令和5年1月23日判決言渡 令和4年(行ケ)第10028号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和4年11月8日判決 原告 パナソニック株式会社 同訴訟代理人弁護士 小松陽一郎 原悠介 千葉あすか 同訴訟代理人弁理士 新居広守 道坂伸一 大山丈二 被告 アイリスオーヤマ株式会社 同訴訟代理人弁護士 山田威一郎 松本響子 同訴訟代理人弁理士 臼井尚 吉田稔 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 特許庁が無効2021-800028号事件について令和4年3月15日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は、発明の名称を「LED照明装置」とする特許第6145236号(請求項の数3。以下、請求項1ないし3に係る特許を「本件特許」という。)の特許権者である。 本件特許の登録に至る経過は、次のとおりである。 ア 親出願 ローム株式会社は、平成22年3月8日、特願2010―51082号(以下「親出願」といい、明細書、特許請求の範囲又は図面を「明細書等」といい、親出願の願書に最初に添付した明細書等を「親出願の当初明細」 式会社は、平成22年3月8日、特願2010―51082号(以下「親出願」といい、明細書、特許請求の範囲又は図面を「明細書等」 といい、親出願の願書に最初に添付した明細書等を「親出願の当初明細書等」という。親出願の当初明細書等のうち、明細書、特許請求の範囲は、甲4のとおりであり、図面は、甲1の図面のとおりである。)として特許出願をした。親出願の優先権主張は、平成21年7月13日、平成21年7月13日平成21年7月30日、平成21年7月30日、平成21年7 月30日、平成21年7月30日、平成21年7月30日、平成21年7月30日、平成21年7月30日、平成21年9月17日、平成21年9月29日、平成21年12月4日、平成21年12月10日についてされた(以下、これらのうち最も早い平成21年7月13日を「親出願の優先日」という。)。 イ子出願ローム株式会社は、平成26年4月10日、親出願の一部を、特願2014-81073号(以下「子出願」という。)として特許出願した。 ウ孫出願ローム株式会社は、平成27年9月14日、子出願の一部を、特願20 15-180567号(以下「孫出願」という。)として特許出願した。 エ事業承継被告は、平成28年、ローム株式会社のLED照明事業を承継し、前記アないしウに係る出願人の地位その他の権利義務関係を承継した。 オ本件特許出願と設定登録被告は、平成29年3月7日、孫出願の一部を、特願2017-429 00号として特許出願し(以下「本件特許出願」という。請求項の数3。 優先日平成21年7月13日)、本件特許出願について、平成29年5月19日に本件特許の設定登録を受けた。 ⑵ 旧パナソニック株式会社は、令和3年3月31日、本件特許を無効とする いう。請求項の数3。 優先日平成21年7月13日)、本件特許出願について、平成29年5月19日に本件特許の設定登録を受けた。 ⑵ 旧パナソニック株式会社は、令和3年3月31日、本件特許を無効とすることを求めて特許庁に無効審判(無効2021-800028号事件。以下 「本件無効審判」という。)を請求し、特許庁は、令和4年3月15日、結論を「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月28日、旧パナソニック株式会社に送達された。 ⑶ 旧パナソニック株式会社は、令和4年4月1日付けでパナソニックホールディングス株式会社に商号を変更した上、同日付けで会社分割を行い、本件 無効審判の請求人としての地位を含む電気・通信・電子並びに照明機械器具の製造、販売及びこれに付帯又は関連する一切の事業を原告に承継した。 ⑷ 原告は、令和4年4月23日、本件審決の取消しを求めて、知的財産高等裁判所に本件訴えを提起した。 2 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は、次のとおりである(以下、請求項1ないし3に記載された発明をそれぞれ「本件発明1」ないし「本件発明3」といい、これらをまとめて「本件各発明」という。)。 ⑴ 請求項1(本件発明1)LEDユニットとマウント部とからなるLED照明装置であって、 前記LEDユニットは、 複数のLED発光部と、前記複数のLED発光部が長手方向に沿って配列された長尺状の基板と、断面コの字状であり、前記コの字状の底面部の外側に前記基板が設けられたベース部と、前記基板および前記ベース部の前記底面部を覆う長尺状の透光カバーと、 を備えており、前記マウント部は、長尺状の底板部、および前 記コの字状の底面部の外側に前記基板が設けられたベース部と、前記基板および前記ベース部の前記底面部を覆う長尺状の透光カバーと、 を備えており、前記マウント部は、長尺状の底板部、および前記底板部の短手方向両端から起立する2つの壁部からなる凹部を備え、前記LEDユニットは、前記マウント部の前記凹部に着脱可能に取付けられる、LED照明装置。 ⑵ 請求項2(本件発明2)前記LEDユニットを前記マウント部に着脱可能に保持する弾性部材を備える、請求項1に記載のLED照明装置。 ⑶ 請求項3(本件発明3)前記マウント部は、金属板からなる、請求項1または2に記載のLED照 明装置。 3 本件審決の理由の要旨等⑴ 本件無効審判における請求人(前記1⑶のとおり原告が承継した。)の主張の概要は、次のとおりである。 ア本件特許出願の出願日について 本件特許の請求項1に記載の「着脱可能に」との事項、請求項1に記載の「透光カバー」との事項、請求項2に記載の「弾性部材」との事項、請求項1に記載の「長尺状の基板」、「長尺状の透光カバー」及び「長尺状の底板部」における「長尺状」との事項は、親出願の当初明細書等に記載された事項を上位概念化等し、新たな技術的事項を導入するものであって、 分割要件における実体的要件を充足しないから、本件特許出願は不適法な 分割出願である。 したがって、本件特許出願について出願日の遡及は認めることができず、その出願日は、現実の出願日である平成29年3月7日である。 イ無効理由1本件各発明は、甲1(特開2011-142063号公報、親出願の公 開公報)に記載された発明であるから、特許法29条1項3項に該当し、特許を受けることができない。 したがって、 効理由1本件各発明は、甲1(特開2011-142063号公報、親出願の公 開公報)に記載された発明であるから、特許法29条1項3項に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本件特許は、特許法123条1項2号に該当し、無効とされるべきである。 ウ無効理由2 本件各発明は、甲1に記載された発明に基づいて、又は甲1に記載された発明及び甲11若しくは甲12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件特許は、特許法123条1項2号に該当し、無効とさ れるべきである。 ⑵ 本件審決の理由は、別紙1審決書(写し)記載のとおりであり、原告の主張に対する判断の要旨は次のとおりである。 ア本件特許出願の出願日について(本件審決第6の1⑻〔本件審決40~41頁〕) 本件特許の請求項1に記載の「着脱可能に」との事項、請求項1に記載の「透光カバー」との事項、請求項2に記載の「弾性部材」との事項、請求項1に記載の「長尺状の基板」、「長尺状の透光カバー」及び「長尺状の底板部」における「長尺状」との事項は、親出願の当初明細書等の記載に対して新たな技術的事項を導入するものとは認められない。 したがって、本件特許出願は、適法な分割出願であり、その出願日は、 親出願の出願日である平成22年3月8日である。 イ無効理由1及び2について(本件審決第6の2〔本件審決41頁〕)甲1は、平成23年7月21日に公開されたものであり、本件特許出願の優先日(平成21年7月13日)より後に公開された刊行物である。 したがって、本件各発明は、甲1に記載された発明として特許法29条 、平成23年7月21日に公開されたものであり、本件特許出願の優先日(平成21年7月13日)より後に公開された刊行物である。 