令和5(わ)448 住居侵入、強盗致死、偽造有印公文書行使、強盗予備、窃盗未遂

裁判年月日・裁判所
令和6年9月6日 東京地方裁判所 立川支部
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判決文本文13,440 文字)

令和6年9月6日宣告令和5年(わ)第448号、同第780号住居侵入、強盗致死、偽造有印公文書行使、強盗予備、窃盗未遂被告事件判決 主文 被告人を懲役23年に処する。 未決勾留日数中330日をその刑に算入する。 押収してあるバール1本(令和6年押第1号符号1)、偽造運転免許証1通(同号符号2)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1 金品を強奪しようと考え、乙、丙、丁及び氏名不詳者らと共謀の上、令和5年1月19日午前11時31分頃、東京都狛江市内のA方に、宅配業者を装って玄関ドアから侵入し、その頃から同日午後1時12分頃までの間、同所にお いて、A(当時90歳)に対し、その両手を結束バンドで緊縛し、その腹部等を足で蹴り、その腹部及び背部等を持っていたバール(令和6年押第1号符号1)で多数回殴るなどの暴行を加え、その反抗を抑圧した上、同人管理の腕時計3個等4点(時価合計約59万円相当)を奪い、その際、前記一連の暴行により、同人に多発肋骨骨折等の傷害を負わせ、その頃、同所において、同人を 前記傷害に基づく外傷性ショックにより死亡させ(令和5年4月21日付け起訴状記載の公訴事実第1。以下、判示第1の事件を「狛江事件」ともいう。)、第2 乙、丙、戊及び氏名不詳者らと共謀の上、宅配業者を装ってB方に押し入り金品を強奪する目的で、令和5年1月20日午前10時54分頃、埼玉県草加市(住所省略)C店駐車場において、前記バール、宅配用段ボール箱、結束バ ンド等を積載した普通乗用自動車に乗車して同所から東京都足立区内のB方付 近に向けて出発し、同日午前11時18分頃から同日午前11時35分 おいて、前記バール、宅配用段ボール箱、結束バ ンド等を積載した普通乗用自動車に乗車して同所から東京都足立区内のB方付 近に向けて出発し、同日午前11時18分頃から同日午前11時35分頃までの間、同人方付近において、前記バール、前記宅配用段ボール箱、前記結束バンド等を携えて同車を降車し、同人方の人の出入りの状況を確認するとともに、同人方のインターホンを押すなどして犯行の機会をうかがうなどし、もって強盗の予備をし(令和5年7月6日付け追起訴状記載の公訴事実第1)、 第3 乙、丙、戊及び氏名不詳者らと共謀の上、金品窃取の目的で、令和5年1月20日午後1時15分頃から同日午後1時48分頃までの間に、前記バールを用いて、前記B方1階食堂南側掃き出し窓の施錠を外して侵入し、その頃、同所において、押し入れを開けるなどして物色したが、金品を発見することができなかったため、その目的を遂げず(令和5年7月6日付け追起訴状記載の公 訴事実第2。以下、判示第2、第3の事件を併せて「足立事件」ともいう。)、第4 令和5年1月31日午後3時38分頃、金沢市(住所省略)所在の石川県運転免許センターにおいて、自動車運転免許証に記載された住所の変更を申請した際、同センター職員Dに対し、被告人の顔写真が印刷され、氏名欄に「甲(姓は被告人の旧姓)」などと印字され、かつ、東京都公安委員会の公印を模した印 影が表出された偽造の同公安委員会作成名義の自動車運転免許証1通(令和6年押第1号符号2)を真正に成立したもののように装って提出して行使した(令和5年4月21日付け起訴状記載の公訴事実第2。以下、判示第4の事件を「偽造有印公文書行使事件」ともいう。)。 (事実認定の補足説明) 1 争点⑴ 本件の争点は、判示第1の事実について 5年4月21日付け起訴状記載の公訴事実第2。以下、判示第4の事件を「偽造有印公文書行使事件」ともいう。)。 (事実認定の補足説明) 1 争点⑴ 本件の争点は、判示第1の事実について、被告人に強盗致死の共同正犯が認められるか否かである(なお、判示第1の事実のうち、被告人に住居侵入の共同正犯が認められることは、当事者間に争いはなく、関係証拠によればその事実は容易に認められる。)。 ⑵ 弁護人は、被告人は、共犯者らと強盗の共謀はしたが、Aの傷害結果や死亡 結果は、乙や丁がAをバールで殴ったことによって生じた可能性が高く、被告人は、共犯者らとの間で、事前にも犯行当時においても、バールでAを殴打することの話が出ておらず、バールでAを殴打することに関しては共謀していないから、被告人には強盗の共同正犯は成立するが、強盗致死や強盗致傷の共同正犯は成立しない旨主張する。 また、被告人は、狛江事件の強盗の内容について、指示役から、「宅配業者を装って家の中に押し入り、押し入る際には、家の中にいる人に悲鳴や声などを上げさせないために暴行を加えることはあるが、その後の暴行は一切ない。」といった説明を、事前、あるいは、直前に受けていたから、乙らがAをバールで殴るとは思わなかったとして、強盗の共同正犯が成立することは認めるが、強盗致死の共同正犯の成立 は争う旨供述する。 ⑶ 検察官は、暴行を伴う強盗の共謀としては、強盗に必要な暴行を加えるという程度の共謀があれば足り、誰がどのような暴行を加えるかまで知っている必要はなく、暴行を伴う強盗が計画されていることを理解し、自身も強盗のために暴行を加えている被告人には、強盗の共謀があるといえるし、被告人は共犯者らがバール で被害者を殴打することを容易に想定し得るから、被告 を伴う強盗が計画されていることを理解し、自身も強盗のために暴行を加えている被告人には、強盗の共謀があるといえるし、被告人は共犯者らがバール で被害者を殴打することを容易に想定し得るから、被告人には強盗致死の共同正犯が成立する旨主張する。 ⑷ そこで、以下、当裁判所が判示のとおり認定した理由を説明する。 2 乙や被告人の各公判供述を含む関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 犯行に至る経緯及び共謀状況等アテレグラムにおいてアカウント名「X」、「Y」及び「Z」を用いる氏名不詳者ら(以下、X、Y、Zの3名を併せて「Xら」という。)は、強盗の実行犯を募るなどしていたところ、令和4年12月頃、運びという種類の闇バイトを探していた被告人は、一緒に闇バイトを探していた丙の紹介でYと知り合い、Yとテレグラム で個別に連絡を取り合うようになった。Yは、令和5年1月12日、被告人に対し て、「明日案件あるんですけど」「人数は4人揃えて行こうと思うんですが、明日はどうですか?」「昼間予定で、詳しい情報は22時くらいに揃う予定です。経験者もいます。今回どうしますか? 」「2000万案件でした。旦那、奥さん、息子二人地下にお金を隠してる昼間の仕事行ってる時間に突入予定旦那さん50代息子1番上が29 脱税のお金と悪いお金がある」「こちらも人数揃えて行き ます。そして、仕事行ってる時間帯に行くので、奥さんだけのとき狙って行きます。」「返答なるべく早く欲しいです。準備あるので」などとテレグラムのメッセージを送信し、狛江事件への参加を持ち掛けた。Yは、同月13日、被告人に対して、「時間と持ち物確認しますね。時間的には2時にピンポンしようと思ってるので、その前に拾う感じになります」「W 服のサイズLL 目 し、狛江事件への参加を持ち掛けた。Yは、同月13日、被告人に対して、「時間と持ち物確認しますね。時間的には2時にピンポンしようと思ってるので、その前に拾う感じになります」「W 服のサイズLL 目出し帽○ 格闘技経験× バー ルで人くらい殴れます」などとテレグラムのメッセージを送信した(W は被告人のアカウントネーム)。被告人は、その頃には狛江事件に参加することを承諾していた。 