平成24年10月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年第109号賃料請求事件口頭弁論終結日平成24年6月26日判決 主文 1 被告は,原告有限会社X1に対し,平成23年2月から毎月10日限り,各177万7376円を支払え。 2 被告は,原告X2に対し,平成23年2月から毎月10日限り,各138万9312円を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを50分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由(以下,原告有限会社X1を「原告X1」という。)第1 請求 1 被告は,原告X1に対し,平成23年2月から毎月10日限り,各181万6280円を支払え。 2 被告は,原告X2に対し,平成23年2月から毎月10日限り,各142万0071円を支払え。 第2 事案の概要本件は,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を被告らとともに共有し,自己の持分を被告の百貨店営業に供するために被告に賃貸した原告らが,平成23年2月以降の賃料が未払になっていると主張して,被告に対し,主位的に賃貸借契約に基づき,予備的に不当利得ないし不法行為に基づき,同月から毎月10日限り,原告X1につき月額181万6280円,原告X2につき月額142万 0071円の賃料ないし賃料相当損害金の支払を求めた事案である。 1 前提となる事実(証拠を記載したもの以外は当事者間に争いがない。) 当事者等原告X1は,不動産賃貸業,駐車場の経営及び飲食店の経営等を目的とする特例有限会社である。 1 前提となる事実(証拠を記載したもの以外は当事者間に争いがない。) 当事者等原告X1は,不動産賃貸業,駐車場の経営及び飲食店の経営等を目的とする特例有限会社である。 株式会社X3(以下「X3」という。)は,不動産賃貸業及び飲食店経営等を目的とする株式会社であり,原告X2が代表取締役を務めている。 被告は,百貨店業並びに衣食住に関する多種類の商品の販売及びこれに関連する加工もしくは請負その他の事業等を目的とする株式会社であり,昭和初期から甲府市内においてY百貨店を営んでいる。(弁論の全趣旨) 本件建物の共有持分割合昭和63年11月1日時点における本件建物の共有持分割合は以下のとおりであった(甲7)。 ア A 100万分の7万6544イ有限会社B 100万分の14万2153ウ X3 100万分の29万5471エ原告X1 100万分の10万7707オ X4 100万分の12万3215カ有限会社C 100万分の3万7530キ被告 100万分の21万7380 賃貸借契約の締結原告X1,X3及びX4は,被告に対し,昭和63年3月11日,本件建物の原告X1,X3及びX4の共有持分を以下の約定で賃貸して引き渡した(以下「本件賃貸借契約」という。)(甲1)。 ア使用目的被告は,本件建物を小売業,飲食業及びこれに付随するサービスの提供業務 (百貨店営業)の店舗として使用する。 イ契約期間契約締結日から満30年間とする。 ウ賃料月額1125万 食業及びこれに付随するサービスの提供業務 (百貨店営業)の店舗として使用する。 イ契約期間契約締結日から満30年間とする。 ウ賃料月額1125万円とし,うち681万9000円をX3に,248万7000円を原告X1に,194万4000円をX4に,毎月10日限り当月分を支払う。 昭和65年4月からは月額1208万3340円とし,うち732万4000円をX3に,267万1000円を原告X1に,208万8340円をX4に支払う。 エ賃料の改定別途試算表を基本に5年ごとに公租公課,公定歩合の変動,諸物価,経済情勢を勘案して協議のうえ決定する。 オ賃貸借物件の運営費物件の維持,管理費用に伴う費用は,物件の公租公課,保険料を除き,被告の負担とする。 原告X2による権利の承継X4は平成11年2月10日に死亡し,原告X2が本件建物の共有持分を相続によって取得するとともに,本件賃貸借契約に基づく権利義務を承継した。 本件賃貸借契約の賃料額の変遷等ア原告ら,X3及び被告は,平成11年7月13日,本件賃貸借契約の期間を2024年3月末日までとすること,賃料を月額1027万0839円(X3につき622万5400円,原告X1につき227万0350円,原告X2につき177万5089円)に改定すること,賃料減額期間を平成11年8月分から平成14年7月分までとし,3年経過後は現状に戻すことなどを合意し,その旨を明記した覚書を作成した(甲2)。 イ原告ら,X3及び被告は,平成16年2月10日,本件賃貸借契約に基づく平成14年5月分から平成15年10月分までの賃料を月額821万6671円(X3につき498万0 た(甲2)。 イ原告ら,X3及び被告は,平成16年2月10日,本件賃貸借契約に基づく平成14年5月分から平成15年10月分までの賃料を月額821万6671円(X3につき498万0320円,原告X1につき181万6280円,原告X2につき142万0071円)に変更したことを確認するとともに,平成15年11月分から平成16年10月分までの賃料を月額871万6671円(X3につき548万0320円,原告X1及び原告X2は同上)に変更することなどを合意し,その旨を明記した覚書を作成した(甲3)。 ウ原告ら,X3及び被告は,平成17年1月14日,本件賃貸借契約に基づく平成16年11月分から平成17年10月分までの賃料を月額871万6671円に据え置くことを合意し,その旨を明記した覚書を作成した(甲4)。 解除の意思表示等被告は,平成22年8月24日,原告ら及びX3に対し,D及びE株式会社(以下「E」という。)に対する借入れを速やかに一括返済するよう催告し,それが履行されない場合には,本件賃貸借契約の解除,損害賠償等の手段を取る旨を明らかにした。また,被告は,平成23年1月9日にも,原告ら及びX3に対して同様の催告をした。(乙1~8)被告は,原告X1に対し同月24日に,原告X2及びX3に対し同月25日に,それぞれ到達した内容証明郵便により,本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした(乙11~14)。 2 争点及び争点に関する当事者の主張 請求の特定の有無(本案前の抗弁)(被告の主張)原告らの請求は定期金給付であるにもかかわらず,終期に係る記載が全くない。 終期の記載のない給付に係る債務名義が作成されれば,執行手続で執行担当者は判断不能に陥るか,無理矢理,永久に 主張)原告らの請求は定期金給付であるにもかかわらず,終期に係る記載が全くない。 終期の記載のない給付に係る債務名義が作成されれば,執行手続で執行担当者は判断不能に陥るか,無理矢理,永久に毎月毎月執行を認めることにもなりかねず,このような不当な債務名義が許されないことは明らかである。 原告らの訴えは請求の特定性を欠き,不適法であるから却下されるべきである。 (原告らの主張)争う。原告らの訴えは,特定性に欠けるところはない。 本件賃貸借契約の解除の可否(被告の主張)ア金融機関への返済遅延を理由とする解除 原告X1,X3及びX4(以下,これらを総称して「X3グループ」という。)