平成19(う)82 詐欺被告事件

裁判年月日・裁判所
平成20年11月27日 広島高等裁判所 破棄自判 広島地方裁判所 平成16(わ)702
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判決文本文40,345 文字)

-- 主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役1年6月に処する。 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 本件控訴の趣意は,検察官見越正秋提出の検察官山川景逸作成の控訴趣意書および検察官見越正秋作成の「控訴趣意書の訂正申立」と題する書面に,これに対する答弁は,弁護人奥苑泰弘主任,同瀧賢太郎および同松島道博連名作成の答弁書に()それぞれ記載されているとおりであるから,これらを引用する。 ()本件公訴事実平成17年1月6日付け訴因変更請求書による訴因変更後のものは「被告人は,A市都市計画局技術管理課長であったものであるが,B建設株式会社A支店が,A市と締結した平成12年3月22日付け建設工事請負契約請負代(金額1890万円に基づき行うA市C区D町大字E地区仮置地内土砂撤去その他)工事その6以下「本件工事」というに関し,本件工事の発注者A市に対し,そ()()の資材として真砂土を購入する旨欺いて請負代金額を増額させるなど上記請負契約を変更させた上,当該購入した真砂土を本件工事に使用した旨欺いてその完成を確認させるなどして,A市から請負代金支払い名下に金員を交付させようと企て,Oらと共謀の上,同年5月上旬ころ,A市C区Fa丁目b番c号所在のC区役所において,同区役所市民部まちづくり推進課調整担当課長Gに対し,真実は本件工事の資材として真砂土約3000立方メートルを無償で入手するにもかかわらず,その情を秘してこれを529万2000円で購入する旨虚偽の事実を申し向けるなどしてその旨誤信させ,A市をして,同月10日付けで上記請負契約の請負代金につき,真砂土購入名下に529万2000円を増額させること等を内容とする請負契約変更契約変更後の請負代金額2866万0800円。うち756万円支払い済みを()同社と締結 上記請負契約の請負代金につき,真砂土購入名下に529万2000円を増額させること等を内容とする請負契約変更契約変更後の請負代金額2866万0800円。うち756万円支払い済みを()同社と締結させた上,同月31日,同区役所において,同区役所建設部土木課長Hに対し,本件工事の完成を通知するとともに,内容虚偽の出荷証明書等を提出して,-- 同社が真砂土約3000立方メートルをI有限会社から購入した旨欺き,そのころ,同人をして,本件工事の資材として有償で購入された真砂土が使用され,上記請負契約変更契約どおり本件工事が完成した旨誤信させてその完成を確認させ,よって,同年7月21日,請負代金残額支払い名下に同区役所収入役Jをして,A市K区L町d丁目e番f号所在の株式会社A銀行本店に開設されたB建設株式会社A支店名義の当座預金口座に上記529万2000円を含む請負代金残額2110万0800円の振込みをさせ,もって人を欺いて財物を交付させたものである」というのである。 論旨は,本件公訴事実について被告人に無罪を言い渡した原判決は,証拠の取捨選択および判断・評価を誤り事実を誤認したものであり,その誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるというのである。 所論にかんがみ記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも併せ検討するに,以下に説示するとおり,被告人については詐欺罪が成立するから,被告人を無罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある以下,(証拠に付したかっこ内の甲乙の数字は,原審における検察官請求証拠の番号であり,弁または当審弁の数字は原審または当審における弁護人請求証拠の番号である。証拠については,謄本,抄本,写しの表示を省略する。 ) 原審で取り調べられた被告人の自白調書を含む関係証拠によると,原判決 弁または当審弁の数字は原審または当審における弁護人請求証拠の番号である。証拠については,謄本,抄本,写しの表示を省略する。 ) 原審で取り調べられた被告人の自白調書を含む関係証拠によると,原判決の理由以下,単に「理由」という21 ないし7 9 10 の各事実が認められただし()( )( )( )()(理由23 に「A市建設工事請負約款」とあるのを「A市建設工事請負契約約( )款」と訂正する,これらの事実に加えて,関係証拠によって認定できる事実を)合わせると,本件に関する基本的な事実関係は,以下のとおり要約することができる。 A市は,平成11年6月29日の集中豪雨により発生した災害土砂を,A( )()市C区D町大字E地区内の土地以下「本件土地」または「本件現場」というに,地権者であるM開発ほかの承諾を得て仮置きしていた。そして,本件土地-- からそれら土砂の撤去等を行うため,A市は,同年9月22日から同年12月24日までの間に,B建設株式会社A支店以下「B建設」というに対し,随()意契約により「E地区仮置地内土砂撤去その他工事」以下「土砂撤去その他(工事」というを,「その1」ないし「その3」の3つの工事に区分して発)()()注し,A市C区役所以下「C区役所」という建設部土木課維持係技師Nが,()これらの工事の主任監督員に指名された。 Oは,A市の幹部職員らとの親密な交際を背景として,同市の公共工事に関して影響力を有していたところ,Pを通じてこれらの工事予定についての情報を得,同市幹部職員らに働きかけるなどしてこれらの工事をB建設に受注させたほか,B建設に働きかけて,その一次下請業者として自分の顧問先である株式会社Q工業を,二次下請業者としてPが紹介した株式会社R企画を採用させた。そし きかけるなどしてこれらの工事をB建設に受注させたほか,B建設に働きかけて,その一次下請業者として自分の顧問先である株式会社Q工業を,二次下請業者としてPが紹介した株式会社R企画を採用させた。そして,これらの工事が実施され,平成12年3月ころまでに,当初着工が予定されていなかった箇所の撤去工事まで行われた。 ところが,その着工予定のなかった箇所の撤去工事の代金については,当初の請負代金を増額する旨の契約変更では対処できなかったことから,A市は,土砂撤去その他工事その1ないしその3についての契約を変更するのでは()()なく,既に施工した予定外の工事を,B建設に対し,工期を同年3月22日か()ら同年5月31日までとする土砂撤去その他工事の追加工事その4,その5として発注した。Nは,それらの実際には既に終了していた工事が,追加工事の工期内に実施されたように仮装するため,廃棄物を適正に処理したことを証明するための書類いわゆるマニフェストの日付の修正等を,B建設A土木工()事作業所長で,土砂撤去その他工事の責任者であったSに指示した。 A市は,平成12年3月22日,B建設に対し,土砂撤去その他工事の追( )加工事として,工期を同日から同年5月31日まで,請負代金消費税込みを()1890万円とし,本件土地の整地工事等を内容とする本件工事を請け負わせる旨の契約以下「本件契約」というを締結した。なお,本件土地の整地に使()-- 用される真砂土4550立方メートルについては,工事請負契約書以下「本(件契約書」というに添付された「特記仕様書」において,「覆土に使用する)発生土は,T峠道路改良工事からの建設発生土を利用するものとする」と指定されている。 ところで,平成11年12月ころ以降,Q工業とR企画との間で,工事 「特記仕様書」において,「覆土に使用する)発生土は,T峠道路改良工事からの建設発生土を利用するものとする」と指定されている。 ところで,平成11年12月ころ以降,Q工業とR企画との間で,工事代( )金の支払を巡る紛争以下「本件紛争」というが生じ,Oが事態の収拾を図ろ()うとしたものの解決に至らず,平成12年3月以降以下,平成12年の日付(については年の表示を省略する,R企画の実質的経営者であるUが,B建設)やA市役所およびC区役所に押しかけて,元請や発注者の責任を追及して抗議し,R企画への工事代金の支払をQ工業に指導するよう申し入れるなどの行為を繰り返した。Oは,このような事態が継続すれば,自分のA市や建設業界に対する影響力に支障を来しかねないと憂慮し,本件工事において何らかの方法によりR企画に利益を得させることによって,本件紛争を鎮静化しようと考え,()懇意にしていた同市都市計画局指導部技術管理課以下「技術管理課」という課長である被告人に電話をして,本件工事について増額の設計変更をするよう強く働きかけるとともに,そのころ,同市助役Vにも電話をして事情を説明し,口添えを依頼してその承諾を得た。 なお,弁護人は,Uが市役所で騒いだのは4月に入ってからのことである旨主張する答弁書2頁。 ()たしかに,Oの検察官調書甲62 には,Uが,B建設に押しかけて「架空工()事をばらすぞ」などと言って騒ぎ,C区役所等にも押しかけている旨聞いて,同区役所の維持担当課長に就いたWに電話をかけ,その事実を確認した旨の供述が記載されている。また,Wが同区役所建設部土木課維持担当課長に就任したのが同月1日のことであることも,明らかである。 しかし,Oの検察官調書甲64 には,UがC区役所に行って,元請責任を追()及したのが3月2 。また,Wが同区役所建設部土木課維持担当課長に就任したのが同月1日のことであることも,明らかである。 しかし,Oの検察官調書甲64 には,UがC区役所に行って,元請責任を追()及したのが3月24日ころ以前である旨の供述が記載されているし,被告人が,-- Nに対し,本件工事の増額変更を働きかけた時期が3月下旬であったことは,Nおよび被告人が一致して供述しているところであるから,上記主張は採用できない。 Oは,3月下旬ころ,Pから「何か現場が変なんですよ。これを見てくだ( )さい。もう現場に残土なんかないのに先日付のマニフェストがあるんですよ」と言われて,厚さ5センチメートルくらいのマニフェストの束以下「本件マ(ニフェスト」というを見せられた。そこで,Oは,PとともにA市役所を訪)れ,被告人らと面会し,本件マニフェストなどを見せて説明を求めたところ,被告人が動揺しているような態度を見せたことから,Oは,被告人が本件契約の増額変更を実現してくれると感じた。その後,Nは,Sに対し,本件マニフェストについて,業者が日付を調整しただけであるから,不正工事と言われないようにきちんと下請業者を指導するように言ったほか,Nの上司であるC区役所建設部土木課維持担当課長Xも加わって,本件紛争についてR企画の者が同区役所に来ないよう,B建設において調整するよう指導した。 一方,被告人は,Vから本件工事の増額変更の実現を暗に促され,3月下( )旬ころ以降,かつての部下であるNに対し,Vの名前を出すなどして,本件工事の請負代金を増額するための設計変更をするよう働きかけた。Nは,本件工事に覆土として使用する予定であったT峠道路改良工事一般県道Y線道路改(良工事からの建設発生土以下「T峠の土」というに石等が混じるようにな)()ったこ 変更をするよう働きかけた。Nは,本件工事に覆土として使用する予定であったT峠道路改良工事一般県道Y線道路改(良工事からの建設発生土以下「T峠の土」というに石等が混じるようにな)()ったことから,他の公共工事からの流用土を探すなどしていたところ,被告人からの働きかけを受けて,本件契約を増額変更して本件紛争を収拾させようという意図を感じながらも,Vの名前が出たことなどもあり,被告人に対し「公共工事の流用土を探している状態ですが,これを購入土に変更すれば増額変更できます」「他にやるとすれば,表土のすきとりしかありません。