平成23年4月27日判決言渡平成22年(行ケ)第10327号審決取消請求事件平成23年3月2日口頭弁論終結判決 原告三井住友カード株式会社 訴訟代理人弁護士小林十四雄訴訟代理人弁理士岡村信一訴訟復代理人弁護士森一生 被 告特許庁長官指定代理人小川きみえ同小俣克巳同小林和男同板谷玲子 主文 1 特許庁が不服2010-215号事件について平成22年8月31日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯等原告は,別紙商標目録1記載のとおり,上段に「MITSUISUMITOM OCARD」の欧文字と下段に「GoldLoan」の欧文字を横書きしてなり,第36類「資金の貸付け」を指定役務とする商標(以下「本願商標」という。)について,平成20年12月10日に商標登録出願(商願2008―99643号)をしたが,平成21年10月2日付けで拒絶査定を受け(同月7日送達),平成22年1月6日,同査定に対する不服の審判(不服2010-215号事件)を請求した。 特許庁は,平成22年8月31日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は同年9月13日に原告に送達された。 2 審決の理由審決の理由は, た。 特許庁は,平成22年8月31日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は同年9月13日に原告に送達された。 2 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願商標は,登録第3140108号商標(別紙商標目録2記載のとおり,「CitiGoldLoan」の欧文字を横書きしてなり,平成4年9月29日に登録出願され,第36類「資金の貸付け」を指定役務として,平成8年4月30日に設定登録がされ,その後存続期間の更新登録がなされ,現に有効に存続しているもの。以下「引用商標」という。)と類似し,商標法4条1項11号に該当する,というものである。 第3 審決の取消事由に関する原告の主張審決には,以下のとおり誤りがある。 1 引用商標について(1) 審決は,引用商標について,引用商標の構成中「Citi」,「Gold」及び「Loan」の各文字部分の語頭が,「C」,「G」及び「L」と,それぞれ大文字で表されていることからすれば,全体として,「Citi」,「Gold」及び「Loan」の各文字よりなるものと看取されるべきであるとする。 しかし,審決の判断は,以下のとおり誤りである。 すなわち,引用商標は,太めのやや傾いたゴシック体で書された「CitiGold」と「Loan」の各欧文字を,約1文字分の間隔を空けて組み合わせてなる結合商標である。このうち,「CitiGold」の文字部分は一連一体の文字構成 よりなるうえに,文字同士の間隔がほとんどないため,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものというべきであり,外観上ひとかたまりの造語と認識されるものである。仮に,本願商標が「Citi」「Gold」「Loan」 して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものというべきであり,外観上ひとかたまりの造語と認識されるものである。仮に,本願商標が「Citi」「Gold」「Loan」の各文字よりなるものと取引者,需要者が認識する場合があるとしても,そのことから直ちに取引者,需要者が語頭の「CitiGold」の文字部分を「Citi」と「Gold」とに分離して観察することは誤りである。 (2) 審決は,引用商標の構成中「Citi」の文字部分は,金融大手シティグループ・インコーポレーテッド(以下「シティグループ」という場合がある。)の金融サービス消費者企業銀行部で,米国に本店を置く銀行である「Citibank,N.A.(シティバンク,エヌ・エイ)」(以下「引用商標権者」ということがある。)の商号の略称であると認定する。 しかし,審決の認定は,以下のとおり誤りである。 すなわち,引用商標権者の商号の略称は「Citibank」であり,「Citi」ではない。仮に,「Citi」が引用商標権者又は引用商標権者の属するシティグループの略称であったとしても,指定役務である資金の貸付けの需要者の範囲は広く一般需要者を含むものであるところ,一般需要者が引用商標中の一部のみを捉えて,これを引用商標権者やシティグループの略称を表示したものと認識し得るほど,当該「Citi」の構成文字部分は取引者,需要者間において出所識別標識として強く支配的な印象を有するものではない。 (3) 審決は,引用商標について,その構成中,引用商標権者の著名な略称となっている「Citi」と「GoldLoan」のそれぞれの文字部分をもって,取引される場合があり,引用商標を常に一体のものとして把握すべき特段の事情はないと認定する。 しかし,審決の認定は,以下のとおり誤りで iti」と「GoldLoan」のそれぞれの文字部分をもって,取引される場合があり,引用商標を常に一体のものとして把握すべき特段の事情はないと認定する。 しかし,審決の認定は,以下のとおり誤りである。 すなわち,上記のとおり,「Citi」の文字部分は引用商標権者の商号の略称と して著名なものではないから,「CitiGoldLoan」の構成よりなる引用商標を「Citi」と「GoldLoan」の2つの文字部分よりなるものと認識,理解されない。取引の実情をみると,①引用商標権者は,引用商標中の「CitiGold」の文字部分に酷似する「Citigold」(シティゴールド)を「資金の貸付け」を含む役務に使用していること(甲1,2),②引用商標権者は,「CITIGOLD」の一連不可分の文字を構成要素とする結合商標を商標登録していること,③引用商標権者は,「CITIGOLDPREMIUM」(甲9),「CITIGOLDSELECT」(甲10), 「CITIGOLDPRIVATECLIENT シティゴールドプライベートクライアント」(甲11)等について「資金の貸付け」を指定役務に含む商標登録をしていることによれば,引用商標権者が「CITIGOLD」を一連不可分の商標として使用しているといえる。 (4) 審決は,引用商標について,その構成文字全体より生ずる「シティゴールドローン」の称呼のほか,「Citi」及び「GoldLoan」の各文字部分に相応した「シティ」及び「ゴールドローン」の称呼をも生ずると認定する。 しかし,審決の認定は,以下のとおり誤りである。 すなわち,前記のとおり,取引の実情において引用商標が「Citi」と「GoldLoan」の各文字部分に分離観察されるべき特段の事情はなく,引用商標より「シティ」及 は,以下のとおり誤りである。 すなわち,前記のとおり,取引の実情において引用商標が「Citi」と「GoldLoan」の各文字部分に分離観察されるべき特段の事情はなく,引用商標より「シティ」及び「ゴールドローン」の称呼が生ずることはない。 (5) 被告は,乙11が引用商標の使用例であることを前提として,引用商標中の「Citi」の文字部分は,引用商標権者が属するシティグループのハウスマークと,「GoldLoan」の文字部分は,「貸金の貸付け」役務についてのペットマークと,それぞれ認識されると主張する。 しかし,乙11は,記載されている3桁の郵便番号等からすれば,審決時の10年以上前のものと推認される上,そこでも引用商標権者のハウスマークは,「CITIBANK」のロゴと横長楕円形の内部中央に四稜星を配置してなる図形であって,「Citi」ではないから,「CitiGoldLoan」の文字よりなる引用商 標は,ハウスマークとペットマークとの結合商標ではなく,全体が「資金の貸付け」に関する1つのペットマーク(個別役務商標)である。 したがって,被告の上記主張は失当である。 2 本願商標と引用商標との類否について本願商標と引用商標とは,以下のとおり類似しない。 (1) 外観,観念及び称呼について以下のとおり,外観,観念,称呼及び取引の実情を考慮すれば,本願商標と引用商標とは,類似しない。 ア外観本願商標は,「MITSUISUMITOMOCARD」と「GoldLoan」の各欧文字を特有の書体で二段に表記されたものであるのに対し,引用商標は「CitiGoldLoan」の欧文字を本願商標とは明確に異なる書体で表記されたものである。また,引用商標の「CitiGold」の文字部分は,前記のとおり,一連一体の文 であるのに対し,引用商標は「CitiGoldLoan」の欧文字を本願商標とは明確に異なる書体で表記されたものである。また,引用商標の「CitiGold」の文字部分は,前記のとおり,一連一体の文字構成よりなる上,文字同士の間隔がほとんどないため,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している。したがって,本願商標と引用商標とは,外観において類似しない。 イ観念本願商標中「MITSUISUMITOMOCARD」の文字部分は,取引者,需要者間において周知性を有する原告のハウスマークであり,本願商標中の「GoldLoan」の文字部分と引用商標とは,共に特定かつ明確な意味合いを想起させることのない造語と認められるため,両者は観念上非類似のものである。 