1令和3年6月10日判決言渡令和2年(行ケ)第10093号 審決取消請求事件口頭弁論終結日 令和3年4月15日判 決 5原 告 X 原 告 暮らしの科学研究所株式会社 両名訴訟代理人弁護士 中 村 智 廣10三 原 研 自同訴訟代理人弁理士 小 泉 雅 裕 被 告 特許庁長官同指定代理人 磯 野 光 司15三 崎 仁森 竜 介小 島 寛 史主文1 原告らの請求を棄却する。 202 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由第1 請求特許庁が不服2019-15997号事件について令和2年6月22日にした審決を取り消す。 25第2 事案の概要21 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)⑴ 原告らは,平成27年2月25日,発明の名称を「生体情報収集椅子及びこれを用いた乗り物並びに生体情報診断システム」とする発明につき,特許出願(特願2015-35901。請求項の数13。以下「本願」という。)をした。 5原告らは,平成31年1月28日付けで拒絶理由通知(甲4。以下「本件拒絶理由通知」とい とする発明につき,特許出願(特願2015-35901。請求項の数13。以下「本願」という。)をした。 5原告らは,平成31年1月28日付けで拒絶理由通知(甲4。以下「本件拒絶理由通知」という。)を受けたため,その指定期間内の同年4月8日に,意見書(甲7)を提出するとともに,甲第3号証の2(以下,書証については単に「甲3の2」などと略記する。)により,特許請求の範囲の請求項1及び明細書について手続補正(以下「第1次補正」という。)をしたが,令10和元年8月21日付けで,拒絶査定(甲8)を受けた。 ⑵ 原告らは,令和元年11月27日,拒絶査定不服審判を請求するとともに,同日付けで,甲3の3により,特許請求の範囲全文について手続補正(以下「本件補正」という。)をした。 特許庁は,令和2年6月22日,上記審判請求(不服2019-1599157号事件)につき,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年7月14日,原告らに送達された。 ⑶ 原告らは,令和2年8月13日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 202 特許請求の範囲の記載本願における本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,本件補正後の発明を,請求項ごとに,「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)。 【請求項1】25「少なくとも座部及び背もたれ部を有する椅子本体と,3前記椅子本体に着座した対象者が誰であるかを認識する認識手段と,前記椅子本体の一部に組み込まれ,前記認識手段で前記対象者が認識された条件で,前記椅子本体に着座した前記対象者の生体情報を収集する収集器具と,を備え,前記収集器具は,前記対象者の生体情報として少なくとも生体 の一部に組み込まれ,前記認識手段で前記対象者が認識された条件で,前記椅子本体に着座した前記対象者の生体情報を収集する収集器具と,を備え,前記収集器具は,前記対象者の生体情報として少なくとも生体ガスを収集す5るものを含むことを特徴とする生体情報収集椅子。」3 本件審決の理由の要旨等⑴ 本件審決の理由の要旨は,本願発明1は,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-147924号公報(甲1。以下「引用文献1」といい,そこに記載された発明を「引10用発明」という。)及び特開2009-202656号公報(甲2。以下「引用文献3」という。)に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。 15⑵ 本件審決が認定した引用発明,本願発明1と引用発明の一致点及び相違点,並びに引用文献3記載の技術は,以下のとおりである。 ア 引用発明「シートクッション2,シートバック3,及びヘッドレスト4とを有する車両用シート1と,20前記車両用シート1に設けられた光検出器11と,前記光検出器11の出力信号から着座者の脈波を検出する脈波検出部52と,脈波検出部52により検出された脈波について,脈波パターンの分析を行う脈波パターン分析部55と,25前記脈波パターンに基づいて前記着座者の個人認証を行う認証部564と,前記脈波パターンに基づいて前記着座者の健康状態を推定する健康状態推定部57と前記脈波パターンに基づいて前記着座者の生理状態を推定する生理状態推 認証を行う認証部564と,前記脈波パターンに基づいて前記着座者の健康状態を推定する健康状態推定部57と前記脈波パターンに基づいて前記着座者の生理状態を推定する生理状態推定部58とを備え,5前記個人認証の結果,車両のエンジンの始動装置などの関連機器の作動を可能とする,生体情報検出装置。」イ 本願発明1と引用発明の一致点及び相違点(ア) 一致点10「少なくとも座部及び背もたれ部を有する椅子本体と,前記椅子本体に着座した対象者が誰であるかを認識する認識手段と,を備えた生体情報収集椅子。」(イ) 相違点本願発明1は「椅子本体の一部に組み込まれ,前記認識手段で前記対15象者が認識された条件で,前記椅子本体に着座した前記対象者の生体情報を収集する収集器具」であって,「前記対象者の生体情報として少なくとも生体ガスを収集するものを含む」「収集器具」を備えるのに対し,引用発明はそのような収集器具を有さない点。 ウ 引用文献3記載の技術20「飲酒運転防止装置を装備した車両であって,車室内の運転席のヘッドレスト近傍にアルコール検出センサを配置し,該アルコール検出センサは乗員からの発汗や呼気から未分解のアルコールが体外へ蒸散することで放出されたアルコール蒸気を検出し,車両のドアが閉じてから所定時間経過までの検出期間におけるアルコール検出値に基づき乗員の飲酒の有無を25判定する技術。」5⑶ 相違点の容易想到性についての本件審決の判断は,以下のとおりである。 ア 引用文献3に記載のアルコール検出センサは,運転席のヘッドレスト近傍に配置されているから,本願発明1の「椅子本体 5⑶ 相違点の容易想到性についての本件審決の判断は,以下のとおりである。 ア 引用文献3に記載のアルコール検出センサは,運転席のヘッドレスト近傍に配置されているから,本願発明1の「椅子本体の一部に組み込まれ」,「対象者の生体情報として少なくとも生体ガスを収集する」「収集器具」に相当する。 5イ 引用発明は,車両の運転者の生理状態や健康状態を推定し安全性の向上を図るものである。また,引用発明と引用文献3に記載された技術とは,いずれも車両の運転者の状態を推定するものである点で共通する。 そうすると,引用発明において,引用文献3に記載の,運転席のヘッドレスト近傍にアルコール検出センサを配置し,アルコール検出センサによ10るアルコール検出値に基づき飲酒の有無を判定する技術を採用することは,当業者が容易に想到し得ることである。 着座者の脈波に基づいて前記着座者の個人認証を行い,個人認証の結果,車両のエンジンの始動装置等の関連機器の作動を可能とする引用発明において,車両のドアが閉じてからのアルコール検出値に基づき乗員の飲酒15の有無を判定する引用文献3に記載の技術を適用するに当たり,個人認証及びアルコール検出は共に運転の開始前に行われるものとなるところ,どちらを先に行っても個人認証及びアルコール検出ともそれらの機能を発揮するものであるから,どちらを先に行うかは当業者が適宜決定し得る事項にすぎず,個人認証を先に行うようにすることは当業者が適宜なし得る20設計事項にすぎない。 ウ 本願発明1の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 第3 当事者の主張251 取消事由1(進歩性判断の誤り) 明及び引用文献3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 第3 当事者の主張251 取消事由1(進歩性判断の誤り)6⑴ 原告らの主張ア 引用文献3に係る技術が本願発明1と引用発明の相違点に係る構成を開示しているとはいえないことについて(ア) 引用文献3に記載のアルコール検出センサは「生体ガス」を収集し,診断するものではないこと5a 「生体ガス」の意義については,インターネット上の辞書(例えばWikipedia参照)をみると,生命活動に伴い産出するガスの総称であり,狭義ではヒトの体内や体表面で産出されるガスを指し,呼気,腸内ガス,皮膚ガスなどとして体外に放散されるものとされている。 