仮置地の表土を10センチメートルくらいすき取りして,搬出するのです」「いずれにしても砂関係で増額は可能ですが,増額変更は勝手にできず,M開発が売る予定-- にしている土地なので,地権者の意向を確認しなければなりません」などと言った。被告人が「要は地権者さえ表土が悪いのできれいにして返せと言えば,増額になるんじゃな。Oに地権者の一言があればいいと言えば,ええんじゃの」などと言うと,Nは「そうしてもらえば理屈が通ります」と答えた。 そこで,被告人は,Oに電話をかけて,本件工事について増額変更させるには,地権者が,表土が悪い,きれいにして返せというような苦情をA市に言わないといけない旨伝えた。そして,被告人は,3月下旬ころか4月上旬ころ,Nから本件工事の増額変更が可能な額について連絡を受けて,Oに対し約1000万円の増額変更が可能である旨伝えたところ,Oは「分かった。ほうよ,1000万円くらいいるんよ。助かったわい」などと言い,増額変更理由の内訳を尋ねた。被告人は,請負代金額増減の内訳として,真砂土購入で約800万円,表土搬出で約900万円の増額となり,浚渫を要する土砂が当初見積りより減って約700万円の減額になる い,増額変更理由の内訳を尋ねた。被告人は,請負代金額増減の内訳として,真砂土購入で約800万円,表土搬出で約900万円の増額となり,浚渫を要する土砂が当初見積りより減って約700万円の減額になるので,合計約1000万円の増額となる旨概略を説明した。 また,被告人は,Nに依頼されて,4月上旬ころ,C区役所でWに会い,Oの名前を出した上,本件工事の請負代金を約1000万円増額するよう要請した。そして,被告人は,同月中旬ないし下旬ころ,Nから,本件工事の請負代金の約1000万円の増額がほぼ決まったことを伝え聞いた。 なお,Nは,被告人から,本件工事の請負代金を1000万円増額すれば,先日付のマニフェストの件は表に出さないとOが言っているなどと聞かされた。 他方,Oは,それまでの経緯から,Q工業とR企画の間を修復することは( )困難であると判断し,4月7日ころ,元B建設社員で,当時M開発の副社長であったZと会い,本件工事の一次下請をQ工業からA1組に変更するようB建設に伝えることを依頼して,その承諾を得た。その上で,Oは,毎日のように被告人に電話し,本件工事の増額設計変更についての状況を確認していたところ,同月中旬ころまでに,被告人から,本件工事について約1000万円の増-- 額ができた旨の連絡を受けるとともに,増額変更の詳しい内容についての説明を聞いて,それをメモ書きした。そのメモ以下「Oメモ」というには,雨水()排水の掃除の数量につき当初予定していた300立方メートルが60立方メートルに減り,700万円減額になること,県道工事から455立方メートル4550立方メートルの誤記であると解されるの流用土を持ち込む予定であ()ったのが,3150立方メートルの真砂土を購入する設計変更になり,802万円802万5000円を意味する 55立方メートル4550立方メートルの誤記であると解されるの流用土を持ち込む予定であ()ったのが,3150立方メートルの真砂土を購入する設計変更になり,802万円802万5000円を意味すると思われる「8025」という記載もあ(る増額になること,10センチメートルの表土の入替えにより,1100立)方メートルの搬出が必要となって,873万5000円増額になること,以上を合計すると976万円の増額となり,設計変更後の請負代金額は2866万円になることなどが記載されている。 そして,Oは,4月中旬ころ,A1の営業部長であるB1を自分の事務所に呼び出し,同人にOメモを見せながら,設計変更で市役所に増額させたので,A1がQ工業に代わって本件工事の一次下請に入り,R企画に約1000万円の利益を得させるよう依頼した。そこで,B1は,A1の取締役工事部長であるE1にSを紹介してくれるよう依頼し,E1とともにB建設A土木工事作業所以下「現場作業所」というに行き,Sに対しOからの依頼の趣旨を伝えて,()E1にもその話を聞かせた。その後,E1とSは,R企画に約1000万円の利益を得させるための詰めの協議を行い,同月下旬ころには,B1,E1およびSが,現場作業所に集まり,B建設,A1およびR企画それぞれの大まかな受注金額についての話をした。 E1は,A1の工事次長であるC1に対し,本件工事のB建設現場代理人であるD1の書類作成を手伝いに行くように指示し,併せて「この工事は,B建設から下請にR企画を使ってくれと話がきている」と告げた。C1が「何でR企画が下請なんですか」と聞くと,E1は「お前は詳しいことは知らんでもいい。ちゃんと仕事をすればええんじゃ」と言った。そこで,C1は,本件現場-- に行き,D1から,本件工事全体の作業計画の説明を受 下請なんですか」と聞くと,E1は「お前は詳しいことは知らんでもいい。ちゃんと仕事をすればええんじゃ」と言った。そこで,C1は,本件現場-- に行き,D1から,本件工事全体の作業計画の説明を受けたり,図面の検討や補修箇所の程度および補修方法の検討などを指示されたほか,本件現場で「土を搬出して真砂土を敷くので,高さを計算してくれ。舗装の補修,壊れた側溝などの補修もしてくれ」などと依頼されたので,C1は,R企画の担当者に対し,A市に提出する書類の準備を指示し,D1に言われた計画書作りなどを開始した。 他方,Oは,4月24日ころ,R企画のUおよびF1と会って,本件紛争を解決するため,Q工業に代わってA1からR企画に本件工事を下請させ,R企画に約1000万円くらい儲けさせるので,これ以上騒ぎを起こさないよう話し,その旨約束させた。 ところで,本件工事に覆土として使用される予定であったT峠の土に石等( )が混じるようになったことから,4月中旬までに,これを本件現場に搬入することが中止された。また,M開発のZは,本件土地を見て,Nらに対し,「表面の黒い部分は何とかしてもらいたい」などと言った。そして,Nは,D1およびSから,工期に間に合わないので,真砂土を購入する方向で本件工事の増額変更を検討するよう依頼されて,これに同意した。 他方,E1は,A1の下請業者に連れられてやってきたR企画のUに対し「今回の工事は,うちは何の得もない工事じゃけえ,あんたの会社も精一杯努力してもらわにゃいかんで。安い真砂土が入る所を探してくれ」と言った。Uは,同月中旬ないし下旬ころ,E1,C1およびD1を案内して,A市C区G1g丁目所在のH1方以下「H1商店」という裏山の真砂土以下「本件真()(砂土」ともいうを見せた。 ) A市は,B建設に対し,「建 ないし下旬ころ,E1,C1およびD1を案内して,A市C区G1g丁目所在のH1方以下「H1商店」という裏山の真砂土以下「本件真()(砂土」ともいうを見せた。 ) A市は,B建設に対し,「建設工事請負契約の請負代金額変更の協議開始( )()()日について通知」と題する4月25日付け書面以下「本件通知書」というを発出し,本件工事の請負代金を976万0800円うち消費税46万48(00円増額して2866万0800円うち消費税136万4800円とす)()-- ることの協議開始の日を通知した。本件通知書に添付された変更理由書以下(「本件変更理由書」というは,Nが起案したものであるところ,それには以)下の記載がある。ア当初の計画においては,雨水排水施設に溜まった土砂<>を300立方メートル浚渫することと見込んでいたが,現地で確認したところ60立方メートルであったため,変更するものである。イ当初の計画では,<>当該整地のための真砂土を他の公共事業一般県道Y線道路改良工事より45()50立方メートル流用することと見込んでいたが,道路改良工事の真砂土がレキ混じりであり,整地には適さないため,約3000立方メートル真砂土が不足することとなった。また,当地はM開発より6月15日までの借地契約としており,他の公共残土からの真砂土流用が時期的に困難となり,整地を行うための真砂土3000立方メートルを購入するものである。ウ当初の計画で<>は,災害土砂を撤去した後,土地を不陸整正し,平均10センチメートルの覆土を行うこととしていたが,現地で不陸整正したところ,レキ土,石等があり,約1100立方メートルの発生土を産業廃棄物処理場に搬出することとなったものである。 そして,Nは,本件契約の変更契約以下「本件変更契約」 としていたが,現地で不陸整正したところ,レキ土,石等があり,約1100立方メートルの発生土を産業廃棄物処理場に搬出することとなったものである。 そして,Nは,本件契約の変更契約以下「本件変更契約」というの締結に()ついて,「工事設計変更施行伺」および「工事請負契約締結伺変更契約」()()を起案し,本件変更理由書の記載に上記アないしウの各項目の変更金額<><>を付記した内部決裁用の変更理由書および変更請負代金額計算書を添付して,C区役所の担当部署および最終的な決裁権者であるGの決裁を得た。なお,内部決裁用の変更理由書および変更請負代金額計算書には,上記アは約70<>0万円の減額,上記イは約802万5000円の増額,上記ウは約87<><>3万5000円の増額で,合計976万0800円の増額になる旨記載されているところ,この記載および本件変更理由書の記載は,Oメモの内容とほぼ一致している。 一方,Sは,本件変更理由書に基づき,本件変更契約締結に関する決裁書を-- 起案して,B建設A支店長らの決裁を受けた。 A市は,5月10日,B建設との間で,本件変更契約についての契約書を( )作成し,本件通知書の記載と同内容の本件変更契約を締結した。同月16日,Sは,E1と注文書および注文請書を交わし,B建設とA1との間で請負金額を2465万4000円消費税込みとする本件工事の一次下請についての請()負契約以下「本件一次下請契約」というを締結した。また,同月17日,E()1は,Uと注文書および注文請書を交わし,A1とR企画との間で請負金額を1785万円消費税込みとする本件工事の二次下請に関する請負契約以下()(「本件二次下請契約」というを締結した。 ) R企画から,本件土地の残土搬出および本件 1とR企画との間で請負金額を1785万円消費税込みとする本件工事の二次下請に関する請負契約以下()(「本件二次下請契約」というを締結した。 ) R企画から,本件土地の残土搬出および本件土地への真砂土搬入を請け負()ったI1産業は,5月23日から同月26日までの4日間,本件真砂土を,ブルドーザーを用いて複数台のダンプカーに積み込み,それらのダンプカーを本件土地まで往復させて,本件土地に本件真砂土を運び入れた。なお,本件真砂土についての対価は支払われなかった。そして,本件真砂土を敷きならして本件工事は最終段階に入った。 Uは,製砂業者であるI有限会社から真砂土を搬入したというR企画からB建設宛の内容虚偽の納品書以下「本件納品書」ともいうを自分の娘に指示し()て作成させた上,これを,同月下旬ころ,R企画従業員J1を介してA1の現場代理人であるC1に手渡した。すると,C1は,J1を通じてUに対し,I発行の出荷証明書を持参するように指示した。そこで,Uは,本件工事のため真砂土3168立方メートルを出荷したというIからB建設あての内容虚偽の出荷証明書の写し以下「本件出荷証明書」というを入手し,J1を介してC()1に手渡した。D1は,C1から,本件納品書および本件出荷証明書以下,(これらを合わせて「本件出荷証明書等」というを受け取って,本件納品書の)受領印欄に署名し,Sの決裁を受けた。 同月31日,B建設からA市長宛の本件工事の工事完成届が,本件出荷証明-- 書等とともに提出され,6月12日,完成検査員に指名されたC区役所建設部土木課主任技師F3により完成検査がなされた。