と被告は,被告の百貨店の新館建設に先立って協議を行い,①被告がX3グループに新館建設資金の差入れ保証金名目で7億3900万円を融資すること,②X3グループは被告の保証提供を受けた上で金融機関からも新館の建設資金の融資を受けること,③新館の完成に際しては,被告が新館についてのX3グループの共有持分を使用するために契約を締結して使用料を支払い,同グループはその使用料により金融機関から借り入れた上記融資の返済及び上記保証金名目の融資の返済を行うこと,④X3グループは,所有する土地を被告の金融機関に対する建設資金の借入債務の担保として提供し,当該債務を保証することを合意した(以下「本件約定」という。)。 本件約定が成立したことを受け,被告とX3グループは,本件賃貸借契約の契約書(以下「本件契約書」という。)を作成し,その際,X3グループ3名におけるそれぞれの30年の計画を記載した損益計算書及び資金繰表を綴り製本し,一冊の契約書とした。この損益計算書には,被告の支払う賃料を収入として計上 」という。)を作成し,その際,X3グループ3名におけるそれぞれの30年の計画を記載した損益計算書及び資金繰表を綴り製本し,一冊の契約書とした。この損益計算書には,被告の支払う賃料を収入として計上し,資金繰表には,その収入から生じた利益をもって,前記金融機関からの借入金及び被告からの保証金を返済する具体的な返済方法を規定した。 このようにして,本件約定は,本件賃貸借契約が成立するとともに同契約に組み込まれ,体裁としても,本件約定と本件賃貸借契約は一つの冊子を構成し,内容も本件建物に係る建設資金調達及び返済方法並びに建設後の使用 形態,収益方法を一体的に明らかにするものであり,本件約定と本件賃貸借契約が一つの契約を構成することは明らかである。 X3グループは,株式会社F銀行(以下「F銀行」という。)及びEから建設資金を借り入れたところ,被告はこれらの借入債務を連帯保証していた。 X3グループは,平成13年ころから,上記金融機関からの借入金返済を延滞するようになり,F銀行から債権を譲り受けたDに対しては期限の利益を喪失し,Eに対しても事実上期限の利益を喪失した状態になったため,被告は金融機関から保証債務の履行請求を受けるに至った。平成22年4月ころにはEからの催告が強まったため,被告は,再三に渡りX3グループ(具体的な借入人はX3及び原告X1)に対して催告を行った。しかし,X3グループは一向に返済を行わなかった。その後,X3グループは,被告からの催告等を受けたこともあり,ようやくEに対する借入金を一括返済したが,Dに対しては返済を行わなかったため,被告が代位弁済をすることとなった。 上記経緯からすれば,X3グループは,被告からの再三にわたる催告を無視し,相当期間を徒過してE及びDに対する主債務の に対しては返済を行わなかったため,被告が代位弁済をすることとなった。 上記経緯からすれば,X3グループは,被告からの再三にわたる催告を無視し,相当期間を徒過してE及びDに対する主債務の支払を怠ったものであり,当該行為が本件約定に違反していることは明らかである。本件約定の履行は,本件建物の維持運営のための資金繰りに欠かせず,本件賃貸借契約の骨格といえる部分であり,違反は重大であって,もはや当該契約を維持することは困難であるといわざるを得ない。 被告による解除権の行使の結果,本件賃貸借契約は効力を失ったものであるから,被告には原告らに対して賃料を支払う義務はない。 イ公租公課の不払を理由とする解除本件賃貸借契約において,本件建物の維持管理に伴う費用は,物件の公租公課及び保険料を除いて被告の負担とされており,物件の公租公課は各共有者が負担することとされていた。このため,本件建物の共有者間では,被告を納税代表者とし,被告を除く共有者が各共有持分に基づく公租公課負担分を納付期 限前に被告に支払って,被告がこれを自己の負担分と併せて甲府市に納付する取り決めとなっていた。 しかし,X3グループは,平成18年2月28日支払期限の固定資産税負担分を催告にもかかわらず被告に支払わなかったため,被告は,やむなく固定資産税負担分を立て替えた上でX3グループに支払う賃料からこれを差し引くことで処理した。その後も,X3グループは,平成19年1月に一度だけ固定資産税負担分を支払ったのを除き,その負担分を支払わなかったため,被告がこれを立て替え,同グループの固定資産税負担分を事実上差し引いた上で残余の賃料を支払うという対応をすることが常態となってしまった。被告は,X3グループの固定資産税負担分の不払状 なかったため,被告がこれを立て替え,同グループの固定資産税負担分を事実上差し引いた上で残余の賃料を支払うという対応をすることが常態となってしまった。被告は,X3グループの固定資産税負担分の不払状態を解消するため,被告がこれを立て替えたときはそれぞれ翌月分の賃料から相殺する措置などを提案したものの,合意が成立することはなく,事実上の差引処理を続けることとなった。 被告が平成23年1月23日に本件賃貸借契約を解除して以降は,前記差引処理をすることができず,被告の立替分が累積し,X3グループ3名で合計1500万円を超えている。 上記経緯からすれば,X3グループ3名が本件賃貸借契約に違反して既に債務不履行状態に陥っていることは明白である。 (原告らの主張)ア金融機関への返済遅延を理由とする解除 本件約定のような合意があったこと自体は原告らとしても否定しない。 しかしながら,本件賃貸借契約と本件約定とは別個独立の契約である。本件賃貸借契約の目的は,被告の立場からは本件建物全体を使用収益することであり,原告らの立場からは賃料を得ることである。これらの目的は本件約定あるいはその他の合意がなくても達成することができるのであり,本件賃貸借契約はそれのみで存立することのできる完結した契約である。本件建物の使用収益の合意と本件建物に係る建設資金の調達及び返済方法の合意とは 完全に独立して成立し得るものである。 本件契約書の体裁の面でも,本件約定は何ら記載されていない。本件約定は重要な内容を含んでいるから,それが本件賃貸借契約に組み込まれたとするならば,当然書面化されるはずであるにもかかわらず,本件契約書はもちろん,どの文書にもまったく記載されていない。これは,本件賃貸借契 要な内容を含んでいるから,それが本件賃貸借契約に組み込まれたとするならば,当然書面化されるはずであるにもかかわらず,本件契約書はもちろん,どの文書にもまったく記載されていない。これは,本件賃貸借契約と本件約定を一つの契約として構成するという合意が存在しないことを意味するというべきである。 本件契約書に添付された損益計算書及び資金繰表は賃料の改定の基準として添付されたものであって,それ以上の何らかの合意を表現したものではなく,本件約定の内容を当該損益計算書等から読み取ることは不可能である。 原告X1は,Eに対する債務を平成22年12月10日に一括返済しており,解除のための催告を受け取った時点で既に債務を履行していたから,原告X1に債務不履行があったとすることはできない。また,被告が代位弁済したDに対する借入れの債務者はX3であって,原告らは債務者ではなく,保証人でもなかったから,これを原告らの債務不履行と同視することはできない。 そうすると,本件賃貸借契約の解除の根拠となり得るのはX3の債務不履行だけであるから,解除の主張は失当である。 イ公租公課の不払を理由とする解除「固定資産税・都市計画税立替,差引支払推移」によれば,平成23年1月までは,原告ら及びX3の被告に対する本件賃貸借契約の賃料と,被告の原告ら及びX3に対する固定資産税等の立替金が差引計算されて履行されている。 したがって,同月23日以前は,固定資産税の支払は賃料と相殺されているため,不履行部分が存在しないことは明らかである。 同年2月以降の固定資産税は不払であるが,それは,被告が当然支払うべき賃料を支払わなかったから支払えなかっただけであり,被告からの正当な賃料 の支払があれば当然に支払うか,従 る。 