10このように,本願発明1の「生体ガス」は,ヒトの体内で産出されるガスであって,例えば呼気を通じて体外に放散されるものであり,「呼気」そのものではない。本件補正後の明細書(甲3の1ないし3。 以下,図面を含めて「本願明細書等」という。)の【0025】では,「エタノール」と「アセトアルデヒド」の両者から飲酒時の生体ガス15変化を利用する診断例が開示されており,ヒトの体内で産出される「アルコール(エタノール)」や「アセトアルデヒド」が本願発明1の「生体ガス」に当たると解される。本願明細書等の【0020】ないし【0022】の記載は,呼気中に多くの生体ガス成分が含まれていることや,生体ガスが呼気という形で放散されることを記載したものであり,20「生体ガス」が「呼気」であることを意味するものではない。 一方,引用文献3には「ここで,車室2に乗り込んだ乗員が飲酒している場合には,その乗員からの発汗や呼気から未分解のアルコールが体外に蒸散する代謝現象によって 気」であることを意味するものではない。 一方,引用文献3には「ここで,車室2に乗り込んだ乗員が飲酒している場合には,その乗員からの発汗や呼気から未分解のアルコールが体外に蒸散する代謝現象によって,アルコールが所定時間継続して車室2内に放出される。」(【0028】)との記載があるが,「乗25員の発汗や呼気からの未分解のアルコール」はヒトの体内や体表面で7産出されたものとはいえず,体内で処理されないまま体外に排出されるものであるから,本願発明1にいう「生体ガス」には該当しない。 b 本願で開示された診断例は,診断対象者である運転者が椅子本体30に着座した状態で発せられる生体ガス成分(【0025】の例では「エタノール」と「アセトアルデヒド」)を収集し,これを診断処理5することで,診断対象者である運転者の飲酒程度あるいは運動能力を予測する。 これに対し,引用文献3の飲酒運転判定装置は,飲酒した乗員が乗車したことに伴う車室内のアルコール(未分解のアルコール)濃度分布の変化から,飲酒運転につながる事態か否かを判定することを企図10したものであって,診断対象者の生体ガスを収集し,収集した生体ガスに基づいて診断対象者を直接的に診断するものとはいえない。 (イ) 引用文献3に記載のアルコール検出センサは「対象者の生体情報として」生体ガスを収集する収集器具ではないこと引用文献3の記載によれば,引用文献3に記載された技術において,15運転者の飲酒運転判定には,少なくとも運転席3の周囲に位置するアルコール検出センサ6,及び他の位置に配置するアルコール検出センサ7ないし9のいずれか一つの,計2箇所のアルコール検出センサを要する(【0008】ないし【0010】)ところ,引用文献3のアルコール検出センサ6は,運転 ,及び他の位置に配置するアルコール検出センサ7ないし9のいずれか一つの,計2箇所のアルコール検出センサを要する(【0008】ないし【0010】)ところ,引用文献3のアルコール検出センサ6は,運転席3の周囲環境(車室内)におけるアルコール濃20度を検出するものであり,運転者から放出されたアルコール濃度を検出するものではない(【0036】及び【0037】)から,引用文献3における「運転席3の周囲に位置するアルコール検出センサ6」は,椅子本体の一部に組み込まれたものではあるものの,「対象者の生体情報として」生体ガスを収集する収集器具には相当しない。 25(ウ) 以上によれば,引用文献3が本願発明1と引用発明の相違点に係る8構成を開示しているとはいえない。 イ 容易想到性の判断に誤りがあることについて(ア) 本件審決では,引用発明に引用文献3に記載の技術を適用するに当たり,個人認証及びアルコール検出のどちらを先に行うかは当業者が適宜決定し得る事項にすぎないとしている。 5(イ) しかしながら,本願発明1は,引用文献3の飲酒判定技術(車室内でのアルコール濃度分布に依存する技術)とは異なり,対象者に負担をかけることなく生体情報として生体ガスを収集し,各種診断に供することを課題とするものであり(本願明細書等【0005】),診断対象者の生体情報としての生体ガスを収集するに当たって,まず,診断対象者10と生体ガスとを関連付ける必要があり,診断対象者が誰かという認証を先に行うことが必須であることは明らかである。 一方,引用文献1及び引用文献3には,このような課題について記載がないことはもちろん,その示唆もない。 (ウ) 被告は,本願明細書等の【0013】を引用し,本願発明1におけ1 一方,引用文献1及び引用文献3には,このような課題について記載がないことはもちろん,その示唆もない。 (ウ) 被告は,本願明細書等の【0013】を引用し,本願発明1におけ15る「各種診断」は飲酒運転等の判定も含むから,原告らの主張は本願明細書等の記載に基づかないと主張するが,同記載は,本願発明1の効果として説明したものではなく,あくまで,実施の形態の一態様(自動車の運転席に生体情報収集椅子を搭載した態様)として乗り物の運転の安全対策に利用できることを開示したにすぎないから,失当である。 20(エ) よって,当業者は,本願発明1と引用発明の相違点に係る構成を容易に想到することができたものではない。 ウ 顕著な作用効果があることについて本願明細書等によれば,本願発明1は,「対象者に負担をかけることなく,椅子に座るだけで生体情報として少なくとも生体ガスを収集し,各種25診断に供することができる。」(【0009】)という効果を奏し,これ9は,引用発明の「車両用シートに発光部,受光部及び仕切り部が設けられていることにより,車両の乗員に装備装着の負担をかけないようにすることができ,また,発光部による照射光量を低くすることができるとともに,受光部の出力信号のSN比を高くすることができ,よって,低照射光量で乗員の脈波を正確に検出することができる。」(甲1【0026】)とい5う効果,引用文献3に記載された技術の「車室内の空気流動を積極的に利用して,運転者の飲酒状態と,助手席などの他の席の乗員との飲酒状態とを判別し易くなる。これによって,乗員の飲酒の有無の判定精度が向上する。」(甲3【0006】)という効果に比べ,特別に顕著なものである。 エ 小括10以上のとおり,本 状態とを判別し易くなる。これによって,乗員の飲酒の有無の判定精度が向上する。」(甲3【0006】)という効果に比べ,特別に顕著なものである。 エ 小括10以上のとおり,本件審決の本願発明1の進歩性の判断には誤りがある。 ⑵ 被告の主張ア 引用文献3が本願発明1と引用発明の相違点に係る構成を開示していることについて(ア)a 本願明細書等の「生体ガス(呼気,皮膚ガス,放屁・・・)」(【015020】),「呼気中の生体ガス成分の分布」,「生体ガス(例えば呼気)」(ともに【0022】)との記載によれば,呼気,皮膚ガス,放屁はいずれも「生体ガス」であり,そこに含まれる個々の成分については,別途「生体ガス成分」と書き分けられていることが明らかであるから,本願発明1の「生体ガス」は,ヒトの体内で産出されるガスであって,20例えば呼気を通じて体外に放散されるものであり,「呼気」そのものではないとの原告らの主張は,本願明細書等の記載にその根拠を欠くものである。 また,汗や呼気に含まれるアルコール(エタノール)は,飲用したアルコール(エタノール)が一旦体内に吸収された後で肝臓に入り,25血中を経て肺や汗腺から体外に放出されたものであり(乙1,2),10「産出」の字義は「(物を)生産すること。産物が出ること。」であり,石油のように単に存在するものが出てくることも含むから(乙3),仮に,「生体ガス」の意義につき,「生命活動に伴い産出するガスの総称であり,狭義ではヒトの体内や体表面で産出されるガスを指し,呼気,腸内ガス,皮膚ガスなどとして体外に放散されるもの」のうち狭5義のものであるとの原告らの主張によったとしても,血中から肺を経て呼気中に排出されるアルコール(エタノール)が含まれること し,呼気,腸内ガス,皮膚ガスなどとして体外に放散されるもの」のうち狭5義のものであるとの原告らの主張によったとしても,血中から肺を経て呼気中に排出されるアルコール(エタノール)が含まれることに変わりはない。 b 原告らは,本願発明1は,診断対象者の生体ガスを収集し,収集した生体ガス(エタノールとアセトアルデヒド)に基づいて診断対象者10を直接的に診断するものであると主張するが,エタノールとアセトアルデヒドを収集して診断処理することで,診断対象者である運転者の飲酒程度あるいは運動能力を予測するという構成は,本願の請求項1には特定されていない。 (イ) 本願発明1も,運転者から放出されたアルコールのみを選択的に検15出するための構成を特定せず,収集器具の取り付け位置としては「椅子本体の一部に組み込まれ」ることを特定するのみであり,その点で引用文献3のアルコール検出センサ6の取り付け位置と一致する。よって,運転者以外の搭乗者によるアルコール,すなわち生体ガスを検出し得る構成である点で,本願発明1の「収集器具」は,引用文献3の「アル20コール検出センサ6」と変わりはない。 イ 容易想到性の判断に誤りがないことについて(ア) 本願発明1には「前記認識手段で前記対象者が認識された条件で,前記椅子本体に着座した前記対象者の生体情報を収集する」という記載があるところ,「・・・条件で・・・収集する」とはどのようなこと25を指すのかについて,本願明細書等には説明がない。当該記載は,文言11上は順番を示すものという程度の意味と解される上に,この順序でなければならない理由(すなわち,特定の順番とすることの目的及び作用効果)が説明されていないことから,設計事項と解される。 (イ) 本願明細書等には いう程度の意味と解される上に,この順序でなければならない理由(すなわち,特定の順番とすることの目的及び作用効果)が説明されていないことから,設計事項と解される。 (イ) 本願明細書等には,「運転者の生体情報を監視対象とすることで,乗り物5の運転の安全対策(飲酒運転,居眠り運転,てんかん患者,違5法ドラッグ使用者による運転等の対策)に利用することができる。」(【0013】)との記載があり,本願発明1は,運転者の飲酒判定に利用することができるという効果も含んでいる。 運転者の飲酒判定を行うに当たり,運転の開始前であれば,運転者の個人認証及び飲酒判定はどちらを先に行ってもよいのであり,診断対10象者が誰かという認証を先に行うことが必須であるとの原告らの主張は,本願発明1の目的について限定的な解釈を前提とするものであり,失当である。 (ウ) 仮に,本願発明1において生体情報収集を行う目的が「各種診断に供すること」にあり,そのために生体情報と運転者の個人認証情報とを15関連付けることが予定されていると解されるとしても,当該関連付けの時点で生体情報と個人認証情報とがそろえば足りるのであり,それらの取得順がその成否を左右するとはいえない。 また,運転者の個人認証と飲酒判定を行う装置において個人認証の後に飲酒判定を行うことは,本願出願時に周知のことである(乙4,5)20から,引用発明に対し引用文献3に記載された技術事項を適用した発明において,個人認証を先に行い,その後にアルコール検出を行うようにすることは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。 ウ 本願発明1に顕著な作用効果が認められないことについて(ア) 本願明細書等の【0013】及び【0026】によれば,原告らが することは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。 ウ 本願発明1に顕著な作用効果が認められないことについて(ア) 本願明細書等の【0013】及び【0026】によれば,原告らが25主張する「対象者に負担をかけることなく,椅子に座るだけで生体情報12として少なくとも生体ガスを収集し,各種診断に供することができる。」という技術的効果における「各種診断」には,飲酒,てんかん患者,違法ドラッグの使用の各検出や監視といった幅広い技術事項が含まれる。 (イ) 一方,引用文献1の【0014】,【0015】及び【0053】によれば,引用発明も,着座するだけで着座者の脈波を正確に検出して着5座者の健康状態と生理状態とを推定することができるという効果を奏するものであり,ここで,「着座者の健康状態と生理状態とを推定すること」と本願発明1の「各種診断に供することができる」効果とは,共通の範疇に属するものである。 また,引用文献3の【0020】及び【0022】によれば,引用文10献3に記載の技術も,運転者がドアを開けて運転席に着座することで,アルコール濃度を検出し,運転者の飲酒状態(すなわち,生理状態)を判定することができるという効果を有するものであるから,引用文献3に記載の技術の効果も,本願発明1の「各種診断に供することができる」ことの効果と共通するものである。 15したがって,本願発明1の効果は,引用発明と引用文献3に記載の技術の効果と共通するものであり,格別顕著なものとはいえない。 エ 小括以上のとおり,本件審決の本願発明1の進歩性の判断には誤りはない。 202 取消事由2(手続違背・特許法50条違反)⑴ 原告らの主張請求項1に関し,本件拒 エ 小括以上のとおり,本件審決の本願発明1の進歩性の判断には誤りはない。 202 取消事由2(手続違背・特許法50条違反)⑴ 原告らの主張請求項1に関し,本件拒絶理由通知時には,引用文献1を引用して進歩性が否定されるとしていたのに対し,拒絶査定時には,引用文献1及び同3を引用して進歩性を否定すると変更されている。引用文献3は本件拒絶理由通25知時において,請求項6ないし8について引用されているが,請求項1につ13いては引用されていない。 すなわち,請求項1に関して,引用文献1及び同3を引用して進歩性を否定する拒絶理由は,拒絶理由通知時には通知されておらず,拒絶査定そのものが特許法50条に違反し違法である。 そして,審判合議体も,引用文献1及び同3を引用して進歩性を否定する5ことに関し,拒絶理由通知を介さずに直接拒絶審決しており,審査官による前記手続上の不備を是正することなく,同じ手続上の不備を行ったものである。 ⑵ 被告の主張ア 原告らの主張が時機に後れたものであることについて10原告らの「拒絶査定そのものが違法である」という主張は,訴状の請求の原因に含まれず,第1回原告準備書面記載の各取消事由にも含まれておらず,令和3年2月10日付けの第2回原告準備書面によって初めて持ち出された新たな主張であって,被告にとって全く新たな検討に基づく反論の準備を要した点で,時機に後れた主張である。 15イ 拒絶査定が適法にされたものであることについて本件拒絶理由通知では,請求項6に対して引用文献1及び同3に記載された発明に基づいて,進歩性欠如についての拒絶理由が通知されている。 同時点(すなわち本件出願時)の特許請求の範囲(甲3の1)における請求項6,並びに請 は,請求項6に対して引用文献1及び同3に記載された発明に基づいて,進歩性欠如についての拒絶理由が通知されている。 同時点(すなわち本件出願時)の特許請求の範囲(甲3の1)における請求項6,並びに請求項6が引用する請求項1及び3の記載は以下のとおり20である。 「【請求項1】少なくとも座部及び背もたれ部を有する椅子本体と,前記椅子本体に着座した対象者を認識する認識手段と,前記椅子本体の一部に組み込まれ,前記認識手段で対象者が認識され25た条件で,前記椅子本体に着座した対象者の生体情報を収集する収集器14具と,を備えたことを特徴とする生体情報収集椅子。 【請求項3】室内空間に設置される座席の少なくとも一部に請求項1に記載の生体情報収集椅子を用いたことを特徴とする乗り物。 【請求項6】5請求項3に記載の乗り物のうち,室内空間が閉空間になり得る態様において,前記収集器具は対象者の生体ガスを捕集するガス捕集器具であることを特徴とする乗り物。」その後,本件拒絶理由通知に対する第1次補正により補正された請求項101(以下「拒絶査定時の請求項1」という。)に対して,引用文献1及び同3に記載された発明に基づく進歩性の欠如を拒絶理由とする拒絶査定がされているが,拒絶査定時の請求項1の記載は以下のとおりである(下線は本件拒絶理由通知時の請求項1からの補正箇所を示す。)。 「【請求項1】15少なくとも座部及び背もたれ部を有する椅子本体と,前記椅子本体に着座した対象者が誰であるかを認識する認識手段と,前記椅子本体の一部に組み込まれ,前記認識手段で対象者が認識された条件で,前記椅子本体に着座した対象者の生体情報として少なくとも生体ガスを収集する収集器具と,を備えたことを特徴とする生体情報収20集 子本体の一部に組み込まれ,前記認識手段で対象者が認識された条件で,前記椅子本体に着座した対象者の生体情報として少なくとも生体ガスを収集する収集器具と,を備えたことを特徴とする生体情報収20集椅子。」上記の補正箇所のうち,対象者の「生体情報」が「生体ガス」であるとする補正は,補正前の(すなわち本件拒絶理由通知時の)請求項6の「収集器具は対象者の生体ガスを捕集するガス捕集器具である」という発明特定事項を加えたものである。 25したがって,拒絶査定時に,請求項1に対して引用文献1及び同3に基15づく進歩性欠如を拒絶理由としたのは,本件拒絶理由通知時の請求項6に係る発明(既に本件拒絶理由通知時に,引用文献1及び同3に記載された発明に基づく進歩性欠如についての拒絶理由を通知していたもの)の事項が,第1次補正により請求項1に加入されたことによるものである。 