令和5年12月20日判決言渡 令和5年(ネ)第10070号損害賠償等請求控訴、同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所令和3年(ワ)第13895号)口頭弁論終結日令和5年10月4日判決 控訴人・附帯被控訴人 TRAVELPLUSINTERNATIONAL株式会社(以下「控訴人」という。) 同訴訟代理人弁護士中野博之 同訴訟復代理人弁護士辻野篤郎 被控訴人・附帯控訴人ヴェンガーエスアー(以下「被控訴人」という。) 同訴訟代理人弁護士松永章吾、寺前翔平、丸山悠 同訴訟代理人弁理士前川砂織 主文 1 本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とし、附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。 3 被控訴人のため、この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨及び附帯控訴の趣旨 1 控訴の趣旨 ⑴ 原判決中、控訴人の敗訴部分を取り消す。 ⑵ 前項の部分につき、被控訴人の請求を棄却する。 2 附帯控訴の趣旨 ⑴ 原判決中、被控訴人の敗訴部分を取り消す。 ⑵ 控訴人は、被控訴人に対し、8619万7575円及びこれに対する令和3年7月9日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事 趣旨⑴ 原判決中、被控訴人の敗訴部分を取り消す。 ⑵ 控訴人は、被控訴人に対し、8619万7575円及びこれに対する令和3年7月9日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。) 1 本件は、原判決別紙被控訴人商標目録記載の商標(本件商標)に係る商標権(本件商標権)を有する被控訴人が、原判決控訴人標章目録記載の各標章(控訴人各標章)はいずれも本件商標に類似し、控訴人が控訴人各標章を付したバックパック、肩掛けかばん、ブリーフケース、旅行かばん、カジュアルバッグ(控訴人商品)を輸入、販売し、又は販売のために展示する行為(販売等)は、 本件商標権を侵害するものであると主張し、控訴人に対し、主位的には不法行為に基づく損害賠償請求として、損害金1億6500万円(商標法38条3項に基づき算定される損害金1億5000万円及び弁護士費用1500万円の合計)の一部である1億円及びこれに対する令和3年7月9日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を、 予備的には不当利得返還請求として、上記1億5000万円の一部である1億円及びこれに対する前記同様の遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は、被控訴人の主位的請求のうち、1380万2425円及びこれに対する令和3年7月9日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、被控訴人のその余の請求をいずれも棄却したので、 控訴人が原判決のうち控訴人敗訴部分を不服として控訴し、被控訴人が原判決 のうち被控訴人敗訴部分を不服として附帯控訴した。 2 前提事実、争点及び争点に対する当事者の主張は、後記3のとおり補正し、後記4のとおり当審に 人敗訴部分を不服として控訴し、被控訴人が原判決 のうち被控訴人敗訴部分を不服として附帯控訴した。 2 前提事実、争点及び争点に対する当事者の主張は、後記3のとおり補正し、後記4のとおり当審における控訴人の補充主張を付加し、後記5のとおり当審における被控訴人の補充主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」第2の2及び3並びに第3(3頁15行目から28頁23行目まで)記載のとおりで あるから、これを引用する。 3 原判決の補正⑴ 原判決4頁9行目の後に改行して次のとおり加える。 「⑷ 被控訴人による前訴の提起被控訴人は、控訴人に対し、控訴人が控訴人各標章の付された控訴人商 品を販売等することにより被控訴人の本件商標権が侵害されていると主張し、控訴人商品の販売等の差止め及び控訴人商品の廃棄を求める訴えを東京地方裁判所に提起し(東京地方裁判所令和元年(ワ)第26463号。 