平成28(ネ)10089 債務不存在確認本訴請求,特許権移転登録手続反訴請求,不当利得返還等反訴請求各控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成29年3月8日 知的財産高等裁判所 3部 判決 原判決一部取消 東京地方裁判所 平成24(ワ)10567
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判決文本文12,280 文字)

平成29年3月8日判決言渡平成28年(ネ)第10089号債務不存在確認本訴請求,特許権移転登録手続反訴請求,不当利得返還等反訴請求各控訴事件(原審:東京地方裁判所平成24年(ワ)第10567号,平成27年(ワ)第10696号,同第28881号)口頭弁論終結日平成28年12月6日判決 控訴人LGDisplay株式会社 訴訟代理人弁護士古田啓昌同岩瀬吉和同山内真之同後藤直之 被控訴人大林精工株式会社(以下「被控訴人大林精工」という。) 被控訴人Y1(以下「被控訴人Y1」という。) 被控訴人Y2(以下「被控訴人Y2」という。)上記3名訴訟代理人弁護士大野聖二同井上義隆同小林英了主文 1 原判決中,控訴人が被控訴人大林精工に対して原判決別紙特許権目録1記載1,同2,同4ないし同6の各特許権の移転登録手続を求める請求を棄却した部分を取り消す。 2 上記部分に係る控訴人の訴えを却下する。 3 控訴人のその余の控訴及び当審における予備的請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審とも控訴人の負担とする。 5 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 被控訴人大林精工は,控訴人に対し,原判決別紙特許権目録1記載1,2及び4ないし6の各特許権の移転登録手続をせよ。 4 被控訴人Y2は,控訴人に対し,原判決別紙特許権目録2及び同3記載の各特許権の移転登録手続をせよ。 5( 対し,原判決別紙特許権目録1記載1,2及び4ないし6の各特許権の移転登録手続をせよ。 4 被控訴人Y2は,控訴人に対し,原判決別紙特許権目録2及び同3記載の各特許権の移転登録手続をせよ。 5(主位的請求)被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,5億円及びこれに対する平成15年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (予備的請求) (1) 被控訴人大林精工は,控訴人に対し,5億円及びこれに対する平成15年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,うち1億5000万円及びこれに対する同年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員については被控訴人Y1と連帯して,うち3億5000万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員については被控訴人Y2と連帯して)を支払え。 (2) 被控訴人Y1は,控訴人に対し,被控訴人大林精工と連帯して1億5000万円及びこれに対する平成15年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被控訴人Y2は,控訴人に対し,被控訴人大林精工と連帯して3億5000万円及びこれに対する平成15年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して520万4014円及びこれに対する平成27年11月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要本判決の略称は,特に断らない限り,原判決に従う。 1 事案の要旨(1) 本件は,次のアのとおり被控訴人らが本訴を提起したところ,次のイ及びウのとおり控訴人が反訴を提起した事案である。 ア甲事件(本訴・東京地方裁判所平成24年(ワ)第10567 事案の要旨(1) 本件は,次のアのとおり被控訴人らが本訴を提起したところ,次のイ及びウのとおり控訴人が反訴を提起した事案である。 