令和5(ワ)1754 地位確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年12月20日 さいたま地方裁判所 棄却
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判決文本文16,332 文字)

令和6年12月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第1754号地位確認等請求事件口頭弁論終結日令和6年9月17日判決 主文 1 本件訴えのうち、原告が、被告に対し、令和5年4月1日以降、労働契約上の権利としてチームリーダーの地位にあることの確認を求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告が、被告に対し、令和5年4月1日以降、労働契約上の権利としてチームリーダーの地位にあることを確認する。 2 被告は、原告に対し、令和5年4月から本判決確定日まで、毎月20日限 り、28万4800円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告に対し、220万円及びこれに対する令和5年4月1日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、原告が、被告との間で令和4年4月1日から1年間チームリーダーとして有期労働契約(以下「本件労働契約」という。)を締結していたところ、令和5年4月1日以降も労働契約法19条により本件労働契約が更新されており、被告が労働組合員である原告を上級研究員として処遇することは労働組合法7条1号及び3号所定の不当労働行為に当たるなどと主張して、被告に対 し、労働契約に基づき次の①及び②の請求を、不法行為に基づき③の請求をする事案である。 ① 令和5年4月1日以降労働契約上の権利としてチームリーダーの地位にあることの確認請求② 令和5年4月1日から本判決確定日まで毎月20日限り本件労働契約と新 たな労 事案である。 ① 令和5年4月1日以降労働契約上の権利としてチームリーダーの地位にあることの確認請求② 令和5年4月1日から本判決確定日まで毎月20日限り本件労働契約と新 たな労働契約との賃金差額28万4800円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払請求③ 損害賠償金220万円(研究活動の不利益200万円と弁護士費用20万円の合計)及びこれに対する不法行為日(令和5年4月1日)から支払済み まで民法所定の年3%の遅延損害金の支払請求 1 前提事実(争いのない事実以外は、各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認める。)⑴ 当事者ア被告(甲22、23) 被告は、平成15年に独立行政法人として設立され、平成27年4月に国立研究開発法人と名称変更された、物理学、工学等の研究を進める自然科学の総合研究所である。被告は、埼玉県和光市に本部を置くほか、全国各地に研究拠点を設け、各拠点に設けられた研究センター内で研究業務を行っている。被告は、平成23年4月、A研究センターを開設し、平成30年4月、 これを廃止してB研究センター(以下「本件研究センター」という。)を開設した。 イ原告(甲1、66)原告(昭和35年3月生)は、北海道大学の助手・助教、大阪大学特任教授等を経て、平成23年4月1日、被告との間で、任期制職員として労働契 約を締結し、以後、被告との間で複数回労働契約の更新をした者である。原 告は、本件労働契約(令和4年4月1日から1年間)において、被告が設置する本件研究センターのC研究チーム(以下「本件研究チーム」という。)のチームリーダーとして採用されていた。また、原告は、令和4年1月以降、F労働組合(以下「 月1日から1年間)において、被告が設置する本件研究センターのC研究チーム(以下「本件研究チーム」という。)のチームリーダーとして採用されていた。また、原告は、令和4年1月以降、F労働組合(以下「本件組合」という。)の組合員である。 ⑵ 原告の労働契約 ア原告は、平成23年4月1日、被告との間で、A研究センター・D研究チームのチームリーダーとして、年俸月額85万4000円(当月末日締め、当月20日払い)、契約期間1年間の労働契約を締結し、その後、平成24年4月1日以降令和3年4月1日までの10回、賃金額や所属研究センター名やチーム名等の変動があるものの、いずれも、チームリーダーの職名、1年 間の契約期間で労働契約を更新した。(乙6の1~11)イ原告は、令和4年3月31日、被告との間で、本件研究センター・本件研究チームのチームリーダーとして、年俸月額100万2000円(当月末日締め、当月20日払い)、契約期間1年間の本件労働契約を締結した(11回目の更新)。