平成28(ワ)12791 意匠権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年11月6日 大阪地方裁判所
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判決文本文44,383 文字)

平成30年11月6日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成28年(ワ)第12791号意匠権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成30年8月23日判決原告シーシーエス株式会社 同訴訟代理人弁護士上甲悌二同雨 宮 沙耶花同訴訟代理人弁理士西村竜平被告株式会社イマック同訴訟代理人弁護士伊原友己 同加古尊温同訴訟代理人弁理士藤河恒生主文 1 被告は,別紙「物件目録」1ないし3記載の製品を製造し,販売し,販売の申出をしてはならない。 2 被告は,原告に対し,289万5387円並びに内金271万6641円に対する平成29年1月17日から,内金13万8096円に対する平成30年3月6日から,及び内金4万0650円に対する同年8月2日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告の,その余を原告の負担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙「物件目録」1ないし6記載の製品を製造し,販売し,販売の 申出をしてはならない。 2 被告は,前項記載の各製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対して,4525万円及びこれに対する平成29年1月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,意匠権(意匠登録第122461 棄せよ。 3 被告は,原告に対して,4525万円及びこれに対する平成29年1月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,意匠権(意匠登録第1224615号)を有する原告が,被告において 原告のこの意匠権に係る意匠に類似する意匠を備える別紙「物件目録」1ないし6記載の製品(以下,まとめて「被告製品」といい,各製品を同別紙の記載に従い,「イ号物件」などという。)を製造,販売し,原告の上記意匠権を侵害したとして,被告に対し,①意匠法37条1項に基づき,被告製品の製造,販売等の差止めを請求し,②同条2項に基づき,被告製品の廃棄を請求するとともに,③意匠権侵害の 不法行為に基づき,イ号物件ないしハ号物件については平成26年1月以降の,ニ号物件ないしヘ号物件については遅くとも平成28年11月以降の,販売による損害の賠償及びこれらに対する訴状送達の日の翌日(イ号物件ないしハ号物件については不法行為日の後の日)である平成29年1月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払及び④不当利得に基づき,平成25年12 月末までのイ号物件及びハ号物件の販売による利得の返還並びにこれらに対する受益(利得)日の後の日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法704条前段所定の年5分の割合による利息の支払を請求する事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 当事者ア原告は,製造物の生産・検査・観察用途の照明機器の開発,製造及び販売等を目的とする会社である。 イ被告は,メカトロニクス機器の設計,製作及び販売等を目的とする会社である。 (2) 本件意匠権 の照明機器の開発,製造及び販売等を目的とする会社である。 イ被告は,メカトロニクス機器の設計,製作及び販売等を目的とする会社である。 (2) 本件意匠権 ア原告は,次の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その登録に係る意匠を「本件意匠」という。)を保有している。本件意匠は,意匠に係る物品の一定の範囲を対象とする部分意匠であり,その形態は,別紙「本件意匠の図面」の各図面の実線で表した部分のとおりである。 登録番号: 第1224615号 登録日: 平成16年10月22日出願日: 平成16年4月12日出願番号: 意願2004-11226意匠に係る物品: 検査用照明器具意匠に係る物品の説明: 本物品は,工場等において製品の傷やマー ク等の検出(これらを総称して検査という。)に用いられるもので,LEDや光学素子を内蔵し(図示しない。),先端の光導出ポートから光を照射する。その光は,直接又は光ファイバ等のライトガイドを介して製品に照射される。 意匠の説明: 別紙「本件意匠の図面」の各図面に示すように,実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。C-C’ 一点鎖線は中間省略を行った部分を示す線である。背面図は正面図と対称に表れる。 イ本件意匠の関連意匠として,次の意匠権が登録され,原告はこれを保有している。 登録番号: 第1224780号登録日: 平成16年10月22日 出願日: 平成16年4月12日出願番号: 意願2004-11241意匠に係る物品: 検査用照明器具(3) 被告による被告製品の製造,販売等ア被告は,業として,検査用照明器具であるイ号物件ないしハ号物件 日出願番号: 意願2004-11241意匠に係る物品: 検査用照明器具(3) 被告による被告製品の製造,販売等ア被告は,業として,検査用照明器具であるイ号物件ないしハ号物件を製 造,販売し,また,それらの販売の申出をしていた。その販売開始日は次のとおり である(乙22,23)。 イ号物件(製品名同軸スポット照明) 平成22年6月28日 ロ号物件(製品名同軸スポット照明) 平成27年6月17日 ハ号物件(製品名赤外照明) 平成23年11月21日イ被告は,平成28年10月ないし11月ころ,イ号物件ないしハ号物件 の製造,販売を中止し,このころ,その後継として,検査用照明器具であるニ号物件ないしヘ号物件の製造,販売を開始し,以後,業として,ニ号物件ないしヘ号物件を製造,販売し,また,その販売の申出をしている(甲19,乙5の1,5の2)。 ウ被告製品の形態は,別紙「被告製品の図面」の各図面のとおりであり,そのうち後端フィンの後面(後端面)に設けられたねじ穴に関する形態は,別紙「被 告製品の後端フィンの後面に設けられたねじ穴に関する意匠(構成態様)」記載のとおりである(乙13)。 (4) 被告による意匠登録等ア被告は,次の各意匠権(以下,各意匠を順番に「被告登録意匠1」などといい,これらの登録意匠をまとめて「被告登録意匠」という。)を保有している (乙1ないし3)。 意匠登録第1567961号a 登録日: 平成28年12月22日b 出願日: 平成28年9月26日c 出願番号: 意願2016-20562 d 意匠に係る物品: 放熱フィン付き検査用照明器具e 関連意匠:の登録 日: 平成28年12月22日b 出願日: 平成28年9月26日c 出願番号: 意願2016-20562 d 意匠に係る物品: 放熱フィン付き検査用照明器具e 関連意匠:の登録意匠 意匠登録第1568313号a 登録日: 平成28年12月22日b 出願日: 平成28年9月26日 c 出願番号: 意願2016-20564 d 意匠に係る物品: 放熱フィン付き検査用照明器具e 関連意匠: 意匠登録第1568314号a 登録日: 平成28年12月22日b 出願日: 平成28年9月26日 c 出願番号: 意願2016-20565d 意匠に係る物品: 放熱フィン付き検査用照明器具e 関連意匠: イ原告は,平成29年5月8日,被告登録意匠1及び3について,各意匠登録の無効審判を請求したが,同年12月27日,請求は成り立たないとの各審決 がされ,知的財産高等裁判所に審決の取消しを求める各訴訟を提起したが,平成30年6月27日,原告の請求はそれぞれ棄却された(甲20,乙15,16,24,25)。 (5) 原告による検査用照明器具の製造,販売原告は,遅くとも平成7年頃から,現在に至るまで,検査用照明器具を製造, 販売しており,平成14年以降,「高輝度LEDスポット照明」である「HLVシリーズ」の製品を製造,販売している。 また,原告は,平成16年8月から,「第2世代HLVシリーズ」の製品(下記第4において,「原告の製品」ということがある。)の販売を開始した。従来は,発光面(光導出ポート)と反対側の後端フィンの後面(後端面)から電源ケーブル を引き出していたが,この製品では,検査用照明器具の側周面から電源ケーブル うことがある。)の販売を開始した。従来は,発光面(光導出ポート)と反対側の後端フィンの後面(後端面)から電源ケーブル を引き出していたが,この製品では,検査用照明器具の側周面から電源ケーブルを引き出すこととされた(甲8ないし13,15ないし17,乙6)。 2 争点(1) 被告製品の意匠は本件意匠に類似するか(争点1)(2) 本件意匠は意匠登録無効審判により無効にされるべきものか(争点2) (3) 被告が本件意匠権を侵害するおそれがあるか(争点3) (4) 原告の損害額,原告の損失・被告の利得の額(争点4)第3 争点についての当事者の主張 1 争点1(被告製品の意匠は本件意匠に類似するか)(原告の主張)(1) 本件意匠の構成態様 本件意匠の構成態様は次のとおりである(表形式に整理すると,別紙「原告主張の構成態様」の「本件意匠」欄記載のとおり。)。なお,部分意匠である本件意匠の要部を要部足らしめる全体の前提形態(破線で示された形状等)との関係を,本業界での取引者,需要者の実情から客観的に把握すれば,それはケーシング(LED,その配線基板,配線基板から出る電源ケーブルの基端部,光学素子等を収容 あるいは保持している部位)の後端部側周面から電源ケーブルが引き出されているという形態において,後方部材(フィン構造体)がケーシングよりも後ろ,すなわち,電源ケーブルの引き出し口よりも後ろに位置するという関係に他ならず,これが次の基本的構成態様Aである。また,別紙「被告主張の構成態様」の内容について異論はない。 ア基本的構成態様A 前端面に発光面(光導出ポート)が設けられたケーシングの後方部材において,B 該ケーシングの後端面中心から 主張の構成態様」の内容について異論はない。 ア基本的構成態様A 前端面に発光面(光導出ポート)が設けられたケーシングの後方部材において,B 該ケーシングの後端面中心から後方に延伸する支持軸体が設けられており, C 該支持軸体の中間部分には,中心軸を合致させ,かつ,互いに間隔をあけて配置された複数枚の同径円盤状をなす中間フィンが設けられており,D 該支持軸体の後端部分には,該中間フィンと同径であり,中心軸を合致させた,該中間フィンよりも厚い円盤状をなす1枚の後端フィンが配置されている。 D’ 電源ケーブルの引き出し口は,後方部材を除いた部位に設けられて おり,該引き出し口は,後方部材には設けられていない。 イ具体的構成態様E 中間フィン及び後端フィンは,互いに略等しい間隔で配置されており,その間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約18%である。なお,この「間隔寸法」の意義は,次のとおりである(被告製品についても同じ。)。別 紙「被告主張の構成態様」の具体的構成態様Ⅴ記載の数値は認める。 F 中間フィン及び後端フィンの径は,ケーシングの最大径と略等しい。 G 中間フィンの枚数は2枚である。 H 中間フィンの厚みは,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約5% であるとともに,後端フィンは,中間フィンに比べて約2倍の厚みとなっている。 I 後端フィンは,その後端面の縁に面取りが施してある。 J 支持軸体は同一径であり,その径はフィンの約1/5である。 (2) 本件意匠の意匠的要部本件意匠に係る物品の来歴やその業界の実情を把握すれば,本件意匠は,破線 によって具体的に示される形態,すなわちケーシングにおいて,その ィンの約1/5である。 (2) 本件意匠の意匠的要部本件意匠に係る物品の来歴やその業界の実情を把握すれば,本件意匠は,破線 によって具体的に示される形態,すなわちケーシングにおいて,その後端部側周面から電源ケーブルが出ているという形態が前提となって初めてその美感が見出されるものである。そして,後記2で述べるとおり,本件意匠の出願前には,ケーシングの後端から後方部材(フィン構造体)が延伸した形態のものは見られなかった。 また,部分意匠の要部認定には,物品全体との位置関係等を明確にしておく必要 があり,破線で示されたその他の部分の構成や位置の把握は,部分意匠の要部を特定する大きな要素であるというべきである。 