令和1(わ)1408 被告人甲に対する傷害致死,監禁,死体遺棄,恐喝未遂,恐喝被告事件,被告人乙に対する傷害致死,監禁,死体遺棄,恐喝被告事件

裁判年月日・裁判所
令和3年3月2日 福岡地方裁判所
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判決文本文18,745 文字)

- 1 -令和3年3月2日宣告令和元年(わ)第1408号,同第1304号,同第1542号,令和2年(わ)第60号,同第188号 主文 被告人甲を懲役22年に,被告人乙を判示第1,第2,第6の罪について懲役15年,判示第5の罪について懲役6月に処する。 被告人甲に対し,未決勾留日数中230日をその刑に,被告人乙に対し,未決勾留日数中150日を判示第1,第2,第6の罪の刑に,それぞれ算入する。 本件公訴事実中死体遺棄の点については,被告人両名は無罪。 理由 (第1ないし第3の犯行に至る経緯) 1 被告人甲は,平成20年頃,己とその夫である戊(当時は交際中)と知り合い,その後,己や戊に対し,己の兄の借金を肩代わりして支払うよう求めるなど,たびたび金銭の支払を要求するようになった。己や戊は,被告人甲の背後にいる元暴力団員である「兄貴」(丁)のことを恐れて,その都度金銭を工面して支払をしていた。 被告人乙は,平成27年頃,被告人甲と交際を開始してその後同居するようになったが,定職に就かずに,被告人甲に経済的に依存する生活を送っていた。 2 被告人甲は,平成31年2月ないし3月頃から,己を同行してホストクラブに通うようになり,己の料金を立替払するなどして己の借金額をかさ増しさせ,丁からも圧力を掛けさせて己に再三金銭を要求するようになった。 己は,被告人甲に渡す金銭を準備するために,実家の母や妹から借金を重ねたことで,実家との関係が次第に悪化した。そのような中,被告人甲は,令和元年6月ないし7月頃,己を説得して実家から離れた場所にある市営住宅に家族で引っ越しをさせた上,同年8月下旬頃には,戊とも別居させて己を被告人両名方に- 2 -住まわせ,被告人甲を介さずに戊と連絡を取れないようにした。そ 説得して実家から離れた場所にある市営住宅に家族で引っ越しをさせた上,同年8月下旬頃には,戊とも別居させて己を被告人両名方に- 2 -住まわせ,被告人甲を介さずに戊と連絡を取れないようにした。その上で,被告人甲は,同年9月以降,己に対し,高カロリーの食事を強要して体重を急激に増やさせたほか,毎日同じ服を着させて風呂にも入らせず,口紅をアイシャドウとして塗るなどの奇抜な化粧をさせ,ホストクラブでもホストに無理やり抱きつかせる,といった己にとって不本意な行動を強いるなどしてその行動を思い通りに支配するようになった。 (罪となるべき事実)第1 (令和元年12月5日付け起訴状記載の公訴事実第1)被告人両名は,共謀の上,令和元年9月下旬頃から同年10月20日頃までの間,福岡県太宰府市lm丁目n番o号の被告人両名方等において,己(当時36歳)に対し,同人の大腿部に向けてバタフライナイフを落として突き刺し,同人の顔面を拳及びマイクで殴打するとともに同人の大腿部等を足で踏みつけ,同人の大腿部を割り箸で突き刺し,同人の腹部を足蹴にし,同人の臀部及び大腿部等を木刀等で多数回殴打するなどの暴行を繰り返し加えて同人に下半身打撲等の傷害を負わせ,よって,同月19日午後9時42分頃から同月20日午前4時52分頃までの間に,同人を前記下半身打撲による外傷性ショックにより死亡させた。 第2 (令和元年12月5日付け起訴状記載の公訴事実第2)被告人両名は,共謀の上,令和元年9月下旬頃から同年10月20日頃までの間,第1記載の各暴行等により己を抵抗することが著しく困難な心理状態に陥らせた上,同人に対して第1記載の被告人両名方からの脱出を禁じるとともに己の動静を監視するなどし,同年9月下旬頃から同年10月20日頃までの間,同人が前記被告人両名方から が著しく困難な心理状態に陥らせた上,同人に対して第1記載の被告人両名方からの脱出を禁じるとともに己の動静を監視するなどし,同年9月下旬頃から同年10月20日頃までの間,同人が前記被告人両名方から脱出するのを著しく困難にさせ,もって不法に人を監禁した。 第3 (令和2年1月30日付け起訴状記載の公訴事実第3)被告人甲は,被告人甲らによる暴行等により抵抗することが著しく困難な心- 3 -理状態に陥っていた己から,借金の返済金の名目で現金を脅し取ろうと考え,令和元年10月13日,福岡県小郡市○h○i丁目○j番○k号の美容室「○庚」において,同人に対し,「さっさと始めろよ。」,「100万円集めんといかんのやけん,まだ終わってないよ。」などと言って現金の交付を要求し,もしその要求に応じなければ同人の生命身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を怖がらせ,よって,同日,佐賀県鳥栖市○l○m丁目○n番地付近において,同人から現金65万円の交付を受け,さらに,同月14日,同市○o町○p番地○q付近において,同人から現金40万円の交付を受け,これらを脅し取った。 第4 (令和2年2月27日付け起訴状記載の公訴事実第3)被告人甲は,Cが結婚詐欺で訴えられるとしてそのトラブル解決金等の名目で同人から現金を脅し取ろうと考え,令和元年9月3日,福岡県内にいた同人に対し,電話で「相手の男は,あんたが風俗でアルバイトしていたときに相当入れ込んどった男らしいばい。」,「相手の男はあんたに結婚しようと言われて付き合っていたけど,あんたに突然捨てられたと言っている。」