(乙6の12) ウ原告がチームリーダーを務めていた本件研究チームは、令和5年3月末で消滅した。 エ原告は、令和5年3月31日、被告との間で、本件研究センター・E研究チームの上級研究員として、年俸月額71万7200円(イとの差額月額28万4800円)及び裁量労働手当8万8920円の合計80万6120円 (当月末日締め、当月20日払い)、契約期間2年間(令和7年3月31日まで)で、被告の理事長特例により新たな労働契約を締結した。(乙13)⑶ 紛争に至る経緯ア原告は、令和4年4月の本件労働契約締結に際し、被告が令和5年4月1日以降の雇用契約を締結しないと明示したことを受けて、令和4年7月、被 告の本件労働契約更新 争に至る経緯ア原告は、令和4年4月の本件労働契約締結に際し、被告が令和5年4月1日以降の雇用契約を締結しないと明示したことを受けて、令和4年7月、被 告の本件労働契約更新拒絶が違法無効であると主張して、さいたま地方裁判所に地位確認等請求訴訟(以下「第一次訴訟」という。)を提起した。 イ原告は、令和5年3月31日に新たな労働契約を締結したことを踏まえ、同年8月1日、本件訴訟を提起し、第一次訴訟を取り下げた。 2 争点及び争点に関する当事者の主張 ⑴ チームリーダーの地位にあることの確認の利益[原告の主張]被告の各種規程上の位置付け(各規程によりチームリーダーとしての年俸や決裁権限などが定められ、チームリーダーと上級研究員とでは、規程上の位置付けが大きく異なる。)や年俸額減少の事実からすると、原告のチームリーダー としての地位を認めるべき確認の利益が認められる。 理事長特例に基づく令和5年4月1日以降の労働契約の締結は、原告が、研究継続のため、やむなく次善の希望として回答したものであり、自由な意思に基づくものではなく、令和4年4月1日以降の労働契約上の権利やチームリーダーとしての地位を放棄したことにはならず、これらの確認の利益は失われな い。 [被告の主張]被告における「チームリーダー」とは、「資格」ではなく「職名」(ポスト)であるところ、研究チームの存在しないところには存在し得ないポストであり、また、被告における研究チームは、時限的に立ち上げられるものである。 そして、原告がチームリーダーを務めていた本件研究チームは、現在、研究チームとして存在しない。研究チームと切り離した「チームリーダー」の職名は存在しない以上、一般的概念としてのチームリーダーの「ポスト して、原告がチームリーダーを務めていた本件研究チームは、現在、研究チームとして存在しない。研究チームと切り離した「チームリーダー」の職名は存在しない以上、一般的概念としてのチームリーダーの「ポスト」にあることについての確認の利益は認められない。 仮に、原告の主張が本件研究チームのチームリーダーとして就労することが できる法律上の地位を求める趣旨なのであれば、労働者には特定の部署で就労 する権利ないし法律上の地位は認められないから、確認の利益を欠く不適法なものである。 ⑵ 労働契約更新申込みの拒絶[原告の主張]原告は、従前と同一の労働条件(チームリーダーの地位、月額100万円の 給与)による有期労働契約の更新を申し込んだのに対し、被告は、原告のかかる希望を無視し、あくまで次善の希望として回答したにすぎない理事長特例による契約の締結を求めてきたのであるから、かかる被告の対応は、契約更新の申込みに対する拒絶である。 [被告の主張] 原告被告間では、令和5年4月1日以降、理事長特例による新たな労働契約(乙13)が有効に成立しており、接続した労働契約の再締結がなされているから、被告が原告からの更新申込みを拒絶した事実が存在しない。 ⑶ 労働契約更新の期待の合理性[原告の主張] 以下の①ないし③の事情に照らせば、原告において、労働契約更新の期待の合理性が認められ、被告が主張する④ないし⑦の事情は、労働契約更新の期待の合理性を否定する事情とはならない。 ① 原告は、被告との間で、11年間にわたり、10回も有期労働契約の更新を繰り返し、この間、チームリーダーとして同一の研究に従事してきた。 ② 原告の研究は、平成25年4月に策定された中長期計画に明記され、この時点で原告の雇 わたり、10回も有期労働契約の更新を繰り返し、この間、チームリーダーとして同一の研究に従事してきた。 ② 原告の研究は、平成25年4月に策定された中長期計画に明記され、この時点で原告の雇用継続に対する合理的期待は発生し、平成30年4月に策定された令和7年3月末を終期とする現行の中長期計画にも位置付けられているから、原告の雇用継続に対する合理的期待は継続している。そして、原告の研究は継続しており、少なくとも、現行の中長期計画終了まで、原告の雇 用継続に対する合理的期待は認められる。 ③ 原告の研究には、令和4年度から令和6年度まで、科学研究費補助金の交付が決定済みである。 [被告の主張]原告が主張する①ないし③の事情は、労働契約更新の期待の合理性を認める事情とはならず、むしろ、以下の④ないし⑦の事情に照らせば、原告に労働契 約更新期待の合理性があったと認めるには足りない。 ④ 原告被告間では、令和5年3月31日までの労働契約とは全く別個の新たな労働契約が有効に成立している。 ⑤ 令和5年3月31日をもって、原告がチームリーダーを務める本件研究チーム自体が消滅し、本件研究チームという研究プロジェクトが終了すること に伴う雇止めである。 ⑥ 原告が、「任期は原則5年」、「評価により、6年目以降の契約の延長・更新の可能性があります。」と明記された公募に応募して、平成23年4月1日付で入職しており、入職当初から最長令和3年3月31日までという更新上限の定めが労働契約の内容となっており、その後も更新上限に関する合意が1 1回にわたり繰り返し行われ、従事業務確認書でも明確に確認されている。 ⑦ 本件研究チームが令和5年3月31日をもって終了することは周知の事実であり、被告においても、原告に対 関する合意が1 1回にわたり繰り返し行われ、従事業務確認書でも明確に確認されている。 ⑦ 本件研究チームが令和5年3月31日をもって終了することは周知の事実であり、被告においても、原告に対して同日以降の契約更新はないことを繰り返し伝えており、原告はこれを理解していた。 ⑷ 申込拒絶の客観的合理性・社会的相当性 [原告の主張]⑶で記載した事情に照らせば、申込拒絶の客観的合理性・社会的相当性は認められない。 [被告の主張]仮に労働契約の更新に合理的期待が認められることがあったとしても、そも そも、⑶で記載した事情に照らせば、被告による原告の労働契約の更新拒絶 が、客観的合理的理由を備えた社会通念上相当なものであることも明らかである。 ⑸ 不法行為(不当労働行為等)に基づく損害賠償請求[原告の主張]ア被告は、非組合員については理事長特例によりチームリーダーとして研究 室等を維持したまま雇用を継続しており、組合員である原告については何ら合理的理由もなく上級研究員として処遇している。これは、令和4年1月から本件組合の組合員である原告の正当な労働組合活動を理由とした不利益取扱いであり、本件組合の労働組合活動に対する支配介入であるから、労働組合法7条1号及び3号に違反する不当労働行為として違法であり、民法70 9条による不法行為にほかならない。原告は、理事長特例による労働契約について、異議をとどめて次善の策として承諾したにすぎず、この点が不法行為の違法性を阻却するものではない。 イ被告は、故意又は過失により、前記⑵ないし⑷のとおり、労働契約法19条に違反して雇止めを実施し、原告の職位を上級研究員として扱い、原告の 公正な契約更新手続を受ける権利を侵害したものである。 被告は、故意又は過失により、前記⑵ないし⑷のとおり、労働契約法19条に違反して雇止めを実施し、原告の職位を上級研究員として扱い、原告の 公正な契約更新手続を受ける権利を侵害したものである。 ウ原告が受けた研究活動上の不利益の損害は200万円を下らず、弁護士費用は20万円となり、損害額は合計220万円である。 [被告の主張]そもそも、原告は、雇止めが不当であるとして本件組合に加入しており、そ の時系列からして、雇止めが労働組合法7条1号及び3号に違反する不当労働行為となることはあり得ない。また、理事長特例による新たな労働契約が有効に成立しており、これらの事情にも照らせば不当労働行為とはなり得ない。 被告は、第一次訴訟の手続等を活用し、代理人を通じて解決策を模索し、その結果、原告との間で理事長特例による新たな労働契約を締結したのであり、か かる事実経過に照らせば、新たな労働契約締結が不当労働行為になりようがない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実(前記前提事実に加えて、後掲証拠及び弁論の全趣旨によって認められる事実) ⑴ チームリーダーの地位等(甲52ないし54、乙5、6の12、乙13)被告におけるチームリーダーは、時限的に設置される個々の研究チームの主宰者である。本件研究センターにおけるチームリーダーは、研究管理職等のうち部長に位置付けられ(決裁基準規程2条⑹、別表第1)、一定の決裁権限を有するほか、部長としての固定給(任期制職員等給与規程12条2項、別表3区 分2、任期制研究管理職等年俸運用細則3条⑵)に加え、変動給(同規程13条1項、同細則4条、別表2)の支給を受ける。これに対し、上級研究員は、研究チームの一員にすぎず研究管理職等ではなく、研究管理職等以外の者を対象とす 等年俸運用細則3条⑵)に加え、変動給(同規程13条1項、同細則4条、別表2)の支給を受ける。