したがって,本件意匠の要部は,前記(1)アの基本的構成態様にあるというべきであり,破線部分との関係(ケーシングの後端に設けられているという関係)も含めた形態によって,高放熱性,高輝度性,堅牢性等の機能美的な印象を需要者に抱か せるのである。 (3) 被告製品の構成態様被告製品の構成態様は次のとおりである(表形式に整理すると,別紙「原告主張の構成態様」の「イ号物件」ないし「ヘ号物件」の各欄記載のとおり。)。なお,別紙「被告主張の構成態様」の内容について異論はない。 アイ号物件 基本的構成態様基本的構成態様a1ないしd’1は,前記(1)アのAないしD’に同じ。 具体的構成態様e1 中間フィン及び後端フィンは,互いに略等しい間隔で配置されてお り,その間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の20%である。 f1 中間フィン及び後端フィンの径は,ケーシングの最大径と等しい。 g1 中間フィンの枚数は3枚である。 h1 中間フィンの厚み の間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の20%である。 f1 中間フィン及び後端フィンの径は,ケーシングの最大径と等しい。 g1 中間フィンの枚数は3枚である。 h1 中間フィンの厚みは,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約9%であるとともに,後端フィンは,中間フィンに比べて約1.3倍の厚みとなっ ている。 i1 後端フィンは,その後端面の縁に面取りが施してある。 j1 支持軸体は同一径であり,その径はフィンの約1/3である。 m1 後端フィンには中心に,ねじ穴が設けてある。 イロ号物件 基本的構成態様 基本的構成態様a2ないしd’2は,前記(1)アのAないしD’に同じ。 具体的構成態様e2 中間フィン及び後端フィンは,互いに略等しい間隔で配置されており,その間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約24%である。 f2 中間フィン及び後端フィンの径は,ケーシングの最大径と等しい。 g2 中間フィンの枚数は3枚である。 h2 中間フィンの厚みは,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約7%であるとともに,後後端フィンは,中間フィンに比べて約1.7倍の厚みとなっている。 i2 後端フィンは,その後端面の縁に面取りが施してある。 j2 支持軸体は同一径であり,その径はフィンの約1/3である。 m2 後端フィンには2箇所に,ねじ穴が設けてある。 ウハ号物件基本的構成態様基本的構成態様a3ないしd’3は,前記(1)アのAないしD’に同じ。 具体的構成態様e3 中間フィン及び後端フィンは,互いに略等しい間隔で配置されており,その間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約20%である。 ないしD’に同じ。 具体的構成態様e3 中間フィン及び後端フィンは,互いに略等しい間隔で配置されており,その間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約20%である。 f3 中間フィン及び後端フィンの径は,ケーシングの最大径の約92%である。 g3 中間フィンの枚数は3枚である。 h3 中間フィンの厚みは,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約9%であるとともに,後端フィンは,中間フィンに比べて約1.3倍の厚みとなっている。 i3 後端フィンは,その後端面の縁に面取りが施してある。 j3 支持軸体は同一径であり,その径はフィンの36.4%である。 m3 後端フィンには中心に,ねじ穴が設けてある。 エニ号物件 基本的構成態様基本的構成態様a4ないしd’4は,前記(1)アのAないしD’に同じ。 具体的構成態様 e4 中間フィン及び後端フィンは,互いに略等しい間隔で配置されており,その間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約28%である。 f4 中間フィン及び後端フィンの径は,ケーシングの最大径と等しい。 g4 中間フィンの枚数は2枚である。 h4 中間フィンの厚みは,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約1 2%であるとともに,後端フィンは,中間フィンに比べて約1.4倍の厚みとなっている。 i4 後端フィンは,その後端面の縁に面取りが施してある。 j4 支持軸体は同一径であり,その径はフィンの約1/3である。 k4 中間フィン及び後端フィンは,前端面の縁に面取りが施してある。 l4 中間フィン及び後端フィンの外周面には,約60°の範囲に亘って円弧の一部を直線状に切り取ったフラット面が設けて 。 k4 中間フィン及び後端フィンは,前端面の縁に面取りが施してある。 l4 中間フィン及び後端フィンの外周面には,約60°の範囲に亘って円弧の一部を直線状に切り取ったフラット面が設けてある。 m4 後端フィンには中心に,ねじ穴が設けてある。 オホ号物件 基本的構成態様 基本的構成態様a5ないしd’5は,前記(1)アのAないしD’に同じ。 具体的構成態様e5 中間フィン及び後端フィンは,互いに略等しい間隔で配置されており,その間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約28%である。 f5 中間フィン及び後端フィンの径は,ケーシングの最大径と等しい。 g5 中間フィンの枚数は2枚である。 h5 中間フィンの厚みは,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約12%であるとともに,後端フィンは,中間フィンに比べて約1.4倍の厚みとなっている。 i5 後端フィンは,その後端面の縁に面取りが施してある。 j5 支持軸体は同一径であり,その径はフィンの約1/3である。 k5 中間フィン及び後端フィンは,前端面の縁に面取りが施してある。 l5 中間フィン及び後端フィンの外周面には,約60°の範囲に亘って円弧の一部を直線状に切り取ったフラット面が設けてある。 m5 後端フィンには2箇所に,ねじ穴が設けてある。 カヘ号物件 基本的構成態様基本的構成態様a6ないしd’6は,前記(1)アのAないしD’に同じ。 具体的構成態様e6 中間フィン及び後端フィンは,互いに略等しい間隔で配置されており,その間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約28%である。 f6 中間フィン及び後端フィンの径は,ケーシン e6 中間フィン及び後端フィンは,互いに略等しい間隔で配置されており,その間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約28%である。 f6 中間フィン及び後端フィンの径は,ケーシングの最大径の約92%である。 g6 中間フィンの枚数は2枚である。 h6 中間フィンの厚みは,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約12%であるとともに,後端フィンは,中間フィンに比べて約1.4倍の厚みとなっ ている。 i6 後端フィンは,その後端面の縁に面取りが施してある。 j6 支持軸体は同一径であり,その径はフィンの約1/3である。 k6 中間フィン及び後端フィンは,前端面の縁に面取りが施してある。 l6 中間フィン及び後端フィンの外周面には,約60°の範囲に亘って 円弧の一部を直線状に切り取ったフラット面が設けてある。 m6 後端フィンには中心に,ねじ穴が設けてある。 (4) 本件意匠と被告製品の意匠の対比ア物品の同一性被告製品は検査用照明器具であり,本件意匠に係る物品と同一である。 イ意匠の類似性 本件意匠と被告製品の意匠の構成態様を比較すると,本件意匠の要部を中核とする基本的構成態様は全て一致し,具体的構成態様Iとi1ないし6も一致している。また,本件意匠の具体的構成態様Eのうち,「中間フィン及び後端フィンは,互いに略等しい間隔で配置されて」いる点はe1ないし6と一致している。 さらに,本件意匠の具体的構成態様Gと,ニ号物件ないしヘ号物件のg4ないし6 も一致している。 これに対し,本件意匠の具体的構成態様Eのうち,中間フィンと後端フィンの「間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約18%である」点,F,H及びJは,e1 も一致している。 これに対し,本件意匠の具体的構成態様Eのうち,中間フィンと後端フィンの「間隔寸法は,中間フィン及び後端フィンの円弧直径の約18%である」点,F,H及びJは,e1ないし6,f1ないし6,h1ないし6及びj1ないし6と一致していないが,いずれも,本件意匠の要部ではない上,微差である。 また,本件意匠の具体的構成態様Gとg1ないし3は相違するが,中間フィンの複数枚同士の改変は容易に想到するものであり,類似性は肯定される。 さらに,ニ号物件ないしヘ号物件の意匠には,具体的構成態様k4ないし6及びl4ないし6が存在し,本件意匠と相違するが,フィンの一部を削っただけの,わずかな改変に過ぎない。 そして,被告製品の意匠には具体的構成態様m1ないし6が存在し,本件意匠と相違するが,ねじ穴を設けただけに過ぎない。 上述したとおり,本件意匠の要部は基本的構成態様AないしD’にあるというべきであり,被告製品の意匠はこの要部において本件意匠と共通する。 他方,被告製品の意匠は,具体的構成態様において本件意匠と異なる点はあるが, それらの差異は,需要者が看たときの印象,すなわち,後方部材(フィン構造体) に対し抱く,いわばロケットブースターのごとき放熱特化機能イメージ,複数枚の薄い中間フィンが並ぶことによる高放熱機能に対する期待感,厚い後端フィンによる堅牢感,ケーシングの外径とほぼ同径の円盤状をなすとともにそれらが一定ピッチで並べられていることによるケーシングとの一体感等までをも変えるものではなく,微差の範囲を出ないのは明らかである。 したがって,本件意匠に係る物品の取引,流通の実態に応じた需要者による客観的な判断からすれば,本件意匠と被告製品の意匠と 等までをも変えるものではなく,微差の範囲を出ないのは明らかである。 したがって,本件意匠に係る物品の取引,流通の実態に応じた需要者による客観的な判断からすれば,本件意匠と被告製品の意匠とが類似することは明らかである。 (被告の主張)(1) 原告主張の構成態様に対する認否等 ア本件意匠の構成態様本件意匠の構成態様は,別紙「被告主張の構成態様」の「本件意匠」欄記載のとおりである。なお,同別紙のⅤ欄記載の「フィンの間隔」の意義は,次のとおりである(被告製品についても同じ。)。別紙「原告主張の構成態様」の具体的構成態様E記載の数値は認める。 原告は構成態様の説明において,「ケーシング」という用語を使用しているが,そもそも本件意匠の公報の物品の説明欄には「ケーシング」という用語は登場しないし,外観からは視認できない内部構造を意識した概念として用いられているから,かかる用語を用いるのは不適切である。「後方部材」という説明も, ケーシングとの関係性においてされているが,そのような説明をする必要はない。 また,原告は「電源ケーブルの引き出し口」の位置関係(D’)について述べているが,そもそも電源ケーブルやその引き出し口は部分意匠である本件意匠の特定要素にならないはずであるから,それを構成態様に取り込んで説明することは不適切である。部分意匠であるからには,あくまでも部分意匠の構成態様を素直に説明すべきである。 イ被告製品の意匠の構成態様イ号物件ないしハ号物件各物件の意匠の構成態様は,別紙「被告主張の構成態様」の「イ号物件」ないし「ハ号物件」欄記載のとおりである(右側面(後端面)の意匠(構成態様)について,別紙「被告製品の後端フィンの後面に設けら 件各物件の意匠の構成態様は,別紙「被告主張の構成態様」の「イ号物件」ないし「ハ号物件」欄記載のとおりである(右側面(後端面)の意匠(構成態様)について,別紙「被告製品の後端フィンの後面に設けられたねじ穴に関する意匠(構 成態様)」参照。以下同じ。)。 ニ号物件ないしヘ号物件各物件の意匠の構成態様は,別紙「被告主張の構成態様」の「ニ号物件」ないし「ヘ号物件」欄記載のとおりである。 原告主張の基本的構成態様c4ないし6及びd4ないし6に関し,フィンは真円 になっていないから,「中心軸」や「円盤」という表現が適切か疑問がある。 (2) 原告のその他の主張に対する認否等ア被告製品が本件意匠に係る物品と物品が同一であることは認めるが,原告のその余の主張は否認し,争う。 イ原告主張の本件意匠の要部について 意匠の要部の判断において内部構造に重きを置くことなど,特段の事情でも無い限りできない。 