平成26(ワ)2839 報酬請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年8月20日 大阪地方裁判所
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判決文本文22,356 文字)

-1-平成27年8月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ワ)第2839号報酬請求事件口頭弁論終結日平成27年6月1日判決原告株式会社DNPハイパーテック(旧商号:株式会社ハイパーテック)同訴訟代理人弁護士恩田俊明同吉原崇晃同柿崎洋子被告株式会社モリサワ同訴訟代理人弁護士近藤剛史同武田大輔同生田哲也主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,1344万円及びうち672万円に対する平成24年4月1日から,うち672万円に対する平成25年12月1日から,各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,原告と被告との間で締結されたライセンス契約及びサポート契約が,当初の契約期間満了後も更新されているとして,被告に対し,更新された上記ライセンス契約及びサポート契約上のライセンス料支払請求権に基づき,平成24年4月1日から平成26年3月31日までの分の年間サポート費用13-2-44万円及びうち672万円に対する契約上の履行期の翌日である平成24年4月1日から,うち672万円に対する同平成25年12月1日から,各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 これに対し,被告は,後記争点(1)から(3)までのとおり主張して本件訴えの却下を求めるほか,後記争点(4)から (8)までのとおり主張して本件請求の棄却を求めている。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)(1) 当事者(争いがない)原告は,ソフト か,後記争点(4)から (8)までのとおり主張して本件請求の棄却を求めている。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)(1) 当事者(争いがない)原告は,ソフトウェア製品の開発や特許技術調査,コンサルティング等を行っている株式会社である。 被告は,デジタルフォントの開発,販売,レンタル等を行っている株式会社である。 (2) 本件ライセンス契約の締結原告,被告及び技研商事インターナショナル株式会社(以下「技研」という。また,原告と技研とを併せて「原告ら」という。)は,平成18年12月28日,以下の内容の「ライセンス契約書」により,ライセンス契約(以下「本件ライセンス契約」という。)を締結した(甲1。なお,契約当事者名は,本判決の表記に従い読み替え,日本語表記については適宜改める。)。 ア前文被告と技研と原告は,原告が所有するプログラム(以下「本プログラム」という。)と被告が所有するフォント技術(以下「本フォント技術」という。)を組み合わせて原告が情報セキュリティ製品(以下「本製品」という。)を開発し,これを技研を通じて被告に販売する本製品の使用について,次のとおり契約する。(なお,原告の上記プログラムの名称は,「FontsCloaker」とされる。)イ第3条(使用の権利)-3- 1 原告は被告に本契約に従い,フォント製品利用に関して本製品に組み込まれた本プログラムの非独占的な使用を許諾する。 2 被告は,次の目的で本製品を使用する。 (1) 暗号化ソフトを使って被告のフォントに暗号化処理を施すこと。 (2) 前号の暗号の解読を目的として,被告が被告の製品に復号化ソフトを組み込んでエンド・ユーザーに被告が販売すること。 3 被告は,本条に定められた目的のために復号化ソフト 号化処理を施すこと。 (2) 前号の暗号の解読を目的として,被告が被告の製品に復号化ソフトを組み込んでエンド・ユーザーに被告が販売すること。 3 被告は,本条に定められた目的のために復号化ソフトを複製し,被告の製品に組み込んでエンド・ユーザーに販売することができる。 ウ第6条(ライセンス料) 1 本製品の開発と第3条に規定する本製品に組み込まれた本プログラムの使用,2006年12月28日被告・技研・原告間で締結したサポート契約(次項(3)の本件サポート契約)実施の対価として,ライセンス料を被告は技研に支払う。原告は,被告から技研への支払を原告に対する支払であることを認める。 2 ライセンス料は,初期費用と毎年の年間サポート費用とし,金額は下記とする。 (1) 初期費用 3200万円(税別)開発費用と,期限の定めのない復号化ソフトのライセンス費用(2) 年間サポート費用 640万円(税別)年間サポート実施料と暗号化ソフトの年間ライセンス費用エ第13条(契約期間)契約の期間は,2006年12月28日から2011年12月27日までの5年間とする。また,契約終了の3か月以前に被告・技研・原告のいずれからも相手方に対して書面にて解約の申入れを行い協議の上合意した場合を除き,この契約は更に1年間自動延長し,その後も同様とする。(以下略)-4-(3) 本件サポート契約の締結原告,被告及び技研は,平成18年12月28日,「年間サポート契約書」により,次の内容の年間サポート契約(以下「本件サポート契約」という。 また,本件ライセンス契約と本件サポート契約とを併せて「本件契約」という。)を締結した(甲2。なお以下の記載は前記(2)と同様である。)。 ア前文被告と技研と原告は,三者間で2006年1 う。 また,本件ライセンス契約と本件サポート契約とを併せて「本件契約」という。)を締結した(甲2。なお以下の記載は前記(2)と同様である。)。 ア前文被告と技研と原告は,三者間で2006年12月28日に締結したライセンス契約…に基づき本製品のサポートについて,次のとおり契約を締結する。 イ第2条(サポートの範囲)技研・原告は被告に対し,本製品に関して以下のサポートを行う。 (1) サービスパック,アップグレード(OSやCPUなどのアーキテクチャ変更によりドライバの実装が変わった場合は除く)などwindows32bitOSがバージョンアップされた後も,本製品が仕様通りに動作するように維持,改良すること。 (2) サービスパック,アップグレード(OSやCPUなどのアーキテクチャ変更によりドライバの実装が変わった場合は除く)などMacOSがバージョンアップされた後も,本製品が仕様通りに動作するように維持,改良すること。