【DRY-RUN】主 文 原判決を取消す。 被控訴人両名は各自控訴人に対し、金二万一千七百四円十五銭及びとれ に対する昭和二十六年三月七日から支払済に至るまで年六分の金額を支払わなけれ ばなら
主文 原判決を取消す。 被控訴人両名は各自控訴人に対し、金二万一千七百四円十五銭及びとれに対する昭和二十六年三月七日から支払済に至るまで年六分の金額を支払わなければならない。 訴訟費用は第一、二審共被控訴人両名の負担とする。 事実 控訴代理人は「主文第一項ないし第三項」同旨の判決記求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する」との判決を求めた。 当事者双方の陳述した主張の要旨は、左記の外は、原判決の事実摘示と同一であるから、ここに引用する。 控訴代理人は左のように主張した。被控訴人両名先代Aは昭和二十四年三月二十三日死亡し、被控訴人両名が相続したが、被控訴人両名が相続の放棄を申述したのは、その後二ケ年余を経過し、しかも本訴の提起された後(被控訴人両名に訴状が送達されたのは昭和二十六年三月六日である)の昭和二十六年四月十二日である。 被控訴人両名はAと同人の死亡当時同居しており、又死亡後も控訴人の代表者に対してもその死亡の事実を認めていたのであるから、右放棄は相続開始を知つた時から三ケ月を経過した後になされたものであるから、無効である。なお控訴人主張の下記の債務免除の事実を否認する。 被控訴代理人は下記のように主張した。相続の承認、放棄のさいの相続の開始を知つたときとの意は、相続開始の原因である事実を知つたというだけの意味ではなく、相続人が自己が相続人とたつたことをも知つたとの意味であるが、Aは昭和十七年一月七日隠居し、被控訴人Bが家督相続をしていたのであるから、Aが死亡したことによつて被控訴人両名が更に相続したということは、控訴人両名は知らず、そのことを確知したのは昭和二十六年三月六日で、その後考慮した上同年四月四日に名古屋家庭裁判所豊橋支部に放棄の申述をなしたものであるから て被控訴人両名が更に相続したということは、控訴人両名は知らず、そのことを確知したのは昭和二十六年三月六日で、その後考慮した上同年四月四日に名古屋家庭裁判所豊橋支部に放棄の申述をなしたものであるから、右放棄は有効なものである。ことに、右放棄の申述は、同裁判所で審理して同月十二日に受理されたのであるから、右放棄が無効であるとはいえないのである。仮に以上の主張が理由ないとしても、控訴人は昭和二十四年四月初旬被控訴人両名と、控訴人がAの煙管の売掛先から売掛代金を取立てて、被控訴人両名に対しては請求しない旨を約して債務を免除したから、控訴人の請求は理由がない。 当事者双方の提出援用した証拠と、そしに対する認否は左のとおりである。控訴代理人は甲第一号証を提出し、当審での証人C、控訴会社の代表者本人の各供述を援用し、乙号各証の成立を認めると述べた。被控訴代理人は乙第一、第二号証を提出し、当審での被控訴両名の本人尋問の結果を援用し、甲第一号証が商業帳簿であることは認めるが、その成立は、不知であると述べた。 理由 当審での控訴会社の代表者本人尋問の結果により成立を認めることのできる甲第一号証と、当審での証人Cの証言及び控訴会社の代表者本人尋問の結果によれば、控訴会社は竹製品の製造、販売を業とする会社であるが、昭和二十年九月初旬から同二十三年十二月十日迄にAに、パイプ、煙管、ラオタケ等を売渡し、その代金は合計金十四万三千四百十五円に達したが、一部入金もあつたので、その残金が合計四万三千四百八円三十銭になつていることを認めることができ、外に右認定を動かすことのできろなんの証拠もない。Aが昭和二十四年三月二十二日に死亡し、被控訴人両名が相続したことは、当事者間に争がない。各成立に争のない乙第一、第二号証と、当審においての被控訴人両 に右認定を動かすことのできろなんの証拠もない。Aが昭和二十四年三月二十二日に死亡し、被控訴人両名が相続したことは、当事者間に争がない。