これに対し、上級研究員は、研究チームの一員にすぎず研究管理職等ではなく、研究管理職等以外の者を対象とする固定給(同規程12条1項)に加え、上記変動給の支給を受ける。 本件労働契約では、原告は本件研究チームの存在を前提としてチームリーダ ーとされ、原告の給与は研究管理職等のうち部長としての固定給月額及び変動給月額の合計100万2000円とされていた。これに対し、理事長特例による新たな労働契約では、原告は上級研究員とされ、原告の給与は研究管理職等以外の者としての固定給月額及び変動給月額の合計71万7200円とされた。 ⑵ 原告入職の経緯ア被告は、平成23年1月頃、新たにA研究センターを設置することから、同センターで研究する複数の研究チームのチームリーダー若干名と研究員30~40名程度の募集を行った。この際、チームリーダーの待遇につき、募集案内には、任期は原則5年、評価により6年目以降、最長10年の契約の 延長・更新の可能性があるが、国勢等諸般の事情により変更することがある旨明記されていた。(乙5)イ原告は、被告の募集に応募した上、平成23年4月1日、被告との間で、任期制職員として労働契約を締結した。その際、契約期間は1年とされ、契約期間をもって終了するが、必要と認めた場合、1年又は1年未満の契約を 締結することがあること、チーム解散時以降の契約は締結しないことが契約書上に明記されていた。(乙6の1)⑶ 本件労働契約締結前の原告と被告の労働契約更新の経緯ア原告と被告との間では、平成24年4月1日以降、10回にわたり、チーム名や賃金額の変動はあるものの、いずれもチームリーダーとして、有期労 本件労働契約締結前の原告と被告の労働契約更新の経緯ア原告と被告との間では、平成24年4月1日以降、10回にわたり、チーム名や賃金額の変動はあるものの、いずれもチームリーダーとして、有期労 働契約を更新した。(乙6の2~11)イ平成24年4月1日から平成28年4月1日の契約までの原告の労働契約更新において、初回の契約と同様、契約期間は1年とされ、契約期間をもって終了するが、必要と認めた場合、1年又は1年未満の契約を締結することがあること、チーム解散時以降の契約は締結しないことが契約書に明記され ていた。(乙6の2~6)ウまた、平成29年4月1日から令和3年4月1日の原告の労働契約更新において、契約期間は1年とされ、契約期間をもって終了するが、必要と認めた場合、契約を締結することがあること、通算契約期間(平成25年4月1日以降の契約)が10年を超える有期雇用契約は締結しないことが、契約書 に明記されていた。(乙6の7~11)エなお、平成29年度の契約更新に際し、任期制職員が業務従事期間、業務目的・内容及び実施計画等を確認するため、原告と所属長とが従事業務確認書を作成する取扱いが導入された。原告の平成29年3月22日付け従事業務確認書においては、原告の労働契約期間の上限日は令和3年3月31日と 記載されたが、平成30年3月20日付け従事業務確認書においては、本件 研究センター設置に伴い、上記上限日は令和5年3月31日と修正された。 (乙7、8の1、2)⑷ 本件労働契約締結の経緯ア被告は、令和3年10月、原告に対し、原告が所属する本件研究チームの令和5年3月廃止を伝える趣旨のメールを送信した。(甲66) イ原告は、令和4年1月、本件組合に加入した。(甲66)ウ原告は 、令和3年10月、原告に対し、原告が所属する本件研究チームの令和5年3月廃止を伝える趣旨のメールを送信した。(甲66) イ原告は、令和4年1月、本件組合に加入した。(甲66)ウ原告は、令和4年1月以降、本件研究センターのセンター長や研究室閉鎖に向けた事務担当者との面談等において、本件労働契約の更新を求めた。(甲66)エ被告は、令和4年3月下旬、原告に対し、同年4月1日以降の雇用契約書 を送付した。同契約書には、令和5年4月1日以降の雇用契約は締結しないという不更新条項が付されていた。(甲1)オ原告は、前記契約書の不更新条項に二重線を引いた上署名し、被告理事長宛ての雇止めには同意しない旨記載した書面を添付して返送した。(甲2、乙6の12) カ被告は、令和4年4月8日付け雇用条件通知書により、原告に対し、契約期間については、令和4年4月1日から令和5年3月31日までであり、同年4月1日以降の契約は締結しないことを改めて通知した。(甲3)⑸ 新たな労働契約締結の経緯ア原告は、被告による本件労働契約の更新拒絶について、被告理事長に宛て て書面を送付するほか、本件組合等を通じて交渉をするなどした後、令和4年7月、被告の本件労働契約更新拒絶が違法無効であると主張して、第一次訴訟を提起した(甲15、17ないし19)イ被告は、令和4年9月、新たな人事施策を導入することを決めてこれを公表し、同年11月には、原告らに向けて、具体的な人事施策を周知した。