【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人を懲役二月に処する。 この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。 当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
主 文 原判決を破棄する。 被告人を懲役二月に処する。 この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。 当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理 由 本件控訴の趣意は、検察官清水博作成の控訴趣意書記載のとおりであり、これに 対する答弁は、弁護人川崎伸男作成の答弁書記載のとおりであるから、これらを引 用する。 論旨は、法令の解釈適用の誤りを主張するものである。そこで、所論及び答弁に かんがみ、記録を調査し、当審における事実取調べの結果及び弁論をも参酌して検 討する。 一 裁判の経過及び当事者の主張 1 本件公訴事実は、「被告人は、平成元年九月二四日午後一時三二分ころ、道 路標識によりその最高速度が七〇キロメートル毎時と指定されている大阪府三島郡 a町大字b名神高速自動車国道本線上り四九八・五キロポスト付近道路において、 その最高速度を九〇キロメートル超える一六〇キロメートル毎時の速度で普通乗用 自動車を運転して進行したものである。」というものである(以下、「本件速度違 反」という。また、右の場所を「第二現場」という。)。 2 原審で取り調べた関係証拠によれば、右1の事実のほか、被告人は、「平成 元年九月二四日午後一時二二分ころ、道路標識によりその最高速度が八〇キロメー トル毎時と指定されている大阪府吹田市cd丁目名神上り五一七・九キロポスト付 近道路において、その最高速度を六五キロメートル超える一四五キロメートル毎時 の速度で普通乗用自動車を運転して進行した。」という道路交通法違反の罪により 平成元年一二月八日大阪池田簡易裁判所で略式命令により罰金一〇万円に処せら れ、この裁判は平成二年一月五日確定したことが認められる(以下、「別件速度違 反」という。また、右の場所を「第一現場」という り 平成元年一二月八日大阪池田簡易裁判所で略式命令により罰金一〇万円に処せら れ、この裁判は平成二年一月五日確定したことが認められる(以下、「別件速度違 反」という。また、右の場所を「第一現場」という。)。 3 ところが原判決は、本件速度違反及び別件速度違反の各事実を認めながら、 この両者は動機が同一で両地点間の全行程を通じて一貫しているだけではなく、両 地点の進行速度差は一五キロメートル、速度超過の差も二五キロメートル(被告人 の認識を基準にすれば一五キロメートル)に過ぎず、両速度違反の日時・場所も、 時間にして一〇分、距離にして約一九・四キロメートルと比較的近接しており、さ らに、被告人は途中約四キロメートルの急カーブで時速約一〇〇キロメートルない しはそれを下回る速度に減速して進行した以外は、終始約一四〇ないし一六〇キロ メートル毎時の高速度で進行し、しかも、右減速進行した理由は急カーブという自 然的・物理的障害によるもので、右急カーブの地点で客観的には甚だしい速度違反 の状態が一旦解消されているとはいえ、右地点で速度違反の犯意の断絶があった、 すなわち、当初の速度違反の犯意が一旦解消され、右地点を過ぎる直前あるいは右 地点を過ぎてから、新たに甚だしい速度違反の犯意が発生したとみるのは困難であ るから、この両速度違反は、時間的・場所的に比較的近接した地点において、包括 的犯意の下になされたものとして、包括一罪と評価するのが相当であり、したがっ て、本件速度違反については、包括一罪の一部につき既に確定裁判があったことに なるから、確定判決を経たものとして、刑事訴訟法三三七条一号により、被告人に 対し、免訴の言渡しをした。 4 検察官の主張 速度違反の罪はその保護法益や規定の仕方からみて即成犯と解すべきであるの に、原判決は、速度違反の罪は継続犯であるとの誤った前提 条一号により、被告人に 対し、免訴の言渡しをした。 4 検察官の主張 速度違反の罪はその保護法益や規定の仕方からみて即成犯と解すべきであるの に、原判決は、速度違反の罪は継続犯であるとの誤った前提に立ち、また、最高裁 の判例、通説の示す包括一罪の判断基準を無視し、保護法益が単一であること、犯 意が単一又は継続していること、行為の日時・場所が近接していることの要件を欠 き、包括して一罪と評価すべき理由がないにもかかわらず、別件速度違反と本件速 度違反とは包括一罪であるとする過ちを犯したものであって、これは道路交通法二 二条一項、四条一項、一一八条一項二号及び刑法四五条ひいては刑事訴訟法三三七 条一号の解釈適用を誤ったものであり、このような法令の解釈適用の誤りが判決に 影響を及ぼすことは明らかである。 