ウ称呼本願商標は,「ミツイスミトモカードゴールドローン」あるいは「ゴールドローン」の称呼が生じるのに対し,引用商標は「シティゴールドローン」又は「シティゴールド」の称呼が生じる。引用商標「CitiGoldLoan」中の「Citi Gold」の文字部分は,前記のとおり,外観上,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものであるから,「ゴールドローン」の称呼は生じない。したがって,両商標は,称呼において異なる。 (2) 取引の実情等についてア本願商標の使用の実情について本願商標は,原告により「金利逓減型カードローン」の商標として審決時以前である平成21年1月5日から使用されている。なお,原告は,以下の商標登録を受けているところ,これらの商標中,需要者に出所識別標識として認識される特徴のある部分は原告の商号の略称と「ゴールドローン」の文字部分である。この「ゴールドローン る。なお,原告は,以下の商標登録を受けているところ,これらの商標中,需要者に出所識別標識として認識される特徴のある部分は原告の商号の略称と「ゴールドローン」の文字部分である。この「ゴールドローン」の文字部分は,本願商標と称呼を同じくするものであるから,引用商標との称呼類似を理由に本願商標を拒絶する一方で,下記商標の商標登録を認めることは合理性を欠く。 (ア) 「ゴールドローンカードレス」(甲48)(イ) 「三井住友カードゴールドローンカードレス」(甲49)(ウ) 「三井住友カードゴールドローンプラス」(甲50)(エ) 「ゴールドローンプラス」(甲51)イ引用商標及び引用商標に類似する商標の使用の実情について引用商標は,審決時の相当前から使用されていない。むしろ,シティバンク銀行株式会社(以下「シティバンク銀行」という場合がある。)は,引用商標の「CitiGold」の文字部分に酷似する「Citigold」について,預金額が1000万円を超える顧客に対して行う資産運用のコンサルタント役務の商標として使用している(甲1,2)。また,引用商標権者は,前記のとおり,「CITIGOLD」の文字部分を含む商標について複数商標登録を受けている(甲9ないし11)。 ウ混同のおそれについて本願商標の使用対象役務は,一般需要者に対する資金の貸付けであるところ,前記のとおり,引用商標は,審決時の相当前から使用されておらず,引用商標の一部 に酷似する「Citigold」が,特定顧客のための資産運用コンサルタント役務の商標として使用されている。そうすると,実際の取引に際して,本願商標と引用商標との間に出所の混同を生じるおそれを推認させる特段の事情は存在しない。 (3) 過去の登録例について引用商標権者は,次の商標登録を受けて ている。そうすると,実際の取引に際して,本願商標と引用商標との間に出所の混同を生じるおそれを推認させる特段の事情は存在しない。 (3) 過去の登録例について引用商標権者は,次の商標登録を受けている。 ア 「CitiActiveLoan」(甲12,13)イ 「CitiSpecialLoan」(甲14,15)ウ 「CitiSelectLoan」(甲16,17)エ 「CITISELECTION」(甲18,19)他方,次の各商標は,上記登録商標があるにもかかわらず,商標法4条1項11号に該当しないものとして,商標登録を受けている。 オ 「ACTIVEローン」(甲20,21)カ 「アクティブローン」(甲22ないし25)キ 「セレクション」(甲26,27) 3 結論以上のとおり,本願商標と引用商標とは,外観,称呼,観念のいずれにおいても,類似せず,取引の実情を考慮しても,両者間に出所の誤認混同を生ずるおそれはない。仮に,本願商標が称呼上引用商標に類似するとしても,外観において著しく相違し,観念上も非類似であるほか,引用商標は不使用であることなどの取引の実情に鑑みれば,本願商標の指定役務についての使用が,引用商標権者との間で役務の提供主体の誤認混同を生じさせるおそれはない。 第4 被告の反論 1 引用商標について原告は,引用商標中「CitiGold」の文字部分は不可分一体の構成よりなり,「Citi」の文字部分は引用商標権者の商号の略称として著名なものではないから,「CitiGoldLoan」の構成よりなる引用商標を「Citi」 と「GoldLoan」の2つの文字部分よりなるものと理解することはないと主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり,失当である。