平成14年(わ)第3277号,平成15年(わ)第30号身の代金拐取,拐取者身の代金要求,逮捕監禁,殺人,住居侵入被告事件判決 主文 被告人3名をそれぞれ無期懲役に処する。 被告人3名につき,いずれも未決勾留日数中各300日を上記の各刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人3名は,分離前相被告人C,同B及び同Fと共謀の上,第1 Gを略取し,Gの安否を憂慮する内縁の夫Hらの憂慮に乗じて同人らから身の代金を交付させるとともに,被告人らが犯人であることの発覚を防ぐためにGを殺害しようと企て, 1 平成14年12月4日午前6時20分ころ,名古屋市a区bc丁目d番e所在の月極bc丁目駐車場付近において,徒歩で帰宅中のG(当時43歳)の腕等をつかみ,その首筋にナイフを突き付け,あらかじめ同駐車場に駐車してあった普通乗用自動車にGを押し込んで同車を発進させ,もってGの安否を憂慮する者の憂慮に乗じて金員を交付させる目的でGを略取した上,そのころ,同所から同市f区gh丁目i番j号所在の甲ビルk号F方に向けて走行中の自動車内において,Gの手足をビニールひもで緊縛するなどし,同日午前6時30分ころ,上記F方にGを連れ込み,同日午後10時15分ころまでの間,同所において,Gを緊縛したままその動静を監視して,Gを同所等から脱出することを不能ならしめ,もって約15時間55分にわたり,Gを不法に逮捕監禁し,その間の同日午前7時29分ころから同日午後8時38分ころまでの間,Cにおいて,19回にわたり,上記F方等からH(当時43歳)が携帯する携帯電話に電話をかけ,同人に対し,「今,あんたの奥さんがこっちにいる。お金用意して下さい。8000万円だ。」「お前,奥さんの命が欲しくないのか。」などと申し向けて身の代金を要求し,もってGの安否を憂慮する者の憂慮に乗じ 同人に対し,「今,あんたの奥さんがこっちにいる。お金用意して下さい。8000万円だ。」「お前,奥さんの命が欲しくないのか。」などと申し向けて身の代金を要求し,もってGの安否を憂慮する者の憂慮に乗じて財物を要求する行為をした。 2 C,B及び被告人AがHと接触して身の代金を受け取ろうとしたものの,Hが警察に通報したことを察知して身の代金の受取りを断念し,自分らの犯行であることが警察に発覚することを防止するためGを殺害しようと決意して,C及びBの指示を受けた被告人Aが,同日午後10時10分ころ,F方でGを見張りながら待機していた同人に電話をかけてGを殺害するよう伝え,これを受けて,F,被告人D及び同Eが,同日午後10時15分ころ,上記F方において,Gの頸部をビニールひもで絞め付け,その頭部を棒で殴打するなどした上,これにより失神してぐったりしたGを既に死亡しているものと思い込んで旅行かばんに詰め込み,C,B,F及び被告人Eにおいて,上記旅行かばんを上記F方から運び出し,同月5日午前零時前ころ,名古屋市l区m町e番i所在のm橋上から上記旅行かばんを海中に投げ入れ,そのころ,同所において,Gを溺死させて殺害した。 第2 金員窃取の目的で,同月7日午前零時50分ころ,Jらが居住する名古屋市a区no丁目p番q号所在の乙ビル4階通路に侵入した。 (証拠)(省略)(法令の適用) 1 罰条(被告人3名につき)いずれも刑法60条に加えて判示第1の1について身の代金拐取につき刑法225条の2第1項,拐取者身の代金要求につき同条2項,1項,逮捕監禁につき包括して刑法220条判示第1の2について刑法199条判示第2について刑法130条前段 2 科刑上1罪の処理(被告人3名につき)判示第1の1につき 条2項,1項,逮捕監禁につき包括して刑法220条判示第1の2について刑法199条判示第2について刑法130条前段 2 科刑上1罪の処理(被告人3名につき)判示第1の1につき刑法54条1項前段,後段,10条(身の代金拐取と逮捕は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,逮捕と監禁は包括1罪の関係にあり,身の代金拐取と拐取者身の代金要求との間には手段結果の関係があるので,結局以上を1罪として刑及び犯情の最も重い拐取者身の代金要求罪の刑で処断) 