(以下略)ウ第7条(支払条件及び方法)技研は,年間サポート更新日の2か月前までに,被告に年間サポート費用更新に関する請求書を提出し,被告は,請求代金について請求書を受領した月の翌月末日までに支払う。(以下略)エ第9条(契約期間)本契約の発効日は,ライセンス契約書第8条に定める年間サポートの起算日とし,契約期間を5年間とする。また,契約終了の3か月以前に被告・-5-技研・原告のいずれからも相手方に対して書面にて解約の申入れを行い協議の上合意した場合を除き,この契約は更に1年間自動延長し,その後も同様とする(以下「本件更新条項」という。)。 (4) 本件契約に基づくライセンス料の支払(争いがない)本件ライセンス契約の発効日は平成19年4月1日とされ,被告は,本件 ,その後も同様とする(以下「本件更新条項」という。)。 (4) 本件契約に基づくライセンス料の支払(争いがない)本件ライセンス契約の発効日は平成19年4月1日とされ,被告は,本件契約に基づき,初期費用として3360万円を,同日から平成24年3月31日までの5年間のサポート費用として計3360万円をそれぞれ支払った(いずれも税込)。 (5) 原告らの被告に対するライセンス料の支払請求技研は,被告に対し,平成24年2月29日,同年4月1日以降のライセンス料として672万円の支払を求めた(甲3)。 また,原告は,被告に対し,平成25年10月16日,同年4月1日以降のライセンス料として672万円の支払を求めた(甲4)。 上記支払の求めに対し,被告はいずれの支払も行わなかった。 (6) 技研による調停申立て技研は,平成24年12月25日,被告に対し,同年4月1日以降の年間サポート費用の支払を求める調停を申し立てた(甲6)が,平成25年2月26日,同調停申立てを取り下げ(乙5),同月27日,被告に対して,「当社といたしましては,本件について本訴で争う予定はありません。」と通知した(乙6)。 2 争点(本案前の争点)(1) 本件の訴え提起が違法行為により行われたか。 (2) 原告に原告適格があるか。 (3) 本件訴えに訴えの利益があるか。 (本案の争点)-6-(4) 本件契約が解除により終了したか。 (5) 本件契約が契約期間満了により終了したか。 (6) 本件契約は錯誤により無効か。 (7) 被告が危険負担によりライセンス費用支払義務を負わないか。 (8) 本件請求は権利の濫用か。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件の訴え提起が違法行為 より無効か。 (7) 被告が危険負担によりライセンス費用支払義務を負わないか。 (8) 本件請求は権利の濫用か。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件の訴え提起が違法行為により行われたか)について(被告の主張)以下のとおり,本件訴えの提起は違法であるから,本件訴えは却下されるべきである。 ア弁護士法違反及び私文書偽造・同行使の可能性本件は,弁理士法6条の2のいわゆる付記弁理士に訴訟代理権が認められる余地がない事案であるにもかかわらず,訴状には,P3弁理士が原告訴訟代理人として挙げられており,P3弁理士には明らかな非弁行為の疑いがあり(弁護士法72条),他の原告訴訟代理人弁護士らについても,P3弁理士との非弁提携の疑いがある(弁護士法27条)。 また,訴状訂正申立書において訴状の原告訴訟代理人欄のP3弁理士名が削除された経緯からすると,原告訴訟代理人である恩田俊明弁護士は,同弁理士に無断で,その意思に基づかず,訴状に同弁理士の記名押印を行ったということになり,有印私文書偽造罪及び同行使罪の疑いが残る。 イ本人の意思確認を経ない訴訟提起行為本件訴えは平成26年1月16日に東京地方裁判所に提起されたが,同月21日,原告代表者から被告に対し,訴訟を提起する予定であるので東京地裁か大阪地裁かを選択して回答するよう求める内容証明郵便(乙1)が発送された。また,この通知に対して,被告は,大阪地裁を選択する旨回答したが,その際にも,原告担当者から大阪地裁を管轄裁判所とするこ-7-とについて了解する旨の返答がされた。 このような事態からすると,本件訴訟提起が原告代表者の意思によらずに,原告訴訟代理人の独断により行われた可能性が極めて高いといえ,原告訴訟代理人に弁護士職務基本 について了解する旨の返答がされた。 このような事態からすると,本件訴訟提起が原告代表者の意思によらずに,原告訴訟代理人の独断により行われた可能性が極めて高いといえ,原告訴訟代理人に弁護士職務基本規定22条違反の疑いがあり,かつ原告訴訟代理人による訴訟提起自体が必要な授権を欠いていた可能性をも払拭し得ない。 (原告の主張)否認ないし争う。 本件訴状は,平成26年1月16日,原告からの委任に基づき原告訴訟代理人により東京地方裁判所に提出されたものであり,その後裁判所との協議を経て,同月30日付け訴状訂正申立書により代理人欄から「P3」の記載を削除したものである。 (2) 争点(2)(原告に原告適格があるか)について(被告の主張)本件ライセンス契約上,ライセンス料等を請求する権利は全て技研が有するものであるから,原告は,自己の権利ではなく第三者たる技研の権利を,その権限が無いのに行使しようとするものといえる。 したがって,原告は,本件請求の当事者適格を欠く。 (原告の主張)否認ないし争う。 本件契約においてライセンス料の支払請求権者と支払義務者の関係に立つのは原告と被告であり,技研は,本来は原告が受け取るべきライセンス料の受領代行者として各契約書に名を連ねているにすぎない。 (3) 争点(3)(本件訴えに訴えの利益があるか)について(被告の主張)本件のライセンス料支払を求めて技研が申し立てた調停には,原告担当者-8-も申立人側関係者として出席し,技研と共に実質的な当事者の立場で調停に参加していたところ,そのような状況の下で,技研は,調停申立てを取り下げ,被告に対して,本件について本訴で争う予定はない旨を通知して,本件に関する請求の全てを放棄したのであるから,これらの行為 停に参加していたところ,そのような状況の下で,技研は,調停申立てを取り下げ,被告に対して,本件について本訴で争う予定はない旨を通知して,本件に関する請求の全てを放棄したのであるから,これらの行為は,原告の了承の下,本件請求権を放棄するという原告と技研との間の共通認識に基づきなされたものである。 したがって,技研が本件請求を放棄したことはもちろん,原告においても同様に本件請求を放棄していたのであるから,本件請求には訴えの利益がない。 (原告の主張)争う。 (4) 争点(4)(本件契約が解除により終了したか)についてア民法651条1項に基づく委任契約の解除(被告の主張)本件サポート契約は,準委任契約の性質を有するから,民法651条1項によりいつでも解除をすることができる。また,仮に本件契約が,受任者たる原告らの利益のためにも委任がなされた場合に当たるとしても,本件においては,遅くとも平成19年4月の時点において,本製品を使用するDTPソフトの中心メーカーであったアドビシステムズ社(以下「アドビ社」という。)から動作保証が得られないこととなり,また,遅くとも平成21年12月頃にはOSの64bit化に対応できないこととなったことから,商品化が不可能となり,本件契約の当初の目的が達成できないことが客観的に明らかであったという「やむを得ない事由」が存在する(同条2項ただし書)。また,そもそも本件においては,被告が解除権を放棄していたものと解することはできない以上,被告は「やむを得ない事由」がなくても,いつでも委任契約を解除することができるものである。 -9-本件においては,平成19年4月の時点より,再三にわたってやむを得ない合理的な事情に基づき,被告から原告に対する契約解除の意思表示がなされており,本件契約は することができるものである。 -9-本件においては,平成19年4月の時点より,再三にわたってやむを得ない合理的な事情に基づき,被告から原告に対する契約解除の意思表示がなされており,本件契約は既に解除されている。 (原告の主張)本件ライセンス契約及び本件サポート契約は,そもそも一体の契約として締結されたものであり,その性質は,通常のライセンス契約と同様に無名契約である。このような法的性質に鑑みれば,本件契約の一部を構成するにすぎない本件サポート契約について,民法651条をはじめとする同法の委任に関する規定の適用はない。 また,仮に本件サポート契約を本件ライセンス契約と切り離して取り扱うことが妥当な場合であっても,被告は,本件更新条項により,民法651条1項に基づく解除権を制限,放棄しており,また,何ら被告による解除権行使を正当たらしめるようなやむを得ない事由はない。 イ履行不能又は債務不履行による解除(被告の主張)本件契約の目的は,原告が所有するプログラムと被告が所有するフォント技術を組み合わせて,原告が開発した本製品を,技研を通じて被告に販売し,被告が同製品を商品化して使用することにあった。 しかし,本製品の商品化については,争点(4)に関する被告の主張のとおり,遅くとも平成19年4月又は平成21年12月の時点において不可能であることが確定しており,遅くともこの時点において,原告らがサポートすべき製品の不存在が確定している以上,原告らのサポート義務は履行不能に陥っている。 そして,遅くとも平成21年12月9日の打合せに際し行われた解除の意思表示により,本件契約は有効に解除されている。また,それ以降も,解除の意思は幾度となく示されており,最終的には,平成23年11月3-10-0日付け「契約終了申し入れ 合せに際し行われた解除の意思表示により,本件契約は有効に解除されている。また,それ以降も,解除の意思は幾度となく示されており,最終的には,平成23年11月3-10-0日付け「契約終了申し入れ書」(甲8)によっても被告の本件契約解除の意思は表示されている。 さらに,仮に,上記のとおり履行不能とまではいえないとしても,原告らがサポート義務を履行していたという事実は認められない。 本件においては,遅くとも平成21年12月9日の打合せに際し,履行不能等を原因とする解除の意思表示がなされているのであるから,これを事実上の催告であると考えれば,その後相当期間経過後に幾度となく随時行われた解除の意思表示により解除は有効に成立している。そして,最終的には遅くとも平成23年11月30日付け「契約終了申し入れ書」(甲8)によっても,被告の本件契約解除の意思は示されているよって,本件契約は,原告の履行不能又は債務不履行により,法律上有効に解除されている。 (原告の主張)そもそも本件サポート契約におけるサポートの対象たる本プログラムは存在しているから,被告のサポート義務は履行不能ではない。被告が主張するアドビ社の承認や64bit化の対応は,本件ライセンス契約及び本件サポート契約に基づいて原告が負う債務ではなく,完成した本製品の引渡しを受けた被告側の事情にすぎない。いずれにせよ被告による履行不能解除の主張は失当である(民法543条ただし書)。 また,本件サポート契約上,原告は,本製品の維持・改良(2条1号,2号)や不具合の調査改修(2条3号,5号,6号),情報提供(2条4号)等の役務の提供を必要に応じて行う義務を負っており,必要に応じてこれらの義務を果たしているから,原告に債務不履行はない。 ウ事情変更の法理による解除(被告の 5号,6号),情報提供(2条4号)等の役務の提供を必要に応じて行う義務を負っており,必要に応じてこれらの義務を果たしているから,原告に債務不履行はない。 ウ事情変更の法理による解除(被告の主張)本件においては,争点(4)に関する被告の主張のとおり,遅くとも平成1-11-9年4月又は平成21年12月の時点において不可能であることが確定しているところ,このように本件契約当時には容易に予測できない事情が生じており,これによって被告が当初予定した本件契約の目的は一切達成することができなくなっている。そうである以上,契約当初の合意内容をそのまま維持し,被告にのみ事情変更による不利益を一方的に負わすことは公平の観点から相当でない。 よって,本件契約は,被告が解約を申し入れたいずれかの時期において,事情変更の法理に基づき,法律上有効に解除されている。 (原告の主張)一般に事情変更の法理に基づき契約の解除が認められるためには,契約締結時には当事者が予想できなかった社会的事情の変更が生じ,契約の内容の実現をそのまま強制することが不合理と認められることが必要である。 この点被告がるる主張する事情はいずれも「本製品の商品化」うんぬんという被告側の事情にすぎない。また,被告の主張するような事実はビジネスを行う上では事前に見通せていたはずの当然に負うべきリスクであり,「当事者が予想できなかった社会的事情の変更」ではない。この点に関する被告の主張は失当である。 (5) 争点(5)(本件契約が契約期間満了により終了したか)についてア本件更新条項の解釈(被告の主張)本件更新条項について,当事者間の「合意」がなければ期間満了による終了は認められず,常に自動更新されるものであると形式的に解釈するならば,本件サポート契約は,原告らが 条項の解釈(被告の主張)本件更新条項について,当事者間の「合意」がなければ期間満了による終了は認められず,常に自動更新されるものであると形式的に解釈するならば,本件サポート契約は,原告らが契約の終了に同意しない限り,被告の意思に反して永久的に存続することとなり,被告は,技術が陳腐化しても,永久的に年間640万円(税抜)の支払いを余儀なくされるという不合理かつ不可解な結果を招来することとなる。 -12-このような解釈は,契約長期化のリスクとエンドユーザーに対するサポート打切りのリスクを考慮して契約期間を5年と定めた趣旨を無意味にするものであり,当事者の合理的意思に反するばかりか,著しい対価的不均衡を生じさせるものであり,このような不合理かつ不公平な契約に当事者が拘束されなければならないとは到底考えられない。 したがって,本件契約の期間が満了し,被告から更新拒絶の意思表示がされた以上,契約は更新されていないと認めるべきである。 (原告の主張)本件更新条項に基づき,本件サポート契約は更新されている。 被告は,フォント技術が陳腐化とは無縁のものであることから,本製品を長期間にわたって安定的に販売することを企図しており,そのために,原告が一方的に契約関係を解消することで以後の本製品の開発ないし販売が困難になる事態を何とか回避したかった。そこで,被告の側において,このような一見すると契約当事者を拘束するような内容の本件更新条項を設け,原告もそれを受け入れたのである。 他方,原告は,本製品開発に投じた費用の回収にはおよそ10年程度掛かると試算しており(実際にも少なくとも1億1640万円の開発費用を負担している),契約期間を10年とするよう主張していたが,本件更新条項があったことから,契約期間を5年としても原告の要求を実質 掛かると試算しており(実際にも少なくとも1億1640万円の開発費用を負担している),契約期間を10年とするよう主張していたが,本件更新条項があったことから,契約期間を5年としても原告の要求を実質的に充たすと判断して本件契約を締結したのである。 したがって,本件条項の解釈に関する被告の主張は失当である。 イ自動更新条項の公序良俗違反(被告の主張)仮に,本件更新条項が,原告の主張するように,合意がなければ契約が永久に継続するとの趣旨で締結されたものであると解釈する場合,そのような本件更新条項は,当事者間の信頼関係が著しく破壊された場合でも契-13-約は永久に継続し,民法651条の趣旨を著しく没却することや,一方当事者に看過しがたい著しい負担を強いる結果をもたらすものであることから,公序良俗に著しく反するもので,無効である。 (原告の主張)本件サポート契約は本件ライセンス契約とともに本件全体契約の一部として締結されたものであり,民法第651条の適用はない。また仮に適用があるとしても,そこで問題にされるべきは契約当事者双方の利益調整を通じた解除権行使の有効性判断であり,逆にいえば当該判断を行うことが想定されている以上,本件更新条項自体の公序良俗違反の問題は生じない。 ウ契約を更新しない旨の合意(被告の主張)本件においては,被告から原告らに対し,再三にわたり契約終了の意思を伝えており,また,契約期間満了の4か月前である平成23年11月30日には,同日付け「契約終了申し入れ書」により,契約終了の3か月前までに書面による解約の申入れを行っている(甲8)。 また,原告らと被告とは,本件契約の期間満了前の中途解約も含めて,契約終了について再三の協議を行っている以上,期間満了後も契約が更新される可能性が皆無であるこ る解約の申入れを行っている(甲8)。 また,原告らと被告とは,本件契約の期間満了前の中途解約も含めて,契約終了について再三の協議を行っている以上,期間満了後も契約が更新される可能性が皆無であることは,三者間において当然の前提とされていた。 さらに,遅くとも平成22年10月の時点において,本件契約について期間満了までに権利面の確認を行って契約終了を行うことは明示的に確認されている(甲8)。 よって,遅くともこの時点において,契約を更新しない旨の明示的な合意が成立していることは明らかである。 加えて,原告らは,契約終了申し入れ書(甲8)の送付後も,契約期間満了による終了それ自体については明白な異議を述べることなく,契約終-14-了を前提に法的根拠なく不当な金銭の支払を要求し(乙4),契約終了に向けた協議を行う意思を示していたにもかかわらず,何ら合理的理由なく,自らの判断で協議期日を延期,欠席し具体的な協議を行わなかったものである。そして,原告らは更新しない旨の合意がないのであれば当然行うべきはずの本件サポート契約7条に基づく費用更新に関する請求書の送付を同条記載の期日までに行っていない。よって,この時点においても,契約が更新されないことそれ自体については黙示又は明示の合意が存在することは明らかである。 のみならず,原告は,原告が平成23年11月9日以降,平成25年1月11日の対応までの1年2か月以上もの間,何ら本件契約に基づく債務の履行を行っていないことを自白しており,これは原告ら自身が平成24年3月に本件契約が終了したことを認めていたからに他ならない。よって,このことからも,契約期間満了時において,契約を更新しない旨の黙示又は明示の合意が存在したことは明らかである。 (原告の主張)被告は原・被告間で協議が重ねら いたからに他ならない。よって,このことからも,契約期間満了時において,契約を更新しない旨の黙示又は明示の合意が存在したことは明らかである。 (原告の主張)被告は原・被告間で協議が重ねられた,あるいは協議に向けた努力が重ねられた事実をるる主張するのみで,本件契約の解除に向け「協議の上合意」があったとの立証は何らなされていない。再三協議がなされたのは,自己の都合で前言をたやすく翻し,甲8の契約終了申し入れ書のように自己に都合のいい内容を記載した書面を作成して契約解除を既成事実化しようとする不誠実な被告との話合いが難航を極めたにすぎず,そのことと原告が本件契約の更新ないし延長を望んでいたこととは何ら矛盾するものではない。 エ信義誠実の原則等による制限(被告の主張)本件においては,争点(4)に関する被告の主張のとおり,遅くとも平成1-15-9年4月又は平成21年12月の時点において本製品の商品化が不可能であることが確定したという本件契約当時には容易に予測できない事情が生じており,これによって被告が当初予定した本件契約の目的は一切達成することができなくなっている。そうである以上,契約当初の合意内容をそのまま維持し,被告にのみ事情変更による不利益を負わすことは公平の観点から相当でなく,いわゆる事情変更の法理により原告らの自動更新の主張を制限すべきである。 