【DRY-RUN】主 文 被告人Aの本件控訴は、これを棄却する。 被告人B、同Cに対する原判決を破棄して、右被告人両名に対する本件 を岐阜地方裁判所に差し戻す。 理 由
主文 被告人Aの本件控訴は、これを棄却する。 被告人B、同Cに対する原判決を破棄して、右被告人両名に対する本件を岐阜地方裁判所に差し戻す。 理由 被告人Bの弁護人栗田道夫の控訴趣意並に被告人C、同Aの弁護人大道寺慶三の控訴趣意は別紙の通りである。 被告人Aに対する控訴趣意について。 重要物資輸送証明規則(昭和二十二年九月二十日各省令第一号)第五条には、運輸業者は、荷送人から第三条の出荷証明書の提出がなければ、重要物資の輸送を受託することができないとあるから、これに違反する犯罪の構成要件に該当する事実は、犯罪者が運輸業者であつて、これが出荷証明書なくして、重要物資の輸送を受託したことになる。従つて運輸業者であるか否かは、犯罪の成否に関する事項であるけれども、被告人Aが原審公判廷で運輸業者でないと供述したことは、単に犯罪事実の一部を否認しただけで、刑訴法第三百三十五条第二項に所謂法律上犯罪の成立を妨げる理由に該当しない。これに該当するものは、各本条に規定してある構成要件に該当する事実があるか、他に犯罪の成立を妨げる事由例えば正当防衛又は緊急避難行為であるとか、又は正当の業務のため違法性を欠く場合等を指すものである。それ故、原審が、被告人Aの右犯罪事実否認の供述に対しては、犯罪事実を証明する証拠を挙げて事実を認定しただけで、他に何等の説明をしなかつたのは、違法ではない。 而して原判決挙示の証拠によれば、被告人Aは、自己が運輸業務を経営していないけれども、経営主に雇われて貨物自動車を運転して輸送業務を担当していることが明らかに認められる。重要物資輸送証明規則に所謂運輸業者とは、鉄道、軌道、貨物自動車、汽船、機帆船等輸送機関により、物を運送することを業とする者を云い、右運送業を経営してい 業務を担当していることが明らかに認められる。重要物資輸送証明規則に所謂運輸業者とは、鉄道、軌道、貨物自動車、汽船、機帆船等輸送機関により、物を運送することを業とする者を云い、右運送業を経営している者のみならず、経営主に雇われて賃金を貰つているが現実に右運送業務を担当する者をも含めて指称するものと解すべきである。 従つて被告人Aが貨物自動車運転者として、運送業務を担当していたこと殊に本件輸送の受託又は輸送による利益は兎も角右受託及び輸送行為は、被告人Aが自己の自由な判断で為したものであるから、重要物資の輸送を受託したものと謂うことができる。論旨は理由がない。 よつて被告人Aの本件控訴は理由なきものとして、刑事訴訟法第三百九十六条により、これを棄却する。 被告人Cの弁護人大道寺慶三の控訴趣意第一点について。 <要旨>共同正犯であると云う公訴事実に対し、幇助をしたに過ぎないと主張することは、犯罪事実の一部否認であ</要旨>つて、法律上犯罪の成立を妨げる理由でないことは、勿論、刑の加重減免の理由となる事実を主張したものでない。共同正犯、教唆又は幇助は犯罪の構成要件に該当する特殊の類型に属するもので、刑の加重減免の理由となる事実とは、右の犯罪構成要件に該当する事実以外の事実であつて、刑の加重減免の理由となるものを指すものである。従つて当事者が幇助をしたに過ぎないと主張しても、証拠によつて共同正犯であることを認定したときは、改めて幇助の主張に対して判断を為すことを要しない。又ある事のない事実について、法律的解釈を正犯とするか幇助とするかについて争がある場合は、刑の減免の理由の事実の主張でなくて、法律解釈の主張又は意見であるに過ぎないから、裁判所は、法令の適用を示すことによつて判断を為したことになる。