令和2(行ウ)66 手続却下処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年4月28日 東京地方裁判所
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令和3年4月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(行ウ)第66号手続却下処分取消等請求事件口頭弁論終結日令和3年3月3日判決原告ヴェニアム,インク. 同特許管理人弁理士矢口太郎千且和也被告国 同指定代理人笠間那未果石川健太大江摩弥子今福智文尾﨑友美 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求特許庁長官が令和元年8月15日付けでした,特願2018-553340号についての平成30年6月12日付け提出の国内書面に係る手続の却下の処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約(以下「特許協力条約」という。)に基づき国際特許出願(以下「本件国際特許出願」という。)をした原告が,特許法(以下「法」という。)184条の4第1項が定める優先日から2年6月の国内書面提出期間内に同条第3項所定の明細書及び請求の範囲の翻訳文(以下「明細書等翻訳文」という。)を提出することができなかったこと いう。)184条の4第1項が 定める優先日から2年6月の国内書面提出期間内に同条第3項所定の明細書及び請求の範囲の翻訳文(以下「明細書等翻訳文」という。)を提出することができなかったことについて,同条4項の正当な理由(以下,単に「正当な理由」という。)があるとして国内書面に添付して明細書等翻訳文を特許庁長官に提出したにもかかわらず特許庁長官がこの国内書面に係る手続を却下した処分は違法 であると主張して,同却下処分の取消しを求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定することができる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)(1) 本件国際特許出願と特許庁の却下処分等 ア米国デラウェア州の法律に基づき設立された法人である原告は,平成28年9月21日(国際出願日),米国における特許出願を優先権の基礎となる出願とし,発明の名称を「移動体のネットワークとインターフェースするためのシステムおよび方法」とする発明につき,特許協力条約に基づき,同条約2条(ⅺ)の優先日(以下,単に「優先日」という。)を平成27年9月22 日とし,米国特許商標庁を受理官庁として,外国語(英語)により国際出願をした(PCT/US2016/052920。以下「本件国際出願」という。)。 本件国際出願は,同条約4条(1)(ⅱ)の指定国に日本国を含むものであったことから,法184条の3第1項により,前記国際出願日にされた特許出 願(特願2018-553340号。本件国際特許出願)とみなされた。 イ本件国際特許出願についての法184条の4第1項所定の国内書面提出期間(以下「本件国内書面提出期間」という。)は, 願(特願2018-553340号。本件国際特許出願)とみなされた。 イ本件国際特許出願についての法184条の4第1項所定の国内書面提出期間(以下「本件国内書面提出期間」という。)は,優先日である平成27年9月22日から起算して2年6月の期間であり,その末日は平成30年3月22日であったが,原告は,同条3項所定の明細書等翻訳文を,同日まで に提出しなかった(以下「本件期間徒過」という。)。 これにより,本件国際特許出願は,同項の規定により,取り下げられたものとみなされた。 ウ原告は,特許庁長官に対し,平成30年6月12日付けで,法184条の5第1項所定の国内書面及び明細書等翻訳文を提出するとともに,本件期間徒過については正当な理由がある旨記載した回復理由書(以下「本件回復理 由書」という。)を提出し,同月13日差出しで,同回復理由書を補足するため,証拠書類1~同36(甲7~42)を内容とする手続補足書を提出した。