5 弁護人の答弁 速度違反の罪は即成犯ではなく、継続犯である、また、本件の二つの速度違反 は、同一の構成要件であり、行為態様が同種であり、行為の日時、場所が極めて近 接しており、保護法益は同一と言って良く、犯意の中断はなく、同一の動機の下に 犯意は単一かつ継続しているから、仮に形式的に二罪であるとするなら、本件では 包括一罪の法理か当然に適用されてしかるべきである。 二 当裁判所の判断 1 まず、本件の事実関係をみると、前記認定の一・1及び2の事実のほか、関 係証拠によれば、こうした各速度違反が発生した名神高速自動車国道本線上りの関 係部分における道路状況及び速度規制は別紙のとおりであり、なお、右各速度違反 は各現場に設置されていた速度違反自動取締装置により写真撮影されるなどして検 挙されたものであること、五〇一・七キロポストに設置の速度違反自動取締装置は 当時作動を停止していたこと、豊中インターチェンシから天王山トンネルまでの右 道路には、上り線用として、随所に、速 などして検 挙されたものであること、五〇一・七キロポストに設置の速度違反自動取締装置は 当時作動を停止していたこと、豊中インターチェンシから天王山トンネルまでの右 道路には、上り線用として、随所に、速度規制標識、同規制予告板が設置されてい るほか、速度違反自動取締装置の手前にはその警告予告板が、また長い下り坂では 速度注意警戒標識、下り坂では速度注意板等が設置されていることの各事実が認め られる。 また、被告人は、検察官に対する供述調書や原審公判で、「当日は、午後二時か ら同二〇分の間に、滋賀県下にある名神高速栗東インターチェンジ付近のAで友人 と待ち合わせる約束をしていたので、サングラスをかけ、私が買ったポルシェを運 転して豊中インターチェンジから名神高速に入り、大体一〇〇キロメートルから一 四〇、一五〇キロメートル毎時で進行した。右側車線を走り、前に遅い車がいたら 車線を変え追い抜いて行った。レーダーの写真撮影には二回とも気付かなかった。 名神高速は相当走っており、道路自体は良く知っているが、レーダーのある場所は 知らなかった。第二現場の制限時速は七〇でなく八〇キロメートル毎時と思ってい た。五〇五・三キロポストからカーブに入る直前では一〇〇キロメートル毎時で走 った。速度計でなく、いつも回転計を見て走った。交通標識は見ていると思います が、ここは八〇キロ、ここは七〇キロというように記憶に留めていない。私の車に はもともと一〇〇キロメートル毎時を超えると警告音を出す装置はついていな い。」旨供述している。この供述が殊更嘘を言っているとは思われない。 2 検察官は、原判決が速度違反罪を継続犯とみたのは誤りであると論難し、他 方、弁護人は原判決の結論に賛同しつつも、原判決が速度違反罪を継続犯とみなか ったのは誤りであると主張する。そこで、このような点を含めて、本件の罪数 が速度違反罪を継続犯とみたのは誤りであると論難し、他 方、弁護人は原判決の結論に賛同しつつも、原判決が速度違反罪を継続犯とみなか ったのは誤りであると主張する。そこで、このような点を含めて、本件の罪数関係 について考察する。 <要旨>思うに、道路交通法が公安委員会によって車両の最高速度を規制すること ができるとした趣旨にかんがみる</要旨>と、道路において車両の高速走行がもたら す危険の防止は、道路の個々具体的な状況に即して図られるべきものであるから、 指定最高速度を超えて走行すればその危険が生じたものといわざるを得ない(道路 交通法一条、四条参照)。したがって、指定速度違反の所為は、その性質上、ある 程度の時間的幅、ひいては場所的移動を伴うことを否定できないとしても、いわば 一時的、局所的なものとして把握されるべきものであって、車両を運転中、その走 行速度が指定最高速度を超えたときには、速度違反の罪が直ちに成立すると解する のが相当であり、このような運転が一定時間以上継続し、あるいはその場所的移動 が一定距離以上にわたることは、右罪の成立のために必ずしも必要ではなく、ま た、他方、こうした速度違反の走行が継続する限り一罪が成立するにとどまると解 するのも相当でない(なお、これらのことは、法定最高速度違反罪についても同じ であると解される。)。 もっとも、こうした速度違反の走行が継続した場合に、事案によっては、これを 包括して一罪として処罰する余地のあることまで否定できないにしても、道路の個 々具体的な状況等に照らし、新たな危険を生ずるに至らしめたと認められる場合に は、犯意を新たにしていることも明らかであって、当然別罪を構成し、そのような 場合にまて包括的に一罪として処罰するのは相当でない。 3 これを本件についてみるに、前示認定のように、第一現場と第二現場は同じ 意を新たにしていることも明らかであって、当然別罪を構成し、そのような 場合にまて包括的に一罪として処罰するのは相当でない。 