以下、上記訴えに係る訴訟を「前訴」という。)、同裁判所は、令和2年9月29日、被控訴人の請求を認容する判決をした。控訴人は、同判決を不 服として控訴したが(知的財産高等裁判所令和2年(ネ)第10060号)、同裁判所は、令和3年4月21日、控訴人の控訴を棄却し、その後上記判決は確定した。」⑵ 原判決15頁17行目から18行目にかけて及び同頁19行目の「被告商品の割合」を「控訴人商品の売上げの占める割合」に改める。 ⑶ 原判決16頁6行目(「そして、」から始まる行)の「損益計算書(乙15)の売上高」を「控訴人の損益計算書(乙15)に記載された各年度における控訴人の売上高」に改める。 4 当審における控訴人の補充主張⑴ア控訴人が「SWISSWIN」のブランド名を付して販売する商品の大 部分の製品番号(品番)は「SW」から始まる 度における控訴人の売上高」に改める。 4 当審における控訴人の補充主張⑴ア控訴人が「SWISSWIN」のブランド名を付して販売する商品の大 部分の製品番号(品番)は「SW」から始まるものであるが、控訴人は、 設立当初から、「SWISSWIN」のブランド名を付して販売する商品に、控訴人各標章とは別の標章(以下「別標章」という。)を付すことがあった。 また、控訴人が「SUISSEWIN」のブランド名を付して販売する商品の大部分の製品番号(品番)は「SN」から始まるものであるが、控訴人は、設立当初から、「SUISSEWIN」のブランド名を付して販売 する商品に、別標章を付したり、SUISSEWINのブランド名だけを付したりしたことがあった。 このように、「SWISSWIN」のブランド名を付して販売する商品(品番が「SW」から始まるもの)や「SUISSEWIN」のブランド名を付して販売する商品(品番が「SN」から始まるもの)に別標章が付 されることがあることは明白であり、品番が「SW」や「SN」から始まる商品に特段の事情が認められない限り控訴人各標章が付されていると推認することは到底できない。 イ平成29年に開催された展示会を撮影した乙11に写っている展示台正面には、別標章とともに「SWISSWIN」のブランド名が表示されて いる。 また、上記展示会においては、別標章のみを付したリュックサック(品番SWA222393及び品番SW222306)及び「SWISSWIN」の商標だけを付したリュックサック(品番SW222681)が展示されており(乙46、47、49)、平成29年の時点で、品番が「SW」 で始まる商品に別標章を使用したもの及びSWISSWINの商標だけを使用した商品が存在していた。 222681)が展示されており(乙46、47、49)、平成29年の時点で、品番が「SW」 で始まる商品に別標章を使用したもの及びSWISSWINの商標だけを使用した商品が存在していた。 これらのことからしても、品番が「SW」から始まる商品に特段の事情が認められない限り控訴人各標章が付されていると推認することはできない。また、原判決が上記各品番の商品も侵害品と認定したことは誤りで ある。 ウ原審の判断は、控訴人に対し、販売した過去の全ての商品につき、付した標章と販売時期の立証を求めることにつながり、控訴人に不可能を強いるものである。商標法が、商標権侵害の事実を被侵害者に立証することを求めていることからしても、原審の判断は違法である。 ⑵ 控訴人は、同じ品番の商品でも顧客の要望等から標章を変える場合がある。 品番SW1880の商品は、平成30年5月28日に撮影した写真では別標章及び「SWISSWIN」の商標が付されているが(乙21、50)、平成31年4月頃には「SWISSWIN」の商標のみを付している(乙22)。 中国では、同じ形状のリュックサックに標章が付されたものと付されていないものの双方が流通しており(乙10)、標章の変更は極めて容易である。 さらに、SWISSWINの偽造品を製造・販売する業者が存在することや、控訴人が販売に関与していない並行輸入された商品が多数存在することからして、控訴人の商品の品番と同じ品番が付されているからといって控訴人の商品であるとは限らないし、商標又は標章が同じであるとは限らない。 したがって、原判決が「同一の製品番号の製品には同一の標章が付されて いると推認するのが相当であり、被告は、上記推認を妨げるような主張立証を具体的にするものではない」と判断したこと らない。 