(甲1,2)エ特許庁長官は,本件国際特許出願に対し,法184条の5第2項の補正命令(以下,単に「補正命令」という。)を発することなく,平成31年4月 3日付けの却下理由通知書(同月9日発送)により,原告に対し,本件期間徒過につき正当な理由があるとはいえず,本件手続は法184条の4第4項に規定する要件を満たしていないため,本件国内書面提出期間の経過後にされた本件手続は,特許庁に係属していない出願に対して行われた不適法な手続であるとして,却下する旨の通知をし,その後,令和元年8月15日付け (同月20日到達)で,同却下理由通知書に記載した理由により,本件手続を却下する手続却下の処分(以下「本件却下処分」という。)をした。(甲3,4)オ原告は,令和2年2 15日付け (同月20日到達)で,同却下理由通知書に記載した理由により,本件手続を却下する手続却下の処分(以下「本件却下処分」という。)をした。(甲3,4)オ原告は,令和2年2月19日,本訴を提起した。 (2) 本件期間徒過に至った経緯 ア原告から委任を受けた米国のMHM特許事務所(以下「本件特許事務所」という。)は,平成27年9月22日,原告の指示に基づいて,米国特許商標庁に本件国際出願の基礎出願の1つである米国特許仮出願(62/222,145。以下「米国特許仮出願1」という。)をした。また,本件特許事務所における出願等の期限の一括管理を行う部署であるドケット管理部署が,本 件特許事務所で使用している特許期限管理システムであるThomsonIP Managerversion 3.4(以下「IPマネージャー」という。)上の米国特許仮出願1の期限管理ファイルに出願日を入力したことにより,当該入力された出願日に基づいて,米国特許本出願等に関する出願期間の末日(平成28年9月22日)及びそのリマインダーを担当特許弁護士及び補助者事務員に対して送付する日がIPマネージャーによって自動生成された。(甲7) イ本件特許事務所は,平成27年12月16日,原告の指示に従って,米国特許商標庁に本件国際出願の基礎出願の1つである米国特許仮出願(62/268,188。以下「米国特許仮出願2」という。)をした。また,ドケット管理部署がIPマネージャー上の米国特許仮出願2の期限管理ファイルに出願日を入力したことにより,当該入力された出願日に基づいて,米国特許 本出願等の出願期間の末日(平成28年12月16日)及びそのリマインダーを担当特許弁護士及び補助者事務員に対して送付する日が 願日を入力したことにより,当該入力された出願日に基づいて,米国特許 本出願等の出願期間の末日(平成28年12月16日)及びそのリマインダーを担当特許弁護士及び補助者事務員に対して送付する日がIPマネージャーによって自動生成された。(甲8)ウ本件特許事務所は,平成28年4月1日,原告の指示に従って,米国特許仮出願1及び2を優先権の基礎となる出願とし,米国特許商標庁に米国特許 本出願(15/088,602。以下「米国特許本出願1」という。)をした。また,ドケット管理部署は,IPマネージャー上の米国特許本出願1の期限管理ファイルに出願日を入力した。 その際,米国特許本出願1の期限管理ファイルには,米国特許仮出願1の出願日であって,優先日である平成27年9月22日を基準として,本件国 際出願の出願期間の末日(平成28年9月22日)及びそのリマインダーを担当特許弁護士及び補助者事務員に対して送付する日がIPマネージャーによって自動生成された。(甲9)エ本件特許事務所は,平成28年4月14日,原告の指示に従って,米国特許商標庁に米国特許本出願1の継続出願である米国特許本出願(15/09 8,542。以下「米国特許本出願2」という。)をした。 また,ドケット管理部署は,同月15日,IPマネージャー上の米国特許本出願2の期限管理ファイルにその出願日を入力した。そして,米国特許本出願2の期限管理ファイルの「Parent」(基礎出願)欄には,優先日(平成27年9月22日)を含む米国特許本出願1に関する情報が記載された。(甲10)オ本件特許事務所の本件国際出願の担当特許弁護士であるA(以下「A弁護 士」という。)は,平成28年4月20日,原告から,米国特許本出願2に基づく本件国際出願 が記載された。