被 告の人事施策には、令和5年4月以降通算契約期間の上限を撤廃することの 他、理事長特例の措置(最終年度契約を締結している場合でも、センター長等の推薦を踏まえ、継続任用が研究所の運営に必要、成果創出に欠かせないと理事長が判断した場 期間の上限を撤廃することの 他、理事長特例の措置(最終年度契約を締結している場合でも、センター長等の推薦を踏まえ、継続任用が研究所の運営に必要、成果創出に欠かせないと理事長が判断した場合に継続任用を認める特別な措置)等が含まれていた。(乙1、甲34)ウ本件研究センターのセンター長は、令和4年11月、原告に対し、継続任 用期間を65歳に達した年の年度末である令和7年3月31日まで、所属を本件研究センターの大阪地区(E研究チームを想定)、職制を上級研究員、給与額を年額967万3440円とするなどの条件で、理事長特例による継続任用に推薦したいと通知した。(甲36、乙10)エ原告は、被告に対し、本来の希望は、本件研究チームのチームリーダー で、給与は現状維持であるが、次善の希望として、被告が提案する内容(E研究チームの上級研究員として年額967万3440円)で理事長特例として推薦されるよう通知した。(甲37、乙11)オその後、被告は、原告との面談等を踏まえ、令和5年2月、理事長特例による継続任用として原告の採用を内定し、これを原告に通知した上、同年3 月、原告に対し、契約書を送付した。(乙12、13)カ原告は、令和5年3月、前記内容による契約締結を承諾したものの、被告に対し、第一次訴訟において解決を求めたが、被告がこれを拒んだため、前記内容を承諾せざるを得なかったのであり、上級研究員としての地位及び給与額の減額を真意で承諾したものではないと通知した。(甲35の1・2、乙 13)キ原告と被告との間において、令和5年3月31日、おおむね前記ウに記載された条件で、理事長特例による新たな労働契約が締結され、本件口頭弁論終結時においても、同労働契約は継続している。(乙13)ク令和5年3月 の間において、令和5年3月31日、おおむね前記ウに記載された条件で、理事長特例による新たな労働契約が締結され、本件口頭弁論終結時においても、同労働契約は継続している。(乙13)ク令和5年3月31日をもって、原告がチームリーダーを務めていた本件研 究チームは消滅した。原告は、令和5年4月1日以降、物理的には従前使用 していた研究室や研究設備を利用して研究を続けているが、本件研究センターのE研究チーム所属となり、原告の研究に従事するテクニカルスタッフは減員となり、予算も減額された。(甲66、原告本人)ケなお、被告においては、被告の理事長特例により、従前と同じ研究チームで、従前どおりの職位及び給与で継続雇用されている者がいる。(原告本人) ⑹ 被告の中長期計画ア被告は、文部科学大臣が、5年以上7年以下の期間において被告が達成すべき業務運営に関する目標(中長期目標)を定め、指示を受けたときは、中長期目標に基づき、これを達成するための計画(中長期計画)を作成し、文部科学大臣の認可を受けなければならないものとされている(独立行政法人 通則法35条の4、35条の5、特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に関する特別措置法第5条)。 イ被告は、平成25年、同年4月1日から平成30年3月31日までの中長期目標に基づき同期間の中長期計画を策定したが、この中長期目標及び中長期計画には、被告が開発する研究として生命システム研究を掲げられ、その 中には、原告が従事している細胞動態計測研究が記載されている。(甲44、45)ウ被告は、平成30年、同年4月1日から令和7年3月31日までの中長期目標に基づき同期間の中長期計画を策定したが、この中長期目標及び中長期計画には、被告が開発する研究として、 (甲44、45)ウ被告は、平成30年、同年4月1日から令和7年3月31日までの中長期目標に基づき同期間の中長期計画を策定したが、この中長期目標及び中長期計画には、被告が開発する研究として、生命機能科学研究を掲げられ、その 中には、原告が従事している研究(分子・細胞状態の可視化及び非侵襲での臓器機能計測技術から得られる情報をもとに、細胞状態の予測と細胞操作を可能とする技術を開発し、健康状態の予測と医療等への応用を図る等)が記載されている。なお、各研究について、中長期目標においては、「研究所全体の運営システムのもとで、年度毎にそれぞれの取組の進捗管理・評価とそれ らを踏まえた改善・見直しの実施、研究所内の組織横断的な連携の活用等の 取組を行う」とされ、中長期計画においては、「社会的・政策的要請の変化や長期的視点に基づく研究所の研究戦略の変更等に応じた経営判断に基づき、終了する…等柔軟に再編を行い、研究所の研究活動を最適化する」とされている。