したがって、本件各発明は、甲1に記載された発明として特許法29条 1項3号に該当するものではない。 また、本件各発明は、甲1に記載された発明に基づいて、又は甲1に記載された発明及び甲11若しくは甲12に記載された技術的事項に基づいて、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 したがって、本件特許は、特許法123条1項2号に該当しないから、無効とすることはできない。 4 原告が主張する取消事由⑴ 取消事由1(分割要件に関する判断の誤り)⑵ 取消事由2(進歩性判断における判断遺脱) 第3 当事者の主張 1 取消事由1(分割要件に関する判断の誤り)について〔原告の主張〕⑴ 分割要件の成否について本件特許出願は、親出願の当初明細書等に対して新たな技術的事項を追加 するものであり、不適法な分割出願であるから、本件特許出願は適法な分割出願であるとした本件審決の判断(本件審決第6の1⑻〔本件審決40頁〕)には誤りがある。 本件特許出願が不適法な分割出願である理由は、次のとおりである。 ⑵ 分割要件の判断基準について 特許・実用新案審査基準(以下、単に「審査基準」という。)における分割 要件に関する規定(第Ⅵ部第1章第1節特許出願の分割の要件)によれば、分割要件を満たすためには、「分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること(要件2)」が求められ、この(要件2)は、分割出願の明細書等が原出願の出願当初の明細書等との関係において新規事項を追加するものであるか否かで判断 出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること(要件2)」が求められ、この(要件2)は、分割出願の明細書等が原出願の出願当初の明細書等との関係において新規事項を追加するものであるか否かで判断する ものとされている。 そして、審査基準における新規事項を追加する補正に関する規定(第Ⅳ部第2章新規事項を追加する補正)では、特許請求の範囲の発明特定事項を上位概念化、削除又は変更する補正は、新たな技術的事項を導入するものである場合には許されず、補正された事項に係る技術自体が周知技術又は慣用 技術であるということだけでは「当初明細書等の記載から自明な事項」とはいえないとされている。また、審査基準が引用している知財高判平成20年5月30日(平成18年(行ケ)第10563号)「ソルダーレジスト」大合議判決の説示に鑑みても、分割要件を満たすのは「明細書や図面に明示的に記載されている場合」と、明示的に記載されていなくても「自明である事項 である場合」のみであることは明らかである。 ⑶ 本件特許の請求項1に記載の「着脱可能に」との事項についてア 「着脱可能に」という用語は親出願の当初明細書等には用いられておらず、また、親出願の当初明細書等には「着脱可能に」する実施例が1例だけ記載されているにすぎないから、「着脱可能に」という事項は、親出願の 当初明細書等に明示的に記載されていないし、その記載から自明でもない。 したがって、本件特許の請求項1に「着脱可能に」という事項を追加することは、新規事項の追加に当たる。 イこの点に関し、本件審決(本件審決第6の1⑷ア(カ)、(キ)〔本件審決29頁〕)は、親出願の当初明細書等には、LEDユニットをマウント部に取り 付け、取り外す構成について、ホルダ11の可撓部11bの弾性変形 本件審決(本件審決第6の1⑷ア(カ)、(キ)〔本件審決29頁〕)は、親出願の当初明細書等には、LEDユニットをマウント部に取り 付け、取り外す構成について、ホルダ11の可撓部11bの弾性変形を用 いて取り付け、取り外す構成と、LEDユニット2をマウント1の凹部10aにワイヤホルダ161を介して取り付け、取り外す構成の複数の態様が開示されているから、このような複数の態様を上位概念化して「着脱可能に」という記載により発明を特定しても、新たな技術上の意義を追加するものではないと判断する。 しかし、親出願の当初明細書等の第21実施形態では、図104、図106の記載からして、ワイヤホルダ161を回動させても(開状態にしても)、LEDユニット2は、依然としてマウント1のホルダ11によって取り付けられたままであることは明らかであるから、LEDユニット2をマウント1の凹部10aに取り付けているのはワイヤホルダ161ではな くホルダ11であって、ワイヤホルダ161は付加的な構成にすぎず、LEDユニット2をマウント1の凹部10aに固定する手段としてホルダ11しか開示していない。したがって、親出願の当初明細書等に、LEDユニットをマウント部に取り付け、取り外す構成について、複数の態様が開示されているとした本件審決の上記判断は誤りである。 ウそもそも、親出願の当初明細書等には、LEDユニットをマウント部に取り付け、取り外す構成について、一つの実施例しか開示されていないのであるから、このような実施例の構成を上位概念化すれば当然に新規事項の追加に当たる。「着脱可能に」取り付けられるとは、ネジや磁石を利用した方法など、およそ取り付け、取り外しが可能な任意の構成を意味するも のであるから、このような方法も全て本件発 然に新規事項の追加に当たる。「着脱可能に」取り付けられるとは、ネジや磁石を利用した方法など、およそ取り付け、取り外しが可能な任意の構成を意味するも のであるから、このような方法も全て本件発明1の技術的範囲に入る可能性が生じる。 したがって、本件特許の請求項1に記載の「着脱可能に」との事項を追加することは新規事項の追加に当たる。 ⑷ 本件特許の請求項1に記載の「透光カバー」との事項について ア親出願の当初明細書等には、「カバー4」という語しか記載されておらず、 本件発明1が解決しようとする課題は、「光のむらを抑えること」であるところ、光拡散性のない透明なカバーではこのような課題を解決することはできないから、親出願の当初明細書等には、あくまで拡散性を有する「カバー」部材だけが開示されていた。しかし、本件特許の請求項1には「透光カバー」という事項が追加され、拡散性の有無を問うことなくおよそ光 が透過すれば足りるものとされたから、これによって、親出願の当初明細書等の「カバー4」は、光を拡散させるという概念を除外して上位概念化されたものである。「透光カバー」という事項は、親出願の当初明細書等に明示的に記載されていないし、その記載から自明でもない。したがって、本件特許の請求項1に「透光カバー」という事項を追加することは、新規 事項の追加に当たる。 イ(ア) 本件審決は、親出願の当初明細書等には、LEDユニット2を交換可能とすべきことが課題として記載されているとし、「カバー4」が光拡散性を有することは、課題解決に必要不可欠な構成でないと判断する(本件審決第6の1⑸ア(ア)〔本件審決31頁〕)。 しかし、本件審決が、「光のむらを抑える」ことではなく、カバーの構成と直接に関係しない「LEDユニッ 決に必要不可欠な構成でないと判断する(本件審決第6の1⑸ア(ア)〔本件審決31頁〕)。 しかし、本件審決が、「光のむらを抑える」ことではなく、カバーの構成と直接に関係しない「LEDユニットを交換可能とする」という課題を認定し、それとの比較で、カバーの構成が課題解決に必要不可欠な構成ではないと判断したのは誤りであり、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するも のとする特許法70条2項の規定にも反する。 (イ) また、本件審決は、親出願の優先日より前に、照明装置において光拡散性のない透明なカバーを用いることが慣用技術(甲14~甲20)であることも踏まえると、親出願の当初明細書等において、LED照明装置が照明装置としての機能を果たすためには、「カバー4」が光拡散性を 有することは必要不可欠ではなく、「カバー4」が光を透過する透光カバ ーであれば足りることは当業者にとって明らかであるとして、本件特許の請求項1に「透光カバー」という事項を追加することは親出願の当初明細書等の記載に新たな技術的事項を導入するものではない旨判断する(本件審決第6の1⑸ア(ウ)、(エ)〔本件審決32頁〕)。 しかし、慣用技術は、当初明細書等の記載から自明な事項であるか否 かの判断をするに際して持ち出してはならないものであり、また、光拡散性のない透明カバーでは、光のむらを抑えるという作用効果も発揮できないのであるから、親出願の「カバー」は光拡散性を有するものであり、本件審決の上記判断は誤りである。 (ウ) 技術用語としての「カバー」は、透光性を有しない遮光カバーも含め 無限ともいえる構成のものを含むので、一義的に明確であるとはいえず、そのため、明細書等の記載を参酌してそ 誤りである。 (ウ) 技術用語としての「カバー」は、透光性を有しない遮光カバーも含め 無限ともいえる構成のものを含むので、一義的に明確であるとはいえず、そのため、明細書等の記載を参酌してその用語の意義を明らかにすることが不可欠となる。そして、親出願の当初明細書等の請求項3では、「光を拡散させつつ透過されるカバー」と定義付けており、段落【0013】、【0034】及び【0148】おいても、「カバー」については、常にこ の定義で統一している。また、段落【0004】では、LEDチップが点光源なので光の輝度むらが生じやすいという課題が記載され、実施例について書かれた段落【0151】ないし【0155】の記載からは、「カバー」が光を拡散させる構成であることから、光のむらを抑えるという作用効果を生ずることが分かる。この点に関し、本件審決は、親出 願の当初明細書等の段落【0013】、【0034】及び【0148】の記載は、「【発明を実施するための形態】における『カバー4』の一態様を説明しているに過ぎず」と判断したが(本件審決第6の1⑸ア(イ)〔本件審決32頁〕)、親出願の当初明細書等の請求項及び実施例で、常に「光を拡散させつつ透過されるカバー」と定義付けており、このような「カ バー」の構成は解決課題ともリンクしているのであるから、これらを無 視することはできない。このように、親出願の当初明細書等によれば、「カバー」は、光を拡散させる構成であることが理解されるのであり、光を拡散させる点を除外し、光を透過させるだけの「透光カバー」という事項を本件特許の請求項1に追加することは、発明特定事項を親出願の当初明細書等の記載から自明とはいえない事項に上位概念化するもの であって、許されない。 ⑸ 本件特許の請求項2に バー」という事項を本件特許の請求項1に追加することは、発明特定事項を親出願の当初明細書等の記載から自明とはいえない事項に上位概念化するもの であって、許されない。 ⑸ 本件特許の請求項2に記載の「弾性部材」との事項について親出願の当初明細書等に記載の「可撓部11b」を、本件特許の請求項2に記載の「弾性部材」として特定することは、スプリングや板バネ、弾性ゴムなど、およそ弾性を利用した構成を全て含むように上位概念化するもので ある。「弾性部材」という事項は、親出願の当初明細書等に明示的に記載されていないし、その記載から自明でもないから、本件特許の請求項2に「弾性部材」という事項を追加することは、新規事項の追加に当たる。 ⑹ 本件特許の請求項1に記載の「長尺状の基板」、「長尺状の透光カバー」及び「長尺状の底板部」における「長尺状」との事項について 親出願の当初明細書等に「帯状」と記載されていたところを、本件特許の請求項1に記載の「長尺状の基板」、「長尺状の透光カバー」及び「長尺状の底板部」における「長尺状」として特定することは、矩形に限定される「帯状」から、矩形に限定されない細長い形状を意味する「長尺状」に変更するものであるから、親出願の当初明細書等に記載された事項を上位概念化する ものである。「長尺状」という事項は、親出願の当初明細書等に明示的に記載されていないし、その記載から自明でもないから、本件特許の請求項1に「長尺状」という事項を追加することは、新規事項の追加に当たる。 ⑺ 取消事由1の成否について以上によれば、本件特許出願は、親出願の当初明細書等に対して新たな技 術的事項を追加するものであって、不適法な分割出願であるから、本件特許 出願は適法な分割出願であるとした本件審決 上によれば、本件特許出願は、親出願の当初明細書等に対して新たな技 術的事項を追加するものであって、不適法な分割出願であるから、本件特許 出願は適法な分割出願であるとした本件審決の判断(本件審決第6の1⑻〔本件審決40頁〕)には誤りがあり、本件審決には取り消すべき違法がある。 〔被告の主張〕原告の主張はいずれも争う。 ⑴ 〔原告の主張〕⑴(分割要件の成否について)に対し 本件特許出願は、親出願の当初明細書等に対して新たな技術的事項を追加するものではなく、適法な分割出願であるから、同旨の本件審決の判断に誤りはない。 本件特許出願が適法な分割出願である理由は、次のとおりである。 ⑵ 〔原告の主張〕⑵(分割要件の判断基準について)に対し 審査基準の第Ⅳ部第2章の3.3.1には、補正前の特許請求の範囲の発明特定事項を上位概念化、削除又は変更する補正に関し、「請求項の発明特定事項を上位概念化、削除又は変更する補正は、新たな技術的事項を導入するものである場合には、許されない」が、「削除する事項が発明による課題の解決には関係がなく、任意の付加的な事項であることが当初明細書等の記載か ら明らかである場合には、この補正により新たな技術上の意義が追加されない場合が多い。」との判断基準が示されているから、このような判断基準により、分割出願が新規事項を追加するものであることにより不適法であるか否かを判断すべきである。 ⑶ 〔原告の主張〕⑶(本件特許の請求項1に記載の「着脱可能に」との事項 について)に対しア原告は、親出願の当初明細書等の第21実施形態におけるワイヤホルダ161は、LEDユニットをマウント部に取り付け、取り外す構成に対応するものではないと主張する。しかし、親出願の出願当初の特許請求の 原告は、親出願の当初明細書等の第21実施形態におけるワイヤホルダ161は、LEDユニットをマウント部に取り付け、取り外す構成に対応するものではないと主張する。しかし、親出願の出願当初の特許請求の範囲の請求項4には、「ホルダ」が「LEDユニットを保持する」部材として 特定され、請求項4を引用する請求項5及び6において、当該「ホルダ」 についての具体的な構成が特定されている。そして、請求項5及び6は、請求項4の並列の従属項であってそれぞれ独立した態様の請求項であるから、請求項5に記載の「ホルダ」の構成と、請求項6に記載の「ワイヤホルダ」の構成は、それぞれ別個の構成であると解釈するほかない。そして、本件審決が認定するとおり、親出願の当初明細書等に記載の構成のうち、 ホルダ11の可撓部11bの弾性変形を用いた構成が請求項5の「ホルダ」に相当し、ワイヤホルダ161を介して取り付け、取り外す構成が請求項6の「ホルダ」に相当するものであるところ、親出願の当初明細書等の段落【0250】ないし【0254】の記載によれば、ワイヤホルダ161は、マウント1に対して回動可能に支持され、LEDユニット2をマウン ト1に固定する閉状態と、LEDユニット2をマウント1に対して脱着する開状態とをとることができる部材であって、LEDユニットのマウント部への着脱の際に使用される部材であることは明らかである。 以上の点を踏まえると、親出願の当初明細書等に、「LEDチップ22の特性が変化したときなどにLEDユニット2を交換可能とする」という課 題を解決するための構成として、「ホルダ11の可撓部11bの弾性変形を用いて取り付け、また、取り外すとの上述した構成と、LEDユニット2をマウント1の凹部10aにワイヤホルダ161を介して取り 題を解決するための構成として、「ホルダ11の可撓部11bの弾性変形を用いて取り付け、また、取り外すとの上述した構成と、LEDユニット2をマウント1の凹部10aにワイヤホルダ161を介して取り付け、また、取り外す構成の複数の態様が記載されている」(本件審決第6の1⑷ア(カ)〔本件審決29頁〕)と認定した本件審決の認定に誤りはない。 イまた、原告は、一つの実施例の構成を上位概念化することは許容されない旨主張する。しかし、本件発明1の「LEDチップ22の特性が変化したときなどにLEDユニット2を交換可能とする」という課題は、LEDユニットが着脱可能に取り付けられていれば解決可能なものであり、LEDユニットの取り付け、取り外しの具体的構成を特定の構成に限定しなけ れば解決できないというものではない。親出願の当初明細書等の段落【0 044】及び【0046】並びに図10及び図11における「ホルダ11に設けられた可撓部11bの弾性変形を用いた構成」に関する記載は、LEDユニットをマウント部に取り付け及び取り外しする構成の一例を示しているにすぎないものであり、実施例として記載されている具体的態様のみが親出願の当初明細書等に記載された発明であるというべきではない。 