主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告の原告に対する平成12年12月28日付け公文書部分公開決定のうち,別紙土地目録1及び2記載の土地に関する不動産等の譲受けの対価の支払調書中,支払金額欄部分についてこれを不公開とした部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,宮崎市情報公開条例(平成10年宮崎市条例第33号,以下「本件条例」という。)に基づき,宮崎市が施行している東部第二土地区画整理事業(以下「本件事業」という。)のために買収の対象となった土地の一筆毎の面積及び買収代金額等を記録した公文書の公開を求めたところ,当該公文書のうち買収代金額(以下「本件係争情報」という。)が記載された部分について不公開とする決定を受けたことに対して,これを不服として,本件係争情報が記載された部分についての不公開決定の取消しを求めた事案である。 2 前提となる事実争いのない事実並びに甲1号証,甲2号証,甲3号証の1ないし11,甲6号証及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1) 本件条例の内容本件条例は,実施機関(市長,教育委員会,選挙管理委員会,公平委員会,監査委員,農業委員会,固定資産評価審査委員会,水道事業管理者及び消防長をいう(2条1項)。以下同じ。)の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び写真(マイクロフィルム,磁気テープ等から出力され,又は採録された文書,図画及び写真を含む。)であって決済,供覧その他これらに準ずる手続が終了し,実施機関が管理しているものを公文書と定義し(2条2項),宮崎市内に住所を有する者等の5条各号に定めるものは,実施機関に対してその公開を請求することができる旨規定している。 らに準ずる手続が終了し,実施機関が管理しているものを公文書と定義し(2条2項),宮崎市内に住所を有する者等の5条各号に定めるものは,実施機関に対してその公開を請求することができる旨規定している。そして,本件条例は,9条において,同条各号のいずれかに該当する情報が記録された公文書については公開しないことができる旨規定している。本件条例9条のうち,2号及び6号の内容は以下のとおりである。 2号個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され,又は他の情報と照合することにより識別され得るもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 イ法令又は条例等により何人でも閲覧することができる情報ロ公表することを目的として実施機関が作成し,又は取得した情報ハ法令又は条例等の規定に基づく許可,認可,届出等の際に実施機関が作成し,又は取得した情報であって,公開することが公益上必要であると認められる情報ニ公務員(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員をいう。)の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の職及び氏名で,公開することにより当該公務員又はその家族の生命,身体,健康又は生活の保護に支障が生ずるおそれのないもの6号市又は国等が行う検査,試験,入札,交渉,渉外,争訟,人事,監査,取締り等の事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業の目的が損なわれるおそれのあるもの,関係当事者間の信頼関係が損なわれるおそれのあるもの又は当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の公正かつ適正な執行に支障が生ずるおそれのあるもの(2) 本件一部不公開決定の経緯ア原告は,宮 当事者間の信頼関係が損なわれるおそれのあるもの又は当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の公正かつ適正な執行に支障が生ずるおそれのあるもの(2) 本件一部不公開決定の経緯ア原告は,宮崎市内に住所を有する者であり,被告は,本件情報が記載された公文書である別紙土地目録1及び2の各土地に関する不動産等の譲受けの対価の支払調書(以下「本件公文書」という。)を管理している同文書に関する本件条例上の実施機関である。 イ宮崎市は,本件事業を行うにあたり,事業を円滑に推進するため仮設住宅(仮換地の指定後,従前地上に存在する建物を仮換地上に移転する場合に,移転に要する期間同建物の居住者に提供するための住宅)を設置する計画をたて,平成10年度ないし平成12年度に仮設住宅用地として別紙土地目録1記載の各土地を売買により取得した。 