令和2年6月24日判決言渡平成31年(ネ)第10015号特許権侵害差止請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第35663号)口頭弁論終結日令和2年3月2日判決 控訴人大塚製薬株式会社 訴訟代理人弁護士城山康文林康司山内真之大出萌 被控訴人株式会社アドバンスト・メディカル・ケア 訴訟代理人弁護士水野晃丹羽厚太郎中田裕人訴訟代理人弁理士関根宣夫 被控訴人補助参加人株式会社ダイセル訴訟代理人弁護士吉澤敬夫訴訟代理人弁理士紺野昭男井波実補佐人弁理士伊藤武泰 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,別紙被告製品目録記載の製品を生産し,譲渡し,貸し渡し,譲渡若しくは貸渡しの申出をし,又は輸出してはならない。 3 被控訴人は,別紙被告製品目録記載の製品を廃棄せよ。 第2 事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。) 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「エクオール含有大豆胚軸発酵物,及びその製造方法」とする特許(特許第5946489号。以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「エクオール含有大豆胚軸発酵物,及びその製造方法」とする特許(特許第5946489号。以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する控訴人が,被控訴人による別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)の生産,販売等が本件特許権の侵害に当たると主張して,被控訴人に対し,特許法100条1項に基づく被告製品の生産,譲渡等の差止め及び同条2項に基づく被告製品の廃棄を求めた事案である。 原審は,被告製品は,大豆胚軸抽出物の発酵物であって,大豆胚軸自体の発酵物ではないから,本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び3に係る発明の「大豆胚軸発酵物」の構成要件を充足しない,したがって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求は,いずれも理由がないとして,これらを棄却した。 控訴人は,原判決を不服として本件控訴を提起した。 2 前提事実(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。) ⑴ 本件特許ア被控訴人は,平成18年12月5日(優先日平成17年12月6日及び平成18年10月11日,優先権主張国日本)を国際出願日とする特許出願(特願2007-549133号。以下「親出願」又は「原出願」という。丙3の1)の一部を分割して出願した特許出願(特願2012-82486号)の一部を更に分割して出願した特許出願(特願2012-149675号)の一部を分割して,平成26年4月15日,新たに本件特許の特許出願(以下「本件出願」という。),平成28年6月10日,本件特許権の設定登録(請求項の数5)を受けた(甲2,38)。 イ被控訴人は,平成29年10月18日,本件出願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項5を削除する旨 いう。),平成28年6月10日,本件特許権の設定登録(請求項の数5)を受けた(甲2,38)。 イ被控訴人は,平成29年10月18日,本件出願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項5を削除する旨の訂正審判請求(訂正2017-390113号事件)をし,同年11月30日,上記削除訂正を認める旨の審決がされ,同審決は,同年12月8日確定した(甲38)。 その後,被控訴人は,平成30年10月15日,本件出願の願書に添付した特許請求の範囲を請求項1ないし4,6,7に訂正することを求める旨の訂正審判請求(訂正2018-390163号事件。甲31の1,2)をしたが,同年11月26日付けの訂正拒絶理由通知を受け,更に平成31年3月1日付けの訂正拒絶理由通知(丙29)を受けたため,同月29日付けで,請求項3を訂正し,請求項4を削除することを求める旨の審判請求書の手続補正(甲36の1,2)をした(以下,手続補正後の訂正を「本件訂正」という。)。 特許庁は,令和元年5月7日,本件訂正を認める旨の審決をし,同審決は,同月16日確定した(審決確定後の請求項の数3。甲37,38)。 ⑵ 特許請求の範囲の記載ア本件訂正前(設定登録時)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は,次のとおり である(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」といい,また,本件出願の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて「本件明細書」という。 甲2)。 【請求項1】オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物。 【請求項2】乾燥重量1g当たり,1~20mgのエクオールを含有する,請求項1に記載の大豆胚軸発酵物。 【請求項3】請求項1又は2に記載の大豆胚軸発酵物を配合した食品,特定保健用食品,栄養補助食品,機能性食品,病者用食品,化粧品,又は gのエクオールを含有する,請求項1に記載の大豆胚軸発酵物。 【請求項3】請求項1又は2に記載の大豆胚軸発酵物を配合した食品,特定保健用食品,栄養補助食品,機能性食品,病者用食品,化粧品,又は医薬品。 イ本件訂正後本件訂正後の特許請求の範囲の請求項3の記載は,次のとおりである(以下,本件訂正後の請求項3に係る発明を「本件訂正発明3」という。下線部は訂正箇所である。甲31の2)。 【請求項3】オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物であって,発酵生成物であるオルニチンを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8mg以上含有し,発酵生成物であるエクオールを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mg以上含有し,前記大豆胚軸発酵物中のゲニステイン類の総和の含有比率が前記大豆胚軸発酵物中のイソフラボンの総量当たり12重量%以下である,前記大豆胚軸発酵物を配合した食品,特定保健用食品,栄養補助食品,機能性食品,又は病者用食品。 ⑶ 本件発明1及び本件訂正発明3の構成要件本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した 構成要件を符号に対応させて,「構成要件1-A」などという。)。 【本件発明1】1-A オルニチン及び1-B エクオールを含有する1-C 大豆胚軸発酵物。 【本件訂正発明3】3’-A オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物であって,3’-B 発酵生成物であるオルニチンを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8mg以上含有し,3’-C 発酵生成物であるエクオールを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mg以上含有し,3’-D 前記大豆胚軸発酵物中のゲニステイン類の総和の含有比率が前記大豆胚軸発酵物中のイソフラボンの総量当たり12重量 あるエクオールを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mg以上含有し,3’-D 前記大豆胚軸発酵物中のゲニステイン類の総和の含有比率が前記大豆胚軸発酵物中のイソフラボンの総量当たり12重量%以下である,3’-E 前記大豆胚軸発酵物3’-F を配合した食品,特定保健用食品,栄養補助食品,機能性食品,又は病者用食品。 ⑷ 控訴人の行為等ア被控訴人は,業として,被告製品を生産し,その販売及び販売の申出を行っている。 被告製品は,被控訴人補助参加人(以下,単に「補助参加人」といい,被控訴人と補助参加人を併せて「被控訴人ら」という。)が被控訴人に供給する「EQ-5」を原材料とし,これに「ビール酵母」,「ラクトビオン酸含有乳糖発酵物」などを配合したものをカプセルに封入した経口摂取型のサプリメント(甲3)である。 イ EQ-5は,大豆胚軸から抽出された大豆胚軸抽出物であるイソフラボン(以下「原料イソフラボン」という場合がある。)に種菌を加えて発酵させて得られた発酵物であり,原料イソフラボン中の90%以上は,ダイゼイン類(ダイジン,ダイゼイン等),ゲニステイン類(ゲニスチン,ゲニステイン等)及びグリシテイン類(グリシチン,グリシテイン等)の大豆イソフラボンである(丙5)。このうち,ダイジン,ゲニスチン及びグリシチンは,配糖体のイソフラボンであり,ダイゼイン,ゲニステイン及びグリシテインは,非配糖体のイソフラボン(アグリコン)である(甲6ないし8,42)。 EQ-5は,①被告製品1.32g(3カプセル)当たりエクオール約10mgを含有し,②被告製品1.32g(3カプセル)当たりオルニチン約24.29mgを含有し,③イソフラボン類中のゲニステイン類の総和の含有比率がイソフラボンの総量当たり0.6重量%である( ル約10mgを含有し,②被告製品1.32g(3カプセル)当たりオルニチン約24.29mgを含有し,③イソフラボン類中のゲニステイン類の総和の含有比率がイソフラボンの総量当たり0.6重量%である(以下,①の構成を「被告製品の構成a」,②の構成を「被告製品の構成b」,③の構成を「被告製品の構成c」という場合がある。)。 ウ被告製品は,構成要件1-A及び1-Bを充足する。 3 争点⑴ 被告製品の本件発明1及び本件訂正発明3の技術的範囲の属否ア本件発明1の構成要件充足性(争点1-1)イ本件訂正発明3の構成要件充足性(争点1-2)ウ均等論(争点1-3)⑵ 本件発明1に係る本件特許の無効の抗弁の成否(争点2)⑶ 本件訂正発明3に係る本件特許の無効の抗弁の成否(争点3)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(本件発明1の構成要件充足性)について⑴ 控訴人の主張 ア本件発明1の「大豆胚軸発酵物」の意義本件発明1の「大豆胚軸発酵物」は,以下のとおり,大豆胚軸又は大豆胚軸に含有ダイゼイン類が失われない限度の加工をした物の発酵物をいい,「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物も,「大豆胚軸発酵物」に含まれると解すべきである。 (ア) 特許請求の範囲の記載についてa 本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)は,「大豆胚軸自体」の発酵物である旨の限定や,「大豆胚軸抽出物」の発酵物を除く旨の記載はない。 「大豆胚軸」は,大豆の子葉部分に比べて,イソフラボンの割合やその組成中のダイゼイン類の割合が高いことが知られており(甲42,43),「大豆胚軸発酵物」における「大豆胚軸」の語は,大豆の子葉部分と対比する意味で使用されている。また,「大豆胚軸 ラボンの割合やその組成中のダイゼイン類の割合が高いことが知られており(甲42,43),「大豆胚軸発酵物」における「大豆胚軸」の語は,大豆の子葉部分と対比する意味で使用されている。また,「大豆胚軸」の語は,大豆胚軸を加工処理した「大豆胚軸抽出物」を包含するものとして使用されている(甲23)。 b 発酵処理を行う際に,前処理として,発酵原料中の有用成分濃度を高めるための加工を行うことは,一般的なことであり,抽出処理は加工の代表的な態様であり,加工には,その文言の一般的な意味として抽出処理が含まれる(例えば,甲44,45)。 そして,発酵基質の名称を用いて「○○(発酵基質の名称)発酵物」,「発酵○○」と称するときは,前処理(加工)を行った基質を発酵させたものも含まれ,抽出処理を行った抽出物の発酵物も含まれると読むのが一般的である(甲39)。例えば,「大豆」の発酵物と「大豆の加工物」の発酵物とを区別せず,「大豆発酵物」に含めている記載例(甲40の【0010】,【0011】)や,「牛乳」の発酵物の加工品と「牛乳の加工物」の発酵物の加工品とを区別せず,「発酵乳 製品」に含めている記載例(甲41の【0014】)がある。 c したがって,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載から,「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)には,大豆胚軸抽出物の発酵物も含まれると読むのが自然である。 d この点に関し被控訴人らは,大豆胚軸抽出物はイソフラボンと称して販売され,大豆胚軸と大豆胚軸抽出物は商品として明確に区別されているから,大豆胚軸抽出物が大豆胚軸に含まれることはない旨主張する。 しかし,大豆胚軸抽出物は,純粋なイソフラボンと「物」として異なると理解されており,大豆胚軸に由来するイソフラボン以外の成分を少量で ら,大豆胚軸抽出物が大豆胚軸に含まれることはない旨主張する。 しかし,大豆胚軸抽出物は,純粋なイソフラボンと「物」として異なると理解されており,大豆胚軸に由来するイソフラボン以外の成分を少量でも含んでいるために,大豆胚軸抽出物として表示され,かつ,その有用性が需要者に訴求されている。大豆胚軸抽出物のイソフラボン濃度は80%以上のものから10%程度のものまで様々であり,食品の原材料表示に関して「大豆胚軸」と「大豆胚軸抽出物」の基準があるわけではないため,保健所の指導内容としても,最も一般的と思われる名称を記載することが求められるにとどまり,「大豆胚軸」と表示するか,「大豆胚軸抽出物」と表示するかは,各社が独自に判断して記載しているものにすぎず,両者に厳然たる区別があるわけではない。 したがって,被控訴人らの上記主張は失当である。 (イ) 本件明細書の【0019】の「加工」及び「脱タンパク処理」についてa 本件明細書の【0019】には,「本発明において,発酵原料としては大豆胚軸が用いられる。大豆胚軸とは,大豆の発芽時に幼芽,幼根となる部分であり,ダイゼイン配糖体やダイゼイン等のダイゼイン類が多く含まれていることが知られている。」,「本発明に使用され る大豆胚軸は,含有されているダイゼイン類が失われていないことを限度として,大豆の産地や加工の有無については制限されない。例えば,生の状態のもの;加熱処理,乾燥処理,蒸煮処理等に供された大豆から分離したもの;未加工の大豆から分離した胚軸を加熱処理,乾燥処理又は蒸煮処理等に供したもの等のいずれであってもよい。また,本発明で使用される大豆胚軸は,脱脂処理や脱タンパク処理に供したものであってもよい。また,本発明に使用される大豆胚軸の形状については,特に制限されるものではなく,粉末状 いずれであってもよい。また,本発明で使用される大豆胚軸は,脱脂処理や脱タンパク処理に供したものであってもよい。また,本発明に使用される大豆胚軸の形状については,特に制限されるものではなく,粉末状であっても,粉砕又は破砕されたのものであってもよい。より効率的にエクオールを生成させるという観点からは,粉末状の大豆胚軸を使用することが望ましい。」との記載がある。この記載から,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」の原料には,「含有されているダイゼイン類が失われていないことを限度として」,大豆胚軸を「加工」したものが含まれ,その「加工」の種類には制限はなく,「脱タンパク処理」に供したものも含まれることが理解される。 そして,「加工」には,抽出処理が含まれるところ(前記(ア)b),「より効率的にエクオールを生成させるという観点から」,「本発明」の「加工」とは,ダイゼイン類の濃度を高める処理を意味する。 また,「脱タンパク処理」は,大豆胚軸に含まれるダイゼイン類の濃度を高める工程の一つである(甲46ないし50)。 そうすると,【0019】の「脱タンパク処理」は,大豆胚軸からタンパク質を除き,ダイゼイン類の濃度を高める操作であって,ダイゼイン類の濃度を高めることを目的とする抽出と実質的に同一の処理であるから,「脱タンパク処理」によってダイゼイン類の濃度を高めたものも,「大豆胚軸抽出物」であるといえる(甲39,51)。 したがって,【0019】の「脱タンパク処理」に供して得られる ものは,「大豆胚軸抽出物」であり,これを発酵原料として発酵させたものは,「大豆胚軸発酵物」に該当する。 b(a) 甲35の実験報告書は,控訴人が大豆胚軸粉に脱脂処理及び脱タンパク処理を施して調整した加工物とフジッコ株式会社(以下「フジッコ社」という。)製の「フジフ ,「大豆胚軸発酵物」に該当する。 b(a) 甲35の実験報告書は,控訴人が大豆胚軸粉に脱脂処理及び脱タンパク処理を施して調整した加工物とフジッコ株式会社(以下「フジッコ社」という。)製の「フジフラボンP40」についてイソフラボン含量を分析した分析結果である。