平成12(ワ)55 大東建託割増賃金請求

裁判年月日・裁判所
平成13年9月10日 福井地方裁判所
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判決文本文11,344 文字)

平成12年(ワ)第55号時間外割増賃金支払請求事件(口頭弁論終結日平成13年5月31日)判決 主文 1 被告は,原告に対し,156万8340円を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを2分し,その1を被告の,その余を原告の各負担とする。 4 この判決の第1項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,328万9256円を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告に営業社員として勤務していた原告が,時間外割増賃金の支給を求め,併せて付加金の支払を命じるよう求めた事案である。 (以下,「労基法」とは平成10年法律第112号による改正前の労働基準法をいう。) 1 前提事実(争いのない事実以外は末尾に認定証拠を掲記した。)(一) 被告は,建築工事の請負・不動産売買・同仲介等を業とする会社である。 (二) 原告は,平成10年2月1日から同年7月31日まで被告に営業社員として勤務した。 具体的には,同年2月1日から同年6月30日までは被告のテナント営業社員として,同年7月1日から同月31日まではA株式会社(被告の子会社,以下「A」という。)の建築営業社員として、それぞれ勤務したものであるが、Aは平成10年10月1日被告に吸収合併されている。 (三) 原告は,勤務当時,次の給与を支給されていた。 なお,給与の計算期間は毎月1日から末日までとし,翌月15日払いとされていた(給与規程6条,3条)。 (1) テナント営業社員として2月・3月基本給 17万6160円営業手当 13万6720円その他手当 3万3000円計 34万5880円4月ないし6月 基本給 17万6160円営業手当 13万6720円その他手当 3万3000円計 34万5880円4月ないし6月基本給 17万9220円営業手当 13万8660円その他手当 3万4000円計 35万1880円(2) 建築営業社員として7月基本給 12万2000円営業手当 14万8000円その他手当 5万6000円計 32万6000円(四) 原告の勤務当時,被告(Aを含む。以下同じ。)における勤務体系及び給与体系は,就業規則及び給与規程上,次のとおり定められていた。 (1) 1日の所定内労働時間午前8時45分から午後5時15分まで7.5時間(正午から午後1時までは休憩時間)午後6時以降は時間外勤務(午後5時15分から午後6時までは休憩時間)(2) 時間外勤務手当平日割増率1.25深夜同  1.50(午前零時から午前5時まで,午後10時から午前零時まで)休日同  1.25(午前5時から午後10時まで)休日深夜同  1.50(3) 休日テナント営業社員毎週火・水曜日建築営業社員毎週土・日曜日(4) 特例扱い営業社員には時間外勤務手当の規程は適用されないとされ(給与規程35条),テナント営業社員については月31.5時間分(1日1.5時間の21日分)の時間外勤務手当が営業手当に含まれ,建築営業社員については月42時間分(1日2時間の21日分)のそれが営業手当に含まれているものとされていた(同規程別表13)。 (五) 被告は,テナント営業社員及び建築営業社員 営業手当に含まれ,建築営業社員については月42時間分(1日2時間の21日分)のそれが営業手当に含まれているものとされていた(同規程別表13)。 (五) 被告は,テナント営業社員及び建築営業社員について,次のとおり事業場外労働に関する協定を締結していた(乙4の1ないし4)。 (1) 協定締結日平成9年3月19日(乙4の1)事業所被告福井事務所事業の種類テナント営業1日の所定労働時間 7時間30分(午前8時45分から午後5時15分まで)協定で定める時間 5時間45分(午後1時から午後7時30分まで)有効期間平成9年4月1日から1年間(2) 協定締結日平成9年3月19日(乙4の2)事業所 A福井支店事業の種類建築営業1日の所定労働時間 7時間30分(午前8時45分から午後5時15分まで)協定で定める時間 6時間15分(午後1時から午後8時まで)有効期間平成9年4月1日から1年間なお,上記(1)(2)については,午前中は事業場内の勤務とし,事業場外での勤務は午後からとしており,協定で定める時間が所定労働時間以内であったことから,当該協定を労働基準監督署に届け出ていない(労基法施行規則24条の2第3項但書,弁論の全趣旨)。 (3) 協定締結日平成10年3月26日(乙4の3)事業所被告福井事務所事業の種類テナント営業1日の所定労働時間 7時間30分協定で定める時間 9時間有効期間平成10年4月1日から1年間(4) 協定締結日平成10年3月26日( 1日の所定労働時間 7時間30分協定で定める時間 9時間有効期間平成10年4月1日から1年間(4) 協定締結日平成10年3月26日(乙4の4)事業所 A福井支店事業の種類建築営業1日の所定労働時間 7時間30分協定で定める時間 9時間30分有効期間平成10年4月1日から1年間 2 争点(一) 事業場外労働に関する協定の効力(二) 被告の給与規程35条の効力(三) 同協定の原告への適用の有無(四) 原告の時間外労働時間(五) 原告に支給すべき時間外割増賃金の額(六) 付加金の可否第3 当事者の主張【原告】 1 事業場外労働に関する協定の無効事業場外労働に関する協定は,使用者と職場を代表する労働組合もしくは労働者代表が締結するのでなければ効力を有しない。 被告には労働組合が存在しないので,職場を代表する労働者代表が同協定の締結にあたったかどうかが問題となるが,同協定については労働者選出に関する書面が存在せず,選出の日時も定かでないこと,労働者代表とされる3名は平成4年4月1日から平成5年7月1日までに入社した者で,協定締結日(平成9年3月19日,平成10年3月26日)当時,入社後6年未満にすぎないことから,真実職場の労働者を代表する者が締結したとはいえず,作成手続が不適法であって無効である。 2 被告の給与規程35条の無効仮に,上記事業場外労働に関する協定が有効であるとしても,被告の「営業担当職の時間外手当」の定めは違法無効である。すなわち,(一) 被告の給与規程35条には,「営業職については時間外手当は営業手当,歩合給,業績手当に含めて支給する。」と るとしても,被告の「営業担当職の時間外手当」の定めは違法無効である。すなわち,(一) 被告の給与規程35条には,「営業職については時間外手当は営業手当,歩合給,業績手当に含めて支給する。」と定められているが,営業職と非営業職とを比較すると,いずれの場合も資格技能手当・部門業績手当を除いた賃金は同一である。 (二) このように,営業職と非営業職とは同一賃金であるのに,時間外勤務の場合,非営業職には時間外勤務手当が支給され,他方営業職には時間外勤務手当が支給されないというのは不公平かつ不合理である。 営業職の場合,時間内と時間外の賃金に合理的な区別をつけることもできないので,被告の給与規程35条の定めは無効である。 3 また,事業場外労働に関する協定が有効としても,原告に関しては,労働基準法38条の2にいう「労働時間を算定し難い」状態にあったとはいえず,原告に事業場外労働に関する協定の適用はない。 4 原告の時間外割増賃金原告の時間外労働時間は、別表「時間外労働時間算定表」の「原告主張(計)」欄に記載のとおりである。すなわち,(一) 被告の所定勤務時間は午前8時45分から午後5時15分までで,この時間を超える勤務は時間外勤務とすべきである。 このうち始業時間は,被告の指示によりほとんど全ての社員が午前8時前後に出社し,清掃及び書類の整理の後,営業職の場合は午前8時45分から約5分程の朝礼をすませてすぐに現場や顧客先に出掛けていたから,午前8時45分より前の労働も時間外労働というべきである。 (二) 原告の場合も,上司から午前8時頃出勤するよう指示され,現実に午前8時頃に出勤している上,出勤後書類の整理やテナント営業担当者日報を参照して当日の営業計画を立て,朝礼後,営業現場に出掛けていた。 ) 原告の場合も,上司から午前8時頃出勤するよう指示され,現実に午前8時頃に出勤している上,出勤後書類の整理やテナント営業担当者日報を参照して当日の営業計画を立て,朝礼後,営業現場に出掛けていた。現場に出ても,携帯電話で上司や同僚の指示を受けて業務にあたり,営業後,会社に立ち寄り日報を提出して上司に当日の営業内容を報告してから帰宅するのが実情であった。 (三) 別表「時間外労働時間算定表」の「原告主張(計)」欄記載の時間を基礎に時間外割増賃金を計算すると,同表「割増賃金合計(原告主張)」欄記載のとおり,原告が受けるべき時間外割増賃金の額は合計164万4628円となる。 