すなわち,(1) 引用商標は,「Ci を「Citi」 と「GoldLoan」の2つの文字部分よりなるものと理解することはないと主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり,失当である。すなわち,(1) 引用商標は,「CitiGoldLoan」の文字からなるところ,構成中の「CitiGold」の文字が一連に表され,「Loan」の文字との間に一文字分の空白を有しているとしても,「Citi」,「Gold」及び「Loan」の各文字は,その語頭が,「C」,「G」及び「L」のように,それぞれ大文字で表されていることから,視覚上,「Citi」,「Gold」及び「Loan」の各文字から構成されているものと看取し得るものである。 (2) 引用商標は,前記(1)のとおり,視覚上,「Citi」,「Gold」及び「Loan」の各文字部分から構成されていると看取し得るものであるところ,その構成中の「Citi」は,指定役務との関係では,世界でも有数の銀行「Citibank,N.A.(シティバンク,エヌ・エイ)」(日本においては,平成19年に,「Citibank,N.A.(シティバンク,エヌ・エイ)」の在日支店の銀行業務の譲渡を受けたシティバンク銀行が,その銀行業務を引き継いでいる。)を傘下にするシティグループの略称を表記したものであると理解される。そうすると,引用商標の構成中の「Citi」は,引用商標の指定役務「資金の貸付け」を始め金融商品の提供を受ける取引者,需要者をして,シティグループの略称,又は,これと何らかの関係を有する者の取り扱う役務等の代表的な出所表示として認識,把握させるものといえる。さらに,引用商標の構成中の「Gold」及び「Loan」の文字とを組み合わせた「GoldLoan」の文字部分は,特定の意味合いを想起するものではないが,「資金の貸付け」の個別商標であるペ といえる。さらに,引用商標の構成中の「Gold」及び「Loan」の文字とを組み合わせた「GoldLoan」の文字部分は,特定の意味合いを想起するものではないが,「資金の貸付け」の個別商標であるペットマークと捉えて取引に資されることも少なからずあり,「資金の貸付け」の役務に関する出所表示標識として取引者,需要者に看取させるものといえる。 したがって,審決の引用商標についての認定に誤りはない。 2 本願商標と引用商標との類否について以下のとおり,原告は,審決が,本願商標と引用商標との類否判断について,外 観,称呼,観念による全体的観察,具体的取引の実情の参酌などを誤り,その結果,上記判断を誤ったと主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり,失当である。 すなわち,(1) 本願商標についてア本願商標の外観本願商標は,上段に「MITSUISUMITOMOCARD」の欧文字と下段に「GoldLoan」の欧文字を配してなるところ,「MITSUISUMITOMOCARD」及び「GoldLoan」の文字は,上下二段に離れて配置されていることに加え,「GoldLoan」の文字は,上段の「MITSUISUMITOMOCARD」の文字に比べ,顕著に大きく表した構成からなるものであるから,このような構成にあっては,「MITSUISUMITOMOCARD」の文字部分と「GoldLoan」の文字部分とは,視覚上分離して看取されるものである。 イ本願商標の観念,称呼本願商標の指定役務「資金の貸付け」を提供する金融業界において,「資金の貸付け」を意味する「ローン」あるいは「LOAN」の文字と他の文字とを結合し,例えば,「@LOAN(アットローン)」(乙1),「アグリローン」(乙2),「おでかけマイ する金融業界において,「資金の貸付け」を意味する「ローン」あるいは「LOAN」の文字と他の文字とを結合し,例えば,「@LOAN(アットローン)」(乙1),「アグリローン」(乙2),「おでかけマイカーローン」(乙3),「快環暮らしローン」(乙4),「L.Lローン」(乙5),「リゾート応援ローン」(乙6),「NOLOAN(ノーローン)」(乙7)及び「ハローローン」(乙8)のように,「△△LOAN」(「△△ローン」)との語が,「資金の貸付け」の役務の出所標識として使用されている。 この点,本願商標の構成中「MITSUISUMITOMOCARD」の語は,原告の略称である「三井住友カード」の語を欧文字(ローマ字及び英語)で表記したものであるから,上記文字部分は,原告の略称であり,かつ,原告の取り扱う役務(金融商品等)の代表的な出所表示として認識し,把握され,他方,「GoldLoan」の文字部分は,役務の種類を個別化して特定するための個別商標である ペットマークと捉えて取引に資されることも少なからずあり,「GoldLoan」の文字部分のみで,独立して,自他役務の識別標識としての機能を果たすものというべきである。