甲35によれば,大豆胚軸粉に脱脂処理及び脱タンパク処理を施して調整した加工物のイソフラボン含量は,非配糖体のアグリコン換算値(「総イソフラボン」)で279.6mg/gであったのに対し,「大豆胚芽抽出物」として販売されている「フジフラボンP40」のイソフラボン含量は,アグリコン換算値で262.6mg/gであったものである。 このことは,大豆胚軸粉に脱脂処理及び脱タンパク処理を施すことで,一般に大豆胚軸抽出物と考えられている物質と同等程度にイソフラボン含量を高めることができたことを示すものである。 そうすると,本件明細書の【0019】の脱脂処理及び脱タンパク処理と抽出処理とは,未加工の大豆胚軸から同等程度にイソフラボン以外の成分を除去し,イソフラボンの含量を高め得るという点で変わらないから,「抽出処理」は,【0019】の「加工」に含まれると解される。 ⒝ この点に関し被告訴人らは,甲35の実験は,①脱タンパク処理において酸加水分解を行っている点,②大豆の食品加工に使用することができない酢酸エチル及びメタノールを使用している点において,本件明細書の【0019】の「脱タンパク処理」とは異質の操作である旨主張する。 しかし,上記①については,大豆を含む,食品の工業的な加工工程では,タンパク質を分離するために酸加水分解という操作も一般 的に行われる操作であり(甲44には,酸・アルカリ処理の記載のほか,酸(主に塩酸)処理することによる加水分解について記載がある。),また,通 パク質を分離するために酸加水分解という操作も一般 的に行われる操作であり(甲44には,酸・アルカリ処理の記載のほか,酸(主に塩酸)処理することによる加水分解について記載がある。),また,通常タンパク質を除去する場合,タンパク質のみを除去し,その他の成分が全て残るわけではなく,純粋にタンパク質のみを抽出できるわけではない。甲35では,酸加水分解の条件として,濃度5%,90℃の塩酸を加え,4時間攪拌するという,比較的強度の条件を用いているものの,タンパク質を除くという観点からすれば,かかる条件でタンパク質が一部アミノ酸に分解されていても,タンパク質が除かれるという点に変わりはなく,脱タンパク工程に該当する。 上記②については,酢酸エチルの使用が制限されているのは,食品添加物としての使用であり,食品加工工程において使用した場合でも,その後除去されて最終製品に残存しない限りはその使用は制限されるものではないから(例えば,甲50の【0024】では,大豆等からタンパク質や脂質を除いてイソフラボン等の濃度を高める際に酢酸エチルを用いてよいことが明記されている。),酢酸エチルを使用する操作も,本件明細書の【0019】の「脱タンパク処理」の操作に含まれる。 また,甲35の実験でメタノールを使用しているのは,イソフラボンの濃縮とは直接かかわらない,洗浄工程である。洗浄におけるメタノールは,エタノールに置き換えることが可能であり,置き換えても濃縮結果に影響はないから,甲35の実験結果が,本件明細書の【0019】に含まれる「加工」によって,一般的な大豆胚軸抽出物と同程度にイソフラボン濃度を高めることができることを示していることに変わりはない。 したがって,被控訴人らの上記主張は失当である。 c 本件明細書の【0024】には, 豆胚軸抽出物と同程度にイソフラボン濃度を高めることができることを示していることに変わりはない。 したがって,被控訴人らの上記主張は失当である。 c 本件明細書の【0024】には,「また,使用する発酵原料(大豆胚軸含有物)には,更に,前記ダイゼイン類を含むイソフラボンを添加しておいてもよい。このようにイソフラボンを発酵原料に別途添加しておくことにより,得られる大豆胚軸発酵物中のエクオール含量をより高めることが可能になり,その有用性を一層向上させることができる。」との記載がある。この記載は,本件発明1の発酵原料にイソフラボンを添加し,イソフラボン量を高めることを想定したものであるが,その添加量に上限は設定されていないから,大量に添加することも予定されており,それにより生成された発酵物も「大豆胚軸発酵物」であることを示すものといえる。この点に照らしても,大豆胚軸抽出物を発酵原料とする発酵物も,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」であるといえる。 d 以上によれば,本件明細書には,「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)に大豆胚軸抽出物の発酵物も含まれることの開示があるものといえる。 (ウ) 本件明細書の【0007】の「大豆胚軸抽出物」との関係について本件明細書の【0007】には,従来技術の問題点として,大豆胚軸抽出物をエクオールの製造原料とする場合には,大豆胚軸抽出物は大豆胚軸に抽出処理を行う前処理の段階でコストが高い,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素の添加が必要になるという問題点がある旨の記載がある。 しかるところ,本件発明1は,大豆胚軸抽出物を発酵原料としても,アルギニンをオルニチンに変換する能力を有するオルニチン・エクオール産生菌を用いて,アルギニンを栄養素として添加することで,発酵生成物であるエクオ ,本件発明1は,大豆胚軸抽出物を発酵原料としても,アルギニンをオルニチンに変換する能力を有するオルニチン・エクオール産生菌を用いて,アルギニンを栄養素として添加することで,発酵生成物であるエクオールと発酵生成物であるオルニチンをいずれも含有する,高付加価値の発酵物(大豆胚軸抽出物自体のコストや栄養素の添加 に関するコスト等に見合う,発酵生成物であるオルニチンという有効成分の含有による付加価値を備える発酵物)を得ることで,上記問題点を解決したものである。このように本件発明1の技術的意義は,発酵生成物であるエクオール及び発酵生成物であるオルニチンを含む点にある。 また,本件明細書の【0008】には,大豆胚軸自体の問題点について,「大豆胚軸自体に付加価値を備えさせる」ことが解決手段となることの記載があることに照らすと,【0007】の記載にのみ着目して,「大豆胚軸抽出物」を本件発明1の発酵原料から除くことは合理的ではない。 さらに,本件明細書には,「本発明の大豆胚軸発酵物」の効果は,エクオール以外のイソフラボンやサポニン等の有用成分をも含有し,有用生理効果を一層良好に奏することができる点(【0013】),大豆の食品加工時に廃棄されていた大豆胚軸の有効利用という点(【0014】)にある旨の記載があるところ,大豆胚軸抽出物を発酵原料とする場合にも,大豆胚軸抽出物にサポニン等の有用成分が含まれ,大豆胚軸を有効活用することに変わりはないから,上記効果を奏することができる。 以上によれば,【0007】の記載は,本件発明1の「大豆胚軸抽出物」に「大豆胚軸抽出物発酵物」を含むことを否定する根拠にはならない。 (エ) 出願経過に関する被控訴人らの主張について以下のとおり訂正するほか,原判決の別紙「当事者の主張(争点1について)」の〔原告の 豆胚軸抽出物発酵物」を含むことを否定する根拠にはならない。 (エ) 出願経過に関する被控訴人らの主張について以下のとおり訂正するほか,原判決の別紙「当事者の主張(争点1について)」の〔原告の主張〕⑷(原判決25頁11行目から27頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 a 原判決25頁17行目及び20行目の各「基礎出願」を「親出願」と改める。 b 原判決27頁5行目及び17行目の各「本件各発明」を「本件発明 1」と改める。 (オ) まとめ以上の本件発明1の特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載によれば,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)は,「大豆胚軸又は大豆胚軸に含有ダイゼイン類が失われない限度の加工をした物の発酵物」をいい,「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物も,「大豆胚軸発酵物」に含まれると解すべきである。 イ被告製品の構成要件1-Cの充足性被告製品に用いられている「EQ-50」は,大豆胚軸に含有ダイゼイン類が失われない限度の抽出処理をした「大豆胚軸抽出物」(原料イソフラボン)の発酵物であるから,被告製品は,構成要件1-Cを充足する。 また,被告製品が構成要件1-A及び1-Bを充足することは,前記第2の2⑷ウ記載のとおりである。 したがって,被告製品は,本件発明1の構成要件をすべて充足するから,その技術的範囲に属する。 ⑵ 被控訴人らの主張ア本件発明1の「大豆胚軸抽出物」の意義の主張に対し本件発明1の「大豆胚軸発酵物」は,以下のとおり,「大豆胚軸自体」の発酵物をいい,「大豆胚軸抽出物」の発酵物を含まないと解すべきである。 (ア) 特許請求の範囲の記載について本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の「大豆胚軸発酵物」(構成要 大豆胚軸自体」の発酵物をいい,「大豆胚軸抽出物」の発酵物を含まないと解すべきである。 (ア) 特許請求の範囲の記載について本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)における「大豆胚軸」とは,大豆の胚軸部分のことであり,他の部位に比べてイソフラボン含量が高いことが知られているが,それでもイソフラボン含量は,胚軸重量全体の2%以下にすぎない。 一方,「大豆胚軸抽出物」は,大豆の胚軸部分から特定の成分を抽出 操作によって取り出したものであり,イソフラボンがその典型的な抽出物である。そして,「抽出」とは,ある混合物に溶剤を接触させてその溶剤に溶ける成分と溶けない成分を分離して得る操作であり,大豆胚軸からイソフラボンを抽出するためには,大豆胚軸にアルコールなどの溶媒を接触させて,大豆胚軸中の2%程度のイソフラボンを分離し,これを集積して取得する。 したがって,大豆胚軸と大豆胚軸抽出物とは,その成分や成分割合が全く異なったものになる。抽出によって得られるのは,ダイジンのような配糖体のイソフラボンであり,大豆胚軸中の成分が多少残ることもあるが,補助参加人が用いている発酵原料の大豆胚軸抽出物は,イソフラボンの純度が80%以上のものである。 また,大豆胚軸抽出物はイソフラボンと称して販売され,大豆胚軸と大豆胚軸抽出物は,商品として明確に区別され,これらを原材料とする食品についても,保健所の指導による食品の原材料表示として「大豆胚軸」,「大豆胚軸抽出物」のように区別して表示することとされている。 したがって,「大豆胚軸」と「大豆胚軸抽出物」は,用語の普通の意味としても,業界用語としても明確に区別されており,「大豆胚軸抽出物」が「大豆胚軸」に含まれることはない。 (イ) 本件明細書の記載についてa 「大豆胚軸」と「大豆胚軸抽出物」は,用語の普通の意味としても,業界用語としても明確に区別されており,「大豆胚軸抽出物」が「大豆胚軸」に含まれることはない。 (イ) 本件明細書の記載についてa 本件明細書は,「大豆胚軸抽出物」は,それ自体コストが高いという欠点があり,これをエクオールの製造原料とする場合には,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素の添加が必要になること(【0007】)が問題点であることを述べている。これに対し「大豆胚軸」については,本件明細書の表3に「栄養成分」と記載している菌の栄養が含まれているので,別途栄養成分を加えなくとも,大豆胚軸と水と産生菌だけで発酵させることができること(【0020】, 【0021】)を述べ,発酵原料として「大豆胚軸」を選択したことにより,「大豆胚軸抽出物」の上記問題点を解消できることを示している。もっとも,【0022】には,栄養成分の添加が記載されているが,必須成分とはされていない。 一方で,本件明細書は,「大豆胚軸」自体については,特有の苦みがあることからそのまま利用することは敬遠されており,多くが廃棄されている現状があり,さらに,アレルゲン物質が含まれているため,アレルギーを持つ人に摂取ないし投与することができないこと(【0008】)といった問題点があることを述べている。 このように本件明細書は,「大豆胚軸抽出物」及び「大豆胚軸」を発酵原料として用いる場合の課題を個別に指摘し,「大豆胚軸」と「大豆胚軸抽出物」を意識的に区別している。 その上で,本件明細書には,【課題を解決するための手段】(【0011】)及び【発明の効果】(【0014】)として,本件発明1によって,「大豆胚軸」を発酵原料に用いる場合の課題(アレルゲン物質が含まれているため,アレルギーを持つ人に摂取 するための手段】(【0011】)及び【発明の効果】(【0014】)として,本件発明1によって,「大豆胚軸」を発酵原料に用いる場合の課題(アレルゲン物質が含まれているため,アレルギーを持つ人に摂取ないし投与することができないこと)を解決することが可能であることが示されるとともに,従来,大豆の食料加工時に廃棄されていた「大豆胚軸」を原料とすることから,資源の有効利用という点でも産業上の利用価値が高い旨が説明されている。 他方で,本件明細書には,本件発明1によって,「大豆胚軸抽出物」を発酵原料として用いる場合の課題(大豆胚軸抽出物自体コストが高く,これをエクオールの製造原料とする場合には,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素の添加が必要になること)を解決することが可能である旨の記載は一切存在しない。また,「大豆胚軸抽出物」は,従来から有効利用されており,大豆の食料加工時に廃棄され ていたものではないから,【0014】記載の発明の効果は妥当しない。 さらに,本件明細書では,大豆胚軸を発酵原料とした発酵物が実施例(【0047】ないし【0064】)として挙げられ,例えば,実施例4(【0051】,【0052】,表2及び表3)では,粉末状大豆胚軸100g当たり大豆イソフラボン類の合計(総イソフラボン)はわずか1942.0mg(約1.9g)であり,「原料として使用した粉末状大豆胚軸」中には,たんぱく質,脂質,灰分,食物繊維などが大量に含まれていることを明らかにしているのに対し,大豆胚軸から抽出操作を経て得られた大豆胚軸抽出物を発酵原料とした発酵物の実施例の記載はない。なお,【0024】には,「使用する発酵原料(大豆胚軸含有物)には,更に,前記ダイゼイン類を含むイソフラボンを添加しておいてもよい」との記載があるが,本件発明1は菌 した発酵物の実施例の記載はない。なお,【0024】には,「使用する発酵原料(大豆胚軸含有物)には,更に,前記ダイゼイン類を含むイソフラボンを添加しておいてもよい」との記載があるが,本件発明1は菌の栄養源として大豆胚軸自体の栄養成分を利用する技術思想であるから,発酵原料から大豆胚軸を除いて,イソフラボンだけにしたのでは,【0020】に記載のような発酵は得られない。 以上によれば,本件明細書の記載から,本件発明1は,「大豆胚軸」を発酵原料として用いる場合の従来技術の課題を解決する発明であり,本件発明1の技術的意義は,「従来は利用されずに廃棄されていた大豆胚軸自体を利用してエクオールという有効成分を含有する発酵物を得る」という点にあることが理解されるから,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」は,大豆胚軸自体の発酵物に限定される。 したがって,本件明細書には,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)は,大豆胚軸自体の発酵物に限定され,大豆胚軸抽出物の発酵物は含まないことの開示がある。 b これに対し控訴人は,本件明細書には,本件発明1は,大豆胚軸抽 出物を発酵原料としても,アルギニンをオルニチンに変換する能力を有するオルニチン・エクオール産生菌を用いて,アルギニンを栄養素として添加することで,発酵生成物であるエクオールと発酵生成物であるオルニチンをいずれも含有する,高付加価値の発酵物を得ることで,大豆胚軸抽出物を発酵原料とする場合の問題点を解決したものであり,本件発明1の技術的意義は,発酵生成物であるエクオール及び発酵生成物であるオルニチンを含む点にあることの記載がある旨主張する。 しかしながら,前記aのとおり,本件明細書には,本件発明1によって,「大豆胚軸抽出物」を発酵原料として用いる場合の課題を解決すること 物であるオルニチンを含む点にあることの記載がある旨主張する。 しかしながら,前記aのとおり,本件明細書には,本件発明1によって,「大豆胚軸抽出物」を発酵原料として用いる場合の課題を解決することが可能である旨の記載は一切存在しない。 また,大豆発酵食品にオルニチンが含まれることは格別目新しいことではなく,大豆や大豆胚軸の発酵工程で菌の栄養としての培地にアルギニンが含まれていることや微生物にアルギニンの異化作用があることは技術常識であり,発酵過程において含まれるアルギニンがオルニチンに変化することは,古くから知られていたこと(丙25,26)に照らすと,エクオールを産生する従来技術においても,副次的にオルニチンが生成していたといえる。そして,本件発明1がエクオールのみならずオルニチンを含有すると言っても,エクオールとオルニチンの存在に特別の相乗効果があるとするものではなく,単に有用な2つの成分を含むというだけであるから,その点に本件発明1の技術的意義があるとは考えられない。 さらに,アルギニンを栄養素として添加する構成は,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)に記載がなく,特許請求の範囲とは無関係である。 