,「結婚詐欺で訴えようとしている。」,「私が150万円で話を付けてやる。」,「警察に行くとあんたもパクられるばい。」,「警察に行くと,あんたが風俗で いたけど,あんたに突然捨てられたと言っている。」,「結婚詐欺で訴えようとしている。」,「私が150万円で話を付けてやる。」,「警察に行くとあんたもパクられるばい。」,「警察に行くと,あんたが風俗でアルバイトしていたことが旦那や周りにばれるばい。」,「あんたはトラブルによく巻き込まれるから弁護士特約に入った方がいい。」,「兄貴の口利きで裏の弁護士を雇うから,普段なら100万円のところをお試し価格で50万円で入れる。」などと言って現金200万円の交付を要求し,もしその要求に応じなければCの名誉等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を怖がらせ,よって,同月6日,同県太宰府市○r○s丁目○t番○u号の○v店駐車場に駐車中の自動車内において,同人から現金200万円の交付を受け,これを脅し取った。 第5 部分判決の「罪となるべき事実」第1の記載を引用する。 第6 部分判決の「罪となるべき事実」第2の記載を引用する。 - 4 -第7 部分判決の「罪となるべき事実」第3の記載を引用する。 第8 部分判決の「罪となるべき事実」第4の記載を引用する。 第9 部分判決の「罪となるべき事実」第5の記載を引用する。 (事実認定の補足説明)第1 傷害致死(第1の事実)について 1 争点被告人甲の弁護人は,被告人甲は,己に対し髪を引っ張る,バタフライナイフを足に落とすといった暴行を加えたが,己の死因となった下半身への激しい暴行は行っておらず,被告人乙との共謀もしていないから,被告人甲には暴行罪が成立するにとどまる旨を主張する。また,被告人乙の弁護人は,被告人乙は,己に対し一切暴行をしておらず,被告人甲と共謀もしていないから,被告人乙は無罪である旨を主張する。 したがって,本件の争点は,暴行と共謀の有無の点である。 た,被告人乙の弁護人は,被告人乙は,己に対し一切暴行をしておらず,被告人甲と共謀もしていないから,被告人乙は無罪である旨を主張する。 したがって,本件の争点は,暴行と共謀の有無の点である。 2 暴行の有無について(1) 令和元年9月25日の山中での暴行について被告人甲及び己が使用していた携帯電話機のロケーション履歴に関する証拠(甲448)や丁の証言によれば,被告人甲は,令和元年9月25日,己と一緒にホストクラブに行った後,被告人乙が運転する自動車で己を福岡県筑紫野市内の山中まで連れていき,その場に40分ほど滞在していたことが認められる。また,被告人甲は,丁に対し,上記のとおり山中まで移動する車中からの電話で,己にホストクラブの飲み代を払わされたことに興奮気味な様子で,「今から山か林に行って焼き入れる。」などと話しており,己のホストクラブでの言動に関して暴力による制裁を加える目的で,己を山中に連れて行ったと認められる。 ところで,山中での暴行の状況について,被告人甲は,「(自らが)己の髪を引っ張った上,頬を平手で二,三回叩くなどの暴行を加えた。被告人乙- 5 -は,付近に落ちていた木の棒を持ってきてライターであぶり,己の足の裏に押し付けていた。」などと述べるのに対し,被告人乙は,「被告人甲は,己に対し,腹部を蹴ったり顔を拳で殴ったり,根性焼きをした。自分にも木の棒を探してくるように言い,その棒で己の左腕等を四,五回叩いたりもしていた。」などと述べている。このように話が食い違っているのは,被告人両名が互いに己を亡くならせた責任を相手になすりつけようとしていると考えられるから,いずれの被告人の話もそのままは信用できない。山中での暴行については,被告人甲及び被告人乙が一致して認める限度で,被告人甲が己の髪を引っ張った上 任を相手になすりつけようとしていると考えられるから,いずれの被告人の話もそのままは信用できない。山中での暴行については,被告人甲及び被告人乙が一致して認める限度で,被告人甲が己の髪を引っ張った上,頬を平手で二,三回叩き,被告人乙が付近に落ちていた木の棒を持ってきたと認めるのが相当である。 なお,被告人乙は,被告人甲に言われて木の棒を探して持ってきたことにつき,何に使われるかも想像していなかったなどと弁解している。しかし,被告人乙は,山中に移動する車中での被告人甲の言動等により,少なくとも己に対し暴力による制裁を加えようとしていることは十分分かっていたはずである。被告人乙は,己に対する暴行に加担する目的で木の棒を持ってきたものと認められる。 (2) バタフライナイフによる暴行について被告人両名は,己が亡くなった後に遺体を車の後部座席に乗せた状態で移動しつつ,己が亡くなった経緯等につき口裏合わせの相談をした。同乗していた○甲がその状況を内密に録音した内容によれば,この際,被告人甲は,「(己を)私バタフライナイフで刺した。」と発言したことが認められる(甲449添付の反訳書31頁)。また,被告人両名方から,己のDNA型と一致する血痕が付着したバタフライナイフが発見されており,このこともバタフライナイフを用いた暴行が行われたことを裏付けている。 被告人甲は,法廷で,「(令和元年9月25日の)山中での暴行の二,三日後,自宅で,己が指名していないホストに抱き付くなどしたことを注意し- 6 -た際,己の太腿の膝に近い部分に,5センチメートルくらいの高さから二,三回バタフライナイフを落とし,二,三センチメートルの長さの傷ができていた。」などと供述している。