令和2(わ)88 モーターボート競走法違反,所得税法違反

裁判年月日・裁判所
令和2年10月21日 名古屋地方裁判所
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判決文本文5,846 文字)

主文 (被告人Aについて)被告人Aを懲役3年に処する。 被告人Aに対し,未決勾留日数のうち140日をその刑に算入する。 被告人Aから3725万円を追徴する。 (被告人Bについて)被告人Bを懲役3年及び罰金1100万円に処する。 被告人Bにおいてその罰金を完納することができないときは,金2万円を1日に換算した期間,同被告人を労役場に留置する。 被告人Bに対し,この裁判が確定した日から5年間その懲役刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)第1(令和2年3月25日付け起訴状記載の公訴事実に相当するもの)被告人Bは,モーターボート競走で的中した勝舟投票券の払戻金を他人名義の預金口座に入金させるなどの方法により所得を秘匿した上,別表1記載のとおり,「年分」欄記載の平成28年分から平成30年分の各年分における実際総所得金額が,それぞれ「実際総所得金額」欄記載のとおりであったにもかかわらず,所得税及び復興特別所得税の法定納期限である「法定納期限」欄記載の各日までに,津市桜橋2丁目99番地所轄津税務署長に対し,所得税及び復興特別所得税確定申告書を提出しないで同期限を徒過させ,もって不正の行為により,「所得税額及び復興特別所得税額」欄及び「ほ脱所得税額」欄記載のとおり,前記各年分の所得税額及び復興特別所得税額合計3651万0200円のうち,所得税額合計3575万9256円を免れたものである。(罪となるべき事実に係る計算関係は別紙1ないし3記載のとおりである。)第2(令和2年2月17日付け起訴状記載の公訴事実第1に相当するもの) 被告人Aは,一般財団法人Cに登録されたモーターボート競走の選手であったものであり,被告人Bは,被告人Aの親族であるが,被告人両名は,共謀の上, 1 被告 訴事実第1に相当するもの) 被告人Aは,一般財団法人Cに登録されたモーターボート競走の選手であったものであり,被告人Bは,被告人Aの親族であるが,被告人両名は,共謀の上, 1 被告人Bにおいて被告人Aが出走するモーターボート競走に関して同人を第2着あるいは第3着とする三連勝単式舟券を複数購入した上,同人が同競走において意図的に第2着あるいは第3着となることにより,多額の払戻金を得ようと考え,別表2記載のとおり,(住所省略)Dモーターボート競走場ほか7か所において,平成31年1月22日午後3時42分頃実施された,E組合施行に係る第11競走ほか8競走に関し,被告人Bが,津市(住所省略)同人方ほか1か所において,スマートフォンで一般財団法人Fが運営するインターネット投票サービス「G」を利用して,第1号艇で出走する被告人Aを第2着あるいは第3着とする三連勝単式舟券を複数購入した上,同人が同競走に出走して意図的に「被告人Aの出走結果」欄記載の着順となり,もって偽計を用いて競走の公正を害すべき行為をし, 2 被告人Bにおいて被告人Aが出走するモーターボート競走に関して同人を第1着から第3着に含めない三連勝単式舟券を複数購入した上,同人が同競走において意図的に着外となることにより,多額の払戻金を得ようと考え,別表3記載のとおり,(住所省略)Hモーターボート競走場ほか4か所において,平成31年2月9日午後7時24分頃実施された,H市施行に係る第10競走ほか8競走に関し,被告人Bが,同人方ほか1か所において,前同様の方法で,「被告人Aの出走結果」欄記載の艇番で出走する同人を第1着から第3着に含めない三連勝単式舟券を複数購入した上,同人が同競走に出走して意図的に同欄記載の着順となり,もって偽計を用いて競走の公正を害すべき行為をした 果」欄記載の艇番で出走する同人を第1着から第3着に含めない三連勝単式舟券を複数購入した上,同人が同競走に出走して意図的に同欄記載の着順となり,もって偽計を用いて競走の公正を害すべき行為をしたものである。 第3(令和2年2月17日付け起訴状記載の公訴事実第2に相当するもの) 一般財団法人Cに登録されたモーターボート競走の選手であった被告人Aは,被告人Bから,別表4記載のとおり,「趣旨」欄記載の趣旨で供与されるものであることを知りながら,「交付年月日」欄記載のとおり,平成31年1月22日頃から令和元年9月21日頃までの間,15回にわたり,「交付の方法」欄記載の方法で,合計362万円の振込入金及び現金合計3063万円の交付を受け,もってその競走に関して賄賂を収受したものである。 