主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2 麹町税務署長が控訴人に対して平成21年4月28日付けでした控訴人の平成16年4月1日から平成17年3月31日までの事業年度に係る法人税額等の更正処分(平成22年5月31日付け更正処分により一部取り消された後のもの)のうち,所得金額476億4370万3320円を超える部分及び還付されるべき税額111億5627万4066円を下回る部分を取り消す。 3 麹町税務署長が控訴人に対して平成18年5月31日付けでした過少申告加算税賦課決定処分(平成22年5月31日付け更正処分により一部取り消された後のもの)のうち88万5000円を超える部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,総合商社であり,A株式会社(以下「A」という。)が製造する自動車の完成品や組立部品の輸出及び海外での販売事業等を行っている控訴人が,タイ王国(以下「タイ」という。)において上記販売事業を行う関連会社であるタイ法人2社が発行した株式を額面価額で引き受け,これらを基に平成16年4月1日から平成17年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税の確定申告をしたのに対し,麹町税務署長が,上記各株式が法人税法施行令(平成18年政令第125号による改正前のもの。以下,同じ。)119条1項3号所定の有利発行の有価証券に当たり,その引受価額と時価との差額相当分の利益が生じていたなどとして,法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をし,さらに,上記更正処分における所得金額及び納付すべき税額を増額する再更正処分をしたことから,控訴人が,上記再 更正処 が生じていたなどとして,法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をし,さらに,上記更正処分における所得金額及び納付すべき税額を増額する再更正処分をしたことから,控訴人が,上記再 更正処分における所得金額598億6936万1520円のうち476億4370万3320円を超える部分(差額122億2565万8200円),還付されるべき税額96億9194万3601円のうち111億5627万4066円を下回る部分(差額14億6433万0465円)及び過少申告加算税賦課決定処分における1億6426万1000円のうち88万5000円を超える部分(差額1億6337万6000円)の取消しを求める事案である。 2 原判決は,上記再更正処分のうち,所得金額597億0562万9560円を超える部分,納付すべき税額マイナス75億1389万7661円を超える部分,過少申告加算税賦課決定処分のうち1億6377万円を超える部分の各取消請求を認め,その余の請求をいずれも棄却した。これを不服とする控訴人が控訴した。その後,麹町税務署長が,上記再更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分のうち原判決による取消しに係る部分を取り消す旨の更正処分及び変更決定処分を行ったことから,控訴人は,前記第1の2及び3記載のとおり,請求の減縮をした。 3 前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり付け加えるほか,原判決「事実及び理由」中の第2の1ないし5記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決書17頁22行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「(8) 麹町税務署長は,原判決の内容を踏まえ,平成22年5月31日,本件更正処分及び本件賦課決定処分につき,所得金額597億0562万9560円,納付すべき税額マ 改めて,次のとおり加える。 「(8) 麹町税務署長は,原判決の内容を踏まえ,平成22年5月31日,本件更正処分及び本件賦課決定処分につき,所得金額597億0562万9560円,納付すべき税額マイナス75億1389万7661円及び過少申告加算税額1億6377万円を超える部分を取り消す更正処分及び変更決定処分を行った(乙26)。」