このようにバタフライナイフを落とす行為は,上記録音に残る「刺した。」と メートルくらいの高さから二,三回バタフライナイフを落とし,二,三センチメートルの長さの傷ができていた。」などと供述している。このようにバタフライナイフを落とす行為は,上記録音に残る「刺した。」という発言とそぐわないように思えるが,ある程度の重さのバタフライナイフを上から落とせば皮膚に刺さるであろうから,そのことを「刺した」と表現したとしてもおかしくはない。 したがって,被告人甲が法廷で供述するとおり,被告人甲は,令和元年9月下旬頃,5センチメートル程度の高さから二,三回バタフライナイフを落として突き刺すという暴行を行ったと認められる。 (なお,証人③は,同年10月上旬頃,己の太腿に刃物による切り傷と思われる傷を目撃しているところ,この傷も,被告人甲が述べるバタフライナイフによる暴行により生じたと見て矛盾はしないと考えた。)(3) 令和元年10月14日から同月15日の暴行についてアホストクラブ内での暴行ホストクラブ○乙のホストである証人⑤は,「被告人甲は,令和元年10月14日,ホストクラブ○乙内で,己が手づかみで氷を食べたことに腹を立て,マイクや右手拳で顔を叩き,足の甲や太腿を踏み付け,腹部を蹴り,割り箸で手の甲を刺すなどの暴行を加えていた。」旨を証言し,その場にいた被告人甲の息子も同様の証言をしている。また,被告人甲も,拳で額を殴り,太腿を踏み付けた以外は酔っていてよく覚えていないとしつつ,そのほかの暴行をしたことを積極的に否定はしていない。 以上によれば,被告人甲は,令和元年10月14日,ホストクラブ○乙において,己に対し,顔面を拳及びマイクで殴打するとともに大腿部等を足で踏みつけるなどの暴行を行ったと認められる。 イホストクラブ○乙から帰宅する際の車内での暴行被告人 乙において,己に対し,顔面を拳及びマイクで殴打するとともに大腿部等を足で踏みつけるなどの暴行を行ったと認められる。 イホストクラブ○乙から帰宅する際の車内での暴行被告人甲の息子は,「(上記のホストクラブ内での暴行後,帰宅する際- 7 -の車内で,)被告人甲が,怒った様子で,己が氷を手づかみで食べたことをみんなに聞こえるような大きな声で言ったところ,被告人乙も,「何か調子乗っとるね。」などと怒ったような感じの口調で言い,そのすぐ後に,車の前席の灰皿のところから,折れた割り箸を手に取り,己の太腿を服の上から思い切り突き刺した。」旨を証言している。 この点,被告人乙は,己を刺すふりをしただけで,実際には刺していない旨述べている。しかし,被告人甲の息子は,被告人乙が己を刺す動作をした際の状況について,鈍い音がして,己は痛そうにうめいている感じであり,割り箸が当たった部分が割り箸の形で青ずんでいたなどと具体的に証言しており,この証言の信用性を疑う理由はないといえる。 したがって,被告人乙が己を刺すふりをしただけであったなどとは考えられないのであり,被告人乙は,ホストクラブ○乙から帰宅する車内で己の太腿に割り箸を刺す暴行を加えたと認められる。 ウ被告人両名方での暴行被告人甲は,ホストクラブ○乙から帰宅した後の令和元年10月15日午前5時13分過ぎ頃から,ホストである○丙と電話で話をした。○丙は,その際の状況につき,「(電話を替わった己や被告人甲から,二,三日前のホストクラブ○乙での己の言動につき謝罪された後,)被告人甲は,「今己にもちゃんと言ってるから。」,「ガムテープで縛ってる。」,「どついている。」という感じのことを言っていた。」などと証言するとともに,「被告人乙の声も電話越しに 謝罪された後,)被告人甲は,「今己にもちゃんと言ってるから。」,「ガムテープで縛ってる。」,「どついている。」という感じのことを言っていた。」などと証言するとともに,「被告人乙の声も電話越しに聞こえており,(被告人甲は,)「今りゅう(被告人乙)が怒ってる。」などとも言っていた。被告人乙は,「お前はNG出す資格あるんか。」,「お前が金払ってないのに,そんなこと言う権利ないやろう。」などと言っており,被告人乙が何かを言った後に付け加えでやるような感じで,ドンとかバシッとかいう音が五,六回聞こえ,その音に合わせて己のうめき声が聞こえた。」などと証言している。このような証言内- 8 -容によれば,被告人甲が,被告人乙に己のホストクラブでの言動を話したことで,その意を汲んだ被告人乙が,己に暴力による制裁を加えようとしたものと認められる。また,被告人乙の声に合わせて,暴行をしていると取れる物音や己のうめき声が聞こえていたという状況からすれば,この際,被告人乙が己に何らかの激しい暴行を加えていたことが強く推認される。 また,被告人乙は,令和元年10月15日午前5時33分頃から同日午前6時11分頃までの間,知人女性に対し,LINEで,己の膝の傷の写真を送信した上で,「膝の皿を砕いたから。」というメッセージを送信した。このほか,被告人乙は,同日午前8時27分頃から同日午前8時47分頃までの間には,被告人甲の息子に対し,同じくLINEで,「左膝の皿を砕いた」というメッセージと共に己の膝の傷の写真を送信し,さらに,被告人甲の息子から「どーやってやったん?踏んだの?」とのメッセージが返信されたのに対しては,「そだよ?」というメッセージを送信した上で,己の太腿の傷の写真を送信した(甲448)。これらのメッセージは,被告人乙が,知人女性や被 やったん?踏んだの?」とのメッセージが返信されたのに対しては,「そだよ?」というメッセージを送信した上で,己の太腿の傷の写真を送信した(甲448)。