第4(令和2年2月17日付け起訴状記載の公訴事実第3に相当するもの)被告人Bは,一般財団法人Cに登録されたモーターボート競走の選手であった被告人Aに対し,別表4記載のとおり,「趣旨」欄記載の趣旨で,「交付年月日」欄記載のとおり,平成31年1月22日頃から令和元年9月21日頃までの間,15回にわたり,「交付の方法」欄記載の方法で,合計362万円を振込送金及び現金合計3063万円を交付し,もってその競走に関して賄賂を供与したものである。 第5(令和2年1月28日付け起訴状記載の公訴事実第1に相当するもの)被告人Aは,一般財団法人Cに登録されたモーターボート競走の選手であったものであり,被告人Bは,被告人Aの親族であるが,被告人両名は,共謀の上, 1 被告人Bにおいて被告人Aが出走するモーターボート競走に関して同人を第1着から第3着に含めない三連勝単式舟券を複数購入した上,同人が同競走において意図的に着外となることにより,多額の払戻金を得ようと 被告人Bにおいて被告人Aが出走するモーターボート競走に関して同人を第1着から第3着に含めない三連勝単式舟券を複数購入した上,同人が同競走において意図的に着外となることにより,多額の払戻金を得ようと考え,(住所省略)Iモーターボート競走場において,令和元年7月2日午後1時36分頃実施された,J県施行に係る第7競走に関し,被告人Bが,津市(住所省略)同人方において,スマートフォンで一般財団法人Fが運営するインターネット投票サービス「G」を利用して,第2号艇で出走する被告人Aを第1着から第3着に含めない三連勝単式舟券を複数購入した上,同人が同競走に出走して意図的に第4着となり,もって偽計を用いて競走の公正を 害すべき行為をし, 2 被告人Bにおいて被告人Aが出走するモーターボート競走に関して同人を第2着あるいは第3着とする三連勝単式舟券を複数購入した上,同人が同競走において意図的に第2着あるいは第3着となることにより,多額の払戻金を得ようと考え,前記Iモーターボート競走場において,同日午後3時19分頃実施された,J県施行に係る第10競走に関し,被告人Bが,前同様の方法で,第1号艇で出走する被告人Aを第2着あるいは第3着とする三連勝単式舟券を複数購入した上,同人が同競走に出走して意図的に第2着となり,もって偽計を用いて競走の公正を害すべき行為をしたものである。 第6(令和2年1月28日付け起訴状記載の公訴事実第2に相当するもの)一般財団法人Cに登録されたモーターボート競走の選手であった被告人Aは,被告人Bから,前記第5の1の競走において第4着となったこと及び前記第5の2の競走において第2着となったことに対する報酬の趣旨で供与されるものであることを知りながら,同月2日頃,前記被告人B方において,現金200万円の交付を受け, おいて第4着となったこと及び前記第5の2の競走において第2着となったことに対する報酬の趣旨で供与されるものであることを知りながら,同月2日頃,前記被告人B方において,現金200万円の交付を受け,さらに,同月3日頃,同所において,現金100万円の交付を受け,もってその競走に関して賄賂を収受したものである。 第7(令和2年1月28日付け起訴状記載の公訴事実第3に相当するもの)被告人Bは,一般財団法人Cに登録されたモーターボート競走の選手であった被告人Aに対し,前記第6の趣旨で,同月2日頃,前記被告人B方において,現金200万円を交付し,さらに,同月3日頃,同所において,現金100万円を交付し,もってその競走に関して賄賂を供与したものである。 (法令の適用)被告人Aの判示第2,第5の所為は包括して刑法60条,モーターボート競走法76条に,判示第3,第6の所為は包括して同法72条前段にそれぞれ該当するところ,判示第2,第5の包括一罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は刑法4 5条前段の併合罪であるから,刑法47条本文,10条により犯情の重い判示第3,第6の包括一罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人Aを懲役3年に処し,刑法21条を適用して未決勾留日数中140日をその刑に算入することとし,被告人Aが判示第3,第6の犯行により収受した賄賂は没収することができないので,モーターボート競走法74条後段によりその価額金3725万円を被告人Aから追徴することとする。 