3 刑種の選択(被告人3名につき)判示第1の1,第1の2の各罪については無期懲役刑を,判示第2の罪については懲役刑をそれぞれ選択 4 併合罪の処理(被告人3名につき)刑法45条前段,46条2項 5 未決勾留日数の算入(被告人3名につき)刑法21条 6 訴訟費用(被告人3名につき)刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない。)(量刑の理由)第1 被害者Gの身上等被害者のGは,中華人民共和国の国籍を有し,本国でHと婚姻し1男をもうけたが,Hが本邦に留学したことから,両親に上記長男を預け,その後を追って平成9年同様留学目的で来日して,アルバイトをしながら学業に勤しんだ後, 平成12年ころからHと実質的夫婦として生活しながら,飲食店やいわゆる韓国エステの経営を始め,本件当時には名古屋市内において上記韓国エステ店等 6軒を経営していた。 両親に預けられた長男は本国で順調に成長しており,被害者の姉妹5名は被害者を頼って来日し,いずれも本邦で生活していた。 第2 被告人らの関係,犯行に至る経緯及び犯行状況等 1 本件共犯者である被告人ら6名は,いずれも留学目的で中国から来日した者 害者の姉妹5名は被害者を頼って来日し,いずれも本邦で生活していた。 第2 被告人らの関係,犯行に至る経緯及び犯行状況等 1 本件共犯者である被告人ら6名は,いずれも留学目的で中国から来日した者であるが,遊興に耽ったり生活費を稼ぐためのアルバイトに追われるなどして次第に学習意欲を失い,窃盗等の犯罪行為を行ってでも大金を手に入れたいなどと考えるようになっていた。 丙省出身の分離前の相被告人Cは,平成5年10月から本邦に滞在して,本件犯行当時は大学院修士課程に在籍しており,日本語が相当に堪能であった。また,Cは普通乗用自動車を2台保有し運転していた。丁省出身の被告人D,同E及び分離前の相被告人Fは,いずれも平成12年1月に来日して同じ短期大学に入学したが,いずれも平成13年には授業料が払えなくなって退学し,あるいは除籍された。 戊省出身の被告人Aは,平成12年3月に来日し,大学の別科で1年間日本語の勉強をした後,4年制大学の入学試験に合格したものの,授業料が払えず,結局入学することはできなかった。己省出身の分離前の相被告人Bは,同年4月に来日し,Aと同じ大学別科で1年間勉強した後,4年制大学に入学したが,平成14年9月以降はほとんど通学していなかった。 Bは,平成12年8月から平成14年2月までIが経営する飲食店でアルバイトをしており,Fとは,同人が平成13年5月ころから半年くらい同じ店でアルバイトをしていたことから知り合い,Fを通じてDやEとも知り合った。また,AもBらを通じてFと知り合い,Fらを通じてDやEを知った。 2 Aは,アルバイトをしていたものの生活は苦しく,家賃を払えなくなって,平成14年10月終わりころから,F方に居候していた。Dは,平成13年3月ころに知り合った中国人に頼まれて,中国で戸籍の不正取得の手伝いを ルバイトをしていたものの生活は苦しく,家賃を払えなくなって,平成14年10月終わりころから,F方に居候していた。Dは,平成13年3月ころに知り合った中国人に頼まれて,中国で戸籍の不正取得の手伝いをして高額の報酬を受け取っていたが,遊興に費消してしまった上,平成14年1月にはその仕事もなくなり,生活が苦しくなって,同年3月ころからF方に同居させてもらっていた。しかし,Dは贅沢な生活を忘れられず,大金を手に入れたいなどと考えるようになった。また,Eは,短大を除籍された後,アルバイトをしていたが,やはり生活は苦しく,留学の際の借金を返すための送金もできないでいた。 AとDがF方に同居してからも,収入はAのアルバイト給与だけで,同年11月に入るとその金額も少なくなった上,Fは家賃を数か月分滞納していた。