(2)ア 22頁8行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「 なお,法人税法22条2項が,「取引に係る収益の額」と規定し,「取 引による収益の額」としていないのは,取引自体から生ずる収益だけでなく,取引に関係した基因から生ずる収益を含む意味である。発行会社と新株主との間に経済的利益の移転がない場合であっても,本件のように,控訴人が本件2社株を取得する取引によって,控訴人に当該取引に関係した基因から収益が生じておれば,当該収益は控訴人の益金の額を構成する。 ウ法人税法22条4項は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算すべきことを注意的に規定したものにすぎない。控訴人による同項の規定をもって,「企業会計準拠原則」を採用したものとし,同条2項に含まれる「収益」の額を企業会計原則により解釈されるとの主張は,注意規定であるとするその前提においても,法規範である法人税法の解釈を企業会計原則が拘束するという点においても理由がない。」イ同頁11行目の「新株発行の場面においては,」の次に「有利発行を受ける引受人は,発行会社から利益を移転されるのではなく,旧株主から利益を移転されることになる。しかし,」を加える。 (3)ア 23頁2行目から同頁3行目にかけての「これによれば,新株発行の場面においては,」を「そして,新株発行の場面においては,旧株主と新株主との間には されることになる。しかし,」を加える。 (3)ア 23頁2行目から同頁3行目にかけての「これによれば,新株発行の場面においては,」を「そして,新株発行の場面においては,旧株主と新株主との間には基本的に何らの法律行為も法律関係もないのであるから,これについて「取引」の存在を認めるためには,当事者の予測可能性や租税法律主義における法的安定性等の観点から,」に改める。 イ同頁15行目の「例示であるから,」の次に「上記アのとおり,」を加える。 ウ同頁18行目の「また,」の次に,次のとおり加える。 「新株発行は,発行会社と引受人との間に「取引」を成立させるものであるが,法人税法22条2項は,資産の譲渡について「有償」及び「無償」の要件を使い分けながら,「無償」による資産の譲受けを規定しているとこ ろ,有利発行のように,適正な額より低い対価をもってする資産の譲受けは「有償」の資産の譲受けに当たると解されるから,適正な額より低い対価をもってしたことを捉えて「無償」と解することはできないのであって,同項に該当しないことも明らかである。そして,」(4)ア 24頁6行目の「これによれば,」を次のとおり改める。 「この規定は,企業会計における法人の利益及び租税会計における法人の所得は,共通の観念であることから,二重の手間を避ける意味で,企業会計に準拠すべきことを規定しているものであるから,単なる注意規定と見るべきものではない。そして,企業会計原則によれば,」イ同頁20行目の末尾の次に,次のとおり加える。 「なお,法人税法施行令119条1項3号の規定は,有利発行の要件として,時価を下回る価額で新株が発行されたことに加え,当該新株を引き受けた者が当該新株に表章された当該発行会社の資産価値を取得する一方,そ お,法人税法施行令119条1項3号の規定は,有利発行の要件として,時価を下回る価額で新株が発行されたことに加え,当該新株を引き受けた者が当該新株に表章された当該発行会社の資産価値を取得する一方,その発行会社の既存の株主は,保有する株式の下落による経済的損失(以下「希薄化損失」という。)を被ることを規定していないし,このような希薄化損失は,いまだ実現していない含み損であるにとどまり,そうである限り,法人税法の採用する実現原則に照らし,課税に当たって考慮されるべきものではない。控訴人の主張は,法人税法等を正解しないものである。」(5)ア 26頁4行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「 なお,控訴人は,法人税基本通達9-1-13(4)に準じての意味として,(a)「当該新株の発行価額の決定日」又は(b)「同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時」と読み替えられた日における価額を求めることになるのであり,しかも,上記(a)又は(b)のいずれを選択するかは納税者の選択に委ねられていると解すべき旨主張するが,当該新株の発行価額の決定日における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額とすることを意味するものにすぎず,控 訴人の主張する読替えは,理由がない。」