【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人両名を各懲役三月に処する。 但し被告人両名に対しいずれも三年間右刑の執行を猶予する。 原審における訴訟費用は被告人両名の
主文 原判決を破棄する。 被告人両名を各懲役三月に処する。 但し被告人両名に対しいずれも三年間右刑の執行を猶予する。 原審における訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。 理由 本件控訴の趣意は弁護人長崎祐三提出の控訴趣意書記載の通りであるから、これを引用する。 同控訴趣意第一点(一)について。 論旨は畢竟A巡査が被告人Bを酔漢と認めその手を捕えたのは適法な職務執行でないから、之に対し暴行を加えても公務執行妨害罪は成立しないと謂うのである。 よつて記録を精査するに原審並びに当審証人Aの証言、司法警察員のC、Dに対する各供述調書によれば、被告人両名は昭和二十九年七月二十日午後四時頃些か飲酒酩酊して田川郡a町bアイスキヤンデー屋C方前において通行人と喧嘩した上同店内においてサイダー瓶を投げ大声で怒鳴り立てたので、同店女中Dが同町警部補派出所に電話を以て「酔つ払いが暴れているからすぐ来て下さい」と届けたためA巡査が同店にかけつけたが、其の時は既に騒はおさまりCが被告人両名の注文に応じアイスキャンデーを一本宛渡したそのしゆん間であつた所そこに正服のA巡査がきたので被告人等は之をCに戻し同店を立去らんとした、そこで同巡査は被告人Bを泥酔者と誤認して保護するため「おい、一寸待て」と云つて突如その手を握つたので、被告人両名はこれに憤激し「何もしないのに何故手を握るか」と詰め寄り同店前及び附近路上において交々同巡査を殴打し足蹴にした事実が認められる。而して公務執行妨害罪の成立するにはその妨害が公務員の適法な職務の執行に当り為されることを要するが、苟も公務員の抽象的権限に属する事項である限り偶々職務執行の原因たるべき具体的事実を誤認し、又は当該事実に対する法規の解釈を誤り適用すべから が公務員の適法な職務の執行に当り為されることを要するが、苟も公務員の抽象的権限に属する事項である限り偶々職務執行の原因たるべき具体的事実を誤認し、又は当該事実に対する法規の解釈を誤り適用すべからざる法規を適用したとして<要旨>も、真実職務の執行と信じて為したものであれば一応適法なる職務行為と認めらるべきものである。けれども</要旨>著しく具体的事実を誤認し当時の客観状況に照しその誤認が極めて明白にして一般の見解上公務の執行と認められないときは、たとえ公務員において職務の執行と信じて為したとしても適法なる職務行為とは認められないと解するのが相当である。ところがA巡査は被告人Bが当時些か飲酒酩酊していたに過ぎずして何等応急の救護を要する状態ではないのに拘らず、C方より酔つ払いが暴れている旨の電話連絡を受けてかけつけ同被告人が同人方を立去ろうとするのを見るや、これを以て警察官等職務執行法第三条第一項第一号に所謂保護を要する泥酔者と速断し矢庭に同被告人の手を捕えたのであるから、斯の如きは著しく事実を誤認したもので当時の客観状況に照しその誤認は極めて明白であつて一般の見解上到底公務の執行とは認められないから、同巡査においてたとえ職務の執行と信じて為したとしても適法なる職務行為とは謂い難く、従つてこれに対し暴行を加えても公務執行妨害罪が成立する謂われはない。然るに原審が同巡査の右所為を以て適法なる職務執行と認めこれに対する被告人等の暴行を公務執行妨害罪と断じたのは法律の解釈を誤つた違法であるか、或はA巡査が手を捕えた際の周囲の事情につき審理不尽の違法を犯したかであつて何れにも該違法は判決に影響を及ぼすこと明らかなるを以て原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。 同控訴趣意第一点、(二)について。 しかし原判決はA巡査が被告人等を泥酔者と認め したかであつて何れにも該違法は判決に影響を及ぼすこと明らかなるを以て原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。 同控訴趣意第一点、(二)について。 しかし原判決はA巡査が被告人等を泥酔者と認めたとは判示していない。しかも、当時被告人等か些が飲酒酩酊していたに過ぎないことは論旨第一点、(一)において説明した通りであるから、被告人等が心神耗弱の状態に在つたものとは謂い難く、原審か被告人等の所為に対し刑法第三十九条第二項を適用しなかつたりはまことに相当で論旨は理由がない。 同控訴趣意第一点、(三)について。 