各成立に争のない乙第一、第二号証と、当審においての被控訴人両名の尋問の結果によれば、被控訴人両名は昭和二十六年四月四日に名古屋家庭裁判所豊橋支部に、被控訴人両名が相続開始の事実を知つたからとの理由で、相続の放棄を申述し、同月十二日に受理されたことを認めることができるから、その相続の放棄が有効かどうかについて判断する。相続放棄の申述の期間の始期である相続の開始を知つたときとは、被控訴人両名の主張のように、相続開始の原因である事実を知つただけでは足りず、自己が相続人となつたことそ覚知したときである。成立に争のない乙第二号証と、当審での証人Cの証言、及び当審での控訴会社の代表者と被控訴人両名の各本人尋問の結果によれば、Aは昭和十年十一月十四日被控訴人Dと養子縁組をなし、昭和十二年四月二十日に控訴人Bと婿養子縁組をなし、Aは昭和十七年一月七日隠居して控訴人Bがその家督相続をしたが、右三名は同一家屋に居住し、Aはラオタケの行商をし、被控訴人Bは菓子商を営み会計は別にしていたこと、Aは死亡のときは親戚方で死亡し、被控訴人Bが死亡の翌日である昭和二十四年三月二十三日にその旨を届出でたが、Aには別に財産もなかつたこと、その後間もなく控訴会社の代表者Fが被控訴人Dと直接Bの上記認定の債務を請求し、控訴人Bもその事実を知り、被控訴人両名は金がないので支払えないと弁解したことを夫々認めることができ、外に右認定を動かすことのできる証拠はなにもない。さうだとすれば、格別の事情につきなんの主張、立証もない本件では、被控訴人両名はAが死亡当時少くとも死亡後間もなく、同人の相続人にな<要旨>つたことを知つたものと認めるのが相当である 拠はなにもない。さうだとすれば、格別の事情につきなんの主張、立証もない本件では、被控訴人両名はAが死亡当時少くとも死亡後間もなく、同人の相続人にな<要旨>つたことを知つたものと認めるのが相当である。もつとも上記認定のように、被控訴人両名の相続放棄の申述</要旨>は名古屋家庭裁判所豊橋支部で受理されているが、家庭裁判所での相続放棄の受理は一応の公証を意味するに止まるもので、その前提要件である相続の放棄が有効か無効かの権利関係を終局的に確定するものではない。 相続の放棄が有効か無効かというような、法律を適用して権利義務の存否を確定するということは、民事訴訟による裁判によつての本終局的に解決するものと解するのが相当である。故に被控訴人両名のなした上記認定の相続放棄の申述は、名古屋家庭裁判所豊橋支部で受理されているとはいえ、上記認定のように、相続の開始を知つたときから約二ケ年を経過した後にたされたものであるから、効力を生じないといわなければならない。故に被控訴人両名のこの点に関する主張は理由がなく、被控訴人両名はAの控訴人に対する上記認定の金四万三千四百八円三十銭の債務を承継したものといわなければならない。次に被控訴人両名の債務免除の抗弁について按ずるに、この点に関する当審での被控訴人両名の各本人尋問の結果は、当審での証人Cと控訴会社の代表者本人の各供述に照し合せて、たやすく信用ができないし、右証拠をおけば、外に右の事実を認めることのできるなんの証拠もないから、この点に関する被控訴人両名の抗弁も採用することができない。 さうであるから、被控訴人両名は控訴人に対し、それぞれ上記認定の売掛代金債務の半分である金二万一千七百四円十五銭及びこれに対する弁済期後で、本件訴状送達の日の翌日であること本件記録に明な昭和二十六年三月七日から支払済にいたる は控訴人に対し、それぞれ上記認定の売掛代金債務の半分である金二万一千七百四円十五銭及びこれに対する弁済期後で、本件訴状送達の日の翌日であること本件記録に明な昭和二十六年三月七日から支払済にいたるまで、商法所定の年六分の損害金を支払う義務あるものといわなければならない。故に、控訴人の本控訴請求を棄却した原判決は失当で、本件控訴は理由があるから、民事訴訟法第三八六条により原判決を取消し、訴訟費用の負担について同法第九六条、第八九条により、主文のように判決する。 (裁判長判事柳川昌勝判事村松俊夫判事中村匡三)
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