イ同頁17行目の「(ア) 」の次に,「本件各株式の価額が有利な発行価額であるか否かの判定は,本件各株式の発行価額を決定した日の価額を基準とするものであるから,発行価額を決定した日を特定する必要があるところ,」を加える。 (6) 27頁3行目の「のみならず,」の次に「「決定日前1月間の平均株価等」の」を加える。 (7)ア 28頁1行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「ウその他の本件各株式 (6) 27頁3行目の「のみならず,」の次に「「決定日前1月間の平均株価等」の」を加える。 (7)ア 28頁1行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「ウその他の本件各株式の価額の算定において考慮すべき事項について(ア) 控訴人は,法人税法施行令119条1項3号に規定する「有利な発行価額」は,発行会社の1株当たりの純資産価額のみを基準として算定するのではなく,当該会社に係る諸般の事情を考慮して行われるべきであるとした上,B社の剰余金を株主である控訴人に配当する計画があったことなど8つの事情を挙げるが,いずれの事情も本件2社株の発行価額を決定するに当たり考慮すべきではないものであり,その主張は,失当である。 (イ) 控訴人は,時価を下回る価額で新株が発行された場合には,当該新株を引き受けた者が当該新株に表章された当該発行会社の資産価値を取得する一方,その発行会社の既存の株主は,保有する株式につき希薄化損失を被るとし,このような新株発行時における希薄化損失について,益金の算定に当たって考慮すべきことを主張するが,法人税法は実現原則を採用し,未実現の利益を課税の対象から除外しており(法人税法25条1項),含み益の増減は課税上考慮されないのであり,その主張は,理由がない。 なお,控訴人は,有利発行に該当するか否かの判断においても,希薄化損失を考慮すべきである旨主張するが,法人税基本通達2-3- 7に定める「当該有価証券の発行価額を決定した日の現況における当該発行法人の有価証券の価額」とは,発行価額を決定した日の現況における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額をいうのであるから,その算定に当たり,新株の発行により減少が見込まれる発行済みの株式の価値など考 発行価額を決定した日の現況における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額をいうのであるから,その算定に当たり,新株の発行により減少が見込まれる発行済みの株式の価値など考慮する必要はないというべきである。 (ウ) 本件各処分は,本件C株及び本件B株のいずれの引受けにおいても,本件B株の含み益を益金に計上しており,同一資産を二重に評価した違法があると主張するが,本件2社株は,本件子会社の増減資等の手続の過程において,本件C社株式については平成16年4月30日に,本件B社株式については同年12月20日に,控訴人がそれぞれ別個に引き受けたものであるから,本件2社株の引受けに係る益金については,それぞれ別個にその引受時の本件2社株の時価を基に算定すべきものである。 (エ) 控訴人は,本件2社株の時価を純資産価額方式で算出する場合,法人税額相当額を控除すべきであると主張する。しかし,財産評価基本通達における純資産価額の計算において,評価差額に対する法人税額等相当額を控除したところでその純資産価額を計算することとされているのは,相続財産が株式である場合に,株式の保有を通じて会社の資産を所有する場合と個人事業主がその事業用資産を直接所有する場合との評価の均衡を図る必要があることに基づくものである。そうすると,会社が継続的に事業活動を行うことを前提とする評価を行う場合に,法人税額等相当額を控除しないとすることには合理性がある。」イ同頁11行目の「判断される。」から同頁14行目の「するとしても,」までを次のとおり改める。 「判断されるだけでなく,当該株式の発行により,既存株主の株式の希薄化を生じ,既存株主に不利益を与えることも、有利発行の要件として必要であると解すべき しても,」までを次のとおり改める。 