したがって,控訴人の上記主張は失当である。 (ウ) 本件明細書の【0019】の「加工」及び「脱タンパク処理」に関する控訴人の主張についてa 控訴人は,本件明細書の【0019】の「脱タンパク処理」は,大豆胚軸からタンパク質を除き,ダイゼイン類の濃度を高める操作であって,ダイゼイン類の濃度を高めることを目的とする抽出と実質的に同一の処理であるから,【0019】の「脱タンパク処理」に供して得られるものは,「大豆胚軸抽出物」であり,これを発酵原料として発酵させたものは,「大豆胚軸発酵物」に該当する旨主張する。 しかし 同一の処理であるから,【0019】の「脱タンパク処理」に供して得られるものは,「大豆胚軸抽出物」であり,これを発酵原料として発酵させたものは,「大豆胚軸発酵物」に該当する旨主張する。 しかしながら,本件明細書の【0019】は,「発酵原料としては大豆胚軸が用いられる」と記載し,発酵原料が「大豆胚軸」であることを明確にしている。 また,【0019】には,「加工の有無については制限されない。」との記載があるが,食品の加工とは,一般に,細かく切って食べやすくする,煮たり焼いたりして消化しやすくすることなどをいうから,食品素材の成分や組成を変えるような複雑な化学的処理をすることを意味するものではない。本件発明1における大豆胚軸の栄養成分を利用して発酵させる技術思想及びその作用効果などからみれば,加工によっても大豆胚軸の本来成分はそっくり残しておかなければならないはずであり,【0019】の「加工」は,大豆胚軸の成分や性質の変更を加えるようなものではない。 次に,【0019】には,「本発明で使用される大豆胚軸は,脱脂処理や脱タンパク処理に供したものであってもよい。」との記載があるが,本件明細書には,【0019】の「脱脂処理」及び「脱タンパク処理」が,何の目的の処理か,どのように処理するかについての記載はない。「脱〇〇」の目的は,〇〇を取り除くことであり,特定成分を抽出し,精製することを目的とするものではない。そして,大豆 加工においては,「脱脂」とは,一般的にヘキサンなどを用いて大豆油を洗浄除去する操作をいい,「脱タンパク」とは,アルカリ水を用いて水抽出を施してタンパクを除去(豆乳として分離)する操作をいうことからすると,【0019】の「脱脂処理」及び「脱タンパク処理」も,このような処理を意味するものであり,「脱脂処理」とは文 水を用いて水抽出を施してタンパクを除去(豆乳として分離)する操作をいうことからすると,【0019】の「脱脂処理」及び「脱タンパク処理」も,このような処理を意味するものであり,「脱脂処理」とは文字通り脂質を除くこと,「脱タンパク処理」とは文字通りタンパク質を除くことをいうものと理解される。このように【0019】の「脱脂処理」及び「脱タンパク処理」は,本件明細書の表3記載の大豆胚軸の栄養成分のうちの「たんぱく質」と「脂質」だけを不要成分として除くことを述べものであり,「脱脂処理」及び「脱タンパク処理」をした後は,栄養成分の大部分は残っており,その残存した大豆胚軸成分を発酵原料として使用するのであって,取り除いた脂質やタンパク質を有用成分として使用するものではないから,大豆胚軸抽出物の「抽出工程」と理解する余地はない。 一方,イソフラボン抽出においては,目的物がイソフラボンであるから,イソフラボン以外を除去する処理であるのに対し,【0019】の「脱脂処理」及び「脱タンパク処理」においては,目的物は飽くまでも大豆胚軸であり,そこから脂質やタンパク質を除去する処理であるから,これらが同じ処理であるはずはない。 また,控訴人が挙げる脱タンパク処理の例(甲45ないし50)は,いずれも「大豆胚軸からイソフラボンを抽出・精製」することが目的であるから,イソフラボンが得られるのは当然であり,「大豆胚軸からタンパク質を除く」処理を記載したものではない。 したがって,控訴人の上記主張は失当である。 b 控訴人は,本件明細書の【0019】の「脱脂処理」及び「脱タンパク処理」によって市販の「大豆胚芽抽出物」(イソフラボン)と同 等のものが得られることの根拠として,甲35の実験結果を提出するが,甲35の実験は,以下のとおり,極めて複雑な操作を経て 脱タンパク処理」によって市販の「大豆胚芽抽出物」(イソフラボン)と同 等のものが得られることの根拠として,甲35の実験結果を提出するが,甲35の実験は,以下のとおり,極めて複雑な操作を経ている点,酸加水分解という化学反応を伴う溶媒抽出操作をしている点,食品加工に使用できない酢酸エチル及びメタノールを使用している点において,上記「脱脂処理」及び「脱タンパク処理」に該当するものといえない。 すなわち,甲35の実験では,大豆胚軸粉にヘキサンを加えて脱脂処理をして大豆胚軸脱脂物を得,これに次ぐ脱タンパクと称する処理において,大豆胚軸脱脂物にエタノールを加えて攪拌・遠心分離・濾過を行い,上清を得ているが,この処理は,イソフラボンの抽出に用いられる処理である。上清にはイソフラボンが抽出され,捨てられている残渣(不要物)には,タンパクだけではなく,食物繊維等の大豆胚軸の他の多くの成分も含まれているから,この時点で得られた物は,既に「大豆胚軸」ではない。さらに,「酸加水分解」処理をした上で,大豆の食品加工には使用できない酢酸エチルやメタノールなどを用いた処理をし,大豆胚軸加工物を得たものであって,殊更にイソフラボンを抽出し,その収率を上げるために,食品加工ではあり得ない処理をしたものであるから,甲35の実験は,【0019】の「脱脂処理」及び「脱タンパク処理」とはかけ離れた実験である。 (エ) 出願経過による「大豆胚軸発酵物」の解釈について原判決31頁10行目,32頁25行目から末行にかけて,33頁3行目及び5行目の各「本件発明」を「本件発明1」と改めるほか,原判決の別紙「当事者の主張(争点1について)」の〔被告らの主張〕⑵(原判決31頁10行目から33頁7行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (オ) まとめ 1」と改めるほか,原判決の別紙「当事者の主張(争点1について)」の〔被告らの主張〕⑵(原判決31頁10行目から33頁7行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (オ) まとめ 以上の本件発明1の特許請求の範囲の記載,本件明細書の記載及び出願経過によれば,本件発明1の構成要件1-Cにおける「大豆胚軸発酵物」とは,「大豆胚軸自体」の発酵物をいい,「大豆胚軸抽出物」の発酵物を含まないと解すべきである。 イ被告製品の構成要件1-Cの充足性被告製品に用いられているEQ-5は,大豆胚軸を原料として発酵させて得られた発酵物ではなく,大豆胚軸抽出物であるイソフラボンを発酵させて得られた発酵物である。 したがって,被告製品は,「大豆胚軸発酵物」に該当せず,本件発明1の構成要件1-Cを充足しないから,その技術的範囲に属さない。 2 争点1-2(本件訂正発明3の構成要件充足性)について⑴ 控訴人の主張ア本件訂正発明3の「大豆胚軸抽出物」の意義前記1(1)アと同様の理由により,本件訂正発明3の「大豆胚軸発酵物」は,「大豆胚軸又は大豆胚軸に含有ダイゼイン類が失われない限度の加工をした物の発酵物」をいい,「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物も,「大豆胚軸発酵物」に含まれると解すべきである。 イ被告製品の構成要件充足性被告製品は,前記1⑴イと同様の理由により,「大豆胚軸発酵物」に該当する。 そして,被告製品は,構成a及びbのとおり,「オルニチン」と「エクオール」を含有するから,構成要件3’-Aを充足する。 また,被告製品の構成aないしcによれば,被告製品は,発酵生成物としてオルニチンを発酵物の乾燥重量1g当たり約18.4mg(=オルニチン約24.29mg÷被告製品1.32g),発酵生成物としてエクオールを 告製品の構成aないしcによれば,被告製品は,発酵生成物としてオルニチンを発酵物の乾燥重量1g当たり約18.4mg(=オルニチン約24.29mg÷被告製品1.32g),発酵生成物としてエクオールを発酵物の乾燥重量1g当たり約7.58mg(=約10mg÷被告 製品1.32g)を含有し,発酵物中のゲニステイン類の総和の含有比率が発酵物中のイソフラボンの総量当たり0.6重量%であるから,構成要件3’-Bないし3’-Eを充足する。 そして,被告製品は,経口摂取型のサプリメントであり,食品に該当するから,構成要件3’-Fを充足する。 したがって,被告製品は,本件訂正発明3の構成要件をすべて充足するから,その技術的範囲に属する。 ⑵ 被控訴人らの主張ア本件訂正発明3の「大豆胚軸抽出物」の意義の主張に対し前記1⑵アと同様の理由により,本件訂正発明3の「大豆胚軸発酵物」は,「大豆胚軸自体」の発酵物をいい,「大豆胚軸抽出物」の発酵物を含まないと解すべきである。 イ被告製品の構成要件充足性の主張に対し被告製品に用いられているEQ-5は,大豆胚軸抽出物であるイソフラボンの発酵物であるから,構成要件3’-Aないし3’-Eの「大豆胚軸発酵物」に該当せず,被告製品は,「大豆胚軸発酵物」を「配合した食品」(構成要件3’-F)に該当しない。 したがって,被告製品は,本件訂正発明3の構成要件をすべて充足しないから,その技術的範囲に属さない。 3 争点1-3(均等論)について⑴ 控訴人の主張ア仮に本件発明1の構成要件1-C及び本件訂正発明3の構成要件3’-Aないし3’-Eの「大豆胚軸発酵物」は,大豆胚軸抽出物を発酵原料とする「大豆胚軸抽出物の発酵物」と解した場合には,被告製品は,「大豆胚軸発酵物」ではない点で本件発明1及び本件訂正発明 成要件3’-Aないし3’-Eの「大豆胚軸発酵物」は,大豆胚軸抽出物を発酵原料とする「大豆胚軸抽出物の発酵物」と解した場合には,被告製品は,「大豆胚軸発酵物」ではない点で本件発明1及び本件訂正発明3と相違することとなるが,以下のとおり,被告製品は,均等の第1要件ないし第3要件を 充足するから,本件発明1及び本件訂正発明3の特許請求の範囲(請求項1及び本件訂正後の請求項3)に記載された構成と均等なものとして,本件発明1及び本件訂正発明3の技術的範囲に属する。 (ア) 第1要件(相違部分が本質的部分でないこと)について本件明細書記載の従来技術は,ダイゼインを含む原料に対して,ダイゼインを資化してエクオールを産生する微生物で発酵処理してエクオールを含む発酵物を得るというものである(【0005】)。本件出願前にオルニチン及びエクオールを同時に含有する発酵物の存在について記載した文献はなく,そのような発酵物は知られていなかった。 本件発明1及び本件訂正発明3の課題は,高付加価値の発酵物を得ることにあり,その課題の解決手段は,大豆胚軸にアルギニンを添加し,発酵を行うことによって,発酵生成物であるエクオール及び発酵生成物であるオルニチンを同時に含有する発酵物を得ることにある(【0013】,【0022】)。 したがって,本件発明1及び本件訂正発明3における従来技術に見られない特有の技術的思想とは,オルニチン及びエクオールという有用な2つの物質を同時に含有する,付加価値の高い発酵物を得ることにあり,本件発明1及び本件訂正発明3の本質的な部分は,発酵生成物であるエクオール及び発酵生成物であるオルニチンを含む点にある。 しかるところ,被告製品は,その発酵原料が大豆胚軸に由来し,発酵生成物であるエクオール及び発酵生成物であるオルニチンを含むも 酵生成物であるエクオール及び発酵生成物であるオルニチンを含む点にある。 しかるところ,被告製品は,その発酵原料が大豆胚軸に由来し,発酵生成物であるエクオール及び発酵生成物であるオルニチンを含むものであるから,本件発明1及び本件訂正発明3の本質的な部分を備えている。 そうすると,被告製品は,大豆胚軸抽出物を発酵原料とする「大豆胚軸抽出物の発酵物」であって,「大豆胚軸発酵物」ではない点において本件発明1の構成要件1-Cの構成及び本件訂正発明3の構成要件3’-Aないし3’-Eの構成と相違するが,上記相違部分(以下「本件相 違部分」という。)は,本質的部分ではないといえるから,被告製品は,第1要件を充足する。 (イ) 第2要件(置換可能性)について本件発明1及び本件訂正発明3の作用効果は,オルニチン及びエクオールという有用な2つの物質を同時に含有する,付加価値の高い発酵物を得ることにある(【0013】,【0022】)。 そして,本件発明1及び本件訂正発明3における大豆胚軸発酵物の発酵原料を被告製品に係る「大豆胚軸抽出物」を用いたとしても,発酵原料に含まれるダイゼイン類を資化してエクオールが生成され,同時に発酵原料に添加したアルギニンが変換されてオルニチンが生成されることによって,付加価値の高い発酵物を得ることができるから,被告製品は,第2要件を充足する。 (ウ) 第3要件(置換容易性)について本件明細書の【0019】には,「本発明に使用される大豆胚軸は,含有されているダイゼイン類が失われていないことを限度として,大豆の産地や加工の有無については制限されない。」との記載があるところ,本件特許の優先日前から,大豆胚軸に施す加工処理として,抽出処理があることは当業者に知られていた。 また,本件明細書の【0024】の「イソフラ の有無については制限されない。」との記載があるところ,本件特許の優先日前から,大豆胚軸に施す加工処理として,抽出処理があることは当業者に知られていた。 また,本件明細書の【0024】の「イソフラボンを発酵原料に別途添加しておくことにより,得られる大豆胚軸発酵物中のエクオール含量をより高めることが可能になり,その有用性を一層向上させることができる。」との記載は,イソフラボンを発酵原料として用いることを強く示唆するものといえる。 したがって,当業者であれば,被告製品の製造時点において,本件相違部分に係る本件発明1及び本件訂正発明3の構成を被告製品の構成に置き換えることを容易に想到することができたものといえるから,被告 製品は,第3要件を充足する。 (エ) 第5要件(意識的除外等の特段の事情)について前記1⑴ア(エ)のとおり,本件特許の出願経過等において,特許請求の範囲の「大豆胚軸発酵物」の発酵原料について,大豆胚軸自体に限定する,あるいは大豆胚軸抽出物を除外すると述べたことはない。 「大豆胚軸発酵物」といえば,大豆胚軸を加工したものも発酵原料と解するのが技術常識であって,大豆胚軸抽出物を除外したとは解されない。また,本件明細書には,「大豆胚軸発酵物」の語の記載はあるが,「大豆胚軸抽出物発酵物」との記載はない。 したがって,本件特許の出願経過等において,本件相違部分に係る被告製品の構成が意識的に除外された等の特段の事情は存しない。 イ以上のとおり,被告製品は,均等の第1要件ないし第3要件を充足するから,本件発明1及び本件訂正発明3の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件発明1及び本件訂正発明3の技術的範囲に属する。 ⑵ 被控訴人らの主張ア被告製品は,均等の第1要件及び第2要件を充足せず,一方で,第 3の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件発明1及び本件訂正発明3の技術的範囲に属する。 ⑵ 被控訴人らの主張ア被告製品は,均等の第1要件及び第2要件を充足せず,一方で,第5要件を充足するから,本件発明1及び本件訂正発明3の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものということはできない。 (ア) 第1要件(相違部分が本質的部分でないこと)について本件発明1及び本件訂正発明3の本質的部分は,エクオールを得るための発酵原料として大豆胚軸を選択した点にある(本件明細書の【0008】,【0011】,【0013】,【0019】,【0020】,【0035】,前記1⑵ア(エ)の出願経過)。 しかるところ,被告製品は,大豆胚軸抽出物を発酵原料としており,大豆胚軸を発酵原料としていないから,本件発明1及び本件訂正発明3 の本質的部分の構成を備えていない。 したがって,本件相違部分は,本件発明1及び本件訂正発明3の本質的部分でないということはできないから,被告製品は,均等論の第1要件を充足しない。 (イ) 第2要件(置換可能性)について本件発明1及び本件訂正発明3は,「大豆胚軸発酵物」であるため,本件明細書記載の作用効果(【0013】,【0029】,【0033】,【0035】,【0038】)を奏するが,被告製品に用いられている大豆胚軸抽出物の発酵物は,「大豆胚軸発酵物」の組成を有していないから,上記作用効果を奏しない。 したがって,本件発明1及び本件訂正発明3の「大豆胚軸発酵物」を被告製品の大豆胚軸抽出物の発酵物に置換する可能性はないから,被告製品は,第2要件を充足しない。 (ウ) 第5要件(意識的除外等の特段の事情)について本件明細書には,「大豆胚軸抽出物」(【0007】)と「大豆胚軸」(【0008】, する可能性はないから,被告製品は,第2要件を充足しない。 (ウ) 第5要件(意識的除外等の特段の事情)について本件明細書には,「大豆胚軸抽出物」(【0007】)と「大豆胚軸」(【0008】,【0010】ないし【0012】)を併記して記載しながら,特許請求の範囲には「大豆胚軸」発酵物のみを記載し,「大豆胚軸抽出物」の発酵物を記載しないという選択をしているから,被告製品の構成である「大豆胚軸抽出物」の発酵物については,特許請求の範囲から意識的に除外したと認められる特段の事情がある。 したがって,被告製品は,第5要件を充足する。 