また,被告は,原告による契約期間満了まで支払を継続してほしいという嘆願に応じる形で,本件契約の期間満了まで誠実に契約所定の金銭を支払ってきた。一方で原告らは,契約期間の間もない時期に,金銭支払の対価として当初予定された事務の提供が不要なものとなったことを十分認識しながら,被告からの途中解約の申入れを認めず,契約期間満了による円満終了についての被告の期待を利用し,反 ない時期に,金銭支払の対価として当初予定された事務の提供が不要なものとなったことを十分認識しながら,被告からの途中解約の申入れを認めず,契約期間満了による円満終了についての被告の期待を利用し,反対債務の提供をほとんど行わないまま,合計3360万円(初期費用も合わせれば計6720万円)もの多額の金銭の支払を受けてきたものである。 このような事情の下で,本件更新条項を悪用し,被告との明示・黙示の合意に反して更なる暴利を貪ろうとする原告の請求は,極めて正義に反するものといわざるを得ない。 (原告の主張)争う。原告は,被告がイニシアチブをとって制定された本件契約の規定に基づいて,自身の投下資本の回収等を目的としてライセンス料を請求しているにすぎない。 (6) 争点(6)(本件契約は錯誤により無効か)について(被告の主張)本件において,原告の開発した本製品が商品化可能なものであることは原告・被告間における合意の内容となっている。本製品がアドビ社の製品に対-16-応可能であることは本件契約締結に際しての当然の前提とされており,仮にアドビ社製品への対応が不可能であることが分かっていたのであれば被告が本件契約を締結することはなかった。そうであるにもかかわらず,本製品については,アドビ社の承認が得られないものであったというのであるから,本件契約には要素の錯誤がある。 (原告の主張)争う。 (7) 争点(7)(被告が危険負担によりライセンス費用支払義務を負わないか)について(被告の主張)原告は商品化できる本製品を開発し,その商品化を実現する債務を負っていたが,原告の上記債務は履行不能となっている。同履行不能につき仮に原告に過失がなかったとしても,客観的に履行不能である以上,反対債務については危険負担の問題が し,その商品化を実現する債務を負っていたが,原告の上記債務は履行不能となっている。同履行不能につき仮に原告に過失がなかったとしても,客観的に履行不能である以上,反対債務については危険負担の問題が生じるにすぎず,少なくとも被告には履行不能につき責に帰すべき事情がないことは明らかであるから,原告は反対給付を受ける権利を有しない。 (原告の主張)争う。 (8) 争点(8)(本件請求は権利の濫用か)について(被告の主張)原告らは,共通の意思の下,技研を申立人として調停を申し立て,調停での審理が十分に進んだ状況の下で,一方的に申立てを取り下げ,請求放棄の意思を示して,一旦紛争を円満に終結したのであるから,原告が自ら放棄した自己の請求権を主張することは悪質な紛争の蒸返し行為に他ならず,権利の濫用に当たる。 (原告の主張)-17-技研は調停申立てを取り下げるに際し,被告に対し「当社といたしましては,本件について本訴で争う予定はありません。」と述べているにすぎず,これは単に技研が本訴を提起しないという事実を述べた以上の意味はない。原告が本件報酬請求権を放棄したなどとは到底言えないことは明白である。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(訴え提起が違法行為により行われたか)について被告は,争点(1) に関する被告の主張のとおり,本件訴えの提起が違法行為により行われたと主張する。 しかし,本件訴状は,当初,頭書記載の原告訴訟代理人弁護士3名のほか,「弁理士P3」の名義で作成され,記名及び押印がなされていたものの,訴訟委任状では,上記3名の弁護士のみが訴訟代理人と定められており,その後,訴状訂正申立書により「弁理士P3」との記載が削除されたことは,当裁判所に顕著である。 かかる経緯からすると,訴状作 の,訴訟委任状では,上記3名の弁護士のみが訴訟代理人と定められており,その後,訴状訂正申立書により「弁理士P3」との記載が削除されたことは,当裁判所に顕著である。 かかる経緯からすると,訴状作成時において,誤って「弁理士P3」との記名及び押印がされたことがうかがえるものの,それ以上に,P3弁理士が弁護士法72条に違反する行為を行ったり,他の訴訟代理人弁護士が非弁提携をしたり,あるいは恩田弁護士が有印私文書偽造・同行使を行ったりしたことが疑われるものではない。 また,原告代表者が,平成26年1月16日の本件訴えの提起後の同月21日差出しの内容証明郵便において,被告代表者に対し,裁判地を東京地裁又は大阪地裁のいずれにするか回答するように求めた(乙1)ことからすると,原告代表者と原告訴訟代理人らとの間で,訴状の提出に関する意思に何らかの齟齬が生じていたことがうかがわれる。しかし,前記のとおりの委任状が提出されていることを考えると,それ以上に,原告訴訟代理人らが原告代表者の意思に反して訴訟を提起したとの事実が疑われるものではない。 以上によれば,本件の訴え提起が違法行為により行われたとの被告の主張は-18-失当であり理由がない。 2 争点(2)(原告に原告適格があるか)について給付の訴えにおいては,自らが相手方に対して給付請求権を有すると訴訟上主張する者に原告適格があり(最高裁判所平成23年2月15日判決・裁判集民事236号45頁参照),その者が当該権利を有するかどうかは本案請求の当否に関わる事柄であるにすぎない。 本件についてみると,原告は自身が有すると主張する債権に基づき,被告に対して本件訴えの提起に及んでおり,原告に原告適格があるのは明らかであるから,被告の主張は理由がない。 なお,前提事実記載のとおり,本件ライセ ると,原告は自身が有すると主張する債権に基づき,被告に対して本件訴えの提起に及んでおり,原告に原告適格があるのは明らかであるから,被告の主張は理由がない。 なお,前提事実記載のとおり,本件ライセンス契約6条1項において,「ライセンス料を被告は技研に支払う。原告は,被告から技研への支払を原告に対する支払であることを認める。」とされていることからすると,本件契約においては,ライセンス料の支払請求権は原告が有しており,その受領権限が技研に付与されていると認めるのが相当であるから,原告は,技研が同意する場合には,自ら被告に対して直接ライセンス料の支払を請求し得ると解するのが相当である。