同年2月以降の固定資産税は不払であるが,それは,被告が当然支払うべき賃料を支払わなかったから支払えなかっただけであり,被告からの正当な賃料 の支払があれば当然に支払うか,従前の取扱いのように差引計算されて処理されていたはずのものである。もし,正式な請求行為があれば,賃料債権との相殺を主張し得る状態にあるから,解除の前提としての債務不履行状態はそもそも存在しない。 被告が,原告らに対して催告したのは「D及びEに対する主債務を支払うこと」であり,催告書では,固定資産税の支払には何ら触れていないから,これを理由として解除することは,契約解除に催告を要求する法の趣旨を無視することになる。 仮に,形式的には債務不履行であるとしても,被告が賃料の不払という重大な背信行為を行っているにもかかわらず,被告の債務不履行が原因となって履行ができなくなっている債務不履行を根拠として解除ができるとの主張は信義則に反する。固定資産税の不払は,契約当事者間の信頼関係の基礎を失わせるような著しい背信行為とは到底いえない。 したがって,被告の解除の主張は失当である。 調停申立てによる賃料減額請求の存否(被告の主張)ア賃料減額請求の意思表示被告は,本件建物の賃料が経済事情の変動により不相当になったこと等から,平成21年1月30日,賃料減額の申入れを行った。 ところが,上記減額の申入れ以降も,甲府市の土地の価格が下落するなど経済事情は変動し,本件建物の賃料は益々不相当となっていった。そこで,被告は,前記平成21年1月30日付の賃料減額の意思表示により本件建物が減額されたことを前提に,平成22年2月,調停申立てという方法により,更に,賃料減額の意思表示を行ったのである。 た。そこで,被告は,前記平成21年1月30日付の賃料減額の意思表示により本件建物が減額されたことを前提に,平成22年2月,調停申立てという方法により,更に,賃料減額の意思表示を行ったのである。 当該調停の申立書は,同年2月25日,甲府簡易裁判所に受理され,その後原告ら及びX3に到達した。 原告らは,調停申立段階において賃料減額請求をした旨の被告の主張を明確に認めており,これについて自白が成立している。同月24日の賃料減額の意思表示は,真実に反しないし,錯誤も存在しない。 イ従前賃料の不相当性本件建物の賃料は,当初月額1125万円とされ,昭和65年(平成2年)4月からは月額1208万3340円とされていたところ,覚書による数度の改定を経て,平成16年覚書により月額871万6671円とされ,現在に至っている。 したがって,現在の賃料は,当初賃料から約22.6パーセント(昭和63年当時と比較した場合),または約27.9パーセント(平成2年当時と比較した場合)減額されていることとなる。 しかし,この間,原告らが所有する本件建物の底地の路線価は,平成元年において73万円/平方メートルであったものが,平成21年においては11万円/平方メートルとなり,約85パーセントの下落率を示している。また,公示価格においては下落率の幅はより大きく,昭和63年において118万円/平方メートルであったものが,平成21年において12万6000円/平方メートルとなり,約90パーセントの下落率となっている。 平成21年1月30日以降も,本件建物の底地の路線価は下落し,平成22年には10万5000円/平方メートルと,わずか1年で4.55パーセントの下落率を示している。本件建物の底地のうち被告が所有する土 平成21年1月30日以降も,本件建物の底地の路線価は下落し,平成22年には10万5000円/平方メートルと,わずか1年で4.55パーセントの下落率を示している。本件建物の底地のうち被告が所有する土地の固定資産評価額は,平成21年度において6万2700円/平方メートルであったものが,平成22年度には5万9500円/平方メートルとなり,5.1パーセントの下落率を示すに至っている。 このように,本件建物の賃料減額の割合に比して地価等の下落率は圧倒的に大きなものとなっており,本件建物の賃料が不相当であることは明らかである。 (原告らの主張) ア賃料減額請求の意思表示被告が提起した調停の申立書においては,その趣旨で,「賃料を,平成21年1月31日以降,相当額に減額する」と記載されており,同申立書の理由にも,賃料減額の申入れが同月30日に原告らに到達したこと,到達した翌日以降,賃料が相当額に減額されるべきことが記載されている。そして,調停申立書には,当該申立てをもって賃料減額の意思表示を行うとの記載は一切ない。 したがって,賃料減額の意思表示が,調停申立書が原告らに到達した時点であるという被告の主張が,自らした主張の誤解に基づくものであることは明らかである。被告主張の賃料減額の意思表示は認められず,賃料減額の主張は失当として棄却されなければならない。 なお,被告の賃料減額の意思表示を認める旨の原告らの主張は,平成21年1月30日の時点におけるそれを認めるという趣旨であって,被告の主張する調停申立時の減額の意思表示を認めたものではない。仮に,調停申立時における減額の意思表示について自白が成立するというのであれば,これは真実に反し,かつ,錯誤に基づくものであるため撤回する。 る調停申立時の減額の意思表示を認めたものではない。仮に,調停申立時における減額の意思表示について自白が成立するというのであれば,これは真実に反し,かつ,錯誤に基づくものであるため撤回する。 イ従前賃料の不相当性一般的にいって,バブル後の賃料はその不動産の時価と必ずしも連動しておらず,客観的な本件建物の賃料相当額も被告の主張するように低下しているものではない。 本件建物の適正な賃料額(被告の主張)価格時点を平成24年1月31日,賃料の種類を新規賃料とした場合の本件建物の適正な賃料額は年額5387万円(月額448万9167円,小数点以下第一位を四捨五入。)である。 (原告らの主張)価格時点を平成21年2月1日,賃料の種類を継続賃料とした場合の本件建物 の適正な賃料額は月額804万円である。 仮に,賃料減額の意思表示が調停申立ての段階でなされたとして,基準日を平成22年3月1日とした場合の適正な賃料額は月額789万円である。 なお,これは原告ら及びX3の合計金額であり,各自の賃料額の内訳は不動産の持分割合と必ずしも一致するものではないため,契約当初の賃料額の内訳の比率に従って各自の賃料額を算出することとなる。 相殺の可否(被告の主張)本件賃貸借契約においては,第8条(保証金の返済)として,「甲側の責に帰すべき事由により本契約が解除されたときは,第1項に規定する据置期間に拘わらず,甲(X3グループ3者)は直ちに連帯して乙(被告)に対し,未返済保証金に預託日から解約日迄の民法所定の年5分の割合による利息を付して返済する。」という規定が設けられている。 このように,同条は,解除事由としての責に帰すべき事由の存在は「甲側」にあれ 保証金に預託日から解約日迄の民法所定の年5分の割合による利息を付して返済する。」という規定が設けられている。 このように,同条は,解除事由としての責に帰すべき事由の存在は「甲側」にあれば足りるとする一方で,保証金の返済の主体を「甲」と規定し,両者を明確に区別している。これは上記契約がX3グループ3名についての包括契約であることから,「甲側」すなわち,X3,原告X1及び原告X2のうち1人についてでも解除事由としての「責に帰すべき事由」があれば,被告が同契約を解除するための解除事由としての要件を満たすことを規定するとともに,その場合,被告が同契約を解除することにより,当該契約がX3グループ3名について一体として解除され,契約全体が将来に向かって効力を失うことを規定したものである。 