イ以上のとおり,被告製品は,均等の第1要件及び第2要件を充足せず,一方で,第5要件を充足する。 したがって,被告製品は,本件発明1及び本件訂正発明3の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものということはできないから,本件発明1及び本件訂正発明3の技術的範囲に属さない。 4 争点2(本件発明1に係る本件特許の無効の抗弁の成否)について以下のとおり訂正するほか,原判決の別紙「当事者の主張(争点2について)」(原判決35頁2行目から74頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。なお,被控訴人は,当審において,補助参加人主張の無効理由1,3ないし8を援用し,補助参加人は,被控訴人主張の無効理由1ないし3を援用した。 ⑴ 原判決36頁15行目から22行目までを削り,37頁1行目の「本件発明3」を「本件訂正発明3」と改め,同頁同行目の「請求項1…に記載の」を削り,同頁2行目及び20行目の各「本件各発明」を「本件発明1」と改める。 ⑵ 原判決38頁16行目の「本件各発明」を「本件発明1」と改め,同頁23行目から39頁末行までを次のとおり改める。 「 補助参加人は,当審におい 「本件各発明」を「本件発明1」と改める。 ⑵ 原判決38頁16行目の「本件各発明」を「本件発明1」と改め,同頁23行目から39頁末行までを次のとおり改める。 「 補助参加人は,当審において,無効理由2の主張を撤回した。」⑶ 原判決43頁13行目の「本件発明」を「本件発明1」と改め,同頁16行目から20行目までを削る。 ⑷ 原判決49頁14行目から15行目にかけての「否定されず,それに従属する本件発明3の新規性及び進歩性も否定されない。」を「否定されない。」と改める。 ⑸ 原判決50頁末行の「本件発明」を「本件発明1」と改め,51頁3行目から8行目末尾までを削り,同頁末行の「本件各発明」を「本件発明1」と改める。 ⑹ 原判決53頁8行目から9行目にかけての「否定されず,それに従属する本件発明3の新規性及び進歩性も否定されない。」を「否定されない。」と改め,同頁15行目の「基礎出願2件」の後に「(本件特許の国内優先権主張の基礎出願特願2005-352337号(丙16)及び特願2006-277934号(丙17))」を加える。 ⑺ 原判決54頁21行目の「本件発明」を「本件発明1」と改める。 ⑻ 原判決56頁19行目から57頁2行目までを削り,同頁23行目の「請求項1及び3」を「請求項1」と改める。 ⑼ 原判決59頁8行目の「本件発明3」を「本件訂正発明3」と改める。 ⑽ 原判決61頁25行目の「本件発明」を「本件発明1」と改める。 ⑾ 原判決64頁18行目から20行目までを次のとおり改める。 「 また,オルニチン及びエクオールは,丙30(特開平2-283290号公報)及び丙14の1に記載されているように,それぞれ本件特許の優先日前に有用な生理活性物質として周知の有効成分であり,また,大豆胚軸発酵物を活性成分 エクオールは,丙30(特開平2-283290号公報)及び丙14の1に記載されているように,それぞれ本件特許の優先日前に有用な生理活性物質として周知の有効成分であり,また,大豆胚軸発酵物を活性成分とし,他の活性成分を配合して食品組成物を得ることは周知技術であるから,更年期障害,骨粗懸症,肝機能障害などの予防,改善に役立つとされる乙1記載の発明において,肝臓機能障害のための丙30に記載されたオルニチン及び更年期障害の予防改善のための丙14の1に記載されたエクオールをさらに含有することは,当業者であれば容易になし得たことである。」⑿ 原判決64頁21行目の「カ」を「オ」と,同頁22行目の「本件発明1及び3」を「本件発明1」と,同頁同行目の「及び14の1,」を「,14の1及び30」と改める。 ⒀ 原判決64頁末行,65頁1行目,4行目,7行目,66頁6行目及び7行目の各「本件各発明」を「本件発明1」と改め,同頁9行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 さらに,丙30及び丙14の1のいずれにおいても,大豆胚軸発酵物中にエクオールとオルニチンを発酵生成物として含有させることは具体的な技術的思想として何ら開示も示唆もされていない。 したがって,本件発明1は,乙1と丙7,11,14の1及び30並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではな い。」⒁ 原判決69頁18行目から21行目までを削り,同頁22行目の「オ」を「エ」と,同頁24行目の「本件発明1及び3」を「本件発明1」と改める。 ⒂ 原判決71頁24行目から25行目にかけての「否定されず,それに従属する本件発明3の新規性及び進歩性も否定されない。」を「否定されない。」と改める。 ⒃ 原判決71頁末行の「新規性ないし進歩性欠如」を「新規性の欠如 目から25行目にかけての「否定されず,それに従属する本件発明3の新規性及び進歩性も否定されない。」を「否定されない。」と改める。 ⒃ 原判決71頁末行の「新規性ないし進歩性欠如」を「新規性の欠如」と改める。 ⒄ 原判決73頁13行目から25行目までを削る。 5 争点3(本件訂正発明3に係る本件特許の無効の抗弁の成否)について⑴ 被控訴人らの主張以下のとおり訂正するほか,原判決の別紙「当事者の主張(争点3について)」の〔被告らの主張〕⑴(原判決92頁3行目から94頁19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決92頁3行目の「本件訂正審判請求は,」を「本件訂正は,」と改め,同頁3行目から4行目にかけての「違反)か,」の次に「本件訂正発明3は,」を加え,同頁6行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 したがって,本件訂正発明3に係る本件特許には,特許法123条1項8号の無効理由があり,特許無効審判により無効とされるべきものであるから,同法104条の3第1項の規定により,控訴人は,被控訴人に対し,本件特許権を行使することはできない。」イ原判決92頁15行目の「したがって」から16行目末尾までを次のとおり改める。 「さらに,構成要件3’-Cのエクオールの量についても,オルニチンの量と同様に,本件明細書に記載されていない。 したがって,本件訂正発明3の構成要件3’-B及び3’-Cは新規 事項を含むものである。」ウ原判決92頁18行目の「3-B’,3-C’及び3-E’」を「3’-B,3’-C及び3’-E」と,同頁19行目の「3-F’」を「3’-F」と,同頁23行目の「本件訂正発明1」から24行目の「同様に,」までを「本件訂正発明3の構成要件3’-Bは,」と改める。 エ原判決93頁末行の ’-E」と,同頁19行目の「3-F’」を「3’-F」と,同頁23行目の「本件訂正発明1」から24行目の「同様に,」までを「本件訂正発明3の構成要件3’-Bは,」と改める。 エ原判決93頁末行の「本件訂正発明1及び」を削る。 オ原判決94頁3行目の「本件訂正発明1及び」を削り,同頁4行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「(エ) 構成要件3’-Cは「発酵生成物であるエクオールを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1mg以上含有」することを規定する。 しかしながら,本件明細書においては「大豆胚軸発酵物中のエクオール含有については,使用するエクオール産生微生物や発酵条件等によって異なる」としつつ,「通常,大豆胚軸発酵物の乾燥重量当たり(大豆胚軸発酵物の乾燥重量を1gとした場合),エクオールが1~20mg,好ましくは2~12mg,更に好ましくは5~8mg含まれている。」として上限は20mgまでしか記載されていないのであるから(【0028】),構成要件3'-Bの「オルニチン」の量の規定と同様に,当業者は,「エクオール」を「1mg以上」である全ての場合にわたって発明を実施することができないため,本件訂正発明3は,実施可能要件(特許法36条4項1号)を満たさない。 また,構成要件3’-Cにおいては,エクオール量が「1mg以上」であればいかなる量であってもよいことは開示されていないから,本件訂正発明3は,サポート要件(特許法36条6項1号)を満たさない。 (オ) 本件訂正発明3で得られる「発酵生成物であるオルニチン」及び「発酵生成物であるエクオール」の量を構成要件3’-B及び3’- Cに規定される量とするためには,「発酵」という物の製造方法において,発酵原料として用いる「ダイゼイン類」の量,発酵原料として用いる「アルギニン」 クオール」の量を構成要件3’-B及び3’- Cに規定される量とするためには,「発酵」という物の製造方法において,発酵原料として用いる「ダイゼイン類」の量,発酵原料として用いる「アルギニン」の量,発酵の際に用いる「微生物」及びその量,発酵の時間,発酵の際に用いる「微生物」の産生能又は「微生物」の種類などが特定されなければならず,それらの特定がない状況では,当業者は,構成要件3'-B及び3'-Cを実施することができない。 特に,本件明細書には,「大豆胚軸」と「ラクトコッカス20-92(FERMBP-10036号)」という特定の「微生物」の組合せが開示されているだけで,「ラクトコッカス20-92(FERMBP-10036号)」以外の「微生物」を用いた場合に,「8mg以上のオルニチン」及び「1mg以上のエクオール」を生成できるか否かは不明であり,当業者は,本件明細書に基づいて本件訂正発明3を実施することができない。 そして,本件訂正発明3のように,一定量以上のエクオール及びオルニチンを産生するという課題を解決し得ることを当業者が認識することができるような「オルニチン産生能力及びエクオール産生能力を有する微生物」は,「ラクトコッカス20-92」以外に見いだすことは困難であるから,微生物が特定されていない本件訂正発明3が,「ラクトコッカス20-92」以外の微生物を使用する場合において実施可能要件及びサポート要件を満たさないことは明らかである。」カ原判決94頁6行目から7行目までを削り,同頁8行目の「すなわち,」を「(ア) すなわち,」と,同頁11行目の「丙15」を「丙15の1(以下,丙15の2を含めて「丙15」という。)と改め,同頁16行目の「したがって」から19行目末尾までを行を改めて次のとおり改める。 「 したがって 」と,同頁11行目の「丙15」を「丙15の1(以下,丙15の2を含めて「丙15」という。)と改め,同頁16行目の「したがって」から19行目末尾までを行を改めて次のとおり改める。 「 したがって,本件訂正発明3と丙15とでは実質的な相違点はなく,本件訂正発明3は,丙15から当業者が容易になし得た事項にすぎな いから,進歩性を欠如している。 (イ) 構成要件3'-Fに規定する「食品」等は,乙1の「(3) 本発明大豆発酵食品の調製」との記載(【0057】)から,当業者が当然に想到できることである。 したがって,本件訂正発明3は,乙1と丙30及び丙14の1に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠如している。」⑵ 控訴人の主張ア新規事項の追加の主張に対し本件明細書においては,オルニチンの含有量の下限値として8mgが好ましいこと(【0036】)及びエクオールの含有量の下限値として1mgであること(【0028】)が記載されており,新たな技術的事項を導入するものでない(甲37)。 したがって,被控訴人らの主張は理由がない。 イ明確性要件違反の主張に対し本件訂正発明3において,オルニチンとエクオールの含有量を大豆胚軸発酵物中(乾燥重量1g当たり)の含有量として規定していることは,その記載から明確である。 構成要件3’-Fに規定する「食品」は,上記大豆胚軸発酵物を「配合」したものであることも規定されており,上記オルニチン及びエクオールの含有量はあくまで大豆胚軸発酵物中(乾燥重量1g当たり)の含有量として規定していることが明らかである。 したがって,本件訂正発明3は明確性要件に適合するから,被控訴人らの主張は理由がない。 ウサポート要件違反ないし実施可能要件違反の主 1g当たり)の含有量として規定していることが明らかである。 したがって,本件訂正発明3は明確性要件に適合するから,被控訴人らの主張は理由がない。 ウサポート要件違反ないし実施可能要件違反の主張に対し(ア) 本件訂正発明3の構成要件3’-B及び3’-Cにおいて,オルニ チン及びエクオールの生成量の範囲は,これらの成分が有用生理作用を有する成分であるという観点から規定されており(【0028】,【0036】),このような目的に照らせば,含有量の下限のみを示せば十分である。 また,かかる含有量に現実的な上限が存在することは,当業者には明白であり,技術常識に照らして判断すれば足りることである。 (イ) 当業者であれば,本件明細書の実施例の培養条件を参考に,どの程度の量のイソフラボン類(特に,ダイゼイン類)とアルギニンを原料として用いれば,その発酵生成物としてどの程度のエクオールとオルニチンが得られるかを理解することできる。また,原料を増減させることで,目的物の生成量を調整できることも技術常識である。 したがって,本件明細書の記載と技術常識に基づき,当業者であれば,構成要件3’-B及び3’-Cのオルニチン及びエクオールの含有量を満たす発酵物を得ることができ,それによって本件訂正発明3の課題を解決できることは当然に理解可能である。この点は,実施例で用いられている「ラクトコッカス20-92株」以外の微生物を用いる場合も同様であり,原料の変換効率が実施例に示された「ラクトコッカス20-92株」と多少異なるとしても,上記実施例の結果を踏まえて,当業者であれば原料中のイソフラボン類とアルギニンの量を適宜調整することで所望のオルニチン及びエクオールの含有量を得ることができるし,構成要件3’-B及び3’-Cに規定される含有量の範 を踏まえて,当業者であれば原料中のイソフラボン類とアルギニンの量を適宜調整することで所望のオルニチン及びエクオールの含有量を得ることができるし,構成要件3’-B及び3’-Cに規定される含有量の範囲とするために予備実験等を要するとしても,少なくとも過度の試行錯誤までは要することなく,本件訂正発明3を実施できるものと思料する。 したがって,本件訂正発明3は実施可能要件及びサポート要件に適合するから,被控訴人らの主張は理由がない。 エ進歩性欠如の主張に対し (ア) 本件訂正発明3の技術的意義は,特定量以上のエクオールとオルニチンがいずれも発酵生成物として含まれ,かつ,ゲニステイン類は特定量以下である組成の発酵物が生成したという点にある。大豆胚軸発酵物に,後からオルニチン及びエクオールを添加しても,それは大豆胚軸発酵物がオルニチン及びエクオールを「含有」することにはならない。そして,このように発酵生成物としてオルニチン及びエクオールを含む大豆胚軸発酵物は,それ自体当業者が容易に想到し得るものではなく,これらの含有量の数値範囲を設定することもまた容易に想到し得るものではない。 しかるところ,乙1には,発酵生成物としてエクオールとオルニチンをいずれも含有する発酵物を得ることは,具体的な技術思想として開示も示唆もされていないし,発酵生成物としてのエクオールとオルニチンをいずれも含有させることの動機付けの記載もない。加えて,エクオール及びオルニチンの含有量の数値範囲を設定し,かつ,ゲニステイン類の数値範囲を設定するということは,なお一層,容易ではない。 また,丙30は,L-オルニチン産生能を有する微生物を用いるL-オルニチンの製造方法を開示しているにすぎず,大豆胚軸発酵物において発酵生成物としてのオルニチンを用いることや,大豆胚 容易ではない。 また,丙30は,L-オルニチン産生能を有する微生物を用いるL-オルニチンの製造方法を開示しているにすぎず,大豆胚軸発酵物において発酵生成物としてのオルニチンを用いることや,大豆胚軸発酵物中にエクオールと共にオルニチンを発酵生成物として共存させるという具体的な技術的思想は開示されていない。丙14の1についても,ダイゼインを資化してエクオールを得ることについて記載されているが,オルニチンについての記載は皆無である。 さらに,丙15は,本件特許の優先日後に公開されたものであるから,本件訂正発明3の先行技術とはなり得ないが,仮に丙15を考慮するとしても,丙15には,GAM培地に含まれるアルギニンは単に発酵に用いる菌の栄養として用いられており,それが変換されてできたオルニチ ンによる生理活性作用を得ることが課題や解決策として示されているわけではない。 したがって,当業者が丙15から大豆胚軸発酵物にオルニチン及びエクオールを含有させるという具体的な技術的思想を抽出することはできず,本件訂正発明3の着想に至ることはない。 (イ) 以上によれば,被控訴人らの進歩性欠如の主張は理由がない。 第4 当裁判所の判断当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 本件明細書の記載事項⑴ 本件明細書(甲2)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1及び表1ないし4については,別紙明細書図面を参照)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は,エクオールを含有する大豆胚軸の発酵物,及びその製造方法に関する。 