そして,A市における所定の手続を経て,7月21日,B建設名義の当座預金口座に本件工事の請負代金残額2110万0800円が振り込まれた。 原判 建設部土木課主任技師F3により完成検査がなされた。そして,A市における所定の手続を経て,7月21日,B建設名義の当座預金口座に本件工事の請負代金残額2110万0800円が振り込まれた。 原判決は,理由28 において,E1が,遅くとも5月6日ころ,B1ととも( )に現場作業所でSと会った際,B1から同人がOから聞いたことを聞かされるな()どし,同月17日ころ,K1道路工事改良作業所以下「K1の作業所」というから本件現場に異動してきたC1やD1とともに,Uの案内で,H1商店の裏山に真砂土を見に行った旨認定している。 しかし,上記16 7 のとおり,B1が,E1とともに現場作業所に行き,S( )( )に対し,Oからの依頼の趣旨を伝えると同時にE1にもその話を聞かせたのは,4月中旬のことであり,E1,C1およびD1が,Uの案内で,H1商店裏山の真砂土を見に行ったのも,同月中旬ないし下旬ころのことであったと認定できるので,以下,その理由について説明する。 たしかに,B1,C1,E1,U,J1およびD1は,いずれも,別件で( )の証人尋問または被告人質問において,原判決の認定事実に沿う供述をしている。 また,Uは,検察官に対して,A1と本件工事についての契約を済ませた5月17日の翌日ころ,現場作業所にA1の現場代理人として詰めていたC1から,真砂土を探すように言われたので,既に真砂土が無償で入手できることを知っていたH1商店よりも本件現場に近い真砂土が出ると聞いていた山に,R企画の従業員であるF1を行かせて確認させたところ,その山の真砂土は既になくなっていることが分かったことから,F1に車を運転させてH1商店に行き,H1に対して同人方裏山の真砂土を分けて欲しいと依頼してその了解を得,サンプルとしてその真砂土を土嚢1袋分持ち帰って は既になくなっていることが分かったことから,F1に車を運転させてH1商店に行き,H1に対して同人方裏山の真砂土を分けて欲しいと依頼してその了解を得,サンプルとしてその真砂土を土嚢1袋分持ち帰ってC1に見せ,その翌日,同人およびD1とH1商店に行って真砂土の確認をしてもらった旨供述している。 -- しかし,B1,E1およびD1の各検察官調書には,いずれも,E1とB( )1が,現場作業所でSと会い,B1が,Oから聞いた話の内容をE1に告げた時期について,4月上旬あるいは中旬であった旨の供述が記載されている。また,E1は,検察官の取調べにおいて,同月中旬ころ初めてUと会ってから数日後に,同人の先導で,C1およびD1と3台の車を連ねて民家の裏山に真砂土を見に行った旨供述し,D1も,検察官の取調べにおいて,同月中旬ころか下旬ころに,E1,C1およびR企画の男とともに,H1商店の裏山に真砂土を見に行った旨供述している。以上のとおり,B1,E1およびD1は,いずれも捜査段階においては,検察官に対し,別件での証人尋問または被告人質問の際の供述とは矛盾する供述をしているのであって,E1,C1およびD1がH1商店裏山の真砂土を見に行った時期についての原判決の事実認定には,疑問の余地がある。 また,上記16 のとおり,Oが,4月24日ころ,Uに対し,Q工業に代( )わってA1からR企画に本件工事を下請させて,R企画に約1000万円くらい儲けさせることを伝え,これ以上騒ぎを起こさない旨約束させたことに照らすと,Oとしては,この時点までに,A1の協力を得られる見通しがあったと推認するのが合理的である。そして,B1が,Oから聞いてE1に告げた話の内容は,上記16 のとおり,A1がQ工業に代わって本件工事の一次下請に( )入り,R企画に約100 得られる見通しがあったと推認するのが合理的である。そして,B1が,Oから聞いてE1に告げた話の内容は,上記16 のとおり,A1がQ工業に代わって本件工事の一次下請に( )入り,R企画に約1000万円の利益を得させなければならないなどというものであり,A1にとって大きな負担を強いられる可能性のある話であること,その当時のA1において,B1は,単なる営業部長であったのに対し,E1は,取締役工事部長として工事部門の責任者であったことにかんがみると,E1が,4月24日ころの時点で,B1から,同人がOから聞いた話の内容を聞いていなかったなどという事態は,およそ考え難いのであって,その時期について,「遅くとも5月6日ころ」とした原判決の事実認定は,正確さを欠いているといわざるを得ない。 -- さらに,E1が,C1およびD1とともに,Uの案内で,H1商店の裏山( )に真砂土を見に行った時期に関する上記21 2 の証拠以外の証拠の内容およ( )( )びその信用性については,以下のようにいうことができる。 ()アA1が請け負っていたK1地区道路改良工事以下「K1の工事」というに関する作業日報には,C1が,5月16日まではK1の作業所で作業をし,翌17日以降,「工事別」欄に「シティ」と表示された工事の作業に当たった旨記載されている。そして,「シティ」の記載が本件現場を意味することは,C1の検察官調書や上記21 のC1およびE1の各証人尋問調書から( )認定できる。したがって,C1が,同月17日に,K1の作業所から本件現場に異動したことは,K1の作業日報によって裏付けられているようにも思われる。 イしかし,C1は,本件詐欺の被疑者として検察官の取調べを受けた際,E1の指示で本件現場に顔を出すようになったのは,4月10日前後ころで ,K1の作業日報によって裏付けられているようにも思われる。 イしかし,C1は,本件詐欺の被疑者として検察官の取調べを受けた際,E1の指示で本件現場に顔を出すようになったのは,4月10日前後ころであり,同月中旬ころに,U,E1およびD1と一緒にH1商店の裏山に真砂土を見に行った旨,上記21 の証人尋問調書と矛盾する供述をしている。 ( )C1は,上記21 の別件での証人尋問において,詐欺の被疑者として取( )調べを受けた際には,A県L1郡M1町の下水道工事の現場作業所以下(「M1の作業所」というの作業日報を見せられ,その日報に基づいて,同)月16日ころから本件工事に従事した旨供述したものの,その後,K1の作業日報が発見されたことから,その日報により,M1の作業所が一段落した後,K1の工事に従事したことが判明し,本件現場へ行くようになったのが,5月17日ころであると分かった旨供述している。 B1も,上記21 の別件での証人尋問において,C1が4月10日まで( )はM1の作業所におり,その後,本件工事が始まるまでの約1か月間の日報がなかったことから,その空白期間に本件現場で本件工事に携わり,設計変更から何から全部手伝いをしたのではないかということで,捜査官に対する-- 供述調書ができてしまった旨述べるとともに,その後,K1の作業日報が発見された経緯についても供述しているところ,K1の作業日報が発見された経緯については,E1およびC1も,B1の上記供述と符合する供述をしている。 ウしかし,C1は,上記21 の証人尋問で,5月17日より前に,打ち合( )わせのため本件現場に行ったことを認める供述もしているほか,K1の作業日報には,K1の工事以外の現場のことは書かない旨の供述もしている。また,E1は,平成12年当時,A1の より前に,打ち合( )わせのため本件現場に行ったことを認める供述もしているほか,K1の作業日報には,K1の工事以外の現場のことは書かない旨の供述もしている。また,E1は,平成12年当時,A1の取締役工事部長として工事部門の責任者であって,C1の上司であり,長年現場作業に従事してきて工事現場の状況等に詳しい筈であるのに,上記21 の証人尋問において,5月17日,( )K1の作業をするために,本件現場の近くであるA市C区N1h丁目i番にA1の事務所を設置したという趣旨の供述をし,その供述を前提に検察官から追及され,K1の作業日報のC1に関する欄の「シティ」の記載の意味等について曖昧な供述をして十分な説明をすることができなかったほか,同時に2か所ないし3か所の現場での作業をC1に兼務させていたことや,本件工事の現場作業所とK1の作業所との間が1キロメートルも離れておらず,徒歩で約10分くらいしかかからないことなどを述べている。また,真実,C1が,5月17日に本件現場に異動して本格的に本件工事に従事するようになったのであれば,当然,そのことは,A1の本件工事に関する作業日報に記載されていると考えられるのに,そのような作業日報ではなく,K1の作業日報が証拠として提出されているのは,いささか不自然との感を免れない。 エ以上説示したところに照らすと,K1の作業日報の「シティ」の記載から,C1が,5月17日に本件現場に異動したことが,客観的に裏付けられているとまではいえない。また,仮に,C1が,同日本件現場に異動したものであったとしても,K1の工事現場と本件現場とが近接していることなどに照-- らすと,C1が,同日よりも前から,双方の現場を行き来していた可能性も否定し難い。 オ加えて,本件真砂土の供給元となったH1は,以下のとおり 現場と本件現場とが近接していることなどに照-- らすと,C1が,同日よりも前から,双方の現場を行き来していた可能性も否定し難い。 オ加えて,本件真砂土の供給元となったH1は,以下のとおり供述している。 すなわち,4月初めころ,O1区P1町方面で土建屋をやっているという男が来て,前年,C区内で発生した風水害で出た土砂を同区Eの土地に集めたところ,その土砂を産業廃棄物処理場に移した跡地整備のため,汚れた土地を削って新しい真砂土を入れて整地するのに必要なので,2000立方メートルから3000立方メートルくらいの真砂土を分けてくれと言ってきた。 この男が真砂土を取りに来たのは,それから1か月半くらい経った5月20日過ぎであった,というのである。 この供述にいう「土建屋をやっているという男」が,Uを意味することは,その供述内容から明らかである。そして,H1は,被告人やB建設関係者はもとより,本件に関係する誰とも格別の関係のない全くの第三者であるから,殊更に虚偽を述べているとは考えられない上,P1町方面の土建屋に真砂土を分けてやった時期について,その土建屋に対し,真砂土を搬出する際道路を汚したら直ちに清掃することなどを約束させて,真砂土を分けることを承諾した後である5月初めころ,知り合いのQ1工業に真砂土を分けてやり,その後の同月下旬ころ,ダンプカーが来て真砂土を搬出した旨述べて,真砂土を譲り渡すことを承諾した時期について根拠を挙げていることなどにかんがみると,その供述は信用できるというべきである。 カまた,F1は,4月中旬ころ,Uから無償の真砂土を探すように指示され,複数の民間会社等と交渉したが,なかなか見つからずにいたところ,同月24日にOと話をした数日前,Uから,G1に民間の良い砂があるらしいので見に行こうと言われて,その日のうち 土を探すように指示され,複数の民間会社等と交渉したが,なかなか見つからずにいたところ,同月24日にOと話をした数日前,Uから,G1に民間の良い砂があるらしいので見に行こうと言われて,その日のうちにH1商店の裏山に真砂土を見に行き,その後3週間ないし4週間経ち,真砂土を搬入する直前になって,Uから,H1商店の裏山の真砂土を現場に入れていいことになったと言われた旨供述-- している。 さらに,D1は,4月上旬ころ,現場作業所に出入りするようになったA1のC1に対し,全体の作業計画を説明して,具体的な作業の指示をしたことや,そのころ,Q工業とA1が,現場作業所で重なっていた時期があった旨供述している。 