平成25(行コ)81 障害者自立支援法に基づく介護給付費追加的併合請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成23年(行ウ)第150号,同第313号)

裁判年月日・裁判所
平成26年1月16日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文7,549 文字)

-1-平成26年1月16日判決言渡平成25年(行コ)第81号障害者自立支援法に基づく介護給付費追加的併合請求控訴事件 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,73万4812円及びこれに対する平成23年1月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人が控訴人に対してした障害者自立支援法に基づく平成22年11月分及び同年12月分の介護給付費支給申請を棄却した処分を取り消す。 4 訴訟費用は,一,二審とも被控訴人の負担とする。 5 第2項について仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,障害者自立支援法(平成23年法律第37号及び平成22年法律第71号による改正前のもの,以下同じ。)に基づき,被控訴人から支給量を1月当たり744時間(1日当たり24時間),利用者負担上限月額を0円とする重度訪問介護の介護給付費支給決定を受けた後,大腸イレウス等の治療のために入院していた期間中にも1日24時間の重度訪問介護サービスを受けた控訴人が,被控訴人から入院期間中は1日当たり4時間分しか介護給付費が支給されず,1日当たり4時間分を超える部分の介護利用料73万4812円を重度訪問介護事業所に支払ったとして,被控訴人に対し,主位的に,同法29条1項に基づき,同額の介護給付費の支払を求めると共に,被控訴人が控訴人による上記入院期間中の1日当たり4時間分を超える部分の介護給付費の支-2-給申請を棄却する処分をしたと主張しているため,予備的に,その棄却処分の取消しを求めている事案である。 2 原審は による上記入院期間中の1日当たり4時間分を超える部分の介護給付費の支-2-給申請を棄却する処分をしたと主張しているため,予備的に,その棄却処分の取消しを求めている事案である。 2 原審は,障害者自立支援法5条3項の「重度訪問介護」が「居宅における」便宜及び外出時における移動中の介護を総合的に供与するものであることはその文言上明らかであって,同条項を受けて同法施行規則1条の3が定める「便宜」,すなわち入浴,排せつ及び食事等の介護,調理,洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助は,いずれも障害者に対して,その「居宅における」便宜を指すと解するほかなく,病院は「居宅」に該当しないから,同法は,支給決定障害者が入院中に重度訪問介護を受けることを予定していないとして,主位的請求を棄却すると共に,予備的請求につき,介護給付費の支払のために市町村等による支払決定は不要であり,控訴人は支払決定がなくても同法29条1項に基づき介護給付費の支給を請求できるから,被控訴人主張の棄却処分がなされたことを前提とする予備的請求に係る訴えは不適法であるとして,これを却下した。そこで,これを不服とする控訴人が上記裁判を求めて控訴したものである。 3 関係法令の定め,争いのない事実等,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正するほか,原判決の「事実及び理由」第2の1ないし4に摘示されたとおりであるからこれを引用する(以下,原判決を引用する場合は,「原告」を「控訴人」と,「被告」を「被控訴人」と,「別紙」を「原判決別紙」と,それぞれ読み替える。)。 (原判決の補正)(1) 原判決3頁3行目の「744時間」の次に「(24時間×31日)」を加える。 (2) 原判決4頁13行目末尾に次のと 原判決別紙」と,それぞれ読み替える。)。 (原判決の補正)(1) 原判決3頁3行目の「744時間」の次に「(24時間×31日)」を加える。 (2) 原判決4頁13行目末尾に次のとおり加える。 「その内容は,障害者自立支援法に基づく重度訪問介護は,同法5条3項により,重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者につき,居宅-3-における入浴,排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜及び外出時における移動中の介護を総合的に供与することを指すもので,入院中の介護については,同法に基づく介護給付費の支給を行わないが,入院中にコミュニケーション支援が必要であると担当医師が認めた者に対しては,医療機関の承諾の上で,緊急避難的な対応として,診療時等におけるコミュニケーション支援に限定し,例外的に1日4時間を上限として,介護給付費を支給するというものであった。」