平成30年12月14日判決言渡平成27年(行ウ)第194号障害基礎年金不支給処分取消請求事件 主文 1 厚生労働大臣が平成26年1月17日付けで原告に対してした障害基礎年金を支給しない旨の処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要等 1 本件は,原告が,20歳未満の時に初診を受けた知的障害により,20歳に達した日に障害等級に該当する程度の障害の状態にあり,国民年金法(以下「国年法」という。)30条の4第1項所定の障害基礎年金の支給要件を充足しているとして,厚生労働大臣に対し,障害基礎年金の支給の裁定請求(以下「本件裁定請求」という。)をしたところ,同大臣から,20歳に達した日において障害等級に該当する程度の障害の状態にあるとは認められないとして,障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,原告の障害の状態は障害等級2級の程度にあるとして,本件処分の取消しを求めた事案である。 2 関係法令等の定め(1) 20歳前の傷病による障害基礎年金国年法30条の4第1項は,疾病にかかり,又は負傷し,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において20歳未満であった者が,当該初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合においては,その治った日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。)。以下「障害認定日」という。)以後に20歳に達したときは20歳に達した日において,障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において,障害等級に該当する程度の 態に至った日を含む。)。以下「障害認定日」という。)以後に20歳に達したときは20歳に達した日において,障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において,障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときは,その者に障害基礎年金を支給する旨を規定している。 (2) 障害等級ア国年法30条2項は,障害等級は,障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とし,各級の障害の状態は,政令で定める旨を規定し,国民年金法施行令(以下「国年令」という。)4条の6は,障害等級の各級の障害の状態は,国年令別表に定めるとおりとする旨を規定している。 イ精神の障害について,国年令別表2級の16号は,障害等級2級の障害の状態として,「精神の障害であつて,前各号と同程度以上と認められる程度のもの」と規定し,同別表2級の15号は,「前各号に掲げるもののほか,身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であつて,日常生活が著しい制限を受けるか,又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」と規定している。 (3) 障害等級の認定の基準厚生労働省作成の「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(以下「障害認定基準」という。乙8。)のうち,本件に関係する部分の概要は,以下のとおりである。 ア 2級の障害の程度身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が,日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは,必ずしも他人の助けを借りる必要はないが,日常生活は極めて困難で,労働により収入を得ることができない程度のものである。例えば,家庭内 けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは,必ずしも他人の助けを借りる必要はないが,日常生活は極めて困難で,労働により収入を得ることができない程度のものである。例えば,家庭内の極めて温和な活動(軽食作り,下着程度の洗濯等)はできるが,それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの,すなわち,病院内の生活でいえば,活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり,家庭内の生活でいえば,活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。 イ精神の障害(ア) 認定基準精神の障害の程度は,その原因,諸症状,治療及びその病状の経過,具体的な日常生活状況等により,総合的に認定するものとし,日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に認定する。 精神の障害は,多種であり,かつ,その症状は同一原因であっても多様である。したがって,認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに,その原因及び経過を考慮する。 (イ) 知的障害の認定要領a 知的障害とは,知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ,日常生活に持続的な支障が生じているため,何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう。 b 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。 2級知的障害があり,食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって,かつ,会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため,日常生活にあたって援助が必要なものc 知的障害の認定に当たっては,知能指数のみに着眼することなく,日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。 d 日常生活能力等の判定に当たっては,身体的 要なものc 知的障害の認定に当たっては,知能指数のみに着眼することなく,日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。 d 日常生活能力等の判定に当たっては,身体的機能及び精神的機能を考慮の上,社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。 e 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず,雇用契約により一般就労をしている者であっても,援助や配慮のもとで労働に従事している。 したがって,労働に従事していることをもって,直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず,現に労働に従事している者については,その療養状況を考慮するとともに,仕事の種類,内容,就労状況,仕事場で受けている援助の内容,他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断すること。 3 前提事実(当事者間に争いのない事実か,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) 原告は,平成5年▲月▲日生まれの男性であり,平成25年▲月▲日,20歳に達した。D病院E医師作成の平成25年▲月▲日付け診断書(以下「本件診断書」という。)による原告の中度精神発達遅滞(以下「本件傷病」という。)に係る初診日は,平成23年11月22日であった。(乙1)(2) 原告は,平成25年▲月▲日,厚生労働大臣に対し,本件傷病により20歳に達した日に国年法30条2項所定の障害等級に該当する障害の状態にあるとして,国年法30条の4第1項所定の20歳前の傷病による障害基礎年金に係る裁定の請求(本件裁定請求)をした(乙2)。 (3) 厚生労働大臣は,平成26年1月17日,原告に対し,20歳に達した日である平成25年▲月▲日(以下「本件基準日」という。)