平成14(ワ)8424 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年3月5日 大阪地方裁判所
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判決文本文6,185 文字)

平成16年3月5日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成14年(ワ)第8424号損害賠償請求事件平成15年12月26日口頭弁論終結判決 主文 1 被告は,原告に対し,557万8675円及びうち220万2141円に対する平成14年6月17日から,うち337万6534円に対する平成14年8月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを9分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求被告は,原告に対し,5055万6076円及びこれに対する平成14年6月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求被告は,原告に対し,4355万6076円及びこれに対する平成14年8月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,貸金業者である被告と長年にわたり金銭消費貸借契約取引を行ってきた原告が,被告に対し,主位的に被告が原告の年金証書,年金振込先の預金通帳及び印鑑を保管し,実質的に年金を担保として貸付を行い,年金から回収を図った行為が不法行為に該当するとして損害賠償を求め,予備的に,年金からの支払額を不当利得としてその返還を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠(書証番号は特記しない限り枝番を含む。)により容易に認められる事実)(1) 被告は,貸金業の登録をして,Aの商号で一般貸金業を営む会社であり,原告は,昭和2年9月1 前提事実(争いのない事実及び証拠(書証番号は特記しない限り枝番を含む。)により容易に認められる事実)(1) 被告は,貸金業の登録をして,Aの商号で一般貸金業を営む会社であり,原告は,昭和2年9月12日生まれの男性で,定年後嘱託を経て昭和60年に勤務先を退職し,昭和62年から国民年金・厚生年金保険年金を受給していたところ,昭和63年3月から,被告との間で金銭消費貸借契約取引を行っていた者である(甲8,10,11,15,乙3ないし85)。 (2) 被告は,原告の年金証書,年金振込先の預金通帳及び同預金の届出印(以下,上記証書,通帳及び印鑑を「証書等」という。)を保管し,原告は,平成14年6月まで被告との取引を行っていたが,原告代理人弁護士が,同年7月17日被告に到達した内容証明郵便により証書等の返還を要求したため,被告は,同月22日,原告代理人に対し,証書等を返還した(甲12,13)。 (3) 原告は,平成14年8月21日,本訴を提起し,訴状は,同月29日,被告に送達された。また,被告は,第1回弁論準備手続期日で原告の不法行為による損害賠償請求権について,第2回弁論準備手続期日で原告の不当利得返還請求権について,それぞれ消滅時効の援用をした。 2 争点本件の争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおりである。 (1) 取引経緯(被告)原告と被告の取引経緯は,別紙1取引一覧表記載のとおりである。 (原告)昭和63年6月6日の200万円,平成2年12月19日の80万円及び平成3年2月18日の120万円の各借入の事実は否認する。昭和63年から平成2年まで原告と被告の取引がなかったということはない。原告は,生活費のため,被告と取引を継続していた。 原告は,昭和63年4月から平成14年6月まで,原告の年金から少なくとも合計4355万6076円を 年まで原告と被告の取引がなかったということはない。原告は,生活費のため,被告と取引を継続していた。 原告は,昭和63年4月から平成14年6月まで,原告の年金から少なくとも合計4355万6076円を被告に取られていた。 (2) 不法行為による損害賠償請求権ア不法行為該当性(原告)被告は,貸付金の回収のため原告の証書等を徴求,保管し,原告の年金から回収して取引を継続していたもので,譲渡,差押及び担保設定が禁止されている年金受給権を事実上担保として取引を行っていた。原告は,年金支給直後に被告から借金をしなければ生きていけない状況で被告との取引を継続し,月約8万円程度の生活費で困窮した生活を余儀なくされ,病気の妻に適切な治療を受けさせることができず,電話,電気等のライフラインを止められるなど,被告との取引により憲法25条により保障された生存権も侵害されたものであり,被告の行為は不法行為に該当する。 (被告)被告は,原告の依頼により証書等を保管し,原告の預金口座から貸付金の返済を受けたに過ぎず,預金口座のその余の入出金は原告がキャッシュカードを利用して行い,預金口座の管理は原告自ら行っていたものであり,年金を担保に貸し付けたものではなく,不法行為に該当しない。 