そして,「金」等を意味する「Gold」(小学館ランダムハウス英和大辞典。乙9の1)と「貸付」等を意味する「Loan」(小学館ランダムハウス英和大辞典。乙9の2)を結合してなる「GoldLoan」の文字は,外国語辞典(小学館ランダムハウス英和大辞典。乙9の3)や金融辞典(東洋経済新報社。乙9の4)に,特定の意味合いを表す語として掲載されておらず,需要者等が,本願商標から,特定の観念は生じない。 以上によれば,本願商標は,その構成文字全体から生ずる「ミツイスミトモカードゴールドローン」の称呼のほかに,その構成中の「MITSU れておらず,需要者等が,本願商標から,特定の観念は生じない。 以上によれば,本願商標は,その構成文字全体から生ずる「ミツイスミトモカードゴールドローン」の称呼のほかに,その構成中の「MITSUISUMITOMOCARD」の文字部分に相応した「ミツイスミトモカード」の称呼及び「GoldLoan」の文字部分に相応した「ゴールドローン」の称呼を生ずる。 (2) 類否の判断についてア外観本願商標と引用商標は,共に,「GoldLoan」の文字部分を要部の1つとし,又は,該文字部分が独立して把握されるものであるから,その外観を全体観察をもって対比した場合には相違する点を有するとしても,本願商標と引用商標の要部である「GoldLoan」の文字とを対比した場合には,その文字構成を同一にするものであるから,外観において,近似した印象を与える。 イ観念及び称呼本願商標と引用商標は,「GoldLoan」の文字部分が,独立して自他役務の識別標識としての機能を果たし得るといえることから,簡易迅速を尊ぶ商取引の場においては,該文字部分より生ずる「ゴールドローン」の称呼をもって,取引に当たる場合があり得る。 本願商標と引用商標とは,「ゴールドローン」の称呼を共通にする。 両商標の「GoldLoan」の文字部分からは,特定の観念は生ずることは ない。また,それぞれから生ずる観念の相違により,明確に区別し得るというものではないから,観念が外観及び称呼の類否判断に影響を与えることはない。 ウ取引の実情等実際の商取引の場にあっては,商品及び役務の主体を表示する代表的な出所表示(ハウスマーク)とともに,取り扱いに係る多くの商品及び役務の種類を個別化して特定するための個別商標(ペットマーク)が一般的に使用されている。こ あっては,商品及び役務の主体を表示する代表的な出所表示(ハウスマーク)とともに,取り扱いに係る多くの商品及び役務の種類を個別化して特定するための個別商標(ペットマーク)が一般的に使用されている。この点,本願商標及び引用商標の指定役務「資金の貸付け」の金融商品を取り扱う業界においては,その役務の特徴として,それぞれの企業によって,個別に金利を優遇する等の差別化を図り,その金融商品に対して,それぞれ個別の商品表示,すなわち,ペットマークを使用している実情があり,「GoldLoan」もその一類型であるといえる。そして,「資金の貸付け」を指定役務として,先願登録された商標が,「CitiGoldLoan」のように,ハウスマークとペットマークとで構成されており,かつ,当該商標が実際に使用された事実(乙11)がある場合,「CitiGoldLoan」に接する取引者,需要者は,「Citi」の部分をシティグループの代表的な出所表示と認識し,「GoldLoan」の部分を個別役務,すなわち「資金の貸付け」の個別の出所表示として認識し,看取するものというべきである。かかる状況において,ペットマークと同一又は類似の商標を,シティグループとは,何らの関係を有さない原告が,商標出願し,それを登録することは,取引者,需要者に商品及び役務の出所の混同を生じさせるおそれがある。 3 結論以上のとおり,本願商標と引用商標とは,「GoldLoan」の文字部分において,外観が類似し,「ゴールドローン」の称呼を共通にし,取引の実情においても,その出所の誤認混同を生じさせるおそれがあり,自他役務の識別機能の希釈化を招来するものであって,需要者及び取引者に与える印象,連想等を総合して全体的に考察すると,本願商標と引用商標とは類似する。よって,本願商標は,商標 るおそれがあり,自他役務の識別機能の希釈化を招来するものであって,需要者及び取引者に与える印象,連想等を総合して全体的に考察すると,本願商標と引用商標とは類似する。よって,本願商標は,商標 法4条1項11号に該当するとした審決の認定・判断に誤りはない。 