また、Xは、同日、「詐欺ババア成敗隊」とのテレグラムのグループトークを立ち上げて、被告人を「詐欺ババア成敗隊」に招待し、グループトークに被告人や乙が参加することになった。しかし、その際は、運転手役が捕まったということで、X らは、同月16日、テレグラム上に、あらたに、「水曜日、ババア案件」とのグループトークを立ち上げ、これに被告人らを招待し、以後、同グループトークのメッセージを利用するなどして、被告人らに狛江事件の犯行を指示するようになった。「水曜日、ババア案件」のグループトークの参加者は、X、Y及びZのほか、被告人、乙、丙及び丁であった。 イ XやYは、同日から同月17日にかけて、被告人らに対し、前記グループトークで、「水曜日、都内叩き案件。午後2時突入予定。投資詐欺で金を集めたババア、一軒家を叩きます。投資で騙された他のババアからの垂れ込み情報です。金は地下室にあります。金庫かどうかは不明。被害金額少なく見積もって2500万。ババア共の話では3000~5000はある。当日、早朝から人の出入りを確認するた めに家の前にカメラ設置します。」「服は、上下、靴、帽子全部捨てれるような物用 意してください。相手殺しはしませんが、万が一最悪のこと考えて、全部捨てます。 手袋、その他の道具はこちらで用意します」「一応みんな経験者なので、 「服は、上下、靴、帽子全部捨てれるような物用 意してください。相手殺しはしませんが、万が一最悪のこと考えて、全部捨てます。 手袋、その他の道具はこちらで用意します」「一応みんな経験者なので、流れはわかってるはずです。一応凸前にまたスピーカーで通話して打ち合わせします。凸前からリーダーと電話繋いだままいって、退避完了まで繋いでるので的確に指示します。」「運送屋のユニホームを用意します。それを着て、段ボールを持って、ピンポンし てドアを開けさせるだけの役です。ドアがチェーンもなく完全に開いたのを確認した瞬間、残りの車待機のメンバーも即突入する形になります」「ピンポンして、宅配便です、印鑑かサインお願いします。で玄関まで呼び、ドアを完全に開けさせます。 チェーンの状態でこじ開けるのはやめてください。ドアが完全に開いたら、ババアをいきなりボコして大丈夫です。すぐ後ろから残りのメンバーも来ますので、ババ アを引きずって中まで連れて行き、地下に下ろします。縛って金庫の場所と番号聞いて金奪うだけです」「大体ババアは大声出すので、顔面、喉、鳩尾狙って下さい。 声出せなくするだけです」「ババアの隠してある金庫は地下かもしれないですけど、旦那の金庫は別にあるかもしれないので、余裕あれば確認したいところです。」などと犯行の具体的な内容や方法を指示するメッセージを送信した。 ⑵ 本件犯行前日(令和5年1月18日)の状況等被告人らは、同月18日、Xらとの間で、テレグラムで連絡を取り合うなどし、その指示に従って、指定された場所に向かった。 乙は、Zが指示した者が借り出してコインパーキングに停車させていたレンタカー(以下「プリウス」という。)に乗り込み、プリウスを運転して、別のコインパー キングに向かい、同所で、被告人、丙及び丁と合 、Zが指示した者が借り出してコインパーキングに停車させていたレンタカー(以下「プリウス」という。)に乗り込み、プリウスを運転して、別のコインパー キングに向かい、同所で、被告人、丙及び丁と合流した。 その後、被告人らは、Zが指示した者が借り出し、同人がA方付近のアパート駐車場に停車させていたレンタカー(以下「ヤリス」という。)のところに行ったが、宅配業者を装うための制服や手袋、段ボール、配送伝票等がヤリスに用意されているという事前の情報と異なり、段ボールや配送伝票が用意されていなかったので、 コンビニエンスストアで段ボールや配送伝票を購入して、配送伝票にA方を宛先と して記載するなどして本件犯行の準備をした。なお、段ボールや配送伝票は被告人が出費して購入した。被告人らは、ヤリスに乗車し、A方を下見するなどして、犯行の機会を窺うなどした。