主文 一第一事件から第九事件までの各原告らが日本国籍を有することをいずれも確認する。 二訴訟費用は、被告の負担とする。 事実 及び理由第一請求主文同旨第二事案の概要一事案の骨子本件は、フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)国籍の母と日本国籍を有する父との間に出生した第一事件から第九事件までの各原告(以下、9名を合わせて「原告ら」という。)が、出生後に父から認知を受けたことを理由に法務大臣あてに国籍取得届を提出したところ、原告らが国籍法3条1項に規定する国籍取得の条件を備えていないとして、日本国籍の取得を認められなかったため、父母の婚姻及び嫡出子たることを国籍取得の要件とする同項の規定は、憲法14条に違反するなどと主張して、被告に対し、日本国籍を有することの確認を求める事案である。 二関係法令の定め等 国籍法(一)2条(出生による国籍の取得)子は、次の場合には、日本国民とする。 1号出生の時に父又は母が日本国民であるとき。 2号及び3号省略(二)3条(準正による国籍の取得)1項父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で20歳未満のもの(日本国民であった者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であった場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であったときは、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができる。 2項前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。 国籍法施行規則1条(国籍取得の届出)1項国籍法(昭和25年法律第147号。以下「法」という。)第3条第1項・・・(中略)・・・による国籍取得の届出は、国籍の取得をしようとする者が日本に住所を有するときはその 1条(国籍取得の届出)1項国籍法(昭和25年法律第147号。以下「法」という。)第3条第1項・・・(中略)・・・による国籍取得の届出は、国籍の取得をしようとする者が日本に住所を有するときはその住所地を管轄する法務局又は地方法務局の長を経由して、・・・(中略)・・・しなければならない。(以下省略)2項(省略)3項前2項の届出は、届出をしようとする者が自ら法務局、地方法務局又は在外公館に出頭して、書面によってしなければならない。 4項届書には、次の事項を記載して届出をする者が署名押印し、国籍取得の条件を備えていることを証するに足りる書類を添付しな ければならない。 1号国籍の取得をしようとする者の氏名、現に有する国籍、出生の年月日及び場所、住所、男女の別並びに嫡出子又は嫡出でない子の別2号(省略)3号国籍を取得すべき事由 国籍法改正の経緯明治32年制定の国籍法(明治32年法律第66号。以下「旧国籍法」という。)は、国籍の生来的取得(出生時点における国籍取得)と伝来的取得(出生後の事後的な国籍取得)を峻別することなく、当時の家制度を前提として、身分行為によって日本国籍を取得することを広く認めており、日本国民である妻、入夫又は養子となった外国人に日本国籍の取得を認めていたほか、日本国民に認知された子についても日本国籍の取得を認めていた。 現行憲法下において昭和25年に制定された国籍法(昭和59年法律第45号による改正前の昭和25年法律第147号。以下「改正前国籍法」という。)は、国籍の取得原因を出生による場合と帰化による場合の二つに限定し、旧国籍法における身分行為による国籍取得は、家制度に由来し、憲法の個人の尊厳と両性の本質的平等に反するとしてこれを廃止した。しかしながら、改正前国籍法は、父系血統優先主義を採 る場合の二つに限定し、旧国籍法における身分行為による国籍取得は、家制度に由来し、憲法の個人の尊厳と両性の本質的平等に反するとしてこれを廃止した。しかしながら、改正前国籍法は、父系血統優先主義を採用していたことから、日本国民を母とし、外国人を父とする非嫡出子は原則として日本国籍を取得することができないこととされた。 また、国籍の取得原因から認知を排除した結果、現行の国籍法と同様、父が日本国民である非嫡出子であっても、出生の時点において父と法律上の親子関係が生じていない者は日本国籍を取得することができない扱いとなった。 昭和59年法律第45号による改正は、改正前国籍法が採用していた父系血統優先主義を見直し、父母両系血統主義を採用したことから、現行の国籍法では、母が日本国民である非嫡出子については、出生と同時に日本国籍が与えられることとなった(国籍法2条1号)。また、昭和59年法律第45号は、国籍の取得原因として、出生及び帰化のほかに新たに届出による国籍制度(国籍法3条1項)を設けたが、父が日本国民であって、生後認知を受けた非嫡出子が届出によって日本国籍を取得することができるのは、父母が婚姻したことにより嫡出子の身分を取得した場合に限定されている(以下、このような父母の婚姻により嫡出子となった子を「準正子」という。)。 三前提事実本件の前提となる事実は、次のとおりである。なお、証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることのできる事実は、括弧内に認定根拠を付記しており、それ以外の事実は、当事者間に争いのない事実である。 第一事件原告P1(一)第一事件原告P1(戸籍上の表記は、「P2」。)は、平成▲年▲月▲日、フィリピン国籍の母P3の子として日本で出生し、日本で育った。(甲イ1、2、弁論の全趣旨) (二)原告P1は、日本国民 一)第一事件原告P1(戸籍上の表記は、「P2」。)は、平成▲年▲月▲日、フィリピン国籍の母P3の子として日本で出生し、日本で育った。(甲イ1、2、弁論の全趣旨) (二)原告P1は、日本国民であって、父であるP4に対し、自らを認知することを求めて千葉地方裁判所館山支部に提訴したところ、その後、P4は、平成13年12月12日、原告P1を認知した。 (甲イ1、2)(三)原告P1法定代理人親権者母P3は、法務大臣に対し、平成17年3月9日、上記認知を理由に同原告の日本国籍の取得を届け出たが、同届出は受け付けられず、日本国籍の取得は認められなかった。(甲イ3) 第二事件原告P5(一)第二事件原告P5(戸籍上の表記は、「P6」。)は、平成▲年▲月▲日、フィリピン国籍の母P7(戸籍上の表記は、「P8」。)の子として日本で出生し、日本で育った。(甲ロ1、2、弁論の全趣旨)(二)原告P5の父であって、日本国民であるP9は、平成10年11月4日、原告P5を認知した。(甲イ1、2)(三)原告P5法定代理人親権者母P7は、法務大臣に対し、平成17年2月22日、上記認知を理由に同原告の日本国籍の取得を届け出た。東京法務局長は、P7に対し、同年3月10日、同届出は国籍取得の条件を備えているものとは認められない旨通知して、国籍の取得を認めなかった。(弁論の全趣旨) 第三事件原告P10(一)第三事件原告P10(戸籍上の表記は、「P11」。)は、平 成▲年▲月▲日、フィリピン国籍の母P12(同原告戸籍上の表記は、「P13」。)の子として日本で出生し、日本で育った。(甲ハ1、2、弁論の全趣旨)(二)原告P10の父であって、日本国民であるP14は、平成12年8月16日、原告P10を認知した。(甲ハ1、2)(三)原告P10法定代理 で出生し、日本で育った。(甲ハ1、2、弁論の全趣旨)(二)原告P10の父であって、日本国民であるP14は、平成12年8月16日、原告P10を認知した。(甲ハ1、2)(三)原告P10法定代理人親権者母P12は、法務大臣に対し、平成17年2月25日、上記認知を理由に原告P10の日本国籍の取得を届け出たが、同届出は受け付けられず、日本国籍の取得は認められなかった。(甲ハ3) 第四事件原告P15(一)第四事件原告P15(戸籍上の表記は、「P16」。)は、平成▲年▲月▲日、フィリピン国籍の母P17(同原告戸籍上の表記は、「P18」。)の子として日本で出生し、日本で育った。(甲ニ1、2、弁論の全趣旨)(二)千葉地方裁判所は、平成12年8月30日、原告P15が日本国民であるP19の子であることを認知する旨の判決を言い渡し、同判決は、同年9月13日に確定した。(甲ニ1、2、弁論の全趣旨)(三)原告P15法定代理人親権者母P17は、法務大臣に対し、平成17年3月16日、上記認知を理由に同原告の日本国籍の取得を届け出た。東京法務局長は、P17に対し、同年3月23日、同届出は国籍取得の条件を備えているものとは認められない旨通知し、 日本国籍の取得を認めなかった。(弁論の全趣旨) 第五事件原告P20(一)第五事件原告P20(戸籍上の表記は、「P21」。)は、平成▲年▲月▲日、フィリピン国籍の母P22(同原告戸籍上の表記は、「P23」。)の子として日本で出生し、日本で育った。(甲ホ1、2、弁論の全趣旨)(二)横浜地方裁判所相模原支部は、原告P20が日本国民であるP24の子であることを認知する旨の判決を言い渡し、同判決は、平成13年7月26日に確定した。(甲ホ1、2、弁論の全趣旨)(三)原告P20法定代理人親権者母P22 部は、原告P20が日本国民であるP24の子であることを認知する旨の判決を言い渡し、同判決は、平成13年7月26日に確定した。(甲ホ1、2、弁論の全趣旨)(三)原告P20法定代理人親権者母P22は、法務大臣に対し、平成17年3月1日、上記認知を理由に同原告の日本国籍の取得を届け出た。横浜地方法務局長は、P22に対し、同年3月17日、同届出は国籍取得の条件を備えているものとは認められない旨通知し、日本国籍の取得を認めなかった。(弁論の全趣旨) 第六事件原告P25(一)第六事件原告P25(戸籍上の表記は、「P26」。)は、平成▲年▲月▲日、フィリピン国籍の母P27(同原告戸籍上の表記は、「P28」。)の子として日本で出生し、日本で育った。(甲へ1、2、弁論の全趣旨)(二)水戸家庭裁判所土浦支部は、平成14年6月4日、原告P25が日本国民であるP29の子であることを認知する旨の審判をし、同審判は、平成14年6月27日に確定した。(甲へ1、3の1、 3の2、弁論の全趣旨)(三)原告P25法定代理人親権者母P27は、法務大臣に対し、平成17年3月4日、上記認知を理由に同原告の日本国籍取得を届け出た。東京法務局長は、P27に対し、同年3月10日、同届出は国籍取得の条件を備えているものとは認められない旨通知し、日本国籍の取得を認めなかった。(弁論の全趣旨) 第七事件原告P30(一)第七事件原告P30(戸籍上の表記は、「P31」。)は、平成▲年▲月▲日、フィリピン国籍の母P32(同原告戸籍上の表記は、「P33」。)の子として日本で出生し、日本で育った。(甲ト1、2、弁論の全趣旨)(二)原告P30の父であって、日本国民であるP34は、平成15年3月20日、原告P30を認知した。(甲ト1、2)(三)原告P30法定代理人 出生し、日本で育った。(甲ト1、2、弁論の全趣旨)(二)原告P30の父であって、日本国民であるP34は、平成15年3月20日、原告P30を認知した。(甲ト1、2)(三)原告P30法定代理人親権者母P32は、法務大臣に対し、平成17年3月4日、上記認知を理由に同原告の日本国籍の取得を届け出た。東京法務局長は、P32に対し、同年3月10日、同届出は国籍取得の条件を備えているものとは認められない旨通知し、日本国籍の取得を認めなかった。(弁論の全趣旨) 第八事件原告P35(一)第八事件原告P35(戸籍上の表記は、「P36」。)は、平成▲年▲月▲日、フィリピン国籍の母P37(同原告戸籍上の表記は、「P38」。)の子として日本で出生し、日本で育った。(甲 チ1、2、弁論の全趣旨)(二)原告P35の父であって、日本国民であるP39は、平成6年2月22日、原告P35を認知した。(甲チ1、2)(三)原告P35法定代理人親権者母P37は、法務大臣に対し、平成17年3月4日、上記認知を理由に同原告の日本国籍取得を届け出た。東京法務局長は、P37に対し、同年3月10日、同届出は国籍取得の条件を備えているものとは認められない旨通知し、日本国籍の取得を認めなかった。(弁論の全趣旨) 第九事件原告P40(一)第九事件原告P40(戸籍上の表記は、「P41」。)は、平成▲年▲月▲日、フィリピン国籍の母P42(同原告戸籍上の表記は、「P43」。)の子として日本で出生し、日本で育った。(甲リ1、2、弁論の全趣旨)(二)東京家庭裁判所は、平成12年10月23日、原告P40が日本国民であるP44の子であることを認知する旨の審判をし、同審判は、平成12年11月7日に確定した。(甲リ1、2、3の1、弁論の全趣旨)(三)原告P40法定代理人 年10月23日、原告P40が日本国民であるP44の子であることを認知する旨の審判をし、同審判は、平成12年11月7日に確定した。(甲リ1、2、3の1、弁論の全趣旨)(三)原告P40法定代理人親権者母P42は、法務大臣に対し、平成17年3月4日、上記認知を理由に同原告の日本国籍の取得を届け出た。東京法務局長は、P42に対し、同年3月10日、同届出は国籍取得の条件を備えているものとは認められない旨通知し、日本国籍の取得を認めなかった。(弁論の全趣旨) 四 争点 本件における争点は、(1)国籍法3条1項の規定は、届出による国籍取得の要件として、日本国民である父又は母による認知のほかに、父母の婚姻により嫡出子となったことを求める点において、憲法14条1項に違反するか、(2)本件において、原告らは、国籍法3条1項の届出要件を満たしているか、である。 五争点に関する当事者の主張の要旨争点に関する当事者の主張の要旨は、別紙「当事者の主張の要旨」記載のとおりである。 第三当裁判所の判断一争点1(国籍法3条1項の合憲性)について 国籍法と憲法14条(一)憲法10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定している。これは、国籍は国家の構成員の資格であり、元来、何人が自国の国籍を有する国民であるかを決定することは、国家の固有の権限に属するものであり、国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかは、それぞれの国の歴史的事情、伝統、環境等の要因によって左右されるところが大きいところから、日本国籍の得喪をどのように定めるかを法律にゆだねる趣旨であると解することができる。このようにして定められた国籍の得喪に関する法律要件における区別が、憲法14条1項に違反するかどうかは、その区別が合理的な根拠に基づくものということができる ゆだねる趣旨であると解することができる。このようにして定められた国籍の得喪に関する法律要件における区別が、憲法14条1項に違反するかどうかは、その区別が合理的な根拠に基づくものということができるかどうかによっ て判断すべきものである。なぜなら、憲法14条1項は、法の下の平等を定めているが、絶対的平等を保障したものではなく、合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、法的取扱いにおける区別が合理的な根拠に基づくものである限り、何らこの規定に違反するものではないからである(平成14年最高裁判決参照)。 (二)ところで、国籍の得喪に関する法律要件における区別が憲法14条1項に違反すると争っている者は、同区別の合憲性を争点とする国籍確認請求事件における認容判決が確定するまでは、日本国籍を有しない外国人として取り扱われることとなる。そうすると、国籍の得喪に関する法律要件における区別が憲法14条1項に違反するかどうか、すなわち、その区別が合理的な根拠に基づくものということができるかどうかを判断するに当たっては、憲法14条1項に規定する「法の下」の「平等」が外国人にも及んでいることを前提に、既に我が国の法律(国籍法)によって国籍が与えられて我が国の国民となっている者と、未だに我が国の国籍が与えられずに我が国の国民となっていない者とを比較検討することになるため、憲法が外国人にも適用されるという前提に立つことができるか否かという点も、問題となり得るとも考えられる。 しかしながら、憲法14条1項は「すべて国民は、法の下に平等であって」と規定し、直接には日本国民を対象とするものではあるものの、法の下における平等の原則は、近代民主主義諸国の憲法における基礎的な政治原理の一として広く承認されていることにかん がみれば、同項の趣旨は、特段 直接には日本国民を対象とするものではあるものの、法の下における平等の原則は、近代民主主義諸国の憲法における基礎的な政治原理の一として広く承認されていることにかん がみれば、同項の趣旨は、特段の事情の認められない限り、外国人に対しても類推されるべきものと解するのが相当である(昭和39年11月18日最高裁判決参照)。 そして、前述した国籍を与えられる者と与えられない者との比較検討は、国籍法が設ける国籍の得喪に関する法律要件における区別が憲法14条1項に違反するかどうかを検討するに当たって、不可避的に問題となる事項である。したがって、仮に外国人に対して同項の適用を否定すれば、国籍法が設ける国籍の得喪に関する法律要件における区別に関しては、結局、同項の規定が全く適用されないという不都合な結果が生じるが、同項が規定する「法の下」の「平等」が、法適用の平等のほか、法そのものの内容の平等を含むものと解されること(昭和39年5月27日最高裁判決、最高裁昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号265頁参照)にかんがみれば、上記のような不都合な結果を憲法が許容していると解することはできない。しかも、仮に原告らに同項の規定が適用された結果、国籍法3条1項の規定が違憲となる場合には、後述するように、原告らは日本国民であるということになるのであるから、憲法14条1項の規定を原告らに適用しないとすることは不合理である。 したがって、以下においては、原告らにも憲法14条1項が適用されることを前提として、検討することとする。 (三)(1)次に、被告は、国際法上も国籍の得喪に関する立法は、国家 の対人主権の範囲を画するものとして各国の自由にゆだねられていること、憲法は、具体的にいかなる者を我が国の構成員とするかについては 1)次に、被告は、国際法上も国籍の得喪に関する立法は、国家 の対人主権の範囲を画するものとして各国の自由にゆだねられていること、憲法は、具体的にいかなる者を我が国の構成員とするかについては、代表民主制の原理に基づき、国会が、全国民を代表する立場において、我が国の歴史的事情、伝統、環境等様々な要因を総合的に考慮して合理的に定めることにゆだねたものと解されることなどに照らし、国籍の得喪に関する要件をいかに定めるかについては、その性質上、立法府に広範な裁量が与えられている旨主張する。 (2)しかしながら、国籍の得喪に関する要件の定め方において、立法府に広範な裁量が与えられているとしても、その結果生じた区別は、あくまでも憲法によって許される範囲内で認められるものにすぎないから、国籍の得喪に関する要件が定められた結果によって生じた区別が合理的な理由のない差別であれば、やはり、憲法14条1項によって禁止されるといわざるを得ない。 (3)そして、国籍の取得は、我が国において基本的人権の保障を受ける上で重要な意味を持つものであることは多言を要しない。また、法の下の平等は、民主主義社会の根幹を成す重要なものである。これらの点を考えると、国籍の得喪に関する要件をいかに定めるかについては、立法府に広範な裁量が認められるとしても、それは自由に定め得るというわけではなく、国籍の得喪の要件における区別の合理性が必要であり、本件では、この点につき判断することが求められているものと解すべきである。 また、実際にも、子供の福祉の観点からも、また親の感情の面からも、日本国民を親として生まれてきた子供は、日本国籍を持つことを期待していることが多いことは容易に想像し得るところである。したがって、このような期待が当然の権利であるということはできないもの からも、日本国民を親として生まれてきた子供は、日本国籍を持つことを期待していることが多いことは容易に想像し得るところである。したがって、このような期待が当然の権利であるということはできないものの、後述するように、現行の国籍法が父母両系血統主義に拠って立って立法されていることにかんがみると、その期待は、無視することはできず、前記の合理性の判断をする上でも、重要な考慮要素になると考えるべきである。そうすると、立法府に与えられた前記の広範な裁量を理由として、日本国民の子供の間で、国籍の取得につき異なる扱いをすることを当然に肯定することはできないというべきである。 (4)国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかについて、立法府に広範な裁量があるとする被告の主張は、以上に反する限度では採用することができない。 国籍法の趣旨等(一)現行の国籍法の基本的思想(1)現行の国籍法における血統主義の意義については、同法の法案審議において、立法担当者は、以下のように説明している(甲18。「改正国籍法・戸籍法の解説」法務省民事局内法務研究会編305頁以下所収の昭和59年4月23日衆議院法務委員会議事録。)。 (天野(等)委員)「国籍法・戸籍法の改正案についてお尋ねい たします。 最初に国籍法につきまして、これは国民の範囲を定めるという基本的な法律でもございますので、国籍法の基本原則であります血統主義、なぜこの血統主義を今度の国籍法の改正でもおとりになったのか、その点について大臣からの御意見を伺いたいと思います。」(住国務大臣)「一つは、沿革的なものがあると思います。原則としては、血統主義に生地主義と二つございますが、まあ大体世界の原則がどういうことで取り上げるかということを考えてみますと、前世紀から今世紀にかけましてアメリカ大陸 革的なものがあると思います。原則としては、血統主義に生地主義と二つございますが、まあ大体世界の原則がどういうことで取り上げるかということを考えてみますと、前世紀から今世紀にかけましてアメリカ大陸のようにどんどん移住した国あるいはオーストラリアのようなところ、これは大体生地主義ということでございまして、その他の旧大陸と申しますか、そういったところは伝統的に大体血統主義を採用しておる。日本も旧国籍法以来血統主義、しかも父系をとっておった、こういうような従来の血統主義を引き継ぎ、そしてまた最近の国際化の状態あるいは特に国連の婦人差別撤廃条約の批准を目前に控えて、それとの調整、こういうことからして従来のいきさつも考え、血統主義を今度の改正法においても取り入れた、そして父母両系にした、こういうようなことだと思います。」(天野(等)委員)「現行の国籍法(注:改正前国籍法)、それから帝国憲法時代の旧国籍法、いずれも血統主義をとっておりましたし、今回の改正法も血統主義をとっておるということは、今 大臣のお話にありましたように、日本の国民感情といいますか、そういうものが血統主義、日本人の父、今回の改正で母でございますけれども、日本人の子供は日本人だという考え方が一般的な国民感情ではなかろうか、あるいはそういうのが法感情なんではないか、その辺で私も血統主義を基本的にとられたということはわかるのでございます。 その上で、実は大臣の趣旨説明等にもございますけれども、最近の渉外婚姻の増加ということがこの改正の一つの動機、そういうふうに述べられているように思うのですけれども、この渉外婚姻の増加というのが今度の改正でどういうふうにこの法案の中で考えられているのか。どうも私は、渉外婚姻が増加し、いわゆる血統主義が乱れてくる、これに対してむしろそれを純 思うのですけれども、この渉外婚姻の増加というのが今度の改正でどういうふうにこの法案の中で考えられているのか。どうも私は、渉外婚姻が増加し、いわゆる血統主義が乱れてくる、これに対してむしろそれを純血にしていこうという考え方もあるんじゃないかというような感じがいたすのでございますが、その点についてちょっといかがでございましょうか。」(枇杷田政府委員)「血統主義の中には純粋な血統主義、要するに父母両方とも自国民であるということを要件にするという考え方も十分にあり得ると思います。ただ、現在はかなり渉外婚姻がふえておりますけれども、かつてはそれほど多くはなかったので、それを父系血統主義ということでやりましても、おおむね純血といいますか父母両方が日本人の子供は日本人という結果になることが多かったわけでございます。しかし、今度父母両系主義をと ります場合には、もちろん純血といいますか父母がともに日本国民であるということからは外れる日本国民がかなり出てくることになりますけれども、どちらを選ぶのがいいかということになりますと、過去におきましても若干でも父親だけが日本人というケースもあったわけでございますし、それからまた、国際結婚をいたしました方々にとっての生活実態から考えますと、そういう場合に常に日本国籍を与えないというようなことが現実に妥当するかどうかということを考えますと、子供の福祉の面ということからいたしましても、それから母親の子供に対する感情ということからいたしましてもそれは適当ではないんじゃなかろうかというような考え方ができようかと思います。 そういう意味で、両性平等の立場から考えた場合に、純粋の血統主義ではなくてどちらかの血統を引いている場合には日本国民とするという方が妥当でもあるし、または現在の国民感情としてもその方が受 います。 そういう意味で、両性平等の立場から考えた場合に、純粋の血統主義ではなくてどちらかの血統を引いている場合には日本国民とするという方が妥当でもあるし、または現在の国民感情としてもその方が受け入れられる要素ではないかというところから、純血血統主義ではなくて片親血統主義でいい、しかも、それがどちらの血統を引くものでもいいということにいたしたわけでございます。」(2)以上の審議内容からすると、現行の国籍法は、父又は母が日本国民である子は日本国民であるとする扱いが我が国の国民感情に合致していることを前提に、血統主義を採り、さらに、血統主義の中でも、父母ともに日本国民であることを要する純血主義や父 が日本国民であることを要する父系血統主義ではなく、両性平等の観点から、父か母のどちらかが日本国民であれば足りるとする父母両系血統主義の考え方に立っているということができる。そして、このことは、国籍法2条1号において、父又は母が日本国民であることを出生時点における日本国籍取得の要件としていることからも裏付けることができる。 (二)国籍法3条1項制定の理由(1)国籍法3条1項は、昭和59年法律第45号による改正によって新設された規定であるが、立法担当者は、国会審議において、届出による国籍の取得を認めた理由、また、認知を受けた非嫡出子すべてに国籍の取得を認めるものではなく、父母の婚姻により嫡出子(準正子)になったものに限った理由について次のように説明している(甲2。「改正国籍法・戸籍法の解説」法務省民事局内法務研究会編312頁以下所収の昭和59年4月3日及び同月17日衆議院法務委員会議事録。)(2)昭和59年4月3日衆議院法務委員会(中村(巖)委員)「今度は違う問題ですけれども、父母のいわゆる準正、それから認知、これによりま 和59年4月3日及び同月17日衆議院法務委員会議事録。)(2)昭和59年4月3日衆議院法務委員会(中村(巖)委員)「今度は違う問題ですけれども、父母のいわゆる準正、それから認知、これによりまして今度は国籍を取得することができるようになるわけでありますけれども、こういう制度を新設されました理由というのはどういうことでございましょう。」(枇杷田政府委員)「先ほど来申し上げておりますように、新法 におきましても血統主義をとっておるわけでございます。しかしながら、その血統主義をあらわします第2条の第1号で『父又は母が』というふうに書いてございますが、これは法律上の父母ということになるわけでございます。ところが、世間では、往々にいたしまして子供が生まれてから婚姻届を出す、それで認知をするとか、そういうふうなケースが少なくないわけでございまして、実際上は後になって婚姻をした夫婦の間の子供なんだけれども、出生のときに婚姻届が出ていなかったというようなこともあるわけでございます。実質的には、血統主義という面から申しますと、そういう方にとっても日本国籍を与えるという道があってもいいのではないか。