(甲8、9、46、47)エ被告は、平成30年の中長期計画の実施に伴い、組織を再編することと し、同年4月、A研究センターを廃止し、他の研究センターとともに、本件研究センターに再編成した。(甲23、24)⑺ 科学研究費補助金ア科学研究費補助金は、独立行政法人日本学術振興会が、研究者に対して交付する補助金である。被告に所属する研究者の同補助金交付申請に係る事務 は、被告の外部資金室が行うものとされている。(甲27~29)イ原告は、令和4年4月、同年度から令和6年度までの自身の研究に対し、科学研究費補助金の交付申請を行い、その交付決定を受けた。(甲13、14、63~66) 2 争点⑴(チームリーダーの地位にあることの確認の利益)について から令和6年度までの自身の研究に対し、科学研究費補助金の交付申請を行い、その交付決定を受けた。(甲13、14、63~66) 2 争点⑴(チームリーダーの地位にあることの確認の利益)について ⑴ 原告は、本件労働契約が更新されていることを前提に、原告のチームリーダーとしての地位を認めるべき確認の利益が認められる旨主張する。 ⑵ この点、被告におけるチームリーダーは、個々の研究チームの主宰者であり(前記認定事実⑴)、その地位は、個々の研究チームを離れて存在しないから、原告は、本件研究チームの存在を前提としてチームリーダーの地位にあること の確認を求めるものと解される。しかしながら、一般に、労働契約において労働者には特定の部署で就労する権利又は法律上の地位は認められないし、そもそも、本件研究チームは令和5年3月までに消滅しており(前記認定事実⑸ク)、これを前提とするチームリーダーの地位は現在存在しない。そうすると、本件研究センターのチームリーダーが職制上研究管理職等のうち部長に位置付 けられ、一定の決裁権限を有し、部長としての給与の支給を受ける点で上級研 究員とは異なるとしても(前記認定事実⑴)、原告がチームリーダーとしての地位にあることについては確認の利益を欠くというべきである。 なお、原告は、本件訴訟口頭弁論終結時において、被告との間で労働契約を締結しているから(前記認定事実⑸キ)、単に、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める利益も存しない。 ⑶ したがって、チームリーダーの地位にあることについては確認の利益は認められず、本件訴えのうち確認請求に係る部分は不適法であるから却下を免れない。 3 争点⑵(労働契約更新申込みの拒絶)について⑴ 原告は、労働契約更新を申し込んだの ことについては確認の利益は認められず、本件訴えのうち確認請求に係る部分は不適法であるから却下を免れない。 3 争点⑵(労働契約更新申込みの拒絶)について⑴ 原告は、労働契約更新を申し込んだのに対し、被告はこれを拒絶した旨主張 し、他方、被告は、被告が拒絶した事実を否認し、理事長特例によって、原告と被告との間で労働契約の再締結がなされている以上、被告が原告からの更新申込みを拒絶した事実がない旨主張する。 ⑵ 確かに、前記認定事実⑸のとおり、原告と被告との間には、理事長特例によって新たな労働契約が締結されているが、原告は、本件研究センターのセンタ ー長からの提案を受けて、一次的には、本件研究チームのチームリーダーで現状維持の給与を希望しつつ、次善の希望として、被告が提案した雇用条件によって推薦されるよう伝えているから、これにより本件労働契約の更新を申し込んだものと認められる。そして、これに対し、被告は、理事長特例による新たな労働条件による採用の内定を知らせており、本件労働契約と同様の条件につ いては何ら触れずに回答しているのであるから(前記認定事実⑸オ)、これは、被告が原告の上記申込みを拒絶したと評価するのが相当である。 ⑶ したがって、原告は、本件労働契約の更新を申し込んだのに対し、被告がこれを拒絶したものと認められる。 4 争点⑶(労働契約更新の期待の合理性)について ⑴ 確かに、前記認定事実⑵ないし⑷のとおり、原告と被告との間では、平成23年4月1日の労働契約締結後本件労働契約締結までの間に、平成24年4月1日から有期労働契約が10回更新され、11年間、原告は、チームリーダーとして同一の研究に従事している。このような回数、期間自体のみでみれば、労働契約が更新されることについて、労働者が 成24年4月1日から有期労働契約が10回更新され、11年間、原告は、チームリーダーとして同一の研究に従事している。このような回数、期間自体のみでみれば、労働契約が更新されることについて、労働者が期待を有することはあり得る。 しかしながら、前記認定事実⑵のとおり、原告は、そもそも、「任期は原則5年」、「評価により、6年目以降、最長10年の契約の延長・更新の可能性がある」と明記された募集案内に応募して、平成23年4月に入職したのであるから、入職当初から最長令和3年3月31日までという更新上限の定めが労働契約の内容となっている。