5 付加金の支払命令(一) 原告が被告に勤務していた6か月間の総実労働時間は1497時間で,そのうち時間外労働時間は479時間である。このような長時間労働は原告のみが強いられたわけではなく,被告の大多数の労働者に共通のものである。 (二) 被告は,東京証券取引所第1部に上場している一流企業で社会的責任は重いにもかかわらず,我が国が官民を挙げて取り組んでいる労働時間の短縮に全く取り組んでいない。 のみならず,被告は,営業担当職の時間外割増賃金は営業手当に含まれているなどと,あたかも同割増賃金請求権がないかのような主張をし,業務担当職に対しても,1か月の実時間外労働80時間前後のうち16時間弱の割増賃金しか支払っていない実情にある。 (三) このように,被告は,一流企業でありながら労働基準法37条に違反しているのみならず,労働時間短縮を求める公益にも反しているから,時間外割増賃金と同額の付加金の支払を命じるべきである。 【被告】 6 時間外割増賃金請求権の不存在(一)  被告の就業規則によれば,1日の所定労働時間は午前8時45分から午後5時15分ま 時間外割増賃金と同額の付加金の支払を命じるべきである。 【被告】 6 時間外割増賃金請求権の不存在(一)  被告の就業規則によれば,1日の所定労働時間は午前8時45分から午後5時15分までで,うち正午から午後1時までは所定休憩時間とされており,所定労働時間を超える場合は時間外勤務となるが,午後5時15分から午後6時までは時間外勤務を行う者の休憩(食事)時間とされているため,午後6時以降が時間外勤務となる。 (二)  原告は、営業担当職にあったが,被告の給与規程によれば,営業担当職には時間外勤務手当の規定の適用はなく,営業手当・シニア営業手当・歩合給・業績手当に含めて支給するものとされている。 具体的には,テナント営業担当職については1か月31.5時間分(1日1.5時間×21日分),建築営業担当職については1か月42時間分(1日2.0時間×21日分)の時間外勤務手当が営業手当に含まれている(給与規程別表13)。 (三)  被告は,営業担当職については事業場外労働に関する協定を締結していて労働基準監督署に届け出ているし,原告は,このような被告の給与体系等を了承して採用されたものであるから、時間外割増賃金の請求権はない。 7 事業場外労働に関する協定の有効性上記事業場外労働に関する協定は,被告に労働組合が存在しないため,定期的に実施している支店総合会議又は朝礼の場で,管理職以外の社員で労働者の過半数を代表する者を選出し,その者との間で締結したもので有効である。 8 給与規程35条の有効性原告は,営業担当職と非営業担当職との賃金が同一であることを根拠に給与規程35条を無効と主張するが,営業担当職の業務内容及び歩合給などを支給されている実態を無視するもので不当である。 テナント営業職の歩合給は,( と非営業担当職との賃金が同一であることを根拠に給与規程35条を無効と主張するが,営業担当職の業務内容及び歩合給などを支給されている実態を無視するもので不当である。 テナント営業職の歩合給は,(家賃+仲介手数料)×歩合給率(2.2ないし10%)で算定し(但し,家賃+仲介手数料の額が1か月100万円以下のときは歩合給率は0%),建築営業職の歩合給は,請負金額(平均7000万円)×歩合給率(2.0%程度)により算定する。 平成12年4月以降1年間の実績をみても,テナント営業職は1人月額平均19万円余,建築営業職は1人月額平均24万円余の歩合給を受けているのに対し,非営業担当職は1人月額平均約3万8000円の時間外勤務手当を受けているにすぎず,営業担当職は非営業担当職に比較して相当高額の歩合給を支給されている。 9 時間外割増賃金の算定仮に原告に時間外割増賃金請求権があるとしても,営業担当職については営業手当の中に時間外手当相当額を含めて支給しているから,協定時間を超える時間外勤務分の時間外手当を算定するには,営業手当中の時間外手当相当額を差し引いて1時間当たりの賃金を算出する必要がある。 (一) テナント営業担当職の場合時間外手当を含む賃金(基本給+営業手当+その他の手当)から次の営業手当中の時間外手当相当額を差し引き,月平均所定労働時間(150時間)で除した額が1時間当たりの賃金となる。 営業手当中の時間外手当相当額の算定は次のとおりである。 