また,意匠の要部の判断において,「公知意匠にはない新規な創作部分の存否等」が参酌されるが,下記2で述べるとおり,原告が要部であると主張する部分は,いずれも公知意匠にも相通じる形態的特徴にすぎず,新規な創作部分などではない。 本件意匠は部分意匠であり,その創作性があるとされている部分は,ケーシング部 とは切り離された後端部の放熱フィンの意匠でしかないところ,LED同軸照明装置に放熱フィンを設けること自体は技術常識といえるものであるし,放熱フィンの形状としてはタワー型が一般的であり,このタワー型を本件意匠のように後端部に設けることもありきたりなことであり,プロダクトデザインとしての創作性はない。 本件意匠の類似範囲を拡大主張することによる技術の独占を是認すべきで が一般的であり,このタワー型を本件意匠のように後端部に設けることもありきたりなことであり,プロダクトデザインとしての創作性はない。 本件意匠の類似範囲を拡大主張することによる技術の独占を是認すべきではない。 ウ美感の対比本件意匠と被告製品の意匠について,抽象的な特徴部分について共通するものがあったとしても,具体的な意匠同士を比較すれば,ケーシング部の構成や放熱フィンの厚みや間隔の寸法,軸との寸法比率(軸の太さ),平面(後端側からみた形状〔円形〕)部の小円状の特徴が有るかどうかなど,明らかに美感を異にしてい る。 また,ニ号物件ないしヘ号物件の意匠については,被告登録意匠が登録されたことからしても,本件意匠と類似していないことは明らかである。 2 争点2(本件意匠は意匠登録無効審判により無効にされるべきものか)(被告の主張) (1) 本件意匠は,次のとおり新規性又は創作非容易性の登録要件を欠いているから,意匠登録無効審判により無効とされるべきものである。 ア無効理由1(乙8に基づく新規性欠如)本件意匠は,国峰尚樹著『熱設計完全入門』(日刊工業新聞社,平成9年7月18日発行)の171頁(乙8)に掲載されている意匠(タワー型のヒートシン ク〔放熱板,放熱装置〕の意匠。以下,各書証に掲載されている意匠について,書証番号を用いて「乙8意匠」などという。)に明らかに類似する意匠であるから,新規性がない。 イ無効理由2(乙7,9,10,11に基づく新規性欠如)本件意匠は,「画像ラボ」(日本工業出版株式会社)2002(平成14) 年10月号(乙9)及び同誌2003(平成15)年10月号(乙10)に掲載さ れ,また本件意匠の出願当時,すでに販売さ 日本工業出版株式会社)2002(平成14) 年10月号(乙9)及び同誌2003(平成15)年10月号(乙10)に掲載さ れ,また本件意匠の出願当時,すでに販売されていた被告製の同軸照明装置IHV-27の意匠(乙7,11。以下「乙7等意匠」という。)と明らかに類似する意匠であるから,新規性がない。 すなわち,上記被告製品は,原告主張の本件意匠の基本的構成態様と全く同一の構成態様を備えているし,原告主張の具体的構成態様Gの中間フィンの枚数が3枚 であって異なること及びJの支持軸体の径が太い点において異なること以外は,すべて同一であるところ,中間フィンの枚数の違いや支持軸体の太さは微差にすぎない。 ウ無効理由3(乙7+乙8に基づく創作非容易性欠如)仮に無効理由1において,放熱フィンの周知形状(乙8。いわゆる「タワー 型」)が,あくまで放熱フィン(放熱部)単体の形状であるとした場合であっても,これを上記イのとおり,乙7の被告製品のごとく,検査用照明器具のケーシングの発光部とは反対側の後端側にこれを位置させること(形状)は,当業者であれば,極めて容易に考えつくものである。 したがって,本件意匠は,乙7と乙8に開示されている意匠に基づいて容易に創 作できるものであり,創作非容易性を欠くことは明らかである。 なお,本件は,検査用照明器具(同軸照明)に放熱フィンを設けるという技術自体の独占をもたらすことになっていることにも留意する必要がある。 エ無効理由4(乙4に基づく新規性欠如)ネオアーク株式会社の商品パンフレット(乙4)にも,検査用照明器具にお いて,ケーシングの発光部とは反対側の後端部側に,複数枚の放熱フィンが連設されている意匠が掲載されている(当該製品が実際に販売されて 株式会社の商品パンフレット(乙4)にも,検査用照明器具にお いて,ケーシングの発光部とは反対側の後端部側に,複数枚の放熱フィンが連設されている意匠が掲載されている(当該製品が実際に販売されていたことは間違いない。)。 この乙4の図面や写真を見る限り,各放熱フィンがどのような形で連設されているのかという点までは直接図示されていないが,少なくとも当業者であれば,各放 熱フィンの中心部に軸部が存在していると理解するであろう。 したがって,本件意匠は,乙4意匠に類似するから,新規性がない。 オ無効理由5(乙4+乙8に基づく創作非容易性欠如)仮に乙4意匠の放熱フィンが中心軸で連設してなる形状であるかどうかが明瞭ではないとしても,放熱フィンの形状として,いわゆる「タワー型」(乙8)が周知のものである以上,乙4意匠の各放熱フィンを中心軸でもって連設させること (形状)は,当業者であれば極めて容易に考えつくものである。 したがって,本件意匠は,乙4と乙8に開示されている意匠に基づいて容易に創作できるものであり,創作非容易性を欠く。 カ無効理由6(乙12に基づく新規性欠如)平成15年6月16日に発行された意匠公報(意匠登録第1175712号, 意匠権者は原告である。乙12)記載の意匠は,当該意匠公報記載のとおり,本件意匠に係る物品と同一の「検査用照明器具」の意匠であって,ケーシングの発光部とは反対側の後端部に数枚の放熱フィンとして機能する平たい円盤が円盤の中心部に設けられた軸部によって,ケーシング後端部に設けられた放熱フィンとも等間隔に連設配置されているものである。また,円盤は,ケーシング部に設けられた放熱 フィンとケーシング側1枚(中間フィン)は同じ厚みであり,右端(後端側) シング後端部に設けられた放熱フィンとも等間隔に連設配置されているものである。また,円盤は,ケーシング部に設けられた放熱 フィンとケーシング側1枚(中間フィン)は同じ厚みであり,右端(後端側)の1枚(後端フィン)は,中間フィンよりも約2倍の厚みがあり,かつ後端角部の円周が面取されているという形状である(放熱フィン(中間フィン)の枚数違いは実質的な相違点とはしない。)。そして,放熱フィンの厚さも間隔も同一といってよく,強いて相違点といえるとすれば,放熱フィンを繋ぐ軸部の太さと,右側面図に小円 が有るかどうかという点ぐらいである。 ところで,原告主張の本件意匠の具体的構成態様Aは,ケーシングの意匠を説明しているものであって,本件意匠が部分意匠であることに鑑みれば,その点は要部とはなし得ないものである(仮にケーシングの側周面からケーブルが出ていること,あるいは後端フィンからケーブルが出ていないことを意匠的特徴として取り上げて みたところで,乙12の正面図や平面図として開示されている意匠には,その特徴 が認められるのであるから,従来意匠にみられるありふれた形態にすぎない。)。 また,原告主張の具体的構成態様B,C及びDは,乙12意匠(本件意匠に対応する部分)の意匠も具備している意匠的特徴である。 そうすると,本件意匠と乙12意匠が類似していることは明白であって,本件意匠は新規性を欠くものである。 キ無効理由7(乙12+乙8に基づく創作非容易性欠如)原告は,本件意匠は後端フィンが分厚いことと,電源ケーブルが出ていないこと(ケーシングの側周面からケーブルが出ていること)が従来意匠にない創作性が認められる特徴点である旨主張しているが,後端フィンが中間フィンと比べて分厚い形状は,乙12意匠で 源ケーブルが出ていないこと(ケーシングの側周面からケーブルが出ていること)が従来意匠にない創作性が認められる特徴点である旨主張しているが,後端フィンが中間フィンと比べて分厚い形状は,乙12意匠でも乙7等意匠でも共通して採用されている形態であり, 文字どおり公知・周知の意匠構成にすぎない。 また,ケーシングの側周面からケーブルが出ているかどうかは,部分意匠の創作的特徴部分として掲げるべきものではなく,そもそも乙12の正面図や平面図では,後端フィンからケーブルが出ていない意匠が開示されているから,それをもって創作性を語る意味もない。 したがって,本件意匠に何らの創作性が認められないことは明らかであり,乙12と乙7の公知意匠が存在する以上,本件意匠は創作非容易とはいえない。 加えて,乙12意匠の放熱フィンの枚数について,中間フィンが1枚か2枚かという点を問題としたところで,乙8意匠のとおり,放熱フィンの枚数は適宜の枚数を選択すればよいことは当業者であれば容易に考えることであるから,複数枚の中 間フィンを設けた本件意匠が創作非容易とはいえない。 ク無効理由8(乙12+乙7に基づく創作非容易性欠如)乙12意匠の中間フィンを複数枚にすることは,乙7の被告製品で既に採用されている意匠であるから,創作非容易とはいえない。 また,原告において本件意匠の創作点と主張する後端フィンが分厚いことと,後 端フィンから電源ケーブルが出ていないことが,いずれも乙12意匠に開示されて いることは上述のとおりであり,後端フィンが分厚いことは乙7等意匠でも共通して採用されている形態であり,文字どおり公知・周知の意匠構成にすぎない。 したがって,乙12と乙7の公知意匠が存在する以上,本件意匠に創作性が認めら り,後端フィンが分厚いことは乙7等意匠でも共通して採用されている形態であり,文字どおり公知・周知の意匠構成にすぎない。 したがって,乙12と乙7の公知意匠が存在する以上,本件意匠に創作性が認められないことは明らかであり,本件意匠は創作非容易とはいえない。 (2) 原告の後記主張に対する反論 ア確かに,本件意匠に係る物品は「検査用照明器具」とされているが,部分意匠として特定されている箇所には発光部品は存在せず,照明器具の持つ熱を逃がすための放熱フィンである。したがって,本件では,検査用照明器具及び放熱フィン(タワー型ヒートシンク,放熱板,放熱装置)という物件の枠組みで,公知意匠と対比すれば足りる。したがって,乙8意匠と本件意匠の物品は同一である。 イ創作非容易性の判断において物品の同一性は必要とされていない。 ウ原告は電源ケーブルの位置関係が本件意匠の特徴的部分であるかのような主張をしているが,本件意匠は放熱フィン部分のみを取り出した部分意匠であるから,電源ケーブルなどの当業者が任意に意匠設計すれば足りる部分を特徴として評価することなど,到底できない。また,電源ケーブルを照明器具本体の底部から 導出するか,光導出ポートの反対側(後端面)から導出するかなど,検査用照明器具においてはいずれもありふれたものであるから,なお一層,本件意匠について,電源ケーブルの導出位置を云々する価値はない。 エ原告のその余の主張は否認し,争う。 (原告の主張) (1) 被告の主張は否認し,争う。 (2) 被告の主張に対する反論ア無効理由1について乙8にはタワー型のヒートシンクの意匠が記載されているが,そもそも乙8意匠は,本件意匠とは物品が異なる上,LED等を収容するケーシングとの関係も 主張に対する反論ア無効理由1について乙8にはタワー型のヒートシンクの意匠が記載されているが,そもそも乙8意匠は,本件意匠とは物品が異なる上,LED等を収容するケーシングとの関係も 示唆されていない。さらに,フィンもすべて同一厚みであって,本件意匠のように 複数の中間フィンとこれよりも分厚い後端フィンとは異なる形態である。 したがって,物品,形態のいずれの点においても本件意匠と非類似である乙8意匠に基づいて本件意匠を新規性欠如とする被告の主張は明らかに誤りである。 イ無効理由2について乙7等意匠は,本件意匠に係る物品の業界の需要者からみれば,ケーシング の周囲に周回する溝を複数形成してケーシング側周面の放熱面積を大きくした形態と看取されるものである。したがって,溝と溝との間に形成されている周回突条は,本件意匠のフィンとは異なるものである。 仮に,この突条がフィンだとしても,それはケーシングの側周囲に設けられているものであり,本件意匠のように,ケーシングよりも後方に設けられているもので はない。さらにいえば,溝(又は突条)は,ケーシングの側周面に形成されているのだから,本件意匠のような支持軸体も存在しない。 したがって,乙7等意匠は,本件意匠とはその形態が明らかに異なり,乙7等意匠に基づいて本件意匠を新規性欠如とする被告の主張は明らかに誤りである。 ウ無効理由3について 被告は,乙7及び乙8に基づいて本件意匠の創作非容易性を否定しているが,乙8意匠は形態において本件意匠とは非類似なのであるから,これを乙7等意匠の後端側に取り付けて本件意匠を容易に考え付くとした被告の主張は明らかに誤りである。 また,乙7等意匠では電源ケーブルがケーシング後端から引き いて本件意匠とは非類似なのであるから,これを乙7等意匠の後端側に取り付けて本件意匠を容易に考え付くとした被告の主張は明らかに誤りである。 また,乙7等意匠では電源ケーブルがケーシング後端から引き出されているが, このデザイン発想から脱却できていない以上,乙8意匠はおろか,その他の種々の形態のフィンをケーシング後端に取り付けるというデザイン思想にすら,本件意匠に係る物品の分野の当業者が容易に考え付くとも思えない。 