なお,原告は,引用商標権者に係る「Citi」と他の既成語とを結合した「Citi○○○」あるいは「CITI○○○」の造語商標についての登録例を挙げ,これらの登録例と並存する「○○○」部分の登録例の存在があるところからすれば,本願商標も同様に登録されるべきであると主張する。しかし,登録出願に係る商標が登録され得るものであるか否かの判断は,当該商標の全体構成に基づいて,指定役務に係る取引の実情を勘案して,個々の商標ごとに個別具体的に検討し,判断されるべきものであり,原告の上記主張は失当である。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,本願商標と引用商標について類似であるとした審決の判断は誤りであると解する。その理由は,以下のとおりであるが,事案にかんがみ,取消事由1及び2の当否をまとめて判断する。 1 事実認定(1) 本願商標の外観,観念及び称呼本願商標は,別紙商標目録1記載のとおり,「MITSUISUMITOMOCARD」の欧文字を上段に,「GoldLoan」の欧文字を下段に,それぞれ横書きで表記し,「GoldLoan」の文字は,上段の「MITSUISUMITOMOCARD」の文字に比べ,2倍以上に大きく表記した文字からなる。 「MITSUISUMITOMOCARD」部分は,「MITSUI」,「SUMITOMO」及び「CARD」のそれぞれの間に,半字分の僅かな間隔が設けられている。また,「GoldLoan」部分は,「Gold」と「Loan」との間に,約1字 部分は,「MITSUI」,「SUMITOMO」及び「CARD」のそれぞれの間に,半字分の僅かな間隔が設けられている。また,「GoldLoan」部分は,「Gold」と「Loan」との間に,約1字分の間隔が設けられている。 本願商標中「MITSUISUMITOMOCARD」部分からは,我が国における著名な金融機関である三井住友銀行と関連を有する原告(三井住友カード株式会社)の商号(略称),又はその取り扱うカードとの観念を生じさせる。また,本願商標中「Gold」部分からは,金,富,財宝,金色,貴重なもの,高貴なも の,素晴らしいものなどの観念を生じさせる(乙9の1「小学館ランダムハウス英和大辞典第2版」参照)。本願商標中「Loan」部分からは,貸与,貸し付け,貸与金,借金などの観念を生じさせる(乙9の2「小学館ランダムハウス英和大辞典第2版」参照)。もっとも,「Loan」部分は,指定役務である「資金の貸付け」そのものを指す語であることに照らすならば,役務の出所を識別する機能はないと解するのが相当である。「GoldLoan」に相当する語は存在しないので,固有の観念は生じることはないが,場合により,素晴らしいとの印象を与える貸し付けなどの観念を生じさせることがあり得るといえる。そうすると,本願商標全体からは,三井住友カード株式会社が業として行う,特定の種類のローンなどの観念を生じさせることがあり得るといえる。 本願商標は,その全体から「ミツイスミトモカードゴールドローン」,「ミツイスミトモカード」又は「ゴールドローン」との称呼が生じ得る。 (2) 引用商標の外観,観念及び称呼引用商標は,別紙商標目録2記載のとおり,「CitiGoldLoan」の欧文字を,ほぼ同じ大きさの太い文字で,右に傾斜させ,横書きで表記されたもの る。 (2) 引用商標の外観,観念及び称呼引用商標は,別紙商標目録2記載のとおり,「CitiGoldLoan」の欧文字を,ほぼ同じ大きさの太い文字で,右に傾斜させ,横書きで表記されたもので,「CitiGold」と「Loan」との間には,約1文字分の間隔が設けられている。 引用商標の「CitiGold」部分は,「CitiGold」に相当する既存の語は存在しないので,その限りでは,格別の観念を生じることはなく造語と理解される。なお,「CitiGold」部分の,先頭の「Citi」部分からは,「city」とは綴りが異なるものの,その音から「都市」との観念,又は金融機関であるシティグループないし関連会社の商号(略称)であるとの観念を生じさせ,後方の「Gold」部分からは,金,金色,富,財宝,貴重なもの,高級なもの,素晴らしいものなどの観念を生じさせることがあり得るといえる。引用商標の「Loan」部分からは,貸与,貸し付け,貸与金,借金などの観念が生じる。もっとも,「Loan」部分が,指定役務である「資金の貸付け」そのものを指す語であることに照 らすならば,役務の出所を識別する機能はないと解するのが相当である。 引用商標からは,「シティゴールドローン」ないし「シティゴールド」の称呼が生じさせるというべきである。 (3) 取引の実情等についてア本願商標原告は,金利逓減型カードローンについて,本願商標の一部を構成する「GoldLoan」をカードに表記して使用するほか,「ゴールドローン」,「三井住友カードゴールドローン」等をウエブサイトにおいて使用している(甲47)。 また,原告は,第36類「資金の貸付け」を指定役務として,「ゴールドローンカードレス」(甲48),「三井住友カードゴールドローンカードレス」(甲49),「三 ブサイトにおいて使用している(甲47)。 また,原告は,第36類「資金の貸付け」を指定役務として,「ゴールドローンカードレス」(甲48),「三井住友カードゴールドローンカードレス」(甲49),「三井住友カードゴールドローンプラス」(甲50),「ゴールドローンプラス」(甲51)の商標を登録している。 イ引用商標引用商標権者は,国際的な金融機関であるシティグループに属し,米国に本社を置く,シティバンク,エヌ・エイである。平成19年には,シティバンク,エヌ・エイの在日支店の銀行業務が譲渡されるなどして,日本法人であるシティバンク銀行株式会社が設立された(甲4,5,乙10)。 シティバンク銀行株式会社は,平成21年11月ころ,預金額が1000万円を超える顧客向けの各種金融取引及び資産運用コンサルタントサービスについて,「CitiGold」,「Citigold」及び「シティゴールド」の標章を用いていた(甲1,2)。同社の発行したパンフレットには,「シティゴールドは,シティバンクが長い年月をかけて培った運用ノウハウやグローバルな情報力を最大限活用し,お客様の資産形成をお手伝いするワンランク上のステージ。・・・シティゴールドのお客様を担当するのは,・・・・シティゴールドエグゼクティブ」などの説明文が記載されている。 また,シティバンク,エヌ・エイ及びシティコープカードサービスInc.などのグ ループ企業が,最高100万円までの貸付けを行なうサービスについて,引用商標を使用した例もある(乙11)。 さらに,シティバンク,エヌ・エイは,第36類「資金の貸付け」を含む指定役務について,「CITIGOLDPREMIUM」(甲9),「CITIGOLDSELECT」(甲10),「CITISELECTION」(甲18)の登録商標を有して 6類「資金の貸付け」を含む指定役務について,「CITIGOLDPREMIUM」(甲9),「CITIGOLDSELECT」(甲10),「CITISELECTION」(甲18)の登録商標を有している。また,同社は,第36類「資金の貸付け」を含む指定役務について,「CitiActiveLoan」(甲12,13),「CitiSpecialLoan」(甲14,15),「CitiSelectLoan」(甲16,17)の商標を登録していた(いずれも存続期間満了により抹消済)。 また,シティグループは,第36類「資金の貸付け」を含む指定役務について,「CITIGOLDPRIVATECLIENT/シティゴールドプライベートクライアント」(甲11)の登録商標を有している。 2 本願商標と引用商標との類否(1) 類否の判断本願商標からは,別紙商標目録1に記載したとおりの「MITSUISUMITOMOCARDGoldLoan」の外観を呈し,「ミツイスミトモカードゴールドローン」ないし「ゴールドローン」との称呼を生じさせる。本願商標から,特定の観念は生じないというべきであるが,原告である三井住友カード株式会社の提供するローンの種類であるとの観念を生じさせることもあり得るといえる。 これに対し,引用商標からは,別紙商標目録2に記載したとおり「CitiGoldLoan」の外観を呈し,「シティゴールドローン」ないし「シティゴールド」との称呼を生じさせるが,特定の観念は生じない。なお,「シティゴールドローン」ないし「シティゴールド」から,需要者,取引者に対して,シティバンク銀行株式会社等が属するシティグループが提供する,ローンないし金融サービスとの観念を生じさせることもあり得るといえる。 以上の事実を前提とすれば,本願商標と引用 需要者,取引者に対して,シティバンク銀行株式会社等が属するシティグループが提供する,ローンないし金融サービスとの観念を生じさせることもあり得るといえる。 以上の事実を前提とすれば,本願商標と引用商標とは,その外観,称呼において 相違する。また,観念においては,特定の観念が生じないので,対比することはできないが,観念が生じるとすれば,その限りで相違する。