昭和59(ネ)380 約束手形金請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和59年9月19日 大阪高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。      控訴費用は控訴人の負担とする。          事    実  控訴人は「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は一、二審 とも

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判決文本文5,817 文字)

主文本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実控訴人は「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。 当事者双方の主張は原判決事実摘示と同一であるからこれをここに引用する。 証拠関係は原当審記録中の各証拠目録記載のとおりであるからこれをここに引用する。 理由1 被控訴人が別紙目録記載の本件約束手形を現に所持していることは被控訴人が本訴において甲第一号証の一ないし三(本件手形)を提出していることによつてこれを認めることができる。 また、甲第一号証の一ないし三の記載に成立に争いない同第六号証の一、二を総合すると、被控訴人は本件手形の最終被裏書人兼所持人として支払期日に支払場所(尼崎浪速信用金庫神戸支店)に支払のため本件手形を呈示したが、これを拒絶されたことが認められる。 次に、第二裏書欄の裏書人「A」の記載が控訴人の自署であることにつき当事者間に争いがない甲第一号証の二(本件手形の裏面)に原当審における控訴人本人尋問の結果を総合すると、控訴人は本件手形の第二裏書人として拒絶証書作成義務免除のうえ本件手形の裏書をしたことが認められる(なお、成立に争いない甲第三号証によると「A」は控訴人の通名であることが明らかである。)。控訴人は右裏書署名名下の「A」と記された印影部分を否認しているが、約束手形における裏書行為の方式は署名または記名捺印によることが法定されているだけであつて、署名の場合は捺印を要件としていないから前記押印が控訴人の意思によるものか否かは前記判断を左右することはない(手形法七七条、一三条一項、八二条)。のみならず、原審証人Bの証 されているだけであつて、署名の場合は捺印を要件としていないから前記押印が控訴人の意思によるものか否かは前記判断を左右することはない(手形法七七条、一三条一項、八二条)。のみならず、原審証人Bの証言によると、控訴人の前記裏書自署は、本件手形の振出人有限会社大神商事(代表者C。ただし、控訴人が実質上経営していた会社)や第一裏書人D(控訴人の義弟すなわち控訴人の実母Eとその夫Cとの間の養子。成立に争いない甲第五号証参照。)の手形上債務を保証する趣旨で富士産商株式会社代表者Bの面前でなされたものであるが、そのさい控訴人が印を持ち合わせていなかつたので、後日、Bが控訴人の黙示の承諾のもとで押印を代行したものであることが認められるから、いずれにしても、控訴人の本件手形上債務負担行為としての裏書行為はこれを認めるに十分てある。 2 ところで、前記認定の本件手形上の記載を通覧すると、その第一、第二裏書欄の各被裏書人部分(それぞれ「D」「A(控訴人)」と記載されている部分)が抹消されていることが認められるところ、控訴人はこの点を引いて右のような被裏書人の記載の抹消によつて当該裏書欄全部が抹消されたことになるとして控訴人の裏書人としての責任がない旨主張する。 そして、右主張は、第一に、被控訴人の本件手形上の権利帰属の存否すなわちいわゆる資格授与的効力(裏書の連続)の有無について、第二に、控訴人の本件手形上債務負担行為(前記認定の第二裏書欄の裏書行為)の有効性についての疑義を主張しているものと解される。 (一) そこで考えるに、手形法七七条が準用する同法一六条一項三段が約束手形の裏書連続の関係では記載せざるものとみなすことを定めた「抹消シタル裏書」とは本来裏書署名(または記名捺印)と被裏書人の記載との全体(ただし、白地式裏書の場合は前者のみ)を指して 一項三段が約束手形の裏書連続の関係では記載せざるものとみなすことを定めた「抹消シタル裏書」とは本来裏書署名(または記名捺印)と被裏書人の記載との全体(ただし、白地式裏書の場合は前者のみ)を指しているのであつて、本件のような被裏書人欄だけのいわば一部抹消について規定したものでないことはその文言および手形法の基本法理に照らして明白である。