ア甲事件(本訴・東京地方裁判所平成24年(ワ)第10567号)(ア) 被控訴人らが,被控訴人Y2による本件発明1(原判決別紙特許出願目録1記載の各特許出願に係る各発明)の被控訴人Y1への開示行為,被控訴人Y1及び同大林精工による本件発明1の取得行為並びに被控訴人大林精工による本件発明1の特許出願行為は,いずれも控訴人に対する不正競争行為(不競法2条1項7号,8号)又は一般不法行為(民法 709条)を構成することはないと主張して,控訴人に対する不法行為(不正競争行為を含む。以下同じ。)に基づく損害賠償債務が存在しないことの確認を求める訴え。 (イ) 被控訴人Y2が,被控訴人Y2による本件発明2(原判決別紙特許出願目録2記載の各特許出願に係る各発明)の特許出願行為は,控訴人に対する不正競争行為(不競法2条1項7号)又は一般不法行為を構成することはないと主張して,控訴人に対する不法行為に基づく損害賠償債務が存在しないことの確認を求める訴え。 イ乙事件(反訴・同裁判所平成27年(ワ)第10696号)韓国の法人であるLG電子(エルジー電子株式会社)からLCD(液晶ディスプレイ)関連の事業部門の譲渡を受けた控訴人が,本件特許権1(原判決別紙特許権目録1記載の各特許権)は,いずれもLG電子がその従業員から特許を受ける権利の譲渡を受けた職務発明を被控訴人大林精工が冒認出願することにより取得したものであり,本件特許権2(原判決別紙特許権目録2記載の各特許権)及び本件特許権3(原判決別紙特許権目録3記載の各特許権)は,いずれも,LG電子の従業員であった被控訴人Y2が,特許を受ける権利をLG電子に譲渡 本件特許権2(原判決別紙特許権目録2記載の各特許権)及び本件特許権3(原判決別紙特許権目録3記載の各特許権)は,いずれも,LG電子の従業員であった被控訴人Y2が,特許を受ける権利をLG電子に譲渡した職務発明について自らを出願人として冒認出願することにより取得したものであると主張して,不当利得返還請求権又は不当利得の法理に基づき,被控訴人大林精工に対しては,本件特許権1(ただし,特許料不納により消滅した本件特許権1-3を除く。)につき,被控訴人Y2に対しては,本件特許権2及び同3につき,それぞれ特許権移転登録手続を求める訴え。 ウ丙事件(反訴・同裁判所平成27年(ワ)第28881号)控訴人が,「被控訴人らは,共謀の上,被控訴人大林精工において本件ライセンス発明(LG電子の従業員による職務発明である本件発明1-1ないし同1-5)を冒認して特許出願し,これにより取得した本件ライセ ンス特許権(本件特許権1-1ないし同1-5)について日立ディスプレイズ(株式会社日立ディスプレイズ)に実施許諾し,同社からライセンス料として少なくとも5億円を受領した。」という事実の存在を前提に,(ア) 被控訴人らは,上記行為により法律上の原因なく5億円を悪意で利得し,LG電子からLCD関連の事業部門の譲渡を受けた控訴人に同額の損失を与えていると主張して,不当利得返還請求権に基づき,被控訴人らに対し,不当利得金5億円(ただし,被控訴人Y1及び同Y2の不当利得の額を被控訴人大林精工から現実に分配を受けた額とみる場合は,被控訴人大林精工に対しては5億円,被控訴人Y1に対しては1億5000万円,被控訴人Y2に対しては3億5000万円)及び法定利息の連帯支払を,(イ) 被控訴人らの上記行為はLG電子からLCD関連の事業部門の譲渡を受けた控訴人に対す 訴人Y1に対しては1億5000万円,被控訴人Y2に対しては3億5000万円)及び法定利息の連帯支払を,(イ) 被控訴人らの上記行為はLG電子からLCD関連の事業部門の譲渡を受けた控訴人に対する共同不法行為を構成し,これにより控訴人に少なくとも6億円の損害を与えたと主張して,不法行為による損害賠償請求権に基づき,被控訴人らに対し,かかる損害の一部として,損害賠償金520万4014円及び遅延損害金の連帯支払を,それぞれ求める訴え。 (2) 原審は,被控訴人らの請求(甲事件に係る本訴請求)を全部認容し,控訴人の請求(乙事件及び丙事件に係る反訴請求)を全部棄却したため,これを不服として控訴人が控訴した。 (3) 当審において,控訴人は,丙事件(ア)の反訴請求(不当利得返還請求)が認められなかった場合の予備的請求として,準事務管理に基づく請求(請求額は不当利得返還請求と同じ。)