そして,技研は,原告が被告に対して直接ライセンス料の支払を請求することに同意していると認められる(甲14)ことからすると,仮に被告の主張を本案に関するものと理解したとしても,被告の主張は理由がない。 3 争点(3)(本件訴えに訴えの利益があるか)について現在給付の訴えにおいては,特段の事情のない限り訴えの利益が認められるところ,本件では,特段の事情は認められない。被告が争点(3)について主張する諸事情は,本案請求の当否に関わる事柄にすぎず,被告の主張は理由がない。 なお,被告の争点(3)に関する主張を本案に関するものと理解したとしても,技研は,単に被告に対する調停申立てを取り下げるとともに,「弊社といたしましては,本件について本訴で争う予定はありません。」と通知したにとどまる(前提事実(6))ことからすると,そもそも技研が本件のライセンス料の支払-19-請求権を放棄したとまでは認めるのは困難であるし,原告が放棄したとも認められないから,被告の主張は理由がない。 4 争点(5)(本件契約が契約期間満了により終了したか)について(1) 認定事実 を放棄したとまでは認めるのは困難であるし,原告が放棄したとも認められないから,被告の主張は理由がない。 4 争点(5)(本件契約が契約期間満了により終了したか)について(1) 認定事実前記前提事実に,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア本件契約で契約期間及び本件更新条項が定められた経緯本件契約の締結交渉中の平成18年12月5日,被告開発部のP1は,技研に対し,電子メールでサポート契約の素案を提示した。そこでは,契約期間と契約更新については,次の内容とされていた。 第9条(契約期間)本契約の期間は,2006年○月○日から2007年○月○日までの1年とする。また,契約終了の3か月前以前に被告・技研・原告のいずれからも相手方に対して書面にて解約の申し入れを行い協議の上合意した場合を除き,この契約は更に1年間自動延長し,その後も同様とする。 また,同メールで,P1は,契約は「ライセンス契約」と「サポート契約」の2本立てとし,「業務委託基本契約」は,業務委託はしていない等の理由から,締結する必要がないとしていた。 そして,技研は,平成18年12月5日,同メールを原告へと転送し,原告らの案文を被告に提示するために検討を求めた。 (以上,甲11の1)これに対し,原告らは,被告に対し,投下資本の回収を図る観点から,契約期間を10年とするよう求め,その方向で交渉が行われた。 そして,原告らの間では,同月28日に被告からの発注書を受領することを想定する段階に至っていたところ,P1は,同月26日,原告らに対し,10年という契約期間を,5年又は7年に変更するよう求める-20-とともに,これでライセンス料に変更がなければ,同日中又は翌27日に発注をする旨を伝えた。これに対し,原 月26日,原告らに対し,10年という契約期間を,5年又は7年に変更するよう求める-20-とともに,これでライセンス料に変更がなければ,同日中又は翌27日に発注をする旨を伝えた。これに対し,原告のP2は,被告に対し,原告側としては,ライセンス料は契約期間が10年であることを前提に提示したものであると回答しつつ,原告社内で検討することとした。 (以上,甲12及び13)そして,原告らと被告との間では,最終的に契約期間を5年とすることで合意し,契約更新条項は特に交渉の対象とされることなく素案のままとして,同月28日,本件契約が締結された。 イ原告のサポート義務の履行内容と被告のライセンス料支払本件サポート契約締結後,原告は,被告に対し,本件サポート契約上の義務の履行として,別紙記載のとおり,平成19年1月9日から平成25年1月11日にかけて,本プログラムのバージョンアップ版が格納されたCD-R及び説明資料を送付し,被告は同CD-R及び説明資料の送付を受けた(甲10。ただし,5年の契約期間満了後の平成25年1月11日分については,被告は,受け取る理由がないとして送付元の技研に返送した。)。 他方,被告は,5年の契約期間内に,前提事実(4)のとおり,本件契約に基づき,初期費用3360万円と5年間のサポート費用合計3360万円とをそれぞれ支払った。 ウアドビ社の承認が得られなかった経緯本製品は,フォントを暗号化するソフトウェアと,暗号化されたフォントの暗号を解読するドライバーソフトウェアなどから成り(甲1,1条),被告は,本製品が,印刷業界やデザイン業界等で広く利用されているDTPソフトの中心メーカーであるアドビ社の製品(InDesign やPhotoshop)で利用できることが商品化のために必須であったことな ,本製品が,印刷業界やデザイン業界等で広く利用されているDTPソフトの中心メーカーであるアドビ社の製品(InDesign やPhotoshop)で利用できることが商品化のために必須であったことなどから,商品化に先立ち,アドビ社に本製品を提供して,同社の評価を受けた。 -21-しかし,その結果,アドビ社からは,①提供した本製品のプロテクション技術が安定動作をしなかったため,同社としては同社アプリケーションでの動作保証ができないこと,②外部環境の変化(OSの仕様変更等)に合わせて本製品のプロテクション技術を随時改良していく場合,同社としてその都度対応することができないこと等の理由により,本製品について承認を得られなかった。 そのため,被告は,自社のフォント製品にFontsCloakerを採用することを見送ることとし,平成19年5月8日の打合せで原告らにその旨を告げた(乙8)。 エ OSの64bit化に関する状況原告と被告が本件契約締結の交渉をしていた当時,コンピュータ処理における一部機能を32bitのOSではなく64bitのOSにて実現する技術が知られていたが,64bitのOSの実現時期やその概要は不透明であった(甲24)。 本件サポート契約においては,Windowsに関しては,「サービスパック,アップグレード(OSやCPUなどのアーキテクチャ変更によりドライバの実装が変わった場合は除く)などWindows32bitOSがバージョンアップされた後も,本製品が仕様通りに動作するように維持,改良すること」とされ,また,Macに関しては,「サービスパック,アップグレード(OSやCPUなどのアーキテクチャ変更によりドライバの実装が変わった場合は除く)などMacOSがバージョンアップされた後も,本 と」とされ,また,Macに関しては,「サービスパック,アップグレード(OSやCPUなどのアーキテクチャ変更によりドライバの実装が変わった場合は除く)などMacOSがバージョンアップされた後も,本製品が仕様通りに動作するように維持,改良すること」とされていた(前提事実(2))。