要するに血統主義の補完措置と申しますか、そういうふうなことがしかるべきだろうということで、準正による場合に、本人の日本国籍を取得するという意思表示があればそれで日本国籍を与えるという制度を設けた次第でございます。」(中村(巖)委員)「現行の国籍法ではそういう身分行為によっては国籍を取得しないんだというふうにされておったわけで、そこのところは、現行法ができるときにはやはり考え方が違ったということになるのでしょうか。」(枇杷田政府委員)「現行法でも身分行為によって国籍を取得するという道は設けておりません。今度の法律案でも、身分行為によって日本 できるときにはやはり考え方が違ったということになるのでしょうか。」(枇杷田政府委員)「現行法でも身分行為によって国籍を取得するという道は設けておりません。今度の法律案でも、身分行為によって日本国籍を直にといいますか、直ちに取得するということではなくて、いわばそういう準正というものがあれば、国籍取得 の意思表示が加わることによって国籍を与えようということで、身分行為そのものに国籍取得のいわば契機を与えるというものではないわけでございます。しかし、実質的には、そういう身分行為によって父または母を日本国民とする子供であるという実質には変わりがないという点に着目をいたしまして、血統主義の面からいっても、そういう条件がある場合に御本人が日本国籍を取得したいというのであれば日本国籍を取得する方が妥当ではないかという観点に立ったものでございます。」(3)昭和59年4月17日衆議院法務委員会(神崎委員)「次に準正についてお尋ねをいたします。 改正法は、準正によりまして日本国民の嫡出子たる身分を取得した外国人たる子につきまして一定の要件のもとに届け出による国籍取得の制度を新設したわけでございます。これはそれについては大変評価されるわけでございます。 しかしながら、提案理由説明によりますと、改正法は父母両系血統主義を採用すると明言しているのであります。血統主義という観点からいたしますと、日本国民から認知された子も、準正によって日本国民の嫡出子としての身分を取得した者も同じ親子に異ならないわけであります。それにもかかわらず、認知の場合を改正において除外した理由は一体どういう点にあるのかという点であります。確かに、嫡出子と嫡出でない子との間に、我が国の身分法上、親権、氏、相続の関係で異なった取り扱いをしている とか、外国の立法例では、認 除外した理由は一体どういう点にあるのかという点であります。確かに、嫡出子と嫡出でない子との間に、我が国の身分法上、親権、氏、相続の関係で異なった取り扱いをしている とか、外国の立法例では、認知によって国籍を取得するという国よりも、準正の場合に限っている国が多い、こういうこともいわれているようでありますので、これらの点も考慮したものとは思われるのでありますけれども、この点に関する法務当局の見解をお伺いしたいと思います。」(枇杷田政府委員)「単純な血統ということになりますと、おっしゃったとおり認知も一つの血統を示すものでございます。しかしながら、血統主義と申しましても単に血がつながっていさえすればというふうなことではなくて、やはり血統がつながっていることが、一つは日本の国に対する帰属関係が濃いということを明確ならしめる一つの重要な要素としてとらえられていることだろうと思います。そういう面から考えますと、認知というだけでは、これは母親が日本人(注:外国人の誤りと思われる。)である場合でありますから、生活実態といたしますと嫡出子の場合とはかなり違うのではないか、民法におきましても嫡出子と非嫡出子ではいろいろな扱いが違います。その扱いの違う根拠は、認知した者とその子との間には生活の一体化がまずないであろうということが一つの前提となっていると思います。 そういうことからいたしますと、なるほど片親の血はつながっておったにしても、当然に日本の国と結びつきが強いという意味で国籍が取得されるというふうにすることは適当でないだろう。 これが準正になりますと、そこでは両親の間に婚姻関係があるわ けで、生活の一体化というものが出てまいりますから、そういう場合は意思表示によって日本の国籍を取得させてもいいだろうけれども、認知だけではそうはいかな すと、そこでは両親の間に婚姻関係があるわ けで、生活の一体化というものが出てまいりますから、そういう場合は意思表示によって日本の国籍を取得させてもいいだろうけれども、認知だけではそうはいかないのではないか、そういう考えから現在のような案にしておるわけでございます。」(4)以上の審議内容からすると、国籍法3条1項の基本的思想は、国籍法が拠って立つ父母両系血統主義を前提として、出生時に日本国民である父と法律上の親子関係を有していることが認められなかったことから、同法2条1号によっては日本国籍を付与されなかった日本国民の実子についても父母両系血統主義をより拡充、徹底するため、届出制によって日本国籍を認めようとしたものであるが、ただ、同じ日本国民の実子であっても、日本国民である父親から認知を受けたにすぎない子の場合は、父親と生活の一体化を欠くことが通常であることから、我が国との結び付きないし帰属関係が強いとはいえないという理由によって、国籍付与の対象から除外したものであると理解することができる(母が日本国民である場合は、出生と同時に法律上の親子関係が成立する(昭和37年最高裁判決参照)ため、常に同号が適用される結果、同法3条1項が適用される余地はない。)。 (三)国籍法3条1項制定の合理性(1)前記前提となる事実のとおり、改正前国籍法は、旧国籍法における身分行為による国籍取得の制度を廃止しているが、子の出生後の身分行為によっては直接国籍変動を生じないとした改正前国 籍法の仕組みは、絶対的な法理あるいは憲法上当然必要な取扱いであるとは解されないから、国籍法がその仕組みを一部改めて、子の出生後の身分行為のうち一定の行為に限って、それによって直接ないし間接的に国籍変動を生じる旨定めることは可能であると解することができる。そ るとは解されないから、国籍法がその仕組みを一部改めて、子の出生後の身分行為のうち一定の行為に限って、それによって直接ないし間接的に国籍変動を生じる旨定めることは可能であると解することができる。そして、①前述のとおり、我が国の国籍法は父母両系血統主義を採用していること、②認知は、婚姻や養子縁組などといった身分行為とは異なり、親と子の血統関係を前提とする身分行為であること、③日本国民の非嫡出子であっても、外国人を父、日本国民を母として出生した子は、特段の事情のない限り、日本国民である母の認知を待たずに、国籍法2条1号により当然に日本国籍を取得することができること、④同様に、非嫡出子であっても、日本国民である父が胎児認知をした場合も、同号により、子は日本国籍を取得することができることを勘案すると、生後認知の場合も、父母両系血統主義を拡充するため、届出制による国籍取得の道を開くことには高い合理性があるということができる。 (2)そして、国籍法3条1項は、生後認知された子のうち、我が国との結び付きないし帰属関係が強いものに限って、日本国籍を付与するのが相当であることを前提に、我が国との結び付きないし帰属関係が強いものと認める指標として、日本国民である親と認知を受けた子を含む家族関係ないし生活の一体化が成立している点をとらえることとし、父母が法律上の婚姻関係にある場合に限 って、そのような家族関係ないし生活の一体化が成立しているものと考え、そのような場合に限って日本国籍を付与しようとしていると解することができる。 そこで、以下では、上記のように父母が法律上の婚姻をした場合に限って日本国籍を付与するものと規定することによって国籍取得に区別が生じるか否か、国籍取得に区別が生じるとした場合にその区別が合理的な根拠に基づくものということが うに父母が法律上の婚姻をした場合に限って日本国籍を付与するものと規定することによって国籍取得に区別が生じるか否か、国籍取得に区別が生じるとした場合にその区別が合理的な根拠に基づくものということができるかどうかを検討する。 現行の国籍法における非嫡出子の取扱い及び同法3条1項によって国籍取得に生じる区別(一)現行の国籍法における非嫡出子の取扱い(1)母が日本国民である場合我が国の民法上、母子関係は出生と同時に成立すると解されていることからすると、母が日本国民である非嫡出子の場合は、前示のとおり、国籍法2条1号によって出生と同時に日本国籍を取得することになる。 (2)父が日本国民で胎児認知を受けた場合父が日本国民である非嫡出子で、胎児認知(民法783条1項)を受けた場合、出生時において法律上の親子関係が成立していることになるから、前示のとおり、この場合も、国籍法2条1号によって出生と同時に日本国籍を取得することになる。 (3)父が日本国民で生後認知を受けた場合 民法上、認知の効力は出生時にさかのぼることとされているが(民法784条)、国籍法2条1号の解釈においては、国籍の浮動性防止の観点から、認知に遡及効はないと解されている(最高裁平成8年(行ツ)第60号同9年10月17日第二小法廷判決・民集51巻9号3925頁、平成14年最高裁判決)。その結果、生後認知を受けた日本国民である父の子は、出生時点においては日本国民である父と法律上の親子関係が存在していないということになるので、同号は適用されず、同号によって出生時点で日本国籍を取得することはない。 また、国籍法3条1項は、認知及び父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した子で20歳未満のもの(日本国民であったものを除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国 国籍を取得することはない。 また、国籍法3条1項は、認知及び父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した子で20歳未満のもの(日本国民であったものを除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であった場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であったときは、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができる旨定めている。したがって、日本国民を父とし、生後認知を受けた非嫡出子が後に父母の婚姻によって嫡出子(準正子)となった場合には、届出によって日本国籍を取得することができるが、父母の法律上の婚姻がされていない場合には、届出によって日本国籍を取得することはできないことになる。 なお、日本国民の子で日本に住所を有する外国人(日本国民を父とする生後認知を受けた非嫡出子も含まれる。)は、国籍法8 条により、一般の外国人に適用される同法5条の帰化要件よりも緩和された要件によって、帰化申請を行うことができるが、帰化には一定の要件があり、かつ、許可制であるので、上述した届出による国籍取得と同視することはできない。。 (二)国籍法3条1項によって国籍取得に生じる区別(1)以上の取扱いの違いの結果、①日本国民を母、外国人を父として出生した嫡出子は、国籍法2条1号により日本国籍を取得し、②日本国民を父、外国人を母として出生した嫡出子は、国籍法2条1号により日本国籍を取得し、③日本国民である母と外国人の父との間に出生した非嫡出子は、国籍法2条1号により日本国籍を取得し、④日本国民である父と外国人の母との間に出生した非嫡出子のうち、日本国民である父から胎児認知を受けたもの、国籍法2条1号により日本国籍を取得し、⑤日本国民である父と外国人の母との間に出生した非嫡出子のうち、父から生後認知を受 母との間に出生した非嫡出子のうち、日本国民である父から胎児認知を受けたもの、国籍法2条1号により日本国籍を取得し、⑤日本国民である父と外国人の母との間に出生した非嫡出子のうち、父から生後認知を受け、かつ、父母が婚姻したもの(準正子)は、国籍法3条1項により日本国籍を取得することができ、⑥日本国民である父と外国人の母との間に出生した非嫡出子のうち、父から生後認知を受けたが、父母が法律上の婚姻をしていないもの(非準正子)は、国籍法2条にも、3条1項にも該当しないから、出生又は届出による日本国籍の取得をすることができないことになる。 (2)上記(1)の①から④までについては、いずれも国籍法2条1号が適用されるが、国籍法2条1号は、生来的な国籍の取得はでき る限り子の出生時に確定的に決定されることが望ましいとして、子の出生時に日本国民である父又は母と法律上の親子関係があることをもって我が国の国籍を付与しようとしているのであるから、同号は憲法14条1項に違反するものではないと解すべきである(平成14年最高裁判決)。 (3)アこれに対し、前記(1)の⑤と⑥については、準正子と非準正子は、ともに日本国民である父と外国人の母との間の非嫡出子として出生し、日本国民である父から生後認知を受けた点で共通の事情を有しており、唯一の違いは、その後父母の間に法律上の婚姻が成立しているか否かである。両者は、国籍法が採用する父母両系血統主義の観点からすると、同じく日本国民である父の血統を受け継ぐ者であり、共に日本国籍を取得する基礎を有していることとなる。そして、父又は母が日本国民である子は日本国民であるとする扱いが我が国の国民感情に合致していることは、前述の国籍法3条1項制定の際の国会審議においても明らかになっているところである。 それにもかかわら て、父又は母が日本国民である子は日本国民であるとする扱いが我が国の国民感情に合致していることは、前述の国籍法3条1項制定の際の国会審議においても明らかになっているところである。 それにもかかわらず、現行国籍法上、準正子は届出により日本国籍を取得することができるのに対し、非準正子は届出によりこれを取得することができないという極めて大きな差が生じることとなる。 イしかも、同じく非嫡出子であって、父又は母の一方が日本国民である点で前記(1)の⑥と同一の条件にある場合であっても、 前記(1)の③の母が日本国民である非準正子及び前記(1)の④の日本国民である父から胎児認知を受けた非準正子は、出生により当然に日本国籍を取得することができるのである。これらと対比すると、前記(1)の⑥の父が日本国民である非準正子に限り、届出をしても日本国籍を取得することができないことは、相対的に見て、極めて大きな不利益であるというべきである。 (4)そうすると、前記(1)の⑥の非準正子が日本国籍を取得することができないということは、前述した基本的人権の保障を受ける上での国籍取得の重要性や、民主主義社会における法の下の平等の重要性にかんがみれば、容易に許されるべきことではないというべきである。すなわち、国籍の取得は、基本的人権の保障を受ける上で重大な意味を持つものであって、本来、日本国民を親として生まれてきた子供は、等しく日本国籍を持つことを期待しているものというべきであり、父母両系血統主義を採る我が国では、その期待は軽視することはできないというべきである。特に、後述のとおり、嫡出子と非嫡出子とで異なる扱いをすることの合理性に対する疑問が高いことにかんがみれば、両親がその後婚姻したかどうかといった自らの力によって決することのできないことによって差を設 、後述のとおり、嫡出子と非嫡出子とで異なる扱いをすることの合理性に対する疑問が高いことにかんがみれば、両親がその後婚姻したかどうかといった自らの力によって決することのできないことによって差を設けるには慎重であるべきである。なぜなら、子にとって、出生の時に、父母が婚姻しているか否かは、全くの偶然のことにすぎず、個人の意思や努力によっていかんともし難いものである上、認知については、非嫡出子の側から強制的に認知の 訴え(民法787条)によって求めることができるのに対し、父母の婚姻を非嫡出子の側から求める手段は現行法上存在しないからである。 (5)以上によれば、父が日本国民であって、生後認知をした場合における国籍の取得について、準正による嫡出子(前記(1)の⑤)と非嫡出子(前記(1)の⑥)との間に大きな差異を設け、非嫡出子に大きな不利益を課すこととなっている国籍法3条1項は、日本国籍の取得の条件として父母の婚姻という要件、すなわち準正要件を設けたことを説明し得る十分合理的な理由がない限り、憲法14条1項に違反すると解するべきである。 なお、仮に国籍法3条1項が憲法14条1項に違反して無効であるとしても、これまで国籍法3条1項によって認められていた準正による嫡出子の国籍取得が認められなくなるだけのことであり、このことによって非嫡出子である原告らの国籍取得原因が発生することにはならないから、原告らの主張には理由がないのではないかとの懸念も生じ得る。しかしながら、原告らが主張しているのは、国籍法3条1項全体の違憲無効ではなく、届出による国籍の取得を認める同項のうち、「父母の婚姻」及び「嫡出子たる身分」の部分の違憲無効であり(このような部分的違憲判断が可能であるかについては、後述する。)、これが認められれば、同項によって、日本国民で の取得を認める同項のうち、「父母の婚姻」及び「嫡出子たる身分」の部分の違憲無効であり(このような部分的違憲判断が可能であるかについては、後述する。)、これが認められれば、同項によって、日本国民である父又は母の認知と届出のみによって日本国籍を取得することが可能となるから、原告らの主張、す なわち、準正要件の違憲性を判断することには、意味があるということができる。 (三)小括以上を踏まえ、以下においては、準正による嫡出子と非嫡出子との間に、準正要件のみをもって国籍取得に差異を設けることに合理的な理由が認められるかどうかについて、更に各事由の個別的な検討を進めることとする。 我が国との強い結び付きないし帰属関係(一)被告は、準正子の場合には、父と子の親子関係が非準正子より強いとし、日本国民である父との親子関係が準正によって強くなった場合に、我が国との密接な結合が生ずるものとして国籍を付与するとの立法政策を採ることについては十分な合理性がある旨主張する。そして、その根拠として、準正子と非嫡出子との間には法制度上の差異があることを挙げ、具体的には、非嫡出子は、母の氏を称し(民法790条2項)、原則として母の親権に服する(同法819条4項)ので、非嫡出子の父子関係は、法制度上も、実際上も、結合関係、すなわち生活の同一性が希薄であるが、準正子である未成年の子は、その準正のときから当然に母と共に父の親権に服し(同法818条1項、3項)、出生時から嫡出子であった子と同様、父母の下で監護・教育を受けて成長することが、民法上当然に予定されている(同法820条以下)ことなどを挙げる。また、厚生労働省の人口動態統計において、出生子全体に占める非嫡出子の割合 がわずか1.5パーセントにすぎないことも挙げる。 (二)(1)そこで検討するに (同法820条以下)ことなどを挙げる。また、厚生労働省の人口動態統計において、出生子全体に占める非嫡出子の割合 がわずか1.5パーセントにすぎないことも挙げる。 (二)(1)そこで検討するに、一般的にいえば、準正子は、父母が法律上の婚姻をしているわけであるから、日本国民である親との家族関係が成立し、生活の一体化が生じているはずであるという点において、我が国との結び付きないし帰属関係が強いことが多いということができよう。 また、一般に、生後認知された子は、出生時に日本国籍の取得が認められなかったために、そのほとんどの者が外国籍を取得しているものと考えられる。また、生後認知された子のうち相当数は、その外国人である母のみによって監護、養育されているものと考えられるから、生後認知された子が外国人である母と共にその本国に帰ってしまったり、あるいは母の本国と密接なつながりを生じさせていく可能性も考えられないではない。 そうすると、外国との間に密接な結び付きが生じていくかもしれない生後認知された非嫡出子について、生後認知されたという事実と国籍を取得したいという意思表示(届出)のみを基礎として日本国籍の取得を認めるとすることは、生後認知された子をめぐって種々の問題を生じさせかねないということもでき、そのことをおもんぱかって、生後認知された子のうち、日本国民と生活の一体化が生じている点において我が国との結び付きないし帰属関係が強いものに限って、日本国籍を付与しようとする考えは、その目的において一定の正当性を有するということができる。 そして、前示のように、父母が婚姻していない場合には、一般論として、日本国民である親を含む生活の一体化が認められない場合が多いであろうから、国籍法3条1項が、生後認知された子のうち、父母の法律上の婚姻という 示のように、父母が婚姻していない場合には、一般論として、日本国民である親を含む生活の一体化が認められない場合が多いであろうから、国籍法3条1項が、生後認知された子のうち、父母の法律上の婚姻という要件も加わったものに限って、我が国との結び付きないし帰属関係の強いものとして、日本国籍を付与しようとすることには、一定の論拠はあるということができる。 (2)アしかしながら、日本国民の子であって、生後認知により法律上の親子関係も認められることとなった非嫡出子のうち、我が国との結び付きないし帰属関係の強いものに限って、日本国籍を付与しようとする場合には、前示のとおり、国籍法が父母両系血統主義に拠って立っていること及び日本国民の法律上の子であると認められながら日本国籍を取得することができないという不利益の深刻さと区別の大きさに照らすと、そのような別異の取扱いをする理由には、一定の論拠があるなどにとどまらず、十分な合理性が認められなければならない。 イそして、そもそも、日本国籍の取得において、子が我が国と強い結び付きないし帰属関係を有していること、具体的には日本国民である親との家族関係や生活の一体化があることは、我が国の国籍法において、国籍の取得のための重要な考慮要素とされているということは困難である。すなわち、法律上の婚姻関係があっても、勤務上の必要性や不仲等のために別居してい れば、そもそも生活の一体化等は存しないわけであるし、また、外国人との婚姻の場合、日本国外において婚姻し、そのまま国外に居住しているときも多いであろうから、そのようなときは、父母の婚姻により我が国との結び付きがあるということはできないのであり、結局、生活の同一性や我が国との強い結び付きないし帰属関係がなくとも、国籍法2条1号により出生による国籍の取得が認め ときは、父母の婚姻により我が国との結び付きがあるということはできないのであり、結局、生活の同一性や我が国との強い結び付きないし帰属関係がなくとも、国籍法2条1号により出生による国籍の取得が認められたり、同法3条1項による届出による国籍の取得が認められることがあるのである。 逆に、上記のような生活の同一性や我が国との強い結び付き等の事情のみがあっても、日本国民と血がつながっていないなら、同法2条又は3条による国籍取得の余地がないことはいうまでもないところである。 そうすると、国籍法の解釈上、このような我が国との強い結び付きないし帰属関係や、日本人の親との家族関係ないし生活の一体化等を、父母両系血統主義と並び立つような重要な理念と位置付けることは相当でないというべきである。 ウまた、確かに、子にとって、日本国民である父と母が法律上の婚姻をしているということは、その日本国民である父との生活の一体化や、ひいては我が国との強い結び付きないし帰属関係の存在をうかがわせる大きな要素ということができ、加えるに、民法が、準正子である未成年の子は、その準正のときから当然に母と共に父の親権に服することを予定していることから すれば、法律上は、準正子の父子関係が非準正子の場合より強いということもできないわけではない。 しかしながら、そもそも、法律上の婚姻関係のある場合であっても、前示したように、勤務上の必要性や不仲等のために別居していれば、生活の一体化等はないわけである。また、外国人との間の子供については、日本国民である父が海外に滞在している時に生まれた子供も多いであろうところ、外国で生まれ、その後も海外に居住し続けているような子供については、日本国民である父との生活の一体化があったとしても、我が国との結び付きが強いとは必ずしもいえないことは た子供も多いであろうところ、外国で生まれ、その後も海外に居住し続けているような子供については、日本国民である父との生活の一体化があったとしても、我が国との結び付きが強いとは必ずしもいえないことは明らかである。さらにいえば、準正子の場合でも、父母が婚姻届を提出した事実があれば足りるのであるから、そもそも父母が同居していないが、国籍を得させるために婚姻届を提出したときや、あるいは、父母が婚姻届を提出した後に離婚したときも含まれるのであって、このようなときも、国籍法3条1項は、届出による日本国籍の取得を認めているのである。 他方、父母が婚姻していない非嫡出子であっても、法律上の配偶者が別にいる場合の離婚の困難さや、婚姻についての考え方の多様化に照らすと、法律上の婚姻がなくとも、日本国民である親を含む家族関係や生活の一体化が実現していたり、日本国民である父による養育監護も受けていることも何ら珍しいことではないのである。このような場合は、非嫡出子であっても、 我が国と強い結び付きがあるということができる。また、日本在留中の外国人の母と日本国民である父との間の子は、日本で生まれ、その後も継続して日本で育っていることが多いであろうから、そのような場合などには、日本国民である親との生活の同一化がなくても、日本人の親と緊密な親子関係があったり、我が国との強い結び付きや帰属関係を肯定し得るときもあると予測することは極めて容易なことである。 エそして、今日、国際化が進み、価値観が多様化して家族の生活の態様も一様ではなく、それに応じて子供との関係も様々な変容を受けていることからすると、法律上の婚姻という外形を採ったかどうかということのみによって、父子関係の緊密さや生活の一体化、まして、それによる我が国との結び付きや帰属関係の強さを一律に判断 な変容を受けていることからすると、法律上の婚姻という外形を採ったかどうかということのみによって、父子関係の緊密さや生活の一体化、まして、それによる我が国との結び付きや帰属関係の強さを一律に判断することは、現実に符合しないというべきである。 オさらに、前述したように、非準正子については、出生後外国とのつながりの強くなる者もあり得る点については、国籍法3条1項は、当然に国籍を取得する制度ではなく、届出により国籍を取得することができる制度であることや、二重国籍については、選択をしなければならないこと(同法14条から16条まで)に照らすと、この問題を過大視することは相当ではない。 カまた、被告は、準正子の場合には、父と子の親子関係が非準正子ないし非嫡出子より強いとし、その根拠として、出生子全 体に占める非嫡出子の割合がわずかであることを挙げるが、出生子全体に占める非嫡出子の割合が1.5パーセントにすぎないからといって、このことから直ちに、非嫡出子の父子関係や生活の同一化が希薄であるとか、我が国との強い結び付きないし帰属関係がないと推認することはできない。 キまた、前記国籍法改正の経緯及び甲第7号証によれば、日本国民である父の認知による国籍取得を認めていた旧国籍法を改め、改正前国籍法が認知による国籍取得を否定したのは、国籍を取得する本人、すなわち子の意思を尊重するという趣旨からであって、認知を受けたのみでは、子が我が国と強い結び付きないし帰属関係を有しないという理由からではなかったことが認められる。 (3)以上によると、認知による国籍取得の制度においては、現在では、我が国との強い結び付きないし帰属関係を要求することの合理性は高いものと評価することはできず、かつ、そのような我が国との強い結び付きないし帰属関係があるものと認め 籍取得の制度においては、現在では、我が国との強い結び付きないし帰属関係を要求することの合理性は高いものと評価することはできず、かつ、そのような我が国との強い結び付きないし帰属関係があるものと認める指標として日本国民である親との生活の一体化を求め、これを父母の法律上の婚姻関係があることを一律に要求することによって法定化し、これをもって国籍を取得することができるか否かの区別を設けることは、前述したような非嫡出子の受ける不利益の深刻さと取扱いの区別の大きさに照らすと、それを裏付けるほどの合理性を有するものではないというべきである。 被告の前記(一)の主張は、採用することができない。 