同条は,上記の理由から,被告が本件賃貸借契約を解除した場合,X3グループ3名が未返済保証金について直ちに連帯して返済する義務を負うことを規定したものである。 X3グループ3名は,相当期間を徒過してE及びDに対する主債務の支払を怠り,また,自己の固定資産税負担分も支払っていないのであるから,「甲側の責に 帰すべき事由」の存在は明白であって,かかる事由により本件賃貸借契約は解除され,契約全体が将来に向かって失効した(これにより,原告らが主張する覚書の停止条件も失効している。)ことは明らかである。 被告は,原告らに対して,被告が差し入れていた保証金のうち未返済の分6億7900万円及び預託日から解除日まで年5分に割合による利息を支払うよう請求する権利を有するので,原告らに対する保証金返還請求権を自働債権とし,原告らの請求権を受働債権として相殺の抗弁を主張する。 (原告らの主張)争う。 原告ら及びX3と被告 求する権利を有するので,原告らに対する保証金返還請求権を自働債権とし,原告らの請求権を受働債権として相殺の抗弁を主張する。 (原告らの主張)争う。 原告ら及びX3と被告間で締結された「建物賃料改定に関する覚書」6条2項では,保証金の返還時期は,「現契約に記されている賃料の月額12,083,340円に戻ることを停止条件とする」と明確に合意されているところであり,受働債権には条件が付されている。被告の相殺の意思表示はこの原告らの停止条件を一方的に奪うものであり,被告の主張する相対立する債権が相殺適状にないことは明らかである。 したがって,被告の主張は失当である。 不法行為ないし不当利得の成否(原告らの主張)被告は解除の主張にもかかわらず本件建物全体を占有し,使用収益を続けている。 各共有者は共有物の全部について使用することができるが,その使用は持分に応じたものでなければならない。共有物の具体的な使用方法については共有者間の合意が必要であると解されるところ,本件建物の使用方法を共有者間で取り決めた本件賃貸借契約が解除されたとの前提の下では共有者間の合意はもはや存在しない。共有者間の合意なく被告が本件建物全部を使用する権限のないことは論ずるまでもなく,被告の本件建物全部の占有が持分を超えた使用であることは明 らかである。 不動産の共有者の一部の者が共有物を単独で占有することができる権原につき特段の主張立証がない場合には,他の共有者は,前記占有により自己の持分に応じた使用が妨げられているとして,占有者に対し,持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができるところ,被告は本件建物を単独で占有することができる権原を有していな げられているとして,占有者に対し,持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができるところ,被告は本件建物を単独で占有することができる権原を有していないから,原告らは,被告に対し,持分割合に応じて占有部分に係る不当利得金ないし損害賠償金を請求することができる。 被告の不当利得又は原告らの損害の金額は,被告が本件賃貸借契約を解除したと主張する時点における賃料相当額である。本件賃貸借契約に基づいて被告が原告らに支払っている賃料は,本件建物の原告らの持分に係る部分に対する対価である。被告は本件建物の全部を単独で占有しているため,その対価を本来支払うべきであるのにその支払を免れているのであるから,これは被告の不当利得であると同時にそのまま原告らの損害である。 賃料相当額は,原告X1につき月額181万6280円,原告X2につき月額142万0071円である。 被告は,明渡請求が否定されることから占有が直ちに違法なものとはならないという結論に短絡して,損害賠償請求が否定されるという自己の主張を理由付けているが,これは明渡請求と金銭請求を意図的に混同するものであり,それが完全に不当であることは多言を要しないところである。 (被告の主張)ア共有者相互間の関係においては,①各共有者は,他の共有者との協議なしに共有物を単独で占有する権原は有しないとしても,②自己の持分に基づいて共有物の全部を占有使用する権原を有しているから,③現に占有使用する者(以下「占有共有者」という。)の占有は直ちに違法なものとはならない一方,④非占有者の共有者も,上記①の点については占有共有者と同等の資格・権原しか 有しないから,⑤上記②,③のような性格をもつ占有共有者の占有を排除すべき相応の理由を主張立証 とはならない一方,④非占有者の共有者も,上記①の点については占有共有者と同等の資格・権原しか 有しないから,⑤上記②,③のような性格をもつ占有共有者の占有を排除すべき相応の理由を主張立証しない限り,共有物の自己への明渡しを請求することができない。そして,⑥このような関係は,共有物の使用収益についての協議がなされていない限り民法252条本文とは関係がないから,占有又は非占有の共有者が多数持分権者であれ,少数持分権者であれ何ら異なるところはない。 前記①から⑥の基準からすれば,本件建物について100万分の21万7380の持分を有する被告が,共有物である本件建物全部について占有使用する権原を有していること,したがって,現に本件建物を占有使用している被告の占有は直ちに違法なものとはならないことは明らかである。 本件建物は客観的にみて,被告が単独で使用することが予定されており,原告らをはじめとする他の共有者が使用することは予定されていないから,被告が本件建物を百貨店として使用し,占有している限り,本件建物本来の用法に従った使用占有がなされていることになり,原告らの使用が違法に妨げられたと解することはできない。 被告は解除を行っても,その共有持分により本件建物全部を占有する権原を有し,占有していることは間違いないのだから,被告の占有が違法なそれに直ちに転化するものではなく,不法行為に基づく損害賠償請求権は発生しない。 イ損失とは不当利得の成立原因とされる法律事実によって,財産が積極的に減少すること,その事実がなければ当然に生ずべき財産の増加がないこととされるところ,原告らが本件建物について持分に応じた占有をしても何も利用できないだけではなく,持分に応じた占有を誰かに貸そうとしても借りる者が現れるとは考えられないから,解除 財産の増加がないこととされるところ,原告らが本件建物について持分に応じた占有をしても何も利用できないだけではなく,持分に応じた占有を誰かに貸そうとしても借りる者が現れるとは考えられないから,解除によって原告らが占有を一部取得しても何ら利益を得られず,そうなると,被告が現在本件建物を占有していることが原告らの得られるべき財産上の利益を害しているとはいえず,損失はない。 したがって,不当利得返還請求権は発生しない。 仮に,原告らに何らかの損失があり,その限りで不当利得返還請求が成立し 得る可能性があるとしても,解除の時点における約定賃料額が損失であるとの主張が当然に成り立つものではない。 第3 当裁判所の判断 1 前記前提となる事実に下記証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 本件建物建設に至る経緯等被告は,昭和55年ころからその営業する百貨店の売場面積を拡張することを計画し,他の地権者らと協議の上,合同で新館の建物を建設することとした。 原告X1,X3及びX4は,前記建物建設に伴う建設協力金として,被告から保証金名目で資金を拠出してもらうこととなり,合計7億3900万円の保証金の提供を受けた(以下「本件保証金」という。)。