本件においては、正犯か幇助か事実の認定につ る場合は、刑の減免の理由の事実の主張でなくて、法律解釈の主張又は意見であるに過ぎないから、裁判所は、法令の適用を示すことによつて判断を為したことになる。本件においては、正犯か幇助か事実の認定について争つたことになるので、原審が証拠によつて犯罪事実を認定する態度をとつたことは正しい。この点について論旨は理由がない。 然れども、当裁判所が職権にて、原判決の犯罪事実の摘示が正当であるか否かについて判断するに、原判決には、次のような違法がある。 (一) 原判決第一の(一)において、被告人C、D、B、E、F等は、指定生産費材の販売業者でないのに、営利の目的を以て、共謀の上、Gのため、羽島郡a村H方において、被告人I外三名に対し指定生産資材であるチーズ巻綿糸二十番手三百封度を所定の統制額から金二十二万五千二百八十一円超過した代金二十八万八千円で売渡しとあるが、右の事実関係の摘示では、被告人C、B等が売渡したのか、Gが売渡したのか、或又被告人C、B等がGの代理人として売買斡旋をしたのか、その意味が不明である。法律適用の点を見れば、右被告人等は共同正犯であるものとして刑法第六十条を適用しているが、犯罪事実を見れば、Gのため売渡したとあるので、被告人等がGの代理人として同人に使用されているものが、同人のため売渡したように見えるので、そうだとすればGが被告人等を使つて又は被告人等の斡旋によつて売渡したことになる。果して然らばGが正犯となり、被告人等が従犯となる。或は、Gの意思とは、全く関係なく、被告人等が本件売買を為して、得たる利益をGに贈与する意味でGのためと記載したのであれば、被告人等が共同正犯となるが、それならば犯罪事実にその旨を明記しなければ、判然としない。右のように、原判決第一の(一)は共同正犯であるか従犯であるか明瞭に区別して記載してない と記載したのであれば、被告人等が共同正犯となるが、それならば犯罪事実にその旨を明記しなければ、判然としない。右のように、原判決第一の(一)は共同正犯であるか従犯であるか明瞭に区別して記載してないので、理由不備の非難を免れない。 (二) 原判決第二において、被告人Bが詐欺を為した事実を摘示しているが、その欺罔手段は、相手方に対し返済又は糸を世話する意思のないのに、あたかもその意思があるように装い「警察に糸を押えられたが代金を先方へも払わねばならぬすぐ返すから一寸貸してくれ」「bに糸があるから世話してやる」等と虚構の事実を申し向け、同人等をしてその旨誤信せしめ、よつて合計金四十万一千円の交付を受けてこれを騙取したとあつて、被害者J外十三名に対しすべて、右と同趣旨の欺罔手段を構じたことになつている。然れども、原判決挙示の証拠を検討するときは、右の被害者全部に対して前記の通り同一の手段を用い騙取していないことが明らかである。原判決がその挙示の証拠によつて十把一束して事実を認定したのは結局証拠によらずして事実を認定したことになる。 (三) 原判示第三の事実を見るに、原判示の摘示では、犯罪の主体となるべき者を示していないので、誰が費消横領したのか不明である。これもまた理由不備を免れない。 以上のように、原判決は、被告人C、同Bについては、理由を附せず、又は理由にくいちがいがあることに帰するので、爾余の控訴趣意について判断するまでもなく、破棄せねばならぬことが明らかであるから、刑事訴訟法第三百九十七条第三百七十八条第四号によつて、原判決を破棄し、同法第四百条本文により本件を原裁判所である岐阜地方裁判所に差し戻すよつて主文の通り判決する。 (裁判長判事堀内斉判事鈴木正路判事赤間鎭雄) 四百条本文により本件を原裁判所である岐阜地方裁判所に差し戻すよつて主文の通り判決する。 (裁判長判事堀内斉判事鈴木正路判事赤間鎭雄)
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