法律婚の尊重(一)被告は、家族関係に関する我が国の伝統、社会事情、国民の意識等を考慮して、法律婚を尊重するという基本理念に基づき、嫡出子と非嫡出子とは、種々異なる取扱いを受けており(民法790条2項、819条4項、900条4号ただし書)、嫡出子と非嫡出子との間で異なる扱いをすること自体は不合理なものではない旨主張する。 (二)そこで検討するに、この点、民法は、その790条2項において、「嫡出でない子は、母の氏を称する。」と定め、819条4項において、「父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。」と定め、900条4号ただし書において、「ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし・・・(以下省略)」と定めており、家族関係に関する我が国の伝統、社会事情、国民の意識等を考慮して、法律婚を尊重するという基本理念に基づき、嫡出子と非嫡出子の間に種々の異なる取扱いを設けている。 そして、このような取扱いが必ずしも不合理なものでないことは、最高裁判決等において繰り返し述べられているところである るという基本理念に基づき、嫡出子と非嫡出子の間に種々の異なる取扱いを設けている。 そして、このような取扱いが必ずしも不合理なものでないことは、最高裁判決等において繰り返し述べられているところである(平成7年最高裁決定、平成12年最高裁判決、平成15年3月28日最高裁判決、平成15年3月31日最高裁判決、最高裁平成16年(オ)第992号同年10月14日第一小法廷決定・裁判所時報13 73号3頁(以下「平成16年最高裁決定」という。))。 (三)(1)アしかしながら、上記のような日本国内における民法上の取扱いの差異とは異なり、非嫡出子が、両親が婚姻していないがゆえに日本国籍を取得することはできないとすることは、両親が婚姻している嫡出子に比して明らかに不利益な取扱いであり、かつ、基本的人権の保障を受ける上でも、また、日本国内において現実に生活を送る上でも、重大な障害となることは明らかである。日本国籍を認められた上で民法上の取扱いの差異が生じることと、そもそも日本国籍が認められないことは、全く問題を異にするものであり、前者において法律婚の尊重の観点から合理的な理由があるからといって、後者においては優れて子供自身の問題なのであるから、その両親についての法律婚の尊重という観点から合理的な説明を行い得るとすることはできないといわざるを得ない。 イそして、前述のとおり、国籍法は父母両系血統主義を採っており、これを徹底し、同法2条1号をいわば拡充する規定である同法3条1項についてもこれが妥当することは明らかであるから、法律婚の尊重という点は、国籍法を支配する指導原理の一つと位置付けることはできないといわざるを得ない。このことは、既に同法2条1号においては、両親が婚姻しないままに出生した非嫡出子であっても、母が日本国民である場合及び日本 法を支配する指導原理の一つと位置付けることはできないといわざるを得ない。このことは、既に同法2条1号においては、両親が婚姻しないままに出生した非嫡出子であっても、母が日本国民である場合及び日本国民である父が胎児認知をした場合には国籍を取得し得るこ とからも明らかである。さらに、国籍法は、日本国籍の取得について、父又は母が日本国民である子は日本国民であるとする扱いが我が国の国民感情に合致していることを前提に父母両系血統主義を採用したことは、前述のとおりであるが、本件全証拠を精査しても、少なくとも現在において、父母が法律上の婚姻をしていない限り、非嫡出子には届出による国籍の取得を認めないという形で、国籍法の分野においても法律婚の尊重を重視することが我が国の国民感情に合致していることを認めるに足りる的確な証拠は見当たらない。 ウまた、前述のとおり、国籍の取得は、基本的人権の保障を受ける上で重大な意味を持つものである。ところが、子にとって、出生の時に、父母が婚姻しているか否かは、全くの偶然のことにすぎず、個人の意思や努力によっていかんともし難いものである。そして、認知については、非嫡出子の側から強制的に認知の訴え(民法787条)によって求めることができるのに対し、父母の婚姻を非嫡出子の側から求める手段は現行法上存在しないのである。そうすると、両親がその後婚姻したかどうかといった、非嫡出子が自らの力によって決することのできないことによって、日本国民との法律上の親子関係の認められる子供の国籍取得の有無という重大な事項について、大きな区別を設けることには、極めて慎重であるべきである。 エ以上によると、国籍法において重要な指導原理となっていな い法律婚の尊重の点をとらえて、前述のような非嫡出子の不利益な取扱いを正当化することは 設けることには、極めて慎重であるべきである。 エ以上によると、国籍法において重要な指導原理となっていな い法律婚の尊重の点をとらえて、前述のような非嫡出子の不利益な取扱いを正当化することはできないというべきである。 (2)ア次に、日本国内における民法上の取扱いの差異について検討するに、確かに民法790条、819条、900条等において、子の氏、親権者、相続分等について嫡出子と非嫡出子とで異なる取扱いをする旨の定めを置いているが、他方、扶養義務の存否等(同法877条等)については、両者の区別を設けていない。そうすると、民法においても、嫡出子と非嫡出子とは、あらゆる局面において区別した取扱いがされているわけではない。 また、この両者を、あらゆる局面において区別した取扱いをするのが我が国の国民感情や社会通念に合致するというべき根拠も見当たらない。したがって、結局、それぞれの局面に応じて、嫡出子と非嫡出子とで区別した取扱いをすることに合理的な理由が存するのかどうかを検討していくほかない。 イまた、そもそも、民法790条2項及び819条4項については、子の氏や親権者は、子の出生に当たって必ず決めなければならないものである一方で、それを母の氏とする、あるいは母の親権に服するとしても、差し当たり子にとって著しい不利益はないということができる。しかも、子の氏については、家庭裁判所の許可を経て変更することができ(同法791条1項)、また、親権者についても、事後に協議により若しくは家庭裁判所の決定によって変更することが可能とされているので あるから(同法819条4項ないし6項)、これらの点においても、子にとって著しい不利益はないということができ、本件で問題とされている国籍の取得の差異とは、その程度が異なるというべきである。 ウまた、 から(同法819条4項ないし6項)、これらの点においても、子にとって著しい不利益はないということができ、本件で問題とされている国籍の取得の差異とは、その程度が異なるというべきである。 ウまた、民法900条4号ただし書は、非嫡出子にとって実質的に不利益なものであるものの、嫡出子と非嫡出子のそれぞれの立場を考慮し、両者の利害を調整した規定である。これに対し、国籍法3条1項の場合は、非嫡出子の国籍取得を認めることによって、嫡出子の利益が害されるという関係にはなく、両者間の利害調整は問題にならない。したがって、両者は全く別次元の議論というべきである。さらに、民法900条4号ただし書は、法律婚を尊重するために非嫡出子を一律に排除するものではなく、上記の立法趣旨に基づき、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とすることによって両者の利害を具体的に調整しているのに対し、国籍法は、日本国民である父から生後認知を受けたにとどまる非準正子を国籍取得の機会から一律に排除している点でも、両者の場合を同一に論ずることはできない。 エ以上によると、嫡出子と非嫡出子とで、民法上の取扱いの差異がある場合があることを理由として、国籍法上の取扱いの差異を正当化することができるわけではない。 (3)アさらに付言すると、一般論としていえば、嫡出子と非嫡出子の法制度上の平等化は、時代のすう勢であるともいえる。 イ例えば、法務省民事局参事官室は、平成7年最高裁決定に先立つ平成6年7月の民法改正要綱試案において、嫡出子と非嫡出子の相続分の平等化を提案している。また、平成7年最高裁決定の合憲判断にもかかわらず、平成8年2月に法制審議会が答申した民法改正の法律要綱案では、なお、平等化が盛り込まれているのである(甲13)。 ウまた、自治省(現在の総務省)は、平成6年1 最高裁決定の合憲判断にもかかわらず、平成8年2月に法制審議会が答申した民法改正の法律要綱案では、なお、平等化が盛り込まれているのである(甲13)。 ウまた、自治省(現在の総務省)は、平成6年12月、住民票の世帯主との続柄において、「嫡出子と非嫡出子」、「実子と養子」をすべて「子」と改正し、これは平成7年3月1日から施行されている(甲13)。 (四)以上によれば、我が国の法制度上、法律婚を尊重するという基本理念に基づいて嫡出子と非嫡出子の間に種々の異なる取扱いが設けられているからといって、このことを理由として、国籍法3条1項における準正子と非準正子との区別によって生ずる、日本国民である父から認知を受けた非嫡出子の被る大きな不利益をも、法律婚を尊重するという基本理念に照らし合理的な根拠に基づくものであると説明することはできない。 準正要件の基準としての客観性(一)(1)被告は、法律上婚姻していない父母が法律上の婚姻と同様の事実上の婚姻状態にある場合があるとしても、内縁関係の態様は様々であり、いかなる場合に法律上の婚姻と同様の事実上の婚姻状態にあると評価するかは一義的ではないとして、国籍法3条1 項が、客観的に該当性を判断することができる準正要件をもって届出による国籍取得の要件としたことには十分な必然性があり、合理性が認められる旨主張する。 (2)確かに、国籍取得の届出の実務において、客観的な基準を要求する必然性が高いことは容易に想定し得る。しかし、これは、あくまでも、非準正子が日本国籍を取得するためには、日本国民である父の認知のほかに、我が国との強い結び付きないし帰属関係を生じさせる父母の婚姻関係が必要であるとする被告の主張を前提にした議論であって、この前提を採用することができないことは、既に判示したとおりである 認知のほかに、我が国との強い結び付きないし帰属関係を生じさせる父母の婚姻関係が必要であるとする被告の主張を前提にした議論であって、この前提を採用することができないことは、既に判示したとおりである。そもそも、届出による非嫡出子の日本国籍取得に当たって婚姻要件を不要とすれば、被告の上記懸念は生じないのであるから、被告の主張は、本判決の立場からすれば、的を射ないものというべきである。 (3)また、仮に、非準正子が日本国籍を取得するためには、日本国民である父の認知のほかに、我が国との強い結び付きないし帰属関係を生じさせる何らかの要件が必要であると考えてみたとしても、それが必ず父母の法律上の婚姻でなくてはならないことを論証することは困難である。このことは、後述のとおり、諸外国には、準正要件ではなく、一定期間の養育等別の事実を要件としている国もあるのであって、この養育などはある程度客観的に認定することが可能であることからも明らかである。 (4)以上によれば、準正要件を付加した場合には、前述のとおり、 準正子と非準正子との間に国籍の取得における大きな差異が生じていることからすると、その基準が客観的であるという理由程度をもって、準正要件の合理性を基礎付けることはできないというべきである。 (二)(1)さらに、被告は、日本国民である父の非嫡出子のうち我が国と密接な結び付きがあると認められる可能性のある者は、手続内で個別具体的な事情の検討が予定されている簡易帰化による国籍取得にゆだねるのが法制度として合理的である旨主張する。 (2)これについても、国籍の取扱いについて、父母両系血統主義に加えて、我が国との強い結び付きないし帰属関係を生じさせる事情が必要であり、かつ、それが父母の法律上の婚姻であるとする被告の主張を前提にした議論であって、 、国籍の取扱いについて、父母両系血統主義に加えて、我が国との強い結び付きないし帰属関係を生じさせる事情が必要であり、かつ、それが父母の法律上の婚姻であるとする被告の主張を前提にした議論であって、その前提を採り得ないことは前述のとおりである。また、簡易帰化制度(国籍法8条)は、通常の帰化制度(同法4条以下)よりも、居住条件が緩和され、能力条件や生計条件が免除されるだけであって、前示のとおり、一定の要件が求められ、かつ、許可制であって、法務大臣の裁量に法定の限定が加えられているわけでもないのであるから、届出のみによって国籍を取得することのできる国籍法3条1項の場合とは大きく異なるといわざるを得ない。 (3)したがって、簡易帰化制度の存在を理由として、国籍法3条1項によって生じる区別が合理的であるとすることはできない。 (三)以上によれば、やはり、準正という基準が客観的であるという ことのみをもって、国籍法3条1項における準正要件の合理性を基礎付けることはできない。 偽装認知のおそれ(一)被告は、婚姻の場合と異なり、認知の場合は、父には認知した子と同居する法的義務すらなく、また、実際にも偽装認知か否かを調査することは極めて困難であり、現実に、日本国籍を有する子の監護養育者として我が国の在留資格を得て、我が国に不法に入国し、滞在する目的で、子に日本国籍を取得させるための虚偽の認知が行われているという社会的事実も存することにかんがみると、時間的制約がある胎児認知に比して、期間制限のない生後認知の場合に、偽装認知の危険性が飛躍的に高まることは明らかであるとして、偽装認知の防止という観点からも、国籍法3条1項は、合理性を有するというべきである旨主張する。 (二)この点、乙第4号証の1及び2によれば、我が国に不法に入国し、滞在 ることは明らかであるとして、偽装認知の防止という観点からも、国籍法3条1項は、合理性を有するというべきである旨主張する。 (二)この点、乙第4号証の1及び2によれば、我が国に不法に入国し、滞在するために、子に日本国籍を取得させるための虚偽の認知が行われている例があることが認められる。 しかしながら、本件の全証拠を精査してみても、非準正子が日本国籍を取得することができるようにするために国籍法3条1項における準正要件を不要とした場合に、虚偽認知の危険性が飛躍的に高まることを示す的確な証拠は見当たらない。 また、虚偽の認知をした場合、認知者と被認知者との間で親子関係が一応設定されるため、認知者においては扶養義務が発生するな ど、相応の負担も覚悟しなければならず、また、戸籍簿に虚偽の事実が登載されてしまうことになる上、公正証書原本等不実記載罪などの犯罪に問われることも覚悟しなければならない。したがって、偽装認知は、認知者において何らの心理的物理的障害なくしてなし得るものではない。そうすると、国籍法3条1項における準正要件を不要とした場合に、虚偽認知の危険性が飛躍的に高まるという社会的事実が認められるかどうかについては疑問が残り、直ちにこのように推認することはできないといわざるを得ない。 (三)また、そもそも、虚偽の認知による日本国籍の取得を防止すべきであるからといって、真実の認知についてまで国籍取得から排除するのは、明らかに本末転倒であるといえる。 (四)さらに、虚偽の認知は、被告も是認するとおり、国籍法3条1項を前提にした現在の国籍取得制度の下でも見られている病理現象であり、非準正子の国籍の取得を排除しているからといって、胎児認知を偽装したり、婚姻を偽装することによって、行い得るのである。したがって、仮に、準正を要件としない生 制度の下でも見られている病理現象であり、非準正子の国籍の取得を排除しているからといって、胎児認知を偽装したり、婚姻を偽装することによって、行い得るのである。したがって、仮に、準正を要件としない生後認知による国籍の取得を認めた場合に、偽装認知による我が国の国籍取得が生じ得るからといって、これを理由に準正要件の合理性が説明されるわけではない。 (五)なお、付言すれば、仮に、被告が主張するように、国籍法3条1項における準正要件を不要とした場合に虚偽認知の危険性が高まるとしても、これに対処するためには、虚偽認知を防ぐための手段、 例えば、胎児認知及び生後認知を問わず、偽装認知が判明した場合の国籍の取消制度の明定、虚偽認知に対する特別な罰則の創設等が考えられなくもない。やはり、虚偽認知の防止の観点からのみでは、前述のように、準正子と非準正子との間に取扱いの大きな差異を生じさせている準正要件の合理性を説明することはできない。 (六)以上によれば、虚偽認知のおそれをもって、国籍法3条1項における準正要件の合理性を基礎付けることはできない。被告の前記(一)の主張は、採用することができない。 各国の法制度(一)被告は、国籍の付与に関して、我が国のほかにも、父子関係以外に父母の婚姻等を国籍取得の要件としている国が複数存在し、国籍法3条1項の準正要件は、比較法的にみても不合理な区別を設けたものということはできない旨主張する。 (二)甲第2、第3、第5及び第6号証、第11号証から第13号証まで、乙第1、第2及び第5号証並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1)昭和59年改正時における諸外国の国籍取得制度昭和59年法律第45号による改正において準正による国籍取得の制度を新たに設けるに当たっては、諸外国の国籍取得制度に 以下の事実が認められる。 (1)昭和59年改正時における諸外国の国籍取得制度昭和59年法律第45号による改正において準正による国籍取得の制度を新たに設けるに当たっては、諸外国の国籍取得制度についても検討されたが、当時、父母両系血統主義を採る諸国は、認知によって国籍を取得する国(フランス)もあったが、認知では国籍を取得せず、未成年の間に準正子となった場合に限り、国 籍を付与する国(スイス、デンマーク、スウェーデン、ドイツ等)の方が多かった。 (2)非準正子に関する最近の諸外国の国籍取得制度アアメリカ移民及び国籍法(1952年6月27日法律)によれば、アメリカ国籍を有しない非嫡出子は、アメリカ国民である父との親子関係が形成され、子が18歳になるまでの間、当該父が子に対して金銭的援助を行うことに書面で合意することによって、アメリカ国籍を取得する。 イ英国の1981年国籍法(1981年10月3日、1983年1月1日施行)によれば、英国国籍を有しない子は、出生後、英国人父から認知されても当然に英国国籍を取得することはなく、登録、養子縁組及び父母の婚姻(準正)のいずれかを行わなければならないとされている。 ウフランス民法(1993年7月22日法律第93-933号)によれば、フランス国籍を有しない子について、認知等によりフランス国籍を有する者との親子関係が確認された場合には、子は当然にフランス国籍を有し、その効果は出生時にさかのぼると解されている。 エドイツ国籍法(1999年7月15日改正)によれば、ドイツ国籍を有しない子についてドイツ人男との父子関係が確認された場合、子は、出生時にさかのぼって当然にドイツ国籍を取得すると解されている。 オスウェーデン国籍法(2001年7月1日施行、2005年7月1日改正)によれば イツ人男との父子関係が確認された場合、子は、出生時にさかのぼって当然にドイツ国籍を取得すると解されている。 オスウェーデン国籍法(2001年7月1日施行、2005年7月1日改正)によれば、スウェーデン国内で出生した子について、出生後に、認知又は裁判手続等によりスウェーデン人父との父子関係が確認された場合には、子は、出生日にさかのぼって当然にスウェーデン国籍を取得すると解されている。 なお、スウェーデン人父の非嫡出子で国外で出生したものは、独身で18歳未満であれば、父母が婚姻し準正子となることによって、スウェーデン国籍を取得すると解されている。 カデンマーク国籍に関わる統合法(2004年6月7日統合法第422号)によれば、両親が婚姻関係になく、かつ、父のみがデンマーク人である子の場合には、子がデンマーク国内で出生した場合に限り、デンマーク国籍を取得する旨が規定されている。 なお、デンマーク人父の非嫡出子で国外で出生したものは、独身で18歳未満であれば、父母が婚姻し準正子となることによって、デンマーク国籍を取得すると解されている。 キノルウェー国籍法(2005年6月10日制定、2006年9月1日施行予定)によれば、ノルウェー国籍を有しない非嫡出子について、出生後に、認知又は裁判手続等によりノルウェー人父と父子関係が確認された場合には、子は、出生した時点で当然にノルウェー国籍を取得すると解されている。 クオーストリア公民権法によれば、オーストリア公民権を有し ない未成年(18歳未満)かつ独身である者が、認知又は裁判手続等により、オーストリア公民との父子関係が確認された場合には、認知された時からオーストリア公民権を取得すると解されている。 ケオランダ国籍法(1985年1月1日施行、最終改正2003年4月1日)によれば 、オーストリア公民との父子関係が確認された場合には、認知された時からオーストリア公民権を取得すると解されている。 ケオランダ国籍法(1985年1月1日施行、最終改正2003年4月1日)によれば、オランダ国籍を有しない子について、出生後にオランダ人父から認知された場合には、2003年4月1日のオランダ国籍法改正前においては、子は当該認知によって当然にオランダ国籍を取得することとされていたが、同改正以後は、認知により当然にはオランダ国籍を取得しないこととされ、この場合には、当該子が未成年者(18歳未満)である間に、認知したオランダ人により3年間養育された場合に、当該子の法定代理人がオランダ国籍を選択する宣言をすることによりオランダ国籍を取得することができることとされた。 コスイス国籍法(2006年1月1日施行)によれば、旧法下での準正要件を廃止し、スイス人父と婚姻関係にない母の外国人の子は、父と密接な関係があることを根拠に、あたかも出生のときに取得したように、スイス国籍を取得するとされている。 サスペイン民法によれば、スペイン国籍を有しない子について、出生後に、認知又は裁判手続等によりスペイン人父との父子関係が確認された場合には、子は、出生時にさかのぼって当然にスペイン国籍を取得すると解されている。 シギリシャ国籍法(2004年11月10日法律第3284号)によれば、ギリシャ人父に認知された未成年(18歳未満)の子は、ギリシャ国籍を取得するとされ、この場合、子は認知の日からギリシャ国籍を取得すると解されている。 スベルギー国籍法(1984年6月28日国籍法)によれば、非準正子は、準正がなくとも、ベルギー国籍を取得することができると解される。 セイタリア国籍法(1992年法)によれば、非準正子は、準正がなくとも、イタ 法(1984年6月28日国籍法)によれば、非準正子は、準正がなくとも、ベルギー国籍を取得することができると解される。 セイタリア国籍法(1992年法)によれば、非準正子は、準正がなくとも、イタリア国籍を取得することができると解される。 ソトルコ国籍法(1964年2月11日法律第403号、1981年2月13日法律第2383号改正)によれば、トルコ人父から認知された子は、出生時から当然にトルコ国籍を取得するものと解される。 タ大韓民国においても、無国籍又は6か月以内の現国籍の喪失を条件として、認知による国籍取得が認められている。 (三)(1)以上によれば、最近の諸外国の国籍取得制度において、生後認知に遡及効を認め、出生からの国籍取得を認める国は、スウェーデン、デンマーク、フランス、ドイツ、スペイン及びトルコがあり、生後認知に遡及効を認めず、認知のときから国籍取得を認める国として、ノルウェー、オーストリア及びギリシャがあり、その他、ベルギー、イタリア及び大韓民国も準正なくして非準正 子の国籍取得を認める。そして、これらの他に、認知に加えて養育条件や密接な関係などの他の要件も必要とする国として、アメリカ、オランダ及びスイスがある。これに対し、準正ないしこれに近いものを要件とする国は、証拠上判明しているのは英国のみであることが認められる。 また、昭和59年改正当時に準正を要件としていながら、最近ではこれを要件としない国として、スイス、デンマーク、スウェーデン及びドイツがあることも認められる。 (2)以上によると、最近の諸外国の国籍取得制度においては、非嫡出子に対し、国籍取得のために準正要件を要求する国は少数であって、準正要件を必要としない国の方が多数存在し、かつ、それが増える傾向にあることが認められる。 そうすると、非嫡出子 制度においては、非嫡出子に対し、国籍取得のために準正要件を要求する国は少数であって、準正要件を必要としない国の方が多数存在し、かつ、それが増える傾向にあることが認められる。 そうすると、非嫡出子に対する国籍付与において準正要件を要求する国が我が国のほかにも存在することは確かであるが、そのことをもって、国籍法3条1項の準正要件が、比較法的に見て、不合理な区別を設けたものということはできないと論証することはできない。よって、被告の前記(一)の主張は、にわかに採用することができない。 なお、付言するに、国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかは、それぞれの国の歴史的事情、伝統、環境等の要因によって左右されるものであって、準正を国籍取得の要件としない国が多数存在するからといって、我が国でも直ちに多数派にならって 準正要件を廃止しなければならないというものではない。しかしながら、準正要件を要求していない国の方がはるかに多数派であるということは、もはや諸外国の例をもって、準正要件の合理性を基礎付けることはできないことを意味するものであり、さらには、準正要件の必要性について慎重な検討が必要であることをうかがわせるものであるということができるのである。 条約等との関係(一)女子差別撤廃条約について(1)原告らは、女子差別撤廃条約について、夫婦の間から生まれた子供の国籍のみならず、非婚の男女から生まれた子供の国籍についても、両性の平等が実現されなければならない旨述べ、国籍法3条1項が女子差別撤廃条約に違反する旨主張する。 (2)しかし、女子差別撤廃条約9条1項前段は、「締約国は、国籍の取得、変更及び保持に関し、女子に対して男子と平等の権利を与える。」と、同条2項は、「締約国は、子の国籍に関し、女子に対して男子と平等の権利を与え 女子差別撤廃条約9条1項前段は、「締約国は、国籍の取得、変更及び保持に関し、女子に対して男子と平等の権利を与える。」と、同条2項は、「締約国は、子の国籍に関し、女子に対して男子と平等の権利を与える。」とそれぞれ定めるものの、これは、あくまで女子又は母に対して子の国籍取得の際に、男子又は父の場合と同様の権利を与えることを要求するものであって、国籍取得の要件につき血統主義を採用する場合には、父母両系血統主義を要請しているということはできるものの、それ以上に、法律上の夫婦の間から生まれた子供と、そうではない男女から生まれた子供の平等や、非婚の男女から生まれた子供の国籍の取得 について、日本国民である父に対しても、日本国民である母の場合と同様に取り扱うべきことまでも要求するものと解することはできない。 (3)よって、原告らの前記(1)の主張は、女子差別撤廃条約の裁判規範性を検討するまでもなく、採用することができない。 (二)B規約について(1)原告らは、B規約24条1項が、「すべての児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、財産又は出生によるいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国による措置についての権利を有する。」と定めていることをもって、国籍法3条1項がB規約に違反する旨主張する。 しかしながら、同項は、あくまで「未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国による措置」における差別の撤廃を求めているものであり、国籍取得の場面において、非嫡出子に嫡出子と同一の地位と権利を与えることまでも要請しているものと解することはできない。 (2)また、原告らは、B規約24条3項についても言及している。 しかし、同項は、「すべての児童は、国 、非嫡出子に嫡出子と同一の地位と権利を与えることまでも要請しているものと解することはできない。 (2)また、原告らは、B規約24条3項についても言及している。 しかし、同項は、「すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。」