【背景技術】【0002】大豆中に含まれるイソフラボン(大豆イソフラボン;ダイゼイン,ゲニステイン,グリシテイン)は 明は,エクオールを含有する大豆胚軸の発酵物,及びその製造方法に関する。 【背景技術】【0002】大豆中に含まれるイソフラボン(大豆イソフラボン;ダイゼイン,ゲニステイン,グリシテイン)はエストラジオールと構造が類似しており,エストロゲンレセプター(以下,ER と表記する)への結合に伴う抗エストロゲン作用及びエストロゲン様作用を有している。これまでの大豆イソフラボンの疫学研究や介入研究からは,抗エストロゲン作用による乳癌,前立腺癌等のホルモン依存性の癌の予防効果や,エストロゲン様作用による更年期障害,閉経後の骨粗鬆症,高脂血症の改善効果が示唆されている。 【0003】近年,これら大豆イソフラボンの生理作用の活性本体がダイゼインの代謝物のエクオールである可能性が指摘されている。即ち,エクオールは大豆イソフラボンと比較してER との結合能(特に,ERβとの結合)が強く,乳房や前立腺組織などの標的臓器への移行性が顕著に高いことが報告されている。また,患者-対照研究では,乳癌,前立腺癌患者でエクオール産生者が有意に少ないことが報告され,閉経後の骨密度,脂質代謝に対する大豆イソフラボンの改善効果をエクオール産生者と非産生者に分けて解析するとエクオール産生者で有意に改善されたことも報告されている。 【0004】エクオールは,ダイゼインより腸内細菌の代謝を経て産生されるが,エクオール産生能には個人差があり,日本人のエクオール産生者の割合は,約50%と報告されている。つまり,日本人の約50%がエクオールを産生できないヒト(エクオール非産生者)であり,このようなヒトにおいては,大豆や大豆加工食品を摂取しても,エクオールの作用に基づく有用生理効果が享受できない。従って,エクオール非産生者に,エクオールの作用に基づく有用生理効果 非産生者)であり,このようなヒトにおいては,大豆や大豆加工食品を摂取しても,エクオールの作用に基づく有用生理効果が享受できない。従って,エクオール非産生者に,エクオールの作用に基づく有用生理効果を発現させるには,エクオール自体を摂取させることが有効であると考えられる。 【0005】従来,エクオールの製造方法としては,ダイゼインを含む原料に対して,ダイゼインを資化してエクオールを産生する微生物(以下,エクオール産生菌と表記する)で発酵処理する方法が知られている。この製造方法において,使用されるダイゼインを含む原料としては,大豆,葛根湯,レッドグローブ,アルファルファ等が知られている。また,エクオール産生菌についても既に公知であり,例えば,本発明者等によって,バクテロイデスE-23-15(FERMBP-6435 号),ストレプトコッカスE-23-17(FERMBP-6436 号),ストレプトコッカスA6G225(FERMBP-6437 号)及びラクトコッカス20-92(FERMBP-10036 号)がヒトの糞便から単離されている(特許文献1及び2参照)。 【0006】しかしながら,単に,上記のダイゼイン類を含む原料に対して,エクオール産生菌を用いて発酵処理しても,得られる発酵物中のエクオール量は十分ではなく,その発酵物をそのまま摂取しても,エクオールの作用に基づく所望の有用効果を十分には望めないという問題点があった。 【0007】一方,大豆胚軸部分には,大豆加工食品として利用されている子葉部分に比べて,イソフラボンやサポニン等の有用成分が高い割合で含まれていることが知られており,その抽出物については種々の用途が開発されている(例えば,特許文献3)。しかしながら,大豆胚軸抽出物は,それ自体コストが高いという欠 サポニン等の有用成分が高い割合で含まれていることが知られており,その抽出物については種々の用途が開発されている(例えば,特許文献3)。しかしながら,大豆胚軸抽出物は,それ自体コストが高いという欠点がある。また,大豆胚軸抽出物は,エクオールの製造原料とする場合には,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素の添加が必要になるという問題点がある。このような理由から,大豆胚軸抽出物は,エクオールを工業的に製造する上で,原料として使用できないのが現状である。 【0008】一方,大豆胚軸自体については,特有の苦味があるため,それ自体をそのまま利用することは敬遠される傾向があり,大豆の胚軸の多くは廃棄されているのが現状である。また,大豆胚軸には,大豆の子葉部分と同様に,アレルゲン物質が含まれているため,大豆アレルギーを持つ人にとって,大豆胚軸を摂取乃至投与することができなかった。そのため,大豆胚軸を有効利用するには,大豆胚軸自体に更に付加価値を備えさせることにより,その有用性を高めることが重要である。 【0009】【特許文献1】国際公開第99/007392号パンフレット【特許文献2】国際公開第2005/000042号パンフレット【特許文献3】特開2002-234844号公報【発明が解決しようとする課題】【0010】本発明の目的は,エクオールを含有し,食品素材,医薬品素材,又は化粧品素材等として有用な大豆胚軸発酵物を提供することである。更に,本発明は,エクオールを含有する大豆胚軸発酵物を製造する方法を提供することを目的とする。 イ 【課題を解決するための手段】【0011】本発明者らは,上記課題を解決すべく鋭意検討したところ,ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物を用いて ことを目的とする。 イ 【課題を解決するための手段】【0011】本発明者らは,上記課題を解決すべく鋭意検討したところ,ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物を用いて,大豆の胚軸を発酵させると,高い効率でエクオールが生成し,エクオール含有大豆胚軸発酵物が得られることを見出した。更に,斯くして得られるエクオール含有大豆胚軸発酵物には,大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減されているので,低アレルゲンの素材としても有用であることを見出した。本発明は,これらの知見に基づいて,更に改良を重ねることにより完成したものである。 【0012】即ち,本発明は,下記に掲げるエクオール含有大豆胚軸発酵物及びその利用に関する発明を提供する:項1. ダイゼイン配糖体,ダイゼイン,及びジヒドロダイゼインよりなる群から選択される少なくとも1種のダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物で,大豆胚軸を発酵させて得られる,エク オール含有大豆胚軸発酵物。 項2. 前記微生物が,ラクトコッカス属に属する乳酸菌である,項1に記載の大豆胚軸発酵物。 項3. 前記微生物が,ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcusgarvieae)である,項1に記載の大豆胚軸発酵物。 項4. 大豆胚軸発酵物の乾燥重量当たり,エクオールを0.1~20重量%含有している,項1に記載の大豆胚軸発酵物。 項5. 更に,ダイジン類,ゲニスチン類,ゲニステイン類,グリシチン類及びグリシテイン類を含む,項1に記載の大豆胚軸発酵物。 項6. 更に,オルニチンを含む,項1に記載の大豆胚軸発酵物。 項7. 項1に記載の大豆胚軸発酵物を含む,食品。 項8. 栄養補助食品である,項7に記載の食品。 項9. 食品100g当 項6. 更に,オルニチンを含む,項1に記載の大豆胚軸発酵物。 項7. 項1に記載の大豆胚軸発酵物を含む,食品。 項8. 栄養補助食品である,項7に記載の食品。 項9. 食品100g当たり,前記大豆胚軸発酵物が0.1~90g含まれている,項7に記載の食品。 項10. 項1に記載の大豆胚軸発酵物を含む,医薬製剤。 項11. 更年期障害,骨粗鬆症,前立腺肥大,又はメタボリックシンドロームの予防又は治療剤である,項10に記載の医薬製剤。 項12. 血中コレステロール値の低減剤である,項10に記載の医薬製剤。 項13. 項1に記載の大豆胚軸発酵物の,更年期障害,骨粗鬆症,前立腺肥大,又はメタボリックシンドロームの予防又は治療剤の製造のための使用。 項14. 項1に記載の大豆胚軸発酵物の,血中コレステロール値の低減剤の製造のための使用。 項15. 更年期障害の患者に,項1に記載の大豆胚軸発酵物の有効量を投与することを特徴とする,更年期障害の治療方法。 項16. 血中コレステロール値の低減が必要とされる患者に,項1に記載の大豆胚軸発酵物の有効量を投与することを特徴とする,血中コレステロール値の低減方法。 項17. 項1に記載の大豆胚軸発酵物を含む,化粧料。 項18. 化粧料100g当たり,前記大豆胚軸発酵物が0.1~10g含まれている,項17に記載の化粧料。 項19. ダイゼイン配糖体,ダイゼイン,及びジヒドロダイゼインよりなる群から選択される少なくとも1種のダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物で,大豆胚軸を発酵処理することを特徴とする,エクオール含有大豆胚軸発酵物の製造方法。 【発明の効果】【0013】本発明の大豆胚軸発酵物は,エクオールと共に,エクオール以外の 力を有する微生物で,大豆胚軸を発酵処理することを特徴とする,エクオール含有大豆胚軸発酵物の製造方法。 【発明の効果】【0013】本発明の大豆胚軸発酵物は,エクオールと共に,エクオール以外のイソフラボンやサポニン等の有用成分をも含有しているので,食品,医薬品,化粧料等の分野での有用である。特に,本発明の大豆胚軸発酵物は,大豆,葛根湯,レッドグローブ,アルファルファ等のダイゼイン含有原料を発酵させたものに比べて,エクオールの生成量が格段に多く,エクオールに基づく有用生理効果を一層良好に奏することができる。 【0014】更に,本発明の大豆胚軸発酵物は,大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減されているので,低アレルギー性素材として,大豆アレルギーを持つ人にとっても安全に摂取乃至適用することができるという利点がある。また,本発明の大豆胚軸発酵物は,大豆の食品加工時に廃棄されていた大豆胚軸を原料としており,資源の有効利用という点でも産業上の利用価値が高い。 ウ 【発明を実施するための形態】【0016】 以下,本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。 【0017】本発明では,エクオール産生菌として,ダイゼイン配糖体,ダイゼイン,及びジヒドロダイゼインよりなる群から選択される少なくとも1種のダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力(代謝活性)を有する微生物を使用する。ここで,ダイゼイン配糖体としては,具体的には,ダイジン,マロニルダイジン,アセチルダイジン等が挙げられる。 【0018】上記微生物(エクオール産生菌)としては,食品衛生上許容され,上記能力を有する限り特に制限されないが,例えば,ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcusgarvieae)等のラクトコッカス属に属する微生物;ストレプトコ としては,食品衛生上許容され,上記能力を有する限り特に制限されないが,例えば,ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcusgarvieae)等のラクトコッカス属に属する微生物;ストレプトコッカス・インターメディアス(Streptococcusintermedius),ストレプトコッカス・コンステラータス(Streptococcusconstellatus)等のストレプトコッカス属に属する微生物;バクテロイデス・オバタス(Bacteroidesovatus)等のバクテロイデス属に属する微生物の中に上記能力を有する微生物が存在していることが分かっている。エクオール産生菌の中で,好ましくは,ラクトコッカス属,及びストレプトコッカス属等の乳酸菌であり,更に好ましくはラクトコッカス属に属する乳酸菌であり,特に好ましくはラクトコッカス・ガルビエが挙げられる。上記能力を有する微生物は,例えば,ヒト糞便中からエクオールの産生能の有無を指標として単離することができる。上記エクオール産生菌については,本発明者等により,ヒト糞便から単離同定された菌,即ち,ラクトコッカス20-92(FERMBP-10036 号),ストレプトコッカスE-23-17(FERMBP-6436 号),ストレプトコッカスA6G225(FERMBP-6437 号),及びバクテロイデスE-23-15(FERMBP-6435 号)が寄託されており,本発明ではこれらの寄託菌を使用できる。これらの寄託菌の中でも,ラクトコッカス20-92 が好適 に使用される。 【0019】本発明において,発酵原料としては大豆胚軸が用いられる。大豆胚軸とは,大豆の発芽時に幼芽,幼根となる部分であり,ダイゼイン配糖体やダイゼイン等のダイゼイン類が多く含まれていることが知られている。 本発明において,発酵原料としては大豆胚軸が用いられる。大豆胚軸とは,大豆の発芽時に幼芽,幼根となる部分であり,ダイゼイン配糖体やダイゼイン等のダイゼイン類が多く含まれていることが知られている。本発明に使用される大豆胚軸は,含有されているダイゼイン類が失われていないことを限度として,大豆の産地や加工の有無については制限されない。 例えば,生の状態のもの;加熱処理,乾燥処理,蒸煮処理等に供された大豆から分離したもの;未加工の大豆から分離した胚軸を加熱処理,乾燥処理又は蒸煮処理等に供したもの等のいずれであってもよい。また,本発明で使用される大豆胚軸は,脱脂処理や脱タンパク処理に供したものであってもよい。また,本発明に使用される大豆胚軸の形状については,特に制限されるものではなく,粉末状であっても,粉砕又は破砕されたのものであってもよい。より効率的にエクオールを生成させるという観点からは,粉末状の大豆胚軸を使用することが望ましい。 【0020】大豆胚軸の発酵処理は,適量の水を大豆胚軸に加えて水分含量を調整し,これに上記エクオール産生菌を接種することにより行われる。 【0021】大豆胚軸に添加される水の量は,使用するエクオール産生菌の種類や発酵槽の種類等によって応じて適宜設定される。通常,発酵開始時に,大豆胚軸と水が以下の割合で共存していればよい:大豆胚軸(乾燥重量換算)100重量部に対して,水が400~4000重量部,好ましくは500~2000重量部,更に好ましくは600~1000重量部。 【0022】また,大豆胚軸の発酵において,発酵原料となる大豆胚軸には,必要に 応じて,発酵効率の促進や発酵物の風味向上等を目的として,酵母エキス,ポリペプトン,肉エキス等の窒素源;グルコース,シュクロース等の炭素源;リン酸塩,炭酸 発酵原料となる大豆胚軸には,必要に 応じて,発酵効率の促進や発酵物の風味向上等を目的として,酵母エキス,ポリペプトン,肉エキス等の窒素源;グルコース,シュクロース等の炭素源;リン酸塩,炭酸塩,硫酸塩等の無機塩;ビタミン類;アミノ酸等の栄養成分を添加してもよい。特に,エクオール産生菌として,アルギニンをオルニチンに変換する能力を有するもの(以下,「オルニチン・エクオール産生菌」と表記する)を使用する場合には,大豆胚軸にアルギニンを添加して発酵を行うことによって,得られる発酵物中にオルニチンを含有させることができる。この場合,アルギニンの添加量については,例えば,大豆胚軸(乾燥重量換算)100重量部に対して,アルギニンが0.5~3重量部程度が例示される。なお,アルギニンをオルニチンに変換する能力を有するエクオール産生菌としては,具体的には,ラクトコッカス・ガルビエから選択することができ,具体的には,ラクトコッカス20-92(FERMBP-10036 号)が挙げられる。 【0023】更に,使用する発酵原料(大豆胚軸含有物)のpHについては,エクオール産生菌が生育可能である限り特に制限されないが,エクオール産生菌を良好に増殖させるという観点からは,発酵原料のpHを6~7程度,好ましくは6.3~6.8程度に調整しておくことが望ましい。 【0024】また,使用する発酵原料(大豆胚軸含有物)には,更に,前記ダイゼイン類を含むイソフラボンを添加しておいてもよい。このようにイソフラボンを発酵原料に別途添加しておくことにより,得られる大豆胚軸発酵物中のエクオール含量をより高めることが可能になり,その有用性を一層向上させることができる。 【0025】大豆胚軸の発酵は,使用するエクオール産生菌の生育特性に応じた環境 条件下で 発酵物中のエクオール含量をより高めることが可能になり,その有用性を一層向上させることができる。 【0025】大豆胚軸の発酵は,使用するエクオール産生菌の生育特性に応じた環境 条件下で実施される。例えば,上記で具体的に列挙したエクオール産生菌を使用する場合であれば,大豆胚軸の発酵は嫌気性条件下で行われる。 【0026】また,発酵温度としては,エクオール産生菌の生育に好適な条件であればよく,例えば,20~40℃,好ましくは35~40℃,更に好ましくは36~38℃が挙げられる。 【0027】発酵時間については,エクオールの生成量,ダイゼイン類の残存量,エクオール産生菌の種類等に応じて適宜設定できるが,通常1~10日間,好ましくは2~7日間,更に好ましくは3~5日間とすることができる。 エ 【0028】上記の条件で発酵処理されて得られる大豆胚軸発酵物には,エクオールが生成されて蓄積されており,エクオールの有用生理作用を発現することができる。