しかし、A方の車が1台なくなっており、A方には人がいないかもしれないことや、A方付近の人通りが多かったことなどから、その日の犯行は断念して一旦解散した上、翌19日に犯行に及ぶことを決め、被告人は自宅 に帰り、乙及び丙は、ホームセンターにおいて、バールを購入するなどした。 ⑶ 本件犯行日(令和5年1月19日)の状況等ア被告人は、同月19日、E店において、結束バンド等を購入し、被告人らは、同日、F駅の付近のコインパーキングで合流し、プリウス及びヤリスに分乗して、前記アパート駐車場に向かった。被告人らは、同駐車場にプリウスを残して、ヤリ スに4人で乗り込んでA方に向かった。乙は、強盗に及ぶ直前、犯行の手順について最終確認をた。また、A方に突入する際、Xらと連絡を取り合う手段として、ワイヤレスイヤホンを使って、Xらと通話をすることになり、乙とXが、丁とZが、被告人とYが通 強盗に及ぶ直前、犯行の手順について最終確認をた。また、A方に突入する際、Xらと連絡を取り合う手段として、ワイヤレスイヤホンを使って、Xらと通話をすることになり、乙とXが、丁とZが、被告人とYが通話することになった。 イ被告人らは、前記バール、前記配送伝票及び前記結束バンド等の犯行道具を 携帯した上、ヤリスを運転し、同日午前11時31分頃、A方付近に到着し、ヤリスをA方の前に停車させた。被告人及び丁は、制服を着て、宅配業者を装って、A方に向かい、被告人がA方のインターホンを押すなどした。Aは、当時、A方に1人でおり、2階のベランダから1階の玄関まで降りてきて、玄関ドアを開けて応対した。被告人は、Aに対し、「お荷物です、判子をお願いします。」などと言って、 段ボール箱に貼付した前記配送伝票を見せたところ、Aは、配送伝票の宛名を見て、「これは私宛ての荷物ではないから受け取れない。」旨言って、前記段ボール箱の受け取りを拒否するなどして屋内に戻ろうとした。すると、丁は、Aの身体を抱きかかえ、被告人と共に、A方の玄関ドアから侵入し、これに続いて、乙及び丙も同玄関ドアからA方に侵入した。A方に侵入した後、被告人及び丁がAの両手を前記結 束バンドで緊縛し、金庫の場所などを聞き出すために、丙及び丁がAの腹部等を足 で蹴ったり、乙がAの顔面を手で殴ったりした。その頃、被告人らはXらとワイヤレスイヤホンを通じて緊密に連絡を取り合っていた。その後、被告人と丙が、Aの身体を持ち上げるなどして地下室に連行し、そこで、Aに現金や金庫の在りかをしゃべらせるために、乙が、「家を燃やすぞ。」などと脅したり、Aの腹部等を足で蹴ったり、乙の指示を受けた丁がAの腹部及び背部等を前記バールで多数回殴るなど の暴行を加えた。その際、被告人は、丁 しゃべらせるために、乙が、「家を燃やすぞ。」などと脅したり、Aの腹部等を足で蹴ったり、乙の指示を受けた丁がAの腹部及び背部等を前記バールで多数回殴るなど の暴行を加えた。その際、被告人は、丁が前記バールでAを多数回殴っているところを見ていたが、それを止めたり、異を唱えたりはしなかった。被告人らは、A方内を物色し、腕時計3個及び指輪1個を見つけてこれを奪うなどしたが、金庫や現金を見つけることができず、Xの指示により、同日午後1時12分頃、ヤリスに乗り込んで、被害者方を一旦立ち去った。 被告人らは、現金を奪えなかったことから、再度A方に押し入ろうと考え、被告人がA方付近の見張りをしていたが、丁がリスクを感じたなどとして宅配業者の制服を着たままヤリスに乗って犯行現場から離脱したことなどから、被告人らはA方へ再度突入することを諦めた。Aは、被告人らの前記一連の暴行により、多発肋骨骨折等の傷害を負い、同傷害に基づく外傷性ショックにより死亡した。同日、乙は、 XからAが死亡したことを知らされ、被告人や丙も乙から聞いたり、ネットニュースで見るなどしてそのことを知った。 その頃、Xが「木曜日、ハシゴできるかな?」といったテレグラムのグループトークを立ち上げ、被告人、乙、丙及び戊を同グループトークに招待し、別の押し込み強盗を持ちかけたところ、被告人はこれを承諾した。