「判断されるだけでなく,当該株式の発行により,既存株主の株式の希薄化を生じ,既存株主に不利益を与えることも、有利発行の要件として必要であると解すべきである。 そして,上記発行価額決定日については,これを定義する法令は存在しないところ,株式の発行価額の決定過程を実質的に見ると,株主総会において,株主が自ら会社に必要な資金の額,市場の動向などを考慮して新株の発行価額を算出しているとの仮定はおよそ非現実的であり,実際には,取締役会等の当該会社の実質的意思決定機関が諸般の事情を考慮し専門的な判断に基づいて発行価額を算出し,それを株主総会に諮るという過程を経ている。このような実質にかんがみると,実質的な意思決定機関による決定の日と解すべきであり,本件各株式の発行は,控訴人グループのタイにおける事業に対する出資形態の変更の一環として行われたものであるから,グループを統括する控訴人の最終的な意思決定機関における決定日となるのであり,それは,控訴人の社長室会の決定日である平成15年10月7日となる。また,株式価額を算定する方式として,仮に1株当たりの純資産価額により株式を評価する方式(以下「純資産価額方式」という。)を採用することとして,発行価額決定日の時価を算出するとしても,発行会社の1株当たりの純資産価額のみを基準とすれば足りるものではなく,」ウ同頁17行目の「公正な発行価額についても」の次に,次のとおり加える。 「,発行価額決定前の当該会社の株式価額(時価)のみならず,株価の騰落習性,売買出来高の実績,会社の資産状況,収益状況,配当状況,発行済み株式数,新たに発行される株式数,株式市況の動向,これから予測される新株の消化可能性等の諸事情を総合し,旧株主の利益と会社が有利な 習性,売買出来高の実績,会社の資産状況,収益状況,配当状況,発行済み株式数,新たに発行される株式数,株式市況の動向,これから予測される新株の消化可能性等の諸事情を総合し,旧株主の利益と会社が有利な資本調達を実現するという利益との調和の中に求めながら,」エ同頁20行目の「タイの」から29頁2行目の「時価については,」ま でを削る。 (8)ア 29頁4行目の「当該新株の発行価額の決定日」を「当該事業年度終了の日」に改める。 イ同頁7行目の「参照),」を次のとおり改める。 「),これを合理的に読み替えた(a)「当該新株の発行価額の決定日」又は(b)「同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時」における価額を求めることになる。そして,上記(a)又は(b)のいずれを選択するかは納税者の選択に委ねられている。 また,上記(b)の方式により時価の算定をするについての資料については,タイのボラティリティ(株価等の価格変動性)等を考慮すれば,期末決算書の数字は,各四半期における経営管理資料の数字と大きく乖離する可能性があるのであるから,いまだ確定していない中間決算や四半期決算の経営管理資料の数字を用いるべきではなく,直近の期末確定決算書の数字に基づいて判断すべきものである。 そうすると,」ウ同頁14行目の「法人税基本通達による」の次に「上記選択を認める」を加える。 エ同頁17行目の「a 」の次に「確かに,被控訴人が主張するように,」を加える。 オ同頁19行目の「なるところ,」を次のとおり改める。 「なる。しかし,「有利な発行価額」に該当するか否かは,当該会社の収益状況,金融関係,配当状況,同業会社の株式価額との比較,売買実例等諸般の事情を斟酌して決定され ろ,」を次のとおり改める。 「なる。しかし,「有利な発行価額」に該当するか否かは,当該会社の収益状況,金融関係,配当状況,同業会社の株式価額との比較,売買実例等諸般の事情を斟酌して決定されるべきところ,」(9)ア 30頁6行目の「⑥」の次に「タイの市場ではボラティリティが極めて高く,」を加える。 イ同頁9行目から同頁10行目にかけての「要因になる。」の次に,次の とおり加える。 「また,⑧新株の発行価額が有利な発行価額に該当するか否かを判断する場面は,法人税法の採用する実現原則が適用される場面とは無関係であるところ,実際に,控訴人は,本件C社株の引受けにより控訴人の子会社であるD社の資産価値の減少が,本件B社株の引受けにより既に控訴人の子会社となっていたC社の資産価値の減少がそれぞれ生じ,控訴人はその損失を被っているのであるから,このような希薄化損失は,有利な発行価額に該当するか否かの判断においても当然考慮されるべきである。」(10) 31頁17行目の「そうすると,」を次のとおり改める。 