したがって、原判決が「同一の製品番号の製品には同一の標章が付されて いると推認するのが相当であり、被告は、上記推認を妨げるような主張立証を具体的にするものではない」と判断したことは誤りである。 ⑶ア乙40の写真に写された商品に付された標章は、乙40の3の商品が「SWISSWIN」の商標であり、それ以外が別標章である。控訴人は、「SWISSWIN」の商標も別標章も設立当初から使用している。原判決が、 乙40の提出経過を踏まえても、乙40の写真に写された商品がいずれも控訴人各標章が付されているものと推認することができると判断した根拠は示されておらず、そのように判断する根拠はない。したがって、原判決が乙40の写真に写された商品を侵害品と認定したことは誤りである。 イ本件商標は中国では効力がないので、中国においては本件商標と同一又 は類似の標章を付したかばん類が流通している。また、中国からSWIS SWINのブランド名を付したかばんを日本に輸入している控訴人以外の業者が複数存在する(甲5、11、乙27、28)。このように、「SWISSWIN」の商標を付した商品であっても、控訴人が販売に関与していない偽物又は並行輸入された商品が存在しており、控訴人の商品の品番と同じ品番が付されているからといって控訴人の商品とは限らない。 原判決は、被控訴人が提出する証拠(甲12、15、19~21、28の4)に係る販売やカタログ作成に関与していないとしても、上記各証拠に係る各製品においては、控訴人各標章が現に付されて販売されていることが認められるのであるから、同一の製品番号の製品には同一の標章が付されていると推認するのが相当であると判断した。しかし、中国からの並 行輸入品に商標権侵害となる標章が付されていたと ていることが認められるのであるから、同一の製品番号の製品には同一の標章が付されていると推認するのが相当であると判断した。しかし、中国からの並 行輸入品に商標権侵害となる標章が付されていたとしても、それは控訴人の使用行為に当たらず、中国からの並行輸入品の存在を根拠に控訴人の使用行為を認定した原判決には誤りがある。 ウ甲15は、商品の写真が小さすぎ、付された標章が控訴人各標章であるか否かを判断できない。それにもかかわらず、原判決は、甲15の各商品 について、控訴人各標章が付された上で販売されていると認定した誤りがある。 エ控訴人は、令和元年10月、前訴の訴状を受け取り、直ちに控訴人各標章を付した商品の販売を中止し始め、同年12月までに販売を完全に中止しているから、上記期間において、控訴人の売上高に占める控訴人商品の 売上高の割合は徐々に低下していき、同月末にはゼロになったと考えられる。しかし、控訴人は、同年10月以降も、控訴人各標章を付さなくなった商品に従前と同一の品番を付していたから、見かけ上は、侵害品率も顕著な変化が表れていない。損害額の認定においてはこれらの事情を考慮すべきである。 ⑷ 本件商標を付したリュックサックは日本で在庫を持つことさえできないほ ど販売数量が少なく、日本ではほとんど売れていない。また、本件商標は、不使用取消審決がされるほど使用実績に乏しく、審判手続及び審決取消訴訟においてリュックサックの使用の主張をできないほどであった。このように、本件商標の顧客吸引力は著しく小さい。 これに対し、控訴人の登録商標である「SWISSWIN」は、日本国内 においてバッグ類の分野で売上ランキングの上位を占めるほど著名である。 したがって、控訴人の売上げは、著名な控訴人の登録商標の寄与 に対し、控訴人の登録商標である「SWISSWIN」は、日本国内 においてバッグ類の分野で売上ランキングの上位を占めるほど著名である。 したがって、控訴人の売上げは、著名な控訴人の登録商標の寄与がほとんどであり、このような控訴人が、あえてロイヤリティを支払ってまで本件商標のライセンスを受ける動機はほとんどないから、商標法38条3項の「受けるべき利益」の算定の基礎となる相当使用料率が通常の料率より高くなる ことを考慮しても、その料率は、商標権におけるロイヤリティ料率の平均値(乙32の15頁)と同程度の2%とすべきである。 ⑸ スイスの国旗の特徴は、①白色の十字の図形をその中心に有すること、②白十字を2本の長方形が十字に重なっているとみた場合の、長方形の長辺と短辺の長さの比が10対3であり、2本の長方形の重心が同一の位置になる ように直交していること、③外周部分の形状が正方形であり、十字部分の2本の長方形が交差する角度が90度であるため、4回回転軸(90度回転させると自らと重なる軸)を有すること、④地色が赤色であることである。 