Xが、同グループトークに 足立事件の犯行計画を送信するなどし、被告人らは、翌20日、足立事件に及んだ。 その際、被告人が、Aに対して使われたのと同じバールを持って、B方に侵入した。 3 小括⑴ 以上のとおり、被告人は、「水曜日、ババア案件」のグループトークに記載された犯行計画に沿う行動を取っており、共犯者らがAを足蹴りしたりバールで殴打 したりするなどの した。 3 小括⑴ 以上のとおり、被告人は、「水曜日、ババア案件」のグループトークに記載された犯行計画に沿う行動を取っており、共犯者らがAを足蹴りしたりバールで殴打 したりするなどの相当強度の暴行を加えているのを止めたり、異を唱えたりせず、 それらの者が強度の暴行を加えることを意外と思うような言動をとらないまま、狛江事件の犯行を続けている。また、狛江事件の犯行後、Aが死亡したことを知らされたのに、Xから同様の強盗の案件(足立事件)を持ちかけられ、これに参加することを承諾し、翌日、Aに対して使われた本件バールをもって足立事件に参加している。これらの事情からすると、共犯者らがAに足蹴りしたりバールで殴打したり するなどの相当強度の暴行を加えていたことは、被告人にとっても想定の範囲内であったことがうかがえる。さらに、狛江事件の数日前である令和5年1月13日の被告人とYとのテレグラムでのやり取りの中で、Yから被告人に対し、犯行の時間について言及するメッセージが送信された直後、「服のサイズLL 目出し帽○ 格闘技経験× バールで人くらい殴れます」などと記載したメッセージが送信されて いるところ、これは、強盗に参加するに当たっての被告人のプロフィールを確認するために送信されたものと考えるのが自然であり、強盗に際してバールで被害者を殴るといった相当強度の暴行を加えることがあり得ることも、被告人とYとの話の中で出ていたことを想起させるものである。そうすると、後記のとおり、被告人が同グループトークの内容をどの程度読んでいたかは必ずしも明らかではないにして も、狛江事件の犯行計画の内容として、被害者に相当強度の暴行を加えることもあり得るといった内容が、被告人を含む犯行グループ内で共有されていたものと認められる。 ずしも明らかではないにして も、狛江事件の犯行計画の内容として、被害者に相当強度の暴行を加えることもあり得るといった内容が、被告人を含む犯行グループ内で共有されていたものと認められる。 以上によれば、被告人は、狛江事件の犯行計画の中で、被害者に対して相当強度の暴行を加えることがあり得ることは分かっており、現金や金庫の在りかを聞き出 すための手段として行われた共犯者によるバールでの殴打行為も犯行計画を超えるようなものではなく、強盗の共謀の範囲に含まれるものと認められる。 ⑵アこれに対し、被告人は、「詐欺ババア成敗隊」というグループトークが立ち上がる前に、狛江事件の強盗の内容について、Yから、宅配業者を装って家の中に押し入り、押し入る際には、家の中にいる人に悲鳴や声などを上げさせないために 暴行を加えることはあるが、縛った後は気持ちを切り替えて財産を探すことに専念 して、一切暴行を加えず、家の中を物色して、金品を見付けてすぐに退散するといった説明を受けていた、相当強度の暴行について記載されている「水曜日、ババア案件」のグループトークの内容はほとんど見ていなかった、狛江事件の直前にXと通話した際、Yから受けたのと同様の説明を受けたとして、A方に立ち入る際の緊縛行為等の暴行以外にも、相当強度の暴行を加えることもあるといった犯行計画の 内容は知らず、暴行を加えて現金や金庫の在りかを聞き出すプロセスがあること自体認識していなかったなどと供述する。 しかしながら、被告人が供述するところのYやXの前記説明は、狛江事件の強盗の際に、相当強度の暴行を加えることを内容とする「水曜日、ババア案件」のグループトークの内容に明らかに反する。