エ無効理由4について乙4意匠に係る物品は,本件意匠に係る物品と機能や用途が異なり,物品が 非類似である。 また,形態面についても,乙4意匠は,電源ケーブルが後端面から引き出されているので,そのフィン部分の内部には,少なくとも電源ケーブル等が収容されていることは明らかであり,そのフィン部分はケーシングの一部とみなさなければならない。このように乙4意匠は,乙7等意匠同様,ケーシングの周囲に溝を設けた構成であるから,本件意匠のような,ケーシングよりも後方に設けられたフィン構造 体を有していない上,乙4意匠における溝(又は突条)は,ケーシングの側周面に形成されており,本件意匠のような支持軸体も存在しない。したがって,乙4意匠は,形態面においても本件意匠とは非類似である。 したがって,乙4意匠に基づいて本件意匠を新規性欠如とする被告の主張は明らかに誤りである。 オ無効理由5についてそもそも,乙4及び乙8に係る物品は,ともに本件意匠に係る物品とは非類似なのであるから,これらから本件意匠を容易に創作できるとは到底考えられない。 仮に,乙4の物品が本件意匠に係る物品と類似であったと仮定しても,上記ウと同様,乙4意匠及び乙8意匠ともに形態において本件意匠と あるから,これらから本件意匠を容易に創作できるとは到底考えられない。 仮に,乙4の物品が本件意匠に係る物品と類似であったと仮定しても,上記ウと同様,乙4意匠及び乙8意匠ともに形態において本件意匠とは非類似なのであるか ら,これらから本件意匠を容易に創作できるとも考えられない。また,乙4においては,乙7同様,ケーシング後端から引き出された電源ケーブルがある以上,その後ろにフィンを取り付けるというデザイン思想にすら,本件意匠に係る物品の分野の当業者が容易に考え付くとも思えない。 カ無効理由6について 乙12の使用状態を示す正面図をみれば,電源ケーブルがフィン様のものを軸方向に貫通して,その後ろから引き出されている。そして,右側面図,参考A-A線拡大断面図において,フィン様のものに貫通孔が形成されていることから,この貫通孔が,電源ケーブルを保持・挿通させるためのケーブル貫通孔であることは,需要者からして明らかに看取できる。そうすると,需要者からみれば,乙12意匠 におけるフィン様のものは,電源ケーブルの基端部を収容・保持していることから, ケーシングの一部と看取されるべきものである。 また,このように,フィン様のものに電源ケーブルが挿通・保持されていることが外観で把握される以上,放熱性やそれに基づく高輝度性に対して,需要者は大きな期待感を抱くことはできず,また,実際にも思ったほどの放熱機能の向上を図ることはできていない。すべては,電源ケーブルを軸方向に沿って後ろから引き出す という発想から脱却できていないがためであり,そのために機能的にもデザイン的にも,このような中途半端なものとなっている。 すなわち,乙12意匠において,フィン様のものはケーシングの一部をなすものというべきで から脱却できていないがためであり,そのために機能的にもデザイン的にも,このような中途半端なものとなっている。 すなわち,乙12意匠において,フィン様のものはケーシングの一部をなすものというべきであり,本件意匠のようにケーシングの後方に,フィン構造体(後方部材)が設けられた形態は,この乙12意匠には一切開示されていない。そして,こ の点は,本件意匠に係る物品の業界の需要者であるからこそ看取できるものあって,本件意匠は,乙12意匠と明らかに非類似である。 したがって,乙12意匠は,本件意匠とはその形態が明らかに異なり,乙12意匠に基づいて本件意匠を新規性欠如とする被告の主張は明らかに誤りである。 キ無効理由7について 上記ウと同様,乙8意匠はフィンの形態において本件意匠とは非類似であり,これを乙12意匠の後端に取り付けて本件意匠を容易に考え付くことはできない。 乙7等意匠同様,乙12意匠において,ケーシング後端から電源ケーブルを引き出すという発想から脱却することができていない以上,乙8に係るフィンはおろか,その他の種々の形態のフィンを,乙12のケーシング後端に取り付けるというデザ イン思想にすら,本件意匠に係る物品の分野の当業者が容易に考え付くとも思えない。 なお,需要者は,願書の記載及び願書に添付された図面全体をみて意匠を把握するのであって,正面図や平面図のみから意匠を把握するのではない。乙12の右側面図にケーブル貫通孔があり,使用状態を示す正面図からも,ケーシング後端から 電源ケーブルが引き出された意匠であることは需要者にとって明らかである。そし て,部分意匠においては,物品全体とのバランスによって新たな美感の創作となり得るのである。 したがって,被告の主張は明らかに ることは需要者にとって明らかである。そし て,部分意匠においては,物品全体とのバランスによって新たな美感の創作となり得るのである。 したがって,被告の主張は明らかに誤りである。 ク無効理由8について乙7に示された溝は上述したようにフィンではない。したがって,その形態 を乙12のフィンに適用することを創作容易とする被告の主張は失当である。 また,そもそも,乙7等意匠及び乙12意匠には,ケーシングの後方にフィン構造体を設けるというデザイン思想は一切開示されていないのであるから,これらの意匠から,ケーシングの後方にフィンを配置した本件意匠を容易に思いつくとも到底考えられない。 したがって,被告の主張は明らかに誤りである。 3 争点3(被告が本件意匠権を侵害するおそれがあるか)(原告の主張)被告はイ号物件ないしハ号物件について差止めの必要がないと主張しているが,被告は常に原告の製品を模倣してきたから,今後,イ号物件ないしハ号物件につい ても製造,販売するおそれが存在するため,これらを含め,製造,販売等の差止めの必要がある。 (被告の主張)被告は,イ号物件ないしハ号物件の生産を平成28年10月7日に終了しており,現在,これを製造,販売していないし,将来的にも復刻販売の予定はない。し たがって,これらの製品に関しては,差止めの必要性がないことは明らかである。 4 争点4(原告の損害額,原告の損失・被告の利得の額)(原告の主張)(1) 原告の損失・被告の利得の額(イ号物件及びハ号物件関係)平成22年6月28日から平成24年12月末日までのイ号物件及びハ号物 件の販売額は●(省略)●である。また,平成25年1月1日から同年3月末日ま 号物件及びハ号物件関係)平成22年6月28日から平成24年12月末日までのイ号物件及びハ号物 件の販売額は●(省略)●である。また,平成25年1月1日から同年3月末日ま でのイ号物件及びハ号物件の販売額は●(省略)●であり,同年4月1日から平成26年3月末日までのイ号物件及びハ号物件の販売額は●(省略)●である。 そして,同年1月1日から同年3月末までの販売額が平成25年1月1日から同年3月末までの販売額と同額であると考えると,同年1月1日から同年12月末までの販売額は●(省略)●となる。 そうすると,平成22年6月28日から平成25年12月末までの販売額は●(省略)●となる(●(省略)●)。 本件意匠の実施料率は●(省略)●を下らないため,●(省略)●となり,175万8054円が原告の損失・被告の利得の額となる。 また,被告は悪意の受益者(民法704条前段)である。 (2) 原告の損害額アイ号物件ないしハ号物件について平成26年1月1日から同年3月末までのイ号物件及びハ号物件の販売数が平成25年1月1日から同年3月末までの販売数●(省略)●と同数であるとすると,平成26年1月1日以降のイ号物件ないしハ号物件の販売数は●(省略)●で ある。そして,イ号物件ないしハ号物件の1個あたりの限界利益額は●(省略)●(乙17において,●(省略)●の限界利益が●(省略)●とされる。)であるため,意匠法39条2項により推定される平成26年1月以降の損害額は●(省略)●で2530万5889円となる。 また,原告は本件訴訟の提起のため,弁護士費用を支出しており,イ号物件ない しハ号物件に関する弁護士費用は,上記損害額の1割程度であり,250万円を下らない。 以 0万5889円となる。 また,原告は本件訴訟の提起のため,弁護士費用を支出しており,イ号物件ない しハ号物件に関する弁護士費用は,上記損害額の1割程度であり,250万円を下らない。 以上より,イ号物件ないしハ号物件に関する平成26年1月以降の損害は,以上の合計額である2780万5889円となる。 イニ号物件ないしヘ号物件について 被告は,平成28年11月から,ニ号物件ないしヘ号物件も販売している ところ,その販売数量は500個を下らない。また,同製品の利益額は,1個あたり1万3000円を下らない。 したがって,意匠法39条2項により,少なくとも650万円(500個×1万3000円)が原告の被った損害となる。また,これに相当な金額が弁護士費用として損害額に加算される。 (3) 被告の主張に対する認否等被告の後記主張は否認し,争う。次のとおり,被告製品の販売について本件意匠の寄与率を減じる理由はなく,本件意匠の寄与率は100%であるから,意匠法39条2項の推定は覆滅しない。 ア本件意匠は部分意匠であるが,被告製品のうち,先端部分は取り付け部 分であって,同じ形状にならざるを得ないこと,ケーシング部分も被告独自の特徴のある形状をしているわけではなく,一般的な形状であることからすれば,被告製品のうち需要者の目を引く部分は,本件意匠部分のみであるといえる。したがって,本件意匠が部分意匠であっても,寄与率を減じられる理由はない。 イ被告は公知意匠について主張しているが,被告が指摘する意匠は本件意 匠と全く異なるものであり,特に,後端フィンから電源ケーブルが出ているという形状は本件意匠と大きく相違する点である。したがって,公知意匠によって本件意 しているが,被告が指摘する意匠は本件意 匠と全く異なるものであり,特に,後端フィンから電源ケーブルが出ているという形状は本件意匠と大きく相違する点である。したがって,公知意匠によって本件意匠の寄与率が減じられることはない。 ウ被告は,機能,大きさ,品質,価格,サービス等の要因があるから寄与率が減じられるべきである旨主張している。 しかし,本件意匠は,放熱性,高輝度性を感じさせる機能美の意匠であり,まさに,機能要因に直結するといえる。意匠と機能が一致する場合も多々あるのである。 また,被告は価格差を主張するが,原告の意匠を模倣し,開発費用を抑えたことで低価格となったに過ぎない。しかも,原告製品は高くて買うことができず被告製品がなければ買わなかったというほどの価格差ではなく,被告製品と原告製品の価 格差は,寄与率を減じる要因とはなり得ない。 大きさについても同様であり,1cmの外径の差により被告製品しか買えなかった者がいたとは考えられず,やはり,寄与率を減じる要因とはならない。 品質,サービスについても,原告(製品)が被告(製品)より劣ることなどなく,寄与率を減じる要因とならない。 需要者の使用方法によっては,放熱フィンよりも小ささを重視する場合もあるか もしれないが,通常の使用方法であれば,放熱性や高輝度性を重視するため,本件意匠に着目するのである。 (被告の主張)(1) 上記原告の主張の(1)及び(2)ア記載の被告製品の売上額や販売個数は認め,原告のその余の主張は否認し,争う。 下記(2)記載の主張を踏まえれば,相当な実施料率は0.1%でも多額に失する。 また,被告がイ号物件及びハ号物件を製造,販売したのは,本件意匠の類似範囲や本件意匠権の有効性判断 し,争う。 下記(2)記載の主張を踏まえれば,相当な実施料率は0.1%でも多額に失する。 また,被告がイ号物件及びハ号物件を製造,販売したのは,本件意匠の類似範囲や本件意匠権の有効性判断の点で見解が相違したというだけのことであり,被告は悪意の受益者ではない。 (2) 推定覆滅事由等 次の事情を踏まえると,本件意匠の被告製品の売上げ(利益)に対する貢献や寄与は極めて低く,その寄与率は0.2%にも満たない(乙18参照)。 ア本件意匠とイ号物件ないしハ号物件の意匠が意匠的に類似しているとしても,前記1記載のとおり,その美感はかなり異なる。そして,需要者の視覚を通じて起こさせる美感における共通性は,かなり曖昧と言わざるを得ず,上記各物件 の顧客吸引に対しての放熱フィンの構造部分が果たす役割は取るに足らないものである。 イ本件意匠に係る物品は,検査用機器を扱う専門的な知識と経験を有する事業者が需要者として(プロ目線で),商品の価格と機能,寸法その他諸々の取引要因を勘案して購入に至るものである。そうした取引の実情に鑑みれば,とりわけ 性能・寸法と価格競争力は格段に重視されるものである(誰もデザインの善し悪し で商品選択などしない。)ところ,被告製品と原告製品との間には,性能的な面での違いはさほどなく,価格についてどれだけ需要者の期待に応えられるかという点で受注が決することも多い。 そうすると,被告の実売価格は,圧倒的に原告製品よりも競争力があるものであるから,その点は,意匠法39条2項の推定を覆滅する要因として考慮される必要 がある。 