なお,保証金の内訳は,原告X1が3億9800万円,X3が1億8600万円,X4が1億5500万円であった。 被告の保証金で賄えない建設資金については,被告が保証人となり,原告X1及びX3が借主となって金融機関から借り入れることとなった。 その際,原告X1,X3及びX4と被告との間では,新館が完成した際には,被告が彼らの有する共有持分を使用するための契約を締結すること,原告X1及びX3は,被告が支払う使用料をもって金融機関からの借入れ及び本 原告X1,X3及びX4と被告との間では,新館が完成した際には,被告が彼らの有する共有持分を使用するための契約を締結すること,原告X1及びX3は,被告が支払う使用料をもって金融機関からの借入れ及び本件保証金の返済を行うこと,原告X1,X3及びX4は,新館建設資金として被告が借り入れている債務の担保として,所有する不動産を提供することなどが合意された。 X3は,上記合意を受けて,昭和63年7月,F銀行から3億0500万円を,同年3月,株式会社G銀行(現株式会社H銀行,以下「G銀行」という。)から3億5000万円を借り入れた。また,原告X1は,同月,G銀行から7500万円を借り入れた。 なお,前記借入債務は,F銀行が破綻したことで,Dに譲渡され,株式会社Iがその回収代行をすることとなった。また,G銀行に対する前記借入債務は,平 成7年8月,X3及び原告X1がEから借入れを行って返済した。Eからの借入額は,X3が2億5700万円,原告X1が6300万円であった。 本件建物は昭和63年9月26日に完成した。(甲1,7,弁論の全趣旨) 本件保証金の返済計画等ア本件賃貸借契約において,本件保証金の返済計画は以下のとおり合意されていた(甲1)。 「甲」(原告X1,X3及びX4)は,本件保証金を本件賃貸借契約期間開始の満15年経過後,西暦2004年(平成16年)の12月末日を第1回とし,15年間で年賦均等割にした金額を毎年12月末日限り連帯して被告に返済する。 「甲側」の責に帰すべき事由により本件賃貸借契約が解除されたときは,前記据置期間にかかわらず,「甲」は直ちに連帯して被告に対し,未返済保証金に預託日から解約までの民法所定の年5分の割合による利息を付して返済する。 イ原告ら 賃貸借契約が解除されたときは,前記据置期間にかかわらず,「甲」は直ちに連帯して被告に対し,未返済保証金に預託日から解約までの民法所定の年5分の割合による利息を付して返済する。 イ原告ら,X3及び被告は,平成11年7月13日,本件賃貸借契約の賃料を改定する覚書を作成した際,原告X1の本件保証金分3億9800万円のうち,6000万円を平成11年7月末に敷金に置き換えること,本件保証金の返済計画を別表1のとおり変更することを合意し,前記覚書にその旨を明記した(甲2)。 ウ原告ら,X3及び被告は,平成16年2月10日,本件賃貸借契約の賃料を改定する覚書を作成した際,原告らが被告の経営危機に伴い,賃料について1億3509万1745円を被告のために協力したことを確認するとともに,本件保証金に関する暫定処置として,その返済計画を別表2のとおり変更すること,返済については本件賃貸借契約の賃料月額が1208万3340円に戻ることを停止条件とすること,返済期間及び返済金額は継続審議とし,両者が共存共栄を図るため必要の都度協議することができることを合意し,前記覚書に その旨を明記した(甲3)。 本件契約書等の体裁本件契約書には,本件保証金の預託及び返済条件に関する規定が設けられるとともに,原告X1,X3及びX4の向こう30年間の損益計算書及び資金繰表の試算が添付されていた。本件契約書第4条には「本契約上当事者が行う意思表示は全て文書によって行うものとする。」との記載が設けられていた。 また,本件賃貸借契約に関する平成11年7月13日付け覚書には,原告ら及びX3が被告のために担保を提供した借入れの残債務額,被告が借入残高をこれ以上増加させないことを約束することが規定されていた。(甲1,2) 関する平成11年7月13日付け覚書には,原告ら及びX3が被告のために担保を提供した借入れの残債務額,被告が借入残高をこれ以上増加させないことを約束することが規定されていた。(甲1,2) 金融機関への返済状況原告X1及びX3は,平成13年ころから,本件建物の建設資金として金融機関から借り入れた債務の返済を滞らせるようになった。 被告は,平成22年4月ころ,Eから,被告が保証している上記借入債務の返済を求められたことを受け,同年8月24日,原告X1及びX3に対し,7日以内にEに対して負担している債務全額を一括返済するよう催告した。 原告X1及びX3は,平成22年12月10日,Lから融資を受けて,Eに対する借入債務を一括返済した。 また,被告は,X3に対し,同社がDに対して負担する債務についても一括返済するよう複数回催告したものの,X3が前記債務を履行しなかったため,平成23年1月21日,Dに対し,保証債務の履行として,元金7320万円及び遅延損害金1074万9561円を支払った。(乙1~3,5,6,9,11,12,弁論の全趣旨) 固定資産税の負担状況ア被告は,甲府市から,共有者間の各納税額を市が決めることはできないため代理納付者を決めてもらいたい旨の要請を受け,平成元年9月ころ,X3及び原告X1を含む共有者との間で,被告が各共有者から登記簿上の建物面積比で 算出した固定資産税負担分を徴収し,自己の負担分と併せて,本件建物の固定資産税を代表して甲府市に納付することを取り決めた。 イ被告は,原告ら及びX3が平成18年2月28日納付期限の平成17年度第4期固定資産税負担分を支払わなかったため,平成18年2月2日,納付期限までに被告の口座にその負担分を振り込むよう催告し 。 イ被告は,原告ら及びX3が平成18年2月28日納付期限の平成17年度第4期固定資産税負担分を支払わなかったため,平成18年2月2日,納付期限までに被告の口座にその負担分を振り込むよう催告したが,原告ら及びX3は,期限までに固定資産税負担分を支払わなかった。被告は,原告ら及びX3の固定資産税負担分を立て替えて納付した上,三者に対して同年4月10日に支払うべき本件賃貸借契約の賃料から,被告が立て替えた固定資産税負担分を控除することとし,差引処理をして当該賃料を支払った。 それ以降,原告ら及びX3は,平成19年1月31日に一度だけ固定資産税負担分を被告に支払ったものの,その余の固定資産税負担分の支払をしなかったことから,被告は,原告ら及びX3の支払うべき固定資産税負担分を立て替え,その時々の資金繰りを踏まえて納付期限から1か月ないし3か月後に支払うべき本件賃貸借契約の賃料から,立て替えた固定資産税負担分を控除して賃料を支払うという対応をとるようになった。 ウ被告は,固定資産税負担分の取扱いを明確化するため,平成20年8月12日,原告ら及びX3に対し,納付期限の1週間前までに被告の口座に固定資産税負担分を振り込むこと,その振込期限までに固定資産税負担分が振り込まれず,被告が立替払いを行ったときは,納付期限後最初に期限が到来する賃料から立替払金相当額を相殺し,相殺後の残額を原告ら及びX3に支払うことなどを内容とする覚書を送付した。しかし,両者の間で協議が整うことはなく,被告はそれ以降も前記の差引処理を継続することとなったが,原告ら及びX3がこれに異議を唱えたことはなかった。 平成23年2月以降は,被告が原告らに対して,本件賃貸借契約に基づく賃料を支払わなくなったため,原告らが被告に支払うべき被告の立て替えた固定資産税負担分も未納 これに異議を唱えたことはなかった。 平成23年2月以降は,被告が原告らに対して,本件賃貸借契約に基づく賃料を支払わなくなったため,原告らが被告に支払うべき被告の立て替えた固定資産税負担分も未納となっている。