また,本件拒絶理由通知に対する応答として原告らが手続補正書と同時5に提出した意見書(甲7)では,拒絶査定時の請求項1について,引用文献3の「アルコール検出センサ6~9」は,請求項1の「収集器具41」の範疇には含まれず,引用文献1ないし同4(特開2014-028552公報)に記載の発明を組み合わせたとしても,本件発明1には想到し得ない旨主張している。そうすると,原告らには,拒絶査定時の請求項1に10ついて,引用文献1及び同3に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたと判断されることについて,反論の機会が実質的に与えられていたといえる。 さらに,審判手続においても,原告らには審判請求書において意見を述15べる機会があり,併せて補正する機会もあったので,原告らに実質的な不利益は生じておらず,拒絶査定 与えられていたといえる。 さらに,審判手続においても,原告らには審判請求書において意見を述15べる機会があり,併せて補正する機会もあったので,原告らに実質的な不利益は生じておらず,拒絶査定と同様に,請求項1について,引用文献1及び同3に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたと判断した本件審決の手続が適法になされていないとはいえない。 203 取消事由3(手続違背・審理不尽)⑴ 原告らの主張本件審決においては,本願発明1についての審理だけを行い,本願発明2ないし13の審理を全く行っていないが,全ての請求項について審判請求費用を払っている審判請求人にとっては大きな不利益である。 25特に,本願発明1及び2が「生体情報収集椅子」を保護対象としているの16に対し,本願発明3ないし10が「生体情報収集椅子を用いた乗り物」を保護対象とし,さらに,本願発明11ないし13が「生体情報診断システム」を保護対象としていることを踏まえると,「生体情報収集椅子」とは対象の異なる「乗り物」,「生体情報診断システム」について審理対象としないことには明らかに違法である。 5審判請求時には,本願発明1以外にも補正がされており(例えば本願発明5及び10),審判合議体がこれらについて審理すべきであるにもかかわらず,審理義務を果たしていないことは違法である。 ⑵ 被告の主張特許法は,一つの特許出願に対し,一つの行政処分としての特許査定又は10特許審決がされ,これに基づいて一つの特許が付与され,一つの特許権が発生するという基本構造を前提としており,請求項ごとに個別に特許が付与されるものではない。このような構造に基づき,複数の請求項に係る特許出願であっ これに基づいて一つの特許が付与され,一つの特許権が発生するという基本構造を前提としており,請求項ごとに個別に特許が付与されるものではない。このような構造に基づき,複数の請求項に係る特許出願であっても,特許出願の分割をしない限り,当該特許出願の全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定をするほかなく,一部の請求項に係る15特許出願について特許査定をし,他の請求項に係る特許出願について拒絶査定をするというような可分的な取扱いは予定されていない。 そうすると,本願についても,本件審決が判断の対象とした請求項1について特許を受けることができないと判断すれば,当該特許出願の全体を一体不可分のものとして拒絶すべきものとするほかないのであり,請求項2ない20し13についての審理の有無にかかわらず結論は変わらないし,当該審理及びそれに伴う判断をしなくても違法とはいえない。 第4 当裁判所の判断1 明細書の記載事項について⑴ 本願明細書等には,別紙1の記載がある。 25⑵ 前記⑴の記載事項によれば,本願明細書等には,次のような開示があるこ17とが認められる。 ア 「本発明」は,着座する対象者の生体情報を収集する生体情報収集椅子に係り,特に,健康疾病診断を行う上で有効な生体情報収集椅子及びこれを用いた乗り物並びに生体情報診断システムに関する(【0001】)。 イ 従来,予め決められた特定の目的に対するメディカルケアを主眼とした5技術は多く提供されているが,一般人が健康疾病診断を行うには,定期的に人間ドックを受ける等医療機関に足を運ぶのが通常であり,日常生活の中で生体情報を収集し,この収集した生体情報を利用することで健康疾病診断等の各種診断を事前に実施するという要望があった。 「本発明」は対象 を受ける等医療機関に足を運ぶのが通常であり,日常生活の中で生体情報を収集し,この収集した生体情報を利用することで健康疾病診断等の各種診断を事前に実施するという要望があった。 「本発明」は対象者に負担をかけることなく生体情報を収集し,各種診10断に供することが可能な新規な生体情報収集椅子及びこれを用いた乗り物並びに生体情報診断システムを提供することを課題とする(【0004】,【0005】)。 ウ 「本発明」は,前記課題を解決するため,少なくとも座部及び背もたれ部を有する椅子本体と,前記椅子本体に着座した対象者が誰であるかを認15識する認識手段と,前記椅子本体の一部に組み込まれ,前記認識手段で前記対象者が認識された条件で,前記椅子本体に着座した前記対象者の生体情報を収集する収集器具と,を備え,前記収集器具は,前記対象者の生体情報として少なくとも生体ガスを収集するものを含むことを特徴とする生体情報収集椅子という構成を採用した(【0006】)。 20エ 請求項1に係る発明によれば,対象者に負担をかけることなく,椅子に座るだけで生体情報として少なくとも生体ガスを収集し,各種診断に供することができる(【0009】)。 2 引用発明について⑴ 引用文献1の記載事項について25引用文献1(甲1)には,別紙2の記載がある。 18⑵ 前記⑴によれば,引用文献1には,本件審決が認定したとおりの引用発明が開示されているものと認められる(前記第2の3⑵ア参照)。 本願発明1と引用発明の一致点及び相違点(同イ参照)については当事者間に争いがない。 3 引用文献3に記載された技術について5⑴ 引用文献3の記載事項について引用文献3(甲2)には,別紙3の記載がある。 ⑵ 前記⑴によ ついては当事者間に争いがない。 3 引用文献3に記載された技術について5⑴ 引用文献3の記載事項について引用文献3(甲2)には,別紙3の記載がある。 ⑵ 前記⑴によれば,引用文献3には,本件審決が認定したとおりの技術が記載されているものと認められる(前記第2の3⑵ウ参照)。 4 取消事由1(進歩性判断の誤り)について10⑴ 引用文献3の開示事項についてア 本願明細書等の【0025】には,「・・・椅子本体30に着座した運転者Mからの生体ガスG(主として呼気)中の各ガス成分濃度を時系列で定期的に検出し,各ガス成分の時系列変化を収集する。」との記載があり,本願発明1において呼気は生体ガスに含まれるところ,引用文献3に記載15のアルコール検出センサが検出するアルコール蒸気は乗員からの発汗や呼気から未分解のアルコールが体外へ蒸散することで放出されたものであるから,本願発明1の「生体ガス」に相当し,また,同アルコール検出センサは運転席のヘッドレスト近傍に配置されているから,本願発明1の「椅子本体の一部に組み込まれ」,「対象者の生体情報として少なくとも20生体ガスを収集する」,「収集器具」に相当する。そうすると,引用文献3には,本願発明1と引用発明の相違点に係る構成が開示されているというべきである。 イ(ア) 原告らは,前記第3の1⑴ア(ア)aのとおり,本願発明1の「生体ガス」は,ヒトの体内で産出されるガスであって,例えば呼気を通じて25体外に放散されるものであり,「呼気」そのものではないと主張する。 19しかし,本願明細書等では,前記【0025】の記載に加えて,【0015】に「そして,生体ガス情報を収集する代表的態様としては,収集器具3(例えば3a)としてのガス捕集 張する。 19しかし,本願明細書等では,前記【0025】の記載に加えて,【0015】に「そして,生体ガス情報を収集する代表的態様としては,収集器具3(例えば3a)としてのガス捕集器具は,生体情報収集椅子10の背もたれ部1bの頭部近傍に設けられ,対象者Mの呼気を主として捕集対象とするものである。ガス捕集器具の設置場所は任意であるが,5生体情報収集椅子10の背もたれ部1bの頭部近傍(例えばヘッドレスト等)に設置することで,対象者Mの生体ガスGとしての呼気を主として捕集することが可能である。」