キそして,上記18 のとおり,A市が,4月25日付けの本件通知書添付( )の変更理由書において,本件土地を整地するための真砂土の不足量が約3000立方メートルであるとしているところ,上記16 のとおり,C1が,( )D1から,本件工事全体の作業計画等について説明を受けた上,本件現場に敷く真砂土の高さの計算等の作業を指示されたことに照らすと,C1がその作業をしたのは同日以前であるということができるから,同人は,同月上旬ないし中旬ころから現場作業所に出入りしていたと認めるのが相当である。 また,上記23 オカによると,Uは,同月初めころには,H1に対し本件( )工事のために真砂土を分けてくれるように申し入れており,同月24日の数日前には,F1とともにH1商店の裏山の真砂土を見に行ったことが認められる。そして,上記16 8 のとおり,Oは,そのころまでに,UおよびF( )( )1と会って,A1からR企画に本件工事を下請けさせ,R企画に約1000万円儲けさせることを伝え,これ以上騒ぎを起こさない旨約束させ,同月25日には,A市から そのころまでに,UおよびF( )( )1と会って,A1からR企画に本件工事を下請けさせ,R企画に約1000万円儲けさせることを伝え,これ以上騒ぎを起こさない旨約束させ,同月25日には,A市からB建設に対し本件通知書が発出されて,真砂土約3000立方メートルを購入することを含めた本件変更契約の概要が明らかになっていたことなどが認められる。 真砂土を購入する代わりに安い真砂土を使用することは,R企画が約1000万円の利益を上げるために,最も重要な要素であったことはいうまでもないから,Uとしては,一刻も早く本件真砂土をE1らに見せようとした筈である。したがって,原判決が理由28 で認定しているように,Uが,5( )月17日ころまで,E1らをH1商店の裏山に案内しなかったとは考え難い。 -- 以上検討したところによると,Uが,E1らをH1商店の裏山に案内した( )時期は,4月中旬から下旬ころと認定するのが相当である。そして,E1が,B1から,A1がQ工業に代わって本件工事の一次下請に入り,R企画に約1000万円の利益を得させなければならないと聞かされたのが,その利益をR企画に得させるために用いる真砂土をH1商店の裏山に見に行った4月中旬から下旬ころにかけての時期よりも後であるとは考え難いから,E1が,遅くとも5月6日ころに,現場作業所でSと会い,B1から,Oから聞いた話を聞かされたという原判決の認定は誤っており,上記16 のとおり,その時期は4( )月中旬ころと認定できる。 上記11 ないし10 の各事実を総合すると,本件の基本的な事実関係について( )()は,以下のようにいうことができる。すなわち,Oは,3月下旬ころ,R企画に利益を得させる目的で,被告人に対し,本件工事について増額の設計変更をするよう強く働きか 的な事実関係について( )()は,以下のようにいうことができる。すなわち,Oは,3月下旬ころ,R企画に利益を得させる目的で,被告人に対し,本件工事について増額の設計変更をするよう強く働きかけ,本件契約の増額変更をすることにより,R企画に約1000万円の利益を得させることを目論んだ。Oの意を受けた被告人は,3月下旬から4月上旬ころにかけて,本件工事の担当者主任監督員であるNに対し,本件工()事の増額変更を働きかけるとともに,同人に依頼されて,同人の上司であるWにも同様の要請をした。折から,本件工事に使用する予定であったT峠の土が使用に適さなくなっていたところ,Oの働きかけを受けた本件土地の地権者であるM開発のZから,本件土地の表面の黒い部分を何とかして欲しいという要望があったほか,本件工事の元請業者であるB建設のSおよびD1からも,Nに対し,真砂土を購入する方向での検討を依頼された。そして,A市において,同月25日までには,本件変更契約とほぼ同一内容の本件変更理由書が作成されて,同日,本件通知書が発出されたところ,そのころまでには,U,E1,C1およびD1において,本件工事に使用される予定の真砂土が無償で入手できるH1商店の裏山を見つけていた。他方,Nは,本件工事に要する真砂土を購入することなどを内容とする本件契約の増額変更手続を進め,B建設との協議を経て,5月10日,-- A市とB建設との間で本件変更契約が締結された。Oは,本件工事において,R企画が二次下請を続けるためには,R企画との間で紛争が生じているQ工業を一次下請から外し,代わりにA1を一次下請に入れるとともに,A1の協力を得ることによって,R企画に約1000万円の利益を得させようと考えた。Oは,Zを通じてB建設に対し,一次下請をA1に変更するよう働きかける ら外し,代わりにA1を一次下請に入れるとともに,A1の協力を得ることによって,R企画に約1000万円の利益を得させようと考えた。Oは,Zを通じてB建設に対し,一次下請をA1に変更するよう働きかけるとともに,B1を通じて,A1に本件工事の一次下請に入ってR企画に約1000万円の利益を得させることを承諾させた。また,R企画のUにも,約1000万円を儲けさせるので,これ以上騒ぎを起こさないことを約束させた。そして,実際には対価を支払わずに入手された本件真砂土を用いて本件工事が行われたにもかかわらず,製砂業者であるIから真砂土を搬入した旨の本件出荷証明書等が,UからC1らを介してA市の担当者に提出され,B建設に本件請負代金が振り込まれた。 ところで,原審訴訟記録および関係証拠によると,本件の捜査および原審における審理経過等は,以下のとおりである。 被告人は,平成16年6月16日,本件詐欺罪により逮捕され,翌17日( )勾留されたところ,逮捕の20日前である同年5月27日にA県R1警察署で,同年6月1日に同署およびA地方検察庁で,いずれも本件詐欺の被疑者として警察官または検察官の取調べを受けた。被告人は,その際,本件変更契約に関してOから不正な増額を頼まれ,本件工事の発注元であるC区役所のNに不正な増額をするように指示して1000万円近い増額に成功し,その増額理由である真砂土購入と表土搬出についてOに報告したところ,同人がその理由に着目して,下請に不正な利益をもたらすために,真砂土購入等で不正を働き,詐欺をしているので,自分自身,この詐欺において不正な増額という点でOに協力した詐欺の共犯といわれても仕方がない旨述べて,その旨の警察官調書および検察官調書の作成に応じた。そして,被告人は,逮捕勾留されて取調べを受けた際,以下のような供述を て不正な増額という点でOに協力した詐欺の共犯といわれても仕方がない旨述べて,その旨の警察官調書および検察官調書の作成に応じた。そして,被告人は,逮捕勾留されて取調べを受けた際,以下のような供述をした。すなわち,このままA市の職員として復帰できることはないと確信しているし,その償いをするには,司直の判断をあお-- ぐしかないと思っており,その結果を受けて,第2の人生を歩むには1日でも早い方がいいと思うので,これから正直にすべてを話したいと思う。Oらが,本件変更契約のとおりに真砂土を購入せず,無償の砂を入れて経費を浮かせ,完成検査の際には嘘の書面を整えてA市に提出して工事代金を騙し取るくらいは分かっていたし,自らが,このような工事代金増額を担当して,Oが中心となって行った詐欺事件の一部を担当し,業者に不正な利益を与えた。設計書で真砂土購入と決められていたのに,無償の真砂土が見つかった場合は,工事請負契約の約款A市建設工事請負契約約款以下「本件契約約款」というのこ(〔〕と18条から24条のとおり,監督員と協議を行い,真砂土購入と決められ)ている部分を抹消し,「民間からの流用土」と設計変更した契約を結ばなければなならない,というのである。 なお,被告人は,勾留された翌日である平成16年6月18日,弁護士3名を弁護人に選任しているところ,同年7月20日,別の弁護士を弁護人に選任し,上記弁護士3名は,翌21日弁護人を辞任している。 被告人は,同年7月6日,勾留のまま本件公訴事実で起訴された。同年8( )月24日の原審第1回公判期日において,被告人は,本件公訴事実は間違いない旨述べて,事実関係を認め,当時の弁護人も同旨の意見を述べて,同公判期日において検察官が請求した証拠は,全部同意されて取り調べられた。なお,同公判期日にお おいて,被告人は,本件公訴事実は間違いない旨述べて,事実関係を認め,当時の弁護人も同旨の意見を述べて,同公判期日において検察官が請求した証拠は,全部同意されて取り調べられた。なお,同公判期日において,弁護人は,「被害弁償については,共犯者との共同での弁償を調整していますが,場合によれば被告人一人での全額弁償も検討しています」などと述べた。そして,弁護人は,同日被告人の保釈を請求し,翌25日保釈が許可され,同日被告人は釈放された。 被告人は,同年10月12日の原審第2回公判期日における被告人質問で,( )自らが有罪であることを前提とする供述をした。なお,その供述中には,弁護人から「購入土というのは,有償,すなわちお金を出して購入すると,こういうことですね」と質問されて「はいそうです」と答えた部分がある。そして,-- 同年11月11日の次回公判期日は,情状証人2名を取り調べて結審することが予定された。 ところが,同年11月9日,上記弁護人より,被告人から解任されたこと( )を理由に辞任届が提出され,翌10日,当審弁護人である奥苑泰弘弁護士を弁護人に選任した旨の弁護人選任届が提出された。そして,上記公判期日が取り消され,平成17年1月20日の第3回公判期日において,被告人は,被告事件に対する前と異なる陳述として,本件公訴事実のうち,被告人が当時技術管理課長であったこと,本件工事契約があったことおよび本件変更契約が存在したことは認めるものの,それ以外の事実は否認する旨述べ,弁護人は,被告人がOらと共謀した点などについて争うのはもちろんのこと,内容虚偽の出荷証明書が提出されたことや,A市からB建設の当座預金口座に本件請負代金が振り込まれたことなど,被告人が知らない事実についても否認し,法律上の主張として,本件変更契約は,い ろんのこと,内容虚偽の出荷証明書が提出されたことや,A市からB建設の当座預金口座に本件請負代金が振り込まれたことなど,被告人が知らない事実についても否認し,法律上の主張として,本件変更契約は,いわゆる総価契約ないし定額一括請負契約であるから,仮に真砂土を購入したように欺くという欺罔行為を用いたとしても,本件工事自体は瑕疵なく完成しており,この点の欺罔を理由にA市に請負代金減額請求権が発生するものではなく,同市について詐欺罪の構成要件である財産上の損害がないから,同罪は成立せず,被告人は無罪である旨の意見を述べた。 その後,平成18年1月16日の第12回公判期日まで審理がなされて結( )審した。ところが,検察官および弁護人双方からの請求により,同年2月15日,原裁判所は弁論を再開し,さらに第13回ないし第20回公判期日において審理がなされて結審し,平成19年3月30日の第21回公判期日において,原判決が言い渡された。 検察官は,本件公訴事実に関して,A市およびB建設は,本件変更契約締結に当たり,本件工事に使用する土材料として,土自体に対価を支払って購入する「購入土」を使用することを前提としていた旨主張している補充論告要旨2,(3項。 )-- それに対し,原判決は,この主張を,購入土の使用がB建設の本件変更契約上の義務になっていると認めるに足りるか,という争点として捉え理由32 冒頭,(( ))要旨以下のとおり説示して,B建設は,同契約上,本件工事の覆土に必要な土材料をその対価を支払う方法によって調達すべき契約上の義務を負っているとは認めるに足りず同32 オ,「購入土」を使用すべき契約上の義務,すなわち,土(( ))材料自体に対価を支払って調達すべき契約上の義務があることにはならないから,同義務を前提とす 負っているとは認めるに足りず同32 オ,「購入土」を使用すべき契約上の義務,すなわち,土(( ))材料自体に対価を支払って調達すべき契約上の義務があることにはならないから,同義務を前提とする検察官主張の欺罔行為をしたと認めるに足りないとし同3( 4 ,さらに,その他の検察官主張の欺罔行為について検討を加えた上,いずれ( ))も本件請負代金の詐取に向けての欺罔行為とは認めるに足りず同33 5 ,被(( )( ))告人には詐欺罪が成立しない旨判示した同36 。 (( )) A市発注の公共工事においても,「購入土」の意義や「購入土」として予( )定価格が積算された場合と「自主施工の原則」との関係については,原則として,S1省大臣官房C3課D3室長作成の「照会に関する回答」と題する書面以下「S1省回答1」というおよび「平成18年12月18日付で照会のあ()りました『捜査関係事項照会書』について」で始まる書面以下「S1省回答(2」というの取り扱いに準じるものと認められる理由32 ア。 )(( )) S1省回答1には,「発注者と請負者の契約は,総価工事全体の総額での( )()契約であり,工事請負契約書1条3項本件契約約款の1条1号と同旨に記載()されているとおり,『仮設,施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段については,この契約書および設計図書に特別の定めがある場合を除き乙請負者がその責任において定める』ことになっています。つまり,()発注者は予定価格の積算において,流用土や発生土が利用できない場合,購入することを想定し,標準的な土材料の購入費を計上して積算することになりますが,請負者は必ずしも購入する必要はなく,請負者がその責任において土材料を調達することになります」と記載されて ない場合,購入することを想定し,標準的な土材料の購入費を計上して積算することになりますが,請負者は必ずしも購入する必要はなく,請負者がその責任において土材料を調達することになります」と記載されている理由32 ア。 (( )) S1省回答2によれば,S1省回答1にいう「土材料の購入費」とは,( )-- 「土そのものに支払う対価土そのものの費用」を意味し,発注者が積算する()場合の「盛土購入土」は,真砂土そのものの対価を支払わない場合は含まな()いとしながら,引き続き「なお,これは,請負者がその責任において土材料を調達する方法を縛るものではありません」としており,また,「契約書及び設計図書に『購入土を使用しなければならない』という趣旨の『特別の定め』がない限り,請負者は『購入土』を土材料として用いる必要はない。つまり,『購入土』の定義としては,『土そのものに対価を支払って入手する』ことが必要であるが,自主施工の原則により,請負者が土を調達する方法は,土そのものに対価を支払って入手する『購入土』に限ると縛られるものではない」ことなどからすると,発注者が,土材料を購入土として予定価格を積算した上,発注した場合であっても,請負者において,購入土以外の土材料を調達しても,債務不履行にはならないと認めるのが相当である理由32 ア。 (( )) そうすると,S1省回答1,2によれば,変更契約書ないしは設計図書に( )請負者であるB建設が土材料として「購入土を使用しなければならない」旨の「特別の定め」がない限り以下,本件変更契約ないしは設計図書におけるこ(の趣旨の定めを,単に「特別の定め」という,土材料を購入土として積算し)たことをもって,土材料として購入土を使用することが,B建設による本件変更契約上の義務になっ 約ないしは設計図書におけるこ(の趣旨の定めを,単に「特別の定め」という,土材料を購入土として積算し)たことをもって,土材料として購入土を使用することが,B建設による本件変更契約上の義務になったとは認めるには足りないところ,S1省回答1,2の上記解釈自体を否定する証拠は見当たらない理由32 イ。 (( )) そして,本件変更契約書ないしは設計図書の記載等から,上記のような( )「特別の定め」があったと認めるに足りるか否かについて検討するに,本件変更契約の特記仕様書には,覆土に用いる土材料について格別の指定はなく,それに添付された設計書以下「本件設計書」というの整地工の工種欄に「真砂()土購入」との記載があることは,本件の経緯や,N,Gら本件変更契約の締結に関与した者あるいはA市の関係職員らの各供述に照らしても,特別の定めと認めるに足りない理由32 ウアないしオ。また,検察官のその他の主張(( )()())-- を検討しても,同様に判断されるから理由32 エアイ,B建設は,本件(( )()())工事の覆土に必要な土材料を対価を支払う方法によって調達すべき契約上の義務を負っているとは認められない理由32 オ。 (( ))( )( )( ) しかし,原判決の上記51 ないし4 の説示が正当であるとしても,上記55の認定判断を是認することはできない。以下に説示するとおり,B建設は,特別の定めにより,本件工事の覆土に必要な土材料を,対価を支払う方法によって調達すべき契約上の義務を負っていたと認定することができる。 本件設計書の工種欄に記載された「真砂土購入」という文言の意味を含め,( )本件変更契約内容の確定は,本件変更契約の契約書および設計図書の記載のほか,取引慣行,「真砂土購入」 ることができる。 本件設計書の工種欄に記載された「真砂土購入」という文言の意味を含め,( )本件変更契約内容の確定は,本件変更契約の契約書および設計図書の記載のほか,取引慣行,「真砂土購入」の意味についての関係者の認識,本件変更契約が締結された経緯およびその履行状況,本件一次下請契約および本件二次下請契約の内容等,諸般の事情を総合して,本件変更契約締結当時の契約当事者の意思に基づいて行うべきである。 なお,弁護人は,建設業法19条が書面主義を採用し,本件契約約款にも同法条の趣旨を受けた規定が置かれているから,書面によらない口頭による特別の定めが成立する余地はない旨主張する。 しかし,同法は,建設業を営む者の資質の向上,建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって,建設工事の適正な施工を確保し,発注者を保護するとともに,建設業の健全な発達を促進し,もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とするものであり1条,同法の定める契約の締結あるいはその内()容変更の際の書面化19条1項,2項の趣旨は,当事者の合意の有無および()内容を明確化することによって,後日の紛争を防止するとともに,公正平等な契約の締結を推進するための規定と解されるものの,建設業法自体は民法の特則であるという体裁にはなっておらず,上記書面化の規定も刑事罰等の制裁を伴うものでもないから,いわゆる効力規定とも解し難い。そして,本件変更契約においては,その契約書に「真砂土購入」という書面上の記載があり,その-- 記載の意味内容や,その記載が特別の定めに該当するか否かを判断するに当たり,契約当事者の意思内容を判断するため,書面に現れない事情を考慮することが許されることは,明らかである。 そこで,以下,これらの事情について検討する。 ( )ア本件変更契約 を判断するに当たり,契約当事者の意思内容を判断するため,書面に現れない事情を考慮することが許されることは,明らかである。 そこで,以下,これらの事情について検討する。 ( )ア本件変更契約の契約書に添付された本件設計書には,同契約の目的物である「整地工」の明細が記載されており,「整地工」の内訳として,工種欄に「真砂土購入」,数量欄に「3,150」,単位欄に「㎥」と記載されている。なお,同契約書に特記仕様書は添付されていない。 イ本件工事の担当者主任監督員であったNは,本件変更契約締結の際,A()市の交渉窓口になったところ,その検察官調書および別件の証人尋問調書には,覆土として使用する真砂土を製砂業者から購入することを前提とする供述が記載されており,原審公判でも「購入といったら,もう土を買ってくるというふうに,常識で思っていたということなんですが」と供述している。 もっとも,Nは,原審公判において,理由32 ウアで指摘されているよ( )()うに,「真砂土購入」というのが特別な定めであるとは断定できない旨述べているし,弁護人からS1省回答1を示されて,「請負者は必ずしも購入する必要がなくというところが,非常にびっくりしてるんですけど」などと,驚きを隠せない様子で独白し,購入土とあっても購入する必要がないということが今分かった旨述べ,さらには,S1省回答1を前提とすると,本件においてB建設は購入土を入れたことになるし,請負業者は契約の目的である真砂土の品質を保った一定量の真砂土を提供することを履行すればよいから,購入することは義務ではないという考え方になる旨述べている。 しかし,このことは,逆にいえば,Nは,本件変更契約締結当時,B建設が,本件工事を実施するに当たり,真実,真砂土を購入するものと認識していたことを,如実に示 ではないという考え方になる旨述べている。 しかし,このことは,逆にいえば,Nは,本件変更契約締結当時,B建設が,本件工事を実施するに当たり,真実,真砂土を購入するものと認識していたことを,如実に示しているともいうことができる。 ウNが起案した「工事請負契約締結伺変更契約」を決裁したC区役所市民()-- 部長兼まちづくり推進課調整担当課長のGは,検察官に対し,「施工業者が変更理由書に書かれている真砂土購入などをせず,無償の真砂土を搬入して覆土に使用するなどということが分かっていたのであれば,絶対に決裁しておらず,施工伺書作成を担当した土木課に差し戻し再調査をさせて契約に至っていないことは間違いありません」と述べ,別件の証人尋問でも同様の供述をしている。また,Gは,原審公判でも,真砂土購入の意味について「売買契約によって不足する土砂を調達するというふうに理解」した旨述べたほか,S1省回答1を示された後にも,「私自身は購入土というのは当然代金を払って土砂を購入するものが購入土だというふうに理解をしておりました」と供述している。 さらに,本件工事の完成検査を実施したF3も,購入した真砂土であれば,一定の品質が保証され,他に不純物はなく,工事の質的な完成の点で問題はないといえるが,無償で入手した真砂土ということになれば,品質保証のないものである可能性が高く,外見上は覆土ができているように見えても,質的に十分な覆土ができていないことになる可能性があるから,真砂土の購入事実がなければ,完成認定をすることはない旨供述している。 エ上記110 で認定したとおり,IからB建設が真砂土を購入したことを示()す内容虚偽の本件出荷証明書等が,R企画のUによって用意され,A1の現場代理人であるC1を介してB建設の現場代理人であるD1に手渡され, 認定したとおり,IからB建設が真砂土を購入したことを示()す内容虚偽の本件出荷証明書等が,R企画のUによって用意され,A1の現場代理人であるC1を介してB建設の現場代理人であるD1に手渡され,本件納品書の受領印欄に同人が署名し,Sの決裁を経て,本件工事の工事完成届とともにA市に提出されている。 もし,請負者側の関係者が,本件工事で使用する真砂土について,製砂業者から購入する必要はなく,自己の責任において中等品の真砂土を調達すれば足りると認識していたというのであれば,H1商店の裏山から真砂土を搬入したという納品書を提出すれば足りる筈であって,公共工事指名停止処分を受ける可能性さえある内容虚偽の本件出荷証明書等を作成してまで提出す-- る必要性は全くない。 これら請負者側の行動は,覆土として使用する真砂土について,製砂業者から購入することが前提となっており,そのように仮装する必要があったと考えない限り,理解し難いというほかない。