【DRY-RUN】主 文 原決定を取消す。 相手方の本件検証物提示命令の申立を却下する。 検証物提示命令申立費用及び抗告費用は相手方の負担とする。 理 由
主 文 原決定を取消す。 相手方の本件検証物提示命令の申立を却下する。 検証物提示命令申立費用及び抗告費用は相手方の負担とする。 理 由 一 本件抗告の趣旨は主文第一、二項と同旨であり、抗告の理由は別紙(一)の とおりであり、これに対する相手方の意見は別紙(二)のとおりである。 一 当裁判所の判断 1 記録によれば、本件訴訟は、相手方が公務執行妨害罪の容疑で現行犯逮捕さ れた際、逮捕にあたつた大阪府西成警察署警察官から暴行を受け腰椎横突起骨折等 の傷害を負わされたとして、大阪府に対し国家賠償法一条一項に基づき損害賠償を 請求するものであるところ、本件検証物提示命令の申立は、右逮捕後間もなく同署 が刑訴法二一八条二項に基づき申立人の顔面を撮影した被疑者写真の原板(ネガフ ィルム)を検証のため受訴裁判所に提出することを求めるものである。 2 そこで検討するに、検証物提示義務は、証人義務と同様の公法上の一般的協 力義務であるから、わが国の裁判権に服する者である以上、検証物所持者は、正当 な事由がないかぎり検証物を提示する義務を負うのは当然であるが、右提示義務に ついても民訴法二七二条の趣旨が類推適用されるものと解されるから、国又は地方 公共団体並びにこれらの行政機関(以下官庁等という)が検証物を所持している場 合には、国家公務員法一〇〇条三項、地方公務員法三四条三項の趣旨に照らして、 官庁等は特別な事情のないかぎり検証物の提示を拒絶することはできないものと解 すべきである。しかしながら、それを公表することが国家公共の福祉と利益を害す るとか、あるいは公務の遂行を不能又は著しく困難にするとか、個人の利益を害す ることが余りに大きい等の場合は、右の特別の事情があるものとして、官庁等はそ の提示を拒絶することができるも 福祉と利益を害す るとか、あるいは公務の遂行を不能又は著しく困難にするとか、個人の利益を害す ることが余りに大きい等の場合は、右の特別の事情があるものとして、官庁等はそ の提示を拒絶することができるものといわなければならない。 本件提示命令申立にかかる写真原板(以下、本件ネガフイルムともいう)は、相 手方が公務執行妨害被疑事件により逮捕されて間もない時間に西成警察署において その顔面を撮影した被疑者写真の原板であるが、記録によれば右被疑事件について は不起訴処分とされたことが明らかであるから、本件申立は不起訴事件の捜査記録 の公開を求めるものでもあるということができる。 ところで、捜査記録の公開の可否、及びその範囲については現行法上明確な規定 はないが、捜査の密行性に照らして捜査記録はその性質上みだりに公開されるべき でないことはいうまでもないところであつて、刑訴法一九六条が捜査関係者に対し て被疑者その他の者の名誉を害しないように、且つ捜査の妨げとならないように注 意を促しているのもその趣旨に基づくものである。 そうだとすれば、同条の精神に照らして、被告事件の記録の公開に関する同法四 七条の趣旨を被疑事件及び不起訴事件記録に類推適用することが可能であり、且つ 妥当であるところ、同条は、公判開廷前の訴訟書類の非公開の原則を定め、「公益 の必要その他の事由があつて相当と認められる場合」は例外として公開しうる旨を 定めている。 <要旨>3 以上の諸点を勘案検討すると、結局、検証物の提示義務は公法上の一 般的協力義務ではあるけれども、</要旨>公益の必要その他特別の事情のあるときは 免除されるものであると解されるのである。 そこで、これを本件について見るに、一件資料によれば、被疑者写真は、被疑者 を逮捕した警察署において写真原板を作成し、右原板から特殊印画紙に密着焼付し ときは 免除されるものであると解されるのである。 そこで、これを本件について見るに、一件資料によれば、被疑者写真は、被疑者 を逮捕した警察署において写真原板を作成し、右原板から特殊印画紙に密着焼付し 所用事項を記入した被疑者写真票を作成し、原板、写真票とも警察本部に送付さ れ、ここで、所定の基準に従つて分類整理して常時保管し、全国的な組織資料とし て、捜査の必要により全国の警察からの要求に応じて原板に基づき印画紙に焼付け て複製し広く犯罪捜査に活用されている鑑識基礎資料であり、右のような利用目的 に照らして原板は常時警察本部に保管しておく必要のあるものであることが認めら れるのである。そうすると、右原板を保管庁外に持ち出すときは一般的な捜査活動 を阻害する虞があるといわなければならないから、本件は公益の必要という特別の 事情があるものとして、提示を拒みうる場合に該当すると判断するのが相当であ る。なお、私権を訴求する民事訴訟の当事者が自己の主張事実について行なう立証 活動上の必要が果して公益上の必要といえるかは問題であるが、仮にこれを肯定す るとしても、その度合は右に認定の提示を拒むべき公益上の必要の度合には及ばな いとみなければならないから、相手方のなす立証活動上の必要をもつては右判断を 左右するには足りない。そうすると、相手方のなした本件ネガフィルムそのものの 提示命令を求める申立は失当であるといわねばならない。 三 以上のとおりであるから、相手方の本件検証物提示命令の申立は却下すべき であり、これと判断を異にする原決定は不相当であつて本件抗告は理由がある。 よつて原決定を取消したうえ、本件ネガフィルムに対する検証物提示命令の申立 を却下することとし、本件申立費用及び抗告費用を相手方に負担させることとして 主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官 荻田健治郎 裁判 決定を取消したうえ、本件ネガフィルムに対する検証物提示命令の申立 を却下することとし、本件申立費用及び抗告費用を相手方に負担させることとして 主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官 荻田健治郎 裁判官 岨野悌介 裁判官 渡邊雅文) 別 紙 (一) <記載内容は末尾1添付>
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