における原告の障害の状態が国年令別表に定める程度に該当し 乙2)。 (3) 厚生労働大臣は,平成26年1月17日,原告に対し,20歳に達した日である平成25年▲月▲日(以下「本件基準日」という。)における原告の障害の状態が国年令別表に定める程度に該当しないとして,本件裁定請求に係る障害基礎年金を支給しない旨の処分(本件処分)をした(乙3)。 (4) 原告は,平成26年3月20日,関東信越厚生局社会保険審査官(以下「審査官」という。)に対し,本件処分の取消しを求めて審査請求をしたが,審査官は,同年6月4日,本件基準日における原告の障害の状態が,国年令別表に定める障害等級2級の程度にあるとは認められないとして,審査請求を棄却した(乙4,5)。 (5) 原告は,平成26年6月12日,社会保険審査会(以下「審査会」という。)に対し,本件処分の取消しを求めて再審査請求をしたが,審査会は,平成27年1月30日,本件基準日における原告の障害の状態が,国年令別表に定める障害等級2級の程度にあるとは認められないとして,再審査請求を棄却した(乙6,7)。 (6) 原告は,平成27年4月1日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著)。 4 争点及び当事者の主張の要旨本件の争点は,本件基準日における原告の障害の状態が障害等級2級に該当する程度のものであるか否かである。当事者の主張の要旨は以下のとおりである。 (原告の主張の要旨)(1) 障害認定の判断枠組み障害認定基準では,障害等級2級について「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が,日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とされているが,認定基準の一般的事項は,そのままでは精神疾患の認定には適さず,精神疾患についての認定基準及び各精神疾患について個別に設けられた認定要領の趣旨を を加えることを必要とする程度のもの」とされているが,認定基準の一般的事項は,そのままでは精神疾患の認定には適さず,精神疾患についての認定基準及び各精神疾患について個別に設けられた認定要領の趣旨を読み込んで解釈しなければならない。 そして,精神の障害についての認定要領では,精神の障害のうち「知的障害」について,「就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず,雇用契約により一般就労をしている者であっても,援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって,労働に従事していることをもって,直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず,現に労働に従事している者については,その療養状況を考慮するとともに,仕事の種類,内容,就労状況,仕事場で受けている援助の内容,他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。」と定められていること,障害年金(精神の障害用)に係る診断書の日常能力の判定は,「単身で生活するとしたら可能かどうか」という視点からなされることとされていることなどからすれば,認定要領では,保護的な就労や配慮された就労は,障害認定基準における「労働」に該当しないことを前提としているというべきであり,また,障害認定基準において障害等級2級の例として挙げられている「活動の範囲がおおむね家屋内に限られるもの」のうち,「活動の範囲」は,反復練習,助言及び指導なくして自発的に活動ができる範囲と限定的に解釈すべきであるか,当該要件は精神疾患の場合には妥当しないと考えるべきである。 (2) 就労について原告は,就労しているものの,勤務先のF(以下「本件会社」という。)は,スタッフ全員が障害者手帳を所持しているいわゆる特例子会社(障害者の雇用の促進等に関する法律44条1項)であり,原告は,本件会社で就労するに当 いるものの,勤務先のF(以下「本件会社」という。)は,スタッフ全員が障害者手帳を所持しているいわゆる特例子会社(障害者の雇用の促進等に関する法律44条1項)であり,原告は,本件会社で就労するに当たり障害者への対応に専門的な知識を有する社員から手厚い保護・配慮を受けている。また,就労内容も清掃などの簡単な作業を機械的に行っているにすぎない。 したがって,原告の就労は,前記⑴記載の保護的な就労又は配慮された就労に当たる。 (3) 日常生活について原告は,起床,就寝,食事,着替え,出勤準備,入浴及び歯磨きなどの家庭内の日常生活について,家族の指示や援助が必要であり,指示や援助によっても不十分にしかできないものもあるほか,漢字が読めないため,書類を記入することはできず,買物はよく行くスーパーなど限られた店舗で,いつも購入している限られた商品を買うのみであり,計算ができないため支払でも小銭を使うことができない。 通勤は一人で行っているが,母親の援助により暗記した通勤ルートを毎日繰り返しているだけである。 (4) 意思疎通能力について原告は,ごく限られた極めて簡単な意思の疎通しかできず,外に出ることもないため,職場の障害者の同僚,障害者への対応の専門知識を有している社員及び母親以外とは会話をしない。原告は,それ以外の他者に声をかけられると対応ができず黙り込んでしまうほか,会話の意味を取り違えたり,会話がかみ合わなかったりすることが多く,会話による意思疎通をすることがほとんどできない。 (5) 平成25年11月13日付け原告の母親G(以下「原告母」という。)作成の病歴状況申立書(以下「本件申立書」という。乙10。)について原告母は,本件申立書において,本件基準日の原告の日常生活状況につき,着替え,洗面,トイレ,入浴及び食事につい 告母」という。)作成の病歴状況申立書(以下「本件申立書」という。乙10。)について原告母は,本件申立書において,本件基準日の原告の日常生活状況につき,着替え,洗面,トイレ,入浴及び食事について,「自発的にできる」と記載しているが,専門家の助言なく本件申立書を提出したため,指示されたことでも援助を受けながら自分で行えるのであれば,「自発的にできる」に該当すると解釈して記載したものであり,それらのことについて,原告が,指示や援助がなくても行うことができるわけではない。 (6) 原告主張のまとめ以上からすれば,原告の本件基準日における障害の状態は,「知的障害があり,食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって,かつ,会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため,日常生活にあたって援助が必要なもの」に当たり,障害等級2級に該当する程度のものであるというべきである。 したがって,本件処分は違法である。 (被告の主張の要旨)(1) 障害の程度及び認定基準国年令別表に定める障害等級2級に相当する障害とは,「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が,日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」をいい,障害認定基準によると,具体的には「必ずしも他人の助けを借りる必要はないが,日常生活は極めて困難で,労働により収入を得ることができない程度のもの」であり,「例えば,家庭内の極めて温和な活動(軽食作り,下着程度の洗濯等)はできるが,それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの,すなわち,病院内の生活でいえば,活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり,家庭内の生活でいえば,活動の範囲がおおむね家屋内に限られるもの」とされている。そして, の又は行ってはいけないもの,すなわち,病院内の生活でいえば,活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり,家庭内の生活でいえば,活動の範囲がおおむね家屋内に限られるもの」とされている。そして,知的障害の障害の状態でいうと,「知的障害があり,食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって,かつ,会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため,日常生活にあたって援助が必要なもの」とされている。 