「そして,有利な発行価額であるかどうかは,既存株主の経済的利益との関係で実質的に判断されるべきものであり,本件2社株の発行に係る一連の増減資手続を俯瞰して,実質的にC社及びB社の既存株主から控訴人に利益が移転したかどうか,換言すれば,既存株主に損失が生じているかどうかが検討されるべきところ,」(11)ア 32頁13行目の「%)」の次に「については,剰余金が既に特定人である控訴人に分配されることが予定されていたにもかかわらず,当該含み益」を加える。 イ同頁20行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「(ウ) 法人税額相当額を控除すべきこと株式 れていたにもかかわらず,当該含み益」を加える。 イ同頁20行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「(ウ) 法人税額相当額を控除すべきこと株式を純資産価額方式で算定する場合に,法人税額等相当額を控除するのは,資産を直接保有する場合と会社を通じて間接保有する場合との評価の均衡を図るという趣旨に基づくものであり,その趣旨は当該会社が営業活動を順調に行っており,現実に解散することを前提としている場合でなくても妥当する(最高裁判所平成17年11月8日判決・判タ1198号121頁〔以下「最高裁平成17年判決」という。〕,最高裁平成18年判決参照)から,このような法人税額等相 当額の控除は,通達上認められている相続税・贈与税の算定の場面に限定されるものではない。本件2社株の時価を純資産価額方式で算出する場合,法人税額相当額を控除すべきである。 ウ新株の発行価額が有利な発行価額であるかどうかは,上記のとおり、既存株主の経済的利益との関係で実質的に判断されるべきものであり,本件2社株の発行に係る一連の増減資手続を俯瞰して,実質的にC社及びB社の既存株主から控訴人に利益が移転したかどうか,換言すれば,既存株主に損失が生じているかどうかが検討されるべきところ,本件C社株の発行により同社の既存株主であるD社及びE社は,その保有するC社株につき損失を被るが,D社は,控訴人の100%子会社であり,E社もその全株式を控訴人に直接又は間接に保有されていること,B社株については,A及び三社友が既存株主であったが,一連の増減資手続の前後で保有する株式割合に変化がなく,B社の企業価値にも変化がなかったのであるから,既存株主から控訴人への利益の移転はなく,既存株主には損失が生じていないから,そもそも当 ったが,一連の増減資手続の前後で保有する株式割合に変化がなく,B社の企業価値にも変化がなかったのであるから,既存株主から控訴人への利益の移転はなく,既存株主には損失が生じていないから,そもそも当時の商法上も税法上も有利発行に当たらない。 また,このように本件2社株の発行に係る一連の増減資手続を俯瞰して,実質的にC社及びB社の既存株主から控訴人に実質的に利益が移転したかどうかにより判断すべきことは,経営判断の原則の観点からの帰結でもある。」第3 当裁判所の判断当裁判所は,麹町税務署長が控訴人に対して平成21年4月28日付けでした控訴人の本件事業年度に係る法人税額等の更正処分(平成22年5月31日付けでした更正処分により,所得金額は597億0562万9560円,納付すべき税額はマイナス75億1389万7661円となっている。),同税務署長が控訴人に対して平成18年5月31日付けでした過少申告加算税賦課決定処分(平 成22年5月31日付けでした更正処分により,金額は1億6377万円となっている。)は理由があり,控訴人の請求(減縮後のもの)は理由がないと判断する。 その理由は,次のとおり付け加えるほか,原判決「事実及び理由」中の第3の1ないし4記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)1(1) 原判決書36頁5行目の「しているところ,」の次に「同項の列挙する取引は単なる例示にすぎないと解すべきであるから,」を加える。 (2) 同頁11行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「 法人税法22条2項を限定列挙の規定と解した上で,形式的な文言解釈を試みる控訴人の上記主張は,採用することができない。」(3) 同頁19行目の冒頭から37頁4行目の末尾までを次のとおり改める。 