大豆胚軸発酵物中のエクオール含量については,使用するエクオール生産菌や発酵条件等によって異なるが,通常,大豆胚軸発酵物の乾燥重量当たり(大豆胚軸発酵物の乾燥重量を1gとした場合),エクオールが1~20mg,好ましくは2~12mg,更に好ましくは5~8mg含まれている。 【0029】大豆胚軸発酵物には,エクオール以外に,ダイジン,マロニルダイジン,アセチルダイジン,ダイゼイン,ジハイドロダイゼイン等のダイゼイン類(以下,これらの成分を「ダイゼイン類」と表記する);ゲニスチン,マロニルゲニスチン,アセチルゲニスチン,ゲニステイン,ジハイドロゲニステイン等のゲニステイン類(以下,これらの成分を「ゲニステイン類」と表記する);グリシチン,マロニルグリシチン,アセチルグリシチン ロニルゲニスチン,アセチルゲニスチン,ゲニステイン,ジハイドロゲニステイン等のゲニステイン類(以下,これらの成分を「ゲニステイン類」と表記する);グリシチン,マロニルグリシチン,アセチルグリシチン,グリシテイン,ジハイドログリシテイン等のグリシテイン類(以下,これ らの成分を「グリシテイン類」と表記する)等の各種イソフラボンも含まれており,これらのイソフラボンの有用生理活性をも発現することができる。大豆胚軸発酵物中のイソフラボン(エクオールを含む)含有量については,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり,イソフラボンが5~20mg,好ましくは5~15mg,更に好ましくは8~15mg程度が例示される。 【0030】また,大豆胚軸発酵物は,エクオール以外のイソフラボンの組成の点でも,大豆胚軸に含まれるイソフラボンとは異なる組成を有している。特に,大豆胚軸発酵物には,内分泌攪乱物質として作用することが懸念されているゲニステイン類の総和の含有比率が,大豆胚軸発酵物のイソフラボンの総量当たり,好ましくは15重量%以下,更に好ましくは12重量%以下と低くなっており,イソフラボンの組成の観点からも,発酵前の大豆胚軸に比べて有利である。 オ 【0031】大豆胚軸発酵物として,具体的には,以下のイソフラボンの組成のものが例示される(以下の単位「mg」は,大豆胚軸発酵物1g(乾燥重量)当たりの各イソフラボンの総量を示す):エクオール:1~20mg,好ましくは2~12mgダイゼイン類:0.1~30mg,好ましくは0.1~1.5mgゲニステイン類:0.05~2.5mg,好ましくは0.05~2mgグリシテイン類:0.1~4mg,好ましくは2~3.5mg。 【0032】また,大豆胚軸発酵物に含まれる各イソフラボンの組成比率とし ステイン類:0.05~2.5mg,好ましくは0.05~2mgグリシテイン類:0.1~4mg,好ましくは2~3.5mg。 【0032】また,大豆胚軸発酵物に含まれる各イソフラボンの組成比率としては,以下に示す範囲が例示される(以下の単位「重量%」は,大豆胚軸発酵物に含まれる全イソフラボンの合計量に対する割合を示す): エクオール:30~75重量%,好ましくは40~70重量%,更に好ましくは45~70重量%,ダイゼイン類:1~20重量%,好ましくは2~15重量%,更に好ましくは4~12重量%,ゲニステイン類:0.1~20重量%,好ましくは1~15重量%,更に好ましくは1~10重量%,グリシテイン類:10~50重量%,好ましくは15~35重量%,更に好ましくは25~35重量%。 【0033】本発明の大豆胚軸発酵物は,従来技術では実現できていない組成のイソフラボンを含んでいるので,他の観点から,上記イソフラボン組成を備えるイソフラボン含有物質と言い換えることもできる。 カ 【0034】上記のような組成のイソフラボンを有する大豆胚軸発酵物の製造には,エクオール産生菌としてラクトコッカス20-92(FERMBP-10036 号)が特に好適に使用される。 【0035】更に,大豆胚軸発酵物には,大豆胚軸に由来するサポニンをも有しているので,サポニンの作用に基づく有用生理活性(例えば,抗ウイルス活性等)までも獲得することができる。大豆胚軸発酵物中のサポニンは,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり,サポニンが10~80mg,好ましくは20~50mg,更に好ましくは30~40mg含まれている。 【0036】また,前述するように,オルニチン・エクオール産生菌を使用し,且つアルギニンを大豆胚軸に添加して発酵さ 0mg,好ましくは20~50mg,更に好ましくは30~40mg含まれている。 【0036】また,前述するように,オルニチン・エクオール産生菌を使用し,且つアルギニンを大豆胚軸に添加して発酵させることにより得られる大豆胚軸発酵物には,オルニチンが含有されている。このような大豆胚軸発酵物に 含まれるオルニチンの含有量として具体的には,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たりオルニチンが5~2mg,好ましくは8~15mg,更に好ましくは9~12mg程度が例示される。 キ 【0037】上記の条件で発酵処理されて得られる大豆胚軸発酵物は,発酵後の状態のまま,食品,医薬品,化粧料等の素材として使用してもよく,また,必要に応じて乾燥処理に供して乾燥固形物状にして前記素材として使用することもできる。大豆胚軸発酵物の保存安定性を向上させるためには,加熱乾燥処理により固形状にしておくことが望ましい。また,加熱乾燥処理された大豆胚軸発酵物は,必要に応じて粉末化処理に供して,粉末状にしてもよい。 【0038】本発明の大豆胚軸発酵物は,前述するように,エクオールを初めとして,種々の有用生理活性物質が含まれているので,様々な生理活性や薬理活性を発現することができる。例えば,本発明の大豆胚軸発酵物は,更年期障害,骨粗鬆症,前立腺肥大,メタボリックシンドローム等の疾患や症状の予防乃至改善,血中コレステロール値の低減,美白,にきびの改善,整腸,肥満改善,利尿等に有用である。中でも,本発明の大豆胚軸発酵物は,特に,中高年女性における不定愁訴乃至閉経に伴う症状(例えば,骨粗鬆症,更年期障害等)の予防乃至改善に有用である。また,アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エクオール産生菌を使用して発酵させて得られた大豆胚軸発酵物には,オルニチンも 症状(例えば,骨粗鬆症,更年期障害等)の予防乃至改善に有用である。また,アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エクオール産生菌を使用して発酵させて得られた大豆胚軸発酵物には,オルニチンも生成・蓄積しているので,当該大豆胚軸発酵物によれば,肝機能改善,成長ホルモン分泌促進,免疫賦活,筋肉量増大,基礎代謝能の改善等のオルニチンに基づく有用生理作用をも得ることができる。 【0039】 本発明の大豆胚軸発酵物を食品素材として使用する場合には,該大豆胚軸発酵物は,例えば,飲料,顆粒,細粒,カプセル,錠剤,粉末,乳製品,ガム,グミ,プディング,バー,その他固形食品等の形態に調製される。 このような大豆胚軸発酵物を含有する食品は,エクオールの有用生理活性に加えて,その他のイソフラボンやサポニン等の生理活性をも備えているので,有用性が高く健保効果に優れている。また,アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エクオール産生菌を使用して発酵させて得られた大豆胚軸発酵物を使用する場合には,食品中にオルニチンをも含有させることができるので,食品としての有用性を一層高めることができる。 【0040】本発明の大豆胚軸発酵物を含有する食品は,一般の食品の他,特定保健用食品,栄養補助食品,機能性食品,病者用食品等として使用できる。特に,本発明の大豆胚軸発酵物を含有する食品は,栄養補助食品として栄養補助食品として有用である。 【0041】本発明の大豆胚軸発酵物を含有する食品において,該食品中の該大豆胚軸発酵物の配合割合については,該食品の種類,エクオールの含量,摂取対象者の年齢や性別,期待される効果等に応じて,適宜設定することができる。一例として,上記食品100gに対して,大豆胚軸発酵物(乾燥重量換算)が総量で0.1~90g,好まし ,エクオールの含量,摂取対象者の年齢や性別,期待される効果等に応じて,適宜設定することができる。一例として,上記食品100gに対して,大豆胚軸発酵物(乾燥重量換算)が総量で0.1~90g,好ましくは0.1~10g,更に好ましくは0.5~2gとなる割合を挙げることができる。 【0043】また,本発明の大豆胚軸発酵物を医薬品素材として使用する場合には,該大豆胚軸発酵物は,錠剤,丸剤,散剤,液剤,懸濁剤,乳剤,顆粒剤,カプセル剤,座剤等の形態の医薬製剤に調製される。本発明の大豆胚軸発酵物を含有する医薬製剤は,更年期障害(更年期不定愁訴,骨粗鬆症,高 脂血症),骨粗鬆症,前立腺肥大,メタボリックシンドローム等の疾患や症状の予防乃至改善剤,血中コレステロール値の低減剤,整腸剤,肥満改善剤,利尿剤等として有用である。特に,大豆胚軸発酵物を含有する医薬製剤は,中高年女性における不定愁訴乃至閉経に伴う症状(例えば,骨粗鬆症,更年期障害等)の予防又は治療に好適に使用される。 【0045】更に,本発明の大豆胚軸発酵物を化粧料素材として使用する場合には,該大豆胚軸発酵物は,ペースト状,ムース状,ジェル状,液状,乳液状,懸濁液状,クリーム状,軟膏状,シート状等の各種所望の形態の化粧料に調製される。このような化粧料は,乳液,クリーム,ローション,オイル及びパック等の基礎化粧料;洗顔料,クレンジング,ボディ洗浄料等の洗浄料;清拭剤;清浄剤等の各種化粧料として有用である。本発明の大豆胚軸発酵物を含有する化粧料は,美白用化粧料,或いはニキビ改善用化粧料として使用される。 【0046】本発明の大豆胚軸発酵物を含有する化粧料において,該化粧料中の該大豆胚軸発酵物の配合割合については,該化粧料の種類,エクオールの含量等に応じて,適宜設定することが して使用される。 【0046】本発明の大豆胚軸発酵物を含有する化粧料において,該化粧料中の該大豆胚軸発酵物の配合割合については,該化粧料の種類,エクオールの含量等に応じて,適宜設定することができる。一例として,上記化粧料100gに対して,大豆胚軸発酵物(乾燥重量換算)が総量で0.1~10g,好ましくは0.5~5となる割合を挙げることができる。 ク 【実施例】【0047】以下に,試験例,実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが,本発明はこれらによって限定されるものではない。 【0048】実施例1-3 表1に示す組成となるように,粉末状大豆胚軸,アルギニン,及び水を混合して,大豆胚軸溶液(原料)を調製した。この大豆胚軸溶液5mlに,ラクトコッカス20-92 株(FERMBP-10036 号)を植菌し,嫌気条件下で,37℃で96 時間静置培養を行った。培養後,得られた発酵液(培養液)を100℃,1 分間の条件で加熱殺菌した後,80℃の条件での乾燥処理し,更にホモゲナイダーにより粉末化処理することにより,粉末状の大豆胚軸発酵物を得た。 【0049】図1に,培養96 時間後の培養液における培養液中のエクオール濃度を示す。併せて,表1に,培養96 時間後の培養液における生菌数及びpH,粉末状の大豆胚軸発酵物の取得量,及び粉末状の大豆胚軸発酵物中のエクオール濃度を示す。この結果から,エクオール産生菌を用いて粉末状大豆胚軸を発酵させることにより,高効率でエクオールが生成されることが確認された。 【0051】実施例4粉末状大豆胚軸10 重量%及びL-アルギニン0.1 重量%を含む大豆胚軸溶液5ml に,ラクトコッカス20-92 株(FERMBP-10036 号)を植菌し,嫌気条件下で,37℃ 実施例4粉末状大豆胚軸10 重量%及びL-アルギニン0.1 重量%を含む大豆胚軸溶液5ml に,ラクトコッカス20-92 株(FERMBP-10036 号)を植菌し,嫌気条件下で,37℃で96 時間静置培養することにより発酵処理を行った。培養後,得られた発酵液(培養液)を100℃,1 分間の条件で加熱殺菌した後,80℃の条件での乾燥処理し,更にホモゲナイダーにより粉末化処理することにより,粉末状の大豆胚軸発酵物を得た。 【0052】原料として使用した粉末状大豆胚軸(表2及び3中,発酵前と表記する)及び得られた粉末状大豆胚軸発酵物(表2及び3中,発酵後と表記する)の含有成分の分析を行った。大豆イソフラボン類の分析結果を表2に,栄 養成分の分析結果を表3に示す。この結果からも,ラクトコッカス20-92株によって大豆胚軸を発酵させることにより,高含量のエクオールを含む大豆胚軸発酵物が製造されることが確認された。また,ラフィノースやスタキオース等のオリゴ糖は,発酵前後でその含量が同程度であり,発酵による影響を殆ど受けないことが明らかとなった。一方,アルギニンについては,発酵処理によりオルニチンに変換されることが確認された。従って,大豆胚軸にアルギニンを添加してラクトコッカス20-92 株で発酵処理することにより,エクオールのみならず,オルニチンをも生成させ得ることが明らかとなった。 【0055】実施例5-11上記実施例3とは異なる7種のロットの粉末状大豆胚軸を使用すること以外は,上記実施例3と同様の条件で,粉末状の大豆胚軸発酵物(実施例5-11)を製造した。得られた大豆胚軸発酵物に含まれるイソフラボンの組成を分析した。結果を表4に示す。この結果からも,実施例5-11の大豆胚軸発酵物は,エクオール含量 末状の大豆胚軸発酵物(実施例5-11)を製造した。得られた大豆胚軸発酵物に含まれるイソフラボンの組成を分析した。結果を表4に示す。この結果からも,実施例5-11の大豆胚軸発酵物は,エクオール含量が高く,従来技術では実現できていない組成のイソフラボンを含んでいることが確認された。 【0057】実施例12上記実施例3とは異なるロットの粉末状大豆胚軸を使用すること以外は,上記実施例3と同様の条件で,粉末状の大豆胚軸発酵物を製造した。得られた大豆胚軸発酵物には1g当たり,6.5mg のエクオール,0.6mg のダイゼイン類,0.6mg のゲニステイン類,3.2mg のグリシテイン類が含有されていた。また,当該大豆胚軸発酵物には,イソフラボン含有量の総量当たり,アグリコンが90 重量%以上を占めていた。 【0058】 斯くして得られた大豆胚軸発酵物を用いて,下記組成の錠剤(1錠当たりの重量2.51g,1錠当たりエクオール10.9mg 含有)を製した。 【0059】大豆胚軸発酵物 66.7重量%エリスリトール 33.2重量%合計 100.0重量%【0060】実施例13上記実施例12で使用した大豆胚軸発酵物を用いて,下記組成の顆粒を製した。 【0061】大豆胚軸発酵物 66.7重量%エリスリトール 33.2重量%合計 100.0重量%【0062】実施例14上記実施例1の大豆胚軸発酵物を用いて,以下の組成の化粧料を調製した。 【0063】大豆胚軸発酵物 10gパラフィン油 1の大豆胚軸発酵物を用いて,以下の組成の化粧料を調製した。 【0063】大豆胚軸発酵物 10gパラフィン油 60mlオリーブ油 40mlグリセリンモノステアリン酸エステル 50mlラノリン 10mlプロピレングリコール 30ml水適量 合計 1000g【0064】実施例15上記実施例1の大豆胚軸発酵物を用いて,以下の組成の化粧料を調製した。 大豆胚軸発酵物 10gパラフィン油 30mlオリーブ油 30mlグリセリンモノステアリン酸エステル 60mlラノリン 20mlプロピレングリコール 40ml水適量合計 1000gケ 【0065】試験例1大豆胚 適量合計 1000gケ 【0065】試験例1大豆胚軸には,Gym4,Gm30K,Gm28K,7S グロブリンmix(β-コングリシン),オレオシン,トリプシンインヒビター等のアレルゲンが含まれていることが分かっている。そこで,上記実施例で製造した大豆胚軸発酵物中にアレルゲンの存否を以下の試験により判定した。 【0066】先ず,実施例1で得られた大豆胚軸発酵物の適当量を,抽出バッファー(TrisHClpH 7.5,1MEDTA 含有,タンパク質分解酵素阻害剤の適量含有)に添加し,十分に撹拌して,水溶性成分を抽出した。次いで,濾過により,固形分を除去し,抽出液を得た。斯くして得られた抽出液に含まれる総タンパク質を,バイオラッド社製のプロテインアッセイシステムを用いて検出した。更に,得られた抽出液に含まれる主要アレルゲン(Gym4,Gm30K, Gm28K,7S グロブリンmix,オレオシン,トリプシンインヒビター)についても,ウエスタンブロッティング法により検出した。また,比較として,大豆胚軸発酵物の代わりに,大豆の子葉の粉末,及び大豆胚軸の粉末を用いて,同様の方法により総タンパク質及びアレルゲンの検出を行った。 【0067】結果を図2~4に示す。図2には,総タンパク質の検出結果を;図3には,Gym4,Gm30K,及びGm28K の検出結果を;図4には,7S グロブリンmix,オレオシン,及びトリプシンインヒビターの検出結果を,それぞれ示す。 【0068】この結果から,大豆胚軸発酵物には,大豆又は大豆胚軸に含まれる主要アレルゲンが低減していることが確認された。 ⑵ 前記 シン,及びトリプシンインヒビターの検出結果を,それぞれ示す。 【0068】この結果から,大豆胚軸発酵物には,大豆又は大豆胚軸に含まれる主要アレルゲンが低減していることが確認された。 ⑵ 前記⑴の記載事項によれば,本件明細書には,本件発明1に関し,次のような開示があることが認められる。 ア大豆中に含まれるイソフラボン(大豆イソフラボン;ダイゼイン,ゲニステイン,グリシテイン)には,生理活性作用(抗エストロゲン作用による乳癌,前立腺癌等のホルモン依存性の癌の予防効果,エストロゲン様作用による更年期障害,閉経後の骨粗鬆症,高脂血症の改善効果)があり,その活性本体がダイゼインの代謝物のエクオールである可能性が指摘されているところ,従来から,エクオールの製造方法としては,大豆,葛根湯,レッドグローブ,アルファルファ等のダイゼインを含む原料に対して,ダイゼインを資化してエクオールを産生する微生物(エクオール産生菌)で発酵処理する方法が知られているが,単に,ダイゼイン類を含む原料に対して,エクオール産生菌を用いて発酵処理をしても,得られる発酵物中のエクオール量は十分ではなく,その発酵物をそのまま摂取しても,エクオールの作用に基づく所望の有用効果を十分には望めないという問題点があった(【0002】,【0003】,【0005】,【0006】)。 また,大豆の大豆胚軸部分には,子葉部分に比べて,イソフラボンやサポニン等の有用成分が高い割合で含まれていることが知られており,大豆胚軸抽出物については,種々の用途が開発されているが,それ自体コストが高いという欠点があり,エクオールの製造原料とする場合には,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素の添加が必要になるという問題点があるため,エクオールを工業的に製造する上で,原料として使用でき 高いという欠点があり,エクオールの製造原料とする場合には,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素の添加が必要になるという問題点があるため,エクオールを工業的に製造する上で,原料として使用できないのが現状である(【0007】)。 一方,大豆胚軸自体については,特有の苦味があるため,それ自体をそのまま利用することは敬遠される傾向があり,大豆胚軸の多くは廃棄されているのが現状であり,また,大豆胚軸には,子葉部分と同様に,アレルゲン物質が含まれており,大豆アレルギーを持つ人にとって,大豆胚軸を摂取ないし投与することができなかったため,大豆胚軸を有効利用するには,大豆胚軸自体に更に付加価値を備えさせることにより,その有用性を高めることが重要である(【0008】)。 イ 「本発明者ら」は,上記課題を解決すべく鋭意検討したところ,ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物を用いて,大豆胚軸を発酵させると,高い効率でエクオールが生成し,エクオール含有大豆胚軸発酵物が得られること,かかるエクオール含有大豆胚軸発酵物には,大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減されているので,低アレルゲンの素材としても有用であることを見出し,「本発明」は,これらの知見に基づいて,更に改良を重ねることにより完成した(【0011】)。 「本発明」の大豆胚軸発酵物は,エクオールと共に,エクオール以外のイソフラボンやサポニン等の有用成分をも含有しているので,食品,医薬品,化粧料等の分野で有用であり,特に,大豆,葛根湯,レッドグローブ,アルファルファ等のダイゼイン含有原料を発酵させたものに比べて,エクオールの生成量が格段に多く,エクオールに基づく有用生理効果を一層良 好に奏することができ,更に,大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減されているので,低ア 含有原料を発酵させたものに比べて,エクオールの生成量が格段に多く,エクオールに基づく有用生理効果を一層良 好に奏することができ,更に,大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減されているので,低アレルギー性素材として,大豆アレルギーを持つ人にとっても安全に摂取ないし適用することができるという利点があり,また,「本発明」の大豆胚軸発酵物は,大豆の食品加工時に廃棄されていた大豆胚軸を原料としており,資源の有効利用という点でも産業上の利用価値が高いという効果を奏する(【0013】,【0014】)。 ウまた,大豆胚軸にアルギニンを添加した,アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エクオール産生菌を使用して発酵させて得られた大豆胚軸発酵物には,オルニチンも生成・蓄積しているので,肝機能改善,成長ホルモン分泌促進,免疫賦活,筋肉量増大,基礎代謝能の改善等のオルニチンに基づく有用生理作用をも得ることができる(【0022】,【0038】,【0039】)。 2 争点1-1(被告製品の本件発明1の構成要件充足性)について⑴ 本件発明1の「大豆胚軸発酵物」の意義についてア特許請求の範囲の記載について(ア) 本件発明1の「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)は,その文言から,「大豆胚軸」の「発酵物」であり,その発酵原料が「大豆胚軸」であることを理解できる。「大豆胚軸」は,大豆の発芽の際に胚軸となる円柱形の部分であり,大豆の子葉部分と比べて,サポニンやイソフラボンの含有量が高いことが知られている(甲42,61)。 (イ) しかるところ,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「大豆胚軸発酵物」を定義した記載はなく,その発酵原料となる「大豆胚軸」を特定の成分のものに限定する記載もない。一方で,請求項1には,「大豆胚軸」からイソフラ 明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「大豆胚軸発酵物」を定義した記載はなく,その発酵原料となる「大豆胚軸」を特定の成分のものに限定する記載もない。一方で,請求項1には,「大豆胚軸」からイソフラボンを抽出した「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物が「大豆胚軸発酵物」に含まれることを明示した記載はない。 また,大豆又はその加工物の発酵物をいずれも「大豆発酵物」と称す る用例(例えば,甲40の【0010】,【0011】)がある一方で,市販されている商品(食品素材)には,「大豆胚軸」(「大豆胚芽」)と「大豆胚軸抽出物」を原材料表示として区別して表示しているもの(丙14の2,35)もある。そして,原材料表示を「大豆胚軸抽出物」とする商品の中には,例えば,「イソフラボン含量」を80%以上と表示したもの(「J-オイルミルズイソフラボン-80」),「イソフラボン濃度規格」を37%以上と表示したもの(「フジフラボンP40」),9~11%と表示したもの(「フジフラボンP10」)がある。 イ本件明細書の記載について(ア) 本件明細書(甲2)には,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」を定義した記載はない。 (イ)a 次に,本件明細書には,「大豆胚軸抽出物」に関し,「大豆胚軸部分には,大豆加工食品として利用されている子葉部分に比べて,イソフラボンやサポニン等の有用成分が高い割合で含まれていることが知られており,その抽出物については種々の用途が開発されている(例えば,特許文献3)。しかしながら,大豆胚軸抽出物は,それ自体コストが高いという欠点がある。また,大豆胚軸抽出物は,エクオールの製造原料とする場合には,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素の添加が必要になるという問題点がある。このような理由から,大豆胚軸抽出物は,エクオールを 。また,大豆胚軸抽出物は,エクオールの製造原料とする場合には,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素の添加が必要になるという問題点がある。このような理由から,大豆胚軸抽出物は,エクオールを工業的に製造する上で,原料として使用できないのが現状である。」(【0007】),「大豆胚軸」に関し,「大豆胚軸自体については,特有の苦味があるため,それ自体をそのまま利用することは敬遠される傾向があり,大豆の胚軸の多くは廃棄されているのが現状である。また,大豆胚軸には,大豆の子葉部分と同様に,アレルゲン物質が含まれているため,大豆アレルギーを持つ人にとって,大豆胚軸を摂取乃至投与することができ なかった。」(【0008】),「本発明の大豆胚軸発酵物は,大豆の食品加工時に廃棄されていた大豆胚軸を原料としており,資源の有効利用という点でも産業上の利用価値が高い。」(【0014】)との記載があり,本件明細書では,「大豆胚軸発酵物」の発酵原料としての「大豆胚軸抽出物」と「大豆胚軸」自体とを明確に区別している。 そして,これらの記載から,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」は,エクオールを工業的に製造する上で問題があり,「本発明」の「大豆胚軸抽出物」の発酵原料に適していないことを理解できる。もっとも,本件明細書には,このような「大豆胚軸抽出物」の具体的な成分やイソフラボン含量等についての開示はない。 b 一方で,本件明細書には,「大豆胚軸」に関し,「本発明において,発酵原料としては大豆胚軸が用いられる。大豆胚軸とは,大豆の発芽時に幼芽,幼根となる部分であり,ダイゼイン配糖体やダイゼイン等のダイゼイン類が多く含まれていることが知られている。本発明に使用される大豆胚軸は,含有されている 用いられる。大豆胚軸とは,大豆の発芽時に幼芽,幼根となる部分であり,ダイゼイン配糖体やダイゼイン等のダイゼイン類が多く含まれていることが知られている。本発明に使用される大豆胚軸は,含有されているダイゼイン類が失われていないことを限度として,大豆の産地や加工の有無については制限されない。 例えば,生の状態のもの;加熱処理,乾燥処理,蒸煮処理等に供された大豆から分離したもの;未加工の大豆から分離した胚軸を加熱処理,乾燥処理又は蒸煮処理等に供したもの等のいずれであってもよい。また,本発明で使用される大豆胚軸は,脱脂処理や脱タンパク処理に供したものであってもよい。また,本発明に使用される大豆胚軸の形状については,特に制限されるものではなく,粉末状であっても,粉砕又は破砕されたのものであってもよい。より効率的にエクオールを生成させるという観点からは,粉末状の大豆胚軸を使用することが望ましい。」(【0019】)との記載がある。この記載は,「本発明」 の「大豆胚軸発酵物」の発酵原料として「大豆胚軸」が使用されることを述べた上で,「本発明に使用される大豆胚軸」は,未加工の大豆から分離した胚軸に限定されず,「含有されているダイゼイン類が失われていないことを限度として,大豆の産地や加工の有無については制限」されず,「脱脂処理」や「脱タンパク処理」に供したものであってもよいことを述べたものである。もっとも,本件明細書には,【0019】の「脱タンパク処理」の具体的な内容に関する記載はない。 (ウ) さらに,本件明細書には,「大豆胚軸の発酵処理」に関し,「大豆胚軸の発酵処理は,適量の水を大豆胚軸に加えて水分含量を調整し,これに上記エクオール産生菌を接種することにより行われる。」(【0020】),「大豆胚軸の発酵において,発酵原料となる大豆胚軸には, 豆胚軸の発酵処理は,適量の水を大豆胚軸に加えて水分含量を調整し,これに上記エクオール産生菌を接種することにより行われる。」(【0020】),「大豆胚軸の発酵において,発酵原料となる大豆胚軸には,必要に応じて,発酵効率の促進や発酵物の風味向上等を目的として,酵母エキス,ポリペプトン,肉エキス等の窒素源;グルコース,シュクロース等の炭素源;リン酸塩,炭酸塩,硫酸塩等の無機塩;ビタミン類;アミノ酸等の栄養成分を添加してもよい。」(【0022】),「使用する発酵原料(大豆胚軸含有物)には,更に,前記ダイゼイン類を含むイソフラボンを添加しておいてもよい。このようにイソフラボンを発酵原料に別途添加しておくことにより,得られる大豆胚軸発酵物中のエクオール含量をより高めることが可能になり,その有用性を一層向上させることができる。」(【0024】)との記載がある。 そして,本件明細書には,「実施例1ないし12」として,「粉末状大豆胚軸」を発酵原料として選択し,これに「アルギニン,及び水を混合して,大豆胚軸溶液(原料)を調製」し,別途栄養成分を添加することなく,「ラクトコッカス20-92 株」による発酵を行い,「エクオール」及び「オルニチン」を含む粉末状の「大豆胚軸発酵物」を調製した実施例が示されている(【0048】ないし【0057】,表1ないし4)。 このように本件明細書には,「発酵原料」として「大豆胚軸」を使用した場合の発酵処理及び実施例の記載はあるが,一方で,「発酵原料」として「大豆胚軸抽出物」を使用した場合の発酵処理及び実施例に関する記載はない。 (エ) 前記(ア)ないし(ウ)によれば,本件明細書には,「本発明」(「大豆胚軸発酵物」)の発酵原料として「大豆胚軸抽出物」と「大豆胚軸」とを明確に区別した上で,発酵原料として使 はない。 (エ) 前記(ア)ないし(ウ)によれば,本件明細書には,「本発明」(「大豆胚軸発酵物」)の発酵原料として「大豆胚軸抽出物」と「大豆胚軸」とを明確に区別した上で,発酵原料として使用される「大豆胚軸」は,「含有されているダイゼイン類が失われていないことを限度として,大豆の産地や加工の有無について制限され」ず,「脱脂処理や脱タンパク処理に供したもの」も使用することができ,発酵原料にイソフラボンを別途添加しておくことにより,得られる大豆胚軸発酵物中のエクオール含量をより高めることが可能となることを開示し,他方で,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」は,「本発明」(「大豆胚軸発酵物」)の発酵原料に適さないことの開示があることが認められる。 ウ検討以上の本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書の記載を前提に検討するに,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)を定義した記載はなく,その発酵原料となる「大豆胚軸」を特定の成分のものに限定する記載もないが,一方で,本件明細書では,「大豆胚軸発酵物」の発酵原料として「大豆胚軸抽出物」と「大豆胚軸」とを明確に区別した上で,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」は,発酵原料に適さないことの開示があることに照らすと,かかる「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物は,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」に該当しないものと解するのが相当である。 もっとも,本件明細書には,発酵原料に適さない「大豆胚軸抽出物」の成分やイソフラボン含量等についての開示はないことは,前記イ(イ)aのとおりである。 しかるところ,大 るのが相当である。 もっとも,本件明細書には,発酵原料に適さない「大豆胚軸抽出物」の成分やイソフラボン含量等についての開示はないことは,前記イ(イ)aのとおりである。 しかるところ,大豆胚軸からイソフラボンを含有する成分の抽出処理は,一般に,水,アルコール(エタノール等)又は含水アルコールなどの溶媒を用いた抽出によって行われるが,大豆胚軸から高濃度のイソフラボンを含有する「大豆胚軸抽出物」を得るには,このような抽出処理に加え,合成吸着樹脂を用いた濃縮操作等の精製処理が必要であることは,本件特許の優先日当時の技術常識であったことが認められる(例えば,甲43の【0011】,【0012】,甲46の【0002】ないし【0005】,甲49の【0013】ないし【0015】)。 そして,高濃度のイソフラボンを含有する「大豆胚軸抽出物」は,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になることは自明であるから, かかる「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物は,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」に該当しないものと認めるのが相当である。 