そうすると、仮に、原告が主張するように、ワイヤホルダ161は本件発明1の実施例に対応するものではないと解したとしても、親出願の当初明細書等に記載の「ホルダ11に設けられた可撓部11bの弾性変形を用いた構成」に基づいて、「前記LEDユニットは、前記マウント部の前記凹部に着脱可能に取り付けられる」との構成を導き出すことは可能であるから、 「着脱可能に」という用語を用いて本件発明1を特定することが新規事項の追加に当たらないことは明らかである。 ⑷ 前記凹部に着脱可能に取り付けられる」との構成を導き出すことは可能であるから、 「着脱可能に」という用語を用いて本件発明1を特定することが新規事項の追加に当たらないことは明らかである。 ⑷ 〔原告の主張〕⑷(本件特許の請求項1に記載の「透光カバー」との事項について)に対し前記⑵の分割要件の判断基準によると、親出願の当初明細書等に記載され た「カバー4」を、本件発明1において「透光カバー」と特定することは、新規事項の追加に該当しない。 親出願の当初明細書等には、原告が主張する「光のむらを抑える」という課題のほかにも多種多様な課題が記載され、それらの課題を解決する複数の発明も記載されているが、本件特許出願は、このうち、「LEDチップ22の 特性が変化したときなどにLEDユニット2を交換可能とする」という課題を解決するための発明を権利化するために分割出願され特許されたものである。このことは、被告が、本件特許出願後に提出した平成29年3月9日付け上申書(甲13)において、孫出願の審査で挙げられた2件の引用文献との差異に関し、「当該引用文献1、2には、LEDユニットが、マウント部の 凹部に着脱可能に取付けられる構成は何ら開示されていない。」との主張を し、このような主張が認められて特許査定された審査経緯からしても明らかである。 仮に、「光のむらを抑える」ことが本件発明1の課題であると考えたとしても、親出願の当初明細書等の段落【0151】には、比較的強い光が到達する中央部43において光透過率を小さくすることにより「カバー4から出射 される光のムラを抑えることが可能」である旨の記載があり、必ずしもカバー自体が光拡散性を有することが光のむらを抑えるための課題解決手段として必須の構成ではないから、本 により「カバー4から出射 される光のムラを抑えることが可能」である旨の記載があり、必ずしもカバー自体が光拡散性を有することが光のむらを抑えるための課題解決手段として必須の構成ではないから、本件発明1において「透光カバー」との構成を採用したことが新たな技術的事項の導入に当たるとはいえない。 このように、本件発明1の「透光カバー」は、親出願の当初明細書等に記 載されているということができ、親出願の当初明細書等の記載に対して新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかである。 ⑸ 〔原告の主張〕⑸(本件特許の請求項2に記載の「弾性部材」との事項について)に対し分割出願の判断基準は前記⑵のとおりであり、親出願の当初明細書等に記 載された事項の上位概念化は全て新規事項の追加に当たるという原告の主張は誤りである。「弾性部材」に関して、本件審決は、ホルダ11の「可撓部11b」の技術的意味を十分に検討した上で、本件発明2の課題解決との関係を考慮して、「弾性部材」という用語による特定が新規事項を追加しないと判断したものであり、上位概念化であるとの一事をもって本件審決の判断を誤 りとする原告の主張は失当である。 ⑹ 〔原告の主張〕⑹(本件特許の請求項1に記載の「長尺状の基板」、「長尺状の透光カバー」及び「長尺状の底板部」における「長尺状」との事項について)に対し分割出願の判断基準は前記⑵のとおりであり、親出願の当初明細書等に記 載された事項の上位概念化は全て新規事項の追加に当たるという原告の主張 は誤りである。また、「長尺状」に関して、本件審決でも認定されているとおり、「帯状」とは、「ある幅をもって長くのびているさま。」(広辞苑第6版、甲10)を意味する語であり、「長尺状」と同義の語であるから りである。また、「長尺状」に関して、本件審決でも認定されているとおり、「帯状」とは、「ある幅をもって長くのびているさま。」(広辞苑第6版、甲10)を意味する語であり、「長尺状」と同義の語であるから、「長尺状」が「帯状」の上位概念に当たるとの原告の主張は失当である。原告の主張は、「帯状」という語は「矩形(長方形)」を意味するとの前提に立つものである が、このような主張は、「帯状」という語の意味を正しくとらえたものではなく、明らかに誤った主張である。 ⑺ 〔原告の主張〕⑺(取消事由1の成否について)に対し以上によれば、本件特許出願は、親出願の当初明細書等に対して新たな技術的事項を追加するものではなく、適法な分割出願であるから、同旨の本件 審決の判断(本件審決第6の1⑻〔本件審決40頁〕)に誤りはなく、本件審決には取り消すべき違法はない。 2 取消事由2(進歩性判断における判断遺脱)について〔原告の主張〕本件審決は、本件特許出願は適法な分割出願であって、甲1(平成23年7 月21日公開)は本件特許出願の優先日(平成21年7月13日)より後に公開された刊行物であるとした上で、具体的な理由を示すことなく甲1及び甲11又は甲12に基づく進歩性の欠如の主張を排斥した。しかし、仮に、甲1に引用適格性が認められないとしても、甲11(平成21年2月24日発行)と甲12(平成21年7月10日発行)は、本件特許出願の優先日より前に発行 された刊行物であるから、甲11又は甲12に基づいて本件各発明の進歩性の有無を判断することは可能であり、原告は、本件各発明と甲11又は甲12との異同について主張していたから、本件審決が具体的な理由を示さずに進歩性欠如の主張を排斥したことには判断遺脱の違法がある。 〔被告の主張〕 原 あり、原告は、本件各発明と甲11又は甲12との異同について主張していたから、本件審決が具体的な理由を示さずに進歩性欠如の主張を排斥したことには判断遺脱の違法がある。 〔被告の主張〕 原告が本件無効審判で主張していた無効理由2は、あくまで甲1を主引用例 とし、甲11又は甲12を副引用例とする進歩性欠如の主張であり、本件特許出願が分割要件違反でその出願日が現実の出願日(平成29年3月7日)であって、甲1が本件特許の出願前に頒布された刊行物であることを前提とした主張であった。甲11及び甲12を主引例とする進歩性欠如の無効理由は、無効審判の審理の中で原告が一切主張していなかった無効理由であり、本件審決が これを審理対象にしなかったからといって判断遺脱の違法があるとはいえない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(分割要件に関する判断の誤り)について⑴ 分割要件の成否について 本件特許出願は、親出願の当初明細書等に対して新たな技術的事項を追加するものとは認められず、適法な分割出願であるから、本件審決の同旨の判断(本件審決第6の1⑻〔本件審決40頁〕)に誤りがあるとは認められない。 本件特許出願が適法な分割出願である理由は、以下に述べるとおりである。 ⑵ 分割要件の判断基準について 特許出願の分割は、二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願とするものであるところ、分割出願が原出願の時にしたものとみなされるという効果を生ずるから(特許法44条2項)、分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であることを要する。そして、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項と は、当業者によって、原出願の出願当初の明細書等の全ての記載を総合す 原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であることを要する。そして、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項と は、当業者によって、原出願の出願当初の明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、分割出願の明細書等に記載された事項が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、分割出願の明細書等に記載された事項は、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内にあるというこ とができる。