ウまた,本件事業を行うにあたり,施行地区内の宮崎市立宮崎港小学校の敷地も一般の宅地と同様に減歩することになるため,本件事業の施行に合わせて同小学校を整備することにし,小学校として必要かつ適切な面積の敷地を確保するために,平成11年度,平成12年度に別紙土地目録2記載の各土地を取得した。 エ上記の仮設住宅用地及び小学校用地の取得に関しては,宮崎市により,①用地の選定,②土地所有者との事前協議,③土地所有者との事前交渉(不動産価格の鑑定及び用地測量の了解),④用地測量,不動産価格の鑑定,⑤確定面積,確定単価による土地所有者との最終交渉,⑥土地売買契約の締結という経過で行われ,売買契約自体の内容は私人間のものと同様であるが,宮崎市は,売買契約締結にあたりその金額に関して,その鑑定価格を基準として定めなければならないとの制約を課されている。 オ原告は,平成12年12月20日,被告に対し本件事業に伴い先行買収 ,宮崎市は,売買契約締結にあたりその金額に関して,その鑑定価格を基準として定めなければならないとの制約を課されている。 オ原告は,平成12年12月20日,被告に対し本件事業に伴い先行買収した土地の一筆毎の面積及び本件係争情報等が記録されている公文書について本件条例に基づいて公開請求を行ったところ,被告は,平成12年12月28日,本件公文書中,土地の一筆毎の面積の記載部分については公開するが本件係争情報の記載部分については公開しないとの部分公開決定(以下「本件一部不公開決定」という。)をし,平成13年1月12日,本件公文書中,支払いを受ける者の住所(居所)又は所在地欄,氏名又は名称及び支払金額欄の記載を除いた部分を公開した。 カ原告は,本件一部不公開決定について,同年2月1日,宮崎市に対し,本件係争情報の記載部分についても公開を求めて異議申し立てをしたが,同年7月24日これを棄却され,同年10月22日本件訴訟を提起した。 3 争点本件係争情報が本件条例9条2号または6号に該当するかどうかが本件の争点である。 (1) 本件係争情報が本件条例9条2号に該当するか(被告の主張)本件係争情報は,以下のとおり,本件条例9条2号に該当する。 ア本件条例が定める公文書公開請求権は,憲法21条に基礎を置く知る権利に奉仕するものであるが,同条によって直接保障された権利ではなく,条例の制定によって初めて具体的請求権として創設された権利である。したがって,本件条例はあくまで文理により判断されるべきである。 そして,本件条例9条自体が,公表によって侵害されるおそれのあるプライバシーと公表によって実現される公益との比較衡量に基づいて,公開しないことについての合理的理由がある必要最小限の情報を可能な限り限定的かつ明確に類型化 自体が,公表によって侵害されるおそれのあるプライバシーと公表によって実現される公益との比較衡量に基づいて,公開しないことについての合理的理由がある必要最小限の情報を可能な限り限定的かつ明確に類型化して示したものであることからすれば,不公開理由に該当するか否かは,不公開条項の文言に即して客観的に判断すれば足りる。 イ個人が所有する土地を譲渡することに伴う売買代金額等の当該個人の権利義務に関する事項は,個人の資産・所得に関する情報であり,個人のプライバシー権に属するものとして最大限保護されるべきものであるから,本件条例9条2号に規定されている「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は他の情報と照合することにより識別され得るもの」(以下,これを「個人識別情報」という。)に該当する。 さらに,前記代金額は,不公開事由のさらなる例外として公開事由を定めた本件条例9条2号ただし書イ,ロ,ハ,ニのいずれにも該当しない。 したがって,本件係争情報が,個人識別情報として,本件条例の不公開事由にあたることは明らかである。 (原告の主張)本件係争情報は,以下のとおり本件条例9条2号に該当せず,また仮に該当するとしても,公益上特に必要があるため公開しないことが著しく正義公平に反するものとしてこれを不公開とすることは裁量権の逸脱,乱用にあたることになるため,不公開事由とはならない。 ア本件条例9条の解釈について本件条例が,その目的として「公文書の公開を請求する権利及び公開に関する必要な事項を定めることにより,広く市政に関する知る権利を尊重するとともに,市民の市政への参加を促進し,市政への理解と信頼を深め,もって公正で開かれた市政の推進に資することを目的とする。」(1条)と規定していること,解釈及び運用にあたっては「公文書の公 尊重するとともに,市民の市政への参加を促進し,市政への理解と信頼を深め,もって公正で開かれた市政の推進に資することを目的とする。」