そこで,そのころ,F,A及びDの3人は,金を得るために「何か悪いことをしよう」などと話し合い,具体的なあてはなかったものの,機会があれば窃盗等をやることになった。同月上旬,FはEに対し,窃盗等をしないかと誘ったが,このときEは応じなかった。 しかし,F,A及びDの3人とも窃盗等の犯罪行為を行った経験がなかったことから,FがBに,盗みに入りやすい家等の情報や窃盗等を一緒にやる人を紹介してほしいなどと相談した。 Bは,平成14年9月から約1か月間,韓国エステ店「庚」でアルバイトをしていたが,このとき,付近で韓国エステ店数軒を営むGの噂を聞いた。また,Bがチラシ配りをしていた際,2回くらいGから声を掛けられたこともあった。Bは,同年11月11日から韓国エステ店「辛」の雇われ店長となったが,経営が苦しかった上,日本で知り合った中国人女性と結婚し親元を離れて暮らすために300万円くらいのまとまった金を手に入れる必要があったことから,強盗等 日から韓国エステ店「辛」の雇われ店長となったが,経営が苦しかった上,日本で知り合った中国人女性と結婚し親元を離れて暮らすために300万円くらいのまとまった金を手に入れる必要があったことから,強盗等をしてでも金を得ようと考えるようになった。そして,「辛」のオーナーから,Gはここ数年で二,三億円儲かっているなどと聞いたことから,同月中旬,Fに,Gから金を奪う話を持ちかけたが,FはGに顔を知られていた上,AとDに相談したところ反対されたことから,断った。 一方,Fは来日して間もなくGの経営していた韓国エステ店に客として出入りするうち,同人から挨拶されたことをきっかけに顔見知りとなった。 3 CとBは,同年11月中旬ころに知人の紹介で知り合い,Cも,遊興費等を得るため楽な方法で大金を稼げる窃盗や強盗をしようと考えていたことから,2人は金持ちの家等の情報交換をした。Cが愛知県r市内に居住するパチンコ店経営者宅(以下「r市内の家」という。)に強盗に入ることを持ちかけると,Bは,これに応じるとともに,Fにも伝えた。そして,Fが被告人3名にその話をすると,AとDだけでなく,Eも賛成し,以後,行動を共にするのに便利であるとの理由でEもF方に住むようになった。 被告人ら6名は,同月25日夜「辛」に集合し,そのままCの運転する自動車でr市内の家まで下見に行き,その帰りに,Cが他の5名に道具を準備するよう指示した。 同月29日から30日にかけての深夜,被告人ら6名は,バールやガラス切り等の道具を携え,待ち合わせの上,Cの運転する自動車でr市内の家に行った。そして,Cが各自の役割分担等具体的な指示をして,同所に押し入ろうとしたが,ガラスを破ることができず,侵入に失敗した。 r市内から名古屋市内に戻る車中で,CとBが,I方へ強盗に入り,場合によ 。そして,Cが各自の役割分担等具体的な指示をして,同所に押し入ろうとしたが,ガラスを破ることができず,侵入に失敗した。 r市内から名古屋市内に戻る車中で,CとBが,I方へ強盗に入り,場合によってはIを殺害することを話し合い,実行に移すことになったが,他の者も特に反対はしなかった。また,BがGを誘拐して身の代金を取ればよいなどと話すと,Cが賛成し,さらに,Bが,自分やFはGに顔を知られているからGを殺さなければならないと話したところ,Cは「身の代金を取って殺して埋めてしまえばよい。知っているのは天と地とこの6人だけだ」などと言ったが,これを聞いた被告人3名とFも特に反対しなかった。もっとも,Gの略取や殺害について具体的な話はしないまま,まずI方に強盗等に入ることにして,同人の居住する判示第2の乙ビルに向かった。 乙ビル付近に着くと,Cは,I方居室のある同ビル4階で待ち伏せさせるため,被告人3名とFを自動車から降ろしたが,近くにパトカーが停車していたことから,この日I方に強盗等に入ることは諦めた。そして,再び乗車した自動車内で,Cが,先に話に出ていたGの略取等を実行する旨話し,Bは警察に逮捕されることを心配していたものの,Cから再度,「殺して埋めれば,知っているのは天と地と6人だけ。