を追加した(訴えの追加的変更)。 被控訴人らは,かかる訴えの追加的変更は,著しく訴訟手続を遅滞させることとなるものであり許されないと主張して,手続の適法性を争っている。 2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張 次のとおり,付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の2ないし4(原判決6頁22行目から38頁13行目まで)のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決8頁23行目に「10月6日」とあるのを「9月9日」と改め,同9頁4行目の「164,」の後に「165」を加える。 (2) 同11頁13行目の後に改行して次のとおり加える。 「被控訴人大林精工は,同判決を不服として最高裁判所に上告及び上告受理申立てをしたが(同裁判所平成28年(オ)第246号,同年(受)第303号),同裁判所は,平成28年9月30日,上告棄却及び上告 「被控訴人大林精工は,同判決を不服として最高裁判所に上告及び上告受理申立てをしたが(同裁判所平成28年(オ)第246号,同年(受)第303号),同裁判所は,平成28年9月30日,上告棄却及び上告不受理の決定をした(乙175)。」(3) 同26行目の後に改行して次のとおり加える。 「被控訴人大林精工は,同判決を不服として最高裁判所に上告及び上告受理申立てをしたが(同裁判所平成28年(オ)第445号,同年(受)第560号),同裁判所は,平成28年9月30日,上告棄却及び上告不受理の決定をした(乙176)。」(4) 同12頁9行目から10行目にかけての「現在,控訴審が係属中である」を,「同裁判所は,平成29年1月25日,原判決のうち被控訴人Y2敗訴部分を取り消して同人に対する請求を全部棄却すると共に,控訴人敗訴部分(控訴人の被控訴人大林精工に対する特許権移転登録手続請求を全部棄却した部分)については,原判決を変更して,請求の一部に係る訴えを特許権の消滅を理由に却下し,その余の請求をいずれも棄却し,控訴人が控訴審で追加した特許権移転登録義務の不履行を請求の原因とする損害賠償請求については,請求を全部棄却する旨の判決をした(同裁判所平成28年(ネ)第10020号,同第10044号。当裁判所に顕著な事実)」と改める。 (5) 同17行目から18行目にかけての「不当利得返還請求権」とあるのを「不当利得返還債務」と改める。 (6) 同13頁19行目の「原告らは,」から20行目の「与えているか」まで,及び同33頁1行目の「原告らは,」から2行目の「与えているか」までを,いずれも「被控訴人らは,法律上の原因なく,日立ディスプレイズからのライセンス料相当額を悪意で利得し,これにより控訴人に損失を与えたか。また,準事務管理に基づく同ライ 行目の「与えているか」までを,いずれも「被控訴人らは,法律上の原因なく,日立ディスプレイズからのライセンス料相当額を悪意で利得し,これにより控訴人に損失を与えたか。また,準事務管理に基づく同ライセンス料相当額の返還請求が認められるか。」と改める。 (7) 同14頁23行目に「丙事件のうちのうち」とあるのを「丙事件のうち」と改める。 (8) 同25頁19行目に「いずれも公知性を欠く」とあるのを「いずれも非公知性を欠く」と改める。 (9) 同29頁3行目に「原告Y2により」とあるのを「被控訴人Y2による」と改める。 (10) 同31頁22行目の末尾に「なお,控訴人の主張はすべて争う。」を加える。 (11) 同32頁13行目に「10月6日」とあるのを「9月9日」と改める。 (12) 同34頁12行目の後に改行して次のとおり加える。 「ウ仮に,原判決が説示するとおり,不当利得についての損失が認められないのであれば,いわゆる準事務管理の法理(民法697条1項,646条1項の準用)によって,控訴人の被控訴人らに対するライセンス料相当額の返還請求が認められるべきである。