そして,障害の程度の認定は,診断書及び病歴状況申立書等によって行うとされているところ,精神の障害による障害の程度の認定に当たっては,日常生活能力の判定が大きな要素とされていることから,診断書においては,日常生活状況における「家庭及び社会生活についての具体的な状況」及び「日常生活能力の程度」に関する診断が求められており,それらに加えて裁定請求者と同居している家族等,裁定請求者の日常生活をよく認識していると考えられる人物が申し立てた病歴状況等も検討し,総合考慮した上でその障害の状態を判定することとなる。 (2) 就労について原告は,本件基準日において,月20日程度,約1時間30分の電車等通勤を経て,就労場所に出勤し,トイレ清掃等の作業に従事しており,約7か月にわたって就労を継続し,月7万円から9万円の収入を得ていた。 このような就労状況からすれば,障害者雇用枠での採用であり,周囲の理解や援助があることを前提としても,原告は,一定の勤務実績が認められるだけの労働を行う能力を有していると認められるのであり,このような原告の就労状況からすれば,原告は,社会適応性を有していたといえる。 (3) 日常生活について原告は,食事,着替え,洗顔,入浴及び歯磨きといった基本的な動作や買物等を自分で行うことができると認められる 労状況からすれば,原告は,社会適応性を有していたといえる。 (3) 日常生活について原告は,食事,着替え,洗顔,入浴及び歯磨きといった基本的な動作や買物等を自分で行うことができると認められる。このことは,本件診断書や本件申立書の記載からも裏付けられている。 また,本件申立書の記載からすれば,原告は,訓練し暗記したルートであったとしても,自転車に乗って最寄り駅まで行った後,バス,電車といった公共交通機関を利用し,都内の勤務先まで継続的に自ら一人で通勤することができたといえるから,あらゆる日常の基本的な行為について他者からの援助が必要不可欠であるとは認められないし,その他個々の日常生活において不便な状況が生じているとしても,それが障害に起因するものか,性格等によるものかは判断が難しい場合もあるから,日常生活状況の事情を全て障害によるものとして評価する理由はない。 (4) 意思疎通能力について前記⑵記載のとおり原告が就労していたと認められること並びに本件診断書及び本件申立書の記載を前提とすれば,原告は,少なくとも家庭内においての意思疎通に不自由が生じる程度のものであったとは考え難く,20歳に達した日における原告の障害の状態が会話による意思の疎通が簡単なものに限られているとまで認めることは困難である。 (5) 被告主張のまとめ以上からすれば,原告の本件基準日における障害の状態は,「知的障害があり,食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって,かつ,会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため,日常生活にあたって援助が必要なもの」に当たるとは認められず,障害等級2級に該当する程度のものであったとはいえない。 したがって,本件処分は適法である。 第3 当裁判所の判断 1 障害等級の認定について あたって援助が必要なもの」に当たるとは認められず,障害等級2級に該当する程度のものであったとはいえない。 したがって,本件処分は適法である。 第3 当裁判所の判断 1 障害等級の認定について国年法30条の4第1項は,初診日において20歳未満であった者が障害認定日以後の20歳に達した日(又は20歳に達した日後の障害認定日)において障害等級に該当する程度の障害の状態にあることを障害基礎年金の支給要件とし,国年法30条2項は,障害等級を障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とした上で各級の障害の状態は政令で定めるものとし,これを受けた国年令は,障害等級の各級の障害の状態につき,国年令別表において具体的に定めている。そして,厚生労働省作成の障害認定基準は,障害基礎年金等の裁定権者である厚生労働大臣による障害等級の認定の基準として定められているものと解されるところ,その内容及び策定や改正の経緯(甲1の1ないし1の3,2,乙8,弁論の全趣旨)等に照らせば,障害認定基準は,法的拘束力を有するものではないものの,近時の医学的知見を踏まえたものであって合理的なものということができる。 したがって,障害の状態が障害等級2級に該当する程度のものであるか否かの認定は,特段の事情がない限り,障害認定基準を参酌して判断するのが相当であり,知的障害でいえば,障害認定基準において障害の程度が2級に相当すると認められる障害の状態として例示されている「知的障害があり,食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって,かつ,会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため,日常生活にあたって援助が必要なもの」に該当し,又はこれと同等程度の障害の状態にあると認められるか否かで判断するのが相当である。 そして,その際には,障害認定基準 疎通が簡単なものに限られるため,日常生活にあたって援助が必要なもの」に該当し,又はこれと同等程度の障害の状態にあると認められるか否かで判断するのが相当である。 そして,その際には,障害認定基準が定めるとおり,知能指数のみに着眼することなく,日常生活の様々な場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断すべきであり,また,就労をしている者も援助や配慮の下で労働に従事していることを踏まえ,労働に従事していることをもって,直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず,現に労働に従事している者については,その療養状況を考慮するとともに,仕事の種類,内容,就労状況,仕事場で受けている援助の内容,他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断すべきである。 2 認定事実(1) 本件診断書(乙1)に記載された原告に係る本件傷病の状態及び生活状況等は,要旨,以下のとおりである。 ア障害の原因となった傷病名中度精神発達遅滞イ傷病の発生年月日平成5年▲月▲日ウアのため初めて医師の診察を受けた日平成23年11月22日エ発病から現在までの病歴及び治療の経過,内容,就学・就労状況等,期間,その他参考となる事項(陳述者の氏名 G(原告母),聴取年月日平成25年▲月▲日)二卵性双子で早産,仮死状態で出生。1歳半健診で自力歩行が無く発達の遅れを指摘される。H病院を紹介され,月に2回グループ指導へ通った。歩けるようになると多動で母親の目が離せなかった。 初めての建物や家以外のトイレを非常に怖がり激しく泣いて抵抗をするため,H病院の建物に入るのに数ヶ月間かかった。障害児枠で保育園に入園。小学校では通級学級と情緒障害児学級に所属。性格は大人しく周囲からからかわれる事があり,一人ぽつんとする事が多かった。勉強に るため,H病院の建物に入るのに数ヶ月間かかった。障害児枠で保育園に入園。小学校では通級学級と情緒障害児学級に所属。性格は大人しく周囲からからかわれる事があり,一人ぽつんとする事が多かった。勉強にはついて行けなかった。中学校は特別支援学級へ進学。同級生から「お前は足手まとい」等と馬鹿にされた事で精神的に落ち込み,普通学級の生徒との関わりを避けて生活をするようになった。中3時,頭痛,微熱,倦怠感を訴え,10日間ほど学校へ行けなくなり,内科や耳鼻科をあちこち受診した所,精神的な問題だろうと言われ安定剤を処方された事がある。中学卒業後は通信制高校に進学し,Jセンターでの訓練を経て平成25年4月より障害者枠で会社に入職し,清掃の仕事を週5日行っている。 オ診断書作成医療機関における初診時所見(初診年月日平成23年11月22日)精神的な心配事を相談できるかかりつけをつくっておきたいという主訴で,母親に伴われて当院初診。感情の表出や表情が乏しく自発的発語は無いが,表情は穏やかで質問されると視線を合わせ答えることが可能。将来の仕事について尋ねると「ミシンとかの仕事をやりたい」と話す。 カ障害の状態(平成25年▲月▲日現症)(ア) 現在の病状又は状態像知的障害中程度学習の困難読み,書き,計算(イ) (ア)の状態についての程度・症状・処方箋等療育手帳B判定所持IQ49(田中ビネー検査平成24年2月1日実施)精神年齢8歳2月簡単な話は理解できるが内容が複雑になると理解が難しく,他者のサポートを必要とする。 