なお,本件サポート契約締結当時,OSが完全に64bit化されたMacOSは市販されておらず,OSのカーネルが完全に64bitになり,ほとんどのシステム付属アプリケーションが64bit化されたのは平成21年8月28日発売のOSからであった(甲21,22)。 -22-原告は,Windows及びMacとも,32bit版に対応する作業を行っていたが,その間にOSの64bit化が進み,MacについてはOSの全てが64bitに変更され,Windowsについては,32bitのOSが一部残ってはいるものの,ハードウェア商品が全て64bitに変更された。なお,同年12月10日時点において,被告のフォント製品のユーザーのうち,Macのユーザーが7割から8割を占めていた(乙3)。 被告は,これらの市場環境の変化に対応すべく,同月9日の打合せにおいて,原告らに対し,64bit版の開発を求めたが,原告らは,64bit版の開発は本件サポート契約の対象でなく,別途開発が必要であるとの対応をした(乙3)。また,原告は,平成22年4月22日には,被告に対し,32bitOSと64bitOSのカーネルは互換性が全くなく,64bitOSへの対応には3人月以上の工数が発生するため,対応が必要な場合は別途費用が発生すると告げた(甲10の21)。 オ契約終了に関する原告らと被告との間の交渉経緯被告は,上記平成21年12月9日の打合せにおいて,原告らに対し,契 が必要な場合は別途費用が発生すると告げた(甲10の21)。 オ契約終了に関する原告らと被告との間の交渉経緯被告は,上記平成21年12月9日の打合せにおいて,原告らに対し,契約4年目で製品化できていないことから,契約解除を含めての検討が必要である旨を告げ,3社で調整することとなった(乙3)。 また,平成22年10月,原告ら及び被告は,本件契約の途中解約について協議を行い,その上で,被告は,原告に対し,平成23年11月30日付けの「契約終了申し入れ書」と題する書面を送付し,本件サポート契約が平成24年3月末で満了となることから,それをもって同契約を終了させる旨を申し入れた。そこでは,被告は,契約を終了させる理由として,「弊社は,フォント製品利用のため本契約を締結いたしましたが,OSやアプリの主力プラットフォームメーカーに本機能についての理解が得られなかったため採用を見送りました。また,今後も利用する予定がありませ-23-ん。」と述べた(甲8)。 これに対し,原告らは,平成23年12月9日付け「回答書」と題する書面を送付した(乙4)。そこでは,「契約締結交渉当初より,貴社からの長期継続割引の強いご要望をいただいていたため,当該ご要望にお応えできるよう,設備投資や人員配置等のサポート体制構築を行ってまいりました。契約開始から5年での解約では原価割れとなるため,最低でも10年間(残り5年間)の手当をしていただきたいと存じます。お支払いは一括でも分割でも構いません。」と述べた。 その後,前提事実(5)記載のとおり,原告らは,被告に対して,平成24年4月1日以降分のライセンス料の支払を求めたが,被告は支払をしなかった。 (2) 判断ア本件契約においては,契約書上,契約終了の3か月以前に,原告,被告 ,被告に対して,平成24年4月1日以降分のライセンス料の支払を求めたが,被告は支払をしなかった。 (2) 判断ア本件契約においては,契約書上,契約終了の3か月以前に,原告,被告及び技研のいずれからも相手方に対して書面にて解約の申入れを行い協議の上合意した場合を除き,更に1年間自動延長するとの条項(本件更新条項)が設けられている。この条項を文言どおり解するならば,当事者間の合意がない限り,本件契約は永続的に自動更新され,各当事者は契約上の義務を負い続けることになる。 しかしながら,ソフトウェア製品の開発,保守,ライセンス契約を締結する事業者が,このような事態を想定するとは通常は考え難いことである。 また,本件契約の契約期間については,前記認定のとおり,被告が当初1年と提示し,その後原告から10年との提示があり,これに対して被告が5年又は7年を提示し,最終的に5年との合意がなされたものである。 そして,このような経緯に関し,原告は,投下資本回収のために10年の契約期間を提示していたが,本件更新条項が存在するゆえに,原告の要求は実質的に満たされたものと判断して契約期間を5年と定めたと主張し,-24-被告は,契約長期化のリスクとエンドユーザーに対するサポート打切りのリスクを考慮し,5年を提案して原告が了解したものであって,本件更新条項は契約期間を1年と提示した際の名残にすぎない,とそれぞれ主張している。 かかる経緯並びに原告及び被告の主張からすると,5年という契約期間は,原告ら及び被告の双方が,契約期間の長短についてのリスクをそれぞれ勘案した上で交渉を行い,その上で定められたものであって,原告らも被告も,契約期間の定めを契約上の重要な利害関係事項であると考えていたと認められる。にもかかわらず,本件更新条 いてのリスクをそれぞれ勘案した上で交渉を行い,その上で定められたものであって,原告らも被告も,契約期間の定めを契約上の重要な利害関係事項であると考えていたと認められる。にもかかわらず,本件更新条項を前記のようにその文言どおりに解する場合には,永続的に自動更新されることとなり,契約期間の定めは全く無意味なものとなる。また,同時に,契約更新期間を1年ごととしたことも全く無意味なものとなる。 これらの点を勘案すれば,5年という契約期間については,約定の期間が満了するまで契約を継続させるという強い拘束力を有するものとして定めたと認めるのが相当であるが,その後の1年間ごとの更新を定める本件更新条項については,特段の交渉対象とされなかったことからしても,そのような強い拘束力を有するものとして定められたと認めるのは相当でないというべきである。 そして,本件サポート契約は,原告が被告のために開発した本製品について,維持改良を行うことを内容とするものであるから,委任契約に類似した継続的契約の性質を有するものと解するべきところ,やむを得ない事由があるときに当事者は契約を解除することができるとする民法651条の趣旨を考慮すると,少なくとも,更新を妨げるやむを得ない事由がある場合には更新を拒絶することができると解するのが相当である。 