イ消滅時効(被告)平成11年8月22日より以前の取引に係る原告の不法行為による損害賠償請求権は,取引日を起算点として3年の経過により時効消滅した。 (原告)原告が被告の不法行為を知ったのは平成14年7月であり,上記時点から消滅時効が進行するので,消滅時効は完成していない。 ウ損害(原告)原告と被告の本件取引は公序良俗に反するもので,消費貸借契約も無効であり,原告の年金から被告が取得した全額が損害となる。また,原告は,被告との取引により,前記のとおり過酷な生活を強いら (原告)原告と被告の本件取引は公序良俗に反するもので,消費貸借契約も無効であり,原告の年金から被告が取得した全額が損害となる。また,原告は,被告との取引により,前記のとおり過酷な生活を強いられ,大きな精神的苦痛を負った。原告は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告が取得した年金額4355万6076円,慰謝料400万円及び弁護士費用300万円の合計5055万6076円並びにこれに対する最終取引日である平成14年6月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告)金銭消費貸借契約は有効であり,原告の損害の主張は否認ないし争う。 (3) 不当利得返還請求権ア不当利得額(原告)前記のとおり金銭消費貸借契約は無効であり,原告の年金から被告が取得した全額が不当利得となる。原告は,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき4355万6076円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成14年8月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告)金銭消費貸借契約は有効であり,利息制限法に従って充当した結果による過払額が不当利得であることは認めるが,これを超える不当利得は否認ないし争う。 イ消滅時効(被告)原告の本訴提起より10年以上前の取引に係る原告の不当利得返還請求権は,取引日より10年の経過により時効消滅している。 (原告)原告の不当利得返還請求権は,最終支払日を起算点として消滅時効が進行すると解すべきである。 そうでないとしても,その不法性から消滅時効の援用は不当である。 第3 争点に対する判断 1 取引経緯について証拠(甲10,11,15,乙3ないし86)によれば,別紙1取引一覧表番号65の平成11年8月13日の184万円の貸付を同年6 時効の援用は不当である。 第3 争点に対する判断 1 取引経緯について証拠(甲10,11,15,乙3ないし86)によれば,別紙1取引一覧表番号65の平成11年8月13日の184万円の貸付を同年6月17日の貸付と認め変更した上(乙22),上記記載の取引経過を認めることができる。原告は,昭和63年6月6日,平成2年12月19日及び平成3年2月18日の各借入の事実を否認するが,証拠(乙75,76の1,81)に照らし,上記認定を覆すことはできない。また,原告は,昭和63年から平成2年まで原告と被告の取引が継続していた旨主張するが,これを裏付ける証拠はなく,上記認定を覆すことはできない。なお,原告の預金口座(甲11)には,上記返済額と異なる出金額の記載があるが,いずれも手数料等によるもので,上記返済額を超える返済の事実を認めることはできない。 上記認定の取引経過によれば,原告と被告の取引は,昭和63年7月15日に清算された後,平成2年8月21日まで2年余りの間取引がなかったもので,昭和63年以前の取引と平成2年以後の取引とは一連の取引とは認められず,別個の取引というべきである。平成2年以後の取引について,利息制限法所定の制限利率に従い充当計算すれば,別紙2充当計算表記載のとおり認めることができる。 2 不法行為による損害賠償請求権について(1) 不法行為該当性について証拠(甲7,11,13ないし15,18,乙2,87,原告本人,被告代表者本人)によれば,被告が,原告に対する貸付金の回収のため,原告から証書等を預かり,原告に支給される年金が預金口座に振り込まれた後自動振替等により利息制限法所定利率を超える高利の貸付金の弁済を受け,さらに,年金受給日後に原告に対し新たに貸付を行い,弁済金との差額を交付して証書等を預かる取引を繰り返していたことが認め まれた後自動振替等により利息制限法所定利率を超える高利の貸付金の弁済を受け,さらに,年金受給日後に原告に対し新たに貸付を行い,弁済金との差額を交付して証書等を預かる取引を繰り返していたことが認められる。上記は,金融庁が定めた貸金業規制法に基づく事務ガイドライン3-2-3にも違反する行為であり,利息制限法所定の利率を超える利息等の支払義務がないことを知らず,また,証書等の返還を求める等の対応をしないと予想できる高齢者等に対し,上記の点を利用して証書等を預かることにより年金受給権を事実上の担保として貸付金の回収を図るものである。