ア午後6時から午後6時30分までの30分について1時間当たりの賃金×1.0(割増率)×10.5時間(30分×21日)イ午後6時30分から午後7時30分までの1時間について1時間当たりの賃金×1.25(割増率)×21.0時間(1時間×21日)(二) .0(割増率)×10.5時間(30分×21日)イ午後6時30分から午後7時30分までの1時間について1時間当たりの賃金×1.25(割増率)×21.0時間(1時間×21日)(二) 建築営業担当職の場合テナント営業担当職と同様であるが,営業手当中の時間外手当相当額の算定は次のとおりである。 ア午後6時から午後6時30分までの30分について1時間当たりの賃金×1.0(割増率)×10.5時間(30分×21日)イ午後6時30分から午後8時までの90分について1時間当たりの賃金×1.25(割増率)×31.5時間(90分×21日)(三) 原告の時間外勤務手当を算定するには,上記(一)(二)で算出した1時間当たりの賃金に協定時間を超える時間外勤務時間を乗じ,規定の割増率を乗じて算出することになり,具体的に算定すると,次のとおりとなる。 平成10年2月 1万9701円同年3月 9万2456円同年4月 8万4939円同年5月 9万2994円同年6月 9万1915円同年7月 3万9613円計42万1618円 10 付加金労働基準法114条の付加金は,使用者の義務違反に対する制裁としての性格を有するものであるから,たとえ同法37条違反の事実があったとしても,時間外勤務手当の不支給が悪質なものであるなどの事情がない限り,命じることはできない。 被告は,営業担当職の時間外勤務手当は営業手当の中に含めて支給しており,また,営業担当職には実績に応じて高額の歩合給を支給しているのであるから,そもそも同法37条に違反する事実はない。 仮にそうでないとしても,上記のような営業担当職への待遇などから,違反の事実を認識していなかったこ に応じて高額の歩合給を支給しているのであるから,そもそも同法37条に違反する事実はない。 仮にそうでないとしても,上記のような営業担当職への待遇などから,違反の事実を認識していなかったことには無理からぬところがあり,付加金を課すほどの悪質性はない。 第4 当裁判所の判断 1 原告の事業場外労働の実情前提事実,証拠(甲2,3,乙5)及び弁論の全趣旨によれば,原告の勤務の実情は次のとおりであったことが認められる。 (一) 被告における所定労働時間は午前8時45分から午後5時15分までと定められていたが,始業時間はほとんどの社員が被告の指示により午前8時頃出社しており,原告も,午前8時頃出勤してタイムカードを打刻した上,当日予定の書類を整理し,テナント営業担当者日報を参照して当日の営業計画を立て,午前8時45分の朝礼を済ませた後,直ちに事業場内外の勤務に就いていた。 (二) テナント営業担当者は携帯電話を所持することが指示されており,原告も,登録された携帯電話を常時所持して上司や同僚の指示を受けながら事業場外の業務に従事し,また,原告からも携帯電話を使用して上司に連絡をとり,あるいは事業場に出入りをして,その都度経過を報告し相談しながら業務を遂行していた。 (三) 事業場外での業務を終えた後は,原告は,そのまま帰宅することはなく,必ず会社に立ち寄り,テナント営業担当者日報を提出して当日の業務内容や翌日の予定などを上司に報告した上,タイムカードを打刻して帰宅するのが常態であった。 このような事業場外労働の実情は,原告が建築営業社員になってからも同様であった。 2 労基法38条の2の適用除外ところで,労基法38条の2は,事業場外で業務に従事した場合において,労働時間を算定し難いときは,所定労働時間労働したもの 員になってからも同様であった。 2 労基法38条の2の適用除外ところで,労基法38条の2は,事業場外で業務に従事した場合において,労働時間を算定し難いときは,所定労働時間労働したものとみなし(第1項本文),当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては,(中略)当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす(同項ただし書)こととし,さらに,同条第2項は,労働者代表との書面による協定において,当該業務の遂行に通常必要とされる時間を定めたときは,その時間を第1項ただし書の時間とするものと定めている。 これは,事業場外で労働する場合,使用者の具体的な指揮監督が労働者に及ばず,労働時間の算定が困難なことが予想されるため,労働時間の算定を適切に行う趣旨で規定されたものであるから,同条が適用されるのは,あくまで使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難なときに限られるというべきである。 