行犯が速やかに逃走できるように、被告人が被告人車両を用意して、本件質屋の近くですぐに発車できる状態で待機していることは必要不可欠であったと評価できる。また、運転手が乗車している逃走用の車両 がすぐそばで待機していることは、実行犯であるAとBに対し、店員等から追跡される可能性の高い犯行であっても逃げきれるという安心感を与えたと考えられる。 そして、被告人は、犯行直前ではあるが、自分が強盗等に関与していること及びその一連の犯行計画の中での自分の役割の重要性も十分に理解した上で、 その役割を全うしたと認められる。被告人は指示役に個人情報を把握されてい たとはいえ、指示役から犯行をするように脅されていたことなどをうかがわせる事情は見当たらないから、被告人は自らの意思で、報酬を得るために、犯罪の目的達成のために必要不可欠な役割を果たしたという他なく、被告人には共同正犯が成立する。 に脅されていたことなどをうかがわせる事情は見当たらないから、被告人は自らの意思で、報酬を得るために、犯罪の目的達成のために必要不可欠な役割を果たしたという他なく、被告人には共同正犯が成立する。 (量刑の理由) 1 強盗致傷等と窃盗等の事案は、いずれも匿名・流動型犯罪と呼ばれる組織的な犯行であり、被告人と共犯者らが、SNS上で知り合った氏名不詳の指示役の指示に従って、報酬欲しさから犯行に及んだものである。 2 量刑の中心となる強盗致傷等の事案についてみると、実行役らがバールでショーケースをたたき割り、店員ともみ合いになって怪我を負わせたという 犯行態様は危険かつ悪質であり、被害結果も軽視できない。被告人は、従属的立場にあったとはいえ、運転手役として車で実行役2名を被害店舗付近へ送り、すぐ発車できる状態で待機した上、犯行後は逃げてきた実行役と速やかに逃走するなどしており、強盗の完遂に重要な役割を果たした。もっとも、被告人は、犯行直前に強盗等に関与していることを認識し、被害店舗で実際に暴行脅迫は せず、運転手役にとどまることからすると、実行役らと比べて責任の程度は軽いというべきである。 3 窃盗等の事案についてみると、被告人は、実際に犯行の準備、実行及び報酬の受け取りまで行っており、引き続き従属的な立場とはいえ、より主体的に関与している。指示役から説得された末に犯行に及んだとしても、強盗致傷 等事件の直後に犯罪を選択したことに変わりはない。 4 そこで、同種事案(共犯で行われた店舗狙いの強盗致傷罪を処断罪とし、これと同一又は同種の罪の件数が1件であり、量刑上考慮した前科がないもの)の量刑傾向及び強盗致傷等事件の実行役らとの刑の均衡等を踏まえた上で、強盗致傷等事件について被告人が自分の行為と真摯に向き合っていな 同一又は同種の罪の件数が1件であり、量刑上考慮した前科がないもの)の量刑傾向及び強盗致傷等事件の実行役らとの刑の均衡等を踏まえた上で、強盗致傷等事件について被告人が自分の行為と真摯に向き合っていないことは指 摘せざるを得ないが、窃盗等事件の被害者に対し、家族の助力を得て50万円 を弁償していることも併せ考慮し、被告人に対しては、主文の刑に処するのが相当と判断した。 (求刑:懲役11年)令和7年9月8日横浜地方裁判所第4刑事部 裁判長裁判官寺澤 真由美 裁判官小泉健介 裁判官山田洋子

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