小学・中学時代に同級生から「お前は足でまとい」「かけ算もできないのか」等とからかわれた事がトラウマになっており,普通級の生徒との関わりを避けて生活をしている。環境の変化に弱い面があり,新しい環境に行く 中学時代に同級生から「お前は足でまとい」「かけ算もできないのか」等とからかわれた事がトラウマになっており,普通級の生徒との関わりを避けて生活をしている。環境の変化に弱い面があり,新しい環境に行くと「自分は周りの足手まといなのではないか」と心配になり,頭痛,腹痛など,身体的不調を訴える事がある。電車通学・通勤は,両親と何度も電車の乗り方を訓練しないと覚えられず,高校生時,駅で迷子になり教師に迎えに来てもらったエピソードがある。 平成25年4月より障害者枠で清掃の仕事を始めたが,電車通勤の方法や仕事内容に至るまで母親や周囲の援助を受けており,どうにか一人で通えるようになった段階にある。 (ウ) 日常生活状況a 家庭及び社会生活についての具体的な状況(a) 現在の生活環境在宅同居者有⒝ 全般的状況自発的なコミュニケーションはない。家族以外の者とは挨拶程度は可能だが,交流は難しいためサポートが必要。 b 日常生活能力の判定(a) 適切な食事摂取-配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできるなど。 自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる⒝ 身辺の清潔保持-洗顔,洗髪,入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また,自室の清掃や片付けができるなど。 自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる⒞ 金銭管理と買物-金銭を独力で適切に管理し,やりくりがほぼできる。また,一人で買物が可能であり,計画的な買物がほぼできるなど。 助言や指導をしてもできない若しくは行わない⒟ 通院と服薬-規則的に病院や服薬を行い,病状等を主治医に伝えることができるなど。 不要助言や指導をしてもできない若しくは行わない⒠ 他人との意思伝達及び対人関係-他人の話を聞く, ない⒟ 通院と服薬-規則的に病院や服薬を行い,病状等を主治医に伝えることができるなど。 不要助言や指導をしてもできない若しくは行わない⒠ 他人との意思伝達及び対人関係-他人の話を聞く,自分の意思を相手に伝える,集団的行動が行えるなど。 助言や指導があればできる⒡ 身辺の安全保持及び危機対応-事故等の危険から身を守る能力がある,通常と異なる事態となったときに他人に援助を求めるなどを含めて,適正に対応することができるなど。 助言や指導をしてもできない若しくは行わない⒢ 社会性-銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また,社会生活に必要な手続が行えるなど。 助言や指導があればできるc 日常生活能力の程度知的障害を認め,日常生活における身のまわりのことも,多くの援助が必要である。(たとえば,簡単な文字や数字は理解でき,保護的環境であれば単純作業は可能である。習慣化していることであれば言葉での指示を理解し,身辺生活についても部分的にできる程度)(エ) 現症時の就労状況a 勤務先一般企業(特例子会社)b 雇用体系障害者雇用c 継続年数7か月d 仕事の頻度週に5日e ひと月の給料7~9万円程度f 仕事の内容簡単な清掃業g 仕事場での援助の状況や意思疎通の状況単純作業のみで都度職員が付き添い,援助を受けながら仕事を覚えている。 (オ) 身体所見特記なし(カ) 臨床検査IQ49(田中ビネー検査:平成24年2月1日)精神年齢8歳2月(キ) 福祉サービスの利用状況移動支援キ現症時の日常生活活動能力及び労働能力日常生活活動動作は低く,周囲の手厚い支援や理解がないと,単純作業をすることも難しい。 ク予後不明(2) 本件 サービスの利用状況移動支援キ現症時の日常生活活動能力及び労働能力日常生活活動動作は低く,周囲の手厚い支援や理解がないと,単純作業をすることも難しい。 ク予後不明(2) 本件申立書(乙10)に記載された本件裁定請求時における原告の就労及び日常生活状況等は,要旨,以下のとおりである。 ア職種等清掃イ通勤方法電車通勤時間 1時間30分ウ出勤の状況(日数)請求日の前月 22日請求日の前々月 19日エ仕事内容トイレ清掃,フロアー清掃,外での落ち葉の掃き掃除,封入オ日常生活についての制限a 着替え,洗面,トイレ,入浴,食事自発的にできるb 掃除自発的にできるが援助が必要c 散歩,買物自発的にはできないが援助があればできるd 炊事,洗濯できないe 介護やヘルパーの支援を受けていない。 カ補助具の使用について補助具を使用していない。 キその他日常生活で不便に感じること同じことを繰り返し言う。見た目で障害の有無が分からないため,他人に誤解を与えてしまうことがある。 (3) 文中証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告に係る本件傷病の状態及び生活状況について,以下の事実が認められる。 ア原告は,1歳半健診で発達の遅れを指摘され,1か月に2回,H病院に通い,障害児保育の枠で保育園に入園した。保育園年中のときに千葉県α 市に引っ越したが,α 市でも発達の支援を受けることができる機関に通いながら保育園に通園していた。小学校では,普通学級に所属しながら,情緒障害学級に通級していた。(乙10,証人原告母)イ原告は,中学進学時に学習面での困難等を指摘され,中学は特別支援学級に進学し,中学1年時(平成18年10月18日)に療育手帳を取得した(乙10)。 に通級していた。(乙10,証人原告母)イ原告は,中学進学時に学習面での困難等を指摘され,中学は特別支援学級に進学し,中学1年時(平成18年10月18日)に療育手帳を取得した(乙10)。 ウ中学校卒業後について(甲4,7,16,乙11,23,証人K,原告母)(ア) 原告は,中学校卒業後,平成21年4月から平成24年3月まで,通信制高校であるL高等学校に在籍しながら,通信制高校のサポート校であるN学院高等部(以下「本件学院」という。)に入学し,当時の自宅の最寄りのβ 駅から同校の最寄りのγ 駅まで電車で移動して本件学院に通学していた。本件学院では,体育の授業や校外行事等の際には学校以外の場所に直接集合する場合があり,その際,直接集合場所に行く自信がない生徒は,一旦本件学院に行き,教員と一緒に現地に行くことも可能となっていたところ,原告は,何度か行ったことのある場所以外は,3年間,おおむね上記方法により教員と一緒に現地に行っていた。 (イ) 原告は,本件学院では,学力別に分けられたクラスで4クラス中最も下のクラスに所属しており,同クラスでは,約半数の生徒が何らかの障害を持っていた。同校における原告の成績評価の平均は,五段階評価(絶対評価)のうち,英語が約2.8,数学が4.0,国語が約2.3,理科が約4.1,社会が約2.3であった。なお,本件学院では,成績評価で1が付くことは事実上なかった。 エ原告の就労状況について(甲4ないし6,8,9,乙10,11,証人O,原告母)(ア) 原告は,本件学院卒業後,Jセンターで職業訓練を受けた後,平成25年4月にPの特例子会社(障害者の雇用の促進等に関する法律44条1項に基づき,厚生労働大臣の認定を受け,法律上求められる障害者雇用率の算定において親事業主の一事業所とみなされる 受けた後,平成25年4月にPの特例子会社(障害者の雇用の促進等に関する法律44条1項に基づき,厚生労働大臣の認定を受け,法律上求められる障害者雇用率の算定において親事業主の一事業所とみなされる子会社)である本件会社に障害者雇用枠で採用された。 (イ) 本件会社では,障害者雇用枠のスタッフは全員障害者手帳の所持者である。本件会社には社会福祉士,精神保健福祉士の資格を有している社員が数名おり,社員全員が障害者へ対応するために必要な研修や講習等を受けている。 (ウ) 原告は,自宅から本件会社まで,約1時間30分かけて通勤しているところ,その経路は,自宅から最寄り駅まで自転車で行き,δ 駅で電車を乗り換え,γ 駅から(省略)のバスに乗り終点である(省略)でバスを降り出勤するというものである。なお,原告は,本件会社に上記方法で通勤するに当たり,原告母と何度も通勤の練習をした。 (エ) 原告は,本件会社に採用された後,現在まで,書類の封入作業,(省略)の校舎周辺の掃き掃除等を担当しており,月に20日程度勤務して毎月7万円から9万円の収入を得ている。なお,原告が担当している上記作業は,本件会社が行っている仕事の中でも比較的簡単な内容の仕事である。 (オ) 原告は,一時的に文書受付の郵便物の仕分作業を担当したこともあったが,担当した社員が障害者についての専門知識がない者であったことや原告の漢字を読む能力が不十分であったことから,上記作業を習得するには至らなかった。また,原告は,トイレ清掃の作業を担当したこともあったが,掃き掃除と比較して手順が複雑であるため,同様に作業を習得するに至らず,トイレ清掃のスタッフが体調不良で欠員となった際には,大便器の清掃は手順が多く正確に作業を行うことが困難であるとして,小便器の清掃のみを担当している。 雑であるため,同様に作業を習得するに至らず,トイレ清掃のスタッフが体調不良で欠員となった際には,大便器の清掃は手順が多く正確に作業を行うことが困難であるとして,小便器の清掃のみを担当している。 (カ) 原告は,他のスタッフが2,3日から一週間程度で習得することができる掃き掃除作業について,習得まで2,3か月かかったことがあるほか,原告の作業内容は,ごみが多くても少なくても同じペースで同じように清掃し,天候やごみの量によって作業内容を調整することが困難であるという特徴がある。 オ休日等の状況及び金銭管理について(甲4,原告母)(ア) 原告は,休日は,主にインターネットで動画を見たり,ゲームをしたりして過ごしているほか,一人で近所の決まったスーパーに行って買物をしたり,自宅付近を1時間程度サイクリングすることもある。また,障害者の友人との懇親会や当該友人同士でパフェを食べに行ったり,障害者の友人とともに,自宅から2駅先にあり家族で何度か行ったことのある映画館に映画を見に行くこともある。 (イ) 原告は,原告母との間で,月2,3万円を小遣いとする旨約束し,原告が管理しているキャッシュカードを用いてATMから現金を下ろして使っており,決められた小遣い額以上に現金を下ろすことはないが,好きなものがあると買ってしまうため次の月までに小遣いがなくなってしまうことがあるほか,細かい数字を理解することが困難であるため,小銭で支払うことが難しく,どのような場合でも紙幣で支払うことが多い。 3 検討(1) 本件診断書によれば,原告の本件基準日である平成25年▲月▲日頃の障害の程度については,中度精神発達遅滞があり,「日常生活能力の判定」のうち,「適切な食事摂取」,「身辺の清潔保持」については,「自発的かつ適正に行うことはできないが助言 ある平成25年▲月▲日頃の障害の程度については,中度精神発達遅滞があり,「日常生活能力の判定」のうち,「適切な食事摂取」,「身辺の清潔保持」については,「自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる」とされ,「他人との意思伝達及び対人関係」及び「社会性」については,「助言や指導があればできる」とされているほか,「金銭管理と買物」,「通院と服薬」及び「身辺の安全保持及び危機対応」は「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」とされ,日常生活能力の程度も,知的障害により「日常生活における身のまわりのことも,多くの援助が必要である」とされている。 この点,本件申立書においては,平成25年11月13日(本件申立書作成日)の原告の状態について,着替え,洗顔,トイレ,入浴及び食事について,「自発的にできる」とされ,掃除について,「自発的にできるが援助が必要」とされているが,原告は,当該記載について,原告母が,限られた動作に限定した場合であればそれに沿った動作ができる場合には「自発的にできる」場合に該当すると認識していたためであると主張し,原告母もそれに沿う供述をしている。 これに対し,被告は,日常生活能力の判定においては,診断書のみならず,裁定請求者と同居している家族等,裁定請求者の日常生活をよく認識していると考えられる人物が申し立てた病歴状況等も検討し,総合考慮した上でその障害の判断をするべきであるとした上で,診断書に記載された医学的な知見に関わらない点とその他の提出資料との間で整合性を欠く場合には,具体的かつ客観的な検討を行うことが必要であると主張する。 そこで,以下,本件基準日における原告の日常生活能力等について,本件診断書及び本件申立書並びにK,O及び原告母の供述等を踏まえて検討する。 (2) 日常生活能力 うことが必要であると主張する。 そこで,以下,本件基準日における原告の日常生活能力等について,本件診断書及び本件申立書並びにK,O及び原告母の供述等を踏まえて検討する。 (2) 日常生活能力についてア適切な食事摂取(ア) Oの供述(証人O・27頁)によれば,原告は,本件会社の勤務時の昼食について,持参した弁当を食べることがあるほか,コンビニエンスストアに一人で昼食を買いに行くこともあると認められる。 また,原告母の供述(原告母・2,3,18,25ないし27頁)によれば,原告は,料理が一切できず,指示をすると食事の準備や後片付けを手伝うことがあるが,それらを自発的に手伝うことはなく,食器も不十分にしか洗えないため,原告母が洗い直すことがあること,食事についても,栄養バランスを考えることはできず,出されたものをそのまま食べている状況であり,食事の用意がないときは,食事の時間を意識せず,食事とのバランスを考えないままお菓子を食べてしまうことがあること,ナイフとフォークが使えず,食べこぼしが多いこと,ドレッシングや醤油などの調味料を適切に使用することが難しいことが認められる。 (イ) 以上からすれば,原告は,調理はできないとしても,助言や指導があれば食事の用意を手伝うことができ,用意された食事を摂取することができるといえるものの,食事を自発的かつ適切に行うことができるとはいえないから,「適切な食事摂取」につき,「自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる」とされている本件診断書の記載は相当といえる。 (ウ) この点,被告は,原告母が述べる自宅での原告の状態は,同居する原告母への甘えであり,母親と同居している20歳の男性が自宅において調理を行わなかったり,栄養バランスを考えた食事を行わなかったとして この点,被告は,原告母が述べる自宅での原告の状態は,同居する原告母への甘えであり,母親と同居している20歳の男性が自宅において調理を行わなかったり,栄養バランスを考えた食事を行わなかったとしても不自然ではないから,「適切な食事」について,「自発的にできるが時には助言や指導を必要とする」との評価が相当であると主張する。 しかし,前記原告母の供述(原告母・2,18,26,27頁)によれば,原告母は,原告に対し,ナイフとフォークの使い方を教えたり,皿洗いをさせたことがあるものの,上達する見込みが少なかったため,ナイフとフォークの使い方を教えるのを諦め,皿洗いについても,原告が行った場合はその後に再び原告母が行っているというのであり,食事についても,菓子をあまり食べないように言っても食べる量が少なくなるにすぎず,外食時においても好きなものを選ぶことがほとんどであり,それ以外のメニューを選ぶことは少ないというのであって,このような食事に係る原告の行動からすれば,原告の状態が原告母に対する甘えを主な原因とするものであるとはいえず,「適切な食事」について,「自発的にできるが時には助言や指導を必要とする」と評価することはできない。 したがって,この点に関する被告の主張は理由がない。 イ身辺の清潔保持(ア) Kの供述(K・17,23頁)によれば,原告は,本件学院の在籍時,体育の授業や宿泊がある修学旅行の際に他の生徒と同様に着替え等をすることができたと認められ,Oの供述(O・28,29頁)によれば,原告は,本件会社の勤務時には,他人の介助を必要とすることなくトイレに行って排泄をし,着替えをすることができると認められる。 また,原告母の供述(原告母・3ないし6,17頁)によれば,原告は,着替えの際には,上下でちぐはぐな服を選んだり,気 要とすることなくトイレに行って排泄をし,着替えをすることができると認められる。 