被告においては,労基法38条の2に基づき,労働者代表との間に事業場外労働に関する協定を締結していたことは上記(前提事実(五))のとおりである。 しかし,原告を含むテナント営業社員・建築営業社員の事業場外労働の実情は上記1で認定したとおりであって,その始業時間・終業時間はタイムカードによって管理把握され,かつ,事業場外での労働時間中も携帯電話を通じた事業場との連絡・指示により常時管理されていたのであるから,その事業場外労働は被告の指揮監督下にあったものと認めるのが相当であり,事業場外労働時間の算定が困難であったということはできない。 したがって,上記事業場外労働に関する協定にもかかわらず,原告に関しては,事業場外労働時間の算定はタイムカードにより把握された 相当であり,事業場外労働時間の算定が困難であったということはできない。 したがって,上記事業場外労働に関する協定にもかかわらず,原告に関しては,事業場外労働時間の算定はタイムカードにより把握された実労働時間によるべきである。 3 原告の時間外労働時間数(一) 原告の現実の労働時間が別表「時間外労働時間算定表」の「出勤時間」欄記載の時刻から同表「退勤時間」欄記載の時刻まで(但し,正午から午後1時までの休憩は除く。)であることは争いがないから,原告の実労働時間は同表「実労働時間」欄記載のとおりとなる。 (二) 被告の就業規則に定められた所定労働時間は午前8時45分から午後5時15分までの7.5時間であるから,原告の実労働時間のうち,法定時間外労働時間は同表「法定外労働時間」欄記載のとおりとなり,所定時間外労働時間は同表「所定外労働時間」欄記載のとおりとなる。 そして,法定時間外労働時間のうち,平日の時間外労働時間は同表「法定外労働時間(平日)」欄に,平日深夜のそれは同表「法定外労働時間(平日深夜)」欄に各記載のとおりである。 (三) 被告は,就業規則上午後5時15分から午後6時までは休憩時間と定められていることを根拠に,午後6時以降が時間外労働時間となると主張する。 しかし,甲2及び弁論の全趣旨によれば,原告は,午後5時15分以降も,現実に休憩を取ることなく継続して被告の指揮監督下に事業場外労働に従事していたと認められるのであって,そうである以上,就業規則の定めにかかわらず,午後5時15分以降も時間外労働時間に含まれるものというべきである。 4 原告の時間外割増賃金の額(一) 被告における時間外割増賃金の割増率は平日が1.25,平日深夜が1.50である(争いがない)。 (二) 原告が被告から支給されていた賃金は,平成10年2月・3 4 原告の時間外割増賃金の額(一) 被告における時間外割増賃金の割増率は平日が1.25,平日深夜が1.50である(争いがない)。 (二) 原告が被告から支給されていた賃金は,平成10年2月・3月が34万5880円,同年4月ないし6月が35万1880円,同年7月が32万6000円である(争いがない)。 被告では営業担当社員に支給する営業手当中に時間外勤務手当相当分を一定割合含めて支給している(給与規程44条,同別表13)ので,時間外割増賃金を算定するにあたっての1時間当たりの基礎賃金は,原告が現実に支給された上記賃金から営業手当中の時間外勤務手当相当額を差し引き,それを月平均所定労働時間(被告の場合それが150時間であることは争いがない。)で除することにより算出すべきである。 そして,営業手当中に含まれる時間外勤務手当相当額は,テナント営業社員につき月31.5時間分(1日1.5時間の21日分),建築営業社員につき月42時間分(1日2時間の21日分)であることは上記のとおりである。 したがって,その方式により計算すると,原告の1時間当たりの基礎賃金は,平成10年2月・3月が1852円,同年4月ないし6月が1884円,同年7月が1631円となる。 (三) 以上に基づき,原告の時間外割増賃金を算定すると,以下のとおりとなる。 