被告人Bの判示第1の所為は所得税法238条1項に,判示第2,第5の所為は包括して刑法60条,モーターボート競走法76条に,判示第4,第7の所為は包括して同法75条1項にそれぞれ該当するところ,各所定刑中判示第1の罪については懲役刑及び罰金刑を,判示第2,第5の包 為は包括して刑法60条,モーターボート競走法76条に,判示第4,第7の所為は包括して同法75条1項にそれぞれ該当するところ,各所定刑中判示第1の罪については懲役刑及び罰金刑を,判示第2,第5の包括一罪については罰金刑を,判示第4,第7の包括一罪については罰金刑をそれぞれ選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,罰金刑については刑法48条2項により判示各罪所定の罰金の多額を合計し,所定刑期及びその金額の範囲内で被告人Bを懲役3年及び罰金1100万円に処し,その罰金を完納することができないときは,刑法18条により金2万円を1日に換算した期間被告人Bを労役場に留置することとし,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その懲役刑の執行を猶予することとする。 (量刑の理由)まず,被告人両名に共通する事情をみる。モーターボート競走法違反の不正競走により勝舟投票券を的中させて得た払戻金の合計額は約1億1160万円と極めて多額にのぼる。これに関して,被告人Bが供与し,被告人Aが収受した賄賂の金額は合計3725万円と極めて多額である。これらのことからすると,被告人両名の犯行は,モーターボート競走の公正及びこれに対する社会の信頼を著しく侵害したといえる。犯行態様は,被告人Aが不正競走を行い,被告人Bが舟券を購入して払戻金を受け取るというように役割を分担した計画的なものである上,レース前の使用が禁止されている携帯電話を利用して,被告人Aのレース運びを競走前に申し合 わせたり,意図的に第2着又は第3着になる手法と着外となる手法を適度に織り混ぜて不正が発覚しないように画策するなど,大胆かつ巧妙なものであった。一時的な中断の時期はあったが,不正競走は,平成28年から令和元年まで繰り返し行われており,常習的犯行といえる 手法を適度に織り混ぜて不正が発覚しないように画策するなど,大胆かつ巧妙なものであった。一時的な中断の時期はあったが,不正競走は,平成28年から令和元年まで繰り返し行われており,常習的犯行といえる。 ここで,被告人Aの個別の事情をみる。被告人Aは,モーターボート競走選手として習得した高い技能を悪用して,不正が発覚しないよう巧みに航走して意図的に着順を操作したのであるから,犯行を遂行するにあたって必要不可欠の役割を果たした。被告人Aが収受した賄賂の金額は合計3725万円と極めて多額である。被告人Aは,当時,モーターボート競走選手として2000万円を超える多額の年収を得ていながら,競輪や競馬等に費消するために犯行を行ったのであるから,身勝手な動機に酌むべき事情はない。以上により,被告人Aの刑事責任は重い。 そうすると,被告人Aが当公判廷において自らの犯行を認めたこと,犯行後モーターボート競走選手を引退したこと,被告人Aには前科がないことといった事情を考慮しても主文のとおりの刑に処するのが相当である。 次に,被告人Bに個別の事情をみる。モーターボート競走法違反についてみると,被告人Bは,不正が発覚しないようにオッズを調整しつつ,かつ,高額の払戻金が得られるよう画策して舟券を購入していたのであるから,重要な役割を果たしたといえる。また,不正に入手した払戻金約1億1160万円のうちの約半分という多額の利得を得た。被告人Bは,仕事をして生活に困らない収入を得ていたにもかかわらず,老後の資金を確保するために犯行を行ったのであるから,身勝手な動機に酌むべき事情はない。所得税法違反についてみると,ほ脱税額は,合計約3575万円と高額である上,ほ脱率は100パーセントと高率である。舟券の払戻金を他人名義の銀行口座に入金させて脱税の発覚を妨げようとした き事情はない。所得税法違反についてみると,ほ脱税額は,合計約3575万円と高額である上,ほ脱率は100パーセントと高率である。舟券の払戻金を他人名義の銀行口座に入金させて脱税の発覚を妨げようとしたのであり,巧妙といえる。以上により,被告人Bの刑事責任は重い。 しかしながら,被告人Bは,平成28年から平成30年までの所得に関して,5000万円を予納して本税及び延滞税を納付し,不足額約264万円を支払って重 加算税及び無申告加算税を納付し,令和元年の所得についても不正競走により得た収入を申告してこれに基づく税額を納付するなどして,不正競走により得た利得を国庫に帰属させたこと,被告人Bの妻が当公判廷において今後の監督を誓ったこと,被告人Bには前科があるが,相当前のものであることといった事情もある。そこで,今回は主文のとおりの刑に処するのが相当である。 (求刑被告人Aについて懲役4年,追徴3725万円,被告人Bについて懲役3年,罰金1100万円)令和2年10月21日名古屋地方裁判所刑事第3部裁判官西前征志

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