また,原告母の供述(原告母・3ないし6,17頁)によれば,原告は,着替えの際には,上下でちぐはぐな服を選んだり,気温に関係なく気に入った服やたんすの一番上にある服を選ぶことがあり,夏に長袖や冬に半ズボンを出すことがあるため,原告母が事前に服を用意していること,洗顔については,行為自体は一人できるが汚れた部分をきれいに洗うというものではなく,ひげそりについては行為自体はできるがそり残しがあったり出血することがあるため原告母が手伝っていること,入浴については指示をしなければ入浴しないことも多く,入浴自体は一人でできるが洗い残し等がある場合があること,歯磨きについては,声を掛けなくても1日3回行うが,原告母からすると不十分な場合があること,排泄については,トイレに自主的に行くことができるが,用を足す際に床を汚すことがあり,掃除については,声を掛けないと行わず,掃除の方法や整理整頓についても内容を具体的に指示しないとすることができず,行った場合も不十分であり原告母がやり直すことがあることが認められる。 (イ) 以上からすれば,原告は,排泄は自分で行うことができ,着替え,洗顔,入浴,清掃についても,基本的な動作についてはある程度自ら行うことができるが,助言や指導がなければこれらを十分に行うことができないといえるから,「身辺の清潔保持」について,「自発的かつ適正に行うことができないが助言や指導があればできる」とされている本件診断書の記載は相当である。 (ウ) この点,被告は,着替えについては,原告の服装に関する好みの問題であり,掃除についても清掃の仕事をしていることからすれば,自ら掃除をすることができないとは考えられないから,「身辺の清潔保持」について, 点,被告は,着替えについては,原告の服装に関する好みの問題であり,掃除についても清掃の仕事をしていることからすれば,自ら掃除をすることができないとは考えられないから,「身辺の清潔保持」について,「できる」又は「自発的にできるが時には助言や指導を必要とする」との評価が相当であると主張する。 しかし,着替えについては,上記のとおり,気温に関係なく服装を選んでしまうというのであるから,好みによって選んでいる面があるとしても,適切な服装を選ぶことができているとはいえないし,清掃の仕事についても,前記2⑶エ(オ)及び同(カ)のとおり,手順が複雑な清掃作業は困難であり,単純な清掃であっても,習得に時間がかかったり,天候やごみの量によって作業内容を調整することが困難というのであるから,原告が清掃の仕事をしていることをもって直ちに自宅等の清掃をすることができると認めることはできず,「身辺の清潔保持」について,「できる」又は「自発的にできるが時には助言や指導を必要とする」と評価することはできない。 したがって,この点に関する被告の主張は理由がない。 ウ金銭管理と買物(ア) 原告母の供述(原告母・8,21ないし24,29ないし31頁)によれば,原告は原告母との間で給料から月に2,3万円を小遣いとする旨約束しているところ,原告母とATMから現金を下ろす練習をしたことから,小遣いについては,原告が管理しているキャッシュカードを用いて原告自身がATMから現金を下ろして使っており,決められた小遣い額以上に下ろすことはないが,小遣いを無計画に使用してしまい次の給料日までに小遣いがなくなってしまうことがあるほか,細かい数字を理解することが困難であるため,小銭で支払うことが難しく,どのような場合でも紙幣で支払うことが多いこと,近所の決まったスーパー い次の給料日までに小遣いがなくなってしまうことがあるほか,細かい数字を理解することが困難であるため,小銭で支払うことが難しく,どのような場合でも紙幣で支払うことが多いこと,近所の決まったスーパーに行って買物をしたり,障害者の友人との懇親会に行ったり,パフェ等を食べた際に支払をすることがあること,練習をしたため交通系ICカードのチャージは一人でできることが認められる。 (イ) 以上からすれば,原告は,原告母の助言や指導の下であればある程度金銭を独力で管理し,限られた店であれば一人で買物が可能であるといえるものの,小銭を使用して支払をすることができないほか,一定のまとまった金銭を使用するに当たり,収支のバランスに配慮しつつ計画的に金銭を使用することまではできないといえるから,「金銭管理と買物」について,「助言や指導があればできる」と評価すべきである。 もっとも,本件診断書において,日常生活能力の判定は,「単身で生活するとしたら可能かどうか」で判断するものとされ,「金銭管理と買物」は,具体的には,「金銭を独力で適切に管理し,やりくりがほぼできる。また,一人で買い物が可能であり,計画的な買い物がほぼできるなど。」とされているところ,上記のとおり,原告の金銭管理は,原告母との間で決められた小遣いの範囲にほぼ限られており,原告は,家賃等の居住費,水道光熱費及び食費といった生活に必須となる費用を管理しているわけではないし,一定のまとまった金銭を使用するに当たり,収支のバランスに配慮しつつ計画的に金銭を使用することまではできないのであるから,単身で生活するに当たって,生活に必須な費用を適切に管理し,計画的な買物をすることは極めて困難といえ,そのような趣旨の記載であるとすれば,本件診断書における「助言や指導をしてもできない若しくは行わな 身で生活するに当たって,生活に必須な費用を適切に管理し,計画的な買物をすることは極めて困難といえ,そのような趣旨の記載であるとすれば,本件診断書における「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」との評価が相当ではないとまでは言い難いというべきである。 (ウ) この点,被告は,原告は買物について自ら行うことができ,原告母の助言を要する場合があったとしても給料を自らの銀行口座で管理し,交通系ICカードの仕組みを理解してチャージ等による入金をするなどしており,金銭の管理を十分できていることからすれば,「金銭管理と買物」について,「できる」又は「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」との評価が相当であると主張する。 しかし,前記(イ)のとおり,買物については,主に決まったスーパーで買物をしているにすぎないといえるし,ATMの使用や交通系ICカードのチャージも原告母と練習した結果として機械を操作することができるようになったというのであり(原告母・24頁),それらの仕組みを理解して使用しているとは認められず,「金銭管理と買物」について,「できる」又は「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」と評価することはできない。 したがって,この点に関する被告の主張は理由がない。 エ通院と服薬(ア) 原告母の供述(原告母・8,23,24頁)によれば,原告は漢字の読み書きが小学校低学年程度しかできないため,病院に行く際には,原告母らが付き添い問診票を記載していること,精神科に通院する際には原告母が同行しているが,歯医者や耳鼻科については,何度か原告母が付き添い,精神発達遅滞があることを医療機関に説明したところ,最近になり一人で通院することができるようになったことが認められる。 もっとも,後記オのとおり,原告は,面識のない いては,何度か原告母が付き添い,精神発達遅滞があることを医療機関に説明したところ,最近になり一人で通院することができるようになったことが認められる。 もっとも,後記オのとおり,原告は,面識のない者との間では適切な対応をすることが困難であり,複雑な会話をされると混乱して受け答えが一切できなくなってしまうと認められる。 (イ) 以上からすれば,原告が,医師に自らの症状を伝え,医師からの説明を理解しつつ,その指示により服薬をするなどして疾病に対応することは極めて困難であるというべきであり,上記の一人での通院は,原告母と一緒に通院したことにより,決められた場所に行くことができるにすぎないという限度で評価すべきものといえるから,そのような趣旨での記載というのであれば,「通院と服薬」について,「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」とされている本件診断書の記載は相当であり,上記通院の実態を最大限考慮しても,「助言や指導があればできる」と評価されるに過ぎないというべきである。 (ウ) この点,被告は,原告の病院への通院状況を前提とすれば,「通院と服薬」について,「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」との評価が相当であると主張するが,本件診断書における「通院と服薬」の能力は,具体的には,「規則的に病院や服薬を行い,病状等を主治医に伝えることができる」能力であるところ,前記(ア)及び(イ)で述べたとおり,原告は問診票が記載できず,病状等を主治医に伝えることが困難と認められるのであるから,「通院と服薬」について,「おおむねできるが時に助言や指導を必要とする」と評価することはできない。 