3 これを本件についてみるに、前示認定のように、第一現場と第二現場は同じ 名神高速自動車国道本線上り線上にあり、その間の距離も一九・四キロメートルで あって、これは、高速自動車道でも決して短いものとはいえず(時間差は一〇分で あるが、高速になればなるほど短縮されるので、問題とする余地は少ない。)、そ の間には、インターチェンジ二個所、ジャンクション一個所、トンネル二個所のほ か上り坂、下り坂、左右のカーブ、等があり、第一現場における速度規制の目的が 主として吹田インターチェンジや吹田ジャンクション及びその前後における危険の 防止にあるのに対し、第二現場における規制の目的が主として天王山トンネルに高 速で進入することから生じる危険の防止にあることは見易いところであるから(当 審証人Bも同旨の供述をしている。)、第二現場における本件速度違反により、新 たな危険が生じたといわなければならない。 また、前示のように、当時運転のポルシェには高速警告装置がないうえ、被告人 は第一現場にある速度違反自動取締装置の写真撮影時における発光を感じていない というのであるが、しかし、前示認定のように、第一現場と第二現場の間に前示の ような道路状況に加え、多くの速度規制標識、その予告板、その他の警告標識、注 意看板等のほか、速度違反自動取締りの警告予告板まで設置されているのであるか ら、第一現場通過後、被告人において、こうした道路状況や標識等を視野に入れ、 その趣旨を理解しつつ、アクセル、ブレーキ、ハンドル等を操作することによって 自車を規制超過の高速で進行させ第二現場を通過したであろうことは被告人の前示 原審等供述に照らしても推認するに難くない。本件速度違反と別件速度違 つ、アクセル、ブレーキ、ハンドル等を操作することによって 自車を規制超過の高速で進行させ第二現場を通過したであろうことは被告人の前示 原審等供述に照らしても推認するに難くない。本件速度違反と別件速度違反が犯意 の点でも単一であるとは到底認められず、犯意を包括して一個と評価するのも相当 でない。なお、原判決が一罪評価の根拠の一つにしている動機の同一性は右認定判 断を左右するものとはいえない。 以上の次第で、本件速度違反は、別件速度違反と包括して一罪と評価する余地は 全くない。本件速度違反罪は、別個独立の罪として成立し、別件速度違反の罪とは 併合罪の関係にあると解するのが相当である。 三 結論 そうすると、本件速度違反につき別件速度違反に関する道路交通法違反罪の確定 裁判を経たものとして被告人を免訴にした原判決には、所論のような法令の解釈適 用に誤りがあり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決は破 棄を免れない。論旨は理由がある。 よって、刑事訴訟法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄する。なお、原 判決は本件公訴事実どおり本件速度違反の事実を認定しており、当審においても、 事実の取調べが行われているのであるから、本件を原審に差し戻すまでの必要はな く、当審において自判するのを相当とし、同法四〇〇条但書によって、さらに次の とおり判決する。 四 自判 (罪となるべき事実) 被告人は、平成元年九月二四日午後一時三二分ころ、道路標識によりその最高速 度が七〇キロメートル毎時と指定されている大阪府三島郡a町大字b名神高速自動 車国道本線上り四九八・五キロポスト付近道路において、その最高速度を九〇キロ メートル超える一六〇キロメートル毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行し たものである。 (証拠の標目)(省略) (法令の適用) 被告人の判示 ロポスト付近道路において、その最高速度を九〇キロ メートル超える一六〇キロメートル毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行し たものである。 (証拠の標目)(省略) (法令の適用) 被告人の判示所為は、道路交通法一一八条一項二号、二二条一項、四条一項、同 法施行令一条の二第一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択した刑期の範囲内 で被告人を懲役二月に処し、情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の 日から二年間右刑の執行を猶予し、当審における訴訟費用については、刑事訴訟法 一八一条一項本文によりこれを全部被告人の負担とする。 よって、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 小瀬保郎 裁判官 高橋通延 裁判官 萩原昌三郎) 別 紙 <記載内容は末尾1添付>
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