「 法22条2項を限定列挙の規定と解した上で,形式的な文言解釈を試みる控訴人の上記主張は,採用することができない。」(3) 同頁19行目の冒頭から37頁4行目の末尾までを次のとおり改める。 「 しかし,本件のような新株の発行においては,そもそも控訴人による現金の払込みと,その金額を超える時価の新株の取得という「取引」が存在しているのであり,法人税法22条2項が,「取引に係る収益の額」と規定し,「取引による収益の額」としていないのは,取引自体から生ずる収益だけでなく,取引に関係した基因から生ずる収益を含む意味であるから,発行会社と新株主との間に経済的利益の移転がない場合であっても,有利発行により経済的利益を得ていれば,当該収益が益金を構成することになる。そうすると,控訴人が本件2社株を取得する取引によって,控訴人に対し当該取引に関係した基因から収益が生じていれば,当該収益は控訴人の益金の額を構成することになる。 なお,本件においては,控訴人が,その子会社等から新株を引き受けたものであるところ,控訴人の取得価額が株式の適正価額より低額であったことから,株式を引き受けた旧株主である控訴人と発行会社との間の取引に関係した基因により,控訴人について受贈益課税の対象となる利益が生じている か否かが問題となっているのに対し,最高裁平成18年判決の事案は,株式を引き受けていない旧株主に寄付金課税をする上で,当該旧株主と発行会社との関係においてではなく,当該旧株主と新株主との間の関係における資産価値の移転を問題とした事案であるから,両者の事案は異なっており,本件においても,株式を引き受けていない旧株主と発行会社との関係において取引を構成しなければならない必要は全くない。そうすると,本件のような受贈益課税と最高裁平成18年判決の事案のよ 異なっており,本件においても,株式を引き受けていない旧株主と発行会社との関係において取引を構成しなければならない必要は全くない。そうすると,本件のような受贈益課税と最高裁平成18年判決の事案のような寄付金課税とにより,益金を発生させる取引が異なることは当然であり,これが異なることを問題視する控訴人の主張は,理由がない。」 2 38頁5行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「 新株の発行が有利発行に当たるかどうかにつき,控訴人は,当該新株発行に係る発行価額が時価よりも低額であることだけでなく,当該新株発行により既存株主の株式の希薄化を生じ,既存株主に不利益を与えることもその要件となる旨主張するが,法人税法及び同法施行令の解釈上そのような要件を読み取ることはできないのであって,その主張は,採用することができない。 そこで,本件における本件2社株の発行価額が法人税法施行令119条1項3号にいう「有利な発行価額」に当たるかどうかについて検討することとし,まず,有価証券の価額の算出方法について見るに,」 3 39頁14行目の「ア」を「ア(ア)」に改める。 4(1) 40頁6行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「 なお,この点について,控訴人は,新株の発行価額が,法人税法施行令119条1項3号に規定する「有利な発行価額」に該当するか否かは,発行会社の1株当たりの純資産価額のみを基準として判断されるべきではなく,当該会社の収益状況,金融関係,配当状況,同業会社の株式価額との比較,売買実例等諸般の事情を考慮して決定されるべき旨主張するところ,なるほど,「有利な発行価額」に該当するか否かは,1株当たりの純資産価額のみを基 準とするのではなく,諸般の考慮すべき事情を参酌しつつ判断すべきものであるといえるが,「有 べき旨主張するところ,なるほど,「有利な発行価額」に該当するか否かは,1株当たりの純資産価額のみを基 準とするのではなく,諸般の考慮すべき事情を参酌しつつ判断すべきものであるといえるが,「有利な発行価額」に該当するか否かは,基本的には経済的利益に着目して判断されるべきものでありその最大の要素が1株当たりの純資産価額であるから,特段の事情のない限りは,法人税基本通達2-3-7(注)1の提示する当該株式の時価と発行価額との差額が当該株式の価額のおおむね10%相当額以上であるか否かによって判断することで足りるといえる。」(2) 同頁7行目の冒頭に「(イ)」を加える。 5(1) 41頁13行目の「前記アのとおり,」の次に「発行価額決定日における」を加える。 (2) 同頁19行目の「主張をするものではない。」