絶対にばれない」などと言われると,Gの略取や殺害について反対する者はいなかった。被告人ら6名は,その日はGが経営する店を下見して解散した。 4 被告人ら6名は,同年12月1日午前零時ころ「辛」前に集合し,CとBを中心として,Gを監禁する場所,要求する身の代金の額や要求方法のほか,Gの殺害方法や死体遺棄の方法についても話し合い,Cが計画の実行に必要な道具を準備するよう指示した。 そして,Cの指示で,Gの帰宅を待って,AとDが途中交代して尾行したも の額や要求方法のほか,Gの殺害方法や死体遺棄の方法についても話し合い,Cが計画の実行に必要な道具を準備するよう指示した。 そして,Cの指示で,Gの帰宅を待って,AとDが途中交代して尾行したものの,Gが自宅マンションに入ってしまい,略取の機会を失したため,Cが,翌日自宅マンション前でGの略取を実行することやその方法を簡単に話して解散した。翌2日はCの都合により延期された。 同月3日午前2時ころ,被告人ら6名が「辛」に集合すると,Cが,AはGを尾行する,FとEはGをマンション前で待ち,Cの自動車に押し込む,Dは車内で待機し車のドアを開閉するなどと各自の役割を指示し,EにGを脅すためのナイフを渡した。しかし,AがGを尾行したが,途中で見失ったりしたため,再び略取は失敗した。 5 被告人3名とFは,ナイフやビニールひも等の道具類を準備した上,同月4日午前零時過ぎころ迎えに来たCの自動車に乗り込み,Gの店の方に向かった。そのころ既に,BはCから指示された喫茶店で張り込みをしており,Aも合流して,CやFと携帯電話で連絡を取りつつ見張りを続けた。Gが帰宅するころになると,Cは,Gの自宅マンション付近に自動車を移動して,FとEを同マンション前で待機させた。同日午前6時ころ,Bが,徒歩で帰宅するGを発見してAと尾行を開始し,Bから連絡を受けたCは,自動車をGの自宅マンション隣の駐車場に移動させた。しかし,Gが自宅マンション前を通過したことから,午前6時20分ころ,EとFがGに声を掛け,EがGの首筋にナイフを突き付けてCの自動車に乗せようとしたが,Gが抵抗したことから,B,Aや車内で待機していたDも加わって,Gを無理矢理車に乗せた。そして,F方へ向けて走行中の車内で,Cの指示により,Gの目をガムテープで塞ぎ,手首等をビニールひもで緊縛するなど 抵抗したことから,B,Aや車内で待機していたDも加わって,Gを無理矢理車に乗せた。そして,F方へ向けて走行中の車内で,Cの指示により,Gの目をガムテープで塞ぎ,手首等をビニールひもで緊縛するなどした。午前6時30分ころにGをF方に連行した後も,目隠しや緊縛を継続して脱出できないようにした。 6 被告人ら6名は,Gの携帯電話を使用して内縁の夫と連絡を取ろうと考えていたのに,Gのバッグが見当たらなかったことから,CとBが略取現場まで探しに行ったが,結局見つからなかった。F方に戻ったCは,他の者に内縁の夫に身の代金を要求する旨話し,被告人ら6名でGを取り囲み,内縁の夫の電話番号を聞き出そうとしたが,Gは素直に答えなかった。CがGの頬を平手で叩いて「殺すぞ」と脅したが,Gが「殺すなら殺せ」などと言い返したことから,BもGの顔面を手拳で数回殴打し,さらに,AやFが包丁の先でGを突くなどしたところ,GはHの携帯電話番号を教えた。同日午前7時29分ころ,Cがプリペイド式の携帯電話でHに電話をかけ,日本語で,身の代金8000万円を要求し,さらに,午後零時23分ころ再び電話をしたが,Hが,用意できるのは300万円であると言ったことに立腹し,午後1時ころ,Gを電話に出させて,身の代金を早く用意するよう言わせた。その際,DがGの喉元に包丁を突き付けるなどしており,また,そのころ,AがGを平手で殴打したり,BやFがGの足を蹴ったりもした。 7 その後も,CがHに何度も電話をし,Gを包丁で脅して現金を集めるよう懇願させるなどしたところ,同日午後5時12分ころの電話で,金額が840万円に上がったことから,Cは,取りあえず840万円を受け取り,Gは殺さずにおいて翌日も引き続き身の代金を要求することにした。