Uに対し,内容虚偽の出荷証明書を用意するよう指示したC1は,別件の証人尋問において,本件出荷証明書等を準備した理由につき,検察官の尋問に対する返答に窮した挙げ句,G1H1商店の裏山が真砂土を販売する所ではなかったからであるという趣()旨のことを述べたほか,嘘の出荷証明書を用意した理由は,本当のことを書けないからではないかと尋ねられて,「まあそうですね」と述べ,本件工事に使用した真砂土の真の入手先を明らかにできなかったことを認める供述をしている。 オ本件変更理由書には,工事内容の変更理由として「整地を行うための真砂土3000立方メートルを購入するものである」と明示されており,その字義に照らして,請負者が,その責任において自由に真砂土を調達することを許容している趣旨と解することは困難である。そして, めの真砂土3000立方メートルを購入するものである」と明示されており,その字義に照らして,請負者が,その責任において自由に真砂土を調達することを許容している趣旨と解することは困難である。そして,本件変更理由書は,A市およびB建設において,本件変更契約締結の内部決裁のための資料となっていたものである。また,上記18 のとおり,本件変更理由書を起案し( )たNは,本件当時,真砂土を製造販売している業者から購入することを念頭に置いていた旨供述している。さらに,本件変更契約の締結について,B建設の交渉窓口となったSの警察官調書にも,本件工事において,製砂業者から購入した真砂土を使用することを前提とする趣旨の供述が記載されている。 カ本件工事に関与した請負者およびA市の各関係者の供述によれば,本件真砂土について,本件現場に搬入する前および本件工事の完成検査の際,その品質確認が極めて簡便になされたことが認められる。これは,品質が担保されている製砂業者から購入した真砂土を使用することが前提となっていたと考えると,最も自然に理解することができる。 -- キ本件二次下請契約をみると,その注文請書の内訳書に「盛土材真砂土購()入」と記載され,費用負担特約として「購入土」の「材料費・運搬費」をR企画において負担することが明記されている。そして,この内訳書を作成したA1のC1は,「盛土材真砂土購入」の意味について,覆土は購入する()ものだという認識があり,購入費には,土の代金,運搬,掘削および積込み費用が入っていると思う旨供述している。また,本件二次下請契約についてA1の交渉窓口となったE1も,検察官に対し,真砂土を購入することが契約の内容であることを前提とする供述をしている。 これらの事実を総合すると,A1とR企画との間の本件二次下請 件二次下請契約についてA1の交渉窓口となったE1も,検察官に対し,真砂土を購入することが契約の内容であることを前提とする供述をしている。 これらの事実を総合すると,A1とR企画との間の本件二次下請契約において,製砂業者から購入した真砂土を覆土として使用することが,契約の内容になっていたと認めるのが相当である。 クしかも,本件工事に関与した請負者側の関係者の供述をみると,B建設のSおよびD1のみならず,A1のE1,B1およびC1のいずれの捜査段階の供述調書にも,本件変更契約の締結後,本件工事において,製砂業者から購入する真砂土を覆土として使用することになっていたことを前提とする供述が記載されているのである。 加えて,被告人は,本件当時,A市の発注する公共工事の管理を総括し,( )公共工事の設計・積算の基準に関する指導等を担当する部署である技術管理課の課長であって,「真砂土購入」の意味について,本件当時のA市における有権解釈を示すべき立場にあった人物であったところ,上記41 ないし3 のと( )( )おり,本件詐欺の被疑者として,当初在宅で,その後逮捕勾留の上取調べを受けた際,一貫して,自らが本件詐欺の共犯といわれても仕方がなく,同市職員として復帰できることはないので早く第2の人生を歩みたい旨の供述をし,原審第1回公判期日において本件公訴事実を認め,原審第2回公判期日における被告人質問においても,自らが有罪であることを前提とする供述をしていたものである。 -- もっとも,被告人は,原審第3回公判期日において,本件公訴事実に対する意見を翻して否認に転じ,その約2か月後の原審第4回公判期日における被告人質問で,工事設計書の整地工明細表に「真砂土購入3150立米」と書かれているものの,「何も指定してませんから,業者の資材調達 意見を翻して否認に転じ,その約2か月後の原審第4回公判期日における被告人質問で,工事設計書の整地工明細表に「真砂土購入3150立米」と書かれているものの,「何も指定してませんから,業者の資材調達の自由といいますか,真砂土持ってきなさいと,どこからでもいいですから持ってきなさいということです」「購入土という分類の土はございませんから中略,それは,真()砂土のことを意味しているんですね」と述べて,購入といっても買うという意味ではなく,本件真砂土も「真砂土購入」に当たる旨供述している。そして,被告人は,その後の被告人質問においても同様の供述をしたほか,原審第10回公判期日以降になされた被告人質問において,S1省回答書1等を根拠に,本件当時も契約上購入土とされている土は,請負者の責任において,品質を満たしたものを決められた数量調達すれば足り,製砂業者から購入することは契約上の義務にはなっていないと認識していたものであって,捜査段階の供述は,捜査官による脅迫や利益誘導の結果である旨述べている。 しかし,被告人の原審第4回公判期日以降における各公判供述によれば,本件工事において,H1商店裏山の真砂土が覆土として使用されたことは,法的に全く問題がなく,詐欺罪が成立する筈もないことは明白である。しかるに,被告人は,本件詐欺の被疑者として取調べを受けた際,詐欺罪で起訴された場合には休職となる可能性があり地方公務員法28条2項,更に有罪とされて()禁錮以上の刑に処せられた場合には失職する同法28条4項,16条2号と()いうのに,「真砂土購入」の意味について,本件当時から上記のような認識を持っていたにもかかわらず,本件が詐欺になることを認める上記各供述調書の作成に応じたというのは,到底信用し難い。被告人は,捜査官による脅迫や利益誘導があった について,本件当時から上記のような認識を持っていたにもかかわらず,本件が詐欺になることを認める上記各供述調書の作成に応じたというのは,到底信用し難い。被告人は,捜査官による脅迫や利益誘導があった旨供述するのであるが,その脅迫や利益誘導について供述する内容は,全体として漠然としており,前後の辻褄が合わない点も多く,詳細な自白調書の作成に複数回応じた理由についての納得のいく説明とはいい難い。 -- なお,被告人は,原審第1回公判期日において,本件公訴事実を全面的に認める旨述べ,弁護人においては,本件の被害について弁償する意向を示していたし,上記43 で認定したとおり,被告人は,保釈許可決定により釈放され( )た後である原審第2回公判期日における被告人質問でも,「購入土」というのは,金を出して購入する土という意味であることを肯定する供述をしていたものである。その点について,被告人は,その当時においても,刑事から受けた脅迫による異常な精神状態にあった旨供述している。 しかし,原審第2回公判期日の当時は,既に保釈により釈放されてから1か月半以上が経過していた上,私選弁護人の援助も受けていたのであるから,その時点においても,捜査官から受けた脅迫による影響下にあったとは考え難い。 そうすると,被告人は,原審第2回公判期日後,同第3回公判期日で被告事件に対する陳述を変更するまでの間のいずれかの時点までは,「真砂土購入」の意味につき,他の事件関係者と同様,製砂業者から購入した真砂土を使用することを念頭に置いていたものというほかない。 なお,本件工事について,A市の方針,人事,予算を実質的に指揮する立( )場である同市道路部参事であったT1は,原審公判で,購入土とは必ずしも製砂業者から購入する必要はなく,請負者がその責任において調達することで ついて,A市の方針,人事,予算を実質的に指揮する立( )場である同市道路部参事であったT1は,原審公判で,購入土とは必ずしも製砂業者から購入する必要はなく,請負者がその責任において調達することで足りる旨供述している。 しかし,T1は,本件変更契約の締結について決裁すべき立場にあった者ではない上,その供述内容に照らすと,本件工事について総括的に指示する立場にあったとはいえ,A市の積算基準等の事務的な取扱いなど,細かい点についてまで把握しているわけではないことが窺われ,その供述の証拠価値は,必ずしも高くない。 弁護人は,S1省回答書1等を論拠として,「真砂土購入」あるいは「購( )入土」とは,製砂業者から真砂土を購入することを意味している旨のA市関係者の供述の信用性を論難する。 -- しかし,記録によれば,S1省回答書1は,平成17年9月12日付けで作成されて,同年11月11日の原審第10回公判で取り調べられたものであり,本件変更契約当時には存在していなかったことが明らかである上,本件工事に関与したA市関係者が,本件工事が実施された当時,S1省回答書1の内容を把握してはいなかったと認められる。したがって,S1省回答書1の記載内容を考慮しても,本件工事に関与したA市関係者の「真砂土購入」の意味に関する本件当時の認識についての供述の信用性に疑問は生じない。 また,B3およびGの原審公判における各供述中には,山代土代が零円で()あっても販売業者の見積りがあれば,あるいは,代金が1円であっても土材料の対価を支払っている場合には,「購入真砂土」に当たるなどという供述もあるところ,これらの供述は,同人らが証人として尋問されている最中にS1省回答書1を見せられ,「発注者は予定価格の積算において中略,購入するこ()とを想定し,標準 砂土」に当たるなどという供述もあるところ,これらの供述は,同人らが証人として尋問されている最中にS1省回答書1を見せられ,「発注者は予定価格の積算において中略,購入するこ()とを想定し,標準的な土材料の購入費を計上して積算することになりますが,請負者は必ずしも購入する必要はなく,請負者がその責任において土材料を調達することになります」という記載に驚きつつ,その内容を十分検討したり理解したりできないまま,尋問に対して供述していることが窺われ,本件当時のA市関係者の認識や,A市の有権解釈を示したものと評価することはできない。 以上の認定事実を総合すると,本件変更契約において,本件工事の覆土と( )して使用する真砂土は,土代を支払って製砂業者から購入するということで,契約当事者の意思は合致しており,それが本件変更契約の内容となっていたものであり,本件設計書の工種欄の「真砂土購入」という記載は,本件契約約款1条3項に定められた「設計図書に特別の定めがある場合」に該当すると解するのが相当である。 したがって,B建設は,本件変更契約における特別の定めにより,本件工事の覆土に必要な土材料を対価を支払う方法によって調達すべき契約上の義務を負っていたと認定できる。しかるに,B建設の担当者であるSおよびD1は,-- 本件工事の覆土として,無償で入手した本件真砂土を使用することを知りながら,その情を秘して,本件工事の完成を通知するとともに,内容虚偽の出荷証明書等を提出し,A市の担当者に本件工事が完成した旨誤信させて,その完成を確認させ,請負代金残額を振り込ませたのであるから,詐欺罪が成立することが明らかであり,被告人において,本件詐欺の共謀を遂げていたことも認定できる。 控訴趣意に対する答弁および刑事訴訟法393条4項の弁論における弁 額を振り込ませたのであるから,詐欺罪が成立することが明らかであり,被告人において,本件詐欺の共謀を遂げていたことも認定できる。 控訴趣意に対する答弁および刑事訴訟法393条4項の弁論における弁護人の主張について,以下検討する。 弁護人は,以下のとおり主張する答弁書第1の3。すなわち,公共土木工( )()事における予定価格は,官積算が義務づけられ,当該契約の相手方当事者である請負者の意図,事情を考慮して積算することは許されない。