平成3(行ツ)69 公文書非開示決定取消

裁判年月日・裁判所
平成6年1月27日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 東京高等裁判所 平成1(行コ)120
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判決文本文4,213 文字)

主文 原判決主文一1のうち次の部分を取り消し、右部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。 上告人の被上告人に対する昭和六一年一〇月一五日付け昭和六〇年度知事交際費現金出納簿の非開示決定のうち原判決添付別表記載の「相手方が法人その他の団体」欄の二一九件に関する情報が記録されている同出納簿中の部分についてこれを非開示とした部分を取り消した部分上告人のその余の上告を棄却する。 前項に関する上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人谷田容一、同鈴木宗男、同長嶋敏夫、同江連勝明、同国政英夫の上告理由について一原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。 1 被上告人は、栃木県公文書の開示に関する条例(昭和六一年栃木県条例第一号。以下「本件条例」という。)五条一項一号に基づき、本件条例の実施機関である上告人に対し、昭和六〇年度の栃木県知事の交際費の金額及び内容を知り得る公文書の開示(閲覧及び写しの交付)を請求したところ、上告人は、昭和六一年一〇月一五日、右請求に対応する公文書としては、知事交際費の総額を示す「返納票兼清算票」二通のほか交際費一件ごとの具体的な支出金額及び内容を示す「現金出納簿」一冊(以下「本件文書」という。)がこれに当たるとした上、「返納票兼清算票」二通はこれを開示したが、本件文書については、そこに記録されている情報が公文書の非開示を定めた本件条例六条のうち一号、二号、四号及び五号に該当するとして、これを開示しない旨の決定(以下「本件処分」という。)をした。 2 本件文書に記録されている知事の交際事務に関する情報は、封筒代、葉書代- 1 -等に関するものを除き、合計四二二件であり、これを支出項目別、交際の相手方別に分類すると、原 という。)をした。 2 本件文書に記録されている知事の交際事務に関する情報は、封筒代、葉書代- 1 -等に関するものを除き、合計四二二件であり、これを支出項目別、交際の相手方別に分類すると、原判決添付別表記載のとおりとなるが、そのうち、交際の相手方が個人であって相手方が識別されるものが一七〇件、識別されないものが三三件であり、また、相手方が法人その他の団体(以下「法人等」という。)であるものが二一九件である。 3 本件条例六条は、「実施機関は、次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については、公文書の開示をしないことができる。」と定めており、その五号に、「県の機関又は国等の機関が行う検査、監査、取締り、争訟、交渉、入札、試験その他の事務に関する情報であって、当該事務の性質上、公開することにより、当該事務若しくは同種の事務の実施の目的が失われ、又はこれらの事務の公正若しくは適切な実施を著しく困難にするおそれのあるもの」が規定されている。 二原審は、右の事実関係の下において、本件文書に記録されている四二二件の情報は、いずれも本件条例六条五号に該当するものとはいえないと判断した。その理由は、右四二二件の情報に関する交際事務は、右五号前段にいう「その他の事務」には該当するが、場合によっては、知事との交際が公表されたことを名誉に思う者もあるであろうし、また、交際の事実を公開したことにより不快等の感情を相手方に生じさせた場合でも、その程度は交際事務の実施の目的を失わせる等の結果を招くほどに強度のものではないことも多いはずであるから、右の交際事務に関する情報が右五号後段の要件に該当するというためには、その要件の存在が個別、具体的に立証されなければならないところ、本件においては、右の点について具体的な立証がないというのである 、右の交際事務に関する情報が右五号後段の要件に該当するというためには、その要件の存在が個別、具体的に立証されなければならないところ、本件においては、右の点について具体的な立証がないというのである。 三ところで、原審は、右四二二件の情報のうち交際の相手方が個人であって相手方が識別される一七〇件の情報については、これが個人のいわゆるプライバシー- 2 -に関する情報の非開示を定めた本件条例六条一号に該当するとの理由で、本件処分のうち本件文書中の右情報が記録されている部分に関する部分については、結局、これを適法としている。そうすると、当審としては、本件処分のうち本件文書中のその余の二五二件の情報が記録されている部分に関する部分に限って、原審の判断の適否を検討すべきことになるところ、原審の右判断については、右二五二件の情報のうち交際の相手方が個人であって相手方が識別されない三三件の情報が同条五号に該当するとはいえないとした点は是認できるが、交際の相手方が法人等である二一九件の情報がすべて同号に該当するとはいえないとした点は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 1 知事の交際費は、都道府県における行政の円滑な運営を図るため、関係者との懇談や慶弔等の対外的な交際事務を行うのに要する経費である。