被控訴人らは,本件ライセンス発明について,控訴人の事務(すなわち特許出願事務)を,権限がないことを知りながら,自己の利益を図るために管理した(すなわち特許出願をし,権利化した)ものであるから,その事務を処理するに当たって受け取った金銭であるライセンス料5億円を,控訴人に引き渡さなければならない。」(13) 同35頁4行目の後に改行して次のとおり加える。 「ウ準事務管理に関する主張は争う。なお,控訴審になって新たな請求 (準事務管理に基づく請求)を追加することは,著しく訴訟手続を遅滞させることとなるものであり許されない。」(14) 同頁26行目に「10月6日 る主張は争う。なお,控訴審になって新たな請求 (準事務管理に基づく請求)を追加することは,著しく訴訟手続を遅滞させることとなるものであり許されない。」(14) 同頁26行目に「10月6日」とあるのを「9月9日」と,同36頁23行目に「同2」とあるのと「同3」と,それぞれ改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,被控訴人らの請求(甲事件に係る本訴請求)はいずれも理由があり,控訴人の請求(乙事件及び丙事件に係る反訴請求。当審における予備的請求を含む。)はいずれも理由がないものと判断する。 その理由は,下記2とおり付加,訂正し,下記3のとおり当審における判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の1ないし3(原判決38頁15行目から55頁24行目まで。ただし,44頁12行目から45頁3行目まで〔争点5についての判断部分〕を除く。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ただし,証拠(甲68ないし72)によれば,本件特許権1-1,同1-2,同1-4ないし同1-6の5つの特許権は,いずれも控訴審における本件口頭弁論終結時において,既に存続期間満了(本件特許権1-1及び同1-2)又は特許料不納(本件特許権1-4ないし同1-6)により消滅しているものと認められるから,乙事件の反訴請求に係る訴えのうち,被控訴人大林精工に対しこれら5つの特許権の移転登録手続を求める部分については,訴えの利益が失われたものとして,却下するのが相当である。 2 原判決の補正(1) 原判決38頁24行目に「本件発明」とあるのを「本件各発明」と改める。 (2) 同39頁8行目に「当裁判所は」とあるのを「原審は」と改める。 (3) 同40頁11行目に「同判決注の」とあるのを「同判決中の」と,同42頁8行目に「同合意書」とあるのを「 明」と改める。 (2) 同39頁8行目に「当裁判所は」とあるのを「原審は」と改める。 (3) 同40頁11行目に「同判決注の」とあるのを「同判決中の」と,同42頁8行目に「同合意書」とあるのを「後記合意書に係る合意」と,それぞれ改める。 (4) 同45頁9行目の「主文1項ないし3項」の後に「。なお,甲事件に係る債務不存在確認請求と,丙事件に係る損害賠償請求とは,その対象が一部重複しているが,丙事件に係る損害賠償請求は一部請求であり,債務不存在確認訴訟の訴訟物が全て損害賠償請求に包含されているわけではないので,債務不存在確認の訴えはなお訴えの利益があるものと解される。」を加える。 (5) 同45頁11行目の「不当利得」から12行目の末尾までを「不当利得によるライセンス料相当額の返還請求又は準事務管理に基づく同相当額の返還請求の可否(争点7)について」と改める。 (6) 同46頁22行目に「出願」とあるのを「出願人」と改める。 (7) 同51頁9行目の後に改行して次のとおり加える。 「(4) 控訴人は,仮に不当利得についての損失が認められないのであれば,いわゆる準事務管理の法理(民法697条1項,646条1項の準用)によって,控訴人の被控訴人らに対するライセンス料相当額の返還請求が認められるべきである旨主張する。しかし,仮に準事務管理という概念を認める余地があるとしても,本件は,もともと特許を受ける権利ないし特許権の帰属について争いがあった事案であり,少なくとも,被控訴人らにおいて,初めから権限がないことを知りながら,すなわち,本来控訴人に帰属すべき権利であることを確定的に認識しながら,あえて本件ライセンス発明について特許出願をし,これを権利化してライセンス契約を行ったというような事情を認めるに足りる的確な証拠はない。