と定めているのであって、これは、子供が無国籍となることを防止する目的で規定されたものであり、締約国に対してその領域内で生まれたすべての子供にその国の国籍を与えることを義 務付けているわけではないと解するのが相当である。 (3)よって、原告らの前記(1)及び(2)の主張は、B規約の裁判規範性を検討するまでもなく、採用することができない。 (三)児童の権利に関する条約について(1)原告らは、国籍の取得における非嫡出子の差別は、児童の権利に関する条約2条及び7条に違反しているので、国籍法3条1項は児童の権利に関する条約に違反する旨主張する。 (2)アこの点につき、児童の権利に関する条約2条1項は、「締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。」と規定し、また、同条2項は、「締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。」と規定する。 イしかしながら、児童の権利に関する条約2条1項については、非嫡出子に関して、明示の定めを欠いており、少なくとも、国籍の取得という局面における嫡出子と非嫡出子との取扱いの違いについてまで規定していると解することはできな 権利に関する条約2条1項については、非嫡出子に関して、明示の定めを欠いており、少なくとも、国籍の取得という局面における嫡出子と非嫡出子との取扱いの違いについてまで規定していると解することはできない。また、同条2項にいう「地位」については、これが「活動」、「表明 された意見」及び「信念」と同列に並べられていることにかんがみると、これは、父母が特定の政党の構成員であるなどといった「政治的・社会的地位」を意味すると解するのが素直であり、父母が法律上の婚姻関係にあるか否かなどといった身分的・親族的地位を指すと解することは困難である。 ウよって、これらの規定が、国籍取得における嫡出子と非嫡出子との取扱いの違いについてまで規定していると解することはできない。 (3)また、児童の権利に関する条約7条1項は、「児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。」と規定し、また、同条2項は、「締約国は、特に児童が無国籍となる場合を含めて、国内法及びこの分野における関連する国際文書に基づく自国の義務に従い、1の権利の実現を確保する。」と規定している。しかし、これらの規定は、無国籍児童の一掃を目的としたものであり、無国籍児ではない非嫡出子に対して締約国の国籍を付与することを締約国に義務付けたものとまで解することはできない。 (4)よって、原告らの前記(1)の主張は、児童の権利に関する条約の裁判規範性を検討するまでもなく、採用することができない。 (四)自由権規約委員会及び児童の権利委員会の懸念について (1)原告らは、自由権規約委員会一般的意見、児童の権利委員会の英国の新国籍法に対する最終所見、自由 なく、採用することができない。 (四)自由権規約委員会及び児童の権利委員会の懸念について (1)原告らは、自由権規約委員会一般的意見、児童の権利委員会の英国の新国籍法に対する最終所見、自由権規約委員会の日本政府の第4回報告書に対する最終所見及び児童の権利委員会の日本政府の第2回報告書に対する最終所見を挙げて、国籍法3条1項がB規約及び児童の権利に関する条約に違反していることの根拠となる旨主張している。 (2)この点につき、弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア自由権規約委員会の一般的意見17は、「子供に対して保障されるべき保護については、さらに、24条3項に規定された子供の国籍取得権にも特別な注意を払うべきである。たしかに、この規定の目的は、子供が無国籍であることを理由として、社会及び国家の保護が少なくならないようにすることであるが、国家に対して、必ずしも自国の領域内で生まれたすべての子供に、国籍を付与する義務まで負わせたものではない。しかし、国家は、すべての子供が出生の時に国籍を取得することを確保するために、国内法及び他国との協力関係によって、あらゆる適切な措置を採ることを求められている。これに関連して、国内法では、国籍の取得についての差別、たとえば、嫡出子と非嫡出子の差別、無国籍の親から生まれた子供の差別、一方又は双方の親の国籍に基づく差別は許されない。子供が国籍を取得することを確保するために採った措置は、つねに締約国の報告 書に記載されるべきである。」と述べている。 イ児童の権利委員会は、英国の現行国籍法に対する最終所見として、「差別の撤廃に関する条約2条について、本委員会は、その履行を確保するためにとられた措置が不十分であることに懸念を表明する。とりわけ、非婚の父が子供に国籍を承継させる 籍法に対する最終所見として、「差別の撤廃に関する条約2条について、本委員会は、その履行を確保するためにとられた措置が不十分であることに懸念を表明する。とりわけ、非婚の父が子供に国籍を承継させる際に適用される制限は、条約7条及び8条に違反しており、それが子供に与えるおそれのある弊害に懸念がある。」旨述べ、また、提案及び勧告として、「国籍及び出入国管理に関する法令並びに手続が、本条約の諸原則及び諸規定に適合するように、再検討することを提案したい。」旨述べている。 ウ自由権規約委員会は、日本政府がB規約40条1項(b)に基づき行った第4回報告中、B規約24条に関して、国籍法における非嫡出子差別に対する懸念を表明した。 エ児童の権利委員会は、日本政府が児童の権利に関する条約44条1項(b)に基づき行った第2回報告中、児童の権利に関する条約第7条に関して、日本国民である父と外国人母の非嫡出子が胎児認知を受けなければ日本国籍を取得することができないことに対し、懸念を表明した。 (3)しかしながら、そもそも、自由権規約委員会及び児童の権利委員会の各国政府からの報告書に対する最終所見や、前記(2)アの自由権規約委員会の一般的意見は、締約国の国内的機関による条約解釈を法的に拘束する効力は有しないものであり、もとより我が 国の裁判所による条約解釈を法的に拘束する効力を有しているものではない。 また、前記(2)イについては、英国の国籍法に対する児童の権利委員会の最終所見であり、これは我が国の国籍法3条1項が児童の権利に関する条約に違反するかどうかについて直ちに影響を及ぼすものではない。 さらに、日本政府の勧告に関係する前記(2)ウ及びエについても、国籍法における非嫡出子差別などについて懸念が表明されているものの、これらはいずれも我が国の国 ついて直ちに影響を及ぼすものではない。 さらに、日本政府の勧告に関係する前記(2)ウ及びエについても、国籍法における非嫡出子差別などについて懸念が表明されているものの、これらはいずれも我が国の国籍法の規定が条約に違反するとまで断言するものではない。 (4)以上によると、原告らの前記(1)の主張は、採用することができない。 小括以上によると、①国籍法3条1項が準正を国籍取得の要件とした部分は、日本国民を父とする非嫡出子に限って、その両親が婚姻をしない限り、法律上の親子関係が認められても、届出により日本国籍を取得することができないという、非嫡出子の一部に対する大きな区別と不利益をもたらすこととなり、②同項が準正要件を設けた理由は、国籍取得のために、当該非嫡出子と我が国との強い結び付きないし帰属関係の存在を要求し、これを認めるための指標として、日本国民である父との家族関係ないし生活の同一性を想定し、これを法律上の婚姻という要件として定めることによって、法定化したものと考えられる ところ、③国籍取得のために子と我が国との強い結び付きないし帰属関係を要求することは、我が国の国籍法上、父母両系血統主義と並び立つような重要な理念であるということはできず、④また、法律上の婚姻の成否によって、日本国民である父との生活の同一性の有無を一律に判断したり、生活の同一性の有無によって、我が国との強い結び付きや帰属関係の有無を一律に基礎付けることもできず、⑤法律婚の尊重、基準の客観性、偽装認知のおそれ及び各国の法制度という観点から見ても、いずれも上記区別を十分合理的に根拠付けることはできないというべきである。 そうすると、前述したこのような区別によって非準正子の被る不利益の深刻さや、区別の大きさ等にかんがみると、この区別は、合理的な根拠に基 区別を十分合理的に根拠付けることはできないというべきである。 そうすると、前述したこのような区別によって非準正子の被る不利益の深刻さや、区別の大きさ等にかんがみると、この区別は、合理的な根拠に基づくものであるとはいえず、憲法14条1項に反する不合理な差別であるといわざるを得ない。 そこで、以下においては、以上の認定判断を前提にした上で、具体的に国籍法3条1項が違憲となる範囲について、さらに審究することとする。 国籍法3条1項が違憲となる範囲(一)前示のとおり、国籍法3条1項の基本的思想とは、(1)国籍法が基調とする父母両系血統主義を前提として、出生後に日本国民である父と法律上の親子関係があると認められるに至ったものの、出生時には、これが認められなかったために、同法2条1号によっては日本国籍を付与されなかった日本国民の実子について、父母両系血 統主義を徹底、拡充するため、届出によって日本国籍を取得させようとしたものであり、(2)ただ、同じ日本国民の実子であっても、父親から認知を受けたにすぎない非嫡出子の場合は、父親と生活上の一体性を欠き、家族としての共同生活が認められないのが通常であって、そのため我が国との結び付きも強いものとはいえないという理由で、国籍付与の対象から除外したものであると理解することができる。そして、既に判示したところによれば、このうち、上記(1)の部分には合理性があるということができるが、上記(2)の部分には合理性があるということはできないことになる。 (二)そこで、上記(一)(1)の部分と上記(一)(2)の部分とが不可分一体のものか否かについて検討するに、国籍法3条1項の要件のうち、上記(一)(1)と上記(一)(2)の立法者意思に対応する部分、すなわち、後者の準正要件と前者のその余の要件については 部分とが不可分一体のものか否かについて検討するに、国籍法3条1項の要件のうち、上記(一)(1)と上記(一)(2)の立法者意思に対応する部分、すなわち、後者の準正要件と前者のその余の要件については、本来的、論理的には可分なものである。 そうすると、法律の規定は、できるだけ合憲的に解釈すべきであるから、同項のうち、一部を違憲無効と解することで足りるのであれば、そのように解するにとどめるのが相当であるというべきである。 しかるところ、既に判示したところによれば、国籍法3条1項の全部を合憲有効と解することはできない。他方、同項の全部を違憲無効とすれば、出生時に法律上の親子関係が認められる場合の国籍の取得が認められるのみで、血統主義を採りながら、出生後に法律 上の親子関係を認められた子の国籍取得の余地は全くなってしまう。 そして、前示のとおり、生後認知を出生後の事由として国籍の取得原因とすることには合理性があることや、既に認定判断してきたところによれば、国籍法3条1項を制定した立法者の最大の眼目は、国籍取得の要件を拡大して、父母両系血統主義を拡充し、日本国民の実子は日本国籍を得られるであろうという国民的な期待にこたえることにあったと考えられることに照らすと、その拡大、拡充に不十分な点があるからといって、国籍法3条1項の全部を違憲無効と解することは不合理であり、むしろ立法者の意思に反するというべきである。そうすると、国籍法3条1項を制定した立法者の意思は、前記(一)(1)の部分と前記(一)(2)の部分とを不可分一体のものとして国籍法3条1項を制定することにあるのではなく、前記(一)(1)の部分と前記(一)(2)の部分とは可分であると解すべきである。 このように考えると、前示のとおり、国籍法3条1項は、父母両系血統主義を採る同法2条1号に 定することにあるのではなく、前記(一)(1)の部分と前記(一)(2)の部分とは可分であると解すべきである。 このように考えると、前示のとおり、国籍法3条1項は、父母両系血統主義を採る同法2条1号による国籍の付与を更に拡充する規定であり、同号は法律上の親子関係を要求するものの、父母の婚姻関係まで要求していないことにもかんがみれば、同法3条1項における中核的な要件は、前記(一)(1)の部分、すなわち日本国民である父又は母から認知された子という部分(条文の文言としては、「認知により・・・(中略)・・・身分を取得した子」と同項後段の部分)であって、前記(一)(2)の部分、すなわち準正要件は、重要ではあるものの、中核的なものではないと解するのが相当である。 以上によれば、上記両部分が本来的に可分であり、準正要件については合理性が認められず、また、準正要件は中核的なものではないと解される以上、国籍法3条1項のうち、準正要件を定める部分のみを違憲無効と解すべきである。 仮に、このような規定の一部分の違憲無効を認めないとすると、国籍法3条1項が憲法14条1項に違反して無効であるとしても、非準正子たる原告らの国籍が認められる余地はなくなってしまい、原告らは、同項全体が違憲無効であるとして被告の立法不作為を争うしかなくなるが、これは余りに迂遠であり、結局、原告らに対し実質的な救済までの道を長くすることとなり、相当とはいえないと考える。 結論 以上によると、国籍法3条1項の規定は、準正要件を定める部分、すなわち条文の文言でいえば、「婚姻及びその」並びに「嫡出」の部分に限って憲法14条1項に違反し、違憲無効であるというべきである。 二争点2(国籍法3条1項の届出要件の充足)について 被告は、原告P1及び原告P10については、本件において国 に「嫡出」の部分に限って憲法14条1項に違反し、違憲無効であるというべきである。 二争点2(国籍法3条1項の届出要件の充足)について 被告は、原告P1及び原告P10については、本件において国籍取得に関する届書を提出したとはいえない旨主張する。 また、被告は、両原告以外の原告らについては、届書に準正要件を欠いているから記載内容に不備があり、準正要件を満たしていることを証する書面を添付しなかったのであるから、適法な届出があったと は認められない旨主張する。 2(一)しかしながら、前記前提となる事実、甲イ第3号証、甲ハ第3号証及び弁論の全趣旨によれば、原告P1及び原告P10は、親権者母及び弁護士と共に日本国籍の取得を届け出たところ、準正要件を欠くとの理由から届書が受理されなかったことが認められる。しかるところ、前述のとおり、同項の準正要件は違憲無効であるから、同届書は受理されるべきであったというべきであって、原告P1及び原告P10は、受理されるべき届書を提出して、届出に必要な行為を行ったということができる。 (二)また、前記前提となる事実及び弁論の全趣旨によれば、原告P1及び原告P10以外の原告らは、親権者母と共に日本国籍の取得を届け出たところ、準正要件を欠いたため、同届出が日本国籍取得の条件を備えているとは認められない旨通知されたことが認められる。しかるところ、上記(一)と同様に、国籍法3条1項の準正要件が違憲無効である以上、届書に準正要件を満たしていることの記載がなく、また準正要件を満たしていることを証する添付書類がなくても、同原告らの同届出は有効とされるべきであったと解すべきである。 以上によると、本件においては、原告らに関しては、有効な国籍法3条1項の届出があったと認めることができ、国籍法上要求されている届出 同原告らの同届出は有効とされるべきであったと解すべきである。 以上によると、本件においては、原告らに関しては、有効な国籍法3条1項の届出があったと認めることができ、国籍法上要求されている届出要件に欠けるところはないということができる。 三 結論 以上によれば、原告らの請求は、いずれも理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官菅野博之裁判官鈴木正紀裁判官岩井直幸 (別紙)当事者の主張の要旨一争点1(国籍法3条1項の合憲性)について 原告らの主張(一)国籍は、国家の構成員の資格を定めるものである。国籍を取得させるかどうかについての要件を定めることは、国家の固有の権限に属し、立法の広い裁量があることを肯定する立場を尊重したとしても、国籍法3条が準正を非嫡出子の国籍取得の要件とした部分は、日本国民を父とする非嫡出子に限って、その両親が出生後婚姻をしない限り、帰化手続によらなければ日本国籍を取得することができないという非嫡出子の一部に対する差別をもたらすこととなり、このような差別は、その立法目的に照らし、十分な合理性を持つものというのは困難であり、憲法14条1項に違反する。 (二)国籍法制定に関する立法裁量について(1)被告は、「国籍の取得に関する法律の要件における区別について、憲法14条1項違反の問題を生じ得る場合は極めて限定されるというべきである。」と主張し、その理由として、憲法は「いかなる者を我が国の構成員とするかの具体的決定を、我が国の歴史的事情、伝統、環境等の諸事情を総合考慮したところに基づく立法府の広範な裁量にゆだねられている」と 」と主張し、その理由として、憲法は「いかなる者を我が国の構成員とするかの具体的決定を、我が国の歴史的事情、伝統、環境等の諸事情を総合考慮したところに基づく立法府の広範な裁量にゆだねられている」と述べる。 (2)しかしながら、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たって立法 府に特別に広範な裁量権が認められているとの被告の主張は、憲法上の根拠を有しない。 すなわち、国会の立法行為はすべて憲法の制限(特に、憲法13条以下の基本的人権保障規定に基づく制限)の下にあるのであり、「日本国民たる要件を定める法律」、すなわち国籍法も、全くの例外ではない。国籍の得喪に関する基準を定める権限を国会が有することは、憲法10条において規定されているとおりであるが、この国籍の得喪の基準を定める法律の制定に当たって、立法府に他の一般の立法行為に比べて特別に広範な立法裁量が認められているとする憲法上の根拠規定は存在しないし、かかる解釈も存在しない。被告が指摘する、「国籍の得喪に関する基準を定めるに当たって様々な事情を総合考慮しなければならない」という事情は、国籍法に特殊固有の問題ではなく、およそすべての立法行為に共通の事情である。また、そうであるからこそ、立法裁量が認められているのである。殊更に国籍法の制定改廃についてのみ上記事情を強調し、他の立法行為に比し、格段に広範な立法裁量が認められているとする被告の主張は、何ら憲法上の根拠を有しないものである。 (3)のみならず、かかる主張は、判例の見解にも適合しないものである。 すなわち、最高裁平成10年(オ)第2190号同14年11月22日第二小法廷判決(裁判所時報1328号1頁。以下「平成14年最高裁判決」という。)は、憲法10条が「日本国民たる要件は、 法律でこれを定める。」と規定する趣旨について、 0号同14年11月22日第二小法廷判決(裁判所時報1328号1頁。以下「平成14年最高裁判決」という。)は、憲法10条が「日本国民たる要件は、 法律でこれを定める。」と規定する趣旨について、「国籍は、国家の構成員の資格であり、元来、何人が自国の国籍を有する国民であるかを決定することは、国家の固有の権限に属するものであり、国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかは、それぞれの国の歴史的事情、伝統、環境等の要因によって左右されるところが大きいところから、日本国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかを法律に委ねる趣旨であると解される。」と判示した上で、「このようにして定められた国籍の得喪に関する法律の要件における区別が、憲法14条1項に違反するかどうかは、その区別が合理的な根拠に基づくものということができるかどうかによって判断すべきである。」としている。ここでは、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たっての立法府の裁量権が、他の立法に当たっての立法府の裁量権と比較して、特に広範であるとの判示もされていないし、国籍法の憲法14条違反について判断する合憲性判定基準が他の法律の場合に比べ緩やかでよいとの判示もされていない。このように、国籍法制定における立法裁量の範囲が特に広範であるとする被告の主張は、最高裁判例にも沿わない独自の見解であって、採り得ないものである。 (4)国籍の取得は、基本的人権の保障を受ける上で重大な意味を持つものであって、本来、日本国民を親として生まれてきた子供は、等しく日本国籍を持つことを期待しているものというべきで、その期待は、できる限り満たされるべきである。また、「嫡出子・非嫡出 子」の区別は、憲法14条1項後段の「社会的身分」に該当するところ、同段列挙の事項については、原則としていかなる差別も禁止 、その期待は、できる限り満たされるべきである。また、「嫡出子・非嫡出 子」の区別は、憲法14条1項後段の「社会的身分」に該当するところ、同段列挙の事項については、原則としていかなる差別も禁止される、あるいは、差別扱いの合憲性についてより厳格な基準により判断されるべきである、とする見解も存在する。 このようなことも併せ考慮するならば、国家の根幹に関わる規定である国籍法3条1項が憲法14条に適合するか否かの判定は、一般の立法についての憲法14条適合性の判断よりむしろ厳格であるべきとの要請すらあるものというべきであり、緩やかでよいとする被告の主張には何ら合理的な根拠は見いだせないのである。 (三)国籍法制の変遷とその要点(1)国籍法の変遷国籍法は、旧国籍法時代から以下のような変遷をたどっている。 ア1899年に制定された旧国籍法では、父系優先血統主義を採り、「出生の時に父が日本国民であるとき」は、子は、日本国籍を取得するとしていた。この「父」とは、法律上の父を指すものとされ、出生に基づく生来的国籍取得のためには、出生時に日本国籍を有する父との法律上の父子関係が成立していることを必要とし、認知の遡及効(民法784条)による生来的な国籍取得は否定されていた。したがって、生来的な国籍取得が認められたのは、嫡出子の場合及び非嫡出子が父から胎児認知をされた場合であった(補充的に、父が知れない場合において、出生の時に母が日本国民であれば日本国籍を取得するとされていた。ただし、こ の場合も、出生の時に法律上の親子関係の成立が求められ、日本国民である母が胎児認知をしていなければ、子は日本国籍を取得しないとされていた。)。 他方、旧国籍法は、生後認知による伝来的な国籍取得を認めており(同法5条、6条)、その国籍取得には届出その他の行為を 民である母が胎児認知をしていなければ、子は日本国籍を取得しないとされていた。)。 他方、旧国籍法は、生後認知による伝来的な国籍取得を認めており(同法5条、6条)、その国籍取得には届出その他の行為を要せず、認知のときに国籍を取得するものとされていた。 イ昭和25年に新たに制定された改正前国籍法では、父系優先血統主義を維持しつつ、認知という父親の一方的行為によって、子供の意思に基づかないで自動的に国籍の得喪を生じさせるのは、個人の尊厳の原則に反するとして、旧国籍法の認知による国籍取得を廃止した。その結果、父との血統に基づいて国籍取得が認められるのは、嫡出子の場合若しくは胎児認知を受けた場合に限られることとなった。 ウ昭和59年の国籍法改正により、国籍取得に関する原則が、父系優先血統主義から父母両系血統主義に移行した。同時に、準正による国籍の伝来的取得を認める国籍法3条1項が新たに設けられた。同項の創設の必要性については、以下のような説明がされている。 父母両系血統主義の下でも、国籍法2条1項の「父又は母」とは、法律上の親子関係を有するものを指すされたため、民法の原則(779条)の下では、日本国民である親が胎児認知をしない限り、母親が日本国民であっても、生後認知によっては日本国籍 を取得することはできないこととなる。しかし、婚外子と母との母子関係は、原則として母の認知を待たず、分娩の事実によって当然に発生するとした最高裁昭和35年(オ)第1189号同37年4月27日第二小法廷判決(民集16巻7号1247頁。以下「昭和37年最高裁判決」という。)により、実際には、母が日本国民である場合には、婚内子・婚外子を問わず、子は、必ず生来的に日本国籍を取得することとなった。しかしながら、その結果、非嫡出子の父が日本国民である場合には、胎 という。)により、実際には、母が日本国民である場合には、婚内子・婚外子を問わず、子は、必ず生来的に日本国籍を取得することとなった。しかしながら、その結果、非嫡出子の父が日本国民である場合には、胎児認知をした場合を除き、出生等の事実に起因する国籍取得の可能性がないこととのアンバランスが顕著となった。特に、準正によって嫡出性を取得した子について、生来的な(婚姻中の夫婦から生まれた)嫡出子との対比及び日本国民である母の婚外子との対比において、日本国籍を取得し得ないことの不均衡が著しいとして、これを是正すべき必要性が示唆された。その結果、準正子について、届出による伝来的国籍取得を認める国籍法3条1項が創設されるに至ったのである。 (2)法制におけるポイントア以上のような旧国籍法から改正前国籍法を経て現在の規定に至るまでの国籍法の変遷を見るならば、血統主義を採用する日本の国籍法制において国籍の取得を規律する要因は、以下の点であることが明らかである。 ①父系優先血統主義から父母両系血統主義への移行 ②生来的国籍取得のためには、出生時において日本国民である親との法律上の親子関係が成立していること③国籍の浮動性の防止④出生の場合を除いて、国籍を取得する本人の意思の尊重(子の意思によらない国籍取得は認めないこと)イ他方、出生後の国籍取得について、国籍法は準正(3条1項)のほか、帰化(4条以下)、国籍の再取得(17条)を規定し、旧国籍法の下では、認知による国籍の変動も認められており、出生後の国籍の変動も、国籍法は当然に想定しているものである。 (四)生活の同一性について(1)国籍法は、血統主義の内容として、自国民の家族関係への包摂(生活の同一性)を要求していない。 被告は、血統主義に基づく出生による国籍の取得の根拠を、日 のである。 (四)生活の同一性について(1)国籍法は、血統主義の内容として、自国民の家族関係への包摂(生活の同一性)を要求していない。 被告は、血統主義に基づく出生による国籍の取得の根拠を、日本国民を含む家族関係への包摂(生活の同一性)に求めている。しかしながら、旧国籍法以来の日本の国籍取得に関する法制を見ても、国籍法は、このような立場に立っていない。 (2)すなわち、生後認知による生来的な国籍取得は、旧国籍法以来一貫して否定されてきたが、その理由は、単純に「国籍の浮動性の防止」の要請にあり、「嫡出子と同様の日本国民である親との実質的結合を有しない」という理由によるものではない。 他方で、旧国籍法においては、日本国民である父の認知による伝来的な国籍の取得を認めており、日本国民である父と子との間の生 活の同一性は何ら要求されていなかった。また、改正前国籍法が認知による国籍取得を否定したのは、前述のとおり、国籍を取得する本人、すなわち子の意思を尊重するという趣旨からであって、認知を受けたのみでは、子は日本国民を含む家族との生活の同一性を有しないから、という理由からではない。 さらに、旧国籍法以来一貫して、日本国民である父から胎児認知された婚外子は、父子間の生活の同一性の有無を問わず、一律当然に日本国籍の生来的取得が認められていること、その理由は、単純に、出生時において「父が日本国民」であるからであることも、婚内子と婚外子に関する被告の主張するような「日本国民である父と子の生活の同一性」による区別を国籍法が予定していないことを示すものである。 (3)胎児認知制度について述べれば、同制度は、死後認知制度が認められる以前に設けられた制度であり、婚外子が出生する前に父が死亡してしまい、子を認知することができない場合が生じることをお である。 (3)胎児認知制度について述べれば、同制度は、死後認知制度が認められる以前に設けられた制度であり、婚外子が出生する前に父が死亡してしまい、子を認知することができない場合が生じることをおもんぱかって設けられた制度である。