そして,他の者にその旨告げた上,BとAを連れて自動車で身 ,金額が840万円に上がったことから,Cは,取りあえず840万円を受け取り,Gは殺さずにおいて翌日も引き続き身の代金を要求することにした。そして,他の者にその旨告げた上,BとAを連れて自動車で身の代金を受け取りに出掛けた。 CとBは,車内で身の代金の受取方法を相談し,名古屋市s区内のtでAに受け取らせることにして,とりあえずHに指定した同市a区内の地下鉄b駅2番出口に向かった。Aが同所付近で待っていると,Gの内縁の夫らしい人を見つけたが,Aは警察官に見張られているように感じたことから,Bにその旨連絡した。これを聞いたCは,AとHに地下鉄u駅に行くよう指示し,CとBも車で同駅方面に向かった。地下鉄u駅に着いたAが,Bらに指示を求めると,tに行くように指示された。地下鉄t駅の出口付近にGの内縁の夫らしい人がいたが,Aは,その周辺に警察官がいると感じたことから,その旨Bに連絡し,身の代金の受取りはしなかった。 8 Cは,警察に通報されたとの不安を強くし,Hにl区役所に行くように指示したが,身の代金受取りを断念するとともに,逮捕を免れるためには当初の計画どおりGの殺害を実行しなければならないと考え始めた。同日午後9時50分ころAが自動車に戻り,その際同人が尾行されている気配はなかったものの,Aが尾行されていたと話したことから,Cは,直ちにG殺害を実行に移すことを決意した。Cが,BとAにその旨話したところ,2人とも特に驚くことなく,仕方ないと言って賛成した。 Cは,午後10時ころ,尾行されないようにするため,Hに名古屋市v区内のwへ行くように指示した後,Hとの連絡に使用してきたプリペイド式携帯電話を壊して川に投棄した。そして,午後10時10分ころ,CとBの指示を受けたAが,携帯電話で,Fに,戻るまでにGを殺害するよう伝えた。電話を受け 指示した後,Hとの連絡に使用してきたプリペイド式携帯電話を壊して川に投棄した。そして,午後10時10分ころ,CとBの指示を受けたAが,携帯電話で,Fに,戻るまでにGを殺害するよう伝えた。電話を受けたFは,DとEに,AからGを殺害せよとの電話があったことを伝え,この3人もG殺害を直ちに実行に移すことを決意した。 9 午後10時15分ころ,FがEにビニールひもを渡し,寝かされていたGに帰らせてあげるなどと言って起こすと,EがGの背後から頸部にビニールひもを巻いて絞め,続いてGの横にいたFにひもの片端を渡して,2人でひもを引っ張った。そうすると,Gが暴れだしたことから,Dがその足を押さえ,次いで,DがFと交替し,Eと2人でひもを引っ張って締め続けた。さらに,Gを確実に殺害するため,EがGの頸部に腕を捲いて絞め,Fが木の棒でGの頭部を殴打したり,ラップを顔に巻いて窒息させようとした。午後10時30分ころ,C,B及びAがF方に戻ると,被告人ら6名は,Gが既に死亡しているものと思っていたことから,Cの指示で「Gの死体」を運び出すことになり,D,E及びFが,Gを部屋にあった旅行かばんに詰めた。Bの指示で,AとDの2人は残って証拠隠滅のために室内を整頓することになり,残りの4人で上記旅行かばんを自動車に積み込んだ上,Cの運転で名古屋市l区内のm橋まで行き,同年12月5日午前零時前ころ,同所から上記旅行かばんを海中に投げ入れた。しかし,このときGは未だ死亡しておらず,海中に投棄されたことにより溺死した。 10 上記犯行後,Cは他の者に「このことを知っているのは俺たち6人だけだ。俺たちが言わなければ誰にもばれない」などと口止めした。同月5日夜,CがBに,歯医者の家に強盗に入ることを持ちかけると,Bはこれに応じ,Fにも連絡して,被告人ら6名で強盗をする は俺たち6人だけだ。俺たちが言わなければ誰にもばれない」などと口止めした。同月5日夜,CがBに,歯医者の家に強盗に入ることを持ちかけると,Bはこれに応じ,Fにも連絡して,被告人ら6名で強盗をすることになったが,結局実行するには至らなかった。