エ控訴人の主張について控訴人は,①本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)は,「大豆胚軸自体」の発酵物である旨の限定や,「大豆胚軸抽出物」の発酵物を除く旨の記載はないこと,「大豆胚軸」の語は,大豆胚軸を加工処理した「大豆胚軸抽出物」を包含するものとして使用されていること,発酵処理を行う際に,前処理として,発酵原料中の有用成分濃度を高めるための加工を行うことは,一般的なことであり,抽出処理は加工の代表的な態様であり,加工には,その文言の一般的な意味として抽出処理が含まれること,発酵基質の名称を用いて「○○(発酵基質の名称)発酵物」,「発酵○○ うことは,一般的なことであり,抽出処理は加工の代表的な態様であり,加工には,その文言の一般的な意味として抽出処理が含まれること,発酵基質の名称を用いて「○○(発酵基質の名称)発酵物」,「発酵○○」と称するときは,前処理(加 工)を行った基質を発酵させたものも含まれ,抽出処理を行った抽出物の発酵物も含まれると読むのが一般的であることなどからすると,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載から,「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)には,大豆胚軸抽出物の発酵物も含まれると読むのが自然であること,②【0019】の「脱タンパク処理」は,大豆胚軸からタンパク質を除き,ダイゼイン類の濃度を高める操作であって,ダイゼイン類の濃度を高めることを目的とする抽出と実質的に同一の処理であるから,「脱タンパク処理」によってダイゼイン類の濃度を高めたものも,「大豆胚軸抽出物」であり,これを発酵原料として発酵させたものは,「大豆胚軸発酵物」に該当すること,【0024】の記載は,本件発明1の発酵原料にイソフラボンを添加し,イソフラボン量を高めることを想定したものであるが,その添加量に上限は設定されていないから,大量に添加することも予定されており,それにより生成された発酵物も「大豆胚軸発酵物」であることを示すものといえることなどからすると,本件明細書には,「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)に大豆胚軸抽出物の発酵物も含まれることの開示があるものといえること,③本件明細書の【0007】には,従来技術の問題点として,大豆胚軸抽出物をエクオールの製造原料とする場合には,大豆胚軸抽出物は大豆胚軸に抽出処理を行う前処理の段階でコストが高い,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素の添加が必要になるという問題点がある旨の記載があるが,本件発明1は,大豆胚軸抽 は,大豆胚軸抽出物は大豆胚軸に抽出処理を行う前処理の段階でコストが高い,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素の添加が必要になるという問題点がある旨の記載があるが,本件発明1は,大豆胚軸抽出物を発酵原料としても,アルギニンをオルニチンに変換する能力を有するオルニチン・エクオール産生菌を用いて,アルギニンを栄養素として添加することで,発酵生成物であるエクオールと発酵生成物であるオルニチンをいずれも含有する,高付加価値の発酵物(大豆胚軸抽出物自体のコストや栄養素の添加に関するコスト等に見合う,発酵生成物であるオルニチンという有効成分の含有による付加価値を備える発酵物)を得ることで, 上記問題点を解決したものであり,本件発明1の技術的意義は,発酵生成物であるエクオール及び発酵生成物であるオルニチンを含む点にあるから,【0007】の記載は,本件発明1の「大豆胚軸抽出物」に「大豆胚軸抽出物発酵物」を含むことを否定する根拠にはならないこと,以上の①ないし③によれば,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)は,「大豆胚軸又は大豆胚軸に含有ダイゼイン類が失われない限度の加工をした物の発酵物」をいい,「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物も,「大豆胚軸発酵物」に含まれると解すべきである旨主張する。 しかしながら,前記ウのとおり,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物は,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」の該当しないものと認めるのが相当であり,これと異なる控訴人の上記主張は,以下のとおり,採用することができない。 (ア) 上記①について本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「大豆胚軸発酵物」を定義した記載はなく,その発酵原料となる「大豆胚軸」の範 張は,以下のとおり,採用することができない。 (ア) 上記①について本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「大豆胚軸発酵物」を定義した記載はなく,その発酵原料となる「大豆胚軸」の範囲を特定の成分のものに限定する記載もないが,一方で,前記イの本件明細書の記載を参酌すると,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載から直ちに本件発明1の「大豆胚軸発酵物」(構成要件1-C)に「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物も含まれると解することはできない。 (イ) 上記②についてa 本件明細書には,【0019】の「脱タンパク処理」の具体的な内容についての記載はない。 しかるところ,「大豆タンパク質製品」の製造工程には,脱脂した大豆粉から水を用いてタンパク質を抽出後,酸を加えて,タンパク質 を沈澱させて分離大豆タンパク質を製造する方法と脱脂した大豆粉を酸・アルコールで洗浄し,濃縮大豆タンパク質を製造する方法(丙36の65頁「図4-2-4 大豆タンパク質製品の製造工程」及び66頁右欄)があり,後者の方法の洗浄過程で,非タンパク性可溶物を含む抽出液が得られることが知られている(甲32の205頁,206頁)。 そして,【0019】の「脱タンパク処理」には,上記と同様の方法が含まれ,これにより非タンパク性可溶物の一つであるイソフラボンを含む抽出液が得られるものと認められる。 しかしながら,前記ウ認定のとおり,大豆胚軸から高濃度のイソフラボンを含有する「大豆胚軸抽出物」を得るには,水,アルコール(エタノール等)又は含水アルコールなどの溶媒を用いた抽出処理に加え,合成吸着樹脂を用いた濃縮操作等の精製処理が必要であるが,大豆胚軸の「脱タンパク処理」がこのような精製処理を含むものと理解されていることを認めるに足りる証拠はな ルなどの溶媒を用いた抽出処理に加え,合成吸着樹脂を用いた濃縮操作等の精製処理が必要であるが,大豆胚軸の「脱タンパク処理」がこのような精製処理を含むものと理解されていることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,【0019】の「脱タンパク処理」に供して得られるものは,高濃度のイソフラボンを含有する「大豆胚軸抽出物」に当たるものはいえず,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」であると理解することもできない。 b 本件明細書の【0024】の記載から,発酵原料の「大豆胚軸」にイソフラボンを添加し,大豆胚軸発酵物中のイソフラボン量を高めることも想定されているとしても,発酵原料自体の組成が変わるわけではなく,発酵原料が「大豆胚軸抽出物」となるものではない。 c 控訴人は,本件明細書の【0019】の「脱脂処理」及び「脱タンパク処理」によって市販の「大豆胚芽抽出物」(イソフラボン)と同 等のものが得られる旨主張し,その根拠として,甲35の実験結果を提出するが,甲35の実験では,大豆胚軸粉を脱脂した後,70%のエタノールによりタンパク質が除かれた大豆胚軸エタノール上清を得て,これに酸加水分解,酢酸エチルによる溶出,メタノールによる洗浄,再脱脂を適用するものであり,脱脂処理,脱タンパク処理に追加して,酸加水分解等の本件明細書に明示されていない複数の操作が行われているから,甲35の実験は,【0019】の「脱脂処理」及び「脱タンパク処理」を再現した追試に該当するものとは認められない。 (ウ) 上記③について前記1⑵ア及びイの本件明細書の開示事項によれば,本件発明1の技術的意義は,エクオール含有大豆胚軸発酵物を得るために,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必 ③について前記1⑵ア及びイの本件明細書の開示事項によれば,本件発明1の技術的意義は,エクオール含有大豆胚軸発酵物を得るために,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とするのではなく,大豆の食品加工時に廃棄されていた大豆胚軸を発酵原料として選択し,エクオールを産生する微生物を用いて発酵させることによって,高い効率でエクオールが生成された,エクオール含有大豆胚軸発酵物が得られ,かかるエクオール含有大豆胚軸発酵物には,大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減されており,低アレルゲンの素材としても有用であることに技術的意義があることが認められる。 他方で,本件明細書には,本件発明1に関し,大豆胚軸にアルギニンを添加した,アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エクオール産生菌を使用して発酵させて得られた大豆胚軸発酵物には,オルニチンも生成・蓄積しているので,肝機能改善,成長ホルモン分泌促進,免疫賦活,筋肉量増大,基礎代謝能の改善等のオルニチンに基づく有用生理作用をも得ることができること(【0022】,【0038】,【0039】)の記載があるが(前記1⑵ウ),本件発明1によって,「大 豆胚軸抽出物」を発酵原料として用いる場合にコストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になるという問題点を解決することが可能であることを具体的に示した記載はない。 したがって,本件明細書において,本件発明1の技術的意義が発酵生成物であるエクオール及び発酵生成物であるオルニチンを含む点にあることの開示があるものと認めることはできない。 (エ) まとめ以上によれば,控訴人主張の上記①ないし③から,コストが高く,発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物 ニチンを含む点にあることの開示があるものと認めることはできない。 (エ) まとめ以上によれば,控訴人主張の上記①ないし③から,コストが高く,発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物が,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」に含まれると解することはできない。 ⑵ 被告製品の構成要件1-Cの充足性前記⑴ウ認定のとおり,高濃度のイソフラボンを含有する「大豆胚軸抽出物」は,コストが高く,発酵のために別途栄養素が必要となることは自明であるから,かかる「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物は,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」に該当しないものと認めるのが相当である。 これを被告製品についてみるに,被告製品に用いられている「EQ-5」は,大豆胚軸から抽出された原料イソフラボンに種菌を加えて発酵させて得られた発酵物であり,原料イソフラボン中の90%以上は,ダイゼイン類,ゲニステイン類及びグリシテイン類のイソフラボンであるから(前記第2の2⑷イ),原料イソフラボンは,高濃度のイソフラボンを含有する「大豆胚軸抽出物」に該当することは明らかである。 そうすると,「EQ-5」は,コストが高く,発酵のために別途栄養素が必要となるような「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物に当たるから,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」に該当しないものと認められる。 したがって,被告製品は,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」に該当しない から,本件発明1の構成要件1-Cを充足するものと認められない。 ⑶ 小括以上のとおり,被告製品は,本件発明1の構成要件1-Cを充足するものと認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1の技術的範囲に属するものと認めることはできない。 3 争点1-2(被告製品の本件訂正発明3の 明1の構成要件1-Cを充足するものと認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1の技術的範囲に属するものと認めることはできない。 3 争点1-2(被告製品の本件訂正発明3の構成要件充足性)について前記2⑵と同様の理由により,被告製品は,本件訂正発明3の構成要件3’-Aないし3’-Eの「大豆胚軸発酵物」に該当する構成を備えているものとは認められないから,これらの構成要件をいずれも充足するものと認められない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品は,本件訂正発明3の技術的範囲に属するものと認めることはできない。 4 争点1-3(均等論)について⑴ 控訴人は,仮に本件発明1の構成要件1-C及び本件訂正発明3の構成要件3’-Aないし3’-Eの「大豆胚軸発酵物」は,大豆胚軸抽出物を発酵原料とする「大豆胚軸抽出物の発酵物」と解した場合には,被告製品は,「大豆胚軸発酵物」ではない点で本件発明1及び本件訂正発明3と相違することとなるが,被告製品は,均等の第1要件ないし第3要件を充足するから,本件発明1及び本件訂正発明3の特許請求の範囲(請求項1及び本件訂正後の請求項3)に記載された構成と均等なものとして,本件発明1及び本件訂正発明3の技術的範囲に属する旨主張する。 そこで,第1要件について検討するに,被告製品には本件発明1及び本件訂正発明3の構成と控訴人主張のとおりの相違部分(本件相違部分)があるところ,前記2⑴エ(ウ)で説示したとおり,本件発明1の技術的意義は,エクオール含有大豆胚軸発酵物を得るために,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」を発酵原 料とするのではなく,大豆の食品加工時に廃棄されていた大豆胚軸を発酵原料として選択し, めに,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」を発酵原 料とするのではなく,大豆の食品加工時に廃棄されていた大豆胚軸を発酵原料として選択し,エクオールを産生する微生物を用いて発酵させることによって,高い効率でエクオールが生成された,エクオール含有大豆胚軸発酵物が得られ,かかるエクオール含有大豆胚軸発酵物には,大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減されているので,低アレルゲンの素材としても有用であることにあり,本件発明1の本質的部分は,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とするのではなく,大豆の食品加工時に廃棄されていた大豆胚軸を発酵原料として選択し,エクオールを産生する微生物を用いて発酵させることによって,高い効率でエクオールが生成された,エクオール含有大豆胚軸発酵物が得られるようにした点にあるものと認められる。これは,本件訂正発明3も同様である。 しかるところ,被告製品に用いられている「EQ-5」は,前記2⑵認定のとおり,コストが高く,エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素が必要になる「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とする発酵物であるから,被告製品は,本件発明1及び本件訂正発明3の本質的部分を備えているものと認めることはできない。 そうすると,被告製品における本件発明1及び本件訂正発明3の構成との本件相違部分は,本件発明1及び本件訂正発明3の本質的部分でないということはできないから,均等論の第1要件を充足しない。 ⑵ したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品は,本件発明1及び本件訂正発明3の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められないから,控訴人の前記主張は理由がない。 5 結論以上のとお の点について判断するまでもなく,被告製品は,本件発明1及び本件訂正発明3の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められないから,控訴人の前記主張は理由がない。 結論 以上のとおり,被告製品は本件発明1及び本件訂正発明3の技術的範囲に属するものと認められないから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求は理由がない。 したがって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官國分隆文及び裁判官筈井卓矢は,転補のためいずれも署名押印することができない。 裁判長裁判官大鷹一郎 (別紙)被告製品目録 大豆胚芽抽出発酵物含有食品製品名エクオール+ラクトビオン酸 (別紙)明細書図面 【図1】 【表1】 【表2】 【表3】 【表4】
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