そして,A市土木工事標準積算基準書その写しは「照会について回答」と題する書面甲9(()〔 2 に添付にあるように,変更契約においても官積算が行われるところ,官積〕)算による以上,真砂土購入購入土は1立方メートル当たり1680円以下,()(この金額を「統一基本単価」ともいうで積算され,何があっても,これが左)右されることは一切ない。たとえ,A市が,請負者側において,無償の真砂土を入手して搬入するつもりであるということを知らされた,あるいは知っていたとしても,絶対に同価格で積算される。本件において,当初,T峠の土を覆土に使用するつもりであったのが,その土の質が低下したことにより,購入土に変更しなければならなくなり,近くに土取場がないと判断した時点で,「土木工事積算基準書の運用平成11年7月」と題する書面の「購入真砂土」の()項以下「購入真砂土の項」というにあるように,いわば自動的に統一基本単()価で積算されることになるから,仮に,B建設が,土材料に対価を支払って購入した真砂土を使用するつもりがないのに,これあるように装ってA市と変更契約を結んだとしても,結局は,購入土の単価は1立方メートル当たり1680円と積算されるのである。したがって,本件は,欺罔行為があるとはいえな-- つもりがないのに,これあるように装ってA市と変更契約を結んだとしても,結局は,購入土の単価は1立方メートル当たり1680円と積算されるのである。したがって,本件は,欺罔行為があるとはいえな-- いし,不能犯であると認めざるを得ない,というのである。 しかし,本件工事に関与したA市関係者は,いずれも,本件当時,「真砂土購入」の意味について,製砂業者から対価を支払って真砂土を購入する場合をいうと認識していたのであって,本件変更契約締結以前にH1商店裏山の真砂土を覆土として使用することを知っていたならば,これら関係者が供述するように,本件変更契約について,本件で締結されたのと同じ契約内容で締結されていたとは到底解されない。 たしかに,購入真砂土の項には,「①他現場からの流用を原則とする。それが不可能な場合で近くに土取場がない場合には,技術管理課の単価統一基本(単価のことであるで積算してもよい。②付近に土取場がある場合には,その)つど見積りを徴収し,技術管理課と協議すること。③見積りは,概算数量及び山代+切土+積込+運搬の内訳を付けて徴収すること」などと記載されてい()る。 しかし,購入真砂土の項に示された基準は,A市内部の運用基準であって,請負者が関知するところではないから,請負者が,この基準を根拠として,これに従った契約の締結を迫ることは想定されていない上,この基準は,「他現場からの流用を原則とする。それが不可能な場合で近くに土取場がない場合」に「技術管理課の単価で積算してもよい」ことを示しているに過ぎないのであって,技術管理課の単価で積算することを義務づけているわけではない。したがって,そのような事態が生じた場合でも,必ずしも統一基本単価での積算がなされるとはいえない。むしろ,本件当時のA市の技術管理課長であった被告人 単価で積算することを義務づけているわけではない。したがって,そのような事態が生じた場合でも,必ずしも統一基本単価での積算がなされるとはいえない。むしろ,本件当時のA市の技術管理課長であった被告人の捜査段階の供述を含め,同市関係者の供述によると,本件の事実関係の下では,本件変更契約を締結しなかったと認定できる。 そうすると,A市が,本件変更契約の締結前に,H1商店の裏山から真砂土を代価無償で入手できると知っていたとしても,統一基本単価により積算するほかなく,本件変更契約と同一の金額で契約が締結されていた筈であるとはい-- えない。弁護人の上記主張は,前提を欠いている。 弁護人は,要旨以下のとおり主張する弁論要旨2 5。すなわち,建設業( )(( ))法19条の3は,注文者が,自己の取引上の地位を不当に利用して,その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない旨定めているところ,「通常必要と認められる原価」とは,公共工事の場合,適正な積算基準によって適正に算定された価格ということになる。したがって,発注者が積算するに際して,積算基準に定められた単価を値引きして算定した場合,適正な積算とはいえない。そして,このことは,通達によりA市に通知されている。これを本件に即して述べれば,本件変更契約の真砂土購入の積算は官積算で行われ,官積算では統一基本単価を用いるから,真砂土は1立方メートル当たり1680円で絶対に積算されなければならないということになる。もし,これをB建設の原価である土代金零円で積算するのだとすれば,上記通達および建設業法19条の3違反になってしまう,というのである。 しかし,同法条は「通常必要と認められる原価に満たない金額」を請負代金の額 B建設の原価である土代金零円で積算するのだとすれば,上記通達および建設業法19条の3違反になってしまう,というのである。 しかし,同法条は「通常必要と認められる原価に満たない金額」を請負代金の額とする請負契約すなわち原価割れの金額を請負代金額とするような請負契約を締結してはならない旨定めているものであるところ,本件の場合,統一基本単価を用いないで積算された金額が,直ちに「通常必要と認められる原価に満たない金額」となるものではないから,上記通達および建設業法19条の3違反になる旨の弁護人の上記主張も失当である。 弁護人は,「特別の定め」の指定をするには,「技術上,安全上の必要性( )等の合理的な理由」が必要である旨主張する答弁書第2の42 。 (( ))しかし,本件変更契約のように,契約当事者間で契約の変更協議がなされ,覆土として使用する真砂土を製砂業者から購入することについて意思の合致があり,それが変更契約の内容となっている場合には,自主施工の原則の例外として,その意思が合致した内容を設計図書の一部である本件設計書に記載して,-- これを「特別の定め」とすることに問題があるとは考えられない。 なお,弁護人は,A市発注の公共工事であっても,積算基準や積算についての考え方は,S1省が作成したそれに完全に準拠しているものであり,本件契約約款は,公共工事標準請負契約約款以下「標準契約約款」というと全く同()じものであるから,S1省が標準契約約款に関連して示す解釈論に,A市も必ず一致させることで解決が図られるとした上,当審で取り調べたS1省大臣官房C3課E3室長作成の「平成20年8月29日付け,事件番号平成20年ワ第235号の調査嘱託書につきまして」で始まる書面および「平成20年()9月4日付け回答致しまし」で始まる書面 S1省大臣官房C3課E3室長作成の「平成20年8月29日付け,事件番号平成20年ワ第235号の調査嘱託書につきまして」で始まる書面および「平成20年()9月4日付け回答致しまし」で始まる書面以下,合わせて「S1省回答3」(というを根拠に,設計書明細表の工種欄に「真砂土購入」,数量欄に「31)50㎥」と記載があるのみで,これ以外の他の設計図書に何ら明示がない場合(( )には,「特別の定めがある場合」には当たらない旨主張している弁論要旨22ないし4。 )しかし,S1省回答3は,それ自体からも明らかなように,標準契約約款に基づく契約図書についての一般論としての解釈に言及しているだけであって,個別契約である本件変更契約の解釈について回答するものではない。そして,本件変更契約については,上記のとおり,契約図書の解釈を待つまでもなく,契約当事者間に「特別の定め」があることが認定できるのであるから,弁護人の上記主張を受け入れることはできない。 弁護人は,要旨以下のとおり主張する弁論要旨第2。すなわち,本件変更( )()契約で合意された「真砂土購入」「購入土」の意味について,本件工事に関与したA市関係者らおよびB建設側の担当者であるS,D1のいずれも「製砂業者から土材料に対価を支払って購入した真砂土を使用することであり,製砂業者から購入した真砂土を使用することが契約の内容になっている」と理解していたと仮定しても,SおよびD1は,B建設という会社を代表する者ではなく,会社としてのB建設の意思は,S1省回答1に示された公共工事の社会一般の-- 客観的意味である「請負者の責任において調達してくる土」と理解していたし,少なくとも製砂業者から購入してくる土であると明らかに考えていたとは認められない弁論要旨7頁。したがって,「真 -- 客観的意味である「請負者の責任において調達してくる土」と理解していたし,少なくとも製砂業者から購入してくる土であると明らかに考えていたとは認められない弁論要旨7頁。したがって,「真砂土購入」「購入土」という表示()の契約当事者間における共通の主観的意味を確定できないから,その契約の解釈に当たっては,その表示が,当該事情のもとで,慣習,取引慣行,条理に従って判断した場合に,当該社会・一般社会によって,どのように理解されるかを標準とすべきところ,その理解は,S1省回答1に従うほかない,というのである。 たしかに,B建設において,発注者であるA市と契約する権限を有するのはB建設A支店長であるV1の警察官調書甲39。 ()〔〕しかし,B建設の職務権限規程その写しはSの警察官調書甲68 に添付に()〔〕よると,作業所長であるSは,設計変更工事,追加工事,別途工事について,注文者・設計者および監督者と折衝する職務および権限を有し,本件変更契約に基づいてなされる予定の本件工事について,A市と折衝するという重要な役割を担う者であったから,Sにおける「真砂土購入」「購入土」の意味の理解と,本件変更契約の契約担当者である上記支店長のそれとが異なっていたとは,通常考え難い。むしろ,Sの意思や考えは,上記支店長のそれと同じであるとみるのが相当である。そうすると,民法の代理に関する規定を持ち出すまでもなく,会社としてのB建設の意思は,「真砂土購入」「購入土」の意味について,Sと同じ認識であったことは明らかである。しかも,上記65 のとおり,( )S1省回答1は,本件変更契約締結当時には存在していなかったのである。会社としてのB建設が,「真砂土購入」「購入土」の意味について,「請負者の責任において調達してくる土」と理解して とおり,( )S1省回答1は,本件変更契約締結当時には存在していなかったのである。会社としてのB建設が,「真砂土購入」「購入土」の意味について,「請負者の責任において調達してくる土」と理解していた,あるいは少なくとも製砂業者から購入してくる土であると明らかに考えていたとは認められない旨の主張は,採用できない。 弁護人は,本件の実質は民事上の判断によって決着の付く一種の民事訴訟( )-- であるから,契約当事者たるA市の事実認定ないし判断が優先するところ,本件についてのA市から見た事実とは,A市企画総務局人事部人事課作成にか()かる「不祥事再発防止策の策定等について」と題する書面の中でなされている事実認定に尽きると主張する弁論要旨第3の2。なお,上記書面は,答弁書(第1の4でも引用されている。 )しかし,A市は,その市長名義で作成された平成16年1月9日付け被害届を警察に提出し,本件詐欺被害を受けた旨届け出ているところ,この被害届は撤回されたりしていないのであるから,A市が,詐欺被害にあったとしていることは明らかである。また,仮に,A市の事実認定なるものが存在するとして,弁護人の主張を最大限尊重し斟酌しても,A市の事実認定なるものが,本件訴訟において,裁判所の行う事実認定に優先するなどということが,あり得る筈もないことは論を待たない。上記主張は,その点において既に前提を欠き失当である。 なお,上記「不祥事再発防止策の策定等について」は,平成17年11月,A市が,本件を含めた同市における不祥事の再発防止を図るため,それら不祥事について調査・分析を行うとともに,職員アンケートを実施した結果を取りまとめたものである。