これらのメッセージは,被告人乙が,知人女性や被告人甲の息子に対し,自らが己の膝や太腿を踏みつける暴行を加えたことを報告したものであり,被告人乙がそのような暴行を行ったと認められる。 これに対し,被告人乙は,この際に己に暴行を行っていたのは被告人甲であり,自らは暴行を加えていない旨を述べるとともに,上記LINEのメッセージについては,知人女性や被告人甲の息子に警察に通報してもらおうと思って送ったなどと述べている。しかし,上記LINEメッセージは,警察に通報してもらう意図でやりとりをしたものとはおよそ思えない内容であり,むしろ,ガッツポーズを表すと思われる絵文字(顔文字)を用いたメッセージを送るなど,己に危害を加えることを楽しんでいたようにも取れるものになっている。被告人乙の供述は信用できない。 以上によれば,被告人乙は,令和元年10月15日,己に対し,膝や太- 9 -腿を踏むなどの暴行を加えたと認められる。 (4) 令和元年10月16日頃の被告人両名方での暴行について被告人乙は,令和元年10月16日午前5時29分頃から同日午前5時41分頃までの間,被告人甲の息子との間で,LINEのメッセージのやり取りをした。被告人乙は,被告人甲の息子に対し,「今日はね?木刀でフルスイングケツを」と送信し,被告人甲の息子から,「またなんかしたん?」とのメッセージが返信されてきたのに対し,(己が)「寝とったらしいよw」,「焼きそば食って寝た」などというメッセージを送信するとともに,「骨砕けてるから」,「ケツを削ぎ落とす勢いでフルスイング」,「100回ほど」などというメッセージを送信した(甲4 とったらしいよw」,「焼きそば食って寝た」などというメッセージを送信するとともに,「骨砕けてるから」,「ケツを削ぎ落とす勢いでフルスイング」,「100回ほど」などというメッセージを送信した(甲448)。 被告人乙は,これらについても警察に通報してもらうための虚偽の内容であったと述べているが,上記のようなLINEメッセージの内容からは,被告人乙が自ら己に暴行を加えたことを伝えているとしか考えられない。被告人乙の供述は信用できず,被告人乙は,令和元年10月16日,被告人甲から己のホストクラブでの言動を伝えられたことをきっかけに,己の臀部を木刀で多数回殴るという暴行を加えたと認められる。 (5) 令和元年10月18日のバーS店内での暴行について証人⑤の証言と同人が撮影していた動画(甲448)によれば,被告人甲は,同日にバーS店内で,己がホストに抱きつく行為をしたことから,己の腹部を足で蹴る暴行を加えたと認められる。 (6) 令和元年10月18日から同月19日までの間の木刀による暴行について前記○甲による録音によれば,被告人甲は,令和元年10月20日早朝,電話をしていた丁に対し,(被告人乙が)「昨日夜中まで殴りよった,それ私手をかけてないけど。」,「ケツを何発か木刀で。」などと発言したことが認められる(反訳書26頁)。この際,被告人甲は,己が亡くなった経緯について口裏合わせの相談をしていたのであり,丁に嘘を話す必要があったとは考え- 10 -られない。また,上記録音では,被告人乙自身も,「木刀も洋服の上やけん大丈夫と思うよ,直接皮膚じゃないけん。」(同28頁),「いや,俺はもう腹括らないかんすよ,だって手出した本人だから。」(同32頁)などと,己に木刀で暴行を加えたことを示唆する発言をしている。 これらからす うよ,直接皮膚じゃないけん。」(同28頁),「いや,俺はもう腹括らないかんすよ,だって手出した本人だから。」(同32頁)などと,己に木刀で暴行を加えたことを示唆する発言をしている。 これらからすれば,被告人乙が,令和元年10月18日から同月19日までの間,己に対し,木刀で臀部等を殴打する暴行を加えたと認められ,被告人甲もその状況を認識していたと認められる。 (7) その他の暴行についてこのほか,証人⑤は,ホストクラブ○乙での己の様子について,令和元年9月頃から腕のあざがひどくなっていったと証言しており,その頃から,被告人両名が己に対し日常的,継続的に暴行を加えていたことが推認できる。 特に,被告人両名方からは直径約2.5センチメートルの杖棒が発見されているところ,己の遺体を司法解剖した○丁医師は己の遺体の太腿部に杖で突いたとみられる負傷があった旨を証言している。そして,○甲の前記録音には,被告人乙が上記杖棒を用いて己に暴行を加えたことを前提にする会話が残されていることからしても(反訳書28頁),被告人乙が己の大腿部等を杖棒で突くという暴行を行ったことも認められる。 3 共謀の有無について(1) 犯行に至る経緯として認定したとおり,被告人甲は,第1の犯行が開始される令和元年9月下旬に至るまでの間に,己をホストクラブに同行し代金を立替払するなどして,己の借金額をかさ増しさせ,丁からも圧力を掛けさせて再三金銭を要求するようになるとともに,己が借金を重ねたことで関係が悪化していた実家の母や妹のほか,夫である戊からも引き離して孤立させた上で,被告人両名方に同居させて衣食住まで管理し,様々な不本意な行動を強いるなどして,己の行動を思い通りに支配する関係を築いた。 そのような中で,被告人甲は,己がホストクラブで自 き離して孤立させた上で,被告人両名方に同居させて衣食住まで管理し,様々な不本意な行動を強いるなどして,己の行動を思い通りに支配する関係を築いた。 そのような中で,被告人甲は,己がホストクラブで自らの意に沿わない言- 11 -動をしたような場合に,自らあるいは被告人乙に対し己の言動を告げるなどして,日常的,継続的に,暴力による制裁を加えていたものであるから,このような一連の暴行は,被告人甲が,己を服従させ意のままに支配しようという意図の下になされたと認められる。 (2) これに対し,被告人乙も,被告人甲と同居して行動を共にしていたのであるから,上記のような被告人甲の意図は十分に分かっていたはずである。そのような中で,被告人乙が,被告人甲の意を汲んで己に対し激しい暴行を加えたのは,被告人甲に経済的に依存する生活を送る中で,金銭に困らない楽な生活を続けるために,被告人甲に対し自らの存在感を示そうとしたものと理解できる。また,被告人乙は,前記のとおり己に暴行を加えることを楽しんでいた様子も見られるのであり,被告人甲から指示されて仕方なく暴行を振るっていたとは考えられない。 (3) ところで,被告人乙は,己が亡くなる直前まで,木刀で多数回にわたって己の臀部を殴るなどしており,このような被告人乙による暴行が己が死亡した結果に大きく影響したといえるが,被告人甲が,被告人乙にそこまでの激しい暴力をするよう積極的に指示していたとまでは考えにくい。しかし,飽くまで己を服従させ支配する状況を作ったのは被告人甲であり,被告人乙も,被告人甲がいなければ己に暴力を振るうことはなかったといえる。また,被告人甲の暴行にも,己への虐待というべき内容が含まれており,単なる金目当てだけではなく,己への優越感から暴行そのものを楽しんでいた様子が見られる。これらか 力を振るうことはなかったといえる。また,被告人甲の暴行にも,己への虐待というべき内容が含まれており,単なる金目当てだけではなく,己への優越感から暴行そのものを楽しんでいた様子が見られる。これらからすると,被告人甲にとって,被告人乙が己が亡くなる原因となる激しい暴行を加えたことが全くの予想外のことであったとはいえない。被告人甲が己の死亡の結果についても共犯としての責任を負うのは当然といえる。 (4) 以上によれば,被告人両名は,己に暴行を加えて服従させる目的の下,互いに意を通じて一連の暴行を行ったと認められ,被告人両名には傷害致死罪- 12 -の共謀があったと認められる。 4 結論以上によれば,被告人両名には傷害致死罪の共同正犯が成立する。 第2 監禁(第2の事実)について 1 争点被告人両名が,己を被告人両名方から脱出するのを著しく困難にしたといえるか,被告人両名の間に共謀があったかどうかの点である。 2 監禁行為の有無について犯行に至る経緯として記載したとおり,己は,被告人甲に多額の借金を負わされ,家族とも引き離されて孤立し,逃げようとしても行き場のない状況に置かれて,精神的に追い詰められていた。そのような中で,己は,被告人両名方で同居させられて衣食住を管理され,行動を監視される中で,日常的,継続的に激しい暴力を加えられていたから,恐怖心から逃げ出すという判断もできない状態に陥っていたと考えられる。 被告人甲の弁護人は,①令和元年10月16日に己が一人になるなど,己が逃げる機会があった,②己は,丁に対し「お姉ちゃん(被告人甲)と一緒にいたい。」などと述べた旨を指摘し,監禁に当たる行為はなかったなどと主張している。しかし,①の点は,令和元年10月16日の段階では,己は,連日激しい暴力を受けて体調 「お姉ちゃん(被告人甲)と一緒にいたい。」などと述べた旨を指摘し,監禁に当たる行為はなかったなどと主張している。しかし,①の点は,令和元年10月16日の段階では,己は,連日激しい暴力を受けて体調が悪化しており,一人になっても逃げ出すことができなかったと考えられるし,②の点は,己が,被告人甲の関係者である丁に対して述べたものであり,己の本心からの言葉とは考えられない。被告人甲の弁護人の主張は採用できない。 以上によれば,被告人両名は,己を被告人両名方から脱出することが著しく困難な心理状態にしたものといえ,監禁行為があったことは十分認定できる。 3 共謀の有無について前記のとおり,被告人両名は,己を服従させ,支配する目的の下,互いに意- 13 -を通じて日常的,継続的に暴行を加えていた。また,被告人甲は,前記のとおり,己に借金を負わせたり家族から引き離したりした上で,ホストクラブにも同行して行動を監視するなどしており,そのような状況は,被告人乙も十分認識していたといえる。 確かに,被告人乙は,被告人甲に比べれば,己を監禁することに執着してはいなかったと考えられる。しかし,被告人乙は,激しい暴行によって己に強い恐怖心を与えているし,被告人乙がいることで己が逃げられない状況が強まっていたといえ,被告人乙が果たした役割は大きかったと認められる。したがって,被告人両名の間の監禁の共謀も十分認定できる。 4 結論以上によれば,被告人両名に監禁罪の共同正犯が成立する。 第3 己に対する恐喝(第3の事実)について 1 争点被告人甲の弁護人は,第3の事実について,被告人甲は,令和元年10月13日に現金63万円,同月14日に現金38万円を受領したが,これらは借金の返済として受領したもので,脅し取ったものではない旨を主 被告人甲の弁護人は,第3の事実について,被告人甲は,令和元年10月13日に現金63万円,同月14日に現金38万円を受領したが,これらは借金の返済として受領したもので,脅し取ったものではない旨を主張している。 2 恐喝行為の有無について美容師である証人⑦は,令和元年10月13日に勤務先の美容室に被告人甲と己が訪れた際の状況について,「被告人甲が,己に対し,判示のとおり「さっさと始めろよ。」などと強い口調で言ったところ,己は,六,七人の友人や親戚に電話をして,金銭を貸してもらうよう必死で頼んでいた。