(1条)と規定していること,解釈及び運用にあたっては「公文書の公開を請求する権利を十分尊重する」と明記していること(3条前段),公文書の部分公開の規定(10条)を設けるとともに,不公開決定に理由の付記を求め(7条4項),不公開決定を行政処分として,行政不服審査法上の不服申立の途を開き(13条),最終的には司法判断を受けられるものとしていることなどからすると,本件条例は,憲法21条に基づく国民の知る権利,同法15条による参政権,同法92条以下の地方自治の本旨に基づく地方自治など,憲法により保障された基本的人権・民主主義の各原理を,市政の場において実質的に保障すること及び市政の公正な執行と市政に対する市民の信頼を確保することを目的として制定されたものであることは明らかである。 したがって,民主主義社会における知る権利が有する基本的重要性に鑑みると,個人情報がみだりに公にされないように最大限の配慮がなされなければならない(3条後段)としても,本件条例の解釈において知る権利の制約となる不公開事由該当性に関する解釈は,必要最小限の制限にあたるか否かという観点から,可能な限り限定的かつ厳格に解釈されなければならない。 個人識別情報の不公開については,そもそも個人のプライバシーを最大限保護するためのものであること,本件条例においては9条2号ただし書でイないしニにあげる公的な性質を有する情報については不公開にできる個人情報から除外しているが,これは,プライバシー保護と知る権利との2つの目的達成のため両者のバランスを考慮したものと解され,特にハの「法令又は条例等の規定に基づく許可,認可,届出等の際に実施機関が作成し,又 除外しているが,これは,プライバシー保護と知る権利との2つの目的達成のため両者のバランスを考慮したものと解され,特にハの「法令又は条例等の規定に基づく許可,認可,届出等の際に実施機関が作成し,又は取得した情報であって,公開することが公益上必要であると認められる情報」が不公開情報から除かれるとされていることからすると,不公開とされるべき個人識別情報とは,特定の個人に関する情報で,一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものについて,原則である情報公開の例外を認めたものと解すべきであり,ある情報がある特定の個人に関するものであったとしても,その公開によって個人のプライバシーの制限に至らない場合及び個人のプライバシーの制限にわたるが,公開しないことにより充足される知る権利にかかわる利益の方が大きい場合(プライバシーとしての要保護性が弱く,9条2号ただし書ハに定められたものに準じる公的な機会に作成された情報等)には,同条2号本文にいう個人識別情報には該当しないと解すべきである。 イ被告の裁量による公開の義務について本件条例9条本文は,「公開をしないことができる」と規定している。これは一定の場合には公開しないことができるとして,実施機関に裁量権を付与したものである。 そして,前記のとおり,公文書公開請求権が民主主義原理,住民自治の原則を具体化する知る権利の不可欠の内容をなすものであることからして,この裁量権は実施機関の全くの自由裁量ではなく,覊束裁量であって,本件条例9条各号に該当する場合であっても,公開しないことが裁量権の逸脱ないし濫用になる場合もあり得る。すなわち,当該情報が個人を特定する情報であったとしても,その情報を公開することが知る権利の観点からきわめて公益性が高いなど,公開しないことが著しく正義公 量権の逸脱ないし濫用になる場合もあり得る。すなわち,当該情報が個人を特定する情報であったとしても,その情報を公開することが知る権利の観点からきわめて公益性が高いなど,公開しないことが著しく正義公平に反する場合には,不公開に関する裁量権の逸脱ないし濫用となり,当該不公開処分は違法となると解すべきである。 ウ本件係争情報が個人識別情報に該当しないことについて本件係争情報は,土地の所在と登記簿の記載という他の情報と組み合わせなければ個人を識別する情報とはならないものであり,個人情報の端緒となる情報にすぎない。このような端緒となるにすぎない情報はそれ自体は個人情報として不公開とすべき要請は低いというべきである。 また,土地の譲渡価格は,個別取引による資産の価格であり,プライバシーとしての要保護性は,個人の全保有資産が公開されることと比べるとさほど高いものではないし,本件における価格の決定は,鑑定価格を基準とするものであり,当事者間の個別事情に基づく交渉結果が売買価格に反映される要素は少なく,ある程度見当がつく内容であるから,公開されてもプライバシーの侵害はそれだけ低いというべきである。 さらに,本件係争情報は,宮崎市が本件事業を進めるにあたって,必要とされる土地の買収にかかる取得価格であるが,都市計画区域内の土地であり各区画整理事業用地の譲渡であるから,この土地売買は,公有地拡大法による先買制度により買い取られたのと同様の公的性質を有しており,租税特別措置法(34条)による譲渡所得の特別控除を受けることができるのであって,通常の売買と異なりある程度公的性質を帯びその限度で特殊性を有する売買ということができる。 加えて,係争情報は,宮崎市が土地取得にどれだけ公金を使用したかを明らかにするものであり,市税を使った売買代金額が適正であ りある程度公的性質を帯びその限度で特殊性を有する売買ということができる。 