本件商標は、上記①から③までの特徴を有する。 また、本件商標の地色は黒色であるものの、これに限定されるわけではな い。被控訴人は、本件商標に係る商標登録取消審決の取消訴訟(知的財産高等裁判所平成29年(行ケ)第10033号)において、本件商標の使用を立証する証拠として、地色が赤色で十字部分が白色の本件商標を使用したとする書証(乙54~59)を提出した。したがって、本件商標は上記④の特徴も有する。 したがって、本件商標は、スイスの国旗の権威を損じ、国家等の尊厳性を 害する程度にスイスの国旗に類似しており、商標法4条1項1号違反の無効理由がある。 ⑹ 原判決は、「YAHOO!JA したがって、本件商標は、スイスの国旗の権威を損じ、国家等の尊厳性を 害する程度にスイスの国旗に類似しており、商標法4条1項1号違反の無効理由がある。 ⑹ 原判決は、「YAHOO!JAPAN」のショッピングサイトにおいて、かばん製品の販売業者が、販売するリュックサックに係る商品情報として「SWISSWINSWISSGEAR デイパックバックパックウェン ガー WENGER」と表示している事実をもって、被控訴人の「ウェンガー」又は「WENGER」と、控訴人の「SWISSWIN」とを混同している事実を認定した。 しかし、インターネットショッピングサイトを検索で発見されやすくするために、検索されやすいキーワードをサイト上に多数並べて表示することは 一般的に行われており、上記表示もこのためのものである。したがって、本件商標と控訴人各標章が類似し出所の誤認のおそれがあるとした原判決の認定は誤りである。 5 当審における被控訴人の補充主張被控訴人は1893年にスイスで創業し、世界の市場において多くの高品質 の製品を販売してきた。「WENGER」ブランドは、100年以上の歴史を有する著名なブランドであり、平成30年8月時点では誰もが一度は見たことがあるスイス・アーミーナイフブランドとして紹介され、現在は腕時計やかばん製品を製造販売し、本件商標を付したかばん製品を販売している。このように、本件商標は、世界的に著名であり、高い顧客吸引力を有している。 本件商標が付されたリュックサックその他のかばん類は、インターネット上のショッピングサイトにおいて広く流通しており、需要者に看取されやすい場所には基本的に本件商標のみが使用されている。したがって、本件商標が被控訴人商品の売上げに貢献した度合いは極めて大きい。 ット上のショッピングサイトにおいて広く流通しており、需要者に看取されやすい場所には基本的に本件商標のみが使用されている。したがって、本件商標が被控訴人商品の売上げに貢献した度合いは極めて大きい。また、控訴人商品においても、需要者に看取されやすい場所には控訴人各標章のみが使用されている。 控訴人が控訴人各標章を使用したことにより、被控訴人商品と控訴人商品の出 所について誤認混同が現実に生じている。さらに、控訴人及び控訴人本社を含む祥興グループは、被控訴人のブランドの一つである「SWISSGEAR」のOEM製造を行ったことがあり、本件商標が高い顧客吸引力を有することを認識していた。これらの事実からすれば、控訴人は、本件商標の持つ高い顧客吸引力を不当に利用する意図をもって商標権侵害行為をしてきたものである。 被控訴人と控訴人は、いずれもインターネット上のショッピングサイトにおいてリュックサックほかのかばん類を販売する会社であり、競業関係が認められる。 商標法38条3項に基づく損害額の算定に当たって用いる相当使用料率は通常の使用料率に比して高くすべきことに鑑み、前記各事情その他本件に現れた 一切の事情を総合考慮すると、本件商標の相当使用料率は10%を下回らない。 第3 当裁判所の判断当裁判所も、被控訴人の請求については、不法行為に基づく損害賠償請求として、1380万2425円及びこれに対する令和3年7月9日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこの 限度で認容し、その余の請求はいずれも理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、後記1のとおり補正し、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加し、後記3のとおり当審における被控訴人の補充主張 はいずれも理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、後記1のとおり補正し、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加し、後記3のとおり当審における被控訴人の補充主張に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」第4(28頁25行目から46頁9行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用す る。 