ウ加えて,寸法面においては,需要者の商品選択のトレンドは,放熱フィンを具えることではなく,小型化であり,この傾向については,原告 9条2項の推定を覆滅する要因として考慮される必要 がある。 ウ加えて,寸法面においては,需要者の商品選択のトレンドは,放熱フィンを具えることではなく,小型化であり,この傾向については,原告のラインナップからしても容易に裏付けられるところ,円形の放熱フィンを数枚具えているかどうかという点は,需要者の商品選択上,重きをもって捉えられるところではない。 エ本件意匠は,そもそも部分意匠であって全体意匠ではないうえ,被告製品との類似性の程度も低く,さらにその形態・形状が商品選択上の重要な特性にもなっていない。 第4 当裁判所の判断 1 争点2(本件意匠は意匠登録無効審判により無効にされるべきものか)につ いて(1) 事案に鑑み,争点2から判断する。 本件意匠は,意匠に係る物品を検査用照明器具とし,その形態は,別紙「本件意匠の図面」の各図面の実線で表した部分である。本件意匠は部分意匠であり,意匠に係る物品の説明や,別紙「本件意匠の図面」の参考斜視図に照らせば,本件意匠 は,前端面に発光面(光導出ポート)が設けられた検査用照明器具の後方部材の意匠であり,弁論の全趣旨によれば,この後方部材は検査用照明器具において生じた熱を放出するために設けられたもの(放熱部)であると認められる。 (2) 本件意匠の構成態様ア別紙「本件意匠の図面」(甲2)及び弁論の全趣旨によれば,本件意匠 の構成態様は,次のとおりと認められる(符号は原告の主張をベースにしているが, 構成態様の内容は,下記イの点に加え,原告も異論がないとしている別紙「被告主張の構成態様」の内容等も踏まえ,一部変更,付加した。)(表形式に整理すると,別紙「裁判所認定の構成態様」の「本件意匠」欄記載のとおり。)。 の点に加え,原告も異論がないとしている別紙「被告主張の構成態様」の内容等も踏まえ,一部変更,付加した。)(表形式に整理すると,別紙「裁判所認定の構成態様」の「本件意匠」欄記載のとおり。)。 基本的構成態様A 前端面に発光部のある検査用照明器具に設けられた後方部材(放熱部) である。 B 該後方部材の中心には,検査用照明器具の前方部材の後端面より後方に延伸する支持軸体が設けられている。 C 該支持軸体の中間及び後端には,薄い円柱状の,該支持軸体よりも径の大きいフィンが複数枚,間隔を空けて設けられている。 D 該複数枚のフィンのうち,該支持軸体の後端に設けられたフィン(以下「後端フィン」という。)は,該支持軸体の中間に設けられたフィン(以下「中間フィン」という。)よりも厚くなっている。 具体的構成態様E 中間フィン及び後端フィンは,中心軸を合致させ,かつ,互いに等し い間隔で設置されており,その間隔寸法は,フィンの直径の約12.5%である。 なお,この「間隔寸法」の意義は被告主張のとおりである。 F 後端フィン及び中間フィンの外径は,該前方部材の最大径と略等しい。 G 中間フィンの枚数は2枚である。 H 中間フィンの厚みは,フィンの直径の約4.2%であり,後端フィン は,中間フィンに比べて約2倍の厚みである。 I 後端フィンの後面(後端面)の縁の全てに面取り(厚みの約10.0%)が施してある。 J 支持軸体は円柱状で,同一径であり,その直径はフィンの約20.8%である。 K 中間フィン及び後端フィンの前面の縁は,正面視した場合,直角であ る(テーパーが設けられていない)。 L 中間フィン及び後端フィンの外周面 8%である。 K 中間フィン及び後端フィンの前面の縁は,正面視した場合,直角であ る(テーパーが設けられていない)。 L 中間フィン及び後端フィンの外周面は,円柱側面である。 M 後端フィン及び中間フィンの各面は,支持軸体の通過部分以外には貫通孔がなく,平滑である。 イ原告の主張について 原告は,本件意匠の基本的構成態様として,「電源ケーブルの引き出し口は,後方部材を除いた部位に設けられており,該引き出し口は,後方部材には設けられていない。」(D’)ということを,具体的構成態様として,「中間フィン及び後端フィンの径は,ケーシングの最大径と略等しい。」(F)ということを挙げ,被告は,これらを本件意匠の構成態様とすべきではないと主張する。 本件意匠は部分意匠であり,物品の一定の範囲を実線をもって登録した部分に権利が生じるものであって,物品全体の形状を示すために破線をもって示された部分は,部分意匠の権利の対象となるものではなく,前記基本的構成態様D’に係る原告の主張は,破線部分に電源ケーブルの引き出し口が存することを本件意匠の構成要素とするものであるから,失当といわざるを得ない。 他方で,部分意匠から生じる美感は,物品全体と意匠登録部分との相対的関係,すなわち部分意匠として登録された部分の位置,大きさ,範囲によって異なり得ると考えられ,本件意匠においては,検査用照明器具の前方部材と後方部材との位置関係や,径の大小関係が異なれば,意匠登録部分から生じる美感は異なると考えられるから,本件意匠の構成態様に,支持軸体が前方部材の後方に延伸すること(前 記B),フィンの外径が前方部材の最大径と略等しいこと(前記F)を含めることは,部分意匠制度の趣旨に反するもの えられるから,本件意匠の構成態様に,支持軸体が前方部材の後方に延伸すること(前 記B),フィンの外径が前方部材の最大径と略等しいこと(前記F)を含めることは,部分意匠制度の趣旨に反するものではない。 ウ原告のその他の主張及び被告の主張について原告は基本的構成態様において,フィンの中心軸が合致していること(C)を挙げ,被告は基本的構成態様においてフィンの間隔が等しいこと(Ⅲ)を挙げて いるが,これらは本件意匠を詳細に検討して初めて分かるものであるから,具体的 構成態様と位置付けるのが相当である。 また,原告は後端フィンの後面(後端面)の形態について何ら記載しておらず,他方で被告は「ねじ穴が設けられていない」という形で特定している(Ⅻ)が,別紙「本件意匠の図面」の各図面から明らかなその形態に照らせば,「平滑である」(前記アのM)という形で特定するのが相当であるし,後端フィンの後面だけでな く,その前面や中間フィンの各面の構成態様にも触れる必要があると考えられる。 (3) 被告主張の無効理由1について(乙8意匠による新規性欠如)ア被告が引用する乙8は,『エレクトロニクスのための熱設計完全入門』という題名の文献であり,その171頁には「代表的ヒートシンクの形状」として3つの型が掲載されており,そのうちの1つとして,次のヒートシンク(タワー型) の形態が開示されている。この文献は1997(平成9)年7月18日に発行されたものであるから,この意匠(乙8意匠)は本件意匠の意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠であると認められる。 乙8の171頁には,「空気抵抗が小さいので多くの場合強制空冷に使われます」 と記載され,さらに「フィン間隔を狭めるとそ 録出願前に日本国内において公然知られた意匠であると認められる。 乙8の171頁には,「空気抵抗が小さいので多くの場合強制空冷に使われます」 と記載され,さらに「フィン間隔を狭めるとその間に挟まれた空気の流動性が悪くなり,熱伝導率が小さくなってしまいます」などと記載されている。これらの記載に照らせば,上記「ヒートシンク」は,熱を放出させる部材(放熱部)に相当するものと認められる。 イしかしながら,乙8の文献からは,上記「ヒートシンク」がどのような 物品の放熱部として用いられるものかは明らかでなく,「エレクトロニクスのための」と表題が付されていることから,検査用照明器具の一部に用いられるかは不明 といわざるを得ず,乙8意匠が,本件意匠に係る物品と同一又は類似の物品の意匠であると認めることはできない。この点,被告は本件では検査用照明器具と放熱フィンという物件の枠組みで公知意匠と対比すれば足りると主張しているが,本件意匠における放熱部(後方部材)は検査用照明器具の一部材であるから,被告主張のように考えることはできない。 また,乙8の文献からは,ヒートシンクと他の部材との位置や大きさの関係,あるいはヒートシンクの各部分の具体的な寸法等も明らかでないし,仮に上記ヒートシンクのフィン様の部分が,本件意匠の中間フィンや後端フィンに相当するとしても,乙8意匠の各フィン部分の厚さは同じように見えるから,後端フィンが中間フィンよりも厚いとする本件意匠の基本的構成態様Dを備えていないことがうかがわ れる。 ウ以上のように,乙8意匠には明らかでない点が多々あり,本件意匠とは物品も形態も相違することから,乙8意匠に基づいて,本件意匠に新規性欠如の無効理由があるとする被告の主張は, れる。 ウ以上のように,乙8意匠には明らかでない点が多々あり,本件意匠とは物品も形態も相違することから,乙8意匠に基づいて,本件意匠に新規性欠如の無効理由があるとする被告の主張は,理由がないというべきである。 (4) 被告主張の無効理由2について(乙7等意匠による新規性欠如) ア被告が引用する雑誌(乙9の60頁及び乙10の67頁)には,「画像処理用光源製品ガイド」として,被告製の同軸・スポット照明「IHV-27」の写真が掲載されている。このうち乙10には,製品の説明として,「鏡面上のワーク検査に最適」とか,「画像処理分野だけでなくスポット照明としても使用は広範囲」と記載されているから,上記被告製品は検査用照明器具であると認められ,本 件意匠に係る物品と同一である。 そして,上記雑誌は2002(平成14)年10月1日及び2003(平成15)年10月1日に発行されたものであるから(乙9,10),この写真に掲載された被告製品の意匠は,本件意匠の意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠であると認められる。 しかしながら,乙9及び10の写真は,上記被告製品を斜め前方から撮影したも のであることから,支持軸体の存否や径は不明であって,後方部材とそれ以外の部分の区別もなく,フィン様のものが10枚程度あるように見えるにすぎないから,乙9及び10の写真のみから,本件意匠と同一又は類似の意匠が開示されているということはできない。 イまた,被告担当者の説明書(乙7,11)によれば,上記被告製品の形 態は下記図面のとおりであるとされ,そうであるとすれば,上記被告製品を手にした者は,下記図面並びに乙9及び10の写真で示される意匠を認識し得ることになる。 しかし れば,上記被告製品の形 態は下記図面のとおりであるとされ,そうであるとすれば,上記被告製品を手にした者は,下記図面並びに乙9及び10の写真で示される意匠を認識し得ることになる。 しかしながら,上記図面並びに乙9及び10の写真で示される上記被告製品の構 成態様を,本件意匠の構成態様と対比すると,①被告製品の後部の中心にある軸体の直径は,フィンに相当するものの直径の半分をはるかに超えており,本件意匠の支持軸体と比べると相当太いこと(本件意匠の具体的構成態様J参照),②本件意匠ではフィンの間隔は中間フィンの厚みの約3倍であるところ(同E及びHの比較によりそのようにいえる。),上記図面ではフィンに相当するもの同士の間隔がそ の厚さよりも狭いこと(同E,H参照),③後端面から電源ケーブルが引き出されていることから,後端面が平滑でない(孔が設けられている)こと(同M参照)などの差異点があると認められる。そして,後端面に電源ケーブルを引き出す孔があること,支持軸体の太さ,フィンの間隔の差異は相当大きなものであり,需要者が容易に気付くことができると認められることからすると,これらの意匠が視覚を通 じて起こさせる美感は,異なると認められる。 ウ以上によれば,乙9及び10の写真によって開示されている意匠を前提 としても,乙7及び11の図面で示される意匠を前提としても,乙7等意匠と本件意匠が類似するということはできず,乙7等意匠により本件意匠の新規性が否定されるとする被告の主張は,理由がないというべきである。 (5) 被告主張の無効理由3について(乙7等意匠及び乙8意匠による創作容易性) 被告は,本件意匠は,乙7等意匠及び乙8意匠に基づいて容易に創作できるものであると主張する。 である。 (5) 被告主張の無効理由3について(乙7等意匠及び乙8意匠による創作容易性) 被告は,本件意匠は,乙7等意匠及び乙8意匠に基づいて容易に創作できるものであると主張する。 しかし,乙8意匠について,タワー型のヒートシンクがどのような物品の放熱部として用いられるものかは明らかでなく,これと他の部材との位置や大きさの関係,あるいはヒートシンクの各部分の具体的な寸法等も明らかでないことは,前記(3) で述べたとおりである。 他方,乙7等意匠と本件意匠とを対比すると,多数の差異があることは前記(4)で述べたとおりであって,仮にこれにタワー型のヒートシンクである乙8意匠を組み合わせたとしても,後端面より電源ケーブルを引き出す孔は差異点として残り,後端面以外から電源ケーブルを引き出し,後端面を平滑にすることが技術的にありふ れていると認めるべき証拠もない以上,乙7等意匠に乙8意匠を組み合わせることによって本件意匠を容易に創作し得るということはできず,この点についての被告主張の無効理由3は理由がないというべきである。 (6) 被告主張の無効理由4について(乙4意匠による新規性欠如)被告は,早期審査に関する事情説明書(乙4)に,被告出願の意匠に対する公 知資料として,ネオアーク株式会社の「バイオレットレーザーダイオード」のカタログを引用しており,次のような製品の形態(乙4意匠)が開示されている(なお,乙4の記載では,上記カタログの発行は平成13年とされる。)。 このカタログの1枚目に,製品の用途として,「光源」とか,「光記録媒体の記録評価,光造形,光化学反応,紫外分光分析,紫外域磁気特性評価」,「高分子新材料評価」と記載されており,仕様として,「レーザー発振波長」や「 1枚目に,製品の用途として,「光源」とか,「光記録媒体の記録評価,光造形,光化学反応,紫外分光分析,紫外域磁気特性評価」,「高分子新材料評価」と記載されており,仕様として,「レーザー発振波長」や「レーザー出力」,「素子」等が記載されていることから,乙4意匠に係る製品は,レーザーの 発振器であって,広義の光源装置に属するものではあっても,検査用照明器具である本件意匠に係る物品とは用途が異なり,物品として同一又は類似であるとはいえない。 また,乙4意匠は,本件意匠のフィンに相当するものが6枚程度あるように見え,これは本件意匠のフィンの枚数(3枚)(基本的構成態様C及び具体的構成態様G) と対比すると,美感を異にする程度の大きな差異があるというべきであるし,乙4意匠には,中心にあると思われる軸体の形状や太さ(本件意匠の具体的構成態様J参照)が不明であることや,後端面から電源ケーブルが引き出されており,後端面が平滑でない(孔が設けられている)(同M)といった差異もあると認められる。 以上のように,乙4意匠には明らかでない点があることや,本件意匠との差異も 相当程度にあって,視覚を通じて起こさせる美感も異なることから,乙4意匠により本件意匠の新規性が否定されるとする被告主張の無効理由4は,理由がないというべきである。 (7) 被告主張の無効理由5について(乙4意匠及び乙8意匠による創作容易性)被告は,本件意匠は乙4意匠及び乙8意匠に基づき,容易に創作できるもので あると主張している。 しかし,乙8意匠について,タワー型のヒートシンクがどのような物品の放熱部として用いられるものかは明らかでなく,これと他の部材との位置や大きさの関係,あるいはヒートシンクの各部分の具体的な寸法等も明らか し,乙8意匠について,タワー型のヒートシンクがどのような物品の放熱部として用いられるものかは明らかでなく,これと他の部材との位置や大きさの関係,あるいはヒートシンクの各部分の具体的な寸法等も明らかでないことは,前記(3)で述べたとおりである。 また,乙4意匠について,本件意匠のフィンに相当するものが6枚程度あるよう に見えるほか,中心にあると思われる軸体の形状や太さが不明であること,後端面から電源ケーブルが引き出されており,後端面が平滑でない(孔が設けられている)ことも,前記(6)で述べたとおりである。 そうすると,乙4意匠と乙8意匠を組み合わせたとしても,本件意匠との差異は多く,本件意匠を容易に創作することができたとは認められないから,被告主張の 無効理由5は,理由がないというべきである。 (8) 被告主張の無効理由6について(乙12意匠による新規性欠如)ア被告が引用する乙12は,平成15年6月16日に発行された意匠公報であるから,これに記載された意匠(乙12意匠)は,本件意匠の意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠であると認められる。 また,乙12意匠に係る物品は「検査用照明器具」であり,本件意匠に係る物品と同一である。 そして,乙12意匠の形態は,別紙「乙12意匠の図面」のとおりであると認められる(乙12)。 イこれによれば,乙12意匠については,①検査用照明器具の後方部材に, 後方に延伸する支持軸体が設けられていること(本件意匠の基本的構成態様A,B),②支持軸体の中間及び後端には,薄い円柱状の,支持軸体よりも径の大きいフィンが複数枚,間隔を空けて設けられていること(同C),③後端フィンは,中間フィンよりも厚いこと(同D,同具体的構成態様Hの一部),④中間フィン及び後端フィンは, 柱状の,支持軸体よりも径の大きいフィンが複数枚,間隔を空けて設けられていること(同C),③後端フィンは,中間フィンよりも厚いこと(同D,同具体的構成態様Hの一部),④中間フィン及び後端フィンは,中心軸を合致させ,かつ,互いに等しい間隔で設置されていること(同E の一部),⑤後端フィン及び中間フィンの外径は,前方部材の最大径と略等しいこ と(同F),⑥後端フィンの後面の縁の全てに面取りが施してあること(同Iの一部),⑦支持軸体は円柱状で,同一径であり,その直径はフィンと比べて細いこと(同Jの一部),⑧中間フィン及び後端フィンの前面の縁は,正面視した場合,直角である(テーパーが設けられていない)こと(同K),⑨中間フィン及び後端フィンの外周面が円柱側面であること(同L)が認められ,これらは本件意匠と共通 すると認められる。 ウしかしながら,別紙「乙12意匠の図面」の右側面図によると,乙12意匠の後端フィンの後面の上側には孔が1つ設けられており,別紙「乙12意匠の図面」の使用状態を示す正面図によれば,この孔は後端フィンを貫通しているほか,中間フィンの同じ位置にも同様の貫通孔が設けられていることが認められ,本件意 匠の後端フィン及び中間フィンに,支持軸体の通過部分以外には貫通孔がなく,その各面は平滑であるから(具体的構成態様M),この点は本件意匠との差異である。 そして,後端フィンの後面の形態は外部から容易に視認することができるもので,使用時にはここから電源ケーブルが引き出されることからすると,この差異が美感に与える影響は大きく,検査用照明器具の放熱部に設けられたフィンの後端面を平 滑にした意匠は本件意匠以外には見当たらないから,上記差異は需要者が着目する点であると認められる。 エそう 美感に与える影響は大きく,検査用照明器具の放熱部に設けられたフィンの後端面を平 滑にした意匠は本件意匠以外には見当たらないから,上記差異は需要者が着目する点であると認められる。 エそうすると,乙12意匠と本件意匠とでは,視覚を通じて起こさせる美感は異なるものと認められるから,乙12意匠によって本件意匠の新規性が否定されるとする被告主張の無効理由6は,理由がないというべきである。 (9) 被告主張の無効理由7(乙12意匠及び乙8意匠による創作容易性)被告は,乙12意匠と乙8意匠の存在によって,本件意匠の創作非容易性が否定される旨主張している。 しかし,乙8の文献からは,タワー型のヒートシンクがどのような物品の放熱部として用いられるものかは明らかでなく,これと他の部材との位置や大きさの関係, あるいはヒートシンクの各部分の具体的な寸法等も明らかでないことは,既に述べ たとおりである。 また,前記(8)で認定したとおり,乙12意匠では,後端フィン及び中間フィンの上側に貫通孔が設けられていることから,この意匠と乙8意匠を組み合わせるためには,乙12意匠において,後端面から電源ケーブルを引き出すのをやめて,後端フィンの後面を平滑にする必要があるが,既に述べたとおり,従前の意匠にこのよ うなものは見当たらず,検査用照明器具の放熱部に設けられたフィンの後端面を平滑にすることが技術的にありふれているということはできないから,本件意匠が創作容易であるということはできず,被告主張の無効理由7は理由がない。 (10) 被告主張の無効理由8(乙12意匠及び乙7等意匠による創作容易性)被告は,乙12意匠と乙7等意匠の存在によって,本件意匠の創作非容易性が 否定される旨主張している。 し い。 (10) 被告主張の無効理由8(乙12意匠及び乙7等意匠による創作容易性)被告は,乙12意匠と乙7等意匠の存在によって,本件意匠の創作非容易性が 否定される旨主張している。 しかし,乙7等意匠と乙12意匠を組み合わせたとしても,後端フィンの後面が平滑な本件意匠の構成態様となることはなく,このような形態がありふれたものといえないことは,既に述べたとおりであるから,乙12意匠と乙7等意匠によって,本件意匠を創作容易とすることはできず,被告主張の無効理由8は理由がない。 (11) まとめ以上より,本件意匠は,意匠登録無効審判により無効にされるべきものとはいえない。 2 争点1(被告製品の意匠は本件意匠に類似するか)について(1) 本件意匠に係る物品と被告製品が同一であることは,当事者間に争いがな いから,以下,本件意匠と被告製品の意匠が類似するかどうかについて検討する。 (2) 本件意匠の構成態様本件意匠の構成態様は,前記1(2)アで認定したとおりである。 (3) 本件意匠の要部ア登録意匠と対比すべき意匠とが類似であるか否かの判断は,需要者の視 覚を通じて起こさせる美感に基づいて行う(意匠法24条2項)ものとされており, 意匠を全体として観察することを要するが,この場合,意匠に係る物品の性質,用途及び使用態様,並びに公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して,取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,登録意匠と対比すべき意匠とが,意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを重視して,観察を行うべきである。 そして,本件意匠に係る物品の説明によれば,本件意匠に係る物品である検査用照明器具は,工場等 べき意匠とが,意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを重視して,観察を行うべきである。 そして,本件意匠に係る物品の説明によれば,本件意匠に係る物品である検査用照明器具は,工場等において製品の傷やマーク等の検出(検査)に用いられるものであるから,そのような検査を必要とする製品の製造業者等によって購入されるものであると推認される。したがって,意匠の類否判断における取引者・需要者は,そのような製造業者等である。 そこで,このような需要者の観点から,本件意匠の要部について検討する。 イ公知意匠 平成15年6月16日に発行された意匠公報(乙12)において,乙12意匠(別紙「乙12意匠の図面」参照)が開示されていた。そして,乙12意匠は,前記1(8)イで認定したとおり,本件意匠の基本的構成態様AないしDと同じ 構成態様を備えているほか,本件意匠の具体的構成態様E,H,I及びJの一部並びにF,K及びLと同じ構成態様を備えている。 そうすると,以上の構成態様は,検査用照明器具の物品分野の意匠において,本件意匠の意匠登録出願前に広く知られた形態であったと認められる。 他方で,後端フィン及び中間フィンの各面が,支持軸体の通過部分以 外には貫通孔がなく,平滑であるという構成態様(同M)は,乙12意匠においても開示されておらず,前記1(8)で述べたとおり,検査用照明器具においてそのような構成態様を備えたものは公知意匠として存在していなかった(甲14で開示されている意匠においても,後端フィン及び中間フィンの上側に貫通孔が設けられている。)。この点,乙8意匠はタワー型のヒートシンクの意匠であり,その後端面は 平滑であるが,前記1(3)で判示したとおり,これがどのような物品の放熱部と び中間フィンの上側に貫通孔が設けられている。)。この点,乙8意匠はタワー型のヒートシンクの意匠であり,その後端面は 平滑であるが,前記1(3)で判示したとおり,これがどのような物品の放熱部として 用いられるものかは明らかでなく,これと他の部材との位置や大きさの関係,あるいはヒートシンクの各部分の具体的な寸法等も明らかでないし,そもそも乙8の文献はヒートシンクに関する一般的説明をしたものにすぎないから,要部の認定に当たって参酌すべき公知意匠というべきものとはいえない。 そして,前記1で判示したとおり,本件意匠の具体的構成態様Mは,その意匠登 録出願前の公然知られた意匠に基づき,容易に創作することができたものとはいえないから,公知意匠にない新規な創作部分であると認められる。 ウ意匠に係る物品の性質,用途,使用態様等一定の機能及び用途を有する「物品」を離れての意匠はあり得えないから,部分意匠においても,部分意匠に係る物品において,意匠登録を受けた部分がどの ような機能及び用途を有するものであるかを,その類否判断やその前提となる要部認定の際に参酌すべき場合がある。 このような観点から検討すると,本件意匠に係る物品は検査用照明器具でありLED等を内蔵するところ,LEDを使用すると熱を発生し,器具内の温度が上昇することから,その放熱(設計)の必要性が指摘されている(甲21,22,24な いし25の2)。