被告人甲は,電話の間に己が少し休んでいたときも,「休んでいる暇ないよ。100万円集めんといかんのやけん,まだ終わってないよ。」などと強い口調で言っていた。」などと証言している。 この点,被告人甲の弁護人は,上記のような被告人甲の発言は,単なる借金の返済要求に関する言葉であり,脅迫とはいえないと主張している。しかし,- 14 -証人⑦は,己がその後に被告人甲に指示されて己の親戚に対する借用書を書いた際の状況を動画撮影している(甲451)が,このように,証人⑦が施術中の客の様子を動画撮影までしたのは,己が金銭トラブルに巻き込まれていると考えたからにほかならず,このような動画があること自体,己が強い口調で脅されていたという証言の信用性を強く裏付けている。また,上記動画では,己の身体に複数の痣や傷があることが確認できるが,これは,この時点で被告人両名が既に己に対して相当の暴力を加えていたことを示している。そうすると,美容室内で改めて暴力を振るわなくても,被告人甲が己に強い口調で金策を迫った行為は,己に対し,断れば何をされるか分からないという強い恐怖を感じさせるものであったといえる。 したがって,被告人甲が己に脅迫行為を行ったことは十分認 くても,被告人甲が己に強い口調で金策を迫った行為は,己に対し,断れば何をされるか分からないという強い恐怖を感じさせるものであったといえる。 したがって,被告人甲が己に脅迫行為を行ったことは十分認定できる。 3 受領金額について己の叔父の証言や,銀行口座の取引履歴等の証拠(甲451)によれば,己の叔父と叔母は,令和元年10月13日にショッピングセンターやコンビニエンスストアのATM機から合計67万円を,同月14日にコンビニエンスストアのATM機から40万円をそれぞれ出金して己に交付したことが認められる。なお,己の叔父の証言からは,同月13日に己に交付した金額は明確ではないが,叔父が受け取った借用書に65万円と記載されていたことからすれば,少なくとも合計65万円を己に交付したと認められる。 ところで,被告人甲は,己が被告人甲に金銭を交付するのに先立ち,被告人乙に要求されて2万円ずつを渡したため,被告人甲自身は,令和元年10月13日に63万円,同月14日に38万円を受け取ったにすぎない旨を述べている。しかし,己が,被告人甲の了解もないまま,自分の判断で被告人乙に2万円を渡したというのは不自然であるし,被告人甲は,捜査段階ではそのような話をしていなかった経緯につき納得できる説明をしていない。被告人甲の弁解は信用できず,被告人甲が受領した金額は,令和元年10月13日に合計65- 15 -万円,同月14日に40万円であったと認められる。 4 結論以上によれば,第3のとおり,被告人甲には,己に対する合計105万円の恐喝罪が成立する。なお,令和元年10月13日の金銭の受領場所については,己の叔父の証言からは明らかではないため,被告人甲の供述に基づき,被告人甲は,判示の場所で合計65万円をまとめて受領したと認定した。 第4 。なお,令和元年10月13日の金銭の受領場所については,己の叔父の証言からは明らかではないため,被告人甲の供述に基づき,被告人甲は,判示の場所で合計65万円をまとめて受領したと認定した。 第4 Cに対する恐喝(第4の事実)について 1 争点被告人甲の弁護人は,第4の事実について,被告人甲は,Cから現金を受領したが,Cが戊から結婚詐欺により騙し取った金銭の返済として己の代わりに受領したもので,脅し取ったものではなく,金額も150万円にとどまる旨を主張している。 2 C証言の信用性についてCは,第4の被害状況について,令和元年9月3日に,戊の妻を名乗る女性から電話が掛かってきて,Cが結婚詐欺をしたなどと身に覚えがないことを言われ,過去の同じような金銭トラブルと同様,今回も被告人甲の仕業と思いながらも,被告人甲に電話を掛けて状況を伝えたところ,被告人甲に相手に電話を掛けて交渉してもらうことになったこと,被告人甲からは,判示のとおり,相手の男性がCを結婚詐欺で訴えようとしており,警察に行くとCも逮捕される,Cが過去に風俗でアルバイトしていたことがCの夫や周りに知られてしまうなどと脅されて,150万円を支払うよう言われるとともに,暴力団員である兄貴(丁)の口利きで弁護士特約に入るために50万円を支払うようにも言われたこと,これを聞いたCは,金銭を支払わなければ,暴力を受けるかもしれない,過去に風俗で働いていたことを周りにばらされたり警察に捕まったりするかもしれないと考え,被告人甲に200万円を支払うことにしたことを証言している。 - 16 -そこでCの証言の信用性を検討すると,そもそもCが風俗店に勤めていたなどという知られたくない過去を明るみに出してまで,嘘の話をしているとは考え難い。被告人甲の弁護人は,Cが証言する - 16 -そこでCの証言の信用性を検討すると,そもそもCが風俗店に勤めていたなどという知られたくない過去を明るみに出してまで,嘘の話をしているとは考え難い。被告人甲の弁護人は,Cが証言するような行為は脅迫行為とはいえず,Cも被告人甲のことを怖がっていなかったなどと主張しているが,Cが過去に風俗店で勤めていたことを人に知られたくないと考えるのは当然であるし,弁護士特約の話も,背後に暴力団関係者の存在をちらつかせていることからすれば,Cを畏怖させるのに十分な内容であったといえる。 また,Cが交付した金額についても,Cは,妹が定期預金を解約して準備した200万円を借りて,帯付きのまま渡したことや,弁護士特約の費用として被告人甲に50万円を渡すのに先立ち,妹から勧められて被告人甲に弁護士の名刺を渡すよう求めたことなどを具体的に話している。