1 原判決の補正⑴ 原判決30頁9行目及び10行目を次のとおり改める。 「 そうすると、本件商標と控訴人標章1の外観は類似しているといえる。 称呼については、上記のとおり共通点を有する外観から、「ジュウジ」「ク ロス」などの同一の称呼が生ずると認められる。 また、観念についても、上記外観から、「十字」「クロス」といった同一の観念が生ずると認められる。」⑵ 原判決31頁5行目の「両者の」から同頁6行目末尾までを「両者の称呼及び観念についても、控訴人標章1の場合と同様、外観の上記共通点から同一の称呼及び観念が生ずると認められる。」に改める。 ⑶ 原判決32頁14行目の「両者の」から同頁15行目末尾までを「両者の称呼及び観念についても、控訴人標章1及び2の場合と同様、外観の上記共通点から同一の称呼及び観念が生ずると認められる。」に改める。 ⑷ 原判決39頁2行目の「商標法38条」の後に「3項」を加え、同頁10行目の「(知的財産高等裁判所」から11行目の「参照)」までを削除する。 ⑸ 原判決39頁15行目の「商品の売上げ」を「商品ごとの売上げ」に、同頁17行目の「損益計算書(乙15)の売上高」を「控訴人の損益計算書(乙15)に記載された各年度における控訴人の売上高」に、同頁18行目、19行目、26行目の「侵害品」をいずれも「侵害品の売上高」に、それぞれ改める。 5)の売上高」を「控訴人の損益計算書(乙15)に記載された各年度における控訴人の売上高」に、同頁18行目、19行目、26行目の「侵害品」をいずれも「侵害品の売上高」に、それぞれ改める。 ⑹ 原判決40頁1行目の「被告製品番号」を「控訴人商品製品番号」に、同頁2行目、4行目、10行目、11行目の「『製品番号』欄」をいずれも「『製品番号』欄に記載された製品番号等に対応する控訴人の製品」に、それぞれ改める。 ⑺ 原判決41頁5行目、9行目、14行目、20行目の「SW」の前にいず れも「製品番号が」を加える。 ⑻ 原判決41頁24行目の「撮影されたものである」を「撮影されており、同日は被控訴人が控訴人に対して前訴を提起した後である」に改め、同頁25行目の「その提出経過を踏まえても、」を削る。 ⑼ 原判決42頁7行目の「同一の」から同頁9行目末尾までを「上記各証拠 は控訴人が本件商標権を侵害したことの証拠となる。」に改め、同頁10行目 の「いずれも」を削る。 ⑽ 原判決44頁1行目の「侵害品」を「侵害品の売上高」に、同頁12行目の「したがって、」を「控訴人の損益計算書に記載された各年度における控訴人の売上高に、前記エ(イ)で算出された割合を乗じると、」に、それぞれ改める。 2 当審における控訴人の補充主張に対する判断⑴ 前記第2の4⑴の主張について控訴人は、製品番号が「SW」や「SN」から始まる商品につき、特段の事情が認められない限り控訴人各標章が付されていると推認するのが相当とした原判決の判断が誤りである旨主張する。 しかし、原判決「事実及び理由」第4の5⑵ウ(イ)の説示のとおり、被控訴人が提出した証拠により、製品番号が「SW」又は「SN」から始まる多数の控訴人の商品に控訴人各標章が付 る旨主張する。 しかし、原判決「事実及び理由」第4の5⑵ウ(イ)の説示のとおり、被控訴人が提出した証拠により、製品番号が「SW」又は「SN」から始まる多数の控訴人の商品に控訴人各標章が付されていると認められること、「SW」が「SWISSWIN」を、「SN」が「SUISSEWIN」を、それぞれ指すと認められることから、「SWISSWIN」のブランドと考えられる製品 番号が「SW」で始まる製品及び「SUISSEWIN」のブランドと考えられる製品番号が「SN」で始まる製品については、特段の事情が認められない限り、控訴人各標章が付されていると推認することには合理性があるといえる。 