加えて,係争情報は,宮崎市が土地取得にどれだけ公金を使用したかを明らかにするものであり,市税を使った売買代金額が適正であったかは本件係争情報を知らなければ判断できない。 このように土地の売買について,ある程度公的性質を帯びていることや市民が市税の使用について監視するための必要性を考えると,本件係争情報は重要であり,公開することが公益上特に必要であるといえる。 したがって,本件係争情報は個人識別情報にはあたらないといえる。 仮に,本件係争情報が個人識別情報にあたるとしても,上記のとおり公開することが公益上特に必要であるといえるから,これを公開しないことは著しく正義公平に反するといえ,本件一部不公開決定は不公開に関する裁量権の逸脱ないし濫用として違法となる。 (2) 本件係争情報が本件条例9条6号に該当するか(被告の主張)一般に,人は,その財産の状況,収入の状況を世間一般に知られるのを望まないものであり,これは,土地の売主の場合も同様であって,買主が誰であれ,土地の売買代金額を世間一般に知られることを望んでいないことは明らかである。 土地区画整理事業において,用地を通常の売買の形式によって取得するためには,土地の所有者との間で信頼関係を築きながら,交渉を進めていく必要があるところ,上記のとおり,土地の売主は,土地の売買代金額を世間一般に知られることを望んでおらず,後日売買代金額が公表されるということになると,当事者との信頼関係を形成することはきわめて困難となり,今後同様の土地区画整理事業その他土地の取得が必要となる事業においては,その遂行が事実上阻害されることとなってしまう。したがって,売買代金額に関する情報が9条6号にあたることは明白である。 なり,今後同様の土地区画整理事業その他土地の取得が必要となる事業においては,その遂行が事実上阻害されることとなってしまう。したがって,売買代金額に関する情報が9条6号にあたることは明白である。 (原告の主張)本件事業に基づく土地の取得は,鑑定価格を基準としてその売買価格を決めるものであり,交渉の余地は少なく,また,租税特別措置法(34条等)の適用による優遇措置もあるなど,公的側面を帯びた特殊性のある売買であり,譲渡価格について全く不公開にされることを期待できるようなものではなく,公開したからといって,土地の所有者との間の信頼関係を不当に害することはないのであるから,事業執行に支障が生ずることはない。 本件事業に基づく土地の取得はすでに終了しており,不公開事項を公開しても本件事業に影響を与えることはない。仮に,本件事業に基づいて土地買収が行われるとしても,近隣地の所有者が,土地の個別要因の差異を無視して係争情報にある価格条件に固執するなど不合理な行動に出ることは考えられず,本件事業の有意な支障になることは考えがたく,ましてや,本件事業と異なる用地取得を伴う公共事業の支障となることは考えられない。 したがって,本件情報は本件条例9条6号に該当しない。 第3 争点に対する判断 1 本件条例9条2号の解釈本件条例が定める公文書の公開制度は,地方自治の本旨に基づき,市政に関する知る権利を尊重するとともに,市民の市政への参加を促進し,公正で開かれた市政の推進に資することを目的としており(本件条例1条),憲法21条に基づく国民の知る権利,同法15条による参政権,同法92条以下の地方自治の本旨に基づく地方自治など,憲法により保障された民主主義の諸原理を市政の場における実現に資することを目的として創設されたものといえる 民の知る権利,同法15条による参政権,同法92条以下の地方自治の本旨に基づく地方自治など,憲法により保障された民主主義の諸原理を市政の場における実現に資することを目的として創設されたものといえる。したがって,本件条例に基づく公文書の公開請求権は,民主政治の実現に資する重要な公益性を有しているから,本件条例3条において規定されているとおり,本件条例の解釈及び運用にあたって十分尊重されるべきであり,その範囲を不当に限定して解釈されるべきではないことは原告において主張するとおりである。 しかし,本件条例は,他方で,公文書は公開するとの原則をとりつつも,9条において,一定の情報が記録されている文書は公開しないことができるとし,その中の2号において,プライバシーを中核とする個人の利益を保護するため,プライバシー概念の範囲の不明確さを考慮して,個人が識別される情報を原則不公開としたうえで,本件文書公開制度による公開によって個人の利益が侵害されない場合や個人の利益が侵害されても公開することの公益が優越するため開示すべき場合を例外的な公開事由として規定するいわゆる個人識別情報型規定を置き,個人に関する情報を保護する立場をとっている。 このように,本件公文書公開制度が本件条例により創設されたものであり,本件条例が公文書の公開制度の公益性を前提としつつも個人の利益に配慮して具体的な個人の情報の保護規定を定めていることからすれば,個人に関する情報の記録された文書について,公開すべき公益性と不公開として保護すべき個人の利益とをどのように調整するかは,本件条例の規定に即して判断されるべきである。