死後認知制度が昭和17年の民法改正によって設けられたことに伴い、胎児認知制度の本来的な役割は半減したが、出生後に死後認知の裁判手続を経る必要がないこと、父の死亡後、直ちに相続関係の処理ができることなどの点においていまだに実益があると指摘されている。このように、胎児認知制度は、父子の結合関係が強いことを基盤にして設けられた制度ではなく、むしろ、出生時に父は死亡しているかもしれないという 不安定さから設けられた制度である。したがって、胎児認知を受けた子とその父との間には、嫡出親子関係に準じた実質的な結合関係があるなどの主張は、胎児認知制度の趣旨にも、また、その実情にも反しているのである。 (4)これに対し、日本国民である母の子は、婚内子・婚外子を問わずに常に日本国籍を取得することができる点を挙げて、「日本国民を含む家族への包摂」ないし「日本国民を含む家族との生活の同一性」は、なお要求されているとの主張もあり得る。 しかしながら、現行国籍法下で、日本国民である母の婚外子が当然に日本国籍を取得することになったのは、前述したとおり、父母両系血統主義と昭和37年最高裁判決の論理的帰結であり、要するに、出生時における日本国民である母との母子関係の証明の確実性、画一性にその根拠があるのであって、母子の結合関係が密接であるという理由からではないのである。例えば、出産後、母が新生児を置き去りにして産院から立ち去ったとしても、母を特定することができる限り、子が日本国籍を取得することに何ら問題はない。もし仮に、昭和37 という理由からではないのである。例えば、出産後、母が新生児を置き去りにして産院から立ち去ったとしても、母を特定することができる限り、子が日本国籍を取得することに何ら問題はない。もし仮に、昭和37年最高裁判決が存在しなかったとしたら、日本国民である母と子の間にいかに密接な結合関係、生活関係があったとしても、胎児認知をしていない限り、子は日本国籍を取得することはできない。このことを考えれば、母子の結合関係の有無、強弱が日本国民である母の婚外子に日本国籍の生来的取得を認める根拠となり得ないことは容易に理解することができる。 (5)以上のとおり、国籍法の立脚する血統主義は、日本国籍を有する親との法律上の親子関係の存在をその内容とするものであって、日本国籍を有する親との生活の同一性を要求するものではないことは、旧国籍法以来の法制の検討及び現行法の解釈上明白であり、被告の主張は、失当である。 (6)あるいは、被告は、準正子についてのみ、「日本国民を含む家族関係への包摂」を求めるとするものであるかもしれない。 しかしながら、「日本国民を含む家族関係への包摂」をもって、国籍法が立脚する血統主義の内実であるとするのであれば、以下の矛盾が生ずることとなる。すなわち、国籍法2条1号と同法3条1項とで血統主義の内容が異なるという見解は皆無であり、また、そのように生来的な国籍の取得と伝来的な国籍の取得とで異なる血統主義に立脚しなければならない合理的な理由も存在しない。したがって、国籍法3条1項と同法2条1号は、共通の血統主義に立脚した制度であることは明らかであり、やはり、同法3条1項についてのみ、「日本国民を含む家族関係への包摂」を要求することは、合理的根拠がないものというべきである。 (7)ア被告は、厚生労働省の人口動態統計によれば、日本にお かであり、やはり、同法3条1項についてのみ、「日本国民を含む家族関係への包摂」を要求することは、合理的根拠がないものというべきである。 (7)ア被告は、厚生労働省の人口動態統計によれば、日本における出生子に占める非嫡出子の割合は、1.5パーセントにすぎないとしている。 しかしながら、日本国民である母の非嫡出子が日本国籍を取得することができることに争いがない(国籍法2条1号)ことから も分かるように、嫡出子であるか否か、また、非嫡出子の割合が多いか少ないかということ自体は、全く問題ではない。被告は、国籍法3条1項が準正すなわち日本国民である父による認知に加えて日本国民である父と外国人母の婚姻を要件としている理由として、単なる非嫡出子は、日本国民である父との生活の同一性がないが、準正によりこれが形成される結果、日本国との密接な結び付きが生じる旨主張しているのであるから、非嫡出子とその父親との生活の一体性が社会一般的に存在しないこと、及びこれが準正によって初めて形成されることという社会的事実の存在が国籍法3条1項を裏付ける立法事実となる。しかるに、被告からは、かかる立法事実が存在することを示す何らの主張・立証もされていない。 イ他方、原告らにおいても、かかる立法事実の有無について調査を行ったが、調べる限り、嫡出子と非嫡出子、あるいは非嫡出子と準正子の親子の生活同一性について調査したデータは皆無であり、また、国籍制度に詳しい法学研究者や社会学研究者に問い合わせをしても、昭和59年の国籍法改正前後から現在に至るまで、そのような調査結果を見たことはないとの回答のみ得られた。 ウこのように、国籍法3条1項は、被告の主張するような立法事実を全く欠いたものであり、それ自体既に立法の合理性を欠くものというべきである。 (8)ア民法78 見たことはないとの回答のみ得られた。 ウこのように、国籍法3条1項は、被告の主張するような立法事実を全く欠いたものであり、それ自体既に立法の合理性を欠くものというべきである。 (8)ア民法789条2項は、「婚姻中父母が認知した子は、その認知 の時から、嫡出子の身分を取得する。」と定めており、同項の適用については、離婚後の認知、裁判認知、死後認知も同項の認知要件を充足し、準正が成立するとの解釈が確立している。その結果、日本国民である父と外国人である母の間に婚外子が出生し、両親が婚姻し同居を開始したが、離婚して別居し、その後に日本国民である父が子を認知する、あるいは子が父に対して裁判手続で認知を求めるというケース、あるいは、日本国民である父と死別した後に死後認知訴訟を提起するケースが生じる。これらの事案において、子と日本国民である父(生物学上の父)との間に生活の同一性が認められる時期には法律上の父子関係は存在せず、認知によって法律上の父子関係が成立したとき、したがって準正が成立したときには、既に生活の一体性は存在しない。このように、準正により日本国民を含む家族関係に包摂され、あるいは日本国民を含む家族との生活の同一性、生活の一体性が生じるとの被告の主張は、何らの根拠もないものである。 被告は、このような事案はまれな事態であり、かかる例外的な事実関係に基づく批判は失当であると反論するかもしれない。しかしながら、父親との同居がない準正子の存在は、事案としても決してまれなものではない。そして、そもそも問題は、事案の件数の相対的な多寡ではなく、準正制度自体にこのような場面が内在されていることである。前述のとおり、離婚後の認知、死後認知による準正の成立は、民法789条2項の解釈として確立して おり、また、これらの場合に国籍法3条 く、準正制度自体にこのような場面が内在されていることである。前述のとおり、離婚後の認知、死後認知による準正の成立は、民法789条2項の解釈として確立して おり、また、これらの場合に国籍法3条1項により国籍を取得することができることについても争いはない。このように、準正という制度は、それ自体に日本国民である父との生活の一体性を欠く場面を内在しているのであり、同項もこれを許容しているのである。準正により日本国民を含む家族との生活の同一性、生活の一体化が生じるとする被告の主張は、準正制度に対する誤った理解に依拠するものであり、この点で既に失当である。 イ非嫡出子とその父との間に同居関係若しくはそれに準ずると評価し得る密接な関係が存在する事案もまれな例ではない。非嫡出子とその父との間の関係の存在や濃淡は個々様々であり、決して被告が主張するように、嫡出子と非嫡出子とで単純に区別し得るものではないのである。 (9)以上のとおり、準正の成立により日本国民を含む家族関係に包摂され、日本国民を含む家族との生活の一体性、生活の同一化が生じることを根拠に、国籍法3条1項が両親の婚姻を要件とすることの合理性を主張する被告の主張は、その前提を欠き、失当である。 (五)準正子と非嫡出子が区別されるとの主張には合理性がない(1)被告は、準正子と非嫡出子の法制度における差異(民法790条2項、819条4項、900条4号ただし書)を理由に、父子関係の結合の強さが異なるので、準正により日本との結合が強くなった場合に日本国籍を付与するとして、準正子と非嫡出子の差別的取扱いの合理性を主張する。また、国会答弁においては、準正によって 出生時に法律上の父子関係があったということと同評価し得べき関係に立つことをもって、国籍取得を認める根拠となると述べている。 的取扱いの合理性を主張する。また、国会答弁においては、準正によって 出生時に法律上の父子関係があったということと同評価し得べき関係に立つことをもって、国籍取得を認める根拠となると述べている。 いずれの見解も、父子関係の強弱を理由に、嫡出子と非嫡出子の国籍取得上の取扱いを区別しようとするものである。 (2)しかしながら、国籍法は、子の嫡出性の有無をもって国籍取得の可否の要件とはしていない。国籍法2条1号は、「父又は母」と規定しており、父母の婚姻を要件とはしていないのであるから、このことは文言上明らかである。また、解釈上も、日本国民である母の非嫡出子及び日本国民である父から胎児認知を受けた非嫡出子が日本国籍を取得することに争いはない。さらに、旧国籍法の下では、生後認知によって日本国籍を取得したのであり、この点からも嫡出、非嫡出の区別が国籍取得の可否を分ける分水嶺となったことは、我が国の国籍法の歴史上一度もなかったのである。 (3)また、胎児認知を受けた非嫡出子と、生後認知を受けた非嫡出子の法律上の地位は全く同一であり、準正子と生後認知を受けた非嫡出子との間の法制度上の差異は、準正子と胎児認知を受けた非嫡出子との間のそれと全く異ならない。したがって、法制度上の差異を理由に父子関係の強弱の違いがあるとして生後認知された非嫡出子の国籍の取得が否定される根拠とする被告の主張は、胎児認知を受けた非嫡出子との対比において整合性がつかないのである。 (4)被告は、嫡出子と非嫡出子の扱いに関する法制度上の差異として、民法790条2項、819条4項を挙げる。 しかしながら、子の氏や親権者は、子の出生に当たって必ず決めなければならないものである一方で、それを母の氏とする、あるいは母の親権に服するとしても、さしあたり子にとって著しい不利益は げる。 しかしながら、子の氏や親権者は、子の出生に当たって必ず決めなければならないものである一方で、それを母の氏とする、あるいは母の親権に服するとしても、さしあたり子にとって著しい不利益はない。しかも、親権者については、事後に協議により又は家庭裁判所の決定によって変更することが可能とされているのであるから(民法819条4項ないし6項)、子の利益を十分に考慮したものである。 これに対し、非嫡出子のゆえに日本国籍を取得することはできないとすることは、嫡出子に比して明らかに不利益な取扱いであり、かつ、基本的人権の保障を受ける上でも、また、日本国内において現実に生活を送る上でも、重大な障害となることは明らかであるから、わずかな法制度上の取扱いの違いをもって、かかる重大な差別的取扱いを合理化することは到底できないといわざるを得ない。 (5)アさらに被告は、民法900条4号ただし書を挙げて、日本の法制度が法律婚を尊重する立場を取っていることを指摘し、嫡出子と非嫡出子とを別に取り扱うことに合理性がある旨主張する。 イ(ア)しかしながら、そもそも民法900条4号ただし書は、嫡出子と非嫡出子のそれぞれの立場を考慮し、両者の利害を調整した規定である。最高裁平成3年(ク)第143号同7年7月5日大法廷決定(民集49巻7号1789頁。以下「平成7年最高裁決定」という。)も、同規定の立法理由として同旨の判示をしている。これに対し、国籍法は、非嫡出子の国籍取得を 認めることによって、嫡出子の利益が害されるという関係にはなく、両者間の利害調整は問題にならない。したがって、両者は全く別次元の議論である。 (イ)また、民法900条4号ただし書は、法律婚を尊重するために非嫡出子を一律排除するものではなく、上記の立法趣旨に基づき、非嫡出子の相続分を嫡 ない。したがって、両者は全く別次元の議論である。 (イ)また、民法900条4号ただし書は、法律婚を尊重するために非嫡出子を一律排除するものではなく、上記の立法趣旨に基づき、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とすることによって両者の利害を具体的に調整しているのに対し、国籍法は、日本国民である父から生後認知を受けたにとどまる非嫡出子を国籍取得の機会から一律に排除しているのであり、この点でも同規定が国籍法の取扱いを根拠づけるものとはなり得ない。 (ウ)さらに、民法900条は、私的財産の処分に関する規定であり、遺言がない場合の補充的規定であるのに対し、より強く法の下の平等の要請が働くはずの国籍法の場面において、非嫡出子を国籍取得の機会から完全に排除していることの合理性は、同条4号ただし書から根拠づけることは到底不可能というべきである。 ウ平成7年最高裁決定には、民法900条4号ただし書を憲法14条違反とする5人の裁判官の反対意見があるほか、合理性について疑わしい状態にあるとの4人の裁判官の補足意見があった。 また、その後も、①最高裁平成11年(オ)第1453号同12年1月27日第一小法廷判決(裁判所時報126号6頁。以下「平成12年最高裁判決」という。)において、一人の裁判官の反対 意見と、合理性について疑わしい状態にあって立法的に解決すべきであるとの一人の裁判官の補足意見があり、②最高裁平成14年(オ)第1630号同15年3月28日第二小法廷判決(裁判所時報1336号10頁。以下「平成15年3月28日最高裁判決」という。)においても、二人の裁判官の反対意見、③最高裁平成14年(オ)第1963号同15年3月31日第一小法廷判決(裁判所時報1337号1頁。以下「平成15年3月31日最高裁判決」という。)においても、二人の裁判官 、二人の裁判官の反対意見、③最高裁平成14年(オ)第1963号同15年3月31日第一小法廷判決(裁判所時報1337号1頁。以下「平成15年3月31日最高裁判決」という。)においても、二人の裁判官の反対意見と極めて違憲の疑いが濃いとする一人の裁判官の補足意見がある。このように、私的財産の処分に関する補充規定である民法900条4号ただし書でさえ、嫡出子と非嫡出子との差別的取扱いについて、憲法14条違反であるとの疑いが強まっているのである。 エさらに、法務省民事局参事官室は、平成7年最高裁決定に先立つ平成6年7月民法改正要綱試案において、嫡出子と非嫡出子との相続分の平等化を提案している。さらに、平成7年最高裁決定の合憲判断にもかかわらず、平成8年2月に法制審議会が答申した民法改正の法律要綱案では、なお、平等化が盛り込まれている。 また、自治省(現在の総務省)は、平成6年12月、住民票の世帯主との続柄において、「嫡出子と非嫡出子」、「実子と養子」をすべて「子」と改正し、これは平成7年3月1日から施行された。 オこのように、嫡出子と非嫡出子との法制度上の平等化は、今や 時代のすう勢であり、日本における基本的な地位を決定する重要な法律である国籍法においては、率先してこの平等化を実現することが求められるのである。しかるに、その違憲性が疑われる民法900条4号ただし書に拘泥して、非嫡出子を日本国籍から排除しようとする被告の主張は、平等化の実現という時代のすう勢に逆行するものであり、到底認められないものである。 カ以上のとおり、準正子と非嫡出子の法制度上の取扱いの違いを根拠とする被告の主張は、やはり失当であり、採り得ない。 (六)実質上の不都合、不平等日本国民である父から生後認知を受けた子のうち、準正が成立した子についてのみ日本国籍を 法制度上の取扱いの違いを根拠とする被告の主張は、やはり失当であり、採り得ない。 (六)実質上の不都合、不平等日本国民である父から生後認知を受けた子のうち、準正が成立した子についてのみ日本国籍を認めることの実質的な不都合、不平等は、以下のように明らかである。 (1)準正の成立要件のうち、認知は裁判によって子から父に求めることが可能であるが、もう一つの要件である両親の婚姻は、子の立場から強制することはできない。すなわち、子にとっては、日本国籍取得の可否が本人以外の他人の意思によって左右されるのであり、憲法13条の個人の尊重の趣旨に立脚して旧国籍法の認知による国籍の当然取得を否定した趣旨に反することになる。 (2)民法上、準正の成立要件は、認知と両親の婚姻であり、いずれも単なる届出のみで成立する。したがって、実際に家族としての生活の一体性があるか否かという実態判断なく日本国籍を付与することになる。準正は成立していないものの、日本国民である父と同居し、 あるいは、経済的精神的援助を受けて生活している非嫡出子と比較するとき、後者が日本国籍を取得し得ないことの不都合はだれが見ても明らかである。 (3)国籍法3条1項の解釈上、いったん準正が成立すれば、その後、例えばわずか1か月で離婚しても準正性は失われず、しかも離婚後に国籍法3条1項による国籍取得の届出をしても認められる。その結果、日本国民である父を含む家族との生活の同一性がほとんどないことが明らかな場合であっても、日本国籍を取得することができることになる。このことは、むしろ、国籍法が生活の同一性を要求していないことを示すものである。 (4)非嫡出子の親の一方がその法律上の配偶者と離婚することができない場合、子の両親は婚姻することができず、子は準正子の地位を得ることが法的に不可 の同一性を要求していないことを示すものである。 (4)非嫡出子の親の一方がその法律上の配偶者と離婚することができない場合、子の両親は婚姻することができず、子は準正子の地位を得ることが法的に不可能である。殊に原告らの本国法であるフィリピン家族法には離婚制度が存在しないため、本国においてフィリピン人男性と婚姻が成立しているフィリピン女性がその後日本国民である男性との間に子をもうけても、その子が準正子の地位を得ることは法的に不可能であり、それによる不都合は著しい。 (5)平成14年最高裁判決の事実関係は、以下のとおりであった。 上告人(原告、控訴人)である姉の出生当時、日本国民である父と外国人母は未婚のまま同居し、内縁関係にあったが、母が父との間の二人目の子を妊娠した後、両者は内縁関係を解消した。その際、父は上告人を認知するとともに、未だ出生していなかった二人目の 子を胎児認知した。その後二人目の子(上告人の妹)が出生し、日本国籍を取得したが、上告人については、両親が未婚のままであったため、日本国籍を取得することができなかった。この事案では、上告人は、日本国民である父と同居生活があり、妹はそれがないにもかかわらず、妹は日本国籍を取得し、姉である上告人はこれが認められないという著しいアンバランスが生じていたのである。 原告らの中にも、自分は生後認知を受けたため日本国籍を取得し得なかったが、妹は胎児認知を受けたため日本国籍を有する者がある。妹が胎児認知を受けたのは、姉である原告が日本国民である父から認知された後に、生後認知では日本国籍を取得できず、胎児認知が必要であると知ったからであった。 (6)以上のとおり、認知による国籍取得を認めず、更に両親の婚姻を要求することは、実質的にも著しい不都合、不平等をもたらすものである。 (七) きず、胎児認知が必要であると知ったからであった。 (6)以上のとおり、認知による国籍取得を認めず、更に両親の婚姻を要求することは、実質的にも著しい不都合、不平等をもたらすものである。 (七)偽装認知のおそれについて(1)認知による国籍取得を認めることについては、虚偽の認知を誘発させるおそれがあるので妥当でないとの反論があるが、以下に述べるとおり、理由がない。 (2)アまず、虚偽の認知は、生物学的な親子関係を前提としないものであるから、当然に無効であるだけでなく、抑止すべき違法行為あるいは犯罪行為であることに疑いはない。 イ次に、虚偽の認知による日本国籍の取得を防止すべきであるか らといって、真実の認知についてまで国籍の取得から排除するのは、明らかに本末転倒である。虚偽の認知は、認知制度が生物学的な親子関係を確認することなく認知を受理する制度である以上、発生することを完全には防止し得ない病理現象であって、同様の病理現象は、何も虚偽の生後認知に限らず、偽装の胎児認知、偽装結婚、親を偽った出生届、他人への成りすまし等、様々な形態が考えられ、事実、相当数発生しているのが現状である。それにもかかわらず、同様の措置が採られているわけではないことからも、被告の主張が一貫性を欠くものであることが看取される。 ウさらに、虚偽の認知をした場合、それを一応有効として取り扱った場合には、認知者と被認知者との間で親子関係が一応設定されるため、認知者においては扶養義務が発生するなど、相応の負担も覚悟しなければならない。また、戸籍簿に虚偽の事実を登載することである以上、公正証書原本等不実記載罪などの犯罪に問われることを覚悟しなければならないのであって、認知者において何らの心理的物理的障害なくしてなし得るものでもない。 (3)以上のように、被 することである以上、公正証書原本等不実記載罪などの犯罪に問われることを覚悟しなければならないのであって、認知者において何らの心理的物理的障害なくしてなし得るものでもない。 (3)以上のように、被告の主張は、ささいな病理現象の発生を過大に評価し、反対に、平等の確保という憲法的価値を過小に評価したものであって、理由とはならないことが明らかである。 (八)諸外国法令との比較(1)ドイツ連邦共和国(以下「ドイツ」という。)ドイツでは、1993年6月30日の法改正によって、ドイツ人 父の非嫡出子の生来的国籍の取得が認められることとなった。すなわち、「父母の一方がドイツ国籍を有するときは、子は出生によりドイツ国籍を取得する。非嫡出子の出生に際して、父だけがドイツ国籍を有するときは、国籍取得を主張するために、ドイツ法上有効な父子関係の確認が必要であり、父子関係確認の手続は、子が23歳に達するまでに開始されなければならない。」(4条1項)連邦議会の理由書は、この改正を次のように説明している。 「この規定は、血縁によるドイツ国籍の取得について、可能な限り、嫡出子と非嫡出子の区別をなくす趣旨である。もっとも、嫡出子の場合には、民法【59】により、・・・(中略)・・・父子関係の推定が働くのに対して、非嫡出子の場合には、父子関係の形式的確認(認知又は裁判)を要するから(民法1600a条)、ドイツ人父の非嫡出子については、血縁による国籍取得の主張は、有効な父子関係の確認に係らせることが必要であった。」「国籍法における父子関係の確認について、家族法と異なった基準を用いることは、ほとんど考えられない。嫡出子の血縁による国籍取得も、家族法上の規定に基づいて規律されている。」(2)フランス共和国(以下「フランス」という。)1973年1月9日の国籍法 た基準を用いることは、ほとんど考えられない。嫡出子の血縁による国籍取得も、家族法上の規定に基づいて規律されている。」(2)フランス共和国(以下「フランス」という。)1973年1月9日の国籍法改正法は、嫡出子と非嫡出子との平等を図るために、従来の枠組みを大きく変え、「少なくとも一方の親がフランス人である子は、嫡出子であると自然子であるとを問わず、フランス人とする。」(同法17条)という規定を置いた。 旧法は、認知を先に行った親がフランス人であること及び認知が同時に行われた場合には、父がフランス人であることを要求していたが、国籍法改正法17条は、認知の先後を問わず、また、認知を行った親の性別を問わず、少なくとも親の一方がフランス人であれば、子にフランス国籍を付与することにした。 国籍法改正法は、1993年7月22日の法律によって民法に編入されたが、内容は変更されていない。 (3)ベルギー王国(以下「ベルギー」という。)1984年6月28日の国籍法は、従来の基本的枠組みを大きく変更した。すなわち、同法第2章第1節「父又は母の国籍によるベルギー国籍の付与」は、「以下の者はベルギー人とする。1ベルギー人を親としてベルギーで生まれた子。2外国で生まれた以下の場合の子。(a)ベルギー人親がベルギーにおいて、又はベルギーの主権若しくは委任統治に服する領域において生まれたとき。(b)ベルギー人親がこの出生の日から5年以内に、子のためにベルギー国籍の付与を求める届出をしたとき。(c)親がベルギー人であり、かつ子が18歳又は未成年解放までに他の国籍を取得しないか、それとも保持しないとき」(同法8条1項前段)、「前項の適用については、親は、子の出生の日、又は子の出生前に死亡したときは、その死亡の日に、ベルギー国籍を有していなければならな 国籍を取得しないか、それとも保持しないとき」(同法8条1項前段)、「前項の適用については、親は、子の出生の日、又は子の出生前に死亡したときは、その死亡の日に、ベルギー国籍を有していなければならない」(同条2項)と規定している。 これらの規定は、国籍の付与における嫡出子と非嫡出子との差別 を撤廃している。 (4)イタリア共和国(以下「イタリア」という。)1992年法2条は、認知による国籍の取得について、以下のように規定している。 「1項子が未成年の間に親子関係の認知又は裁判上の確認があったときには、この法律の規定により子の国籍を定める。2項認知又は裁判上の確認された子が成年に達しているときは、子は従来の国籍を保持する。ただし、認知、裁判上の確認又は外国処分の効力の承認から1年以内に、親子関係により定まる国籍の選択を届け出ることができる。3項本条の規定は、父子関係又は母子関係を確認することができなくても、扶養又は扶養料を請求する権利を裁判上認容された子にも適用する。」(5)スイス連邦(以下「スイス」という。)2006年1月1日施行のスイス国籍法は、「スイス人父と婚姻関係にない母の外国人の子は、父と密接な関係があることを根拠に、あたかも出生のときに取得したように、スイス国籍を取得する。」とし、従来の「外国籍を有する未成年の子は、父がスイス国民でありその子の出生後に母と婚姻したときは、スイス国籍を取得し、その取得は、出生と共に行われたものとみなす。」(旧スイス国籍法1条2項)という準正要件を廃止した。 (6)その他認知のみによって、国籍を取得する制度を採用する国には、スウ ェーデン王国(以下「スウェーデン」という。)、ノルウェー王国(以下「ノルウェー」という。)、オーストリア共和国(以下「オーストリア」という。 よって、国籍を取得する制度を採用する国には、スウ ェーデン王国(以下「スウェーデン」という。)、ノルウェー王国(以下「ノルウェー」という。)、オーストリア共和国(以下「オーストリア」という。)、スペイン、ギリシャ共和国(以下「ギリシャ」という。)、トルコ共和国(以下「トルコ」という。)等があり、更に要件が緩やかである国には、デンマーク王国(以下「デンマーク」という。)、スイス、アメリカ合衆国(以下「アメリカ」という。)等がある。 (7)認知以外の要件を必要とする国ア被告は、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(以下「英国」という。)及びオランダ王国(以下「オランダ」という。)のように、現在でも認知のみでは国籍取得を認めない国もあることを根拠に、準正要件が不合理な区別を設けたものではないとする。 イしかし、英国においては、準正要件以外にも、登録、養子縁組による国籍取得の方法が別途認められているのである。 ウまた、オランダにおいても、認知のみならず3年間の監護養育が要求されるのは、届出による場合に限られ、別途、父子関係確認による国籍取得の規定が設けられているのである。すなわち、オランダ国籍法「第3条の規定にかかわらず、父子関係が裁判により確認された子は、第一審判決の日に未成年であり・・・(中略)・・・かつ父が(判決確定の日等に)オランダ人である」場合には、判決の確定により、法律上当然にオランダ国籍を取得する(同法 4条)のである。 (九)人権諸条約における差別禁止規定違反について(1)女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約についてア昭和54年、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(以下「女子差別撤廃条約」という。)が国連で採択された。 