控訴人は、設立当初から、「SWISSWIN」のブランド名を付して販売 する商品に別標章を付すことがあり、「SUISSEWIN」のブランド名を付して販売する商品に、別標章を付したり、SUISSEWINのブランド名だけを付したりしたことがあったと主張するが、いずれも具体性を欠く主張であり、この主張の裏付けとなる証拠もないから、前記推認が合理性を欠くと解することはできない。 また、控訴人は、平成29年の展示会において、製品番号が「SW」で始 まる商品で別標章を付したものを展示しており、この事実が前記推認を不合理であると解すべき根拠である旨主張する。しかし、控訴人が当審で提出した乙44から乙47まで及び乙49の写真が、平成29年の展示会で展示された控訴人商品を撮影したものであることの明確な裏付けはない上、仮に同年の展示会で撮影した写真であるとしても、乙44から乙47までの写真に ついては、撮影された控訴人商品に付された標章が控訴人各標章であるのか、それとも別標章であるのかが判然とせず、乙49の写真については、正面から撮影された写 しても、乙44から乙47までの写真に ついては、撮影された控訴人商品に付された標章が控訴人各標章であるのか、それとも別標章であるのかが判然とせず、乙49の写真については、正面から撮影された写真のみであるため、撮影された控訴人商品に控訴人各標章が付されていないと認定するに足りない。 前記推認は、製品番号が「SW」又は「SN」で始まる多数の製品に控訴 人各標章が付されていることを立証したことを根拠の一つとしているのであって、商標権侵害の事実の立証責任が被侵害者にあることと矛盾しない。また、控訴人が販売した過去の全ての商品について付した標章と販売時期の立証をしなければ前記推認をすると判断しているものではないから、原判決の判断が、控訴人に不可能を強いていることもない。 以上によれば、控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑵ 前記第2の4⑵の主張について控訴人は、同一の製品番号の製品であっても同一の標章が付されるとは限らず、同一の製品番号の製品には同一の標章が付されていると推認するのが相当であると原判決が判断したことは誤りであると主張する。 この点、控訴人の製品について、ある製品番号の製品が時期等によって異なる標章が付されたことがあったとしても、本件の具体的な事実関係に照らし、製品番号が「SW」又は「SN」から始まる製品について、特段の事情が認められない限り、本件で対象とされている平成28年から令和元年までの期間において控訴人各標章が付されていたと推認することが相当性を欠く ということにはならず、原判決において除外されたもの以外は侵害品である と認めることが不当であるとはいえない。 したがって、控訴人の上記主張は本件の結論を左右しない。 なお、控訴人は、平成30年5月28日に撮影した製品番号 いて除外されたもの以外は侵害品である と認めることが不当であるとはいえない。 したがって、控訴人の上記主張は本件の結論を左右しない。 なお、控訴人は、平成30年5月28日に撮影した製品番号SW1880の製品に別標章及び「SWISSWIN」の商標が付されているとの主張をするが、証拠として提出する乙21及び乙50からは、写されているリュッ クサックが上記製品番号の製品であることは明らかでなく、その撮影日が平成30年5月28日であることの裏付けもないから、平成30年5月28日において上記製品番号の製品に控訴人各標章が付されていなかったと認定することはできない。 ⑶ 前記第2の4⑶の主張について 控訴人は、①原判決が乙40の写真に写された商品を侵害品と認定したことは誤りである、②「SWISSWIN」の商標を付した商品であっても、控訴人が販売に関与していない偽物又は並行輸入された商品が存在しており、控訴人の商品の品番と同じ品番が付されているからといって控訴人の商品とは限らず、並行輸入品に控訴人各標章が付されていたとしても控訴人の使用 行為に当たらない、③原判決が甲15の各商品について控訴人各標章が付された上で販売されていると認定したことは誤りである、④控訴人は、令和元年10月、前訴の訴状を受け取り、直ちに控訴人各標章を付した商品の販売を中止し始め、同年12月までに販売を完全に中止しており、損害額の認定に当たっては上記事情を考慮すべきであると主張する。 