(以上乙19~29,弁論の全趣旨) 調停の申立て被告は,平成22年2月25日,原告ら及びX3を相手方とし,申立ての趣旨を,本件建物について締結した平成16年2月10日付け及び平成17年1月14日付け覚書記載の賃料を平成21年1月31日以降相当額に減額すること,本件保証金6億7900万円の返還を求めることとして,甲府簡易裁判所に対し,調停を申し立てた(以下「本件調停」という。)。 本件調停申立書の「申立ての理由」には,被告が原告らに対し,平成16年2月10日付け覚書記載の賃料の減額を申し入れ,この申入れが平成21年1月30日に原告らに到達したこと,契約締結時から平成21年までの公示価格の下落率が賃料減額の割合を圧倒的に上回っていることなどが記載されていた。(甲5) 賃料鑑定書の内容不動産鑑定士Jは,価格時点を平成21年2月1日,賃料の種類を継続賃料とした場合の本件建物の賃料額を月額804万円と評価した(以下「J鑑定」という。)(甲8)。 また,不動産鑑定士Kは,価格時点を平成24年1月31日,賃料の種類を新規賃料とした場合の本件建物の賃料を年額5387万円と評価した(乙18)。 2 争点(請求の特定の有無)について被告は,賃料のような定期金の支払を求める場合にあってはその終期の記載がないと特定性に欠ける旨を主張する。 しかしながら,本件請求の趣旨は,「被告は,原告X1に対し,平成23年2月から毎月10日限り,各181万6280円を支払え。」,「被告は はその終期の記載がないと特定性に欠ける旨を主張する。 しかしながら,本件請求の趣旨は,「被告は,原告X1に対し,平成23年2月から毎月10日限り,各181万6280円を支払え。」,「被告は,原告X2に対し,平成23年2月から毎月10日限り,各142万0071円を支払え。」というものであり,将来給付の訴えにおいては,起算日と数額が表示されている限り強制執行時に金額を算定できるから,特定性に欠けるところはないのであって,本件訴えについても請求の特定性は満たされている。 したがって,被告の前記主張には理由がない。 3 争点(本件賃貸借契約の解除の可否)についてア金融機関への返済遅延を理由とする解除前記1のとおり,原告X1,X3及びX4は,本件賃貸借契約の締結に先立ち,被告との間で,本件建物建設に伴う建設協力金として,被告から本件保証金の提供を受けること,本件保証金で賄えない建設資金については,被告が保証人となり,原告X1及びX3が借主となって金融機関から借り入れること,原告X1及びX3は,被告が支払う賃料をもって金融機関からの借入れ及び本件保証金の返済を行うことなどを合意した。 そして,前記前提となる事実及び1のとおり,原告らと被告は,本件賃貸借契約の賃料を複数回にわたり改定した際,同時に本件保証金の返済計画についても改定し,両者の間で作成した覚書にその返済計画を明記するなどした。 このような本件賃貸借契約締結に至る経緯や当該契約に関する覚書の体裁に照らすと,前記合意が本件賃貸借契約と一定の関連性を有するものとしてなされたことは否定できない。 しかしながら,一般的に,賃貸借契約は,賃貸人が賃借人に目的物を使用,収益させ,賃借人がそれに対する対価として賃料を支払 借契約と一定の関連性を有するものとしてなされたことは否定できない。 しかしながら,一般的に,賃貸借契約は,賃貸人が賃借人に目的物を使用,収益させ,賃借人がそれに対する対価として賃料を支払うことを本質的内容としている。このような契約の性質に照らせば,上記本質的内容と異なる義務を契約の内容として付加する意思が当事者間に存する場合には,その旨を契約書等において明確化しておくのが通常である。殊に,本件賃貸借契約が,長期間に及び,かつ,多額の保証金の授受を伴う企業間の契約であって,本件契約書も17条にわたって詳細に規定されていること(甲1)に加えて,前記1で見たように本件契約書第4条では契約当事者間の意思表示は全て文書で行うものとされ,実際にそれに沿って本件賃貸借契約の重要な内容といえる賃料の減額等についていずれも文書が作成されていることにもかんがみれば,前記約定が本件賃貸借契約と一体をなすものであるならば,これに違反した場合の効果等も含めて契約書等に明示されているはずである。それにもかかわらず,本件契約書ないし本件賃貸借 契約に関して数度にわたって作成された覚書には,原告X1及びX3の金融機関からの借入れ及び返済に関する規定やこれに違反した場合に本件賃貸借契約を解除することができるなどの効果等が何ら明示されていないのであるから,原告X1及びX3が被告から受領する賃料をもって金融機関への返済に充当する旨の合意が,本件賃貸借契約における賃貸人の義務として契約の内容に包含されるものでなかったことは明らかというべきである。 本件契約書に原告らの30年間の損益計算書及び資金繰表の試算が添付されているのは,本件契約書第6条に「賃料の改定は,別途試算表を基本に5年毎に公租公課,公定歩合の変動,諸物価,経済情勢を勘案して 本件契約書に原告らの30年間の損益計算書及び資金繰表の試算が添付されているのは,本件契約書第6条に「賃料の改定は,別途試算表を基本に5年毎に公租公課,公定歩合の変動,諸物価,経済情勢を勘案して,甲・乙協議のうえ決定する。」という規定を設けたことに伴い,今後の賃料改定の参考となる一つの基準を示すものとしてそれらの試算表を添付したにすぎないのであって,このような本件契約書の添付資料から,本件賃貸借契約と本件約定とを一体の契約とする当事者間の意思を推認することはできない。これは,本件契約書に,原告X1及びX3のみならず,金融機関からの借入れを行っておらず約定の対象外であるX4の試算表が添付されていることからも明らかというべきである。 これらの事実からすれば,賃料を原資とする借入れの返済の約定が本件賃貸借契約と不可分一体のものとして合意され,賃貸人の義務となっていたと解することはできない。 そうすると,原告X1ないしX3に前記約定違反があるとしても,それをもって本件賃貸借契約を解除することはできず,前記約定違反を理由とする解除は認められない。 イ公租公課の不払を理由とする解除前記前提となる事実及び1のとおり,本件建物の公租公課は各共有者が負担することとされており,その共有者間では,被告が代表して固定資産税を甲府市に納付し,他の共有者は持分割合に応じた固定資産税負担分を被告に支払う旨の合意がなされていたところ,原告らは,平成18年2月以降,平成19年1月 を除いて固定資産税負担分を被告に支払わなかった。 しかしながら,被告は,原告らが支払うべき固定資産税負担分を立て替えた上で,原告らに支払う本件賃貸借契約の賃料からその負担分を差し引く処理をすることで対応していたから,固定資産税の不払が本件賃 。 しかしながら,被告は,原告らが支払うべき固定資産税負担分を立て替えた上で,原告らに支払う本件賃貸借契約の賃料からその負担分を差し引く処理をすることで対応していたから,固定資産税の不払が本件賃貸借契約の解除事由たり得るとしても,その不払分は,当該差引処理によって最終的に回収されており,未だ履行遅滞の状態にあるということはできないのであって,これをもって本件賃貸借契約を解除することはできない。 したがって,原告らの公租公課の不払を理由とする解除は認められない。 