そして,そもそもCが150万円しか払っていないのに,200万円支払ったと話す理由もないことも考えれば,Cの証言の信用性は高いといえる。 3 被告人甲の弁解についてこれに対し,被告人甲は,法廷で,「Cの行った結婚詐欺について,己との間に入って解決し,己の代わりに150万円を受け取ったが,Cを脅したことはない。弁護士の偽造の名刺は,Cに要求されて被告人乙が作ったものであり,弁護士特約の代金としてCから50万円を受け取ったこともない。」などと述べている。しかし,戊が結婚詐欺の被害に遭って被告人甲がそのトラブルを解決したなどということ自体およそ信じられるものではないし,弁護士特約についても,そのような話がなかったのにわざわざ名刺を偽造してまで準備する必要があったとは考え難い。被告人甲の弁解は,罪を軽くするための嘘の弁解と考えざるを得ないのであり,信用できないといえる。 4 結論以上によれば,被告 ったのにわざわざ名刺を偽造してまで準備する必要があったとは考え難い。被告人甲の弁解は,罪を軽くするための嘘の弁解と考えざるを得ないのであり,信用できないといえる。 4 結論以上によれば,被告人甲には,第4のとおり,Cに対する200万円の恐喝罪が成立する。 - 17 -(死体遺棄の点について無罪とした理由) 1 本件死体遺棄の公訴事実(令和元年11月19日付け訴因変更請求書による訴因変更後の同月8日付け起訴状記載の公訴事実)の要旨は,「被告人両名は,丁らと共謀の上,令和元年10月20日午前5時8分頃から同日午前6時14分頃までの間,己の死体を自動車の後部座席に積載した状態で福岡市a区○w○x丁目○y番○z等の駐車場「○戊」から福岡県太宰府市z○a丁目○A番地○Bのインターネットカフェ「○己」駐車場に至るまで同車を走行させて同死体を運搬し,もって死体を遺棄した。」というものである。 上記公訴事実に関し,検察官は,被告人両名らの行為は,同死体の発覚を困難にする隠匿行為である旨を主張するのに対し,被告人両名の弁護人は,検察官が主張する外形的な事実関係は争わないとしつつ,被告人両名らの行為は遺棄に該当しない旨を主張している。 2 そこで検討すると,証拠によれば,被告人甲は,令和元年10月20日,○甲が経営するバーにおいて,被告人乙から,車の後部座席で己が息をしていないなどという連絡を受け,○甲と共に,福岡市a区内の駐車場に行って被告人乙が運転する自動車に乗車したこと,その後,被告人両名らは,1時間余りにわたって,同所から福岡県太宰府市のインターネットカフェに至るまで,己の遺体を後部座席に乗せたままの状態で同車を走行させ,同遺体を運搬したことが認められる。 3 なるほど,己の遺体を運搬していた自動車は,後部 所から福岡県太宰府市のインターネットカフェに至るまで,己の遺体を後部座席に乗せたままの状態で同車を走行させ,同遺体を運搬したことが認められる。 3 なるほど,己の遺体を運搬していた自動車は,後部座席の窓がスモークガラスとなっており,結果として,己の遺体が発見されにくい状態のまま運搬されていたことは否定できない。しかし,己の遺体がそのような状態に置かれたのは,たまたま己が同車の後部座席に乗車した状態で亡くなったためであり,被告人両名らが,己の遺体を動かしたり上から物を被せたりするなど,遺体を隠すための積極的な行為を行ったわけではない。また,○甲が録音した内容によれば,被告人両名らは,意図的に防犯カメラにより撮影されることを避けて移動していたことが認められるが,仮に防犯カメラのある場所を移動したとしても,車外から己の遺- 18 -体の様子はほとんど見えなかったと考えられ,防犯カメラを避けて移動したことで,己の遺体を隠す効果が高まったわけではないといえる。 被告人両名らは,己の遺体を乗せた自動車を走行させながら,半ば混乱した状態で,己との関係性や己の遺体の傷が出来た理由等について口裏合わせをするための相談をしたが,遺体の運搬を始めてから1時間余りが経過した段階で,自ら通報している。この間,被告人両名らは,己の遺体を運搬し始めてから間もない段階で救急車を呼ぶなどという話をしている(反訳書6頁)し,その後に,被告人甲が丁に電話を掛けて相談した際も,丁が己の遺体を埋めることを提案したのに対し,被告人甲はそれを拒否している(同20,21頁)。これらからすると,被告人両名らは,当初からいずれ通報をし,己の遺体が発見されることは前提として行動していたのであり,被告人両名らが己の遺体を後部座席に載せたまま自動車で移動したのは,己の遺体を隠すため からすると,被告人両名らは,当初からいずれ通報をし,己の遺体が発見されることは前提として行動していたのであり,被告人両名らが己の遺体を後部座席に載せたまま自動車で移動したのは,己の遺体を隠すためというより,己に対する犯罪行為の責任を免れるための口裏合わせを遂げるまでの間時間稼ぎをしたものにすぎないと理解できる。 このように,被告人両名が,己に激しい暴力を加えて亡くならせたにもかかわらず,その死を悼む様子も全くないまま,自分たちの保身のための行動に終始したことは,道義上到底許すことができないが,そうであるからといって,その間,己の遺体を運搬したことを遺体の隠匿行為と見るのは無理がある。 4 以上によれば,被告人両名らの行為は,死体遺棄罪にいう遺棄には当たらない。 したがって,本件死体遺棄の公訴事実については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人両名に対し無罪の言渡しをすることとする。 (確定裁判) 被告人乙関係 1 事実平成28年8月9日福岡地方裁判所久留米支部宣告有印公文書変造,同行使,電磁的公正証書原本不実記録,同供用,有印公文書偽造,同行使罪により懲役2年6月(4年間保護観察付き執行猶予)- 19 -平成28年8月24日確定 2 証拠前科調書(乙53)(量刑の理由)1(1) 被告人両名の刑を決める上で中心となる傷害致死,監禁の犯行(第1,第2)を見ると,被告人両名は,己に対し,約1か月間という長期間にわたり,判示のとおり,日常的,継続的に,バタフライナイフを落として刺す,木刀で臀部等を殴打するなどの激しい暴行を繰り返し,己が衰弱していく中でなおも暴行を加えて己を死に至らしめた。己は,家族から引き離されて孤立させられ,衣服や入浴の機会も満足に与えられないなど劣悪な環境の中で監禁され 打するなどの激しい暴行を繰り返し,己が衰弱していく中でなおも暴行を加えて己を死に至らしめた。己は,家族から引き離されて孤立させられ,衣服や入浴の機会も満足に与えられないなど劣悪な環境の中で監禁され,高カロリーの食事を強制されて無理やりに太らされるといった不本意な行動を強いられてその行動を支配され,人としての尊厳を踏みにじられた末に生命を奪われており,この間に己の感じた苦痛や無念さは計り知れないといえる。 犯行の動機や経緯を見ても,被告人両名は,己を服従させて金銭を搾取するという私利私欲の目的のために犯行に及んだものであるが,事実認定の補足説明に記載したとおり,己に対する優越感から暴行や虐待行為を楽しんでいた様子も見受けられる。身勝手極まりない犯行の動機や経緯に酌むべき点は全く見出せない。 被告人両名の役割を見ると,被告人甲は,己から金銭を搾取し,家族から引き離すなど,己を監禁して日常的に暴行や虐待行為を加える状況やきっかけを作るとともに,バタフライナイフを落として刺すといった残虐な暴行にも及ぶなど,主導的,中心的な役割を果たした。また,被告人乙も,被告人甲の意を汲み,連日のように己が亡くなる直接の原因となった下半身への激しい暴行を行った。被告人甲に誘発された面はあるにせよ,被告人乙が,被告人甲に指示されるまま仕方なく犯行に及んでいたとは考えられず,己の死亡の結果に対し負うべき責任は大変重いというべきである。 - 20 -(2) 次に,恐喝(第3ないし第8)及び恐喝未遂(第9)の犯行を見ると,被告人甲は,被告人乙と共謀して行ったAに対する恐喝だけでなく,己,戊,B,Cと次々と犯行を重ねており,その被害額は合計489万5000円に及んでいる。被告人甲には,被害者らから少しでも多くの金を搾り取ろうとする強い利欲目的と 行ったAに対する恐喝だけでなく,己,戊,B,Cと次々と犯行を重ねており,その被害額は合計489万5000円に及んでいる。被告人甲には,被害者らから少しでも多くの金を搾り取ろうとする強い利欲目的と恐喝行為の常習性が認められ,同種の恐喝事件の中でも相当に悪質な犯行といえる。また,被告人乙について見ても,Aに対する恐喝は第5の被害額は5000円と少額であるが,部分判決に記載したとおり特に第6の犯行では中心的な役割を果たしたから,被告人乙の責任も軽視はできない。 2 以上のような犯罪事実に関する事情を中心に据えた上で,刑の公平性の観点から,同種事案(凶器を用いた共犯による傷害致死1件の事案)の量刑傾向に照らして検討すると,本件は,同種事案の中でも最も重い部類に属する事案又はこれをやや超える程度の重さの事案ということができる。いずれの被告人についても相当長期間の実刑をもって臨むことはまことにやむを得ないといえ,特に,被告人甲については,上記のとおり悪質な恐喝事件が多数併合されていることを十分に考慮した刑とする必要がある。 3 その上で,被告人に対する具体的な刑を定めるに当たって,上記の事情に加え,犯情以外の点を見ると,被告人両名は,第1,第2の犯行後に己が亡くなったことに気付いた後も,その死を悼む様子も全くないまま,罪証隠滅のための口裏合わせの相談を行うなど,自分たちの保身に終始したことは,犯行後の情状として被告人両名の刑をそれなりに重くする方向で考慮すべきである。これに加えて,被告人両名が,法廷で,互いに己を亡くならせた責任を相手になすりつけるような虚偽の弁解に終始しており,反省の態度が見受けられないことや,被告人甲について,古いものではあるが,恐喝,監禁致傷の懲役前科があること,被告人乙については,第5の犯行は,確定裁判前の余罪であり, な虚偽の弁解に終始しており,反省の態度が見受けられないことや,被告人甲について,古いものではあるが,恐喝,監禁致傷の懲役前科があること,被告人乙については,第5の犯行は,確定裁判前の余罪であり,同時に裁判がされた場合と比べて不公平にならないようにする必要がある一方で,第1,第2,第6の犯行は,同確定裁判による保護観察付き執行猶予中の犯行であることなど,被告人- 21 -両名の刑を重くするべき事情が認められる。そこで,これらの事情も考慮し,主文のとおり量刑した。 (求刑:被告人甲につき懲役23年,被告人乙につき,判示第1,第2,第6の罪について懲役16年,判示第5の罪について懲役1年)令和3年3月10日福岡地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官岡 﨑 忠之 裁判官 𠮷 野内庸子 裁判官平岩彩夏

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