さらに,被告人ら6名は,判示第2のとおり,同月7日,I方に押し入る計画を実行に移そうとして,乙ビル4階通路に侵入したものの,通報により現場に臨場した警察官により,AとBが現行犯逮捕され,他の者も同月10日に逮捕された。 第3 量刑上特に考慮した事情 1 本件は,被告人ら6名が,Cを中心とする犯罪グループを形成した上,一攫千金を狙って,侵入盗のみならず,身の代金目的の略取や殺人等の凶悪な犯行を次々と計画し,現に実行に移していったという身の代金拐取,拐取者身の代金要求,逮捕監禁,殺人,住居侵入の事案である。 2 身の代金拐取,拐取者身の代金要求,逮捕監禁の犯行態様を見るに,被告人ら6名が,主にCの指示により,あらかじめ道具を準備するなどした上,徒歩で帰宅するGを尾行する者,自宅マンション前で待ち伏せする者などに分かれて,携帯電話で連絡を取り合いながら,強引にGを自動車に乗車させ,直ちに目隠しをし手首を緊縛して,ほぼ当初の計画どおりにGを略取しており,用意周到で計画的というべきであり,その後も,手足の緊縛や目隠しをしたままGを長時間監禁し,その間,Gの内縁の夫Hに,当初8000万円という高額の身の代金を要求し,Hが希望する金額を用意しなければ,語気を荒くしてGを殺害するなどと脅迫するだけでなく,CやBを中心としてGにも暴行脅迫を加え,必死に救出を求めるGの声を金に聞かせて,Gの安否を憂慮する金の不安感を高めるなどしており,非常に悪質である。 また,Gの殺害についても,略取した当初から予定されていたも てGにも暴行脅迫を加え,必死に救出を求めるGの声を金に聞かせて,Gの安否を憂慮する金の不安感を高めるなどしており,非常に悪質である。 また,Gの殺害についても,略取した当初から予定されていたもので,冷酷,非情といわなければならない。被告人3名は当初は殺害に至ることの認識が希薄であったなどと述べるが,CとBの指示により,AがFにGを殺害するよう連絡するや,何ら躊躇なく,直ちにF,D及びEが実行行為に及んでいる上,その態様も確定的殺意に基づいて,頸部をビニールひもで絞めた上,とどめを刺すために,ラップを顔面に巻き付けるなどしており,結果的には,既に死亡したと考えて海中に投棄して溺死させたものの,それまでの経過は,誠に執拗かつ残虐といわなければならない。 さらに,Gを殺害した2日ほど後には,以前実行するに至らなかったI方に侵入し,場合によっては,同人を殺害して室内にある現金を奪う計画を実行に移そうとして,住居侵入事件を敢行しており,被告人ら6名の規範意識は,麻痺しているだけでなく,死者に対する憐憫の情も自己の非道な所業についての悔悟の念も全くうかがうことができない。 Gは,被告人ら6名によって突然略取され,長時間監禁されており,その間の不安感や恐怖感が大きかっただけでなく,当初から殺害を予定されていたことなど知るよしもなく,解放されることを期待していたのに,ビニールひもで頸部を絞められるなどした上,溺死させられるに至った苦しみや絶望感,内縁の夫や姉妹等愛する者を残して非業の死を遂げなければならなかった無念さは察するに余りある。そして,Gには,このような被害を受けるべき落ち度は全くない。 また,Gの安全な救出を願って最善を尽くしたGの内縁の夫や姉妹も,Gが被告人ら6名に殺害されるという最悪の結果に終わり,その絶望や悲しみなど Gには,このような被害を受けるべき落ち度は全くない。 また,Gの安全な救出を願って最善を尽くしたGの内縁の夫や姉妹も,Gが被告人ら6名に殺害されるという最悪の結果に終わり,その絶望や悲しみなどの精神的打撃は非常に大きい。これに対して,被害弁償等の慰謝の措置は何ら講じられておらず,当然のことながら,その処罰感情には極めて厳しいものがあって,被告人ら犯人の極刑を求めている。 そして,本件一連の犯行自体が非常に悪質である上,近時外国人等による集団犯罪が深刻な社会問題になっている折りから,本件が社会に与えた影響も軽視できない。 