しかし、上記①の点については、乙40の写真が撮影されたのが令和3年10月19日であり、撮影日が納品書等に係る期間の後であるとともに、被控訴人が控訴人に対して前訴を提起した後であって、被控訴人から前訴を提起された控訴人が、控訴人商品の一部から控訴人各標章を外し 年10月19日であり、撮影日が納品書等に係る期間の後であるとともに、被控訴人が控訴人に対して前訴を提起した後であって、被控訴人から前訴を提起された控訴人が、控訴人商品の一部から控訴人各標章を外した可能性があるといえるから、乙40の写真に写されている製品番号の商品に控訴人各標 章が付されていないとしても、平成28年から令和元年までの時期において これらの製品番号の商品に控訴人各標章が付されていなかったと認定することはできない。 上記②の点については、「SWISSWIN」の商標を付した商品について、控訴人が販売に関与していない偽物や並行輸入された商品が実際に存在するのか否か、存在するとしてどの程度存在するのかについて、具体的な立証は ないから、このような偽物又は並行輸入商品の存在の可能性があるとの理由で、控訴人による商標権侵害が認められないことにはならない。 上記③の点については、原判決が甲15の写真から原判決「事実及び理由」第4の5⑵ウ(イ)のとおり控訴人各標章が付された製品に関する事実認定をしたことが不当であるとは解されない。また、原判決「事実及び理由」第4 の5⑵ウ(イ)の説示のとおり、製品番号が「SW」又は「SN」で始まる製品であって、甲15以外の証拠により控訴人各標章が付されていると認定できるものが多数あるから、甲15によって控訴人各標章が付されていると原判決が認定した製品を除いても、製品番号が「SW」又は「SN」で始まる製品について特段の事情が認められない限り控訴人各標章が付されていると推 認することが相当であるとの結論は左右されない。 上記④の点については、控訴人が、前訴の訴状を受け取った令和元年10月から控訴人各標章を付した商品の販売を中止し始め、同年12月までに販売を完全に中止したと認 が相当であるとの結論は左右されない。 上記④の点については、控訴人が、前訴の訴状を受け取った令和元年10月から控訴人各標章を付した商品の販売を中止し始め、同年12月までに販売を完全に中止したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、控訴人の上記各主張は、いずれも採用することができない。 ⑷ 前記第2の4⑷の主張について控訴人は、控訴人がロイヤリティを支払ってまで本件商標のライセンスを受ける動機はほとんどないから、商標法38条3項の「受けるべき利益」の算定の基礎となる相当使用料率は、商標権におけるロイヤリティ料率の平均値(乙32の15頁)と同程度の2%とすべきであると主張する。 しかし、被控訴人の「WENGER」ブランドはアーミーナイフにおいて 世界的に著名であり、現在では同ブランドとして、時計やかばん類を製造販売しているのであって(原判決「事実及び理由」第4の5⑶の②)、控訴人が本件商標のライセンスを受ける動機がないとはいえない。そして、その他原判決「事実及び理由」第4の5⑶に挙げられた事情を総合すれば、相当使用料率を売上高の4%とすることには合理性がある。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑸ 前記第2の4⑸の主張について控訴人は、本件商標はスイスの国旗に類似しており、商標法4条1項1号違反の無効理由があると主張する。 しかし、本件商標の形状は原判決「事実及び理由」第4の1⑵のとおりで あり、やや丸みを帯びた縁(辺)を有する略四角形(略正方形)と、これに囲まれた略相似形であるやや丸みを帯びた縁(辺)を有する略四角形と、その内部(中央)に位置する幅広の十字からなり、前者の略四角形の縁と後者の略四角形の縁とがなす部分(外縁部分)と、上記十字部分は、いずれも白色であり、 るやや丸みを帯びた縁(辺)を有する略四角形と、その内部(中央)に位置する幅広の十字からなり、前者の略四角形の縁と後者の略四角形の縁とがなす部分(外縁部分)と、上記十字部分は、いずれも白色であり、後者の略四角形の内部は、上記十字部分を除き黒色であり、上記 十字の幅は外縁部分の3倍程度である。 これに対し、スイスの国旗は、原判決「事実及び理由」第4の2のとおり、正方形と、その内部(中央)に位置する幅広で白色の十字からなり、正方形の内部は、白色である上記十字部分を除いて赤色である。 