かか 控訴人に帰属すべき権利であることを確定的に認識しながら,あえて本件ライセンス発明について特許出願をし,これを権利化してライセンス契約を行ったというような事情を認めるに足りる的確な証拠はない。かかる事実関係の下においては,事務管理の規定を適用ないし類推適用する余地はないというべきであり,上記控訴人の主張は採用できない(なお,被控訴人らは,本請求は,著しく訴訟手続を遅滞させることとなるものであり許されないと主張しているが,当裁判所としては,特段審理を遅滞させることなく判断することが可能であると判断し,請求に対する判断を示すこととしたものである。)。 したがって,準事務管理の法理(民法697条1項,646条1項の準用) に基づく請求も理由がないというべきである。」(8) 同52頁10行目から11行目にかけて「発明者等が,特許権について移転及び移転登録請求を求めることができる旨の規定はない。」とあるのを「発明者等が,冒認出願者に対し特許権の移転を請求することができる旨の規定はない。」と改める。 (9) 同12行目に「仮に,発明者等から冒認出願者への特許権の移転登録手続を認めたとしても」とあるのを「仮に,発明者等から冒認出願者への特許権の移転登録手続請求を認めたとしても」と改める。 (10) 同18行目から19行目にかけて「旧法が発明者等から冒認出願者への特許権の移転登録手続を求めることを想定していなかった」とあるのを「旧法が発明者等から冒認出願者への特許権の移転登録手続請求を想定していなかった」と改める。 3 付加判断なお,控訴理由に鑑み,必要な限度で判断を加える。 (1) 消滅時効の成否について(争点6関係)ア控訴人は,平成16年3月23日の時点では,控訴人は賠償すべき損害が発生していること,すなわち,被控訴人 訴理由に鑑み,必要な限度で判断を加える。 (1) 消滅時効の成否について(争点6関係)ア控訴人は,平成16年3月23日の時点では,控訴人は賠償すべき損害が発生していること,すなわち,被控訴人大林精工が第三者からライセンス料を受領していることを認識していなかったのであり,したがって,当該ライセンス料に係る損害が発生していることを同日時点では認識していなかったのであるから,消滅時効の起算点に係る原判決の認定は誤りであると主張する。 しかしながら,かかる主張は採用できない。 すなわち,本件ライセンス発明に関しては,被控訴人大林精工が,控訴人に対し,平成15年2月の時点で,「日立製作所」との間でライセンス供与に関する合意に至ったことを告げており(甲65),同年5月の時点では,「日立製作所」との間で既に正式なライセンス契約を締結したこと を告げた上で,控訴人に対しても有償のライセンス契約の締結を促し,具体的な条件提示を行っていること(甲66)からすれば,控訴人は,同時点で既に,被控訴人大林精工が第三者との間でライセンス契約を締結していることはもちろんのこと,同契約が有償の契約であって,(具体的金額はともかくとして)ライセンス料の授受が行われているであろうことも当然認識し得たといえる(控訴人に対し有償のライセンス契約を提示している以上,他社との間におけるライセンス契約も当然有償であると認識するのが通常であるといえる。)。 その上で,冒認出願であるとの確信を得た控訴人は,同年10月には,被控訴人大林精工に対し権利主張と警告を行い(甲17),平成16年3月23日には,本件ライセンス特許権等の即時移転だけでなく,既に設定された実施権等は無効とすることなどを内容とする具体的な合意書案を作成して被控訴人らに調印を求め,その後の交渉 17),平成16年3月23日には,本件ライセンス特許権等の即時移転だけでなく,既に設定された実施権等は無効とすることなどを内容とする具体的な合意書案を作成して被控訴人らに調印を求め,その後の交渉においては,「ライセンス契約を締結したのであれば,…少なくともそれによって得た利益は当社に返還されるべきであり,これを実現させるためには,まず,ライセンス契約に関する条件を知っておく必要がある」(甲67の3頁)との認識の下に,被控訴人Y1に対し,ライセンス料の開示を繰り返し要求し,また,被控訴人大林精工が得た利益の折半を提案するなどしており,同日以降は,一貫してライセンス料の授受があったことを前提に,その全部ないし一部が控訴人に返還されるべきとの立場に立って,被控訴人らとの間の交渉に当たっていたことが認められる(甲8の2ないし4,甲67)。 