そして,本件意匠はその放熱部の意匠であり,特にそこに設けられたフィンは放熱するための部材(放熱フィン)であるから,放熱を必要とする検査用照明器具の需要者は,放熱効率という観点から,本件意匠の部材の形態や配置の状況に着目すると考えられ,具体的には,放熱部である後方部材が前方部材の延 材(放熱フィン)であるから,放熱を必要とする検査用照明器具の需要者は,放熱効率という観点から,本件意匠の部材の形態や配置の状況に着目すると考えられ,具体的には,放熱部である後方部材が前方部材の延伸上にあること,放熱部である後方部材が,前方部材と同程度の大きさ(径)であ ること,複数枚のフィンが間隔を空けて配置されていること,フィンよりも支持軸体の方が径が小さく,支持軸体の貫通孔以外のフィンの部分が放熱に寄与することに着目すると思われる。 また,前記1で検討した公知意匠の内容に照らすと,フィンの枚数,間隔及び厚みを変更したり(中間フィンと後端フィンの厚みの関係も含む。),フィンに面取 りを加えたり,支持軸体の径を変更したりすることは,ありふれた手法というべき であって,需要者がそのわずかな違いに着目するとは考えられないが,需要者が放熱を重視する場合,少なくとも,フィンの枚数や厚み,支持軸体とフィンの径の関係,フィンの間隔とフィンの径の関係が大きく変われば,受ける美感は異なってくると考えられる。 他方,乙12意匠等の公知意匠では,後端面(後端フィンの後面)から電源ケー ブルが引き出されており,そのために後端フィンや中間フィンの上側に貫通孔が設けられ,又は後端フィンの中心部に孔が設けられていたところ,電源ケーブルの引き出し位置がどこであるかは,検査用照明器具としての使用態様に関わることであるから,後端フィン及び中間フィンについて,支持軸体の通過部分以外に貫通孔がなく,その各面が平滑である点は,本件意匠において,公知意匠にはない,需要者 の注意を惹く点であると認められる。 エ要部の認定以上によれば,公知意匠との関係や,需要者が着目しその注意を惹くという観点から,前記 意匠において,公知意匠にはない,需要者 の注意を惹く点であると認められる。 エ要部の認定以上によれば,公知意匠との関係や,需要者が着目しその注意を惹くという観点から,前記基本的構成態様及び具体的構成態様を総合し,以下の点を本件意匠の要部とするのが相当である。 前端面に発光部のある検査用照明器具に設けられた後方部材である。 後方部材の中心には,検査用照明器具の前方部材の後端面より後方に延伸する支持軸体が設けられている。 支持軸体には,薄い円柱状の中間フィン2枚及び後端フィン1枚が設けられている。 後端フィンは,中間フィンよりも厚くなっている。 支持軸体の径は,フィンの径の5分の1程度である。 中間フィン及び後端フィンの径は,前方部材の最大径とほぼ同じである。 フィン相互の間隔は,フィンの径の8分の1程度である。 中間フィン及び後端フィンには,支持軸体の通過部分以外に貫通孔は なく,その各面は平滑である。 (4) 被告製品の構成態様別紙「被告製品の図面」及び弁論の全趣旨によれば,被告製品の構成態様は,別紙「裁判所認定の構成態様」の「イ号物件」ないし「ヘ号物件」欄記載のとおりと認められる(符号は原告の主張をベースにしているが,構成態様の内容は,原告 も異論がないとしている別紙「被告主張の構成態様」の内容等も踏まえ,一部変更,付加した。)。なお,「共通」とあるのは,「本件意匠」欄記載の構成態様と同じ構成態様であるという意味である。 (5) 本件意匠とイ号物件ないしハ号物件の意匠との類否ア本件意匠の要部(前記(3)いし)と前記(4)で認定した被告製品 記載の構成態様と同じ構成態様であるという意味である。 (5) 本件意匠とイ号物件ないしハ号物件の意匠との類否ア本件意匠の要部(前記(3)いし)と前記(4)で認定した被告製品 の構成態様とを対比すると,イ号物件ないしハ号物件については,中間フィンが3枚であること(同参照),支持軸体の径がフィンの径の3分の1強であること(同参照),フィン相互の間隔がフィンの径の約10分の1ないし約6分の1であること(同参照),イ号物件及びハ号物件については,後端フィンの後面中心にねじ穴が1箇所あり,ロ号物件については,後端フィンを貫通するねじ穴が2箇所あ って,その後面又は各面が平滑でないこと(同参照)といった差異点があり,その余は共通点であると認められる。 イまず,中間フィンの枚数,支持軸体とフィンの径の関係,フィンの間隔とフィンの径の関係について,大きく相違すれば異なる美感を生じさせる場合があることは前述したところであるが,本件意匠とイ号物件ないしハ号物件の各意匠と の差異はわずかであり,格別異なる美感を生じさせるとまでは認められない。 ウ貫通孔はなく,その各面は平滑であるものの,後端フィンについては,ねじ穴又は貫通孔があり,その後面又は両面が平滑でない点で相違する。 しかしながら,イ号物件及びハ号物件については,後端フィンの後面中心にねじ 穴が設けられているため,ねじ穴自体は支持軸体の中にあって,中間フィンに貫通 孔はなく,ロ号物件については,後端フィンの左右対称位置にねじ穴があって,後端フィンは貫通しているものの,中間フィンに貫通孔は存しない(別紙「被告製品の後端フィンの後面に設けられたねじ穴に関する意匠(構成態様)」参照)。 需要者が検査用照 右対称位置にねじ穴があって,後端フィンは貫通しているものの,中間フィンに貫通孔は存しない(別紙「被告製品の後端フィンの後面に設けられたねじ穴に関する意匠(構成態様)」参照)。 需要者が検査用照明器具の商品としての特長を把握しようとする際には,正面,あるいは斜め前方,斜め後方から見て,発光部の構造,放熱部の構造,両者の構造 的関係を把握しようとすると考えられ,この場合,後端フィンのみならず中間フィンにも貫通孔のある乙12意匠のような製品であれば,容易に貫通孔の存在を認識するのに対し,イ号物件ないしハ号物件の場合,正面,あるいは斜め前方から観察した程度では,ねじ穴の存在を認識することはなく,後方から観察した場合に初めて後端フィンのねじ穴の存在を認識すると考えられ,ねじ穴があるという機能の違 いを認識することはあっても,格別これを美感の違いとして認識することはないと思われる。 エアないしウを総合すると,本件意匠の要部である前記(3)とイ号物件ないしハ号物件の構成態様とを対比すると,差異点は存するものの,いずれも細部といえる点であって,需要者に視覚を通じて起こさせる美感が異なると いえるような大きな差異点はなく,基本的な構造としてはむしろ共通点が多いから,イ号物件ないしハ号物件の意匠は,いずれもこれを全体として観察した場合,本件意匠と共通の美感を生じさせるものであって,本件意匠に類似するということができる。 オ以上より,被告がイ号物件ないしハ号物件を製造,販売したことは,本 件意匠権の侵害となる。 (6) 本件意匠とニ号物件ないしヘ号物件の意匠との類否ア本件意匠の要部(前記(3)エ)と前記(4)で認定した被告製品の構成態様とを対比すると,ニ号物件ないしヘ号物件については,支持軸体の径が 本件意匠とニ号物件ないしヘ号物件の意匠との類否ア本件意匠の要部(前記(3)エ)と前記(4)で認定した被告製品の構成態様とを対比すると,ニ号物件ないしヘ号物件については,支持軸体の径がフィンの径の4割程度であること(同参照),フィン相互の間隔がフィンの径の 約7分の1ないし約5分の1であること(同参照),ニ号物件及びヘ号物件につ いては,後端フィンの後面中心にねじ穴が1箇所あり,ホ号物件については,後端フィンを貫通するねじ穴が2箇所あって,その後面又は両面が平滑でないこと(同参照)といった差異点があり,その余は共通点であると認められる。 イ支持軸体とフィンの径の関係,フィンの間隔とフィンの径の関係が大きく相違すれば異なる美感を生じさせる場合もあるが,本件意匠とニ号物件ないしヘ 号物件の各意匠との差異はわずかであり,異なる美感を生じさせるものでないことは,イ号物件ないしハ号物件について述べたのと同じである。 また,後端フィンにねじ穴があり,平滑でない点が,本件意匠と格別の美感の違いを生じさせないことも,イ号物件ないしハ号物件と同じである。 ウしかしながら,本件意匠では,中間フィン及び後端フィンの外周面が円 柱側面である(本件意匠の具体的構成態様L)のに対し,ニ号物件ないしヘ号物件の外周面に,円弧の一部を切り取ったフラット面があることは(ニ号物件ないしヘ号物件の構成態様l4ないしl6),視覚的に強い印象を与える。 また,本件意匠では,フィンの前面の縁が正面視で直角であるところ(本件意匠の具体的構成態様K),ここを直角とするかわずかにテーパーを設けるかはありふ れた差異というべきであるが,ニ号物件ないしヘ号物件については,フィンの前面の縁に程度の大きい あるところ(本件意匠の具体的構成態様K),ここを直角とするかわずかにテーパーを設けるかはありふ れた差異というべきであるが,ニ号物件ないしヘ号物件については,フィンの前面の縁に程度の大きいテーパー(後端フィンの厚みの約42.9%,中間フィンの厚みの約60%)があることも(ニ号物件ないしヘ号物件の構成態様k4ないしk6),強い印象を与える。 検査用照明器具の後方部材である本件意匠は,フィンと支持軸体のみで構成され ており,需要者が最初に目にするのはフィンであるから,基本的に薄い円柱状であって(前記(3)エの縁にわずかな面取りがある程度で(具体的構成態様I),それ以外の縁は正面視で直角であり(同K),外周面は円柱側面である(同L)という,単純な形態のフィンを有する本件意匠と対比した場合,ニ号物件ないしヘ号物件のフィンの形状は特徴的であり,需要者に別異の視覚的印象 を与えるというべきである。 エ以上によれば,全体として観察した場合,ニ号物件ないしヘ号物件の意匠は,需要者に,本件意匠とは異なる美感を生じさせると考えられるから,両者の意匠は類似せず,被告がニ号物件ないしヘ号物件を製造,販売することは,本件意匠権の侵害とはならない。 (7) 小括 以上より,被告がイ号物件ないしハ号物件を製造,販売した行為については,不法行為が成立すると共に,被告の不当利得返還義務が生ずるが,ニ号物件ないしヘ号物件に係る原告の主張は理由がない。 3 争点3(被告が本件意匠権を侵害するおそれがあるか)について被告は,イ号物件ないしハ号物件の製造,販売を中止し,ニ号物件ないしヘ号物 件に切り替えたことから,その製造,販売等の差止めの必要性がないと主張している。 確かに,上記 るか)について被告は,イ号物件ないしハ号物件の製造,販売を中止し,ニ号物件ないしヘ号物 件に切り替えたことから,その製造,販売等の差止めの必要性がないと主張している。 確かに,上記製造,販売の中止は,2年近く前に,原告から本件意匠権を侵害することを指摘されて,自発的にされたものである(甲18,19,乙5)が,被告はイ号物件を平成22年6月から,ハ号物件を平成23年11月からそれぞれ長年 にわたって製造,販売していたのであるし,本件訴訟においては,イ号物件ないしハ号物件の意匠は本件意匠と類似せず,本件意匠権は無効であるとして争ってきたこと等に照らせば,被告がイ号物件ないしハ号物件を製造,販売等するおそれが全く消滅したとまでいうことはできない。 したがって,被告がこれらを製造,販売等するおそれがあると認められるから, その差止めを認めるのが相当である。 なお,被告がイ号物件ないしハ号物件の製造・販売の中止から2年近くが経過した現時点において,その製品の在庫を有していることを認めるに足りる証拠はないから,原告による被告製品の廃棄請求には理由がない。 4 争点4(原告の損害額,原告の損失・被告の利得の額)について (1) イ号物件ないしハ号物件の売上げ ア乙17及び22によれば,イ号物件ないしハ号物件の売上額は,次のとおりと認められる。 イ号物件販売開始(平成22年6月28日)から平成24年12月まで ●(省略)● 平成25年1月から平成26年3月まで ●(省略)●平成26年4月から販売終了まで ●(省略)● ロ号物件販売開始(平成27年6月17日)から販売終了まで ●(省略)● ハ 月から平成26年3月まで ●(省略)●平成26年4月から販売終了まで ●(省略)● ロ号物件販売開始(平成27年6月17日)から販売終了まで ●(省略)● ハ号物件 販売開始(平成23年11月21日)から平成24年12月まで ●(省略)●平成25年1月から平成26年3月まで ●(省略)●平成26年4月から販売終了まで ●(省略)●イ平成26年1月以降の売上額 原告は平成25年12月までの売上げに関して不当利得返還請求をするとともに,平成26年1月以降の売上げに関して不法行為に基づく損害賠償請求をしている。そこで,平成25年12月まで及び平成26年1月以降の売上げを確定する必要がある。ところが,被告は年度ごとの売上げや経費を開示するにとどまっているため(乙17),上記各金額を推計するしかないところ,原告は平成25年1月 から3月までの売上げが平成26年1月から3月までの売上げと同じであるという形で推計している。しかし,乙17の「⑧対象物件に係る月別利益」の表には,イ号物件ないしハ号物件の各売上額までは記載されていないものの,これらの物件の月ごとの売上合計額が記載されているから,この表により平成26年1月から3月までの売上額を認定し,これを上記アで認定した金額から控除するなどして,必要 な売上額を確定するのが相当である。