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,障害者自立支援法5条3項の規定する「重度訪問介護」には支給決定障害者が病院に入院中に受けた介護は含まれず,同法に基づく介護給付費支給の対象とはならないと解するのが相当であるから,控訴人の主位的請求は棄却すべきであり,また,同法は,支給決定とは別に,被控訴人が主張しているような介護給付費の支払決定という処分を前提とするものではなく,控訴人が同法に基づいて支給を求めた入院期間中の1日当たり4時間を超える部分の介護給付費について,被控訴人から棄却処分という行政処分がなされたものと観念することはできないから,控訴人の予備的請求に係る訴えは不適法であり却下すべきものと判断する。その理由は,次のとおり原判決を補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の1ないし3に記載のとおりであるからこれを引用する。 (原判決 的請求に係る訴えは不適法であり却下すべきものと判断する。その理由は,次のとおり原判決を補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の1ないし3に記載のとおりであるからこれを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決11頁6行目の「該当せず」の次に「(被控訴人が障害者自立支援法の施行に当たり制定した西東京市障害者自立支援法施行細則(平成18年3月31日規則第23号。乙49)にも,支払決定という文言はなく,これをうかがわせるような規定も見当たらない。)」を加える。 (2) 原判決12頁15行目の「明らかであって」を「明らかであり,支給決定障害者が「居宅」を相当期間離れている場合にも介護給付費を支給すること-4-を想定しているものではないと解されるから,」と改める。 (3) 原判決15頁14行目末尾に改行の上,次のとおり加える。 「 これに対し,控訴人は,健康保険法及び国民健康保険法等における看護と障害者自立支援法及び同法施行規則における介護は異なるものであり,後者は,控訴人のような支給決定障害者の障害に基づくハンディをカバーするために介護ヘルパーにより障害福祉上の介護を行うものであるのに対し,前者は,障害のない患者を想定しているものであって,患者になる前から障害のある者の介護を看護(療養生活上の世話)で代替することはできないから,重度訪問介護の便宜と療養生活上の世話が殆ど重なっているとの原審の認定は誤っていると主張している。 確かに,医療における看護と障害者福祉における介護とではその目的が異なり,また,証拠(甲30の4,乙54の3)によれば,障がい者総合福祉法(仮称)制定までの間において当面必要とされる対策について議論するために設けられた障がい者制度改革推進会議総合福祉部会において,病棟の看護力 拠(甲30の4,乙54の3)によれば,障がい者総合福祉法(仮称)制定までの間において当面必要とされる対策について議論するために設けられた障がい者制度改革推進会議総合福祉部会において,病棟の看護力では慣れていないこともあって人工呼吸器が外れて死亡する事故も起きており,普段の慣れた介護者が必要であることや,重度の全身性障害者の介護方法は一人一人特殊で,介護方法が異なり,日頃長時間介護に当たっているヘルパーでないと適切な介護ができず,そうでないと,支給決定障害者は十分な睡眠がとれず衰弱し,病気が悪化する可能性があることなどが報告されていることが認められる。 しかしながら,他方において,病気になる前には障害のない患者であっても,症状が重く,全く体を動かすこともできず,意思疎通が極めて困難な状態になる場合があることは,改めて指摘するまでもないところであり,健康保険法や国民健康保険法が適用される医療における看護においても,支給決定障害者に対する介護と同様の看護を要する患者も含まれていることは明らかである(もちろん,医療機関によっては障害を有する患者の-5-看護に不慣れなところがあることは否定できないが,そうだからといって,健康保険法や国民健康保険法が適用される医療が,制度として支給決定障害者の入院を全く想定していないというわけではない。)。