以上に基づけば,控訴人は,遅くとも上記合意書案を作成して被控訴人らに調印を求めた平成16年3月23日の時点では,被控訴人大林精工が第三者との間でライセンス契約を締結してライセンス料を受領していることを具体的に認識しており,かかる認識に基づいてその後の交渉に当たっていたものと認めるのが合理的である。 したがって,被控訴人大林精工及び同Y2による特許出願や,これに先立つ被控訴人Y1による本件発明1の取得行為等を原因とする不法行為について,控訴人が「損害及び加害者を知った時」(民法724条)は,同日(平成16年3月23日)というべきであるとした原判決の認定判断に誤りはない。 イ次に,控訴人は,仮に消滅時効の起算点が平成16年3月23日であるとしても,被控訴人Y1及び同Y2が同年4月3日に合意書(甲2)に署名したことをもって,時効の中断事由たる「承認」があったと主張する。 しかしながら,か 時効の起算点が平成16年3月23日であるとしても,被控訴人Y1及び同Y2が同年4月3日に合意書(甲2)に署名したことをもって,時効の中断事由たる「承認」があったと主張する。 しかしながら,かかる主張も採用できない。 上記合意書の文面はもちろんのこと,控訴人が主張する交渉経過を考慮しても,被控訴人Y1及び同Y2が,冒認出願の事実とこれにより控訴人に発生した損害を賠償すべき義務を負うことを認めた上で上記合意書に署名したものと認めるに足りない。このことは,被控訴人Y1が,控訴人に対し,上記合意書と共に送ったレター(甲8の1)において,明示的に合意書に係る条項の一部を拒否して(しかも,被控訴人Y1が拒否したのは,本件ライセンス契約を無効にすることであり,これは,被控訴人らの損害賠償義務に密接にかかわる事柄であったといえる。),これが受け入れられなければ,控訴人の申入れは全く受け入れられないと主張していることや,その後の難航した交渉経過(甲67)からも明らかというべきである。 ウさらに,控訴人は,控訴人が平成18年に韓国で訴訟を提起したことが,裁判上の請求として時効中断事由となり,また,仮にこれが認められなくても,少なくとも,いわゆる裁判上の催告としての効力が認められるべきであるとも主張するが,結局は同訴訟の途中の平成19年7月に損害賠償請求を取り下げている以上,時効中断の効力が生じないことは原判決が説示するとおりであるし,これを催告としてみたとしても,取下げ後6か月以内に改めて裁判上の請求等を行っていない以上,やはり時効中断の効力 を認めることはできないというべきである。 エ被控訴人らによる消滅時効の援用が権利の濫用や信義則に違反すると認められないことは,原判決が説示するとおりである。 オ以上の次第であるから,消 を認めることはできないというべきである。 エ被控訴人らによる消滅時効の援用が権利の濫用や信義則に違反すると認められないことは,原判決が説示するとおりである。 オ以上の次第であるから,消滅時効の成否に関する控訴人の主張はいずれも採用できない。 (2) 不当利得ないし準事務管理の成否について(争点7関係)ア控訴人は,原判決がLG電子又は控訴人にライセンス料相当額の損失の発生を認めなかったのは誤りであるとして,LG電子が被控訴人Y2による本件ライセンス発明の完成を知らされておらず,これを知らされていれば日本において特許を取得することができたはずであること,冒認出願により得た利益を被控訴人らに保持させることは公平の理念に反することなどをるる主張する。 しかしながら,かかる主張も採用できない。 すなわち,本件ライセンス発明がC第1発明及びC第2発明を含むことは控訴人自身が主張するものであるところ,LG電子が両発明についてはいずれも韓国で特許出願しており,C第1発明については韓国での特許出願を優先権主張の基礎として米国でも特許出願していながら,日本においては,両発明のいずれについても特許出願を行っておらず,これを行うことができなかったとする合理的な理由も見当たらないことは原判決が指摘するとおりである。 