- 1 -令和4年(許)第8号株式売買価格決定に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件令和5年5月24日第三小法廷決定 主文 本件抗告を棄却する。 抗告費用は抗告人らの負担とする。 理由 第1 事案の概要 1 本件は、相手方株式会社前田組が、抗告人らが有する相手方前田組の譲渡制限株式(以下「本件株式1」という。)について、会社法144条2項に基づき売買価格の決定の申立てをし、相手方前田ハウジング株式会社が、抗告人Y1及び抗告人Y2が有する相手方前田ハウジングの譲渡制限株式(以下「本件株式2」といい、本件株式1と併せて「本件各株式」という。)について、同様に売買価格の決定の申立てをした事案である。 2 記録によれば、本件の経緯は次のとおりである。 ⑴ 相手方らは、平成28年当時、いずれも非上場会社であり、株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定款の定めがあった。 ⑵ 相手方らは、同年2月、本件各株式について、抗告人らから会社法136条の規定による譲渡承認請求を受け、同年3月、抗告人らに対し、その譲渡を承認しない旨を通知した。相手方らは、同年4月、抗告人らに対し、本件各株式を買い取る旨を通知した上で、原々審に対し、本件各申立てをした。 ⑶ 原審において、本件各株式の1株当たりの売買価格について鑑定が実施されたところ、鑑定人は、次のとおり鑑定意見を述べた。 本件各株式の評価方法としては、DCF法(将来期待されるフリー・キャッシュ・フローを一定の割引率で割り引くことにより株式の現在の価値を算定する方法を- 2 -いう。)を用いるのが相当である。DCF法によって本件各株式の1株当たりの評価額を算定する るフリー・キャッシュ・フローを一定の割引率で割り引くことにより株式の現在の価値を算定する方法を- 2 -いう。)を用いるのが相当である。DCF法によって本件各株式の1株当たりの評価額を算定すると、本件株式1につき7524円、本件株式2につき6448円となる(以下、上記のとおり算定された本件各株式の評価額を「本件各評価額」という。)。そして、本件各株式の売買価格の算定に当たっては、本件各株式のいずれについても、非上場会社の株式には市場性がないことを理由とする減価(以下「非流動性ディスカウント」という。)として、本件各評価額から30%の減価を行うのが相当である。そうすると、本件各株式の1株当たりの売買価格は、本件株式1につき5266円、本件株式2につき4514円となる。なお、DCF法によって本件各評価額を算定する過程において、相手方らの将来期待されるフリー・キャッシュ・フローを割り引く際には、相手方らに類似する上場会社の株式に係る数値を用いることとする。 3 原審は、上記鑑定意見に依拠し、本件各評価額から非流動性ディスカウントとして30%の減価を行い、本件株式1の売買価格を1株当たり5266円、本件株式2の売買価格を1株当たり4514円と定めた。 第2 抗告人ら代理人山尾哲也の抗告理由のうち非流動性ディスカウントを行うことの可否に係る部分について 1 所論は、DCF法によって算定された本件各評価額から非流動性ディスカウントを行った原審の判断には、法令解釈の誤り及び判例違反があるというものである。 2 会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格の決定の手続は、株式会社が譲渡制限株式の譲渡を承認しない場合に、譲渡を希望する株主に当該譲渡に代わる投下資本の回収の手段を保障するために設けられたものである。そうすると、上記手続 限株式の売買価格の決定の手続は、株式会社が譲渡制限株式の譲渡を承認しない場合に、譲渡を希望する株主に当該譲渡に代わる投下資本の回収の手段を保障するために設けられたものである。そうすると、上記手続により譲渡制限株式の売買価格の決定をする場合において、当該譲渡制限株式に市場性がないことを理由に減価を行うことが相当と認められるときは、当該譲渡制限株式が任意に譲渡される場合と同様に、非流動性ディスカウントを行うことができるものと解される。このことは、上記譲渡制限株式の評価方法として- 3 -DCF法が用いられたとしても変わるところがないというべきである。 もっとも、譲渡制限株式の評価額の算定過程において当該譲渡制限株式に市場性がないことが既に十分に考慮されている場合には、当該評価額から更に非流動性ディスカウントを行うことは、市場性がないことを理由とする二重の減価を行うこととなるから、相当ではない。しかし、前記事実関係によれば、本件各評価額の算定過程においては、相手方らに類似する上場会社の株式に係る数値が用いられる一方で、本件各株式に市場性がないことが考慮されていることはうかがわれない。 したがって、DCF法によって算定された本件各評価額から非流動性ディスカウントを行うことができると解するのが相当である。 3 以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。所論引用の判例(最高裁平成26年(許)第39号同27年3月26日第一小法廷決定・民集69巻2号365頁)は、事案を異にし、本件に適切でない。論旨は採用することができない。 第3 その余の抗告理由について本件の事実関係の下において、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとお その余の抗告理由について本件の事実関係の下において、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官今崎幸彦裁判官宇賀克也裁判官林道晴裁判官長嶺安政裁判官渡惠理子)
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