同グループトークは、被告人を含む狛江事件 の犯行に参加する者に共通の犯行計画を共有 の際に、相当強度の暴行を加えることを内容とする「水曜日、ババア案件」のグループトークの内容に明らかに反する。同グループトークは、被告人を含む狛江事件 の犯行に参加する者に共通の犯行計画を共有し合うもので、狛江事件に参加することが決まっていた被告人も見ることが前提となっていたことに加え、被告人が同グループトークの内容を確認すれば容易に前記説明が嘘であると分かることや、Yが被告人に対して、被告人のプロフィールとして「バールで人くらい殴れます」といった内容のメッセージを送信していたことに照らしても、Yから、被告人に対し、 強盗の計画内容として、事前に前記のような説明がされたとは考えがたい。また、被告人が供述するところの狛江事件の直前にもXから同様の内容の通話があったとする点も、Xらが、前記グループトークに反する計画の説明をする理由はないし、被告人の供述を前提とすると、被告人が聞いていた計画内容とは違って暴行が加えられたりするのを見たのなら、自分が聞いていた計画内容とは違うわけを確認した り、異を唱えたりするのが自然であるのに、被告人がそのような行動をしたとは窺われない。また、ワイヤレスイヤホンを付けるなどして同じ目的に向けて緊密な連携の下で行われている本件犯行において、被告人のみが違う計画に従って行動していたとも考えがたい。さらに、被害者に暴行脅迫を加えて現金や金庫の在りかを聞き出すことが内容となっていない被告人の供述するような強盗計画であれば、空き 巣の態様でも可能であって、敢えてリスクを冒して人がいる民家に押し入って強盗 をする必要もないことになる。そうすると、A方に立ち入る際の緊縛行為等の暴行を加えた後は一切の暴行を加えない旨の説明を受けたとする被告人の供述は到底信用できず、被告人が前記グループトーク をする必要もないことになる。そうすると、A方に立ち入る際の緊縛行為等の暴行を加えた後は一切の暴行を加えない旨の説明を受けたとする被告人の供述は到底信用できず、被告人が前記グループトークの内容をどこまで読んでいたかは必ずしも明らかではないにしても、被告人も、その犯行計画が、被害者に対して相当強度の暴行を加える内容であることを認識していたものと認められる。 イまた、被告人は、Yから送られてきた「W 服のサイズLL 目出し帽○ 格闘技経験× バールで人くらい殴れます」とのテレグラムのメッセージ中の「バールで人くらい殴れます」とあるのは、「ドラマかアニメかの話をしていて、ああいう方法もありますけどうちは全然違いますからね、みたいな説明を受けて、その中で書かれたものである」とか「Yとの間で、丙を追い出すといった話をする中で、バ ールを使う話が冗談で出た中で書かれたものである」などと供述して、狛江事件とは関係ない旨供述するが、その供述には変遷があったり、その内容自体意味が分からず、Yに対して内容を否定したとも窺われず、服のサイズ等のその余のメッセージが狛江事件に向けた被告人のプロフィールに関する情報であることが明らかであるのに、一部だけ狛江事件とは関係ない情報を記載するのは不自然であることから しても、被告人の供述は到底信用できない。 ⑶ 以上のとおり、被告人も、その犯行計画が、被害者に対して相当強度の暴行を加えるものであることは認識しており、状況によっては共犯者らが被害者に対して、足蹴りやバールでの殴打などの強度の暴行を加える可能性があることを認識しながら本件犯行に加担したものと認められ、現金や金庫の在りかを聞き出すための 手段として行われたバールでの殴打行為も、本件強盗の共謀の範囲に含まれるものと認め を加える可能性があることを認識しながら本件犯行に加担したものと認められ、現金や金庫の在りかを聞き出すための 手段として行われたバールでの殴打行為も、本件強盗の共謀の範囲に含まれるものと認められる。そうすると、被告人には、強盗の共謀があったと認められる。 