そして,韓国における特許出願が公開されれば新規性を失うことになるにもかかわらず,あえて日本において特許出願をしていないということは,それ自体会社としての何らかの意思決定や判断に基づいていると推認せざるを得ないのであり,そうである以上,両発明を含むものとされる本件ライセンス発明についても,控訴人において当然に日本において特許出願をする意思があったと認めることはできない(仮に控訴人が本件ライセンス 発明を把 うである以上,両発明を含むものとされる本件ライセンス発明についても,控訴人において当然に日本において特許出願をする意思があったと認めることはできない(仮に控訴人が本件ライセンス 発明を把握していなかったとしても,控訴人においてこれを把握していれば当然に特許出願の意思があったとは認められない。)。 しかるところ,それでもなお,控訴人において,被控訴人らの行為がなければ,本件ライセンス発明については,日本で特許出願し,被控訴人らが得たライセンス料に相当する額の利益を得ることができたと主張するのであれば,C第1発明及びC第2発明とは異なり,本件ライセンス発明については確かに日本で特許出願したであろうと認めるに足りる具体的事実の主張立証を要するというべきところ,控訴人の主張はいずれも抽象的な可能性を指摘するにすぎず,かかる事実を認定するに足りない。 したがって,仮に本件ライセンス発明に係る被控訴人大林精工の特許出願が冒認出願であったとしても,控訴人には「損失」が認められず,不当利得は成立しないとした原判決の認定判断に誤りはない。 イまた,準事務管理の主張が採用できないことは,前記2(7)で説示したとおりである。 ウ以上の次第であるから,不当利得ないし準事務管理の成否に関する控訴人の主張も採用できない。 (3) 特許権移転登録手続請求について(争点9関係)控訴人は,るる理由を述べて本件各特許権(ただし,本件特許権1-3を除く。以下同じ。)について不当利得返還請求権又は不当利得の法理に基づく特許権移転登録手続請求が認められるべき旨を主張する。 しかし,本件特許権1に関しては,前記のとおり,いずれも控訴審における本件口頭弁論終結時において既に権利自体が消滅しているから,主張の当否にかかわらず,特許権の移転登録手続を行う余地 を主張する。 しかし,本件特許権1に関しては,前記のとおり,いずれも控訴審における本件口頭弁論終結時において既に権利自体が消滅しているから,主張の当否にかかわらず,特許権の移転登録手続を行う余地はない。 本件特許権2及び同3に関しては,発明者がいずれも被控訴人Y2であることは争いがないところ,これらの発明が控訴人に帰属すべき職務発明であるか否かは本件各証拠によっても判然とせず,したがって,被控訴人Y2に よる出願が冒認出願であるとは必ずしも断定できないから,そもそも不当利得返還請求権又は不当利得の法理に基づく特許権移転登録手続請求の可否を論じる前提を欠く。また,仮に同出願が冒認出願であったとしても,本件は,生ゴミ処理装置に係る平成13年最判とは事案を異にするのであって,同最判が控訴人による特許権移転登録手続請求を根拠付けるものとはならないことは,原判決が説示するとおりである。 以上によれば,特許権移転登録手続請求に関する控訴人の主張も採用できない。 第4 結論以上の次第であるから,被控訴人らの請求(甲事件に係る本訴請求)はいずれも理由があり,控訴人の請求(乙事件及び丙事件に係る反訴請求。当審における予備的請求を含む。)はいずれも理由がない。 もっとも,乙事件に係る訴えのうち,本件特許権1-1,同1-2,同1-4ないし同1-6という5つの特許権の移転登録手続を求める部分については,訴えの利益が失われたものとして,却下すべきであるから,この部分については原判決を取り消し,当該訴えを却下することとし,控訴人のその余の控訴及び当審における予備的請求は,いずれもこれを棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 主文 審における予備的請求は,いずれもこれを棄却することとする。よって,主文のとおり判決する。 理由 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 裁判官大西勝滋 裁判官寺田利彦

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