平成10年2月分基礎賃金 1852円平日時間外労働時間 52時間39分(内21時間分は営業手当で支給済み)所定外労働時間 10時間30分(10.5時間分は営業手当で支給済み)算式1852×(52.65-21)×1.25=7万3269円1852×(10.5-10.5)=0円計 7万3269円平成10年3月分基礎賃金 業手当で支給済み)算式1852×(52.65-21)×1.25=7万3269円1852×(10.5-10.5)=0円計 7万3269円平成10年3月分基礎賃金 1852円平日時間外労働時間 90時間(内21時間分は営業手当で支給済み)平日深夜時間外労働時間 2時間54分所定外労働時間 11時間30分(10.5時間分は営業手当で支給済み)算式1852×(90-21)×1.25=15万9735円1852×2.90×1.50=8056円1852×(11.5-10.5)=1852円計 15万9735円+8056円+1852円=16万9643円平成10年4月分基礎賃金 1884円平日時間外労働時間 80時間45分(内21時間分は営業手当で支給済み)平日深夜時間外労働時間 2時間48分所定外労働時間 10時間(10.5時間分は営業手当で支給済み)算式1884×(80.75-21)×1.25=14万0711円1884×2.8×1.50=7912円1884×(10-10.5)=-942円計 14万0711円+7912円-942円=14万7681円平成10年5月分基礎賃金 1884円平日時間外労働時間 74時間35分(内21時間分は営業手当で支給済み)平日深夜時間外労働時間 5時間35分所定外労働時間 9時間30分(10.5時間分は営業手当で支給済み)算式1884×(74.583-21)×1.25=12万6188円1884 35分所定外労働時間 9時間30分(10.5時間分は営業手当で支給済み)算式1884×(74.583-21)×1.25=12万6188円1884×5.583×1.50=1万5778円1884×(9.5-10.5)=-1884円計 12万6188円+1万5778-1884円=14万0082円平成10年6月分基礎賃金 1884円平日時間外労働時間 88時間22分(内21時間分は営業手当で支給済み)平日深夜時間外労働時間 2時間50分所定外労働時間 11時間(10.5時間分は営業手当で支給済み)算式1884×(88.36-21)×1.25=15万8648円1884×2.83×1.50=8006円1884×(11-10.5)=942円計 15万8648円+8006+942円=16万7596円平成10年7月分基礎賃金 1631円平日時間外労働時間 73時間38分(内31.5時間分は営業手当で支給済み)所定外労働時間 10時間30分(10.5時間分は営業手当で支給済み)算式1631×(73.63-31.5)×1.25=8万5899円1631×(10.5-10.5)=0円計 8万5899円以上合計 78万4170円 5 付加金被告は,労基法114条に基づく付加金が同法によって課せられた使用者の義務違反に対する制裁としての性格を有する以上,付加金の支払命令の対象となる使用者は,時間外勤務手当の不払い状況が特に悪質であると思料される者に限られるべきであると主張する。 しかし,同法37条は,割増賃金の支払を使用者に義務付けることによって,長時間労働や休日あるいは深夜労働を間接的に抑制し,も が特に悪質であると思料される者に限られるべきであると主張する。 しかし,同法37条は,割増賃金の支払を使用者に義務付けることによって,長時間労働や休日あるいは深夜労働を間接的に抑制し,もって労働者が人間らしい生活を確保できるよう図るとともに,法制上例外的に認められるにすぎない時間外労働が労働者の自由な時間を奪い,肉体的にも精神的にもより多くの負担を与えることを考慮し,これに対する補償を十分になさしめようとすることにあると解するのが相当であるから,同条による割増賃金の支払に関する規定は強行法規というべきである。 したがって,時間外割増賃金の不払いはそれ自体において悪質な行為との推定が働くのであって,不払いが使用者の責に帰すべきでない特段の事情を使用者において主張立証しない限り,同法114条による付加金の支払命令を免れることはできないと解するのが相当である。 そして,本件においては,被告が付加金の支払命令を免れるべき特段の事情があるとは認めることができないから,被告に対し,上記の未払割増賃金と同額の付加金を支払うよう命じるのが相当である。 第5 結論以上の次第で,原告の本件請求は,未払割増賃金78万4170円及びこれと同額の付加金の支払を求める限度で理由がある。 よって,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結日平成13年5月31日)福井地方裁判所民事部裁判官小原卓雄

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