4 争点(調停申立てによる賃料減額請求の存否)について 賃料減額請求の意思表示ア前記1のとおり,被告は,本件調停申立書において,申立ての趣旨を,本件建物について締結した平成16年2月10日付け及び平成17年1月14日付け覚書記載の賃料を平成21年1月31日以降,相当額に減額するとした上,申立ての理由に,減額の申入れが同月30日に原告らに到達したこと,前記申入れの到達した翌日以降,賃料が相当額に減額されるべきこと,契約締結時から平成21年までの公示価格の下落率が賃料減額の割合を圧倒的に上回っていることなどを記載した。 そして,本件調停申立書には,申立書をもって賃料減額の意思表示をする旨は何ら記載されておらず,さらに,被告が本件訴訟で主張するような,平成21年1月の減額の意思表示以降も地価の下落等が持続していることなども記載されていない(甲5)。 これらの事実からすれば,本件調停申立時において被告が主張していた賃料減額請求の意思表示の時点が平成21年1月30日であることは明らかであり,そのほかに被告が本件調停申立てをもって減額の意思表示をしたことを認めるに足りる証拠がないことも考慮すると,被告が賃料減額請求の意思表 の意思表示の時点が平成21年1月30日であることは明らかであり,そのほかに被告が本件調停申立てをもって減額の意思表示をしたことを認めるに足りる証拠がないことも考慮すると,被告が賃料減額請求の意思表示をしたのは同日であって,それに加えて更に本件調停申立時に減額の意思表示を したものと認めることはできない。 そうすると,賃料額の不相当性及び適正な賃料額を判断する上での基準日は,平成21年1月30日である。 イ被告は,本件調停申立時の賃料減額の意思表示について原告らの自白が成立する旨を主張するところ,確かに,原告らは,「既に,本件調停申立て段階において,本件建物の賃料(使用料)について,賃料減額請求を行っており(甲5,第1申立ての趣旨第1項等)」(平成23年12月14日付被告準備書面第3の2イ)との被告の主張を認める旨の陳述をした。 しかしながら,前述のとおり,本件調停申立ては,平成21年1月30日の賃料減額請求をしたことを前提とするものであることがその申立書の記載から明らかであるから,この申立書を証拠として引用しての被告の前記主張は,本件調停申立ての段階で既に平成21年1月30日の賃料減額請求が存在していたとの趣旨と理解する余地は十分にあり,逆に,この被告の主張を,調停申立時においてあらためて賃料減額請求をしたとの趣旨と解釈することはむしろ困難である。原告らの認否も,被告の主張を前者の趣旨と理解して平成21年1月30日の減額の意思表示の存在を認めたのであって,調停申立時のそれを認めた趣旨ではない旨の釈明をしているから,被告の主張するような自白が成立したということはできない。 不相当性前記前提となる事実のとおり,本件賃貸借契約は昭和63年3月11日に締結され,当初の賃料は月額1125 から,被告の主張するような自白が成立したということはできない。 不相当性前記前提となる事実のとおり,本件賃貸借契約は昭和63年3月11日に締結され,当初の賃料は月額1125万円であった。その後,契約締結時の合意に従って,平成2年4月から賃料が月額1208万3340円に増額された。 本件賃貸借契約が締結された当時はいわゆるバブル経済の最中であり,本件賃貸借契約締結に至る前記経緯や,本件賃貸借契約において,賃料の改定は試算表を基本に5年ごとに公租公課,公定歩合の変動,諸物価,社会情勢を勘案して協議の上決定するとされていることにもかんがみれば,当事者間において,本件保 証金及び金融機関からの借入金の返済計画を考慮要素とし,更には今後の経済情勢等もある程度見込んだ上で前記賃料額を定めたものと推認される。 しかしながら,いわゆるバブル崩壊とともに日本経済を取り巻く状況が一変し,経済の著しい低迷期を迎えた上,地価が長期間にわたって下落し続けているのは公知の事実であり,原告ら及びX3と被告が,本件賃貸借契約の賃料について,前記前提となる事実のとおり,平成11年7月13日,同年8月分から平成14年7月分までを月額1027万0839円に減額し,平成16年2月10日には,平成14年5月分から平成15年10月分まで月額821万6671円に減額したことを確認するとともに,平成15年11月分から平成16年10月分までを月額871万6671円に変更した上,平成17年1月14日,平成16年11月分から平成17年10月分までを月額871万6671円に据え置く旨を合意したのも,このような経済情勢の悪化を反映して被告の経営状況が悪化したので,その要請を受けて行われたものである。 平成17年1月の前記合意以降,原被告間に を月額871万6671円に据え置く旨を合意したのも,このような経済情勢の悪化を反映して被告の経営状況が悪化したので,その要請を受けて行われたものである。 平成17年1月の前記合意以降,原被告間において本件賃貸借契約の賃料に関する合意はなされていないが,同年以降も,経済情勢はいわゆるリーマン・ショック等の影響を受けて好転の兆しを示しておらず,山梨県においても,以下に見るようにその影響が顕著に現れている。 山梨県地価調査甲府市年次表によれば,甲府市商業地の地価は,平成元年を100とすると,平成3年に156.6となって上昇傾向を示していたものの,同年を境に下落に転じ,平成5年に141.2,平成8年に94.5,平成12年に53.3,平成16年に29.5,そして,平成21年には22.0と大幅な下落率を示している。また,甲府市中央1丁目地内商業地域の1平方メートル当たりの公示価格は,平成15年1月1日時点で25万6000円,平成16年1月1日時点で20万6000円,平成17年1月1日時点で16万6000円,そして,平成21年1月1日の時点では12万6000円と,わずか5,6年の間に5割程度下落している。さらに,本件建物で営業している百貨店の売り上げ 推移の目安の一つとなる甲府市における地元購買率も,公共交通機関の整備による首都圏への人口流出,郊外での大規模商業施設の建設等の要因によって,平成7年には90パーセント近い数値であったものが,平成20年には60パーセント台まで低下している(甲8,乙18)。 このような経済情勢や地価の変動に照らせば,本件賃貸借契約の賃料は,前記のとおり,平成16年2月ないし平成17年1月の最終合意時点で当初賃料から約23パーセント減額されているものの,周辺地域の地価等の下落率は賃料の減額率を上回って らせば,本件賃貸借契約の賃料は,前記のとおり,平成16年2月ないし平成17年1月の最終合意時点で当初賃料から約23パーセント減額されているものの,周辺地域の地価等の下落率は賃料の減額率を上回っており,更に,最終合意時点以降も,基準時点である平成21年1月30日において経済の低迷は回復の兆しを示していないから,最終合意時点の賃料月額871万6671円は,土地の価格の低下その他の経済事情の変動により不相当になったものと認められる。 5 争点(本件建物の適正な賃料額)について 前記1のとおり,J鑑定は,価格時点を平成21年2月1日,賃料の種類を継続賃料とした場合の本件建物の賃料額を月額804万円と評価したが,その算定過程は以下のとおりである(甲8)。 ア差額配分法正常実質賃料を積算法により年額8540万円と(なお,期待利回りについては,土地の期待利回り5%,対象建物の償却後の期待利回り10%から,両者の構成割合を考慮して9.1%と査定した),実際実質賃料を年額1億0557万円と査定した上で,その差額である-2020万円について,差額部分の発生要因は,対象不動産を取り巻く社会的,経済的及び行政的諸要因の相関結合の結果もたらされたものであると考えられ,経済情勢の変化により発生した賃料変動分を賃貸人と賃借人のどちらかに多くウェイト付けするのは妥当でないため,衡平の観点から,賃貸人と賃借人双方で折半する方法を採用することとした。