原告のような年金受給者に対し,証書等を預かることで高利の貸付取引を長期にわたって繰り返すことは,収入が限られる年金受給者に本来支払義務のない高利の利息を継続して支払うことを強いるものであって,その生活にも影響を与えることが十分予想できることであり,不法行為に該当するというべきである。 被告は,原告からの依頼により証書等を預かり,貸付金の返済を受けたに過ぎず,預金口座は原告が管理していた旨主張するが,原告の同意があったとしても,それは上記のように利息制限法所定の利率を超える利息等の支払義務がないことや,年金受給権に対する担保設定が禁止されていること等を知らないことを前提に同意しているものであって,違法であることを否定することはできない。また,被告において完全に預金口座を支配していたものではないとしても,自らの権利を守るために適切な対応をすることが期待できない高齢者である原告については,十分事実上の担保としても機能を有しているものであって,不法行為であることを否定することはできない。他に,上記認定を覆すに足りる証拠はない。 (2) 消滅時効について被告による不法行為は,証書等を預かり,年金が預金口座に振り込まれた後,これ であって,不法行為であることを否定することはできない。他に,上記認定を覆すに足りる証拠はない。 (2) 消滅時効について被告による不法行為は,証書等を預かり,年金が預金口座に振り込まれた後,これから出金して貸付金の弁済に充当する都度損害が発生するものであって,弁済充当される行為ごとにそれぞれ別個の不法行為に該当するというべきである。原告は,被告から借入を受ける際に取引計算書を受領し(甲15),それまでの取引内容について認識したものと認められ,被告の不法行為及び損害について知ったものと認められる。したがって,平成11年8月16日の貸付(別紙2充当計算書番号115)以前の取引に係る不法行為による損害賠償請求権は,時効により消滅したことが認められる。 (3) 損害について原告は,年金担保融資は公序良俗に反し,消費貸借契約も無効であって,原告から被告への交付額全額が損害である旨主張するが,消費貸借契約が公序良俗に反して無効であると認めるべき事情はない。また,本件取引において原告が被告から受領した貸付金は損害から控除すべきものであり,別紙2充当計算書番号116以後の取引に係る被告の不法行為による損害は,原告から被告への実質交付額182万2141円と認めることができる。 さらに,被告の不法行為によって原告は困窮した生活を強いられたことに照らせば(甲18,19,原告本人),原告の損害は経済的損失を賠償するだけでは回復できず,精神的損害に対する慰謝料も認めるべきである。上記不法行為による経済的損害額に照らし,18万円の慰謝料を認めるのが相当である。さらに,上記合計200万2141円に照らし,相当因果関係のある弁護士費用として20万円を認めるのが相当である。したがって,原告の不法行為による損害賠償請求は,220万2141円及びこれに対する平成14年6月 記合計200万2141円に照らし,相当因果関係のある弁護士費用として20万円を認めるのが相当である。したがって,原告の不法行為による損害賠償請求は,220万2141円及びこれに対する平成14年6月17日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する限度で理由がある。 3 不当利得返還請求権について(1) 不当利得額について原告は,金銭消費貸借契約が無効で,原告から被告への交付額全額が不当利得となる旨主張するが,前記のとおり,金銭消費貸借契約を無効とすべき理由はなく,利息制限法の制限利率に従って充当した結果による過払額が不当利得と認められる。上記不法行為による損害賠償請求に係る部分を除く不当利得額は,別紙2充当計算書番号115残元金欄記載のとおり337万6534円となる。 (2) 消滅時効について上記のとおり過払額が不当利得となる以上,原告の不当利得返還請求権は本訴提起前10年以内の取引の返済に係るものであり,消滅時効の適用はない。したがって,原告の不当利得返還請求は,337万6534円及びこれに対する平成14年8月30日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。なお,昭和63年7月15日における不当利得返還請求権は時効により消滅している。 4 結論以上によれば,原告の本訴請求は,557万8675円及びうち220万2141円に対する平成14年6月17日から,うち337万6534円に対する平成14年8月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないので棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判官 ,その余の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないので棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判官山田明

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