したがって、スイスの国旗は、正方形であって白色の外縁部分がなく、内 部の十字部分を除いた部分が赤色である点において、本件商標と相違しており、本件商標とスイスの国旗は、控訴人が指摘する共通点を考慮しても、中心的かつ全体的構成を占める図形の形状及び色彩において明らかに相違する。 被控訴人が、本件商標と同様の形状であるが、地色が赤色で十字部分が白色の標章を使用したことがあるとしても、そのことをもって、地色が赤色で 十字部分が白色のものも本件商標に含まれることにはならず、本件商標とス イスの国旗がその色において共通するとはいえない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑹ 前記第2の4⑹の主張について控訴人は、インターネット上のショッピングサイト「YAHOO!JAPAN ショッピング」において、かばん製品の販売業者が、販売するリュッ クサックに係る商品情報として「SWISSWINSWISSGEARデイパックバックパックウェンガー WENGER」と表示しているのは、インターネットにおける検索で発見されやすくするために検索されやすいキーワードを多数並べたものにすぎず、被控訴人の「ウェンガー」又は「WENGER クウェンガー WENGER」と表示しているのは、インターネットにおける検索で発見されやすくするために検索されやすいキーワードを多数並べたものにすぎず、被控訴人の「ウェンガー」又は「WENGER」と、控訴人の「SWISSWIN」とを混同したとは認められ ないと主張する。 しかし、上記販売業者のページには、「スイスの人気アウトドアブランドWENGERシリーズSWISSWINから多機能&収納豊富でスタイリッシュなデザインのバッグの登場です。」という表示もされており(原判決「事実及び理由」第4の1⑹エ)、この表示の内容からすれば、上記販売業者が「S WISSWIN」のバッグは「WENGER」のシリーズとして製造販売されているものであると認識していると認められ、この事実は、控訴人各標章の使用による混同が発生していることを示しているといえる。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 3 当審における被控訴人の補充主張に対する判断 被控訴人は、本件商標の相当使用料率は10%を下らないと主張する。 しかし、商標法38条3項に基づく損害額の算定に当たって用いる相当使用料率として、通常の取引におけるライセンスの場合の使用料率よりも高い率とすべきであるとしても、本件において認められる原判決「事実及び理由」第4の5⑶に挙げられた事情を総合すれば、相当使用料率としては売上高の4%が 相当である。控訴人が控訴人各標章を使用したことによって現実に出所の混同 が生じている例がある事実や、控訴人本社が被控訴人のブランドの一つである「SWISSGEAR」のOEM製造を行ったことがある事実を考慮しても、相当使用料率を4%より高くすべきとは解されない。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 4 そ つである「SWISSGEAR」のOEM製造を行ったことがある事実を考慮しても、相当使用料率を4%より高くすべきとは解されない。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 4 その他、原審及び当審において当事者が主張する内容を検討しても、当審に おける上記認定判断(原判決引用部分を含む。)は左右されない。 5 結論以上によれば、被控訴人の請求は、不法行為に基づく損害賠償請求として、1380万2425円及びこれに対する令和3年7月9日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金を請求する限度で理由があるからこの限度で認容 し、その余の請求は理由がないからこれをいずれも棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴及び本件附帯控訴はいずれも理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官 水野正則
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