そして,上記のとおり,障害者自立支援法施行規則1条の3が,同法5条3項に規定する厚生労働省令で定める便宜は,入浴,排せつ及び食事等の介護,調理,洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助とすると規定する一方,健康保険法63条1項5号及び国民健康保険法36条1項5号は,いずれも被保険者の疾病又は負傷に関して行う「療養の給付」として病院又は診療所への入院及び 他の生活全般にわたる援助とすると規定する一方,健康保険法63条1項5号及び国民健康保険法36条1項5号は,いずれも被保険者の疾病又は負傷に関して行う「療養の給付」として病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護を規定し,これを受けて「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(平成22年3月5日保医発0305第2号。平成24年3月5日保医発0305第2号により廃止)の別添2の第2の4(6)は,看護の実施は次の点に留意するとして,「①病状の観察,②病状の報告,③身体の清拭,食事,排泄等の世話等療養上の世話,④診察の介補,⑤与薬・注射・包帯交換等の治療の介助及び処置,⑥検温,血圧測定,検査検体の採取・測定,検査の介助,⑦患者,家族に対する療養上の指導等患者の病状に直接影響のある看護は,看護師又は看護師の指示を受けた准看護師が行うものである。看護補助者は,看護師長及び看護職員の指導の下に,原則として療養生活上の世話(食事,清潔,排泄,入浴,移動等)のほか,病室内の環境整備,ベッドメーキング,看護用品及び消耗品の整理整頓等の業務を行うこととする。」などと定めていたから,法令の文言上も,入浴,排せつ及び食事等の生活上の基本的な部分においては,健康保険法63条1項5号及び国民健康保険法36条1項5号に規定する看護と,障害者自立支援法5条3項及び同法施行規則1条の3に規定する便宜とが,そのほとんどにおいて重なっていると認定することは,不当であるとまではいえない。」-6-(4) 原判決16頁4行目冒頭から同頁6行目末尾を次のとおり改める。 「(6) もっとも,控訴人は,障害者自立支援法の重度訪問介護の入院中支給を認めている自治体は少なくなく,このことは,同法が入院中の支給決定障害者に対 から同頁6行目末尾を次のとおり改める。 「(6) もっとも,控訴人は,障害者自立支援法の重度訪問介護の入院中支給を認めている自治体は少なくなく,このことは,同法が入院中の支給決定障害者に対する重度訪問介護の給付を認めていることを裏付けるものであると主張しているので,この点について検討する。 まず,控訴人代理人が東京都内の自治体に対して行った照会結果(甲27)によれば,江戸川区,葛飾区,立川市,三鷹市,小金井市,小平市,国立市,清瀬市,多摩市及びあきる野市は,入院中の患者の病院内での重度訪問介護の給付を認めたことがあると回答していることが認められる。 しかし,他方で,これと異なる回答も少なくない。すなわち,府中市及び稲城市は一切これを認めていないと回答し,福生市も基本的には入院中の給付は認めていないと回答しており,台東区は,基準看護制度下でヘルパーの利用を介護給付費で認めることは難しいとして,入院中のヘルパー派遣委託料については診療報酬で評価するという医療保険制度での対応が本来望ましいと回答している。江東区及び品川区は,今まで認めた例はなく,コミュニケーション支援の必要があれば検討すると回答し,千代田区は,同区入院生活サポート事業という別個の制度を利用するものとし,コミュニケーション上の利用ということで検討することになると回答している。 また,新宿区,文京区,墨田区,大田区,世田谷区,中野区,杉並区,豊島区,北区,荒川区,板橋区,練馬区,足立区,八王子市,武蔵野市,調布市,東村山市,国分寺市,東大和市(1回2時間で週2回が目安)及び東久留米市(24時間を認めた事例はなし)は,コミュニケーション支援の必要がある場合に認めたことがあると回答しているが,上記のとおり,障害者自立支援法には,介 大和市(1回2時間で週2回が目安)及び東久留米市(24時間を認めた事例はなし)は,コミュニケーション支援の必要がある場合に認めたことがあると回答しているが,上記のとおり,障害者自立支援法には,介護給付費について市町村等が独自に-7-支給決定を行うことを認める規定はなく,同法による介護給付費は,同法29条3項及び4項並びにこれらの委任を受けた告示及び政令によって具体的に定まるのであって,他に市町村等による決定等によって初めて具体的な権利が発生するものではない反面,市町村等がその裁量に基づいて介護給付費を支給する場合や支給量を独自に定めることを認める規定もないから,これらの支援が重度訪問介護の一環であると解することはできないというべきである。