,【0020】に「1) 生体ガス(呼気,皮膚ガス,放屁・・・),尿中気化物」,【0022】に「・・・この環境下において,運転者Mからの生体ガスG(主として呼気)が生10成されると,運転者Mからの生体ガスG(主として呼気)が収集器具41としての捕集フィルタに主として捕集される。」との記載があり,呼気を生体ガスの1つと扱っていることは明らかであり,また,【0022】の「このとき,呼気中の生体ガス成分の分布をみると,運転者Mの生体ガスGの分布に基づいて,運転者Mの健康疾病診断を予測すること15が可能である。」との記載からも,呼気等の生体ガスに含まれる個々の成分は「生体ガス成分」として書き分けられていることも見て取れる。 また,乗員からの発汗や呼気から未分解のアルコールが体外へ蒸散することで放出されるアルコール蒸気は,ヒトの体内や体表面で産出されるガスであるから,本願発明1の「生体ガス」に相当することは明らか20であり,本願明細書等にこのようなアルコール蒸気が本願発明1の「生体ガス」から除外されることを示す記載はない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (イ) 原告らは,前記第3の1 り,本願明細書等にこのようなアルコール蒸気が本願発明1の「生体ガス」から除外されることを示す記載はない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (イ) 原告らは,前記第3の1⑴ア(ア)bのとおり,引用文献3の飲酒運転判定装置は,飲酒した乗員が乗車したことに伴う車室内のアルコール25(未分解のアルコール)濃度分布の変化から,飲酒運転につながる事態20か否かを判定することを企図したものであり,診断対象者の生体ガスを収集し,収集した生体ガス(エタノールとアセトアルデヒド)に基づいて診断対象者を直接的に診断する本願発明1とは異なると主張する。 しかし,確かに,本願明細書等の【0025】には,飲酒運転に関する診断プログラムの実施過程を示すものとして,診断対象者である運転5者が椅子本体30に着座した状態で発せられる生体ガス成分中の各ガス成分濃度を検出,収集し,エタノール,アセトアルデヒドの濃度比により,飲酒程度を予測し,また,運動能力を予測する旨の記載があるが,これはあくまでも本件発明の実施例として記載されているのにすぎないというべきであり,特許請求の範囲を画する請求項1には,生体ガス10の収集に係る記載があるのみで,エタノール,アセトアルデヒドを収集して診断処理することで,診断対象者である運転者の飲酒程度あるいは運動能力を予測するなどといった構成は,そもそも記載されていない以上,たとえ請求項11には,「生体情報に基づいて前記対象者の生体情報を診断する診断手段」との記載があっても,これをもって請求項151の進歩性判断に影響を与えるものではない。また,引用文献3の飲酒運転判定装置において,飲酒運転につながる事態か否かを判定することも,運転者の診断処理に基づくものと評価することもできる。 し 歩性判断に影響を与えるものではない。また,引用文献3の飲酒運転判定装置において,飲酒運転につながる事態か否かを判定することも,運転者の診断処理に基づくものと評価することもできる。 したがって,原告らの上記主張はいずれにしても採用できない。 ウ 原告らは,前記第3の1⑴ア(イ)のとおり,引用文献3の「運転席3の20周囲に位置するアルコール検出センサ6」は,運転者から放出されたアルコール濃度を検出するものではなく,運転席の周囲におけるアルコール濃度を検出するものにすぎないから,「対象者の生体情報として少なくとも生体ガスを収集する収集器具」には相当しないと主張する。 しかし,本願発明1においては,運転者から放出されたアルコールのみ25を選択的に検出するための構成が特定されず,収集器具の取り付け位置と21しては,椅子本体の一部に組み込まれることを特定するのみであるから,引用文献3のような,室内空間におけるアルコール検出センサ6の設置場所におけるアルコール蒸気分布から,乗員の飲酒の有無を判定するものも排除されていない。本願明細書等でも,「生体情報収集椅子10の背もたれ部1bの頭部近傍(例えばヘッドレスト等)に設置することで,対象者5Mの生体ガスGとしての呼気を主として捕集することが可能である。」(【0015】)と記載され,「収集器具」を「ヘッドレスト近傍」に設置し,これにより「主として」対象者Mの生体ガスGとしての呼気を収集可能と記載されており,対象者M以外の呼気が副次的に混入し得る可能性は排除されていない。一方,引用文献3では,「そして,上記車室2内に,104つのアルコール検出センサ6~9を配置する。各アルコール検出センサ6~9は,例えば,各座席3,4,5の背もたれ上部における,例えばヘッドレスト近 引用文献3では,「そして,上記車室2内に,104つのアルコール検出センサ6~9を配置する。各アルコール検出センサ6~9は,例えば,各座席3,4,5の背もたれ上部における,例えばヘッドレスト近傍に配置する。」(【0008】)とされており,本願発明1における収集器具も,引用文献3記載の技術の「アルコール検出センサ」も,ヘッドレスト近傍に設置され,主として運転者の生体ガスを収集する15が,運転者以外の生体ガスが収集される可能性が否定できないという点で相違がない。 次に,引用文献3には,「また,4つのドア10~13が同時期に開閉した場合には,運転者近傍のアルコール検出センサ6の検出値の絶対値だけで判定するようにしても良い。」(【0021】)と記載され,「また,20絶対値で判定する場合には,開閉したドア10~13に近い座席の空気雰囲気はドア10~13の開閉で換気が行われるので,ドア近接のアルコール検出センサ6~9の検出値単独で,当該検出値のピーク値が所定以上の場合に無条件に飲酒者と判定しても良い。」(【0035】)と記載されているところからすると,運転者近傍のアルコール検出センサ6の検出値25の絶対値だけでの判定も想定されているのであって,「運転席3の周囲に22位置するアルコール検出センサ6」単独では飲酒判定することができないとはいえない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 ⑵ 相違点に係る容易想到性についてア 引用発明は,乗員の生理状態(緊張状態や覚醒低下状態)や健康状態を5推定し,乗員が覚醒低下状態にあると推定したときには,乗員に警告することで,安全性の向上化を図るものであり(【0004】),引用文献3に記載された技術は,体内にアルコールが残っている状態で自動車を運転すると,注意や判 下状態にあると推定したときには,乗員に警告することで,安全性の向上化を図るものであり(【0004】),引用文献3に記載された技術は,体内にアルコールが残っている状態で自動車を運転すると,注意や判断がおろそかになり,的確な操作ができなくなってしまうという問題に対応するものであって(【0002】),安全性の低下す10る状態を認識して安全性の向上を図るという技術分野が共通する。そして,引用発明と引用文献3に記載された技術は,安全性の低下する状態を認識するために生体情報を収集するという作用・機能においても共通する。 引用発明は,車両の乗員に装置装着の負担をかけないように生体情報を収集するものであるが(【0026】),引用文献3についても,アルコ15ール検出センサは,ドアの開閉や着座センサの出力を検知することによりアルコール濃度の検出を行って,運転手による操作を要さず運転手の状態を検出しているところからすると,引用文献3に記載の技術は,運転手に特段の操作の負担をかけることなく,椅子に座るだけで生体情報を収集するという課題を内在しているものということができるから,引用発明と引20用文献3に記載された技術については,課題の共通性も認められる。 以上によると,引用発明と引用文献3に記載された技術は,技術分野の関連性,課題の共通性,作用・機能の共通性が認められ,当業者において,両者を組み合わせる動機付けがあるものと認められる。そうすると,当業者は,引用発明に,引用文献3に記載された技術を組み合わせることによ25り,相違点に係る構成を容易に想到し得たものというべきである。 23イ 原告らは,前記第3の1⑴イのとおり,本願発明1は各種診断に供することを課題とするものであり(本願明細書等【0005】),診断対象者の生体情報と 容易に想到し得たものというべきである。 23イ 原告らは,前記第3の1⑴イのとおり,本願発明1は各種診断に供することを課題とするものであり(本願明細書等【0005】),診断対象者の生体情報としての生体ガスを収集するに当たって,まず,診断対象者と生体ガスとを関連付ける必要があり,診断対象者が誰かという認証を先に行うことが必須であることは明らかであるのに対し,引用文献1及び同35には,このような課題について記載がないことはもちろん,その示唆もないと主張する。 