を「主張をするものではないし,四半期決算書等の財務諸表の数字よりも,直近の期末確定決算書の数字の方が適切に実態を反映した合理的な資料であることを認めるに足りる証拠もない。」に改める。 6(1) 42頁2行目の「法人税基本通達9-1-13(4)」を「法人税基本通達2-3-9が準用する同9-1-13(4)」に改める。 (2) 同頁18行目の「決定日」の次に「又は当該新株の発行価額の決定日」を加える。 (3) 同頁20行目の「採用することができず,」の次に,次のとおり加える。 「かえって,前記のとおり,当該新株の発行価額の決定日における1株当たりの純資産価額を参酌すべきものである以上,端的に,発行価額の決定日に可及的に近接した日を基準日とする資料をその信頼性を吟味しながら用いることが合理的なものというべきであるところ,控訴人の主張するタイのボラティリティ等を考慮すれば,四半期決算資料を用いる方が合理性があるといえるの 日を基準日とする資料をその信頼性を吟味しながら用いることが合理的なものというべきであるところ,控訴人の主張するタイのボラティリティ等を考慮すれば,四半期決算資料を用いる方が合理性があるといえるのであるから,四半期決算資料を用いたことが上記通達に違反することはないといわなければならない。」 7(1) 45頁4行目の「ウ」を「エ」に改め,同頁3行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「ウ控訴人は,有利な発行価額であるかどうかは,既存株主の経済的利益との関係で実質的に判断されるべきものであり,本件2社株の発行に係る一連の増減資手続を俯瞰して,実質的にC社及びB社の既存株主から控訴人に利益が移転したかどうか,換言すれば,既存株主に損失が生じているかどうかが検討されるべきところ,本件では,既存株主から控訴人への利益の移転はなく,既存株主には損失が生じていないから,当時の商法上も税法上も有利発行に当たらない旨主張する。しかし,本件2社株の発行自体から控訴人が受ける利益と,控訴人の有する既存株式が本件2社株の発行により受ける損失を分けずに一体として考えることは,法人税法が実現原則を採用し,未実現の利益を課税対象から除外することにより,含み益の増減は課税上考慮されないとし(法人税法25条1項),資産の評価換えに伴う減額部分も損金の額に算入しないとすること(同法33条1項)との整合性に問題があると考えられること,また,法人格の異なるグループ法人の間で増減資取引が行われたとしても,法人税法上は,各取引ごとに所得の発生や帰属が判断されるものであるから,本件について控訴人及びそのグループ会社により行われた増減資手続を一連一体のものととらえた上で,控訴人や控訴人以外の既存株主の利益の有無を検討しなければならないとする根拠はなく,控訴 のであるから,本件について控訴人及びそのグループ会社により行われた増減資手続を一連一体のものととらえた上で,控訴人や控訴人以外の既存株主の利益の有無を検討しなければならないとする根拠はなく,控訴人の主張は立法政策としてはともかくとして,現行法令の解釈としては,採用することができない。そうすると,本件2社株の発行が有利発行に当たるとしても,益金の額の対象となるのは,控訴人及び控訴人の子会社を除いた第三者であるAや三社友の株式に係る損失部分に限られるとする控訴人の主張も理由がないことになる。 さらに,控訴人は,本件2社株の発行価額が,適正な評価手続に基づいて,かつ,第三者の評価を入手した上で決定された以上,課税処分に当た ってもその判断を尊重すべきであって,課税処分において、事後的な判断によりそれと異なる価額を付し,当該発行価額を有利な発行価額であるとして課税することは,経営判断の原則の観点から許されない旨主張する。 しかし,経営判断の原則は,役員が会社ないし株主等に対して委任関係に基づく善管注意義務違反に係る責任を負うかどうかを問題とするものであるところ,取締役が会社から免責を得ることと,会社が第三者から免責を得ることとは異なり,会社と第三者との間の法律関係を規律するものではないから,控訴人の主張は理由がない。」(2) 同頁5行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「 なお,本件2社株について,法人税基本通達2-3-7(注)1の提示する当該株式の時価と発行価額との差額が当該株式の価額のおおむね10%相当額以上であるか否かという基準により判断することを不合理とする特段の事情については,これを認めることはできないと考えるものであるが,この点については,後記(5)アにおいて改めて検討する。」 