その結果,差額配分法による試算賃料を月額796万円と査定した。 イ利回り法本件賃貸借契約の内容及び経緯を勘案し,最終合意時点における純賃料の基礎価格に対する割合を採用して継続賃料利回りを9.8%と査定し,基礎価格にこれを乗じ,必要諸経費を加えて,利回り り法本件賃貸借契約の内容及び経緯を勘案し,最終合意時点における純賃料の基礎価格に対する割合を採用して継続賃料利回りを9.8%と査定し,基礎価格にこれを乗じ,必要諸経費を加えて,利回り法による試算賃料を月額746万円と査定した。 ウスライド法消費者物価指数等を踏まえて変動率を90.7%と査定し,最終合意時点における純賃料にこれを乗じ,必要諸経費を付加して,スライド法による試算賃料を月額811万円と査定した。 エ賃貸事例比較法同一需給圏内における貸店舗の賃貸事例に比準計算を行い,標準的賃料を査定した上で,個別格差修正を行い,個別単価を導き出してそれに評価数量を乗じて,賃貸事例比較法による試算賃料を月額884万円と査定した。 オ試算賃料の調整及び鑑定評価額の決定 差額配分法による試算賃料は,賃料の原価性,収益性,市場性を踏まえており,経済合理性を有する一方,賃料の遅行性,粘着性に引きずられる側面をも併せ持つ。すなわち,両側面の間に発生する乖離について,その過程を調整して結論に導くところに本手法の意義が認められ,賃貸借当事者双方の均衡を得た試算賃料といえる。 利回り法による試算賃料は,実際実質賃料よりも低く試算されたが,これは最終合意時点から価格時点までの間に,基礎価格のうちで地価が大幅に下落したことを過大に織り込んだ結果であるものと判断され,このような地価下落期においては投資元本価値の下落に伴う損耗分を全て賃貸人に負わせることになり,利益衡量の観点から説得力にやや欠けるものと判断される。 スライド法による試算賃料は,賃貸市場を取り巻く経済情勢の変化を表示し,比較検証可能性の高い複数の指数を総合的に勘案して求められているた め, 力にやや欠けるものと判断される。 スライド法による試算賃料は,賃貸市場を取り巻く経済情勢の変化を表示し,比較検証可能性の高い複数の指数を総合的に勘案して求められているた め,最終合意時点以降に生じた経済事情等の変動を客観的に把握した試算賃料である一方,対象不動産の百貨店としての特殊な用途や取引当事者間の契約事情等の個別性を充分に反映し難い側面も有する。 賃貸事例比較法による賃料は,対象不動産と類似する大規模店舗の事例資料の入手が極めて困難であるほか,賃貸借契約の継続にあたっては貸主・借主の個別的事情に左右され個別性が強いことから比準に困難が伴うことは否めない。 上記検討結果を踏まえると,正常実質賃料の水準を念頭に置き,差額部分の配分にあたって衡平の観点からその配分割合を判定した差額配分法が最も説得力が高いものと認められ,次いで,広域の地域に渡る経済事象にかかる各種指数を用いたスライド法,甲府市中心商業地における賃貸市場の実態を反映した賃貸事例比較法が説得力を有するものと認められる。一方,地価下落による元本価値の変動を過大に織り込んだ利回り法による試算賃料は相対的な説得力にやや欠けるものと認められる。 各試算賃料が有する説得力にかかる判断結果を踏まえ,ウェイト付けを行って対象不動産の月額実質賃料を以下のとおり決定した。 a 差額配分法796万円×50%=398万円b 利回り法746万円×10%=74万6000円c スライド法811万円×20%=162万2000円d 賃貸事例比較法884万円×20%=176万8000円e 月額実質賃料前記合計812万円 811万円×20%=162万2000円d 賃貸事例比較法884万円×20%=176万8000円e 月額実質賃料前記合計812万円 上記で求められた月額実質賃料から敷金の運用益を控除し,対象不動産の 月額支払賃料(鑑定評価額)を804万円と決定した。 本件賃貸借契約における相当賃料額を判断するに当たっては,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであるところ,前記のとおり,J鑑定は,価格時点を平成21年2月1日として継続月額賃料を,差額配分法,利回り法,スライド法及び賃貸事例比較法の各手法に基づいて試算賃料を算出し,各手法の特徴等を考慮して月額支払賃料を算出しており,これは,継続賃料の算定において行われる一般的な不動産鑑定評価の手法にのっとったものといえる。そして,その算定過程において,本件建物が百貨店営業に供されている大規模不動産であることなどの特殊事情についても十分に考慮の上,各手法の本件建物への適用可能性やその限界も踏まえてそれぞれに比重を付けるなどして組み合わせて算定されており,その算定過程及び考慮要素等に特段不合理な点は認められない。 また,J鑑定の月額804万円という賃料は,前記当事者が賃料額決定の要素とした事情,本件賃貸借契約の経緯及びその後も被告の要請に応じて原告らが賃料の減額に同意していたことなどにかんがみても相当な額と評価することができる。 したがって,賃料減額請求後の適正な賃料額は月額804万円と認められる。 これに対し,前記1のとおり,不動産鑑定士Kは,本件建物の賃料を年額5387万円(月額448万9167円)と評価したが,当該鑑定は,価格時点を平成2 賃料額は月額804万円と認められる。 これに対し,前記1のとおり,不動産鑑定士Kは,本件建物の賃料を年額5387万円(月額448万9167円)と評価したが,当該鑑定は,価格時点を平成24年1月31日,賃料の種類を新規賃料とした場合のものであり,前提となる鑑定条件が本件事実関係に照らして不適切であるから,採用できず,同鑑定評価の存在は前記認定を左右するものではない。 6 争点(相殺の可否)について前記1アのとおり,本件保証金については,「甲側」(原告X1,X3及びX4を指す。)の責に帰すべき事由により本件賃貸借契約が解除されたときは,返済の据置期間にかかわらず,「甲」は直ちに連帯して被告に対し,未返済保証金に預託 日から解約までの民法所定の年5分の割合による利息を付して返済する旨の合意がなされているところ,前記3のとおり,本件賃貸借契約の解除は認められないから,本件保証金の返済に関して約定された前記期限の利益は失われていない。 したがって,原告らの本件保証金の返還債務と被告の賃料支払債務は相殺適状になく,相殺の抗弁は認められない。 7 原告らの賃料債権の額前記5のとおり,賃料減額請求後における適正な賃料額は,原告ら及びX3の三者合計804万円であり,これを契約当初の賃料比率にしたがって按分すると,原告X1につき月額177万7376円(小数点以下第一位を四捨五入),原告X2につき月額138万9312円となる。 8 結論以上によれば,争点について判断するまでもなく,原告らの請求は,前記7記載の賃料の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容することとし,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官林 正 前記7記載の賃料の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容することとし、主文のとおり判決する。 主文 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官 林正宏 裁判官 三重野真 裁判官 小川惠輔(別紙物件目録及び別表省略)
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