同第一点(一)について説明したとおり公務執行妨害罪の成立を認めたのはあやまりであるから説明を省略する。 同控訴趣意第二点について。 しかし原判決挙示にかかる証人Aの証言に当審における同証人の証言を参酌すれば、被告人両田のは原判示日時場所において届出によりかけつけたA巡査が「おい、一寸待て」と云つて被告人Bの手を握つたことに憤激し「何もしないのに何故手を握るか」と詰め寄り、「やつて了え」と云つて両名力をあわせ同所及び附近路上において交々手挙を以て同巡査の頭等を殴り足蹴にした事実が認められるから、被告人両名は共謀して右暴行を加えたものと謂うべく、記録を精査するも原判決にこの点に関する事実誤認の疑は存しない。所論は原審か採用しない証拠に基き原判決の適法なる事実認定を論難するもので採用し難い。 そこで量刑不当の論旨については判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条に則り原判決を破棄し、同法第四百条但書に従い更に判決する。 罪となるべき事実第一、 被告人Eは昭和二十九年五月八日田川市c区d字eF方附近路上において些細なことから同人と口論の末、同人の左手小指にかみつくなどし因つて該部に治療日数約八日を要する傷害を与え、第二、 被告人 一、 被告人Eは昭和二十九年五月八日田川市c区d字eF方附近路上において些細なことから同人と口論の末、同人の左手小指にかみつくなどし因つて該部に治療日数約八日を要する傷害を与え、第二、 被告人両名は同年七月二十日午後四時頃田川郡a町大字bアイスキヤンデー屋C方において酔つ払いが乱暴している旨の届出によりかけつけた巡査Aが「おい、一寸待て」と云つて被告人Bの手を捕えたのに憤激し、「何故手を握るか」と詰め寄り、両名共謀の上同店前及び附近路上において交め同巡査の頭部、顔面等を手撃で殴打し又は足蹴にし、因つてその左頬部、後頭部に治療日数約四日を要する打撲傷を与えたものである。 証拠の標目判示第一の事実につき、一、 被告人Eの原審第一回公判調書中の供述記載一、 F、Gの司法巡査に対する各供述調書一、 医師H作成の診断書判示第二の事実につき、一、 証人Aの原審第六回公判調書中の供述記載一、 同証人の当公廷にお件る証言一、 司法警察員作成の実況見分調書(但しI供述部分を除く)一、 医師J作成の診断書前科被告人Eは昭和二十二年七月二十五日福岡地方裁判所田川支部において窃盗罪により懲役二年に処せられ、当時右刑の執行を受け終つたもので右事実は同被告人の前科調書によりこれを認める。 法律の適用被告人Bの判示所為は刑法第二百四条、第六十条、罰金等臨時措置法第二条第三条に当るから所定刑中懲役刑を選択して同被告人を懲役三月に処すべく、被告人Eの判示第一、第二の各所為はいずれも刑法第二百四条、罰金等臨時措置法第二条第三条(第二の所為については更に刑法第六十条)に当るが、前科かあるがら所定刑中懲役刑を選択した上刑法第五十六条第五十七条に則り累犯加重をなすべく、而して右は同法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七 第二の所為については更に刑法第六十条)に当るが、前科かあるがら所定刑中懲役刑を選択した上刑法第五十六条第五十七条に則り累犯加重をなすべく、而して右は同法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条第十条第十四条を適用し犯情重い判示第一の傷害罪の刑に法定の加重をした上同被告人を懲役三月に処すべく、なお被告人両名に対しては犯情により刑法第二十五条を適用していずれも三年間右刑の執行を猶予すべく、原審における訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項第百八十二条に従い被告人両名をして負担せしむべきものとする。 一部無罪尚本件公訴事実中被告人両名は昭和二十九年七月二十日午後四時頃田川郡a町大字bアイスキヤンデー屋C方において巡査Aが同人等を泥酔者と認め保護するため被告人Bの右手首を握つたことに憤激し共謀して暴行を加え同巡査の職務の執行を妨害したものであるという点については、論旨第一点、(一)について説明した如く公務執行妨害罪を構成しないものとして無罪の云渡をなすべきところ、判示第二の傷害罪と一個の行為にして二個の罪名に触れるものとして起訴されたものと認め特に主文において無罪の云渡をしない。 よつて主文の通り判決する。 (裁判長判事西岡稔判事後藤師郎判事中村荘十郎)
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