そして、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲 内というためには、分割出願の明細書等に記載された事項が、出願当初の明細書等に明示的に記載された事項である場合のみならず、出願当初の明細書等の記載から自明な事項、すなわち、出願時の技術常識に照らし、出願当初の明細書等に記載されているのと同然であると理解することができる事項をも含むものというべきである。 本件においては、本件特許出願の明細書及び図面の記載が、親出願、子出願、孫出願の当初の明細書及び図面の記載、並びに子出願及び孫出願の分割時の明細書及び図面の記載に対して新たな技術的事項を追加したものではないということについて、当事者間に争いはない(本件審決第6の1⑵〔本件審決25頁〕)。そこで、本件特許出願により請求項1に追加された「着脱可 能に」、「透光カバー」という事項、請求項2に追加された「弾性部材」という事項、請求項1に追加された「長尺状の基板」、「長尺状の透光カバー」及び「長尺状の底板部」における「長尺状」という事項につき、親出願の当初明細書等に対して新たな技術的事項を追加するものであるか否かについて判断する。 ⑶ 本件特許の請求項1に記載の「着脱可能に 「長尺状の底板部」における「長尺状」という事項につき、親出願の当初明細書等に対して新たな技術的事項を追加するものであるか否かについて判断する。 ⑶ 本件特許の請求項1に記載の「着脱可能に」との事項についてア新規事項の追加の有無(ア) まず、親出願の当初明細書等に開示されていた課題について検討すると、親出願の当初明細書等には、【発明が解決しようとする課題】に、「室内がスマートであるとの印象を与えうるLED照明装置を提供する」 (段落【0010】)という課題が記載されており、また、【背景技術】に関しては、「LED照明装置Xからの光は輝度むらを生じやす」く、「この輝度むらが顕著であると」、「個々のLEDチップ92が視認できてしまう場合があ」り、「見る者が見栄えがよくないと感じてしまう」(段落【0004】)という課題が示され、第9実施形態に関して、「光のムラ を抑える」(段落【0151】~【0155】)という課題が開示されて いる。 しかし、親出願の当初明細書等には、多数の実施形態(第1ないし第24実施形態)が開示されており、そこで開示されている課題は、上記の課題に限られるものではない。すなわち、親出願の当初明細書等には、第1実施形態に関する「このようにLEDユニット2を容易に取り付け ることができる。」(段落【0044】)、「このように、LED照明装置A1は、マウント1からLEDユニット2を容易に取り外すことができる。」(段落【0046】)という記載、第7実施形態に関する「このように、LED照明装置A7は、ウイング部120からLEDユニット2を容易に取り外すことができる。」(段落【0131】)という記載、第11 実施形態に関する「したがって、LED照明装置A11では、適切な時期 明装置A7は、ウイング部120からLEDユニット2を容易に取り外すことができる。」(段落【0131】)という記載、第11 実施形態に関する「したがって、LED照明装置A11では、適切な時期にLEDユニット2を交換可能となっており、常時見栄えのよい照明を提供することができる。」(段落【0177】)という記載、第12実施形態に関する「このため、LED照明装置A12では、LEDユニット2の交換を容易にかつ速やかに行うことが可能となっている。」(段落 【0186】)という記載、第23実施形態に関する「また、解除レバー161を用いれば、比較的接近して並列に配置された2つのLEDユニット21を個別に容易に取り外すことができる。」(段落【0261】)という記載があり、これらの記載に鑑みれば、親出願の当初明細書等には、「LEDユニットを交換可能とする」ことが発明の課題として記載され ていると認められる。 (イ) 前記(ア)のとおり、親出願の当初明細書等には、「LEDユニットを交換可能とする」という課題が記載されており、この課題は、LEDユニットが「着脱可能に」取り付けられていれば解決可能なものであって、着脱可能とする構成について、特定の構成を採用しなければならないと する特別の要請があるとは認められず、具体的な構成まで特定しなけれ ば解決できないということはなく、当業者であれば、技術常識に照らし、着脱可能とする適宜の方法を選択して解決することができるものと認められる。 そして、親出願の当初明細書等の段落【0025】、【0026】、【0044】及び【0046】並びに図2、図10及び図11等には、LE Dユニット2をマウント1の凹部10aにホルダ11の可撓部11bの弾性変形を用いて取り付け、取り外すことが 、【0026】、【0044】及び【0046】並びに図2、図10及び図11等には、LE Dユニット2をマウント1の凹部10aにホルダ11の可撓部11bの弾性変形を用いて取り付け、取り外すことが記載されており、段落【0250】及び【0251】並びに図103、図104及び図106には、LEDユニット2をマウント1の凹部に、ワイヤホルダ161を介して取り付け、取り外す構成が記載されている。そうすると、親出願の当初 明細書等は、ホルダ11の可撓部11bの弾性変形を用いて取り付け、取り外す構成と、LEDユニット2をマウント1の凹部10aにワイヤホルダ161を介して取り付け、取り外す構成という複数の態様を開示しているということができ、これらの複数の取り付け、取り外す構成を包含する発明特定事項について、「着脱可能に」と特定することは、親出 願の出願当初の明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるといえ、親出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であるものといえるから、新たな技術的事項を導入するものとは認められない。 イ原告の主張に対する判断 (ア) 原告は、「着脱可能に」という用語は親出願の当初明細書等には用いられておらず、また、親出願の当初明細書等には「着脱可能に」する実施例が1例だけ記載されているにすぎないから、「着脱可能に」という事項は、親出願の当初明細書等に明示的に記載されていないし、その記載から自明でもなく、したがって、本件特許の請求項1に「着脱可能に」 という事項を追加することは、新規事項の追加に当たると主張する(前 記第3の1〔原告の主張〕⑶ア)。 しかし、前記ア(ア)のとおり、親出願の当初明細書等には、「LEDユニットを交換可能とする」という課題が記載され 規事項の追加に当たると主張する(前 記第3の1〔原告の主張〕⑶ア)。 しかし、前記ア(ア)のとおり、親出願の当初明細書等には、「LEDユニットを交換可能とする」という課題が記載されており、前記ア(イ)のとおり、この課題は、LEDユニットが「着脱可能に」取り付けられていれば解決可能なものであって、親出願の当初明細書等には、着脱可能にす る具体的構成も二つ書かれており、親出願の当初明細書等には、「着脱可能に」という事項は記載されているものと認められるから、原告の上記主張は採用することができない。 (イ) また、原告は、LEDユニット2をマウント1の凹部10aに取り付けているのはワイヤホルダ161ではなくホルダ11であって、ワイヤ ホルダ161は付加的な構成にすぎないから、LEDユニットをマウント部に取り付け、取り外す構成について、複数の態様が開示されているとした本件審決の判断は誤りである旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕⑶イ)。 しかし、親出願の当初明細書等の段落【0250】ないし【0254】 の記載によれば、ワイヤホルダ161は、マウント1に対して回動可能に支持され、LEDユニット2をマウント1に固定する閉状態と、LEDユニット2をマウント1に対して脱着する開状態とをとることができる部材であって、「また、ホルダワイヤ(判決注:「ワイヤホルダ」の誤記と認められる。)