ただ、解釈上、裏書人の権利取得者(被裏書人)指定の重要性に着目するとこのような被裏書人部分の抹消は裏書人欄を含めた当該裏書欄全体の抹消と解して前記法条項を適用すること(控訴人主張の全部抹消説)にも相応の合理性があるように思われないでもないが、被裏書人部分のみが抹消され裏書人部分がそのまま残されているような抹消の仕方を後者も含めた全部の抹消と同視することは、その解釈自体、その記載から看取しうる抹消行為者の意思に反する点のあることは否みえないところであつて、たとえ手形行為解釈のさいに要請される画一性、厳格性等の原則を考慮しても、なお擬制にすぎるというべきである。 <要旨>結局、このように裏書人署名部分を残し被裏書人部分のみが抹消されている場合には、全部抹消の場合と</要旨>区別して、被裏書人部分のみを記載がなかつたものとみなすのが当該抹消行為の解釈として最も合理的であると考えられる(手形法一六条一項三段の類推適用。白地式裏書説。同旨の見解を前提としたと解しうる最高裁昭和三六年一一月一〇日第二小法廷判決民集一五巻一〇号二四六六頁参照。なお、控訴人の指摘する最高裁昭和四九年二月二八日第一小法廷判決民集二八巻一号一二一頁は所論のような全部抹消説を採用したものではない。また、同じく控訴人の挙げる上来の説示と見解を異にする東京高裁昭和四七年九月五日判決判例時報六七七号九八頁の見解には左袒し難い。)。 もつとも、叙上 は所論のような全部抹消説を採用したものではない。また、同じく控訴人の挙げる上来の説示と見解を異にする東京高裁昭和四七年九月五日判決判例時報六七七号九八頁の見解には左袒し難い。)。 もつとも、叙上のような見解に従うと、最終被裏書人欄既記載の手形を盗取した者は当該被裏書人欄を抹消することにより容易に裏書の連続性を作出することがてきることとなり、不当であると考えられないではないが、この点については、仮に全部抹消説によつても、盗取者は直前の被裏書人の名を冒用して新らたに裏書を偽造すれば、一挙手一投足の労を加えるだけで、裏書の連続を作出することが可能であることに想到すると、前記の点も前示の見解を左右するものではないと解される(なお、裏書の連続の有無の判断は形式的になされるべきで、偽造の裏書もこの関係では有効なものと解されることについては最高裁昭和三八年五月二一日裁判集民事六六号一一三頁等および前掲最高裁昭和四九年二月二八日判決の事案参照)。 なお、もともと本件手形上このような二つの被裏書人部分の記載とその抹消が作出されたのは次のような事情によることが認められる。すなわち、原本の存在および成立に争いない同第二号証の一、様式体裁からして本訴が提起される直前の昭和五五年一一月初旬前後頃の本件手形をコピーしたものと認められる同号証の二、成立に争いない同号証の三、様式体裁により真正に成立したと認める同第四号証、成立に争いない同第五号証によると、それは、被控訴代理人方法律事務所の事務員大倉永光が本訴提起直前の頃被控訴人から預かり保管中の本件手形の裏書の連続性を整えるつもりで手形法上の知識がないままに、それまでそれぞれ被裏書人欄白地の裏書としてそのままでも裏書の連続が認められる第一、第二裏書欄の各被裏書人記載欄に誤つてそれぞれ各裏書人の自己宛名義を記入し、 えるつもりで手形法上の知識がないままに、それまでそれぞれ被裏書人欄白地の裏書としてそのままでも裏書の連続が認められる第一、第二裏書欄の各被裏書人記載欄に誤つてそれぞれ各裏書人の自己宛名義を記入し、後に被控訴代理人からそれではかえつて裏書の連続を欠く旨の指摘叱正を受けたため、元に復すべく各記入部分を抹消したことによるものであることが認められ、前記偽造の場合と趣きを異にすることも明らかである。 以上のとおりであるから、本件手形の第一、第二裏書欄はいずれも被裏書人の記載とその抹消があるにもかかわらず、これを白地式裏書とみなすべきであり、そうすると、被控訴人は裏書の連続ある本件手形の最終被裏書人として適法な所持人と推定されうるものである(手形法七七条、一六条一項一段、四段)。 (二) 次に、第二の点についても、控訴人の裏書行為(債務負担行為)が有効に存することは前記認定のとおりであつて、たとえ控訴人の裏書自署のある第二裏書欄の被裏書人部分に前示のような事情に基く記入、抹消の記載があるからといつて、それによつて控訴人の裏書行為自体の有効性が左右されるいわれはない。 このような手形上債務負担行為としての裏書行為の有効性を検討する場合に、本来手形所持人の形式的権利帰属資格の存否(裏書の連続の有無)の判断にさいし考慮すべき前記全部抹消説を援用または転用することは、同説の当否を検討するまでもなく、それ自体失当であるといわなければならない。 以上のとおりであるから、控訴人の前記主張はいずれも採用することはできない。 