また、前記認定事実⑶のとおり、原告と被告との労働 契約更新に当たっては、10回の全更新時に、チーム解散時以降の契約は締結しない、又は平成25年4月1日以降の通算契約期間が10年を超える有期雇用契約は締結しないといった、更新回数の上限に関する合意が繰り返し行われてきたほか、平成29年度に導入され、原告と所属長が作成した従事業務確認書でも、原告の雇用契約期間の上限日は令和3年3月31日(平成30年作成 の従事業務確認書では令和5年3月31日)と明確に記載されている。 そうすると、原告と被告との間の有期労働契約の期間や回数から、原告の労働契約が、令和5年4月1日以降も更新されることについて期待を有していたことや、仮にその期待があったとしてもその期待が合理性を有するものということはできない。 ⑵ 次に、原告が主張するとおり、原告の研究は、令和7年3月末を終期とする現行の中長期計画にも、被告が開発する研究の一つとして記載があり(前記認定事実⑹)、また、令和4年度から令和6年度までの原告の研究に対し、科学研究費補助金の交付が決定されている(前記認定事実⑺)。 しかしながら、中長期目標においては、各 の一つとして記載があり(前記認定事実⑹)、また、令和4年度から令和6年度までの原告の研究に対し、科学研究費補助金の交付が決定されている(前記認定事実⑺)。 しかしながら、中長期目標においては、各研究について、「研究所全体の運 営システムのもとで、年度毎にそれぞれの取組の進捗管理・評価とそれらを踏 まえた改善・見直しの実施、研究所内の組織横断的な連携の活用等の取組を行う」とされ、中長期計画においては、「社会的・政策的要請の変化や長期的視点に基づく研究所の研究戦略の変更等に応じた経営判断に基づき、終了する…等柔軟に再編を行い、研究所の研究活動を最適化する」とされている(前記認定事実⑹)。このように、被告における中長期計画はあくまでも計画であり、 被告が特定国立研究開発法人としての役割を担うため、一定の予算等の範囲内で、業務の見直しや再編を行うことが予定されている。したがって、その計画期間(7年間)の終了に至るまで、中長期計画に記載された研究の存続が保障されているとは言い難く、平成30年に策定された中長期目標及び中長期計画の内容から原告の雇用契約更新への期待に合理性があったということはできな い。 また、科学研究費補助金についても、これを交付しているのは、独立行政法人日本学術振興会で、申請者・補助金の交付先は研究者である原告個人であり、被告は、交付申請に係る事務に関与したに過ぎず(前記認定事実⑺)、かかる補助金が令和6年度までの原告の研究に対して交付されていることをもっ て、原告の雇用契約更新の期待を基礎付けるものとはいえない。 ⑶ むしろ、前記認定事実⑸クのとおり、令和5年3月31日をもって、原告がチームリーダーを務める本件研究チーム自体が消滅しており、原告の雇止めは、研究チーム自体が消滅したことに伴 のとはいえない。 ⑶ むしろ、前記認定事実⑸クのとおり、令和5年3月31日をもって、原告がチームリーダーを務める本件研究チーム自体が消滅しており、原告の雇止めは、研究チーム自体が消滅したことに伴う雇止めであるものといえ、前記⑴のとおりの原告と被告とのこれまでの契約更新時の合意内容等に照らせば、原告 において、原告と被告との労働契約が、令和5年3月31日以降も更新されることについての合理的期待があったものと認めることはできない。 ⑷ これに対し、原告は、そもそも、本件研究チームが廃止されたのは、原告の本来の希望を無視して、チームリーダーである原告を雇止めにした結果であり、現在も原告は研究を継続しており、更新期待の合理性を否定する事情とは ならない旨主張する。しかしながら、前記認定事実⑸のとおり、原告は、理事 長特例による労働契約を締結し、従前の研究を続けているが、それは、原告の希望等を踏まえ、被告において調整を図って提案した結果であって、被告が令和3年10月までに本件研究チーム廃止を決定し、現在原告の研究について予算も人員も減らしていることからうかがわれるように、被告が原告の研究を残そうと積極的に考えていたわけではない。そうすると、実際に研究を続けてい るからといって、雇用継続の期待につながるものではない。 また、原告は、原告が応募した際の募集案内によれば、任期は最長10年とされていたが、本件研究センター所属の研究室の大半が10年を超えて存続していることなども指摘するが、存続していない研究室も存在するのであり(甲24、51)、他に存続している研究室が存在する事実をもって、原告の更新期 待を推認させるものではない。 