しかし,引用発明は,光検出器の出力信号に基づく着座者の個人認証を行い,個人認証の結果,車両のエンジンの始動装置等の関連機器の作動を可能とするものであり,引用文献3に記載された技術は,運転者のアルコ10ールを検出し,アルコール検出値が所定の値を超えたときに,車両が機能しなくなるようにする技術であるから,引用発明に引用文献3に記載の技術を適用する場合,光検出器の出力信号に基づく着座者の個人認証とアルコール検出センサによるアルコール検出は共に運転の開始前に行われるものとなるところ,着座者の個人認証及び運転者のアルコールの検出は,15一方が行われなければもう一方を行うことができないという性質のものではなく,どちらを先に行ってもそれぞれの機能を発揮するものである。 そうすると,個人認証及びアルコール検出のどちらを先に行うかは当業者が適宜決定し得る事項にすぎない。また,運転者の個人認証と飲酒判定を行う装置において個人認証の後に飲酒判定を行うことは,乙4(特開202009-020683号公報)の【0069】,【0071】,【0073】,【図8】及び乙5(特開2012-051413号公報)の【0038】,【0041】,【図4】にみられるとおり,本願出願時に周知である。 0683号公報)の【0069】,【0071】,【0073】,【図8】及び乙5(特開2012-051413号公報)の【0038】,【0041】,【図4】にみられるとおり,本願出願時に周知である。 よって,引用発明に引用文献3に記載の技術を適用するに当たり,光検出器の出力信号に基づく着座者の個人認証を行い,その後,当該着座者が25認識された条件で,アルコール検出センサによるアルコール検出を行うよ24うにすることは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎず,個人認証の後に飲酒判定を行うことは周知であったのであるから,原告らの上記主張は採用できない。 ⑶ 顕著な作用効果についてア 原告らは,前記第3の1⑴ウのとおり,本願発明1は,「対象者に負担5をかけることなく,椅子に座るだけで生体情報として少なくとも生体ガスを収集し,各種診断に供することができる。」(【0009】)という効果を奏し,これは,引用発明の効果に比べ,特別に顕著なものであると主張する。 イ しかし,引用文献1の【0013】,【0014】,【0026】,【005103】,【0065】の各記載からすると,引用発明は,着座するだけで,対象者に装備装着の負担もかけず,運転操作にも関係なく,着座者の脈波を検出し,着座者の健康状態と生理状態とを推定することができるという効果を奏するといえる。 また,引用文献3に記載された技術も,【0020】,【0022】及び【015031】の各記載からすると,運転者がドアを開けて運転席に着座するだけで,アルコール濃度を検出し,運転者の飲酒状態(すなわち,生理状態)を判定することができるという効果を奏するものである。 そして,本願明細書等において,診断例として記載されている【00025】及び【0026】からすると,本願発明1に 飲酒状態(すなわち,生理状態)を判定することができるという効果を奏するものである。 そして,本願明細書等において,診断例として記載されている【00025】及び【0026】からすると,本願発明1にいう生体ガスのガス成20分の分析による「診断」は,飲酒程度や運動能力の予測,運転手の走行時における生体情報変化の分析等を含み,引用発明や引用文献3に記載された技術における生理状態の推定ないし判定と共通するものであるし引用発明及び引用文献3に記載された技術の効果と比較して,格別の効果を奏することを示唆する記載は見当たらない。 25⑷ 小括25そうすると,本願発明1は,引用発明及び引用文献3に記載された技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから,取消事由1は理由がない。 よって,本願発明1は進歩性を欠くとした本件審決の判断に誤りはない。 5 取消事由2(手続違背・特許法50条違反)について5⑴ 原告らは,前記第3の2⑴のとおり,特許法50条違反の手続違背があると主張するところ,被告は,この主張について,時機に後れたものとして却下されるべきであると主張する。確かに,拒絶査定時に審査官が引用文献3について通知したかどうかは,原告らが直接認識できた事実で,第1回の準備書面において主張できたはずなのに,令和3年2月10日付けの第2回原10告準備書面によって初めて主張されるに至ったのであるから,時機に後れたものというべきであるが,それによって訴訟の完結を著しく遅滞させるとまではいえないので,これを却下することはしない。 ⑵ 本件拒絶理由通知では,出願当初の請求項6に対して引用文献1及び引用文献3に記載された発明に基づいて,進歩性欠如についての拒絶理由が通知15されている(甲4)ところ,出願当 ことはしない。 ⑵ 本件拒絶理由通知では,出願当初の請求項6に対して引用文献1及び引用文献3に記載された発明に基づいて,進歩性欠如についての拒絶理由が通知15されている(甲4)ところ,出願当初の請求項1,3及び6は以下のとおりである。 「【請求項1】少なくとも座部及び背もたれ部を有する椅子本体と,前記椅子本体に着座した対象者を認識する認識手段と,20前記椅子本体の一部に組み込まれ,前記認識手段で対象者が認識された条件で,前記椅子本体に着座した対象者の生体情報を収集する収集器具と,を備えたことを特徴とする生体情報収集椅子。 【請求項3】室内空間に設置される座席の少なくとも一部に請求項1に記載の生体25情報収集椅子を用いたことを特徴とする乗り物。 26【請求項6】請求項3に記載の乗り物のうち,室内空間が閉空間になり得る態様において,前記収集器具は対象者の生体ガスを捕集するガス捕集器具であることを特徴とする乗り物。」5上記のとおり,出願当初の請求項6は出願当初の請求項3を引用し,出願当初の請求項3は出願当初の請求項1を引用しているから,結局のところ出願当初の請求項6は,生体情報が生体ガスであることを特徴とする,請求項1に記載の生体情報収集椅子を用いた乗り物に係る発明ということになる。 ⑶ 拒絶査定は,拒絶査定時の請求項1に対して,引用文献1及び同3に記載10された発明に基づく進歩性の欠如を拒絶理由としてなされているところ,拒絶査定時の請求項1の記載は以下のとおりである(下線は本件拒絶理由通知時の請求項1からの補正箇所を示す。)。 「【請求項1】少なくとも座部及び背もたれ部を有する椅子本体と,15前記椅子本体に着座した対象者が誰であるかを認識する認識手段と,前記椅子本 の請求項1からの補正箇所を示す。)。 「【請求項1】少なくとも座部及び背もたれ部を有する椅子本体と,15前記椅子本体に着座した対象者が誰であるかを認識する認識手段と,前記椅子本体の一部に組み込まれ,前記認識手段で対象者が認識された条件で,前記椅子本体に着座した対象者の生体情報として少なくとも生体ガスを収集する収集器具と,を備えたことを特徴とする生体情報収集椅子。」20これによれば,拒絶査定時の請求項1には,生体情報に,出願当初の請求項6に記載された「生体ガス」を含む点が追加されたことになるところ,前記のとおり,本件拒絶理由通知では,出願当初の請求項6に対しては,引用文献1及び引用文献3に記載された発明に基づいて,進歩性欠如についての拒絶理由が通知されているのであるから,出願当初の請求項1については,25引用文献1に基づく進歩性欠如についての拒絶理由しか通知されていないと27しても,出願当初の請求項6に記載された「生体ガス」を含む点が追加された拒絶査定時の請求項1については,本件拒絶理由通知によって,出願当初の請求項6に対する拒絶理由という形式で,引用文献1及び同3に基づく進歩性欠如の拒絶理由が通知されていたということができる。 そうすると,原告らは,審査段階の拒絶理由通知により,拒絶査定時の請5求項1について,引用文献1及び引用文献3に基づく進歩性欠如について,実質的に防御の機会が与えられていたということができるし,現に,原告らは,審査段階における拒絶理由通知に対する応答として手続補正書と同時に提出した意見書(甲7)で,拒絶査定時の請求項1にいう「収集器具」について,引用文献1ないし同4のいずれにも開示されていないとし,「引用文献101~4に記載の発明(引用発明1~4)・・・を組み合わせた た意見書(甲7)で,拒絶査定時の請求項1にいう「収集器具」について,引用文献1ないし同4のいずれにも開示されていないとし,「引用文献101~4に記載の発明(引用発明1~4)・・・を組み合わせたとしても・・・本件発明には想到し得ないものと思料する。」