3 次に、控訴人は、控訴人の後者であり被控訴人の前者である富士産商(第四裏書人)に対する原因関係消滅事由を人的抗弁としてるる主張しているが、被控訴人が本件手形取得当時控訴人主張のような控訴人またはDと冨士産商間の原因関係消滅事由を知つて 訴人の前者である富士産商(第四裏書人)に対する原因関係消滅事由を人的抗弁としてるる主張しているが、被控訴人が本件手形取得当時控訴人主張のような控訴人またはDと冨士産商間の原因関係消滅事由を知つていたと認めうる確証はないから、仮に控訴人またはDと富士産商間に控訴人主張のような原因関係消滅事由があつたとしてもそのことを被控訴人に対抗することはできない。また、被控訴人の本件手形取得が実質上経済上の原因を欠くものであり、専ら富士産商が対抗されるべき人的抗弁を切断して本件手形の遡求権行使を容易にするためのものにすぎないとの控訴人の主張(いわゆる無権利者の抗弁)もこれを裏付けるに足りる確証はない。また、被控訴人が本件手形上の権利を指名債権譲渡の方法によつて取得したと解さなければならない必要も余地もないことは前記2の説示によつて明らかであるから、このことを前提とする控訴人の主張も失当である。 のみならず、控訴人の主張する控訴人またはDの富士産商に対する原因関係消滅の抗弁はいずれも確証を伴わないものであり、その一部を肯認するかのように思われる原当審における控訴人本人尋問の結果は重要な点であいまいな供述がみられ全体としてにわかに採用することがてきない。かえつて、前掲証人B、原審証人D(一部)の各証言と前掲控訴人本人尋問の結果の一部に前掲証人Bの証言によりその金額欄は後日Bが記載したと認められ、その余の部分の成立には争いのない甲第七号証、成立に争いない同第九号証、同証人の証言により真正に成立したと認める同第八、第一〇、第一一号証、前掲控訴人本人尋問の結果により真正に成立したと認める乙第一号証の一、第二、第五、第七ないし第九号証および弁論の全趣旨を総合すると、本件手形は、もともと富士産商のDに対する貸金が昭和五二年五月末現在でも七七七万二〇〇〇円となり 真正に成立したと認める乙第一号証の一、第二、第五、第七ないし第九号証および弁論の全趣旨を総合すると、本件手形は、もともと富士産商のDに対する貸金が昭和五二年五月末現在でも七七七万二〇〇〇円となり、これにその後の利息、諸雑費等を加算すると昭和五四年春頃現在で優に一〇〇〇万円を超えることを双方が確認し、額面二〇〇万円の他の一通とともに振り出され、裏書されたものであつたところ(大神商事が振り出し、控訴人が裏書したのは、もともと富士産商をDに紹介したのが控訴人であつたことおよび控訴人とDの間に前記のような身分関係があつたからである。)、(1)控訴人主張のゴルフクラブ会員権譲渡による代物弁済の点(原判決事実摘示の三抗弁2(一)の(1)の主張。以下同じ。)は、要するに富士産商の代表者Bが会員権を取得するさいの代金を控訴人の名を借りて大阪銀行から融資を受け調達したため、一見会員権者も控訴人であるかのようにみえるだけのものであり、(2)の一八八万円の弁済(乙第二号証)も前記別の額面二〇〇万円の手形の支払のためになされたもので本件手形と関係ないものであり、(3)の控訴人の富士産商に対する各貸付けも要するに富士産商が事業資金を調達するさいに、控訴人の名義を借りて各金融機関から融資を受け、その弁済は富士産商がしていたものにすぎず、ことにそのうちの(ハ)の一〇〇万円の分にいたつては控訴人自身も富士産商が自ら弁済したことを自認していることが認められるところである。また、もし、控訴人主張のような反対債権が存在したのであれば、Dや控訴人が結局のところ、前記一〇〇〇万円の債務を容認したことおよび本件手形が控訴人側に返還されていないことについての合理的な説明が困難であるというべきである。 4 よつて、被控訴人の控訴人に対する本件手形金とその附帯利息金の支払を求める 債務を容認したことおよび本件手形が控訴人側に返還されていないことについての合理的な説明が困難であるというべきである。 4 よつて、被控訴人の控訴人に対する本件手形金とその附帯利息金の支払を求める遡求権行使は理由があり、その請求を認容した原判決は相当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官今富滋裁判官畑郁夫裁判官亀岡幹雄)別紙手形目録金額八〇〇万円満期昭和五五年一〇月二八日支払地神戸市支払場所尼崎浪速信用金庫神戸支店振出地神戸市振出日昭和五五年四月一九日振出人有限会社大神商事受取人 D第一裏書人 D同被裏書人 D(抹消)第二裏書人控訴人同被裏書人控訴人(抹消)第一二裏書人亜細亜同志会(抹消)同被裏書人白地第四裏書人富士産商株式会社同被裏書人白地受取証欄亜細亜同志会(抹消)第五裏書人被控訴人同被裏書人被控訴人

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