161は、LEDユニット2の脱着を容易に行うのに 都合がよい」(段落【0254】)ものであるから、ワイヤホルダ161は、ホルダ11と併用されるとしても、LEDユニット2を「着脱可能に」取り付ける部材として機能するものと認められる。そして、親出願の出願当初の特許請求の範囲の請求項4には「LEDユニットを保持するためのホルダ」が特定 されるとしても、LEDユニット2を「着脱可能に」取り付ける部材として機能するものと認められる。そして、親出願の出願当初の特許請求の範囲の請求項4には「LEDユニットを保持するためのホルダ」が特定され、請求項4に対して並列的に従属する請求 項5及び請求項6には、それぞれホルダが「金属板を折り曲げ加工する ことにより形成されて」いることと、「ワイヤホルダとして構成されている」ことが別個に特定されていることに鑑みると、ホルダ11とワイヤホルダ161とは、それぞれ独立して存在しうる別個の構成と認めるのが相当である。そうすると、親出願の当初明細書等には、LEDユニット2をマウント1の凹部10aに「着脱可能に」固定する手段として複 数の態様が開示されていると認められるものであり、LEDユニット2をマウント1の凹部10aに取り付けているのはワイヤホルダ161ではなくホルダ11であり、ワイヤホルダ161は付加的な構成にすぎないとする原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) さらに、原告は、そもそも、親出願の当初明細書等には、LEDユニ ットをマウント部に取り付け、取り外す構成について、一つの実施例しか開示されていないのであるから、このような実施例の構成を上位概念化すれば当然に新規事項の追加に当たり、「着脱可能に」取り付けられるとは、ネジや磁石を利用した方法など、およそ取り付け、取り外しが可能な任意の構成を意味するものであるから、このような方法も全て本件 発明1の技術的範囲に入る可能性が生じるとし、したがって、本件特許の請求項1に記載の「着脱可能に」との事項を追加することは新規事項の追加に当たると主張する(前記第3の1〔原告の主張〕⑶ウ)。 しかし、前記ア(イ)で述べたとおり、着脱可能とする構成について 件特許の請求項1に記載の「着脱可能に」との事項を追加することは新規事項の追加に当たると主張する(前記第3の1〔原告の主張〕⑶ウ)。 しかし、前記ア(イ)で述べたとおり、着脱可能とする構成について、特定の構成を採用しなければならないとする特別の要請があるとは認めら れず、具体的な構成まで特定しなければ「LEDユニットを交換可能とする」という発明の課題を解決できないということはなく、着脱可能にする構成のうち、親出願の当初明細書等に記載された具体的な構成に係る技術的事項のみが親出願の当初明細書等に記載されていると限定する根拠はない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 本件特許の請求項1に記載の「透光カバー」との事項についてア新規事項の追加の有無本件特許の請求項1と親出願の当初明細書等(甲4)を参照すると、本件発明1の「透光カバー」は、親出願の当初明細書等に記載された「カバー4」に対応する部材であることは明らかである。「カバー4」について、 親出願の当初明細書等には、「カバー4は、図3に示すようにx方向に延びる断面円弧状の帯状であり、LEDモジュール20からの光を拡散しつつ透過するたとえば乳白色の樹脂からなる。」(段落【0034】)、「LED照明装置A1におけるカバー4の説明にあるように、カバー4は、LEDモジュール20からの光を拡散しつつ透過するたとえば乳白色の樹脂から なる拡散カバーである。」(段落【0148】)などと記載されている。親出願の当初明細書等における上記各記載は、「カバー4」がLEDモジュール20からの光を透過する性質を有することを示すものであり、また、そもそも照明装置の光源を覆うカバーが光源の光を透過させる性質を有することは技術常識であることから 載は、「カバー4」がLEDモジュール20からの光を透過する性質を有することを示すものであり、また、そもそも照明装置の光源を覆うカバーが光源の光を透過させる性質を有することは技術常識であることからしても、親出願の当初明細書等に記載の 「カバー4」が光を透過する性質を備えていることは明らかである。そして、「光を透過すること」と「透光」とは同義であるから、「カバー4」を「透光カバー」と特定することは、親出願の当初明細書等の上記各記載や上記技術常識に鑑みて極めて自明な事項を特定したにすぎないものであって、新たな技術的事項を導入するものとは認められない。 したがって、「透光カバー」という用語自体が親出願の当初明細書等で用いられていなかったとしても、本件特許出願の請求項1の「透光カバー」という事項は、当業者によって親出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内にあるものと認められ、本件特許出願により請求項1に「透光カバー」という事項を追加することは、 親出願の当初明細書等に対して新たな技術的事項を追加するものではな く、新規事項の追加には当たらない。 イ原告の主張に対する判断(ア) 原告は、本件審決が、「光のむらを抑える」ことではなく、カバーの構成と直接に関係しない「LEDユニットを交換可能とする」という課題を認定し、それとの比較で、カバーの構成が課題解決に必要不可欠な構 成ではないと判断したのは誤りであり、特許法70条2項の規定にも反する旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕⑷イ(ア))。 前記⑵のとおり、分割要件を充足するためには、分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であることを要するものであり、原出願の出願当 〕⑷イ(ア))。 前記⑵のとおり、分割要件を充足するためには、分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であることを要するものであり、原出願の出願当初の明細書等に 記載された事項とは、当業者によって、原出願の出願当初の明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項を意味する。そのため、そのような技術的事項を明らかにするために発明の課題を認定するに当たっては、原出願(本件において検討すべきものは親出願)の当初明細書等の【発明が解決しようとする課題】欄、【発明の効果】欄の記 載のみにとらわれることなく、明細書及び図面の全ての記載事項に加え、出願時の技術常識を考慮して課題を把握すべきであり、特に、明細書及び図面に多数の実施例が開示されている場合には、各実施例に対応する種々の課題も、明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に含まれるものと認められる。そのため、親出願の当初明細書 等に、多数の実施例に対応する多数の課題が記載されていると認められる場合、多数の中の一つの課題を解決するための構成が記載されているならば、それは、親出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に含まれるものと認められ、その構成が、仮に他の課題の解決に資するものではないとしても、親出願の当初明細書等 の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に含まれるとい う認定が否定されることはないというべきである。 前記⑶ア(ア)のとおり、親出願の当初明細書等には、「LEDユニットを交換可能とする」という課題が記載されているものと認められるから、そのような課題との関係で、親出願の当初明細書等には光拡散性のないものも含めて「カバー」と 出願の当初明細書等には、「LEDユニットを交換可能とする」という課題が記載されているものと認められるから、そのような課題との関係で、親出願の当初明細書等には光拡散性のないものも含めて「カバー」という技術的事項が記載されており、それが、 親出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に含まれると認めることに誤りはないというべきである。