と主張していることが認められる。 したがって,拒絶査定に特許法50条違反があるとの原告らの主張は理由がない。 15また,本件審決が引用文献1及び同3に基づく拒絶理由通知をしなかったことにも,手続違背はない。 6 取消事由3(手続違背・審理不尽)について原告らは,前記第3の3⑴のとおり,本件審決において,本願発明1についての審理だけを行い,本願発明2ないし13の審理を行っていないことについ20て,審理不尽があると主張する。 しかし,被告が主張するとおり,特許法は,一つの特許出願に対し,一つの行政処分としての特許査定又は特許審決がされ,これに基づいて一つの特許が付与され,一つの特許権が発生するという基本構造を前提としており,請求項ごとに個別に特許が付与されるものではない。このような構造に基づき,複数25の請求項に係る特許出願であっても,特許出願の分割をしない限り,当該特許28出願の全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定をするほかなく,一部の請求項に係る特許出願について特許査定をし,他の請求項に係る特許出願について拒絶査定をするというような可分的な取扱いは予定されていない。 このことは,特許法49条,51条の文言のほか,特許出願の分割という制度の存在自体に照らしても明らかである(最高裁判所平成19年(行ヒ)第3158号同20年7月10日第一小法廷判決・民集62巻7号1905頁参照)。 本件において,本件審決は,本願発明1について,特許法29条2項の規定に らかである(最高裁判所平成19年(行ヒ)第3158号同20年7月10日第一小法廷判決・民集62巻7号1905頁参照)。 本件において,本件審決は,本願発明1について,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断しており,これによって本願が全体として同法49条2号に該当し,拒絶をすべきものになることは明らかである。 よって,本件審決に審理不尽は認められない。 107 結論以上によれば,原告ら主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決について取り消されるべき違法は認められない。 したがって,原告らの請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 15知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官20菅 野 雅 之 裁判官25本 吉 弘 行29 裁判官岡 山 忠 広5 30(別紙1)【技術分野】【0001】本発明は,着座する対象者の生体情報を収集する生体情報収集椅子に係り,特に,健康疾病診断を行う上で有効な生体情報収集椅子及びこれを用いた乗り物並びに生5体情報診断システムに関する。 【背景技術】【0002】・・・特許文献2には,検知ステーションにおいて生体被験者の生理的パラメータを監視するためのアセンブリであって,アセンブリは,少なくとも1つの各セン10サフィールド内の被験者の1つ以上の前記パラメータをセンサが検知することができる,・・・。 【発明が解決しようとする を監視するためのアセンブリであって,アセンブリは,少なくとも1つの各セン10サフィールド内の被験者の1つ以上の前記パラメータをセンサが検知することができる,・・・。 【発明が解決しようとする課題】【0004】・・・また,特許文献2によれば,医療および関連する診断目的のための患者パ15ラメータの電子監視を提供することができる。 このように,従前の特許文献1,2は痔疾患手術後のメディカルケア,患者パラメータの電子監視というように,予め決められた特定の目的に対するメディカルケアを主眼とした技術は多く提供されている。 【0005】20しかしながら,日常生活の中において,一般人が健康疾病診断を行うには,定期的に人間ドックを受ける等医療機関に足を運ぶのが通常であるが,一般人が日常生活の中,例えば自宅で休養しているときや,自動車を運転しているときに気軽に生体情報を収集し,この収集した生体情報を利用することで健康疾病診断等の各種診断を事前に実施することができないかという要望が強く叫ばれている。 25本発明が解決しようとする技術的課題は,対象者に負担をかけることなく生体情31報を収集し,各種診断に供することが可能な新規な生体情報収集椅子及びこれを用いた乗り物並びに生体情報診断システムを提供することである。 【課題を解決するための手段】【0006】請求項1に係る発明は,少なくとも座部及び背もたれ部を有する椅子本体と,前5記椅子本体に着座した対象者が誰であるかを認識する認識手段と,前記椅子本体の一部に組み込まれ,前記認識手段で前記対象者が認識された条件で,前記椅子本体に着座した前記対象者の生体情報を収集する収集器具と,を備え,前記収集器具は,前記対象者の生体情報として少なくとも生体ガスを収集するものを含むことを特 手段で前記対象者が認識された条件で,前記椅子本体に着座した前記対象者の生体情報を収集する収集器具と,を備え,前記収集器具は,前記対象者の生体情報として少なくとも生体ガスを収集するものを含むことを特徴とする生体情報収集椅子である。 10【発明の効果】【0009】請求項1に係る発明によれば,対象者に負担をかけることなく,椅子に座るだけで生体情報として少なくとも生体ガスを収集し,各種診断に供することができる。 【発明を実施するための形態】15【0011】◎実施の形態の概要図1は本発明が適用された生体情報収集椅子及びこれを用いた生体情報診断システムを示す説明図である。 同図において,生体情報収集椅子10は,椅子本体1と,椅子本体1に着座した20対象者Mが誰であるのかを認識する認識手段2と,椅子本体1の一部に組み込まれ,認識手段2で対象者Mが認識された条件で,椅子本体1に着座した対象者Mの生体情報を収集する収集器具3(図1では3a,3b)と,を備え,収集器具3は,対象者Mの生体情報として少なくとも生体ガスを収集するものを含むものである。 このような技術的手段において,椅子本体1としては,座部1a及び背もたれ部251bを少なくとも有するものであればよく,これ以外の要素,例えば肘置き部1c32や脚部1dなどを含んでいても差し支えない。 また,生体情報を収集するに当たり,着座する対象者Mを特定することが必要であるため,例えば運転免許証等のIDカードを読み込むリーダや,予め着座する対象者Mを登録しておき,着座時にいずれかを指定するスイッチ等,あるいは,生体認証などの認識手段2を備えることが必要である。 5ここで,生体情報とは,対象者Mの生体ガス(呼気,皮膚ガス,放屁…),心電図,血中酸素濃度,脈拍,体温,顔 を指定するスイッチ等,あるいは,生体認証などの認識手段2を備えることが必要である。 5ここで,生体情報とは,対象者Mの生体ガス(呼気,皮膚ガス,放屁…),心電図,血中酸素濃度,脈拍,体温,顔色,眼球や内臓を含む体の運動情報などを含む。 更に,収集器具3(例えば3a,3b)は,収集する生体情報に応じて適宜選定して差し支えない。例えば生体ガスであれば,当該ガスを吸着するデバイスを着脱自在に設けるようにしたり,また,脈拍や心電図については夫々の測定器具を設け10るようにすればよい。 【0013】図2は本発明が適用された生体情報収集椅子を設置した乗り物及びこれを用いた生体情報診断システムの実施の形態の概要を示す。 つまり,本実施の形態では,乗り物5は,室内空間6に設置される座席の少なく15とも一部に前述した生体情報収集椅子10を用いたものである。 ここで,乗り物5には自動車や電車等の車両は勿論,更には飛行機,船舶等も含まれる。 また,この種の乗り物5の代表的態様としては,運転席に生体情報収集椅子10を用いた態様が挙げられる。 20本態様によれば,運転者の生体情報を監視対象とすることで,乗り物5の運転の安全対策(飲酒運転,居眠り運転,てんかん患者,違法ドラッグ使用者による運転等の対策)に利用することができる。 【0014】更に,乗り物5の室内空間6を利用し,収集器具3の少なくとも一部(本例では253c)が室内空間6の生体情報収集椅子10とは別の箇所に設置されてもよい。 33生体情報を収集する収集器具3(例えば3a~3c)は生体情報収集椅子10に全てが設置されていてもよいが,例えば対象者Mに対面した位置の方が生体情報を収集し易い場合には,収集器具3cに示すように,生体情報収集椅子10とは別の箇所に設置する方 3c)は生体情報収集椅子10に全てが設置されていてもよいが,例えば対象者Mに対面した位置の方が生体情報を収集し易い場合には,収集器具3cに示すように,生体情報収集椅子10とは別の箇所に設置する方が好ましい。