その記載中には,本件に関する事実経過等についても記載されている。 しかし,それらの中には,「工事担当者 祥事について調査・分析を行うとともに,職員アンケートを実施した結果を取りまとめたものである。その記載中には,本件に関する事実経過等についても記載されている。 しかし,それらの中には,「工事担当者からの聞き取りによれば」あるいは「関係職員からの聞き取りによれば」という前提で記載されたものも多く,それらは,主にA市職員らの言い分に基づいて記載されているに過ぎないものと考えられるのであって,その客観的正確性には,相当の疑問がある。 弁護人は,判例を引用して,以下のとおり主張する弁論要旨第4の2,弁( )(論要旨2 1。すなわち,最高裁平成10年あ第806号平成13年7月1( ))()9日第一小法廷判決・刑集55巻5号371頁は,請負契約の解釈として,発注者が請負代金の減額請求をすることができない場合には,たとえ欺罔手段が-- 用いられたとしても,工事完成払金の取得につき,詐欺罪は成立しないとしている。これを本件に当てはめていえば,A市は,B建設に債務不履行があったため,同市に財産的損害が生じて代金減額請求ができたのに,欺罔的手段が用いられて全額支払ってしまったというときだけ,詐欺罪が成立するということである。そして,本件では,債務不履行がなく,A市には財産的損害もないから,代金減額請求は成り立たない,というのである。 そこで検討するに,上記最高裁判決は,くい打ち工事を請け負った業者が,同工事に伴って排出される汚泥の量を水増しして処理したように装い,内容虚偽の汚泥処理券を提出して,工事完成代金を詐取したという詐欺の公訴事実について,請負契約の目的物であるくい打ち工事は,瑕疵なく完成したものと認められると判示する一方,汚泥の場外搬出は,請負契約上の義務に当たるが,場外搬出した汚泥の処分を関係法令に従って行ったか否かという いて,請負契約の目的物であるくい打ち工事は,瑕疵なく完成したものと認められると判示する一方,汚泥の場外搬出は,請負契約上の義務に当たるが,場外搬出した汚泥の処分を関係法令に従って行ったか否かということは,業者の公法上の義務に係るものであって,請負代金の支払請求権と対価関係に立つものではなく,これを理由に請負代金の減額請求権が発生するとはいえないとして,内容虚偽の汚泥処理券を提出して完成検査に不正に合格し,工事完成払金を騙取したという控訴審の判断を是認できない旨判示している。 しかし,既に説示したとおり,本件変更契約においては,覆土として使用する真砂土を製砂業者から購入することが契約内容となっており,製砂業者から購入した真砂土を覆土として使用することは,請負契約上の義務に当たるから,これを履行しない限り,本件変更契約の目的物である本件工事が完成したとはいえない。本件は,請負契約の目的物であるくい打ち工事は瑕疵なく完成したということができる上記最高裁判決とは事案を異にしている。また,上記最高裁判決の事例においては,内容虚偽の汚泥処理券が,請負者の公法上の義務に係るものであったのに対し,本件において完成検査の際に提出された内容虚偽の出荷証明書および納品書は,請負契約上の義務に係るものであるから,本件は,上記最高裁判決の事例と同一に論じ得ない。上記最高裁判決を前提とする-- 弁護人の主張は失当である。 弁護人は,最高裁昭和27年あ第5319号昭和31年8月30日第一小( )()法廷判決・裁判集刑事114号573頁を引用し,この判例を意識して判断するよう主張する答弁書第3の4。 ()そこで検討するに,上記最高裁判決は,請負人の代理人が,請負人に対しては,町の工事費予算額を知らせず,その予算額よりはるかに低額で請け負うことを 識して判断するよう主張する答弁書第3の4。 ()そこで検討するに,上記最高裁判決は,請負人の代理人が,請負人に対しては,町の工事費予算額を知らせず,その予算額よりはるかに低額で請け負うことを承諾させ,一方,町役場係員にはその事実を秘して,あたかも請負人は上記予算額で請け負うもののごとく申し向けて請負契約を締結した上,工事完了により,町には請負人が町との契約額を請求するように申し向け,自己にその代金を交付させることにより,当初請負人の承諾した代金との差額を領得したとしても,上記代理人は,町と請負人との間に有効に成立した請負契約に基づく当然の請負代金を受領したに止まり,上記代理人の所為が,町との関係において詐欺罪成立の要件たる騙取行為があったものとすることはできないとしたものである。 しかし,上記のとおり,本件変更契約においては,覆土として使用する真砂土を製砂業者から購入することが契約内容となっており,製砂業者から購入した真砂土を覆土として使用することは,請負契約上の義務に当たるから,これを履行しない限り,本件変更契約の目的物である本件工事が完成したとはいえないのに対し,上記最高裁判決の事案は,町との間で成立した請負契約の目的物である工事を完了していたのであるから,本件とは事案を異にするものであることが,明らかである。 以上のとおり,被告人については詐欺罪が成立するから,同罪の成立を否定して被告人を無罪とした原判決は,事実を誤認したものであり,これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由がある。 よって,刑事訴訟法397条1項,382条により原判決を破棄することとし,同法400条ただし書に従い当裁判所において更に判決する。 -- (罪となるべき事実)被告人は,A市都市計画局指導部技術管理課長であったものであるが, 382条により原判決を破棄することとし,同法400条ただし書に従い当裁判所において更に判決する。 -- (罪となるべき事実)被告人は,A市都市計画局指導部技術管理課長であったものであるが,B建設株式会社A支店が,A市と締結した平成12年3月22日付け建設工事請負契約請(負代金額1890万円に基づき行う「A市C区D町大字E地区仮置地内土砂撤去)その他工事その6」に関し,本件工事の発注者A市に対し,その資材として真砂()土を購入する旨欺いて請負代金を増額させるなど,上記請負契約を変更させた上,当該購入した真砂土を本件工事に使用した旨欺いて,その完成を確認させるなどして,A市から請負代金支払い名下に金員を交付させようと企て,O,Sらと順次共謀の上,同年5月上旬ころ,A市C区Fa丁目b番c号所在のC区役所において,同区役所市民部まちづくり推進課調整担当課長Gに対し,真実は,本件工事の資材として真砂土約3150立方メートルを無償で入手するにもかかわらず,その情を秘して,これを購入する旨虚偽の事実を申し向けるなどしてその旨誤信させ,A市をして,同月10日付けで上記請負契約の請負代金につき,真砂土購入名下に529万2000円を増額させること等を内容とする請負契約変更契約変更後の請負(代金額2866万0800円。うち756万円支払済みを同社と締結させた上,)同月31日,上記区役所において,同区役所建設部土木課長Hに対し,本件工事の完成を通知するとともに,内容虚偽の出荷証明書等を提出して,同社が真砂土約3150立方メートルをI有限会社から購入した旨欺き,そのころ,Hをして,本件工事の資材として有償で購入された真砂土が使用され,上記請負契約変更契約どおり本件工事が完成した旨誤信させてその完成を確認させ,よって,同年7月21日,請負代 入した旨欺き,そのころ,Hをして,本件工事の資材として有償で購入された真砂土が使用され,上記請負契約変更契約どおり本件工事が完成した旨誤信させてその完成を確認させ,よって,同年7月21日,請負代金残額支払名下に同区役所収入役Jをして,A市K区L町d丁目e番f号所在の株式会社A銀行本店に開設されたB建設株式会社A支店名義の当座預金口座に上記529万2000円を含む請負代金残額2110万0800円の振込みをさせ,もって人を欺いて財物を交付させたものである。 (証拠の標目)略(法令の適用)-- 被告人の判示所為は刑法60条,246条1項に該当するので,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予することとする。 (量刑の理由)本件は,A市都市計画局指導部技術管理課長であった被告人が,A市の公共工事について口利きをしていたブローカー,工事請負業者およびその従業員らと順次共謀の上,A市発注の公共工事について,市の担当職員に働きかけ,真砂土を購入することを理由とする請負代金増額変更契約をA市と工事請負業者との間に締結させた上,実際には無償で入手した真砂土を搬入して使用しながら,内容虚偽の真砂土の出荷証明書等を提出するなどして,A市から工事請負代金を詐取したという事案である。 本件は,被告人を含めたA市職員や,A市の公共工事についての影響力を有していたブローカーおよび工事業者らが一体となって,公共工事を食い物にした計画的な犯行であって,甚だ悪質である。被害額は約2110万円と多額であるところ,実質的な被害額は,真砂土購入名目により増額された請負代金529万2000円相当であると考えられるものの,本件犯行が,元々上記公共工事の二次下請業者に約1000万円 2110万円と多額であるところ,実質的な被害額は,真砂土購入名目により増額された請負代金529万2000円相当であると考えられるものの,本件犯行が,元々上記公共工事の二次下請業者に約1000万円の利得を与えることを目論んでなされた不正行為の一環であることにかんがみると,本件がA市の財政に与えた損害は大きいと認められる。 被告人は,かねてから,他のA市の幹部職員らとともに,上記ブローカーからの接待を繰り返し受けていたところ,同人から本件犯行を持ちかけられるや,もしそれに応じなければ,同人から接待を受けていた事実が公にされるのではないかという思いや,A市幹部職員と親密な関係にある同人の要求を首尾良くこなせば,自らの出世にもつながると考え,本件犯行に及んだものである。その動機は,利欲的かつ自己中心的であるというべきである。 加えて,被告人は,原審公判の途中から当審公判を通じて,本件犯行を否認していたものであって,反省の態度が認められない。 -- したがって,被告人の刑事責任は軽視できない。 しかしながら,被告人には本件犯行による直接的な利得はなかったこと,本件犯行には,他にも複数のA市職員が関与したことが認められる上,被告人が本件犯行に加担したのは,共犯者の1人であるブローカーからの働きかけを受けた同市助役から,請負代金を増額すべく取り計らうよう暗に言われたことも大きな原因となったものであって,同市幹部職員を始めとする同市職員らの間に,不正の温床があったことが窺われるところ,本件に関わったことが認められる複数の同市職員のうち,起訴されたのは被告人のみであることを思うと,一人被告人を責めるのは酷な面があること,被告人は,本件が広く報道されるとともに,本件により起訴休職となっている上,本判決の確定により失職することが予想されるなど,一定の社 人のみであることを思うと,一人被告人を責めるのは酷な面があること,被告人は,本件が広く報道されるとともに,本件により起訴休職となっている上,本判決の確定により失職することが予想されるなど,一定の社会的制裁を受けているといえること,被告人には前科前歴もなく,これまで,長く同市職員としてまじめに勤務してきたこと,妻子があることなどの事情も認められる。 そこで,主文のとおり刑を量定し,その刑の執行を猶予することとした。 よって,主文のとおり判決する。 平成20年12月22日広島高等裁判所第1部裁判長裁判官楢崎康英裁判官森脇淳一裁判官友重雅裕

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