3 被告人3名は,本邦での生活が相当に苦しかったとはいえ,強盗等をしてでも楽をして大金を手に入れたいなどと考えて,CやBを中心とする犯罪グループを形成していったもので,CやBがGの略取や殺害を計画した当初こそ,殺人を犯すことや計画自体への抵抗感があったものの,高額の身の代金を得られることへの期待等から次第に抵抗感がなくなり,略取すればGを殺害しなければならなくなることやその結果の重大性を深く考えないまま,Gの略取等に積極的に参加していったと認められ,経緯や動機に酌量の余地はなく,第2で認定した事実関係に照らせば,Gを略取した当初から,身の代金を受け取ったとしてもGを殺害するに至ることを概括的にせよ認識していたというべきである。また,身の代金を受け取ることを諦めたCがGの殺害を決意した後,その指示をFに伝えたAやこれを受けて直ちにGの殺害行為に着手したD及びEに,何ら躊躇は見られず,このことからも,Gの殺害が当初の計画どおりで予想し得たことであったことは明らかである。 しかるに,被告人3名は,公判において,Cの指示によりGの殺害を決意したことや略取した時点では殺害に至ることの認識が希薄であったことなどを強 画どおりで予想し得たことであったことは明らかである。 しかるに,被告人3名は,公判において,Cの指示によりGの殺害を決意したことや略取した時点では殺害に至ることの認識が希薄であったことなどを強調して,計画を実行しようとした際,実行すればGを殺害しなければならないとの認識が希薄か,又はなかったと述べて,真摯な反省とは相容れない供述態度を示している。 被告人3名の果たした役割を見ても,Aは,略取の際,Gを尾行し,無理矢理車に乗せたばかりでなく,身の代金要求に当たり,Gの内縁の夫と接触して身の代金を受け取る役を割り当てられ,G殺害においても,FにCの指示を伝えるなどしており,DとEも,略取の際,Gを無理矢理車に乗せただけでなく,Eはその首筋にナイフを突き付けており,Gの殺害においても,Fと3人でその頸部をビニールひもで締め付けるなどし,さらにEは,死亡したと考えていたGを海中に投げ入れており,いずれも一連の犯行において重要で不可欠な役割を果たしているといわなければならない。 以上によれば,被告人3名の刑事責任はいずれも極めて重く,その間に差異を設けるべき特段の理由も見あたらない。 そうすると,被告人3名が,Cを中心とするグループに参加した当初は,窃盗や場合によっては強盗をしようと考えていただけで,CやBがGの略取や殺害を計画して実行に移していったことは予想外の展開であったこと,本件各犯行は,ほとんどCとBが計画・指示するなどして,同人らが中心となって主導的に行ったもので,被告人3名は年齢や社会経験の不足もあって従属的な立場にあったこと,最終的にGの殺害を決断したのもCで,被告人3名は,Cを恐れてその指示に従ったという側面がないわけではないこと,結局身の代金を得ることはできなかったこと,I方への侵入盗等の計画は,同じ階に居 こと,最終的にGの殺害を決断したのもCで,被告人3名は,Cを恐れてその指示に従ったという側面がないわけではないこと,結局身の代金を得ることはできなかったこと,I方への侵入盗等の計画は,同じ階に居住する者の通報により警察官が臨場したため,マンション通路部分への住居侵入にとどまったこと,被告人3名は,いずれも中国では真面目に生活していた者で,当初は留学目的で本邦に入国したこと,今さらながらGが死亡した結果の重大さを認識して反省の態度を示しており,本邦における前科前歴がなく若年であることから更生の可能性も否定できないこと,その帰国を待つ親族が中国にいることなどの酌むべき事情も認められるものの,その刑事責任が極めて重いことから,主文のとおりの無期懲役はやむを得ないというべきである。 (求刑-被告人3名につき,いずれも無期懲役)平成16年2月3日名古屋地方裁判所刑事第5部裁判長裁判官伊藤新一郎裁判官後藤眞知子裁判官・橋信幸
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