このほか、原告は、原告の継続雇用に対する合理的期待は、平成25年4月の中長期計画開始時 4、51)、他に存続している研究室が存在する事実をもって、原告の更新期 待を推認させるものではない。 このほか、原告は、原告の継続雇用に対する合理的期待は、平成25年4月の中長期計画開始時点で生じており、既に発生した合理的期待を奪うことはできず、更新上限条項に法的拘束力はないとも主張するが、そもそも、中長期計画によって合理的期待を推認できないことは既に述べたとおりであり、また、 当初の契約時や、平成25年3月以前の契約時から一貫して契約書に更新上限の記載はあったのであるから、この点においても原告の主張には理由がない。 ほかにも、原告は、従事業務確認書は契約書ではなく、契約の内容とならず、契約更新に対する合理的期待を妨げない旨主張するが、契約書ではないものの、原告自身が作成に関与した文書であり、原告の主張は採用できない。 ⑸ 以上によれば、原告において、本件労働契約が更新されることについて合理的期待を有していたと認めることはできない。 5 小括したがって、争点⑷(申込拒絶の客観的合理性・社会的相当性)について判断するまでもなく、本件労働契約の雇止めについて労働契約法19条2号は適 用されず、本件労働契約の更新は認められないから、令和5年4月1日以降の本件労働契約継続を前提にした賃金(差額)請求は理由がない。 6 争点⑸(不法行為(不当労働行為等)に基づく損害賠償請求)について⑴ 原告は、被告が、本件組合の非組合員については理事長特例によりチームリーダーとして研究室等を維持したまま雇用を継続し、他方、組合員である原告 については何ら合理的理由もなく上級研究員として処遇しており、これは、原告の正当な労働組合活動を理由とした不利益取扱いである旨主張する。 ⑵ 確かに、被告は、理事長特例 他方、組合員である原告 については何ら合理的理由もなく上級研究員として処遇しており、これは、原告の正当な労働組合活動を理由とした不利益取扱いである旨主張する。 ⑵ 確かに、被告は、理事長特例による新たな労働契約を提案した令和4年11月時点において、原告が本件組合の組合員であったことを認識していたと認められる(前記認定事実⑷ウ)。 ⑶ しかしながら、前記認定事実⑷アのとおり、被告は、令和3年10月、原告に対し、原告が所属する本件研究チームの令和5年3月廃止を伝える趣旨のメールを送信していることから、原告が本件組合に加入する前のこの時点で、本件研究チームの廃止に伴い令和5年3月末の原告の雇止めを検討していたものと認められる。そうすると、本件研究チームの廃止や原告の雇止めは、令和4 年1月に原告が被告の労働組合に加入したこととは無関係である。 そして、前述したとおり、原告の本件労働契約の更新は本来認められないものであるが、被告は、前記認定事実⑸のとおり、原告による第一次訴訟提起後、原告の雇用継続を検討し、原告との間で理事長特例による新たな労働契約を締結している。確かに、新たな労働契約では原告の職制を上級研究員とする などしているが、新たな労働契約の締結は、被告が予算や研究戦略、原告の研究内容等を踏まえつつ、原告の雇用継続に一定の配慮をした結果であると考えられる。 そうすると、前記認定事実⑸のとおり、理事長特例により、従前と同じ研究チームで、従前どおりの職位及び給与で継続雇用されている者がいるとして も、被告が原告の職制を従前のチームリーダーではなく上級研究員として新た な労働契約を締結したことについては、労働組合員であることを理由としたものであるとは推認し難い。 ⑷ そうすると、非組合員のチー の職制を従前のチームリーダーではなく上級研究員として新た な労働契約を締結したことについては、労働組合員であることを理由としたものであるとは推認し難い。 ⑷ そうすると、非組合員のチームリーダーの中には、理事長特例によりチームリーダーとして雇用契約が継続された者がいるとしても、かかる事情のみで、被告が、原告の労働組合活動を理由に労働組合法7条1号又は3号所定の不当 労働行為をしたとは評価できない。また、被告が労働契約法19条に違反して雇止めを実施するなどして、原告の公正な契約更新手続を受ける権利を侵害したといえないのは前記説示のとおりである。不法行為が成立するとの原告の主張は認められない。 ⑸ したがって、その余の点(損害)について判断するまでもなく、原告の不法 行為に基づく損害賠償請求は理由がない。 7 結論以上によれば、本件訴えのうち原告がチームリーダーの地位にあることの確認を求める部分は不適法であるから却下し、原告のその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官鈴木尚久 裁判官高橋祐子 裁判官瀧田航平

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