4 これに対し、弁護人は、被告人が、狛江事件の前にもその当時においても、共犯者らとの間で、バールでの殴打行為について話し合ったことは一切なく、バールはあくまで金庫を開けるために用意されたものであり、バールでの殴打行為を止 められなかったのは、事前に叱責されるなどしていた乙のことが怖かったために過 ぎないから、被告人には強盗致死の共同正犯は認められない、と主張する。 しかし、犯行計画において、どのような暴行をどのような道具等を使ってどのような方法で加えるかについては、必ずしも細部まで話し合っておく必要はない。また、乙が怖かったといった事情があったとしても、その後も被告人は乙らの暴行を意外であるとするような言動を取っておらず、かえって、バールでの殴打行為の後、 Xらが1度引き揚げたらどうかと言っているという説明を乙から受けても、「通報が入っていなかったり、家の中の人を縛り終えた後なので、危険性は少ないと自分は判断して、もう少し探していこうという話をした」などと、冷静に自らの意思で犯行を続けていたとの供述をしており、乙を怖がっている者の態度としては不自然な行動をしている。そうすると、現金や金庫の在りかを聞き出すための手段として 行われたバールでの殴打行為も犯行計画を超えるようなものではなく、強盗の共謀の範囲に含まれると認められ、弁護人の主張は前記認定を左右しない。 その他の弁護人の主張をみても、前記認定を左右するものはない。 5 以上によれば、判示第1の事実 えるようなものではなく、強盗の共謀の範囲に含まれると認められ、弁護人の主張は前記認定を左右しない。 その他の弁護人の主張をみても、前記認定を左右するものはない。 5 以上によれば、判示第1の事実について、被告人は共犯者らとの間で住居侵入及び強盗の共謀をしたといえるから、被告人には住居侵入及び強盗致死の共同正 犯が認められる。 (量刑の理由) 1 本件は、犯罪グループによる極めて組織性、計画性の高い犯行からなる事案であり、指示役の者があたかも会社がアルバイトを雇って営業活動をするかのように広く実行役を集め、徹底した役割分担をして効率的に犯行を遂行し、確実に利益 を上げることを可能にするとともに、秘匿性の高いSNSを利用するなどの警察に検挙されることを防止するための措置も講じている点が特徴的である。 2 まず、量刑判断の中心となる狛江事件の犯行についてみると、本件は、事前に得た情報に基づき、テレグラム上に「詐欺ババア成敗隊」、「水曜日、ババア案件」といったグループトークを立ち上げ、周到な準備や綿密な計画に基づき、共犯者ら と緊密な連絡を取り合いながら遂行されており、結局は現金や金庫は発見できなか ったなどの杜撰な点があったものの、組織性、計画性の高い職業的な犯行である。 被告人らは、事前の準備や計画に基づき、宅配業者を装って玄関ドアから侵入し、高齢のAの両手を結束バンドで緊縛した上で、Aから現金や金庫の在りかを聞き出すべく、腹部等を足で蹴り、腹部及び背部等をバールで多数回殴るなどの強度の暴行を加え、同人に多発肋骨骨折等の傷害を負わせて外傷性ショックにより死亡させ た(判示第1)もので、犯行態様は卑劣かつ悪質極まりない。緊縛された状態でこのような苛烈な暴行を受けながら詰問されたAの肉体的、精神的苦痛は筆舌に 等の傷害を負わせて外傷性ショックにより死亡させ た(判示第1)もので、犯行態様は卑劣かつ悪質極まりない。緊縛された状態でこのような苛烈な暴行を受けながら詰問されたAの肉体的、精神的苦痛は筆舌に尽くし難く、平穏な生活、幸せな人生を突如奪われたその無念さは察するに余りあり、遺族の処罰感情が厳しいのも至極当然である。本件によって生じた財産的被害も高額である。被告人は、実行役として、宅配業者を装ってAを玄関ドアまで呼び出す と、同ドアから共犯者と侵入し、Aの両手を結束バンドで緊縛するなど、Aから現金や金庫の在りかを聞き出して奪うという犯行に不可欠な行為をしており、また、緊縛したAを抱えて地下室に移動させたり、被害者方を物色するなどの役割も果たしたものであり、本件犯行に積極的に関与していたことを否定できず、指示役や実行犯の中ではリーダー格の乙との立場の違いや、被告人自身はバールでの殴打行為 といったAの死に直結した暴行は行っていないことを踏まえても、本件犯行において被告人が果たした役割は重要というべきである。