我が国は、昭和60年に女子差別撤廃条約を批准した の撤廃に関する条約についてア昭和54年、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(以下「女子差別撤廃条約」という。)が国連で採択された。 我が国は、昭和60年に女子差別撤廃条約を批准した。 女子差別撤廃条約9条2項では、「締約国は、子の国籍に関し、女子に対して男子と平等の権利を与える。」と規定されているが、この規定は、以下の三つのことを意味したものである。 イ第一に、血統主義と出生地主義のいずれを採用するのかは、各国の自由とされている以上、出生地主義を採用する諸国に対して、血統主義の採用を強制するものではない。しかし、血統主義を採用する諸国に対しては、子供の国籍について、父母の間に差別を設けることを禁止している。 要するに、この規定は、血統主義を採用する諸国を主たる対象としているのである。 ウ第二に、文言上明らかなように、夫婦間の平等のみを定めたものではない。すなわち、嫡出子の国籍だけではなく、非嫡出子の国籍も規律している。 したがって、夫婦の間から生まれた子供の国籍のみならず、非婚の男女から生まれた子供の国籍についても、両性の平等が実現されなければならない。 エ第三に、嫡出子については、父系優先血統主義の弊害が問題となっていたが、非嫡出子については、むしろ、母の国籍だけに基づいて国籍を付与する母系優先血統主義が問題となる。 オそして、この条約は、女子差別の撤廃を主たる目的としているが、だからといって男子の差別を容認しているわけではない。その意味でも、この規定は、広く子供の国籍の決定における男女の平等を規定したものと解される。 なお、女子差別撤廃条約9条1項前段は、「締約国は、国籍の取得、変更及び保持に関し、女子に対して男子と平等の権利を与える。」と規定している。 (2)市民的及び政治的権利に関する国際規約2 される。 なお、女子差別撤廃条約9条1項前段は、「締約国は、国籍の取得、変更及び保持に関し、女子に対して男子と平等の権利を与える。」と規定している。 (2)市民的及び政治的権利に関する国際規約24条1項、3項についてア(ア)1989年の市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「B規約」という。)委員会(以下「自由権規約委員会」という。)の一般的意見17は、概要下記のように述べている。 記子供に対して保障されるべき保護については、さらに、24条3項に規定された子供の国籍取得権にも特別な注意を払うべきである。たしかに、この規定の目的は、子供が無国籍であることを理由として、社会及び国家の保護が少なくならないようにすることであるが、国家に対して、必ずしも自国の領域内で生まれたすべての子供に、国籍を付与する義務まで負わせたも のではない。しかし、国家は、すべての子供が出生の時に国籍を取得することを確保するために、国内法及び他国との協力関係によって、あらゆる適切な措置を採ることを求められている。 (イ)自由権規約委員会は、かような一般論を展開した後、さらに、概要下記のように続けている。 記これに関連して、国内法では、国籍の取得についての差別、例えば、嫡出子と非嫡出子の差別、無国籍の親から生まれた子供の差別、一方又は双方の親の国籍に基づく差別は許されない。 子供が国籍を取得することを確保するために採った措置は、常に締約国の報告書に記載されるべきである。 イ(ア)この一般的意見は、次の三つのことを意味していると思われる。 (イ)第一に、B規約24条3項では、「すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。」とされているが、無国籍を完全に防止することはできない。特に、親の本国が出生地主義を採用しており、子供の出生地国が血統主義を採 B規約24条3項では、「すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。」とされているが、無国籍を完全に防止することはできない。特に、親の本国が出生地主義を採用しており、子供の出生地国が血統主義を採用している場合には、血統主義と出生地主義の狭間で、子供が無国籍になることは避け難い。なぜなら、血統主義を採用するか、出生地主義を採用するかは、各国の自由とされているからである。一般的意見の前半部分は、このことを確認しているにすぎない。 (ウ)第二に、B規約24条3項は、それにもかかわらず、各国 が無国籍の防止に向けて最大限の努力をすることを求めている。 特に、血統主義の下では、親の地位による差別は、無国籍を発生しやすいので、禁止されるべきである。例えば、父母が婚姻しているか否か、父母のうち、どちらが自国民であるかなどによる差別が念頭に置かれている。一般的意見の後半部分は、直接的にはこの趣旨である。 (エ)第三に、この一般的意見は、現実に無国籍が発生する場合だけを問題にしているわけではない。 例えば、血統主義の下では、非嫡出子は、父の国籍を取得しなくても、通常、母の国籍を取得するし、また、嫡出子は、仮に父の本国法によって父の国籍を取得しなくても、母の本国が父母両系血統主義を採用していれば、母の国籍を取得することになる。しかし、B規約24条1項は、「すべての児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、財産又は出生によるいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国による措置についての権利を有する。」と規定し、いずれにせよ、出生による差別を禁止しているから、もともと親の地位による国籍取得の差別は、この規定に違反していると解される。 (3)児童の権利に関する条約2条及び7 いての権利を有する。」と規定し、いずれにせよ、出生による差別を禁止しているから、もともと親の地位による国籍取得の差別は、この規定に違反していると解される。 (3)児童の権利に関する条約2条及び7条についてア(ア)児童の権利に関する条約に関しては、1981年に英国が新国籍法(BritishNationalityAct)を制定し、新法の施行日 (1983年1月1日)以降に英国で生まれた子供は、父若しくは母が英国市民であるか、又は英国に定住している場合に限り、英国市民となると定め(1条1項)、「父又は母」とは、母については、嫡出関係であるか、非嫡出関係であるかを問わないが、父については、嫡出関係に限定された(50条9項)ことにより、非嫡出子が英国市民になるためには、母が英国市民であるか、又は英国定住者でなければならなくなったことが、国籍取得について非嫡出子を不当に差別しているのではないかと問題になった。 (イ)児童の権利委員会は、最終所見について、概要下記のような意見を述べている。 記差別の撤廃に関する条約2条について、本委員会は、その履行を確保するために採られた措置が不十分であることに懸念を表明する。とりわけ、非婚の父が子供に国籍を承継させる際に適用される制限は、条約7条及び8条に違反しており、それが子供に与えるおそれのある弊害に懸念がある。 (ウ)さらに、児童の権利委員会は、提案及び勧告として、「国籍及び出入国管理に関する法令並びに手続が、本条約の諸原則及び諸規定に適合するように、再検討することを提案したい。」旨述べている。 イ(ア)児童の権利委員会における審議からは、次の三つのことが 明らかとなる。 (イ)第一に、国籍の取得における非嫡出子の差別は、児童の権利に関する条約2条及び7条に違反する。 (ウ) る。 イ(ア)児童の権利委員会における審議からは、次の三つのことが 明らかとなる。 (イ)第一に、国籍の取得における非嫡出子の差別は、児童の権利に関する条約2条及び7条に違反する。 (ウ)第二に、これに対する英国代表の反論は、英国人父の非嫡出子が一定の条件を満たせば、内務大臣の裁量によって、英国人として登録される(前記新国籍法3条)というものであった。 しかし、国家の裁量による後天的な国籍取得は、出生時における法律上当然の国籍取得とは異なる。 そして、児童の権利委員会は、かような反論が、児童の権利に関する条約の違反を正当化するものではないと結論付けたのである。 ウなお、児童の権利委員会は、英国による国籍法の適用に関する留保が児童の権利に関する条約の基本原則と相容れないとも述べており、国籍の人権的側面を考慮するならば、国家は、自国民の範囲を全く自由に決定することができるわけではなく、不当な差別をもたらす国籍の決定は、直ちに国際法違反の疑いが生じるとした。 エ以上のように、国家は、国籍の決定にあたり、自国が当事国となった人権諸条約を遵守する必要があるのである。 (4)日本の国籍法に対する懸念表明について1998年、自由権規約委員会は、日本政府の第4回報告書に関する最終所見において、国籍法における非嫡出子の差別に対する懸 念を表明し、また、児童の権利委員会は、日本政府の第2回報告書に関する最終所見において、日本国民である父と外国人母の非嫡出子が胎児認知を受けなければ日本国籍を取得することができないことに対し、懸念を表明した。しかし、その後も我が国は、国籍法を改正しようとはしていない。 これに対し、英国は、2002年11月7日、英国国籍法を改正し、父子関係の証明によって、英国人父と外国人母の非嫡出子も、生来的な英国国籍 かし、その後も我が国は、国籍法を改正しようとはしていない。 これに対し、英国は、2002年11月7日、英国国籍法を改正し、父子関係の証明によって、英国人父と外国人母の非嫡出子も、生来的な英国国籍の取得が認定されるようになった。 (5)以上のとおり、国籍の取得における非嫡出子の差別が違法であることは、国際人権法の分野においても共通認識となっているのであり、日本国民である父による子の認知に加え、両親の婚姻、すなわち、嫡出性を要件とする国籍法3条1項は、日本が批准する女子差別撤廃条約、B規約及び児童の権利に関する条約のいずれにも違反しているのである。 (一〇)平成14年最高裁判決について(1)被告の主張は、最高裁判決においても採用されていない。 すなわち、平成14年最高裁判決の原審である大阪高裁平成10年9月25日判決は、控訴人(一審原告)の控訴を棄却したが、その理由において、日本国民の嫡出子については、当該日本国民が父であるか母であるかを問わず、日本国籍を付与するのが適当であるが、非嫡出子の場合は、婚姻家族に属していない子であり、あらゆる場合に嫡出子と同様の親子の実質的結合関係が生じるとはいい難 いこと、婚外の父子関係は、通常母子関係に比較して、実質的な結合関係が希薄であること、現行法は、その親子関係の差異に着目し、親子関係の希薄な場合の国籍取得について、段階的に一定の制約を設けたのであって、この現行法の基本的立場は、国籍立法政策上、合理性を欠くものとはいえないことを判示した。 これに対し、平成14年最高裁判決は、生来的な国籍の取得は、できる限り子の出生時に確定的に決定されることが望ましいところ、出生後に認知されるか否かは出生の時点で未確定であるから、国籍法2条1号が、子が日本国民である父から出生後に認知されたことにより、 、できる限り子の出生時に確定的に決定されることが望ましいところ、出生後に認知されるか否かは出生の時点で未確定であるから、国籍法2条1号が、子が日本国民である父から出生後に認知されたことにより、出生時にさかのぼって法律上の父子関係が存在するものとは認めず、出生後の認知だけでは日本国籍の生来的な取得を認めないものとしていることには、合理的根拠があるというべきである旨判示した。すなわち、平成14年最高裁判決は、あえて原審である上記大阪高裁判決の論理を採用せず、浮動性の防止の要請から認知の遡及効を否定することの合理性の点のみに言及して、国籍法2条1号の合憲性を判示したものである。 しかも、平成14年最高裁判決は、「生来的な国籍の取得は」と繰り返し限定して論じている。このような論理に立脚したことによって、国籍法3条1項が憲法違反である疑いが高いとする補足意見と論理的に整合していることに着目すべきである。 (2)以上のとおり、平成14年最高裁判決は、被告の主張に立脚するものではなく、かえって、国籍法3条1項が憲法14条違反である とする同判決補足意見及び原告らの主張と整合性を有するものである。 (一一)国籍法3条1項の合憲的な改正国籍法3条1項が違憲無効とされた場合、これを合憲とするには、理論的には、父母の婚姻及び認知により嫡出子たる身分を取得しても日本国籍を取得しないという法改正が考えられる。 しかしながら、血統主義を基本原理とする国籍法の趣旨に照らして、そのような改正はあり得ず、また、そのような改正自体は、新たに憲法違反の状態を生じさせることが明らかである。 よって、国籍法3条1項については、「父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子」という部分を、「父から認知された子」とすることが、憲法に違反しない唯一の改正方法 ることが明らかである。 よって、国籍法3条1項については、「父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子」という部分を、「父から認知された子」とすることが、憲法に違反しない唯一の改正方法である。 被告の主張(一)原告らは、国籍法3条1項の準正要件が憲法14条1項に反するなどとして、原告らが日本国籍を取得していると主張する。 しかしながら、以下のとおり、国籍立法に関する立法裁量は極めて広範なものであり、国籍法3条1項の準正要件は、その立法の経緯等を総合すると憲法14条1項に違反するものとはいえないから、上記原告らの主張は理由がない。 (二)国籍立法についての立法裁量の広範性憲法は、国籍の得喪に関する要件につき、10条において「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定して、これを法律によ って定めるべきものとするものの、その要件の具体的内容について明示するところがない。これ以外には、憲法上、国籍の得喪について定める規定はなく、日本国民たる父母がその子に日本国籍を承継させる権利又は日本国民の子が日本国籍を取得する権利は存在しないのである。 これは、国際法上も、国籍の得喪に関する立法が国家の対人主権の範囲を画するものとして各国の自由にゆだねられていることを踏まえ、憲法は、具体的にいかなる者を我が国の構成員とするかについては、代表民主制の原理に基づき、国会が、全国民を代表する立場において、我が国の歴史的事情、伝統、環境等様々な要因を総合的に考慮して合理的に定めることにゆだねたものと解される。最高裁も、国籍法2条1号の合憲性が問題となった国籍確認等請求訴訟において、「国籍は国家の構成員の資格であり、元来、何人が自国の国籍を有する国民であるかを決定することは、国家の固有の権限に属するものであり、国籍の得喪に関す 合憲性が問題となった国籍確認等請求訴訟において、「国籍は国家の構成員の資格であり、元来、何人が自国の国籍を有する国民であるかを決定することは、国家の固有の権限に属するものであり、国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかは、それぞれの国の歴史的事情、伝統、環境等の要因によって左右されるところが大きいところから、日本国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかを法律にゆだねる趣旨である」(平成14年最高裁判決)として、同様の見解に立つことを判示している。 このような国籍の得喪に関する憲法の趣旨に照らせば、国籍の得喪に関する要件が、上記のような諸事情を総合考慮して決定されるものであり、その性質上、立法府に与えられている裁量が広範なものであ ることは明らかである。 (三)憲法14条の平等原則(1)憲法14条1項は合理的な根拠に基づく差別を禁止するものではないこと憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と法の下の平等を定めているが、同規定は、合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理的な根拠に基づくものである限り、何ら同規定に違反するものではない(最高裁昭和37年(あ)第927号同39年11月18日大法廷判決・刑集18巻9号579頁(以下「昭和39年11月18日最高裁判決」という。)、最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁(以下「昭和39年5月27日最高裁判決」という。)等参照)。したがって、国籍の得喪に関する法律の要件における区別についても、 (オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁(以下「昭和39年5月27日最高裁判決」という。)等参照)。したがって、国籍の得喪に関する法律の要件における区別についても、それが合理的な根拠に基づくものである限り、何ら憲法14条1項に反するものではない(平成14年最高裁判決)。 (2)合理的な根拠に基づく差別であるか否かについての審査基準憲法は、前記のとおり、いかなる者を我が国の構成員とするかの具体的決定を、我が国の歴史的事情、伝統、環境等の諸事情を総合 考慮したところに基づく立法府の広範な裁量にゆだねているのであるから、国籍の取得に関する法律の要件における区別について、憲法14条1項違反の問題を生じ得る場合は極めて限定されるというべきである。等しく日本国民の子でありながら、国籍法上、日本国籍を取得することができる者と取得することができない者が存在することがあったとしても、立法府が採用した立法政策上の区別に合理的な根拠があり、いまだ立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えていないと認められる限り、合理的理由のない差別とはいえず、これを憲法14条1項に反するものということはできない。 そして、この合理性の有無を判断する「合理性の基準」とは、①立法目的が正当であり、②具体的な取扱い上の違いが前記目的達成に合理的に関連していることをもって足り、違憲を主張する側が、いかなる合理的根拠に基づいても支持することができないことを証明する責任を負うとする基準とされている。 (四)国籍取得に関する立法主義と国籍法の制定及び改正の経緯等(1)国籍の取得に関する立法主義国籍の取得の要件は、その国の歴史的沿革、伝統、環境等様々な要因を考慮して定められるものであり、実際に、各国における国籍の取得の要件は多種多様で 及び改正の経緯等(1)国籍の取得に関する立法主義国籍の取得の要件は、その国の歴史的沿革、伝統、環境等様々な要因を考慮して定められるものであり、実際に、各国における国籍の取得の要件は多種多様であるが、立法上の主義としては、血統主義と出生地主義(生地主義)に大別される。 血統主義とは、自国民の子として出生した者に対して、自国の領土内で出生したかどうかを問わずに、自国の国籍を付与する主義を いい、同一文化を有する同一民族により国家を形成するという民族主義に由来するものである。 これに対し、出生地主義とは、父母の国籍のいかんにかかわらず、自国の領土内で出生した子に自国籍を付与する主義であり、元来、中世封建制に由来し、自国領内の居住の利益を享受する者に自国籍を付与して、自国民としての義務を負担させるという思想に基づくものと考えられるが、現代においては、移民受入国において、移民の子孫に自国籍を付与し、その定着、同化、宥和を促進する機能を有する点に特色があるとされている。 諸国の国籍法は、この二つの主義のいずれかを基礎としているものの、国際的な人的交流が活発な現代においては、その一方の主義のみを徹底することは困難となっている。なぜなら、その一方の主義を徹底すれば、場合によっては、自国との実質的な関連のない者に国籍を付与し、あるいは自国との関連の強い者に国籍を与えない結果となり、また、国籍の積極的又は消極的な抵触の防止の理想も達成することができないことになるからである。したがって、諸国の立法例においては、原則としては血統主義又は出生地主義のいずれか一方によりつつも、程度の差異はあれ、他方の要素をも考慮して、出生による国籍付与の要件を定めている。我が国の国籍法も、昭和25年に廃止された旧国籍法以来、伝統的に血統主義を採用しているものの れか一方によりつつも、程度の差異はあれ、他方の要素をも考慮して、出生による国籍付与の要件を定めている。我が国の国籍法も、昭和25年に廃止された旧国籍法以来、伝統的に血統主義を採用しているものの、地縁的要素をも加味し、日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないときは、子は 出生により日本国籍を取得するとしている(国籍法2条3号、旧国籍法4条)。 また、国籍立法の基礎となるべき諸事情は、時の経過に伴って変化するものであるから、国籍の取得に関する要件をどのように定めるかということも時代の要請に応じて異なるものであり、血統主義や出生地主義という基本的な立法主義についてさえ、これを支える思想に変遷があることは、上記のとおりである。我が国の国籍法も、後記のとおり、その時々の社会情勢、国際情勢を踏まえて制定と改正を経てきたものである。 (2)国籍法の制定及び改正経緯ア現行国籍法(改正前国籍法)の制定(父系優先血統主義)改正前国籍法は、個人の尊厳及び両性の本質的平等を立法の基本原則とする現行の憲法が制定され、従来の民法上の家制度が全面的に改正されたことに伴って、旧国籍法を廃止して新たに制定されたものであり、昭和25年5月4日に公布され、同年7月1日に施行されたものである(昭和25年法律第147号)。 改正前国籍法においては、憲法24条による個人の尊厳及び両性の本質的平等の保障の精神に反することを理由に、旧国籍法の中の家制度に立脚する規定及び婚姻、養子縁組、認知、離婚等の身分行為に基づく国籍の得喪の制度が廃止され、身分行為は、国籍に影響を及ぼさないものとされ、同様に夫又は父母の国籍の変更は、当然に妻及び子の国籍の変更を生ずるとの旧国籍法の規定 も廃止され、妻及び子についての国籍上の独立の地位が認め 、身分行為は、国籍に影響を及ぼさないものとされ、同様に夫又は父母の国籍の変更は、当然に妻及び子の国籍の変更を生ずるとの旧国籍法の規定 も廃止され、妻及び子についての国籍上の独立の地位が認められた。 一方、出生による国籍の取得については、従来我が国で採用されてきた父系優先血統主義を維持し、原則として父が日本国民であるときに子は日本国籍を取得するものとした。これは、①憲法は、国籍に関する事項を立法府の裁量にゆだね、日本国民の子に日本国籍を取得する権利又は日本国民たる父母が子にその国籍を承継させる権利を保障していないこと、②したがって、父系優先血統主義は、父に対して母の権利を差別したものではないこと、③血統主義を採用する諸外国の立法例では父系優先血統主義が採用されているので、父系優先血統主義は重国籍の防止に有効であることなどの理由に基づくものである。 イ昭和59年改正(昭和59年法律第45号)(ア)父母両系血統主義の採用その後、日本社会の国際化に伴って、多数の外国人が我が国に定住し、渉外婚姻が増加した結果、日本国民たる母の子で日本国籍を有しない者が増加したこと、両性平等意識の高揚により、母を日本国民とする子についても国籍を付与すべきであるとする世論が高まったこと、さらに、父系優先血統主義から父母両系血統主義に改める国が続出し、我が国のみが父系優先血統主義を維持しても、将来にわたり重国籍の発生を防止することが困難になったことなどの国際情勢、社会情勢の変化を背景 とし、直接には、昭和54年に第34回国際連合総会において採択された「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の批准を契機として、昭和59年に改正前国籍法の大幅な改正がされた。 その結果、従来の父系優先血統主義に代わって、出生の時に父又は母のいずれ れた「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の批准を契機として、昭和59年に改正前国籍法の大幅な改正がされた。 その結果、従来の父系優先血統主義に代わって、出生の時に父又は母のいずれか一方が日本国民であれば、子は出生により日本国籍を取得するものとする父母両系血統主義が採用された(国籍法2条1号)。 平成14年最高裁判決は、この父母両系血統主義について、「法2条1号は、日本国籍の生来的な取得についていわゆる父母両系血統主義を採用したものであるが、単なる人間の生物学的出自を示す血統を絶対視するものではなく、子の出生時に日本国民である父又は母と法律上の親子関係があることをもって我が国と密接な関係があるとして国籍を付与しようとするものである。」と判示している。同じく血統上の日本国民の子であっても、出生時における法律上の親子関係の有無により国籍取得の要件が異なることは、血統を絶対視する立場からは、不均衡との批判があり得ようが、血統という単なる生物学的要素を絶対視せず、親子関係により我が国との密接な結合が生ずる場合に国籍を付与するとの法の基本的政策からは、当然の帰結とされ、平成14年最高裁判決もこの理を認めたものである。 (イ)届出による国籍の取得制度の創設 昭和59年改正では、父母両系血統主義が採用されるとともに、旧国籍法及び改正前国籍法の下において認められていた出生等による国籍の当然取得及び帰化等法務大臣の許可による国籍取得の方法に加え、準正子など法定の要件を備える者が、法務大臣に対し届出をすることによって当然に日本の国籍を取得するという制度が新たに設けられた(国籍法3条、17条、昭和59年改正法附則5条、6条)。この届出による国籍取得は、血統主義の補完あるいは実質的な日本国籍の再取得(回復)の見地から、ある者 を取得するという制度が新たに設けられた(国籍法3条、17条、昭和59年改正法附則5条、6条)。この届出による国籍取得は、血統主義の補完あるいは実質的な日本国籍の再取得(回復)の見地から、ある者が我が国と特別な関係にある場合に、その者が日本国籍の取得を欲するならば、帰化のように法務大臣の裁量による許可を要することなく、法務大臣への意思表示(届出)のみによって簡易に日本国籍を取得することを認めようとするものである。そして、この届出による日本国籍の取得の効力は、その届出の時に生ずることとされており(同法3条2項、17条3項等)、効力発生につき官報告示を要するとする制度(同法10条参照)も採られていないので、届出が適法なものである限り、この届出によって確定的に日本国籍を取得するものである。 (五)国籍法3条1項の準正による国籍取得制度の趣旨国籍法3条1項が一定の準正子に届出による国籍取得を認める制度を創設した趣旨は、次のとおりである。 すなわち、父母両系血統主義(同法2条1号)によれば、日本国民 である母の子は、父が外国人であっても、子の嫡出又は非嫡出を問わず、出生により日本国籍を取得するが、日本国民である父の子は、母が外国人であれば、出生時に父子関係が確定している場合(子が嫡出子である場合又は父から胎児認知されている場合)でなければ、出生により日本国籍を取得しない。このことは、日本国民である父の子に着目すれば、父母の婚姻が子の出生の前であるか後であるかによって、子の国籍に大きな差異が生ずることを意味し、制度の均衡上考慮する必要がある。特に我が国では往々にして、子が生まれてから婚姻の届出をするということも少なくないことを考えると、このような準正子については、帰化の手続によることなく、実質的に血統主義の補完措置として、より簡 る。特に我が国では往々にして、子が生まれてから婚姻の届出をするということも少なくないことを考えると、このような準正子については、帰化の手続によることなく、実質的に血統主義の補完措置として、より簡易な方法による日本国籍の取得を認める必要がある。 また、親と生活関係を同一にする未成年の嫡出子は、親と同一の国籍であることが望ましく、日本国民である父の準正子は、父母の婚姻及びその認知によって嫡出子たる身分を取得したことにより、通常は、日本国民を含む家族関係に包摂され、我が国との密接な結合関係を有することが明らかとなったものであるから、その者の意思により簡易に日本国籍を付与することが実質上適当である。 以上のとおり、国籍法3条1項は、昭和59年法律第45号による改正によって、出生による国籍の取得について父母両系血統主義が採用された際に、出生時に日本国民の嫡出子である子との均衡を図ることを目的として新設された制度であり、殊更非嫡出子を差別することを目的としたものではない。 (六)我が国は法律婚尊重主義の法政策を採用していること(1)家族関係に関する我が国の伝統、社会事情、国民の意識等を考慮して、法律婚を尊重するという基本理念に基づき、嫡出子と非嫡出子とは、種々異なる取扱いを受けており(民法790条2項、819条4項、900条4号ただし書)、嫡出子と非嫡出子との間で異なる扱いをすること自体は不合理なものではない。このことは、民法における両者の取扱いの差異に関する今日までの諸判例からも明らかである。 (2)例えば、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた民法900条4号ただし書前段の規定については、憲法14条1項に違反しないことは、最高裁によって繰り返し判示されているところである(平成16年最高裁決定、平成15年3月28日 続分の2分の1と定めた民法900条4号ただし書前段の規定については、憲法14条1項に違反しないことは、最高裁によって繰り返し判示されているところである(平成16年最高裁決定、平成15年3月28日最高裁判決、平成15年3月31日最高裁判決、平成12年最高裁判決、平成7年最高裁決定)。 このうち、平成7年最高裁決定は、相続制度を定めるに当たっての合理的な裁量を立法府に認めるに当たり、民法900条4号ただし書前段の規定の立法理由について、「法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の2分の1の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される。」として、現行民法が法律婚を採用している以上、このような 立法理由にも合理的な根拠があると判示している。 (3)上記判示の根底には、婚姻や家族に対する価値観が多様化したといわれる現代社会においても、なお、「法律婚を尊重すべき」という法律婚を基調とする家族観や社会倫理が根強く存在し、法律婚を保護することが、法律婚に基づく家族に社会経済上の一体性が認められる場合が多いという社会実情に合致し、国民感情に沿うとの判断があるものと考えられる。そうすると、嫡出子と非嫡出子との間で法的に異なる取扱いをしていることのみをもって、直ちに不合理な差別との法的非難を受けるべきものではない。 (七)準正要件の合理性(1)生活の同一性についてア国籍法3条1項の準正要件について考えてみると、そもそも、民法789条に定める準正の制度は、非嫡出子についての父母の婚姻及びその認知があった場合に、法の擬制によってその子に嫡出子たる身分を与えることとした制 1項の準正要件について考えてみると、そもそも、民法789条に定める準正の制度は、非嫡出子についての父母の婚姻及びその認知があった場合に、法の擬制によってその子に嫡出子たる身分を与えることとした制度である。非嫡出子は、母の氏を称し(民法790条2項)、原則として母の親権に服する(同法819条4項)とされていて、非嫡出子の父子関係は、法制度上も、実際上も、結合関係、すなわち生活の同一性が希薄である。ところが、準正子である未成年の子は、その準正のときから当然に母と共に父の親権に服し(同法818条1項、3項)、出生時から嫡出子であった子と同様、父母の下で監護・教育を受けて成長することが、民法上当然に予定されているのである(同 法820条以下)。 このように、準正子と非嫡出子との間には法制度上の差異があり、準正子の場合には、父と子の親子関係が非嫡出子より強いものとされている。そのため、日本国民である父との親子関係が準正によって強くなった場合に、我が国との密接な結合が生ずるものとして国籍を付与するとの立法政策を採り、届出のみによる国籍の取得を認めることについては十分な合理性がある。そして、このような立法政策を採ることは、前記の法律婚尊重主義という我が国の基本的な法政策にも整合するものである。 イまた、厚生労働省の人口動態統計によれば、我が国における嫡出子と非嫡出子の別に見た出生数は、平成6年から平成15年までの10年間の平均で、嫡出子116万6300人に対し、非嫡出子1万8100人であり、出生子全体に占める非嫡出子の割合は、わずか1.5パーセントにすぎない。我が国においては、先進諸外国において婚外子が著しく増加しているのとは異なり、依然として、法律婚に基づく家族に社会経済上の一体性が認められる場合が多いといえる。 したがって、子 ーセントにすぎない。我が国においては、先進諸外国において婚外子が著しく増加しているのとは異なり、依然として、法律婚に基づく家族に社会経済上の一体性が認められる場合が多いといえる。 したがって、子の出生時に日本国民である父と法律上の親子関係がある場合とない場合とで我が国との結び付きという点で類型的に異なるとすることは、社会の実情に合致し、国民感情にも沿うものであり、今日でもなお、国籍法3条1項において準正子と非嫡出子とを区別することの合理性は失われていないというべき である。 (2)準正要件という客観的に明確な基準を要求すべき必然性があること準正子となっていない日本国民である父の非嫡出子の中にも、個別的にみれば我が国と密接な結び付きのある者が存在することはあり得る。しかし、そのような者であるか否かは客観的に明らかではないのが通常である。言い換えれば、法律上婚姻していない父母が法律上の婚姻と同様の事実上の婚姻状態にある場合があるとしても、内縁関係の態様は様々であり、いかなる場合に法律上の婚姻と同様の事実上の婚姻状態にあると評価するかは一義的ではないのである。 そして、届出による国籍の取得が簡易な方法による国籍の取得を認める制度であるにもかかわらず、国籍の取得の可否を決するためにこのような個別具体的な事情の検討を要するというのでは、その制度趣旨も没却させることになるし、個別具体的な事情をこの手続内で検討するのも容易ではない。むしろ、日本国民である父の非嫡出子のうち我が国と密接な結び付きがあると認められる可能性のある者は、手続内で個別具体的な事情の検討が予定されている簡易帰化による国籍取得にゆだねるのが法制度として合理的である。そうすると、日本国民である父の非嫡出子を一律に届出による国籍取得の対象としなかったことが、立法理由 具体的な事情の検討が予定されている簡易帰化による国籍取得にゆだねるのが法制度として合理的である。そうすると、日本国民である父の非嫡出子を一律に届出による国籍取得の対象としなかったことが、立法理由との関連で著しく不合理なものといえないことも明らかである。以上のようなことから、我が国の国籍法は、日本国民である父から認知を受けたにとどまる非嫡出子 については、一律に簡易に国籍取得を認めることをせず、我が国の構成員とすることが相当であるか否かについて、なお法務大臣の個別的判断を求めることとして、通常の場合に比して緩和された帰化条件により、簡易に帰化を認めることとした(同法8条)ものである。 したがって、同法3条1項が、客観的に該当性を判断することができる準正要件をもって届出による国籍取得の要件としたことには十分な必然性があり、合理性が認められるものである。 (八)偽装認知のおそれについて婚姻の場合には、夫婦の同居の有無によって偽装婚か否かの判断が可能であり、同居の有無を調査することは比較的容易であるのに対し、認知の場合は、父には認知した子と同居する法的義務すらなく、偽装認知か否かを調査することは極めて困難である。昭和59年の法改正に当たっても、認知のみにより国籍取得を認める場合には、偽装認知がされる危険があることが考慮されていた。 現実に、日本国籍を有する子の監護養育者として我が国の在留資格を得て、我が国に不法に入国し、滞在するために、子に日本国籍を取得させるための虚偽の認知が行われているという社会的事実も存することにかんがみると、時間的制約がある胎児認知に比して、期間制限のない生後認知の場合に、偽装認知の危険性が飛躍的に高まることは明らかである。 したがって、偽装認知の防止という観点からも、国籍法3条1項は、 合理性を 的制約がある胎児認知に比して、期間制限のない生後認知の場合に、偽装認知の危険性が飛躍的に高まることは明らかである。 したがって、偽装認知の防止という観点からも、国籍法3条1項は、 合理性を有するというべきである。 (九)比較法的にみても不合理な立法ではないこと(1)諸外国の国籍法の立法例にも、準正の場合には簡易な国籍取得を認めるものが存在している。国籍の付与に関して、我が国のほかにも、父子関係以外に父母の婚姻等を国籍取得の要件としている国は複数存する。国籍法3条1項の準正要件は、比較法的にみても不合理な区別を設けたものということはできない。 (2)昭和59年改正時における諸外国の国籍取得制度昭和59年改正における準正による国籍取得の制度を新たに設けるに当たっては、諸外国の国籍取得制度についても検討されたが、当時、父母両系血統主義を採る諸国は、認知によって国籍を取得する国(フランス)もあるが、認知では国籍を取得せず、未成年の間に準正子となった場合に限り、国籍を付与する例の方が多かった(スイス、デンマーク、スウェーデン、ドイツ等)。 このような諸国の国籍取得制度の違いは、嫡出でない子を国内法体系上どう取り扱うか、親子国籍同一主義の原則をどの程度で徹底するかについての法制及び考え方の違いから生ずるものと解される。 男女平等の原則から父母両系血統主義に改めた諸国においても、父親が自国民であることが確定しても、それだけでは国籍を取得することとしていないのは、国籍の付与が、各国の身分法と関係するだけでなく、親子同一主義との関係を無視することができないことによるものと思われる。 (3)最近の諸外国の国籍取得制度最近の諸外国の国籍取得制度の調査結果を整理すれば、以下のとおりである。 アスウェーデン国籍法(2001年7月1日 ができないことによるものと思われる。 (3)最近の諸外国の国籍取得制度最近の諸外国の国籍取得制度の調査結果を整理すれば、以下のとおりである。 アスウェーデン国籍法(2001年7月1日施行、2005年7月1日改正)スウェーデン国籍法1条2項において、子の出生による国籍取得につき「父がスウェーデン国籍で子がスウェーデンで出生した場合」と規定されているが、これについては、2001年7月1日以降スウェーデン国内で出生した子について、出生後に、認知又は裁判手続等によりスウェーデン人父との父子関係が確認された場合には、子は、出生日にさかのぼって当然にスウェーデン国籍を取得すると解されている。 また、同法4条において、「スウェーデン国籍である男性が外国籍である女性と婚姻した場合は、婚姻前にその女性から出生していた子で、1条の規定によりスウェーデン国籍を持たない独身で18歳未満のものはスウェーデン国籍を取得する。」と規定されている。 したがって、スウェーデン人父の非嫡出子で国外で出生したものは、独身で18歳未満であれば、父母が婚姻し準正子となることによって、スウェーデン国籍を取得すると解されている。 イデンマーク国籍に関わる統合法(2004年6月7日統合法第422号) デンマーク国籍に関わる統合法1条1項において、デンマーク人を父又は母とする子は、生来的にデンマーク国籍を取得する旨が規定されている。また、同項において、両親が婚姻関係になく、かつ、父のみがデンマーク人である子の場合には、子がデンマーク国内で出生した場合に限り、デンマーク国籍を取得する旨が規定されている。 また、同法2条において、デンマーク人父と外国人母の子であって、出生によりデンマーク国籍を取得しないものは、その後両親が婚姻すれば、当該婚姻時に子が独身か マーク国籍を取得する旨が規定されている。 また、同法2条において、デンマーク人父と外国人母の子であって、出生によりデンマーク国籍を取得しないものは、その後両親が婚姻すれば、当該婚姻時に子が独身かつ18歳未満であれば、デンマーク国籍を取得する旨が規定されているが、これについては、両親の一方がデンマーク人であるにもかかわらず、子がデンマーク国籍を取得しない場合とは、デンマーク人父と外国人母の婚姻外でデンマーク国外で出生した子の場合であると解されている。 したがって、デンマーク人父の非嫡出子で国外で出生したものは、独身で18歳未満であれば、父母が婚姻し準正子となることによって、デンマーク国籍を取得すると解される。 ウノルウェー国籍法(2005年6月10日制定、2006年9月1日施行予定)2006年9月1日施行予定のノルウェー国籍法4条において、「父親あるいは母親のいずれかがノルウェー国籍保持者であれば、その誕生した子供はノルウェー国籍を取得する。当該児の誕生以 前に父親が死亡している場合には、父親が死亡時にノルウェー国籍を有していれば、十分である。」と規定されているが、これについては、ノルウェー国籍を有しない非嫡出子について、出生後に、認知又は裁判手続等によりノルウェー人父と父子関係が確認された場合には、子は、出生した時点で当然にノルウェー国籍を取得すると解されている。 エアメリカ移民及び国籍法(1952年6月27日法律)アメリカ移民及び国籍法309条a号において、「本編第301条(c)号、(d)号、(e)号及び(g)号並びに第308条第(2)号の規定は、婚姻外で出生した子につき、その父が当該子の出生の時に合衆国の国籍を有しており、父子間の血縁関係が明確な、証明力ある証拠により確定し、及び父が死亡している場合を除き、書 08条第(2)号の規定は、婚姻外で出生した子につき、その父が当該子の出生の時に合衆国の国籍を有しており、父子間の血縁関係が明確な、証明力ある証拠により確定し、及び父が死亡している場合を除き、書面をもって、当該子に対し、当該子が18歳に達するまで金銭的な援助を行うことに合意し、並びに、当該子が18歳に達するまでに次のいずれかの事由が生じた場合には、かかる子の出生の時にさかのぼって適用する。(1)子が、その居住地若しくは住所地の法律により、嫡出子たる身分を取得したこと。(2)父が、宣誓の下に作成した書面により、父子関係を認知したこと。(3)父子関係が管轄権を有する裁判所の裁定により確定したこと。」と規定されている。 なお、上記規定において引用される第301条(c)号、(d)号、(e)号及び(g)号並びに第308条第(2)号の規定は、アメリカ領 土外で出生した子について、一定の要件のもとに補充的に血統主義を採用し、アメリカ国籍を付与する規定である。 したがって、アメリカ国籍を有しない非嫡出子は、アメリカ国民である父との親子関係が形成され、子が18歳になるまでの間、当該父が子に対して金銭的援助を行うことに書面で合意することによって、アメリカ国籍を取得することとなる。 オ1981年英国国籍法(1981年10月3日、1983年1月1日施行)1981年英国国籍法1条1項によれば、同法施行の後に英国内で生まれた子は、両親の一方が英国市民である(父に関しては、子が嫡出の場合に限る。)か、若しくは子の出生時に英国に定住している場合、英国市民となる旨が規定されている。 英国国籍を有しない子が、出生後に、英国人父からの認知により当然に英国国籍を取得することはない。英国国籍のない子が出生後に英国国籍を取得するためには、以下のとおり、登録、養子 旨が規定されている。 英国国籍を有しない子が、出生後に、英国人父からの認知により当然に英国国籍を取得することはない。英国国籍のない子が出生後に英国国籍を取得するためには、以下のとおり、登録、養子縁組及び父母の婚姻(準正)の三つの方法がある。 (ア)登録による国籍取得1981年英国国籍法1条3項によれば、1983年1月1日以降、英国内で出生し、かつ、出生以降、両親のどちらかが英国市民になったか、英国に定住することとなり、かつ、子の18歳の誕生日前に登録申請がなされた場合、英国市民として登録される資格を有する。 また、同法1条4項によれば、1983年1月1日以降、英国内で出生し、かつ、申請時に10歳以上であり、かつ、申請後10年間のうち、英国に不在であった日数が各年90日を超えない場合、登録申請により、英国市民として登録される資格を有する。 なお、英国外で出生した未成年者の登録による国籍取得については、同法3条2項から6項までに規定がある。さらに、同法6条によれば、成年者の場合は、帰化により英国国籍取得が可能である。 (イ)養子縁組による国籍取得1981年英国国籍法1条5項によれば、未成年者(18歳未満)の養子縁組を許可する命令が英国内の裁判所で下された場合において、当該命令が下された日に養親の一方が英国市民であるときには、その未成年者は当該命令が下された日から英国市民となる。 (ウ)父母の婚姻による国籍取得1981年英国国籍法47条1項によれば、「本法の適用に関して、婚外子で両親の婚姻により準正された者は両親が婚姻した日に嫡出子として生まれたものとして取り扱うものとする。」と規定されているが、これについては、出生時に両親が婚姻していないため、英国国籍が付与されなかった子について、出生時に父が英国市民であるか英国 に嫡出子として生まれたものとして取り扱うものとする。」と規定されているが、これについては、出生時に両親が婚姻していないため、英国国籍が付与されなかった子について、出生時に父が英国市民であるか英国に定住している場合には、 その後に両親が婚姻することにより、その子は準正嫡出子として取り扱われることとなり、出生時にさかのぼって英国国籍を取得したとみなされると解されている。 カフランス民法(1993年7月22日法律第93-933号)フランス民法18条において、「両親の少なくとも一方がフランス人である子は、嫡出子であると非嫡出子であるとを問わず、フランス人である。」と規定されているが、これについては、フランス国籍を有しない子について、認知等によりフランス国籍を有する者との親子関係が確認された場合には、同条の趣旨により、子は当然にフランス国籍を有し、その効果は出生時にさかのぼると解されている。 キドイツ国籍法(1999年7月15日改正)ドイツ国籍法4条1項において、「親の一方がドイツ国籍を有する場合、その子は出生によりドイツ国籍を取得する。子の出生において、父のみがドイツ国籍を有し、ドイツの法律による血縁の証明のために、認知又は父子関係の確認が必要とされる場合には、国籍取得の権利主張のために、ドイツの法律に基づく法的に有効な認知又は父子関係の確認が必要とされる。認知の意思表示又は父子関係の確認手続は、子が23歳になるまでに開始されなければならない。」と規定されている。この規定により、ドイツ国籍を有しない子についてドイツ人男との父子関係が確認された場合、子は、出生時にさかのぼって当然にドイツ国籍を取得する と解されている。 クオーストリア公民権法現行のオーストリア公民権法によれば、非嫡出子の出生による国籍取得については 確認された場合、子は、出生時にさかのぼって当然にドイツ国籍を取得する と解されている。 クオーストリア公民権法現行のオーストリア公民権法によれば、非嫡出子の出生による国籍取得については、同法7条3項において、出生の時に母がオーストリア公民であるときは、出生によりオーストリア公民権を取得する旨が規定されている。 また、認知又は裁判手続等により、オーストリア公民との父子関係が確認された場合の国籍取得については、同法7a条1項において、未成年(18歳未満)かつ独身である者が認知された場合、認知された時からオーストリア公民権を取得する旨が規定されている。 ただし、同法7a条2項において、認知された者の年齢が満14歳以上の場合、認知によりオーストリア公民権を取得するためには、認知された者及び法定代理人が公民権取得に同意する必要がある旨が規定されている。さらに、同条3項において、同条2項の同意は、公民権保有者登録課に同意書を提出することによって行い、この場合の認知による公民権取得は、同課が同意書を受領した時から効力を生ずる旨が規定されている。 ケオランダ国籍法(1985年1月1日施行、最終改正2003年4月1日)オランダ国籍法3条1項において、出生の時に父又は母がオランダ人である子は、出生によりオランダ国籍を取得する旨が規定 されているが、この規定によりオランダ国籍を取得する子は、オランダ人である父又は母の嫡出子、オランダ人母の非嫡出子又はオランダ人父から胎児認知をされた非嫡出子である。 また、同法3条3項によれば、子がオランダ国内、オランダ領アンティル又はアルーバ内で出生し、かつ、当該父又は母の出生時、その父又は母の主な居所が同国内又は領内にあったもので、当該子の出生の登録の際、当該子の住所を同国内又は領内に定める場 内、オランダ領アンティル又はアルーバ内で出生し、かつ、当該父又は母の出生時、その父又は母の主な居所が同国内又は領内にあったもので、当該子の出生の登録の際、当該子の住所を同国内又は領内に定める場合には、当該子は出生によりオランダ国籍を取得する。 次に、オランダ国籍を有しない子について、出生後に、裁判手続によりオランダ人父との父子関係の存在が確認された場合には、同法4条1項において、一定の条件の下に当然にオランダ国籍を取得する旨が規定されている。 また、オランダ国籍を有しない子について、出生後にオランダ人父から認知された場合には、2003年4月1日のオランダ国籍法改正前においては、子は当該認知によって当然にオランダ国籍を取得することとされていたが、同改正以後は、認知により当然にはオランダ国籍を取得しないこととされた。この場合には、同法6条1項c号において、当該子が未成年(18歳未満)である間に、認知したオランダ人により3年間養育された場合に、当該子の法定代理人がオランダ国籍を選択する宣言をすることによりオランダ国籍を取得することができる旨が規定されている。ここでいう「養育」とは、金銭的援助のみでは足りず、認知の時か ら当該子と3年間家族として同居することが必要であるとされており、その養育の有無については、オランダ国内においてはオランダ地方当局(市長)が、オランダ国外においては在外公館の長が、オランダ国籍選択の宣言に署名する者(当該子の法定代理人)から提出された養育に関する証拠資料に基づいて認定することとされている。 上記のとおり、2003年4月1日の改正により、認知のみによってはオランダ国籍を取得しないこととされた理由は、生物学的にも社会的にも子の父ではないオランダ人が、子のオランダ国籍取得のみを目的として当該子を認知する 003年4月1日の改正により、認知のみによってはオランダ国籍を取得しないこととされた理由は、生物学的にも社会的にも子の父ではないオランダ人が、子のオランダ国籍取得のみを目的として当該子を認知することを回避するためである。子のオランダ国籍取得のみを目的とする認知については、多くの場合、既に10代後半となった子をオランダに在留させるための単なる手段であった旨、オランダ法務省から回答を得ている。 コスイス国籍法(2006年1月1日施行)スイス国籍法1条2項において、「外国籍を有する未成年の子は、父がスイス国民でありその子の出生後に母と婚姻したときは、スイス国籍を取得し、その取得は、出生とともに行われたものとみなす。」と規定されていたが、2006年1月1日からは、「スイス人父と婚姻関係にない母の外国人の子は、父と密接な関係があることを根拠に、あたかも出生のときに取得したように、スイス国籍を取得する。」とされた。 サスペイン民法スペイン民法17条1項において、スペイン人の父又は母から出生した者は、出生によりスペイン国籍を取得する旨が規定されているが、これについては、スペイン国籍を有しない子について、出生後に、認知又は裁判手続等によりスペイン人父との父子関係が確認された場合には、子は、出生時にさかのぼって当然にスペイン国籍を取得すると解されている。 ただし、同法17条2項において、スペイン人父との親子関係が確認された子が18歳以上の場合には、当該子は、当然にはスペイン国籍を取得せず、当該子がスペイン国籍を取得するためには、認知により父子関係が確定した時から2年以内にスペイン国籍を選択する必要がある旨が規定されている。 なお、1990年12月17日改正前の同法17条4項においては、スペイン国民である父又は母との間の親子関係の確 父子関係が確定した時から2年以内にスペイン国籍を選択する必要がある旨が規定されている。 なお、1990年12月17日改正前の同法17条4項においては、スペイン国民である父又は母との間の親子関係の確定により、子が生来のスペイン国籍を自動的に取得する旨が規定されていたが、同改正後は、当該条文が削除され、新たに民法17条2項のより、子が18歳以上の場合の条件が付された。この理由については、1990年12月17日付け国籍についての民法改正に関する法律第18号において、「親子関係又はスペインにおける出生が確定した子が、スペインとの関係を持たない又は非常に希薄である場合があるところ、現実的観点及び子の利益(国籍選択の自由)を尊重し、子が18歳以上の場合の条件を付した」と 明記されている。 シギリシャ国籍法(2004年11月10日法律第3284号)ギリシャ国籍法1条において、ギリシャ人男性又はギリシャ人女性の子は、出生によりギリシャ国籍を取得する旨が規定されている。 また、同法2条において、ギリシャ人父に認知された未成年(18歳未満)の子は、ギリシャ国籍を取得する旨が規定されている。この場合、子は認知の日からギリシャ国籍を取得すると解されている。 ストルコ国籍法(1964年2月11日法律第403号、1981年2月13日法律第2383号改正)トルコ国籍法1条において、「トルコ又は外国において、トルコ人を父又は母として生まれた子は、出生によるトルコ国民とする。」と規定されている。 また、同法2条において、「外国人を母として婚姻外で生まれた者は、血統上、次の方法のいずれか一つによりトルコ国民と関係が生じたときは、出生によるトルコ国民となる。(a)準正、(b)判決による父子関係の確立、(c)認知」と規定されている。 したがって、トルコ人父 、血統上、次の方法のいずれか一つによりトルコ国民と関係が生じたときは、出生によるトルコ国民となる。(a)準正、(b)判決による父子関係の確立、(c)認知」と規定されている。 したがって、トルコ人父から認知された子は、出生時から当然にトルコ国籍を取得するものと解される。 (4)小括以上のとおり、諸外国の国籍取得制度についてみると、英国やオ ランダのように、現在も認知のみでは国籍取得を認めない国があり、比較法的にみても、国籍法3条1項の準正要件が不合理な区別を設けたものということはできない。 一方、スウェーデン、デンマーク、ドイツ等のように、国籍の取得に当たり、準正を要件としない法改正がされている国もある。しかし、だからといって、国籍法3条1項が準正によって嫡出子となった子と非嫡出子との扱いを区別することの合理性が直ちに失われるわけではない。なぜなら、平成14年最高裁判決が判示するとおり、国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかは、それぞれの国の歴史的事情、伝統、環境等の要因によって左右されるものであって、準正を国籍取得の要件としない国が増加しているからといって、我が国でも直ちに同様に扱わなければいけないということにはならないからである。 まして、我が国における家族観や婚姻制度に関しては、今日でも準正子と非嫡出子との間に、親子関係に基づく我が国との結合関係の程度に類型的な相違を認めることができるのであるから、国籍法3条1項の準正要件の合理性が否定されることはない。 (一〇)条約等との関係(1)女子差別撤廃条約について原告らは、女子差別撤廃条約について、夫婦の間から生まれた子供の国籍のみならず、非婚の男女から生まれた子供の国籍についても、両性の平等が実現されなければならない旨述べ、国籍法3条1 項が女子差別撤廃条 女子差別撤廃条約について、夫婦の間から生まれた子供の国籍のみならず、非婚の男女から生まれた子供の国籍についても、両性の平等が実現されなければならない旨述べ、国籍法3条1 項が女子差別撤廃条約に違反する旨主張する。 しかしながら、昭和59年改正により、従来の父系優先血統主義を改め、父母両系血統主義を採用(国籍法2条1号)を採用するに至ったのは、我が国が女子差別撤廃条約を批准したことを契機とするものであり、父母両系血統主義を採った場合、日本国民である母の子は、父が外国人であっても、子の嫡出又は非嫡出を問わず、出生により国籍を取得するのに対し、日本国民である父の子は、母が外国人であれば、出生時に父子関係が確定している場合でなければ、出生により日本国籍を取得しないとするのでは均衡を欠くことから、国籍法3条1項の準正による国籍取得の制度が設けられたものである。 