したがって,この点に関する被告の主張は理由がない。 オ他人との意思伝達及び対人関係(ア) Kの供述(K・2,3,8,10,21,24頁) 助言や指導を必要とする」と評価することはできない。 したがって,この点に関する被告の主張は理由がない。 オ他人との意思伝達及び対人関係(ア) Kの供述(K・2,3,8,10,21,24頁)によれば,原告は,本件学院在籍時,表面上は他の生徒や教師とコミュニケーションができているように見え,やるべきことを黙々とやる性格だったため,コミュニケーションの問題で他の生徒とトラブルを起こすことは少なかったが,教師からの指示や依頼には「はい」と返事をするものの,内容を理解していないため,行動に反映されていないことが多く,指示や依頼を言葉で理解しているというよりも他の生徒の見よう見まねで行動していることが多かったと認められる。 また,Oの供述(O・11ないし13頁)によれば,原告は,日常的に原告と接している者に限定した人間関係の中ではコミュニケーションが取れるものの,面識のない者との間では適切な対応をすることは困難であり,複雑な会話をされると混乱して受け答えが一切できなくなってしまうと認められる。 さらに,原告母の供述(原告母・9,10,22,23,29,30頁)によれば,原告の会話は,思ったことを思ったときに口に出してしまう,主語が抜けている,過去の話を突然話し始めるといったことがあり,冗談が通じずに友人とトラブルになったことがあること,原告は障害者の友人とスマートフォンで連絡を取り,懇親会に参加することがあるほか,それらの友人と映画館等に行くことがあることが認められる。 (イ) 以上からすれば,原告は,家族,職場の同僚及び障害者の友人といった限定された人間関係の中では,ある程度コミュニケーションができるものの,相手の発言の意味を理解して行動に反映することや,冗談を理解するなど相手の発言の真意を捉えることが困難であり,初対面の といった限定された人間関係の中では,ある程度コミュニケーションができるものの,相手の発言の意味を理解して行動に反映することや,冗談を理解するなど相手の発言の真意を捉えることが困難であり,初対面の者など原告に係る本件傷病を理解していない者とのコミュニケーションは困難であるといえるから,「他人との意思伝達及び対人関係」につき,「助言や指導があればできる」とされている本件診断書の記載は相当である。 (ウ) この点,被告は,本件会社における原告の面談記録(甲19)や個人記録(甲20)など原告が担当する作業等について積極的にコミュニケーションを取っている旨の記載があること,電車の遅延により出社時間に間に合わない場合に勤務先に電話連絡をすることができていることなどを指摘し,原告が,原告母,本件会社の上司や同僚,K及び友人との間において日常的な意思伝達に支障があったとする事情はうかがわれず,周囲に配慮を欠いた行動をとるような事情があったこともうかがわれないことからすれば,「他人との意思伝達及び対人関係」につき,「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」との評価が相当であると主張する。 しかし,Oの供述(O・10頁)によれば,本件会社における上記各記録は,スタッフの長所を伸ばすという本件会社の社員の支援の方針として,課題やミスについては小さく少なめに記載し,努力している点や伸びた点については,可能性も含めて大きめに記載する傾向があり,原告のコミュニケーション能力を正確に表している資料ではないといえ,上記各記録の記載をもって,原告のコミュニケーション能力を判断するのは相当ではないし,Kの供述(K・7,8頁)によれば,原告は,K,他の教員及び他の生徒からの指示や依頼に対しては,表面的に「はい」と述べるためコミュニケーションを通じてのト ーション能力を判断するのは相当ではないし,Kの供述(K・7,8頁)によれば,原告は,K,他の教員及び他の生徒からの指示や依頼に対しては,表面的に「はい」と述べるためコミュニケーションを通じてのトラブルが少なかったにすぎず,内容を理解し,相手に配慮をした上で行動していたわけではないから,上記事情をもって,「他人との意思伝達及び対人関係」について,「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」と評価することはできない。 したがって,この点に関する被告の主張は理由がない。 カ身辺の安全保持及び危機対応(ア) K及び原告母の供述(K・4頁,原告母・7頁)によれば,原告は,体育の校外授業が行われる場所に一人で行った際に道に迷い,原告母に連絡をするも自分がどこにいるか的確に説明することができず,原告母から降りた駅を尋ねられ,駅名を原告母に伝えたことによって,教員が原告を迎えに行ったことがあったと認められる。 また,K及びOの各供述(K・19,20頁,O・18頁)によれば,原告は,本件学院への通学途中や本件会社への通勤途中に電車が遅延した際には,遅延証明書を持ってくることや,本件会社の社員に電話連絡をすることができると認められる。 (イ) しかし,前記エ(ア)のとおり,原告は漢字の読み書きが小学校低学年程度しかできず,書類への記入ができないというのであるし,前記オのとおり,限定された人間関係の中ではある程度コミュニケーションができているというものの,面識のない者との間では適切な対応をすることは困難であり,複雑な会話をされると混乱して受け答えが一切できなくなってしまうことからすれば,「身辺の安全保持及び危機対応」については,「助言や指導があればできる」と評価するのが相当である。 もっとも,本件診断書において,日常生活能力の判定 け答えが一切できなくなってしまうことからすれば,「身辺の安全保持及び危機対応」については,「助言や指導があればできる」と評価するのが相当である。 もっとも,本件診断書において,日常生活能力の判定は,「単身で生活するとしたら可能かどうか」で判断するものとされ,「身辺の安全保持及び危機対応」は,具体的には,「事故等の危険から身を守る能力がある,通常と異なる事態となったときに他人に援助を求めるなどを含めて,適正に対応することができるなど」とされているところ,上記で述べた原告のコミュニケーション能力からすれば,単身生活をする中で,適切に情報を収集するなどして事故等の危険を予測して行動することや,事故等が生じた際に他人に援助を求めたりすることは極めて困難といえ,そのような趣旨の記載であるとすれば,本件診断書における「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」との評価が相当ではないとまでは言い難いというべきである。 (ウ) この点,被告は,原告が公共交通機関を利用し,複雑な通勤経路で通勤しており,電車遅延の場合には通勤先への連絡ができていることなどからすれば,「身辺の安全保持及び危機対応」について,「できる」又は「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」との評価が相当であると主張する。 しかし,前記(イ)で説示したとおり,原告は,本件会社への通勤途中に電車に遅延した際には,本件会社の社員に電話連絡をすることができるものの,原告は,飽くまで,限定された人間関係の中でコミュニケーションを取ることができるにすぎず,前記(ア)のとおり,実際に道に迷った際には,他者に援助を求めることができずに母に連絡をした際も自分がどこにいるか的確に説明することができなかったというのであり,そのような原告の安全保持及び危機対応に関する能力がその後改 に道に迷った際には,他者に援助を求めることができずに母に連絡をした際も自分がどこにいるか的確に説明することができなかったというのであり,そのような原告の安全保持及び危機対応に関する能力がその後改善したことはうかがわれないから,「身辺の安全保持及び危機対応」について,「できる」又は「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」と評価することはできない。 したがって,この点に関する被告の主張は理由がない。 キ社会性(ア) 本件診断書において,「社会性」は,具体的には,「銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また,社会生活に必要な手続きが行えるなど。」