被告人は高額な報酬目当てに本件に及んだもので、身勝手で利己的な犯行動機に酌むべき事情は認められない。 3 次に、足立事件の犯行についてみると、本件も、事前に得た情報に基づき、指示役がテレグラム上に「木曜日、ハシゴできるかな?」といったグループトーク を立ち上げ、被告人が共犯者らと緊密な連絡を取り合いながら、宅配業者を装ってB方に押し入り金品を強奪する目的で、犯行道具等を積載した普通乗用自動車に乗車してB方付近に向けて出発し、同所付近で犯行道具等を携えて降車し、B方の人の出入りの状況を確認したり、同人方のインターホンを押すなど犯行の機会を窺うなどして強盗予備の犯行に及び(判示第2)、Bが在宅していないことから、空き巣 同所付近で犯行道具等を携えて降車し、B方の人の出入りの状況を確認したり、同人方のインターホンを押すなど犯行の機会を窺うなどして強盗予備の犯行に及び(判示第2)、Bが在宅していないことから、空き巣 に犯行を変えることにし、金品窃取の目的で、バールを用いて窓の施錠を外して侵 入し、室内を物色したが、金品を発見することができず、窃盗未遂の犯行にとどまった(判示第3)ものである。本件も、狛江事件同様、指示役の指示の下、役割分担してなされた組織性、計画性の高い犯行である。被告人は、強盗予備事件においては、宅配業者を装う役の後から突入する役を担い、窃盗未遂事件においては、室内に侵入して物色行為を行っており、重要な役割を果たしたといえる。突然自宅を 荒らされるなどしたBの精神的苦痛は大きく、Bの処罰感情は強い。 4 偽造有印公文書行使事件についてみると、被告人は、Xから海外逃亡を提案されたが、旅券を取得するために必要な身分証明書を所持していなかったことから、Xらを通じて偽造の自動車運転免許証を入手し、パスポートセンターにおいて、偽造運転免許証を示すなどして旅券の交付申請をしたものの、職員から運転免許証の 住所を住民基本台帳ネットワーク上の住所と一致させるよう求められ、運転免許センターにおいて、住所の変更を申請する際、偽造運転免許証を提出して行使して偽造有印公文書行使の犯行に及んだ(判示第4)のであって、その動機や経緯に格別酌むべき事情は認められず、運転免許証の信用を害する点も看過できない。 5 以上の犯情を前提に、量刑上中心となる強盗致死罪を処断罪とする同種事案 の量刑傾向を踏まえて検討すると、本件は、無期懲役を相当とするような最も重い部類に属する事案とまではいえないものの、相応に重い部類に属する事案といえる。 る強盗致死罪を処断罪とする同種事案 の量刑傾向を踏まえて検討すると、本件は、無期懲役を相当とするような最も重い部類に属する事案とまではいえないものの、相応に重い部類に属する事案といえる。 そこで、更に一般情状をみると、犯行当時特定少年であった被告人は、当公判廷において、反省の弁を述べるものの、自らの責任を回避するかのような言動に終始しており、自己の罪に十分に向き合っているとはいい難く、反省はまだ途上といえ る。他方、判示第1のうち強盗致死の責任を争うほかは、その余の事実は認め、捜査に協力して真相解明に寄与はしていることなどの被告人のために酌むべき事情も併せ考慮すれば、被告人に対しては、酌量減軽の上、主文の刑に処するのが相当であると判断した。 よって、主文のとおり判決する。 (検察官の求刑:懲役25年及び没収、被害者参加弁護人の意見:強盗致死罪の法 定刑、弁護人の科刑意見:懲役13年)令和6年9月6日東京地方裁判所立川支部刑事第1部 裁判長裁判官杉山正明 裁判官河畑勇 裁判官櫻井雅典

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