女子差別撤廃条約の趣旨に沿って国籍法を改正し、その結果、準正による嫡出子と非嫡出子との間で国籍取得の要件が異なることになったとしても、かかる区別は合理的なものである以上、女子差別撤廃条約違反の問題は生じないことは明らかである。 (2)B規約について原告らは、B規約24条1項が、「すべての児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、財産又は出生によるいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国による措置についての権利を有する。」と定めていることをもって、国籍法3条1項がB規約に違反する旨主張するものと思われる。 しかしながら、同項は、保護の措置における差別の撤廃を求めているものであり、非嫡出子に嫡出子と全く平等な地位と同等の権利を与えることまでも要請しているものではないと解されている。 また、B規約2 しかしながら、同項は、保護の措置における差別の撤廃を求めているものであり、非嫡出子に嫡出子と全く平等な地位と同等の権利を与えることまでも要請しているものではないと解されている。 また、B規約24条3項は、「すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。」と定めているが、同項は、現状では子供が無国籍のために権利を享有・行使することができないこと、社会や国から低い保護しか与えられないことなどを防止する目的で規定されており、締約国に対してその領域内で生まれたすべての子供にその国の国籍を与えることを義務付けているわけではないと解されている。 したがって、B規約24条1項、3項を根拠に、国籍法3条1項がB規約に違反するとする原告らの主張は失当である。 (3)児童の権利に関する条約について原告らは、国籍取得における非嫡出子差別は、児童の権利に関する条約2条及び7条に違反している旨述べ、国籍法3条1項が児童の権利に関する条約に違反する旨主張する。 しかしながら、同条約2条1項は、「締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。」と規定し、また、同条2項は、「締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意 見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。」と規定しているところ、これらの規定が、国籍取得における嫡出子と非嫡出子との取扱いの違いについてまで規定しているとは解されないとされている。 また、同条約7条1項は、「児童は、出生 当な措置をとる。」と規定しているところ、これらの規定が、国籍取得における嫡出子と非嫡出子との取扱いの違いについてまで規定しているとは解されないとされている。 また、同条約7条1項は、「児童は、出生の後直ちに登録される。 児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。」と規定し、また、同条2項は、「締約国は、特に児童が無国籍となる場合を含めて、国内法及びこの分野における関連する国際文書に基づく自国の義務に従い、1の権利の実現を確保する。」と規定しているところ、これらの規定は、無国籍児童の一掃を目的としたものであり、無国籍児ではない原告らに対して憲法14条1項を超えた利益を保護するものではない。 したがって、同条約2条及び7条を根拠に、国籍法3条1項が同条約に違反するとする原告らの主張は失当である。 (4)自由権規約委員会及び児童の権利委員会の懸念について原告らが主張する自由権規約委員会の懸念については、日本政府がB規約40条1項(b)に基づき行った第4回報告中、B規約24条に関してのものである。 また、同じく原告らが主張する児童の権利委員会の懸念については、日本政府が児童の権利条約44条1項(b)に基づき行った第2回報告中、児童の権利に関する条約第7条に関してのものである。 B規約24条及び児童の権利に関する条約7条について、国籍法3条1項がこれらの規定に違反するものでないことは、前述のとおりである。 また、原告らが主張する上記両委員会の各国政府からの報告書に対する最終所見は、締約国の国内機関による条約解釈を法的に拘束する効力は有しないものであり、もとより我が国の裁判所による条約解釈を法的に拘束する効力を有しているものではな 会の各国政府からの報告書に対する最終所見は、締約国の国内機関による条約解釈を法的に拘束する効力は有しないものであり、もとより我が国の裁判所による条約解釈を法的に拘束する効力を有しているものではないとされている。 なお、原告らは、英国は、2002年11月7日、英国国籍法を改正し、父子関係の証明によって、英国人父と外国人母の非嫡出子も、生来的な英国国籍の取得が認定されるようになった旨主張する。 しかし、2005年に被告が調査した結果、1981年英国国籍法は現在も有効であって、出生による国籍取得に関する改正はなく、英国国籍を有しない子が、出生後に、英国人父からの認知により当然に英国国籍を取得することはなく、英国国籍のない子が出生後に英国国籍を取得するためには、登録、養子縁組及び父母の婚姻(準正)の三つの方法がある。 (5)小括以上のとおり、原告らが主張する各条約を根拠とする主張には、いずれも理由がない。 (一一)平成14年最高裁判決の補足意見について原告らは、国籍法3条1項が憲法14条1項に違反することの論拠 として、平成14年最高裁判決における3名の裁判官の補足意見を挙げる。 上記補足意見における2名の裁判官は、「その父母が婚姻関係にない場合でも、母が日本人であれば、その子は常に日本国籍を取得することを容認しているのであるから、法自身、婚姻という外形を、国籍取得の要件を考える上で必ずしも重要な意味を持つものではない、という立場を採っていると解される。そして、法2条1号によれば、日本人を父とする非嫡出子であっても、父から胎児認知を受ければ、一律に日本国籍を取得するのであって、そこでは親子の実質的結合関係は全く問題にされてはいない」ことを指摘し、国籍法3条1項が準正を非嫡出子の国籍取得の要件とした部分は、憲法14条1項に違反 ければ、一律に日本国籍を取得するのであって、そこでは親子の実質的結合関係は全く問題にされてはいない」ことを指摘し、国籍法3条1項が準正を非嫡出子の国籍取得の要件とした部分は、憲法14条1項に違反する疑いが極めて濃い、との意見を述べている。 しかしながら、国籍法2条は、国籍の安定性の要請という観点から、その出生時点において日本国民との間に法律上の親子関係が生じている者について生来的に国籍を認めるとしたものであるが、同法3条1項は、出生時に日本国民の嫡出子である子との均衡を図ることを目的として新設された制度であるから、法律婚尊重主義という我が国の基本的な法政策に照らし、同項が父母の婚姻をも国籍取得の要件としたことには十分合理性が認められるというべきである。 その上、準正子と非嫡出子の父子関係は、前記のように、法制度上、前者の関係が後者の関係より強いものとされているなど、同法3条1項が前者の場合のみ同項による国籍取得を認めたことに合理的な理由 のあることは前記のとおりである。 二争点2(国籍法3条1項の届出要件の充足)について 原告らの主張(一)(1)国籍法3条1項の定める準正要件、すなわち、両親の婚姻を子の国籍取得の要件とすることが憲法14条1項違反であり、かつ、同規定の合憲限定解釈によって、「婚姻」要件のみを無効とすることとなるならば、届書の記載事項を定める国籍法施行規則1条4項のうち、3号の「国籍を取得すべき事由」としては、日本国籍を有する父による認知の事実の記載をもって足りることとなる。また、それを証する書類としても、父による認知が記載された戸籍謄本を添付することをもって足りることとなる。 したがって、国籍法3条1項の準正要件、すなわち、両親の婚姻の要件が違憲無効であるならば、日本国民である父の認知をもって同項の よる認知が記載された戸籍謄本を添付することをもって足りることとなる。 したがって、国籍法3条1項の準正要件、すなわち、両親の婚姻の要件が違憲無効であるならば、日本国民である父の認知をもって同項の国籍取得要件を充足することになるのであるから、届書には認知の事実を記載し、かつ、これを証する日本国民である父の戸籍謄本その他の書類を添付することによって適法な届出となるものである。 (2)原告P1及び原告P10以外の原告らの国籍取得届出においては、「国籍を取得すべき事由」として、日本国民である父から認知された事実を記載し、かつそれを証する書類として、日本国民である父の認知の事実が記載された戸籍謄本を提出した。その余は、国籍法施行規則1条が規定する要件をすべて充足している。 よって、原告P1及び原告P10以外の原告らについては、国籍法3条1項の届出が適法に行われたものである。 (3)原告P1及び原告P10については、以下のような経緯があるため、いずれも社会通念上国籍取得の届出と同視し得る行為があったものと見るべきである。 ア原告P1は、平成17年3月9日、親権者母と共に弁護士を伴って、千葉地方法務局館山支局に出頭し、対応した支局長に対し、国籍取得届出を行いたい旨を申し出た。支局長が「両親の婚姻がない」ことを理由に受理はできないと回答した。これに対し、同行した弁護士が、受理伺いなどの形でいったん受付をした上で後日不受理とするという扱いもある、現に東京都や神奈川県ではそのような扱いが行われた旨を申し述べ、重ねて届出書の受領を要請した。これに対して、上記支局長は、そのような扱いをするところもあるかもしれないが、当支局としては、書類を受領し後日不受理とすることもできない旨返答した。そのため、原告P1、親権者母及び同行した弁護士は、これ 対して、上記支局長は、そのような扱いをするところもあるかもしれないが、当支局としては、書類を受領し後日不受理とすることもできない旨返答した。そのため、原告P1、親権者母及び同行した弁護士は、これ以上交渉を継続しても書類を受領させることは不可能であると考え、やむなく届書の提出を断念し、届書のコピーを交付して退出した。 イ原告P10は、平成17年2月25日、親権者母と共に弁護士を伴ってさいたま地方法務局越谷支局に出頭し、対応した職員に対し、国籍取得届出を行いたい旨を申し出た。これに対し、職員は、両親の婚姻がないことを理由に受理はできない旨回答した。 これに対し、同行した弁護士が、同行した趣旨を説明して重ねて国籍取得届書及び証明書類の受領を求め、かつ受領ができないのであれば、不受理通知を発行したほしい旨申し述べたところ、職員は、書類を受領することもできないし、後日不受理通知を発するという処理もできない旨返答した。そのため、原告P10、親権者母及び同行した弁護士は、これ以上交渉を継続しても書類を受領させることは不可能であると考え、やむなく届書の提出を断念して退出した。 ウ以上のとおり、原告P1及び原告P10は、いずれも国籍取得届出を行いたい旨繰り返し申し出、かつ同行した弁護士により受理伺いなどの形でいったん受付をした上で不受理とする扱いの提案さえ行った。しかるに、これに対する各法務局担当者の対応は、被告が指摘する本件通達第1、4(2)にすら反し、弁護士による提案すら許否しているものである。 国籍法3条1項のうち、婚姻要件が違憲無効であり、認知を理由とする届出により国籍取得が認められるならば、原告P1及び原告P10の上記各届書提出行為はいずれも要件を充足した適法な届出行為であり、届書及び証明書類の受領すら許否した各法務局の対 り、認知を理由とする届出により国籍取得が認められるならば、原告P1及び原告P10の上記各届書提出行為はいずれも要件を充足した適法な届出行為であり、届書及び証明書類の受領すら許否した各法務局の対応は不適法なものとなる。しかるに、届書を受領しない限り、いかにそれが違法であっても、届出に係る法律関係が発生し得ないとするのは著しく不当であり、行政の恣意的な対応を放置することとなる。したがって、本件においては、原告P1及び原 告P10については、いずれも社会通念上国籍取得の届出と同視し得る行為があったと見るべきである。 (4)以上により、原告らについては、いずれも形式的な届出要件を充足しているものというべきである。 (二)口頭による届出(原告P1及び原告P10)について(1)口頭による有効な国籍取得届出行為が可能であることア国籍法3条1項は、国籍取得届の手続について、「法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができる。」と規定し、届出の方式について法律による限定はない。したがって、法定の要件を満たし、かつ届出の意思が確定的に表示されているならば、口頭による届出行為も法律上有効かつ適法に行うことが可能である。そして、口頭による届出において届出要件すべての充足を書面によって証明させるのは背理であるから、届出行為の本質的事項、すなわち、届出の内容ないし目的(本件でいえば国籍の取得)及び届出人の特定が本人の申告若しくは提出書類で確認できれば、口頭による届出は有効に成立するものというべきである。そのときに確認し得ないその余の要件は、後日の追完によることで足りる。 イまた、被告自身が書面によらない口頭での届出行為を適法なものとして認めた先例も存在する。 フィリピン人女性と日本国民である男性の間の子について、その出生 要件は、後日の追完によることで足りる。 イまた、被告自身が書面によらない口頭での届出行為を適法なものとして認めた先例も存在する。 フィリピン人女性と日本国民である男性の間の子について、その出生前に日本国民である男性が胎児認知届をしようとしたが、 書類の不備を理由に届書の受理を許否され、日本国籍を取得できなかったため、出生後の平成5年4月に日本国籍の確認を求めて広島地方裁判所に提訴した事件で、1996年11月18日、国は、子の出生前に日本国民である男性による口頭での胎児認知届があったことを認め、国籍法2条1号による国籍取得を認めた(甲第13号証「国籍法における婚外子の平等処遇」第1項第2段落及び注(1)、甲第14号証平成8年11月19日付け朝日新聞朝刊広島版)。なお、法律上は、認知届は届書の提出によって行う旨明記されている(民法781条、戸籍法60条)。 このように被告は、法律上その方式が明記されている届出についてさえ、口頭による届出が有効に行い得ることを認めているのであり、届出行為の方式が法律上限定されていない国籍取得届について口頭で行い得ることは法律上明らかである。 よって、原告P1及び原告P10については、口頭による国籍取得届出行為があったか否かが問題となる。 ウ(ア)戸籍法60条が認知届は届書の提出によるものとする一方、同法27条は、届出の方法について書面又は口頭で行うことができるとし、同法37条は、口頭による届出の方式等について規定し、同条3項において口頭による認知届を認める趣旨の規定がある。被告は、これらの規定を根拠に口頭による認知届は法律上認められているのに対し、口頭による国籍取得届は法律上認められていないから、原告P1及び原告P10について口 頭による国籍取得届を行ったとの原告らの主張は、失当である 口頭による認知届は法律上認められているのに対し、口頭による国籍取得届は法律上認められていないから、原告P1及び原告P10について口 頭による国籍取得届を行ったとの原告らの主張は、失当であると批判する。 しかしながら、以下に述べるとおり、この批判は的はずれである。 (イ)戸籍法27条及び37条1項、2項の内容を詳しく見ると、以下のとおりである。 戸籍法37条1項、2項は、口頭による届出の方式について規定する。その内容は、届出人が市町村役場に出頭して届書に記載すべき事項を陳述し、市町村長は、この陳述を筆記して日付を記載したものを届出人に読み聞かせ、かつ届出人に署名押印させる。 すなわち、同法27条が予定する「口頭による届出」とは、市町村役場の窓口に赴いて口頭で届出をしたい旨を申し立てる行為をすべて許容するものではなく、同法37条1項、2項に明確に規定された一定の限定された方式を備えたものに限って「口頭による届出」として許容しているのである。 (ウ)前述した事案(甲第13及び第14号証)は、子の父である日本国民である男性が子の出生前に胎児認知の届出をしようとしたところ、これを拒否された事案であり、戸籍法37条1項、2項の「口頭による届出」の要件を充足していないことは明らかである。嫡出推定が働くため、当時の戸籍実務では、書面であれ口頭であれ、胎児認知はできない事案であったはずで あり、また、そもそも口頭による届出が成立していたならば裁判にならなかったはずである。したがって、同事案で父による口頭での認知届があったとしているのは、決して同法37条に規定する要件を充足した届出をいっているのではなく、正に同法の規定していない口頭での申出行為を口頭での届出として認めたものにほかならない。 したがって、同法27条及び37条が口頭 決して同法37条に規定する要件を充足した届出をいっているのではなく、正に同法の規定していない口頭での申出行為を口頭での届出として認めたものにほかならない。 したがって、同法27条及び37条が口頭による認知届を認め、他方で、口頭による国籍取得届を認める規定が存在しないことをもって、原告P1及び原告P10についての口頭での国籍取得届の成立を否定する被告の主張は、的はずれであり、失当である。 (2)原告P1及び原告P10について口頭による国籍取得届出行為の存在ア原告P1は、平成17年3月9日、親権者母であるP3及び弁護士と共に、千葉地方法務局館山支局を訪れ、対応した支局長に対し、日本国民である父であるP4から認知を受けたことに基づき国籍取得届を行う旨を告げるとともに、届書及び必要書類(原告P1の外国人登録原票記載事項証明書、P3の外国人登録原票記載事項証明書、原告P1の認知が記載されたP4の戸籍謄本、改正原戸籍謄本、原告P1の出生証明書及びその翻訳文)を提示した。 これに対し、上記支局長は、原告P1らの上記届出の意思の内 容を了解し、かつ提示書類によって原告P1らの人定及びP4から認知された事実を確認した上で、両親の婚姻が成立していないことを理由に届書の受領を許否した。これに対し、原告P1らは、不受理証明書の交付を求めたが、同支局長は、これも許否した。 ただし、後日の確認のために、原告P1らが持参した国籍取得届書のコピーを受領した。 イ原告P10は、平成17年2月25日、親権者母であるP12及び弁護士と共に、国籍取得届のための必要書類(原告P10の外国人登録原票記載事項証明書、P12の外国人登録原票記載事項証明書、原告P10の認知が記載されたP14の戸籍謄本、原告P10の出生証明書及びその翻訳文)を持参してさいたま地方 要書類(原告P10の外国人登録原票記載事項証明書、P12の外国人登録原票記載事項証明書、原告P10の認知が記載されたP14の戸籍謄本、原告P10の出生証明書及びその翻訳文)を持参してさいたま地方法務局越谷支局を訪れ、対応した職員に対し、上記書類を示して、日本国民である父であるP14から認知を受けたことに基づき国籍取得届出を行いたい旨を申し出た。これに対し、職員は、原告P10らの上記届出の意思の内容を了解し、かつ提示書類によって原告P10らの人定及びP14から認知された事実を確認した上で、両親の婚姻が成立していないことを理由に届書の受領を許否した。これに対し、原告P10らは、不受理証明書の交付を求めたが、担当職員は、これも許否した。 ウ以上のとおり、原告P1及び原告P10は、いずれも日本国民である父の認知を理由とする国籍取得届を口頭で行ったものである。このことは、両原告らが外国人登録原票記載事項証明書、戸 籍謄本、出生証明書等の必要書類一式を事前に準備し、当日持参、提示していること、両原告らが弁護士を同行したこと、不受理証明書の交付を要求していること等からも明らかである。 また、上記各法務局職員が、上記各原告らの口頭による国籍取得届での意思を認識理解したことも、上記の事実関係から明らかである。 よって、原告P1及び原告P10について、口頭による適法有効な国籍取得行為がなされたことは明らかである。 エなお、仮に口頭での国籍取得届出行為が法律上有効に行い得るとしても、原告P1及び原告P10については、いずれも届出に伴い必要な書類の提出がされていないので、やはり届出行為の有効性は認められないとの反論があり得る。 しかしながら、届出行為については、その意思が明確であり、届出の理由も本人の説明内容から確認でき、合理的期間内に必要 出がされていないので、やはり届出行為の有効性は認められないとの反論があり得る。 しかしながら、届出行為については、その意思が明確であり、届出の理由も本人の説明内容から確認でき、合理的期間内に必要書類の追完を期待することができる場合には、これを直ちに不適法として排斥すべきではない。殊に、本件においては、上記原告らは必要書類を整えて持参し実際に提示したにもかかわらず、対応した職員がその受領を許否したため、提出できなかったのであるから、不提出による不利益を原告P1及び原告P10の側に課すことは極めて不当である。したがって、必要書類の不提出を理由に有効な届出行為の存在を否定することは許されない。 被告の主張 (一)国籍取得の届出が適法なものであることを要すること国籍法3条2項は、「前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本国籍を取得する。」と定めるところ、規則1条は、届出の手続を定めており、その届出はこれを満たした適法なものである必要がある。 この届出は、法務局等(以下「受理機関」という。)に自ら出頭して行うべきものとされ、受理機関において受付事務が行われることになるところ、受理機関は、国籍取得の届出が適法なものである限り、必ず受付をしなければならないが、届書の記載内容に不備があり、又は添付書類を欠くなどの理由から適法な届出とは認められないときは、これを受け付けないことは正当な取扱いというべきである。 そこで、実務上、受理機関が受付手続を行うに当たっては、届出人の提出すべき書類がそろっているか否か、届書の記載が整っているか否かを点検し、書類が不足する場合には完備させ、記載に不備がある場合には補正させた上、適法な届出であると認められるときに受け付ける取扱いがされている(昭和59年11月1日付け法務省民五第5506号各 かを点検し、書類が不足する場合には完備させ、記載に不備がある場合には補正させた上、適法な届出であると認められるときに受け付ける取扱いがされている(昭和59年11月1日付け法務省民五第5506号各法務局長、地方法務局長あて法務省民事局長通達(以下「本件通達」という。)第1、2(2))。 ただし、窓口での混乱を避けるため、届出が適法でないことが明らかな場合であっても、届出人が強いて受付を求める場合には、いったん届出の受付をし、後日、届出が適法な手続によってされていない又は国籍取得の条件を備えているものとは認められない旨の通知をする ことがある(本件通達第1、4(2))。 なお、本件通達は、上記届書の様式も定めており(本件通達付録第1号様式。以下「1号様式」という。)、原告P1及び同P10以外の原告らから提出された届書は、同様式によるものであった。 (二)原告P1及び原告P10以外の原告らについて国籍法施行規則1条4号は、届書に「国籍を取得すべき事由」を記載し、「国籍取得の条件を備えていることを証するに足りる書類」を添付すべきことを定めるところ、上記「国籍を取得すべき事由」及び「国籍取得の条件」が、法に定められた実体的な国籍取得要件に該当する具体的事実関係を意味することは明らかである。 ところが、原告P1及び原告P10以外の原告らについては、両原告らが主張する各日、受理機関に各原告らの法定代理人が出頭し、1号様式による届書が提出されたものの、各届書における「国籍を取得すべき事由」欄の記載は、国籍法3条1項に定める準正要件に該当する事実関係を欠いており、また、準正要件を満たしていることを証する書面も何ら添付されていなかった。 上記原告らが、国籍法3条1項に定める準正要件を実体的に欠くことは、両原告らも自認するとおりであり、両原告らの を欠いており、また、準正要件を満たしていることを証する書面も何ら添付されていなかった。 上記原告らが、国籍法3条1項に定める準正要件を実体的に欠くことは、両原告らも自認するとおりであり、両原告らの届書は、その記載内容に不備があり、かつ、添付書類を欠くものであって、適法な届出と認められないものであった。 (三)原告P1及び原告P10について原告P1及び原告P1母は、平成17年3月9日、弁護士と同行の 上、千葉地方法務局館山支局に来所し、国籍取得届の受付を求めたが、同支局係官が、国籍法3条1項の要件を満たさない記載内容の国籍取得届を受け付けることはできないと説明したところ、原告P1母らは、強いて国籍取得届の受付を求めることなく退出した。 また、原告P10及び原告P10母は、同年2月25日、弁護士と同行の上、さいたま地方法務局越谷支局に来所し、国籍取得届の受付を求めたが、同支局係官が、国籍法3条1項の要件を満たさない記載内容の国籍取得届を受け付けることはできないと説明したところ、原告P10母らは、強いて国籍取得届の受付を求めることなく退出した。 国籍取得の届出は、これにより、その時点において国籍取得という法的効果を生じさせるものであるところ、以上の事実関係によれば、原告P1及び原告P10については、社会通念上そのような効果を生じさせる国籍取得の届出と評価し得る事実がないといわざるを得ない。 (四)口頭による届出(原告P1及び原告P10)について(1)戸籍法は、口頭による届出を認めていること原告らの指摘するとおり、民法781条は、「認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。」と定め、戸籍法60条は、「認知をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。」と定めているが、届出の通則 、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。」と定め、戸籍法60条は、「認知をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。」と定めているが、届出の通則(第四章第一節)として、同法27条は、「届出は、書面又は口頭でこれをすることができる。」と規定している。同条は、届出が書面又は口頭のいずれによることもできることを明らかにした規定で あって、報告的届出又は創設的届出のいずれにも適用されるとされている。 そして、同法37条は、口頭による届出の手続等について規定しており、認知については、口頭による届出を代理人によってすることはできないとされている(同条3項)。 以上のとおり、戸籍法上の届出については、法律上口頭での届出が認められている。 (2)国籍法は、口頭による届出を認めていないこと一方、国籍法上の届出については、国籍法19条によって国籍の取得に関する手続について必要な事項を定めることを委任された国籍法施行規則1条3項(同規則3条で準用する場合を含む。)において、届出は「書面によってしなければならない。」と定めている。 これは、届出意思の確認と届出の事務処理を適正迅速に行うため、書面による要式行為とされたものであり、口頭による届出は無効であるとされている。 原告らは、国籍取得届の手続につき、口頭による届出により、届出の内容ないし目的及び届出人が特定できれば足り、その余の要件は後日の追完によることで足りると主張するが、かかる主張は、同規則を無視した独自のものであり、失当である。 国籍法3条2項は、「前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。」と定めるところ、その届出は同規則1条所定の各手続を満たした適法なものでなければならないこ とは明らかである。 (以上 「前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。」と定めるところ、その届出は同規則1条所定の各手続を満たした適法なものでなければならないこ とは明らかである。 (以上)
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