このような知事の交際は、本件条例六条五号にいう交渉その他の事務に該当すると解されるから、これらの事務に関する情報を記録した文書を開示しないことができるか否かは、これらの情報を公開することにより、知事の交際事務の実施の目的が失われ、又はその公正若しくは適切な実施を著しく困難にするおそれがあるか否かによって決定されることになる。 2 本件文書のうち、交際の相手方が個人であって相手方が識別されない知事の交際事務に関する三三件の情報が記録 正若しくは適切な実施を著しく困難にするおそれがあるか否かによって決定されることになる。 2 本件文書のうち、交際の相手方が個人であって相手方が識別されない知事の交際事務に関する三三件の情報が記録されているものについては、これを開示しても、これによってその交際の相手方の氏名が明らかにされるものでない以上、相手方に不満、不快の念を抱かせるような事態を招くことは考え難く、知事の交際事務の実施の目的が失われ、又はその公正若しくは適切な実施を著しく困難にするおそれはないというべきであるから、その本件条例六条五号該当性を否定した原審の判断は相当である。 3 しかし、本件文書のうち、相手方が法人等である二一九件の情報が記録され- 3 -ているものは、祝儀、慶弔、広告、賛助金、贈答品、みやげ等に関するものであり、その中には、相手方の名称等が記録されているものがあり、また、一般人が通常入手し得る関連情報と照合することによって相手方が識別され得るようなものが含まれていることも当然に予想される。そして、知事の交際は、いずれにしても、相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として行われるものであるところ、相手方の名称等の公表、披露が当然予定されているような場合等は別として、相手方を識別し得るような前記文書の開示によって相手方の名称や支出金額が明らかにされることになれば、交際費の支出の要否、内容等は、県の相手方とのかかわり等をしん酌して個別に決定されるという性質を有するものであることから、不満や不快の念を抱く者が出ることが容易に予想される。そのような事態は、交際の相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損なうおそれがあり、交際それ自体の目的に反し、ひいては交際事務の実施の目的が失われるおそれがあるというべきである。また、これらの交際費の支出の 態は、交際の相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損なうおそれがあり、交際それ自体の目的に反し、ひいては交際事務の実施の目的が失われるおそれがあるというべきである。また、これらの交際費の支出の要否やその内容等は、支出権者である知事自身が、個別、具体的な事例ごとに、裁量によって決定すべきものであるところ、交際の相手方や内容等が逐一公開されることとなった場合には、知事においても前記のような事態が生ずることを懸念して、必要な交際費の支出を差し控え、あるいはその支出を画一的にすることを余儀なくされることも考えられ、知事の交際事務の適切な実施を著しく困難にするおそれがあるといわなければならない。 そうすると、右二一九件の情報が記録されている文書のうち交際の相手方が識別され得るものは、相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなど、相手方の名称等を公表することによって前記のようなおそれがあるとは認められないようなものを除き、本件条例六条五号により開示しないことができる文書に該当するというべきである。 四以上の次第であるから、原審の判断のうち、本件文書における原判決添付別- 4 -表記載の「相手方が個人」欄中の「識別されないもの」欄の三三件の情報が記録されている部分についてこれを開示しないこととした本件処分を違法とした部分は、正当として是認することができ、この部分に関する論旨は理由がない。しかし、同表記載の「相手方が法人その他の団体」欄の二一九件の情報について、その相手方が識別されるものであるか否かなどの点を個別、具体的に検討することなく、本件文書におけるこれが記録されている部分を開示しないこととした本件処分をすべて違法とした部分は、本件条例六条五号に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、その に検討することなく、本件文書におけるこれが記録されている部分を開示しないこととした本件処分をすべて違法とした部分は、本件条例六条五号に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。そうすると、この部分に関する論旨は理由があるので、原判決中この部分は破棄を免れず、以上判示したところに従って、右二一九件の情報が本件条例六条五号に該当するか否かにつき更に審理を尽くさせるため、右部分につき本件を原審に差し戻すのが相当である。 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条一頃、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官三好達裁判官大堀誠一裁判官味村治裁判官小野幹雄裁判官大白勝- 5 -

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