そして,この表によれば,平成26年1月の 売上合計額は●(省略)●,同年2月の売上合計額は●(省略)●,同年3月の売上合計額は●(省略)●(以上の合計額は●(省略)●)であると認められる。 この金額を上記アの平成26年4月以降の各売上額の合計額に足すと,平成26年1月以降の売上額が確定され 略)●,同年3月の売上合計額は●(省略)●(以上の合計額は●(省略)●)であると認められる。 この金額を上記アの平成26年4月以降の各売上額の合計額に足すと,平成26年1月以降の売上額が確定されるところ,その金額は合計●(省略)●となる。 ウ平成25年12月までの売上額 上記アの平成26年3月までのイ号物件及びハ号物件の各売上額から上記イ記載の●(省略)●(これはイ号物件及びハ号物件の売上額である。)を控除すると,●(省略)●となり,これが平成25年12月までのイ号物件及びハ号物件の売上額である。 (2) 平成26年1月以降のイ号物件ないしハ号物件の販売による被告の利益額 乙17の「⑧対象物件に係る月別利益」の表によれば,平成26年1月以降のイ号物件ないしハ号物件の販売に係る費用(材料費,外注費)は,合計●(省略)●(費用の総額から平成25年12月までの材料費を控除した金額)であると認められる。 この金額を上記(1)で認定した平成26年1月以降の売上額から控除すると, ●(省略)●となり,これが同月以降の被告の利益額である。 (3) 本件意匠の寄与度ないし推定覆滅事由ア被告は,本件意匠の被告製品の売上げ(利益)に対する貢献や寄与は低く,その寄与率は0.2%にも満たないと主張し,推定覆滅事由の存在についても主張している。これに対し,原告は本件意匠の寄与度は100%であると主張し, 被告の主張を争っている。 イそこで本件意匠の寄与度ないし推定覆滅事由について検討する。 まず,本件意匠に係る物品は検査用照明器具で,本件意匠はその後方部材の意匠であるところ,イ号物件ないしハ号物件全体の中で,上記後方部材に相当する部分が占める割合は,正面視における面積比において,最大でも ,本件意匠に係る物品は検査用照明器具で,本件意匠はその後方部材の意匠であるところ,イ号物件ないしハ号物件全体の中で,上記後方部材に相当する部分が占める割合は,正面視における面積比において,最大でも4割程度と 考えられる(乙18参照)。そして,各物件には,本件意匠に係る物品と同じく, 前方部材には光導出ポート等が設けられ,LED等が内蔵されていると考えられるから,イ号物件ないしハ号物件全体の製造原価の中で後方部材の製造原価が占める割合は,かなり低いと考えられる。 また,既に検討したとおり,イ号物件ないしハ号物件の意匠と本件意匠には種々の共通点がみられるものの,これらの共通点に係る構成態様は,検査用 照明器具の物品分野の意匠において,本件意匠の意匠登録出願前に広く知られた形態であり,本件意匠の要部とはされない部分も多い。したがって,イ号物件ないしハ号物件が部分意匠である本件意匠に類似するとしても,これが需要者の購買動機に結びつく度合いは低いといわざるを得ない。 原告は,本件意匠の実施品とされる「第2世代HLVシリーズ」の製 品の販売開始に当たって,「従来品に比べ2倍以上明るい」こと,「従来より均一度3倍アップ,明るさも26%アップした」ことを強調し,その特徴として,「低消費電力・低発熱で環境にやさしい」ことや,「長寿命でメンテナンスコストを削減」したこと,「軽量・小型設計で場所を取らず省スペース」であることなど,製品自体の性能や機能等を強調する一方で,本件意匠には言及すらしていない(甲1 5,16)。また,原告は同製品が掲載されたカタログにおいて,高輝度スポット照明に関し,電源ケーブルを検査用照明器具の側周面から引き出した図面を掲載しつつも,その宣伝文句として,「明るさと 5,16)。また,原告は同製品が掲載されたカタログにおいて,高輝度スポット照明に関し,電源ケーブルを検査用照明器具の側周面から引き出した図面を掲載しつつも,その宣伝文句として,「明るさと均一度をアップした」ことや,「軽量・コンパクト設計,しかも低消費電力で長寿命」であることを記載するとともに,製品の説明において,「高コントラスト撮影が可能」,「従来比2倍の光量アップを 実現」などと,製品自体の性能や機能等を強調しており(甲8,乙6),甲17の製品のカタログにおいても同様であった(甲17)。 被告も,製品のカタログにおいて,「鏡面ワークに最適軽量・コンパクト」ということや,「パッケージ・液体・印字などの透過検査に最適」であることを強調しており(甲5),乙23添付の他のカタログにおいても同様である(乙23)。 以上によれば,検査用照明器具の需要者は,検査を必要とする製造業者等である ことから,イ号物件ないしハ号物件を購入するに当たり,主に検査用照明器具それ自体の性能や機能等に着目すると認められ,本件意匠との類似性が購買の動機となる程度は高くないといわざるを得ない。 被告の主張について被告は,イ号物件ないしハ号物件の意匠と本件意匠との類似性の程度は低 いなどと主張している。しかし,前記2(5)で認定・判示したとおり,両意匠は基本的構成態様においてほぼ共通しているし,本件意匠の要部に関しても共通性が認められる一方で,被告が主張する差異点に係る構成態様が美感に与える影響は小さい。 したがって,被告が主張する類似性の低さを本件意匠の寄与度や推定覆滅事由として考慮することはできない。 また,被告は原告の製品とイ号物件ないしハ号物件との価格差に触れ,被告(製 小さい。 したがって,被告が主張する類似性の低さを本件意匠の寄与度や推定覆滅事由として考慮することはできない。 また,被告は原告の製品とイ号物件ないしハ号物件との価格差に触れ,被告(製品)の方が価格競争力があるとして,それを推定覆滅事由として主張している。しかし,被告製品の標準価格はイ号物件が3万円,ロ号物件が5万円であり,これに対応する原告の製品の価格表記載の価格は5万8000円であった(乙19,20,弁論の全趣旨)。これらを単純に比較すると,被告製品の方が安いが,被告による と,実売平均価格はさらに安いとのことであり(乙18によると,イ号物件が●(省略)●,ロ号物件が●(省略)●),原告の製品の実売価格がいくらかは不明であるから,上記原告の価格表記載の価格だけを前提として,推定覆滅事由があると認めることはできない。 さらに,被告は検査用照明器具全体の大きさについて,被告製品の方が小さいこ とも指摘している。確かに,被告製品の全長と外径は,それぞれイ号物件が52㎜,22㎜,ロ号物件が55㎜,21㎜,ハ号物件が52.5㎜,24㎜である(甲5)のに対し,これに対応する原告の製品の全長と外径は62㎜,22㎜又は24㎜(乙19)であって,被告製品の方が若干小型であり,また前記認定の原告と被告の宣伝内容等によれば,製品の小型化は重要な要素であると認められるが,他方で,明 るさや均一度等が需要者にとって重要な要素と認められるから,上記差異の程度も 踏まえると,被告指摘の上記の点が直ちに需要者の購買動機に影響を与えるとまでいうことはできず,推定覆滅事由があると認めることはできない。 原告の主張について原告は意匠と機能が一致する場合も多々あるとし,本件意匠が放熱性, 購買動機に影響を与えるとまでいうことはできず,推定覆滅事由があると認めることはできない。 原告の主張について原告は意匠と機能が一致する場合も多々あるとし,本件意匠が放熱性,高輝度性を感じさせる機能美の意匠であるなどと主張する。確かに,本件意匠に係る 形態は,電源ケーブルがどこから引き出されるかということと密接不可分のものであって,後端フィン及び中間フィンの孔の有無は,フィンの放熱効率とも関連し得るものであるということはできる。しかし,本件はあくまでも意匠権侵害を理由とする請求であるから,その損害額を認定するに当たって,イ号物件ないしハ号物件の放熱性や輝度性といった性能や機能等を考慮することはできない。また,前記認 定のとおり,原告自身,原告の製品を販売するに当たって,本件意匠には言及すらしておらず,原告主張の機能美を強調していたわけでもない。したがって,本件で原告の上記主張を上記判示したこと以上に考慮することはできない。 以上のことを総合すると,イ号物件ないしハ号物件の売上げに対する本件意匠の寄与度は小さいというべきであり,以上認定・判示したことを考慮する と,本件意匠の寄与度は,イ号物件ないしハ号物件のいずれについても●(省略)●と認めるのが相当である。他方で,被告が推定覆滅事由として主張していることを採用することはできない。 (4) イ号物件及びハ号物件の意匠の実施に対し受けるべき実施料の率原告は平成25年12月までのイ号物件及びハ号物件の売上げに関しては不当 利得返還請求をしているところ,上記(3)で認定・判示した事情を踏まえると,原告が被告による本件意匠に類似するイ号物件及びハ号物件の意匠の実施に対し受けるべき実施料の率は,イ号物件及びハ号物件のいずれについ 請求をしているところ,上記(3)で認定・判示した事情を踏まえると,原告が被告による本件意匠に類似するイ号物件及びハ号物件の意匠の実施に対し受けるべき実施料の率は,イ号物件及びハ号物件のいずれについても,通常の実施料率●(省略)●に,本件意匠の寄与度を乗じた●(省略)●と認めるのが相当である。 (5) まとめ ア不法行為に基づく損害賠償請求 意匠法39条2項に基づく原告の損害額は,平成26年1月以降の被告の利益額に,本件意匠の寄与度●(省略)●を乗じた246万6641円(1円未満四捨五入)である。そして,原告は本件訴訟の提起・追行を原告訴訟代理人に委任したところ(当裁判所に顕著な事実),被告の本件意匠権侵害と相当因果関係のある弁護士費用は25万円と認められる。 イ不当利得返還請求(イ号物件及びハ号物件関係)平成25年12月までの原告の損失・被告の利得額は,同月までのイ号物件及びハ号物件の売上額の●(省略)●に相当する17万8746円と認められる。 なお,原告は被告が「悪意の受益者」(民法704条前段)であると主張しており,ここで「悪意」とは法律上の原因のないことを知っていたという意味と解され るが,被告がイ号物件及びハ号物件の販売開始時から本件意匠権の存在等を認識していたことを認めるに足りる証拠はないし,原告が被告に対して本件意匠権の侵害を主張する内容証明郵便(甲18)を送付したことによって,直ちに被告が「悪意」(民法704条前段)になったとまで認めることは困難であるし,被告がイ号物件及びハ号物件の販売終了までに「悪意」となったことを認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。 もっとも,原告による被告の不当利得に対する支払済みまでの年5分 物件及びハ号物件の販売終了までに「悪意」となったことを認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。 もっとも,原告による被告の不当利得に対する支払済みまでの年5分の金員の支払請求は,遅延損害金を請求する趣旨とみることができる。そして,原告は被告に対して第6準備書面を平成30年3月5日に送付することによって平成24年12月までの被告の不当利得の返還を請求し,また第9準備書面を平成30年8月1日 に送付することによって平成25年1月から12月までの被告の不当利得の返還を請求したと認められる(当裁判所に顕著な事実)。そして,上記原告の損失・被告の利得額である17万8746円のうち,平成24年12月までの分は13万8096円,平成25年の分は4万0650円である。 (計算式) 平成24年12月までの分 ●(省略)●=13 万8096 円(1円未満 四捨五入。以下同じ。) 平成25年の分 ●(省略)●=4 万0650 円以上より,原告の遅延損害金の支払請求は,不当利得の内金13万8096円に対する平成30年3月6日から,及び内金4万0650円に対する平成30年8月2日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を請求する限度で理由があるということができる。 5 以上より,原告の請求は主文第1項及び第2項の限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条1項本文を,仮執行の宣言につき同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。なお,主文第1項については,仮執行の宣言を付すのは相当でないから,これを付さない。 大阪地方裁判所第21民事部 主文 き同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。なお,主文第1項については,仮執行の宣言を付すのは相当でないから,これを付さない。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官谷有恒 裁判官野上誠一 裁判官島村陽子

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