光拡散性のないカバーが、「光のむらを抑える」という、親出願の当初明細書等に記載されていた他の課題の解決に資するものでなかったとしても、上記の認定が否定されることはない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 (イ) また、原告は、本件審決が、親出願の優先日より前に、照明装置において光拡散性のない透明なカバーを用いることが慣用技術(甲14~甲20)であることも踏まえて、本件特許の請求項1に「透光カバー」という事項を追加することが新規事項追加に当たらないと判断したことに ついて、慣用技術は、当初明細書等の記載から自明な事項であるか否かの判断をするに際して持ち出してはならないものであり、また、光拡散性のない透明カバーでは、光のむらを抑えるという作用効果も発揮できないのであるから、親出願の「カバー」は光拡散性を有するものであり、本件審決の上記判断は誤りであると主張する(前記第3の1〔原告の主 張〕⑷イ(イ))。 しかし、前記アのとおり、親出願の当初明細書等に記載の「カバー4」が光を透過する性質を備えていることは明らかであり、「光を透過すること」と「透光」とは同義であるから、「カバー4」を「透光カバー」と特定することは、親出願の当初明細書等の各記載や技術常識に鑑みて極め て自明な事項を特定したにすぎないものであって、新たな技術的事項を 光」とは同義であるから、「カバー4」を「透光カバー」と特定することは、親出願の当初明細書等の各記載や技術常識に鑑みて極め て自明な事項を特定したにすぎないものであって、新たな技術的事項を 導入するものとは認められない。そして、審決が慣用技術(甲14~甲20)に言及したのも、上記の趣旨を補強する意味で指摘したにすぎないものと解され、「透光カバー」を用いることが慣用技術であるということだけで、「自明な事項」といえると判断したものと断定することはできないというべきである。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 (ウ) 原告は、親出願の当初明細書等の請求項3並びに段落【0013】、【0034】及び【0148】では、「カバー」は「光を拡散させつつ透過させるカバー」と定義付けており、段落【0004】では光の輝度むらが生じやすいという課題が記載され、段落【0151】ないし【01 55】の記載からは、光のむらを抑えるという作用効果を生ずることが分かるとし、親出願の当初明細書等によれば、「カバー」は、光を拡散させる構成であることが理解されるのであり、光を拡散させる点を除外し、光を透過させるだけの「透光カバー」という事項を本件特許の請求項1に追加することは、発明特定事項を親出願の当初明細書等の記載から自 明とはいえない事項に上位概念化するものであって許されないと主張する(前記第3の1〔原告の主張〕⑷イ(ウ))。 しかし、前記(ア)のとおり、親出願の当初明細書等には、「LEDユニットを交換可能とする」ことが発明の課題として記載されており、本件発明1はそのような課題を解決するものであり、「透光カバー」はそのよう な課題との関係で本件発明1の構成となっているものであって、そのような課題との ことが発明の課題として記載されており、本件発明1はそのような課題を解決するものであり、「透光カバー」はそのよう な課題との関係で本件発明1の構成となっているものであって、そのような課題との関係において、カバーが光拡散性を有することまで特定しなければならないとする合理的な理由はない。「透光カバー」が、親出願の当初明細書等に記載された他の課題である「光のむらを抑える」という課題の解決に資するものではないとしても、それゆえに、「透光カバー」 という事項が親出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより 導かれる技術的事項に含まれるという認定が否定されることがないことは、前記(ア)のとおりである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑸ 本件特許の請求項2に記載の「弾性部材」との事項についてア新規事項の追加の有無 親出願の当初明細書等の段落【0025】、【0026】、【0044】及び【0046】並びに図2、図10及び図11等には、LEDユニット2をマウント1の凹部10aにホルダ11の可撓部11bの弾性変形を用いて取り付け、取り外すことが記載されており、本件発明2の「弾性部材」に対応する部材は上記「可撓部11b」であると認められる。そして、上 記ホルダ11の「可撓部11b」の技術的意義を検討すると、親出願の当初明細書等の段落【0026】、【0044】及び【0046】並びに図10及び図11の記載は、別紙2のとおりであり、この記載から、上記「可撓部11b」は、外力に応じて1対の係止片11aを互いに接近離間させるように弾性変形する弾性部材として機能するものであることは明らか であって、一方、弾性部材として機能する部材であれば、その素材や製造方法に特に限定されることなく、L 1aを互いに接近離間させるように弾性変形する弾性部材として機能するものであることは明らか であって、一方、弾性部材として機能する部材であれば、その素材や製造方法に特に限定されることなく、LEDユニット2を着脱可能に取り付ける機能を有することも明らかである。そうすると、親出願の当初明細書等に記載の「可撓部11b」を「弾性部材」と特定することは、親出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であるというべきであって、新たな 技術的事項を導入するものではない。 イ原告の主張に対する判断原告は、親出願の当初明細書等に記載の「可撓部11b」を、本件特許の請求項2に記載の「弾性部材」として特定することは、スプリングや板バネ、弾性ゴムなど、およそ弾性を利用した構成を全て含むように上位概 念化するものであり、「弾性部材」という事項は、親出願の当初明細書等に 明示的に記載されていないし、その記載から自明でもないから、本件特許の請求項2に「弾性部材」という事項を追加することは、新規事項の追加に当たると主張する(前記第3の1〔原告の主張〕⑸)。 しかし、「可撓部11b」の技術的意義に照らすと、外力に応じて1対の係止片11aを互いに接近離間させるための構成として特定の構成を採用 しなければならないとする特別の要請があるとは認められず、当業者であれば、技術常識に照らし、適宜の方法を選択して、外力に応じて1対の係止片11aを互いに接近離間させるための構成を実現することができるといえ、「弾性部材」という事項は親出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であると認められるから、原告の上記主張は採用することができな い。 ⑹ 本件特許の請求項1に記載の「長尺状の基板」、「長尺状の透光カバー」及び「長尺状の底板 細書等に記載された事項の範囲内であると認められるから、原告の上記主張は採用することができな い。 ⑹ 本件特許の請求項1に記載の「長尺状の基板」、「長尺状の透光カバー」及び「長尺状の底板部」における「長尺状」との事項についてア新規事項の追加の有無(ア) 親出願の当初明細書等の段落【0030】には基板31が帯状である ことが記載され、段落【0034】にはカバー4が帯状であることが記載されている。帯状とは、「ある幅をもって長くのびているさま。」(広辞苑第6版、甲10)、「帯のようなほそながい形・状態。」(大辞林第4版)を意味するから、親出願の当初明細書等には、基板及びカバーが、ほそながい形であることが記載されていると認められる。 他方、「長尺」とは、「長さがあること。長いこと。」(大辞林第4版)を意味するから、「長尺状」とは、長さがある状態であること、長い状態であることを意味するものと認められる。しかるところ、上記のとおり、親出願の当初明細書等には、基板及びカバーが、ほそながい形であること(帯状)が記載されているから、基板及びカバーは、また、長さ がある状態であり、長い状態である(長尺状)ともいうことができる。 そのため、親出願の当初明細書等には、長尺状の基板、長尺状の透光カバー(前記⑷のとおり、「透光カバー」は、親出願の当初明細書等に記載された技術的事項の範囲内にあるものと認められる。)が記載されていたものと認められる。