そして,本件条例には,3条において特別に,実施機関に,公開請求本件条例の解釈運用にあたり,個人に関する情報がみだりに公にされることがないように最大限の配慮をし の規定に即して判断されるべきである。そして,本件条例には,3条において特別に,実施機関に,公開請求本件条例の解釈運用にあたり,個人に関する情報がみだりに公にされることがないように最大限の配慮をしなくてはならない旨を規定し,さらに,個人に関する情報については,公開すべき公益上の必要性がある場合として,9条2号ハの情報に限定してのみ規定を置き,3号のイないしハにおけるように一般的な公益の必要による公開を定める規定を定めていないことを考慮すれば,本件条例の解釈として,9条2号に規定する個人に関する情報については,同号ハまたはこれに準ずる場合及び外形上は個人に関する情報であるがその公開によってプライバシー等の個人の利益が侵害されないことが明らかな場合を除き,同条に該当する限りは,当該情報を公開すべき公益上の必要性の有無にかかわらず公開の対象とならない個人識別情報に該当すると解するべきである。 よって,本件条例の解釈上,公開することにより充足される公益と侵害される個人の利益を比較して,前者が優越する場合は一般的に公開の対象とならない個人識別情報には該当しないと解すべきであるとする原告の見解は採用することができない。 2 本件係争情報が個人識別情報に該当するかについてそこで,前記観点から本件係争情報が個人識別情報に該当するかについて検討する。 本件において問題となっているのは,土地の売買代金額であるところ,この情報が,登記簿などによって公開されている各土地の地番及び所有者の情報と照合することにより,特定の個人に関する情報として識別することができる情報であることは明らかである。 そして,土地をどのような価格で売却したものであるかということは,個人の財産状態に関する情報であり,売却した者が通常公開されることを望まないプライバシーにかかる情 情報であることは明らかである。 そして,土地をどのような価格で売却したものであるかということは,個人の財産状態に関する情報であり,売却した者が通常公開されることを望まないプライバシーにかかる情報であると認められるから,外形上,本件条例9条2号に該当する。 一方,原告は,本件係争情報について,区画整理事業のための土地買収にかかる売買契約の公的性質及び宮崎市が土地取得に使った費用の適正さを監視するため当該情報を公開することの必要性等を論拠として,公開すべき公益性が公開しないことによって保護される個人の利益を上回ると主張するところ,確かに本件情報の公開に原告の主張する公益性が認められることは明らかではあるが,本件係争情報は本件条例9条2号ハに関する情報ではないから,公開することが公益上必要であるかどうかによって公開が認められる場合にはあたらず,原告の主張は理由がない。 したがって,本件係争情報は,本件条例9条2号の個人識別情報に該当し,不公開情報にあたる。 3 裁量による公開の要否について原告は,本件条例9条の文面から,同条に規定する情報が記録された公文書であっても被告において裁量により公開が可能であり,公開が義務づけられる場合がある旨主張する。 しかし,本件条例9条の解釈上,同条に規定する情報が記録された公文書を被告が裁量により公開できると解するとしても,同条2号に該当する個人識別情報については,本件条例が前記のとおり個人情報の保護のため慎重な配慮をしていることを考慮すれば,公開するについて格別の公益上の必要性が存在する場合に限られると解すべきであるところ,本件において,本件係争情報を公開するにつき,このような格別の公益上の必要性が存在するとは認められない。 よって,被告が本件公文書中本件係争情報を記載した部分について公開しな と解すべきであるところ,本件において,本件係争情報を公開するにつき,このような格別の公益上の必要性が存在するとは認められない。 よって,被告が本件公文書中本件係争情報を記載した部分について公開しなかったことについて,裁量権の行使に濫用又は逸脱があったとはいえない。 4 結論以上によれば,本件係争情報が本件条例9条2号に該当することは明らかであり,本件一部不公開決定において本件公文書中本件係争情報が記載された部分を公開しなかったことにつき違法とすべきその余の事由があったと認めることもできないから,その余の点につき判断するまでもなく,本件請求には理由がない。よって,主文のとおり判決する。 宮崎地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官中山顕裕裁判官中村心裁判官橋本耕太郎別紙略
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