さらに,本願商標及び引用商標の指定役務は,いずれも「資金の貸付け」であるところ,一般に,その需要者,取引者である資金の借主にとっては,資金の貸主が誰であるかは,最も重要な要素の一つであるから,契約を締結するに当たり,相応の注意を払った上で,貸主が誰であるかを確認するものと推認されることなど,指定役務の内容を含めた取引の実情等をも総合考慮するならば,取引者,需要者において,両商標における役務の出所について混同を来すおそれは認められないと解すべきであって,両商標は類似しない。 (2) 被告の主張に対する判断ア被告は,引用商標について,①「CitiGold」部分の「C」のみならず「G」も大文字で表記されていることから,「Citi」は,「Gold」と分離されて理解されること,②「Citi」は,シティグループの著名な略称と理解されること,③そうすると「GoldLoan」部分が,認識の対象となる部分とされるべきである旨を主張する。 しかし,被告の上記主張は採用することができない。すなわち,前記認定のとおり,①引用商標の外観は,「CitiGold」と「Loan」との間には,1文字分の明確な間隔が設けられていることから,その表記態様から離れて,「Citi」のみを分離して理解し,「Gold」部分を「Loan」を併せて理解することは,著しく不自然であること,②引用商標の「Loan」部 確な間隔が設けられていることから,その表記態様から離れて,「Citi」のみを分離して理解し,「Gold」部分を「Loan」を併せて理解することは,著しく不自然であること,②引用商標の「Loan」部分は,指定役務である「資金の貸付け」を意味するから,引用商標における識別機能を有する特徴部分といえず,引用商標の特徴的部分は,「CitiGold」部分と解するのが相当であること,③引用商標の「CitiGold」部分は,右斜めに傾斜し,太く描かれた独特の書体が用いられ,またCiti部分については,大文字と小文字のいずれも縦の長さを揃えるなど特有のデザインが施されていること,④「CitiGold」部分は,シティグループにより,パンフレット等の宣伝広告媒体において,数多く 使用されていること等の事情を総合考慮するならば,引用商標の特徴的部分は,「CitiGold」であるということができる。また,本件全証拠によるも,取引者,需要者は,引用商標から,「GoldLoan」部分によって,当該役務の出所を識別して,取引を行っていたと認めるに足りる証拠はない。したがって,「GoldLoan」ないし「ゴールドローン」をもって,指定役務の出所の特徴的な部分と解するのは相当でない。 イ被告は,本願商標及び引用商標の指定役務である「資金の貸付け」を取り扱う業界においては,商品及び役務の主体を表示する代表的な出所表示(ハウスマーク)とともに,商品及び役務の種類を個別化して特定するための個別商標(ペットマーク)を使用している実情があり,引用商標についても,「Citi」がハウスマークに相当し,「GoldLoan」がペットマークに相当すると主張する。 しかし,前記認定した取引の実情に照らすならば,引用商標は,「CitiGold」の部分が取引者,需要者に対して 」がハウスマークに相当し,「GoldLoan」がペットマークに相当すると主張する。 しかし,前記認定した取引の実情に照らすならば,引用商標は,「CitiGold」の部分が取引者,需要者に対して役務の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えるから,「Citi」の部分を除外した「GoldLoan」の文字部分が,自他役務の識別標識としての機能を果たすとすることは考えにくい。のみならず,本件全証拠によるも,引用商標について,「GoldLoan」の文字部分が,独立して自他役務の識別標識としての機能を果たしていると認めるに足りる証拠は存在しない。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 (3) 小括以上のとおり,本願商標と引用商標とは,外観,称呼において類似せず,取引の実情を考慮にいれても,役務の出所に誤認を生じさせるおそれがあるとはいえないから,審決が,本願商標と引用商標は類似するとした判断には誤りがある。 3 結論以上によれば,原告の本件請求は理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官知野明 裁判官中平健は,転補のため,署名押印することができない。 裁判長裁判官飯村敏明 (別紙) 商標目録 1 本願商標 2 引用商標 飯村敏明 (別紙)商標目録 1 本願商標 2 引用商標
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