イ争点(5)エに関する被告の主張は,このようなやむを得ない事由を主張するものと解されるが,そこでは,遅くとも平成19年4月又は平成21年-25-12月の時点において,アドビ社による承認が得られないことや64bitOSへの対応ができないことにより,本製品の商品化が不可能となり,被告が当初予定した本件契約の目的は一切達成することができなくなったと主張し,また,争点(4)に関する被告の主張では,この点は債務不履行を構成 応ができないことにより,本製品の商品化が不可能となり,被告が当初予定した本件契約の目的は一切達成することができなくなったと主張し,また,争点(4)に関する被告の主張では,この点は債務不履行を構成するとも主張している。 そこで検討するに,まず,本製品の商品化のためにアドビ社の承認が得られることについては,本件契約の契約書の文言には一切記載されておらず,かえって,本件ライセンス契約の契約書では,「『本製品』の詳細は別紙『フォントプロテクション機能確認書』に定める。」とあり(1条),本製品の仕様としては同別紙記載のものが定められているにとどまることからすると,アドビ社の承認を得て本製品が商品化されることが被告の契約上の開発義務に含まれていると解することはできない。また,本件契約におけるサポート対象についても,対応すべきアップグレードから「OSやCPUなどのアーキテクチャ変更によりドライバの実装が変わった場合」が除かれていること,Windowsに関しては,32bitのOSがサポート対象であることが明示されていること,Macに関しては契約書の文言上は単にMacOSと記載されていたが,本件サポート契約締結当時,OSが完全に64bit化されたMacOSは市販されていなかったのであって,本件契約におけるサポートの対象は,あくまで32bitのOSであると認められることからすると,64bitOSへの対応が原告のサポート義務に含まれていると解することはできない。したがって,上記の事情が原告の債務不履行を構成するということはできない。 しかし,被告は,本製品が主としてDTPソフトで利用されることを想定していたにもかかわらず,本製品についてDTPソフトの中心メーカーであるアドビ社の承認が得られなかったことにより,当初の契約期間の5年が満了しても商品化を 主としてDTPソフトで利用されることを想定していたにもかかわらず,本製品についてDTPソフトの中心メーカーであるアドビ社の承認が得られなかったことにより,当初の契約期間の5年が満了しても商品化をすることができていない状況にあったのであり,-26-近い将来において商品化が見越せる状況にあったとの事情も認められない。 また,コンピュータのOSについても,64bit化が進んでいるのであって,32bitのOSへの対応のみを対象とする本製品のサポートを継続することは,本件サポート契約の当初の契約期間満了時期である平成24年3月31日当時においては,商業上の意味をほとんど失っていたといえる。そして,このことは,別紙のとおり,原告は,被告に対し,CD-R及び説明資料等のサポート成果を,アドビ社から承認を得られなかった頃である平成19年6月1日までは約1か月から2か月に1回提供していたにもかかわらず,同日以後はサポート成果の提供回数が極端に減少し,特に平成22年7月22日から平成23年11月9日までの約1年3か月間においては,一度もサポート成果の提供を行っていないことからもうかがわれるといえる。これらの点からすると,被告にとっては,5年の契約期間中に合計6720万円のライセンス料を支払いながら,結局商品化の目処も立たず,契約の実質的目的を達成し得ない状況となり,これ以上本件サポート契約を継続する商業上の意味を失ったというべきである。 他方,原告は,投下資本の回収のために10年間は本件契約を継続することを当初から求めており,実際にもこれまで合計1億1640万円の開発費用及びサポート費用を負担していると主張する(甲9)。 しかし,前提事実(2)ウ記載のとおり,本件ライセンス契約では,初期費用3360万円(税込)については,「開発費用」と 1億1640万円の開発費用及びサポート費用を負担していると主張する(甲9)。 しかし,前提事実(2)ウ記載のとおり,本件ライセンス契約では,初期費用3360万円(税込)については,「開発費用」と「期限のない複合化ソフトのライセンス費用」とされ,年間サポート費用672万円(税込)については,「年間サポート実施料」と「暗号化ソフトの年間ライセンス費用」とされているのであって,開発費用は初期費用によって賄われることとされているから,当初から10年以上の契約期間がなければ投下資本の回収ができない状況であったのかについては疑問がある。 また,原告が実際に支出した費用についても,甲9の開発工数報告書で-27-は,5年の契約期間満了後のものが12人月(1440万円分)計上されている上,初期費用である本件契約の締結までの分は合計21人月(2520万円分),本製品がアドビ社に承認されないこととなった頃である平成19年5月頃までのものを見ても合計37人月(4440万円分)であるから,この点からも,上記と同様の疑問がある。 また,本件契約締結後に投下していく資本の回収という観点から見ても,本件においては,上記のとおり,原告の被告に対するサポート成果の提供に相当の空白期間が含まれているのであって,原告が被告に対し,10年間にわたり間断なくサポート業務を継続し,それにより,10年間にわたり,開発工数が顕著に累積・拡大していく状況が現実的に見込まれていたとは認め難く,この点からも,当初から10年間の契約期間が必須であったのかについては疑問がある。 さらに,そもそも甲9の開発工数報告書における1人月の工数が120万円であることや,工数が合計97人月であることを裏付ける証拠は他にはなく,この点からも上記原告の主張を直ちに採用すること がある。 さらに,そもそも甲9の開発工数報告書における1人月の工数が120万円であることや,工数が合計97人月であることを裏付ける証拠は他にはなく,この点からも上記原告の主張を直ちに採用することはできない。 以上の諸点を総合考慮すると,本件契約の交渉過程において本件更新条項を最初に提示したのが被告であることを考慮しても,本件においては,被告が契約更新を拒絶するのにやむを得ない事由があると認めるのが相当であり,本件契約は期間満了により終了したというべきである。 第4 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく原告の請求には理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 -28- 裁判長裁判官 髙松宏之 裁判官 田原美奈子 裁判官 中山知

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