8 47頁12行 るか否かという基準により判断することを不合理とする特段の事情については,これを認めることはできないと考えるものであるが,この点については,後記(5)アにおいて改めて検討する。」 8 47頁12行目の末尾の次に,次のとおり加える。 「また,⑧新株の発行価額が有利な発行価額に該当するか否かを判断する場面は,法人税法の採用する実現原則が適用される場面とは無関係であるところ,実際に,控訴人は,本件2社株の引受けにより,D社等の子会社の資産価値の減少による損失を被っているのであるから,有利な発行価額に該当するか否かの判断においては,このような希薄化損失は当然考慮されるべきものであるとも主張する。」 9 49頁4行目の末尾に「また,前記③の主張も,本件2社株の時価とは関係のない事情である。」を加える。 10(1) 51頁6行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「(カ) 前記⑧の主張(希薄化損失)について本件2社株の発行価額の決定時点において,本件2社株を保有するD社 等の株式価額が下落することが見込まれ,さらには,D社等の株式を保有する控訴人にD社等の株式に係る希薄化損失が生じる見込みであるとしても,本件2社株の発行価額が有利な発行価額であるか否かは,新たに発行される新株自体について検討されるべきものであり,当該新株の発行により減少が見込まれる既に発行済みの株式の価値を考慮する必要はないものである。 なお,控訴人は,本件2社株の発行が法人税法施行令119条1項3号括弧書にいう株主割当に実質的に当たるとするが,本件2社株の発行が株主割当でないことは明らかであり,理由がない。」(2) 同頁13行目の「法人税法は,」の次に,次のとおり加える。 「既に述べたとおり,保有資産については,内在する含み が,本件2社株の発行が株主割当でないことは明らかであり,理由がない。」(2) 同頁13行目の「法人税法は,」の次に,次のとおり加える。 「既に述べたとおり,保有資産については,内在する含み益の増減は課税上考慮しないこととし,それが譲渡される時点において,当該資産に発生していたそれまでの含み益又は含み損が一括して清算されて,はじめて利益又は損失の実現が生じ,その時点において,利益が実現すれば課税される関係が生じるものと取り扱うこととして,」 11 52頁16行目の冒頭に「エ」を加える。 12(1) 53頁3行目の「そして,」から同頁6行目の「14(3)),」までを次のとおり改める。 「むしろ,このような相続税の分野における株式評価の取扱いと,会社が継続的に事業活動を行うことを前提とする法人税課税における株式評価の取扱いとが異なることは,合理的な措置として是認できるのであって,このような考え方に基づいて,平成12年課法2-7による改正により,法人税課税における1株当たりの純資産価額の評価に当たり法人税額等相当額を控除しないこととされるに至ったものである(法人税基本通達9-1-14(3))。このような法人課税における株式評価において,法人税額等相当額を控除しないこととされるに至った趣旨及び経緯に加え,」 (2) 同頁9行目の「でき,」を「できることを考慮すると,」に改め,同頁10行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「 また,法人税額等相当額を控除しないことを定める法人税基本通達9-1-14(3)は,同通達が定められた平成12年以前の事案に関する最高裁平成17年判決及び同平成18年判決にも抵触する点はないというべきである。」 13 61頁19行目の「○○」を「○○」に改める。 第4 結論以上 が定められた平成12年以前の事案に関する最高裁平成17年判決及び同平成18年判決にも抵触する点はないというべきである。」 13 61頁19行目の「○○」を「○○」に改める。 第4 結論以上によれば,控訴人の本件請求(減縮後のもの)を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官岡久幸治 裁判官三代川俊一郎 裁判官佐 々 木宗啓
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