とされているところ,前記ウ(ア)のとおり,原告は,原告母とATMから現金を下ろす練習をしたことからキャッシュカードを用いて現金を下ろすことができるものの,前記エ(ア)のとおり,原告は漢字の読み書きが小学校低学年程度しかできないのであり,加えて,前記オ(イ)で説示した原告のコミュニケーション能力からすれば,原告母や友人らと何度も通ったことがある場所であればともかく,それ以外の公共施設等を一人で利用することは極めて困難であるといえるから,「社会性」について,「助言や指導があればできる」とされている本件診断書の評価は相当である。 (イ) これに対し,被告は,原告が公共交通機関を利用し,複雑な通勤経路を単身で通勤し,ATMや交通系ICカードの利用方法を習得しており,それらの利用に当たって,当初において助言が必要であったとしても,それらの行為を習得した後においては助言や指導は必要なく,社会での基本的なルールや周囲の状況に合わせた行動がおおむねできていることからすれば,「社会性」について,「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」との評価が相当であると主張する。 必要なく,社会での基本的なルールや周囲の状況に合わせた行動がおおむねできていることからすれば,「社会性」について,「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」との評価が相当であると主張する。 しかし,前記2⑶エ(ウ)及び前記ウ(ウ)のとおり,原告に係る本件会社への通勤及びATMや交通系ICカードの使用は,いずれも,原告母と練習した結果として特定の通勤経路で通勤することやATMを操作して現金を下ろすことができるようになったにすぎないのであり,そのことをもって,広く社会での基本的なルールや周囲の状況に合わせた行動ができているとは評価できないから,「社会性」について,「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」と評価するのは相当ではない。 したがって,この点に関する被告の主張は理由がない。 (3) 原告の就労状況等ア前記2⑶エのとおり,原告は,本件会社に障害者枠で採用されており,障害者対応のための講習や研修を受けている社員の支援を受けながら就労している。そして,証拠(甲21,O・3ないし5頁)によれば,本件会社では,作業中のスタッフと連絡が取れるようにするため,一つの作業場所に一人は携帯電話を所持させているほか,清掃道具の保管等についても,道具ごとに色分けをする,保管する道具の名前を記載する,所定の場所に道具をしまうためのガイドとなるラインを床に貼るなどの工夫がされていることが認められ,原告は,そのような環境の中で,書類の封入作業や掃き掃除等の単純な作業を担当している。 イまた,前記2⑶エ(ウ)のとおり,原告は自宅から本件会社まで,電車を乗り継いでγ 駅まで行き,同駅からバスに乗って本件会社まで通勤しているところ,原告は,本件会社に通勤するに当たり,原告母と何度も通勤の練習をしたというのであり,前記⑵カ(ア)のと 会社まで,電車を乗り継いでγ 駅まで行き,同駅からバスに乗って本件会社まで通勤しているところ,原告は,本件会社に通勤するに当たり,原告母と何度も通勤の練習をしたというのであり,前記⑵カ(ア)のとおり,原告は,本件学院在籍中,体育の校外授業が行われる場所に一人で行った際に道に迷ったことがあるなど,通勤通学に当たって支援が必要であった。 (4) 日常生活能力の程度ア前記⑵で検討したとおり,本件診断書における原告の日常生活能力につての記載は,おおむね相当であるといえ,当該記載及び前記⑶記載の原告の就労状況等に鑑みると,原告の日常生活能力の程度につき,「知的障害を認め,日常生活における身のまわりのことも,多くの援助が必要である(たとえば,簡単な文字や数字は理解でき,保護的環境であれば単純作業は可能である。習慣化していることであれば言葉での指示を理解し,身辺生活についても部分的にできる程度)」とされている本件診断書の判断は相当であるといえる。 イこれに対し,被告は,原告が,本件基準日において,電車等を利用して約1時間30分かけて本件会社に通勤し,約7か月の勤務経験を有し,月20日程度稼働して,7万円から9万円の収入を得ていたこと,本件会社における就労においても必要な連絡や報告等の意思伝達や対人関係についてはおおむねできていたと認められ,作業に当たって常時の保護的な見守りは不要であったことなどからすれば,原告は,一定の勤務実績が認められるだけの労働を行う能力を有していると認められ,そのような原告の就労状況は,原告の社会的適応性の一現れであり,社会的適応性が向上していると評価できるのであれば,就労により障害の程度がより軽度であると判定され得る一事情となると主張し,R医師の意見書(乙18)にはこれに沿った記載がある。 しかし, であり,社会的適応性が向上していると評価できるのであれば,就労により障害の程度がより軽度であると判定され得る一事情となると主張し,R医師の意見書(乙18)にはこれに沿った記載がある。 しかし,前記1のとおり,障害認定基準によれば,知的障害に係る障害等級の認定については,労働に従事していることをもって,直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず,現に労働に従事している者については,その療養状況を考慮するとともに,仕事の種類,内容,就労状況,仕事場で受けている援助の内容,他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断すべきであるとされているところ,前記⑶のとおり,原告は,本件会社の社員や原告母の手厚い援助や配慮の下で就労が可能になっているにすぎないというべきであり,その作業内容も単純なものにとどまっているから,原告が,本件基準日において本件会社で就労していたことをもって,原告の社会的適応性が向上しているものと評価することは相当ではない。 また,被告は,障害認定基準によれば,障害等級2級の例示が「家庭内の生活でいえば,活動の範囲がおおむね家屋内に限られるもの」とされていることを踏まえると,原告に係る通勤状況及び稼働状況に加えて,原告が休日に自宅以外の場所に出かけることもあったことなどからすれば,原告の障害の程度は,障害等級2級の例示に該当しないとも主張するが,前記⑶のとおり,原告は,本件会社の社員や原告母らの手厚い援助や配慮の下で通勤及び就労をし,前記2⑶オのとおり,休日も主に自宅内で過ごしているほか,障害者の友人と外出するほかは,決まったスーパーや自宅付近に行っているにすぎないから,「活動の範囲がおおむね家屋内に限られるもの」と評価でき,上記例示において活動の範囲が「おおむね」家屋内に限られると記載されてい 出するほかは,決まったスーパーや自宅付近に行っているにすぎないから,「活動の範囲がおおむね家屋内に限られるもの」と評価でき,上記例示において活動の範囲が「おおむね」家屋内に限られると記載されていることも踏まえると,親族及び職場の関係者等の支援を受けた結果として活動の範囲が必ずしも家屋内に限られない程度となったとしても,それをもって直ちに障害等級2級に該当しないと評価することは相当ではない。 したがって,この点に係る被告の主張は理由がなく,前記アで説示した原告の日常生活能力に係る判断について,その判断を左右するものではない。そして,本件全証拠を踏まえても,上記判断を左右するに足りる証拠はない。 (5) まとめ以上からすれば,原告の本件基準日における障害の程度は,「知的障害があり,食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって,かつ,会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため,日常生活にあたって援助が必要なもの」に該当するか,これと同等程度のものであったというべきであり,障害等級2級に該当する程度のものであったというべきである。 したがって,本件基準日における原告の障害の程度が障害等級2級に該当する程度のものではないと判断した本件処分は違法である。 4 結論よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官朝倉佳秀 裁判官野村昌也 裁判官細井直彰 裁判官 野村昌也 裁判官 細井直彰
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