したがって、本件特許の請求項1に記載の「長尺状の基板」、「長尺状の透光カバー」における「長尺状」との事項は、 親出願の当初明細書等に記載されていた技術的事項の範囲内にあるものと認められ、新規事項を追加するものとは認められない。 (イ) 親出願の当初明細書等にお カバー」における「長尺状」との事項は、 親出願の当初明細書等に記載されていた技術的事項の範囲内にあるものと認められ、新規事項を追加するものとは認められない。 (イ) 親出願の当初明細書等において、第3実施形態に関して、段落【0056】には「マウント1の本体10が、ベースプレート110およびウイング部120によって構成されている。ベースプレート110は、x 方向を長手方向とし、y方向を幅方向とする細長の板状に形成されており、取り付け面110a、複数の膨出部111を備えている。」と記載され、段落【0057】には「底板部121は、ベースプレート110に対して平行である。・・・底板部121および2つの壁部122は、LEDユニット2を収容するための凹部10aを構成している。」と記載さ れており、第3実施形態の図面として次のとおりの図18及び図19が掲載されている。 【図18】 【図19】 上記の親出願の当初明細書等の記載によれば、底板部121は、細長の板状であるものと認められる。 ところで、前記(ア)のとおり、「長尺状」とは、長さがある状態であるこ と、長い状態であることを意味するものと認められるところ、底板部121は、細長の板状であるから、親出願の当初明細書等には、長尺状の底板部121が記載されていたものと認められる。したがって、本件特許の請求項1に記載の「長尺状の底板部」における「長尺状」との事項は、親出願の当初明細書等に記載されていた技術的事項の範囲内にある ものと認められ、新規事項を追加するものとは認められない。 イ原告の主張に対する判断原告は、親出願の当初明細書等に「帯 は、親出願の当初明細書等に記載されていた技術的事項の範囲内にある ものと認められ、新規事項を追加するものとは認められない。 イ原告の主張に対する判断原告は、親出願の当初明細書等に「帯状」と記載されていたところを、本件特許の請求項1に記載の「長尺状」として特定することは、矩形に限定される「帯状」から、矩形に限定されない細長い形状を意味する「長尺 状」に変更するものであるから、親出願の当初明細書等に記載された事項 を上位概念化するものであり、本件特許の請求項1に「長尺状」という事項を追加することは、新規事項の追加に当たると主張する(前記第3の1〔原告の主張〕⑹)。 しかし、帯状とは、「帯のようなほそながい形・状態。」を意味するものであり、矩形に限られるとはいえないから、帯状として示されたものが、 長さがある状態であること、長い状態であることを意味する「長尺状」と表現されたとしても、それをもって上位概念化するものとは認められないし、前記アで述べたとおり、「長尺状」という事項は、親出願の当初明細書等に記載されていた技術的事項の範囲内にあるものと認められるから、原告の上記主張は採用することができない。 ⑺ 取消事由1の成否について以上によれば、本件特許出願は、親出願の当初明細書等に対して新たな技術的事項を追加するものではなく、適法な分割出願であるから、同旨の本件審決の判断(本件審決第6の1⑻〔本件審決40頁〕)には誤りはない。 したがって、取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(進歩性判断における判断遺脱)について原告は、仮に、甲1に引用適格性が認められないとしても、甲11及び甲12は、本件特許出願の優先日より前に発行された刊行物であるから、甲11又は甲12に基づいて本件各発 における判断遺脱)について原告は、仮に、甲1に引用適格性が認められないとしても、甲11及び甲12は、本件特許出願の優先日より前に発行された刊行物であるから、甲11又は甲12に基づいて本件各発明の進歩性の有無を判断することは可能であり、原告は、本件各発明と甲11又は甲12との異同について主張していたから、 本件審決が具体的な理由を示さずに進歩性欠如の主張を排斥したことには判断遺脱の違法があると主張する(第3の2〔原告の主張〕)。 しかし、原告が本件無効審判において主張していた無効理由2(進歩性欠如)は、本件特許出願は分割要件違反であってその出願日は親出願の出願日ではなく現実の出願日であり、甲1が本件特許の出願前に頒布された刊行物であるこ とを前提とし、甲1を主引用例とし、甲11又は甲12を副引用例とする進歩 性欠如の主張であった。そのため、本件審決が、本件特許出願は適法な分割出願であってその出願日は親出願の出願日であり、甲1は本件特許出願の優先日より後に公開された刊行物であるとして、本件各発明は、甲1に記載された発明に基づいて、又は甲1に記載された発明及び甲11若しくは甲12に記載された技術的事項に基づいて特許法29条2項の規定により特許を受けること ができないとはいえない、とした判断に判断遺脱の違法はない。 仮に、原告が、本件無効審判において、本件各発明と甲11又は甲12の異同について何らかの形で言及していたとしても、原告は、甲11又は甲12を主引用例とする無効理由を主張していなかったから、本件審決が、原告が主張していなかった無効理由(甲11又は甲12を主引例とする進歩性欠如)につ いて判断しなかったことを判断遺脱ということはできない。 したがって、原告の上記主張を採用することはできず、取 告が主張していなかった無効理由(甲11又は甲12を主引例とする進歩性欠如)につ いて判断しなかったことを判断遺脱ということはできない。 したがって、原告の上記主張を採用することはできず、取消事由2は理由がない。 3 結論原告は、その他縷々主張するが、いずれも理由がない。 以上によれば、原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく、本件審決にはこれを取り消すべき違法はない。 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林保 裁判官中平健 裁判官都野道紀 (別紙1審決書写し省略) 別紙2 親出願の当初明細書等の【0026】、【0044】、【0046】、図10、図11の記載(甲4、甲1) 【0026】ホルダ11は、たとえば金属製のプレートに対して折り曲げ加工を施すことによって形成されており、1対の係止片11aおよび1対の可撓部11bを有している。 図9に示すように、可撓部11bは、係止片11aを支える格好となっている。1対の可撓部11bは外力が与えられると、1対の係止片11aを互いに接近離間させる方向に弾性変形可能とされている。1対の係止片11aは、LEDユニット2に係合する部分であり、図9(a)において図中上方に向かうほど互いに距離が小となるように傾いている。本実施形態においては、複数の 方向に弾性変形可能とされている。1対の係止片11aは、LEDユニット2に係合する部分であり、図9(a)において図中上方に向かうほど互いに距離が小となるように傾いている。本実施形態においては、複数のホルダ11が凹部10a内に設けられている。 【0044】図10は、LED照明装置A1を組み立てる際に、LEDユニット2をマウント1に取り付ける様子を示している。本図によく表れているように、まず、たとえば天井に固定されたマウント1に対してLEDユニット2を下方から接近させる。そして、ホルダ11の1対の係止片11aの間にLEDユニット2を押し込む。すると、可撓部11bが若干撓むことにより、1対の係止片11aが互いにいったん離間する。しかる後に、図2に示すように、係止片11aが支持部材3の係止溝323と係合する。このように、LEDユニット2を容易に取り付けることができる。 【0046】図11は、LEDユニット2をマウント1から取りはずす様子を示している。本 図によく表れているように、まず、断面コの字状の取り外し冶具Dを用意する。そして、取り外し冶具Dの両側縁をホルダ11の係止片11aに押し付ける。すると、可撓部11bが弾性変形し、1対の係止片11aどうしが離間する。この結果、係止片11aと係止溝323との係合状態が解除される。このように、LED照明装置A1は、マウント1からLEDユニット2を容易に取り外すことができる。 【図10】 【図11】
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