ただし,同法は,介護給付である重度訪問介護とは別に,市町村は,厚生労働省令で定めるところにより,地域生活支援事業として,聴覚,言語機能,音声機能その他の障害のために意思疎通を図ることに支障がある障害者等その他の日常生活を営むのに支障がある障害者等につき,手話通訳等を行う者の派遣,日常生活上の便宜を図るための用具であって厚生労働大臣が定めるものの給付又は貸与その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業(いわゆるコミュニケーション支援)を行うものとすると定めており(同法77条1項2号),市町村において,重度訪問介護とは別に,独自に入院中の障害者に対してコミュニケーション支援事業を行うことが認められている。そうすると,新宿区等の自治体がコミュニケーション支援として行っている事業は,重度訪問介護ではなく,同法77条1項2号による事業であると認められるから,上記自治体が独自にそのような事業を行っているとしても,入院期間中は重度訪問介護の対象にならないとすることと矛盾するものではない。かえって,これ 同法77条1項2号による事業であると認められるから,上記自治体が独自にそのような事業を行っているとしても,入院期間中は重度訪問介護の対象にならないとすることと矛盾するものではない。かえって,これらの自治体が入院期間中の支給決定障害者について独自にコミュニケーション支援事業を行っていることは,入院期間中は重度訪問介護の対象にならないことを前提としていることをうかがわせるものである。 そして,このことは,被控訴人についても同様であって,被控訴人としては,入院中は医療機関が対応すべきものであることを前提としつつ,-8-実際問題として障害者を日常的に介助して慣れているヘルパーによる方が円滑に対応できる場合があることから,いわば「緊急避難的な対応」として,医療機関の承諾を得た場合に限り,1回の入院につき3か月を上限とし,1日当たり4時間まで,介護給付費の支給という形で,コミュニケーション支援のための給付を認めていたものである(なお,弁論の全趣旨によれば,被控訴人が東京都に確認したところ,入院中の支給決定障害者については,原則として医療機関が対応すべきであるが,区市町村が必要と認め,医療機関の承諾が得られた場合に限り,給付対象として差し支えないとの回答であったことが認められるが,その趣旨は,上記のようなものと理解されるべきである。)。 このように,入院中の支給決定障害者に対する給付についての各自治体の取扱いは,必ずしも一致しているわけではなく,また,上記部会において,障がい者総合福祉法(仮称)の制定までに早急に対応すべき課題として,重度訪問介護について入院時の利用を可能にすることが報告されているが,仮に,障害者自立支援法の立法当初から重度訪問介護について入院時の利用が可能であると解されていたのであれば,現時点で 課題として,重度訪問介護について入院時の利用を可能にすることが報告されているが,仮に,障害者自立支援法の立法当初から重度訪問介護について入院時の利用が可能であると解されていたのであれば,現時点でそのような議論をする必要はないはずであるから,そのことは,同法の立法に際して,支給決定障害者が病院に入院して重度訪問介護を受け,これに対して介護給付費を支給することが予定されていたわけではないことをうかがわせるものである。 (7) いずれにしても,障害者自立支援法における重度訪問介護の対象や内容をどのようなものとするかは,国民全体の制度に対する理解を前提とし,社会情勢や経済状況等をも勘案した上で,国会による広範な立法裁量に任されているところであるから,支給決定障害者が病院に入院している期間中については,病院による看護に委ねることとして,同法による重度訪問介護による支援の対象ではないとしても,そのことが直ちに-9-違法になることはないというべきである。もちろん,当裁判所においても,支給決定障害者が病気で入院した場合において,コミュニケーション支援が必要となる場合があることを否定するものではなく,それぞれの障害者の個別具体的な事情に応じて,各自治体においてコミュニケーション支援事業等を活用することにより,適切に対処されるべきであることは言うまでもない。」 2 結論よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第14民事部 裁判長裁判官須藤典明 裁判官小川浩 裁判官尾立美 判長 裁判官須藤典明 裁判官小川浩 裁判官尾立美子

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