また,乗り物5の室内空間6に設けられている車載カメラ等を収集器具3の一部に利用してもよい。 5また,乗り物5として室内空間6が閉空間になり得る態様への適用例としては,収集器具3(例えば3a)は対象者Mの生体ガスを捕集するガス捕集器具である態様が挙げられる。 【0015】そして,生体ガス情報を収集する代表的態様としては,収集器具3(例えば3a)10としてのガス捕集器具は,生体情報収集椅子10の背もたれ部1bの頭部近傍に設けられ,対象者Mの呼気を主として捕集対象とするものである。ガス捕集器具の設置場所は任意であるが,生体情報収集椅子10の背もたれ部1bの頭部近傍(例えばヘッドレスト等)に設置することで,対象者Mの生体ガスGとしての呼気を主として捕集することが可能である。・・・15【0018】以下,添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。 ◎実施の形態1図3は実施の形態1に係る生体情報収集椅子が設置された乗り物としての自動車の全体構成を示す。 20本実施の形態では,乗り物としての自動車20は,室内空間21の運転席に生体情報収集椅子CRを設置し,この生体情報収集椅子CRに着座する運転者(対象者)Mの生体情報を収集するようにしたものである。 尚,本例では,自動車20は,図示外の制御装置(コンピュータ)を搭載し,各種センサから情報に基づいて運転者による運転をコントロールするようになってい25る。また,室内空間21の運転席の近傍には空気清浄装置60や車内ディスプレイ3470(図4参 ータ)を搭載し,各種センサから情報に基づいて運転者による運転をコントロールするようになってい25る。また,室内空間21の運転席の近傍には空気清浄装置60や車内ディスプレイ3470(図4参照)が設けられている。 【0019】<生体情報収集椅子の構成>本例において,生体情報収集椅子CRは,図3及び図4に示すように,椅子本体30と,椅子本体30に着座する運転者Mを認識する認識器具50と,椅子本体350の一部に組み込まれ,認識器具50で運転者Mが認識された条件で,椅子本体30に着座した運転者Mの生体情報を収集する収集器具40と,を備えている。・・・【0020】また,自動車では室内環境(温度,湿度,気流,気圧,輻射熱,空気清浄度,照度,振動,発進停止時或いはカーブ走行時の重力変化・・・)が制御できるが,健10康診断に理想的な一定環境制御ができるし,場合によっては生体情報が変化する特別な環境条件を作り出すことができる。このような一定環境や変動する環境で得られる生体情報には個人の健康や疾病などに関わる情報が含まれる。 そこで,車室内の監視物理量(生体ガス,尿中気化物・・・)による健康診断技術を提案するものである。 15本例では,以下の物理量及び情報の少なくとも一部が監視・収集する対象になっている。 1) 生体ガス(呼気,皮膚ガス,放屁・・・),尿中気化物・・・【0021】20また,本実施の形態では,収集器具40は,例えば以下の3系統(A~C)の収集器具41,収集器具42及び収集器具43が搭載されている。 収集器具41(A):この収集器具41は,図4及び図5(a)に示すように,例えば椅子本体30の背もたれ部32のヘッドレスト32aに着脱自在に装着され,前述した生体ガスG25(主と ている。 収集器具41(A):この収集器具41は,図4及び図5(a)に示すように,例えば椅子本体30の背もたれ部32のヘッドレスト32aに着脱自在に装着され,前述した生体ガスG25(主として呼気)を捕集する器具であり,本例では,捕集フィルタにて構成されて35いる。 本例では,捕集フィルタは,外気側から呼気中の汚染物質を捕集する除去フィルタ411,その内側に呼のガス成分を吸着する吸着フィルタ412,更にその内側には外気が侵入することを防止する逆止弁413を設置したものである。・・・【0022】5次に,本実施の形態に係る生体情報収集椅子CRが設置された自動車の作用について説明する。 本実施の形態によれば,図4に示すように,前述したように,収集器具41(A)は生体情報収集椅子CRに着座した運転者Mの生体ガスG(主として呼気)を捕集する。このとき,閉空間である室内空間21において,空気清浄装置60にて運転10席周辺に清浄空気Airを吹き付けると,運転者Mの周囲環境は清浄空気質が多くなり,この環境下において,運転者Mからの生体ガスG(主として呼気)が生成されると,運転者Mからの生体ガスG(主として呼気)が収集器具41としての捕集フィルタに主として捕集される。尚,室内空間21の他のガス成分が収集器具41としての捕集フィルタに捕集される可能性は少ない。・・・15このとき,呼気中の生体ガス成分の分布をみると,運転者Mの生体ガスGの分布に基づいて,運転者Mの健康疾病診断を予測することが可能である。 例えば図6に示すように,生体ガス(例えば呼気)と健康状態との相関関係としては,特定の指標物質と疾病との間には因果関係があることが知られており,これらの因果関係に基づいて運転者Mの疾病リスクが事前に診断可能になる。 20 体ガス(例えば呼気)と健康状態との相関関係としては,特定の指標物質と疾病との間には因果関係があることが知られており,これらの因果関係に基づいて運転者Mの疾病リスクが事前に診断可能になる。 20【0025】<診断例1>図8は飲酒運転の発見,防止,注意,連絡,走行停止措置についての診断プログラムの実施過程を模式的に示すものである。 飲酒時の生体ガスの成分変化については,生体ガスGの特定のガス成分が影響し25ていることが見出されている。本件発明者らの研究によれば,特定のガス成分とし36てエタノール,アセトアルデヒド濃度が大きく影響していることが判明した。 そこで,本実施の形態では,収集器具41(A)として,エタノール濃度を検出する第1の濃度センサ41aと,アセトアルデヒド濃度を検出する第2の濃度センサ41bとを椅子本体30の背もたれ部32のヘッドレスト32aに組込み,椅子本体30に着座した運転者Mからの生体ガスG(主として呼気)中の各ガス成分濃5度を時系列で定期的に検出し,各ガス成分の時系列変化を収集する。 この収集データはネットワーク90を介して管理センタに送られ,データ集計部120によるデータ集計処理,記憶部110へのデータ記憶処理を経た後,診断部130による診断処理が行われる。 このとき,診断部130では,生体ガスG中のエタノール,アセトアルデヒドの10濃度比により,飲酒程度を予測し,また,運動能力を予測する。 管理センタは,この予測結果について該当する自動車20の車内ディスプレイ70に表示し,運転者Mへ情報提供する。 尚,管理センタは,事態が緊急を要する場合には,運転停止措置を促したり,あるいは,警察などの関係機関への連絡を行う。 15【0026】<診断例2>図9は運転者に緊急を要する異常 する。 尚,管理センタは,事態が緊急を要する場合には,運転停止措置を促したり,あるいは,警察などの関係機関への連絡を行う。 15【0026】<診断例2>図9は運転者に緊急を要する異常が生じた場合の診断プログラムの実施過程を模式的に示す。 近年,てんかん患者,麻薬や禁止ドラッグ使用者の事故が問題になっているが,20この種の運転者Mは,呼気,体温,眼球運動,痙攣,顔色,心拍……などの生体情報に異常があると考えられる。 そこで,本例では,収集器具41(A)~43(C)にて各種の生体情報を収集した後,収集したデータをネットワーク90を介して管理センタに伝送し,管理センタにてデータ集計処理,データ記憶処理及び診断処理を実施する。 25ここで,診断処理において,生体情報に異常があるか否かを判断し,異常がある37場合には,例えば情報管理センタへ連絡し,該当する自動車20に対して事故防止対策をとるようにする。一方,異常がない場合には,車内ディスプレイ70を利用して異常がないことを運転者Mに通知する。 尚,診断処理において,運転者Mの走行情報も併せて診断し,危険な走行状態である場合に生体情報の異常があると判断される可能性を高めるようにしてもよい。 5また,自動車の発進,停車,カーブ通過時の体重変動により,運転者の脈拍,血圧,生体ガス等の変化との相対関係を調べるようにすれば,運転者の走行時における生体情報変化を分析することも可能である。 10 15【図1】 38【図2】 5 10 【図3】15 2039【図4】 【図5】 40 5 10 【図3】15 2039【図4】 【図5】 40 【図6】 5 41【図8】 5 42【図9】
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