(甲10)オ本件特許事務所の本件国際出願の担当特許弁護士であるA(以下「A弁護 士」という。)は,平成28年4月20日,原告から,米国特許本出願2に基づく本件国際出願をすることについて確認を求める電子メールを受信した。 カ A弁護士は,同日,原告に対し,米国特許本出願2は既に米国特許商標庁に出願済みであり,米国特許本出願2に基づいて,優先日を米国特許仮出願 1の出願日である平成27年9月22日とする本件国際出願を米国特許商標庁に提出する旨の電子メールを送信した。(甲11)キ本件特許事務所の通常の業務工程では,担当特許弁護士が出願人から国際出願の書類提出に関する指示を受けた時点で,担当特許弁護士又は担当補助者事務員は,ドケット管理部署に国際出願用の新規の期限管理ファイルを作 成するよう依頼することになっていたが, 国際出願手続及び各国への国内移行手続を担当する補助者事務員であるBは,コミュニケーション上の過誤により,上記オ及びカの内容を理解していなかったことから,本件国際出願用の新規の期限管理ファイルをIPマネージャーで作成することについて事前にドケット管理部署に依頼していなかった。 ク A弁護士は,平成28年9月20日,IPマネージャーが自動生成した本件国際出願の出願期間のリマインダーを受け取り,当該出願期間の末日が同月22日であることを認識したことから,Bに対して,電子メールにより,本件国際出願に関する出願書類の米国特許商標庁への提出状況を確認した。 (甲14)。 ケ Bは,原告とA弁護士との間で,米国特許本出願2に基づき,米国特許商 標庁を受理官庁として国際出願をすることが決定したことを理解していなかったため,上記クのA弁護士からの電 ケ Bは,原告とA弁護士との間で,米国特許本出願2に基づき,米国特許商 標庁を受理官庁として国際出願をすることが決定したことを理解していなかったため,上記クのA弁護士からの電子メールを,米国特許仮出願1を優先権の基礎となる出願としてする国際出願の出願書類の米国特許商標庁への提出状況を確認するものと思い込み,米国特許仮出願1の内容に基づいて国際出願用の明細書の体裁を整えて,A弁護士に電子メールで送付した。 コ国際出願についてA弁護士を補佐する特許弁護士C(以下「C弁護士」という。)は,上記ク及びケの電子メールのカーボンコピー(CC)に含まれていたため,Bの誤解に気付き,平成28年9月21日,提出すべき国際出願は米国特許本出願2の内容に基づく出願であり,米国特許本出願2は米国特許仮出願1及び2並びに米国特許本出願1を基礎とする優先権の主張を伴う 出願であることを電子メールでBに伝えた。(甲14)サ Bは,平成28年9月21日,上記コのC弁護士からの電子メールによって,本件国際出願の内容を正しく理解し,米国特許本出願2の内容に基づいて国際出願用の明細書の体裁を整える作業を行うと同時に,ドケット管理部署に所属する補助者事務員のDに本件国際出願用の新規の期限管理ファイ ル(整理番号●(省略)●。以下「本件期限管理ファイル」という。)をIPマネージャーで至急作成するように依頼した。 シ Dは,平成28年9月21日,Bからの依頼に基づいて,本件期限管理ファイルをIPマネージャーで作成し,出願人,優先権を主張する出願の出願番号及び優先日を含む国際出願に関する情報をIPマネージャーに入力したが, 本件期限管理ファイルの「Parent」(基礎出願)欄に,優先日として米国特許仮出願1の ,優先権を主張する出願の出願番号及び優先日を含む国際出願に関する情報をIPマネージャーに入力したが, 本件期限管理ファイルの「Parent」(基礎出願)欄に,優先日として米国特許仮出願1の出願日である平成27年9月22日と入力すべきところ,誤って米国特許仮出願2の出願日である平成27年12月16日と入力した(以下「本件誤入力」という。)。そして,本件誤入力によって,IPマネージャー上,誤った優先日に基づいて算出された30か月の国内移行期間の末日(平成3 0年6月16日)が本件期限管理ファイルに自動生成された。(甲16) ス Bは,平成28年9月21日,自ら準備した本件国際出願の手続に必要な書類について,C弁護士による最終確認を受けた後,本件国際出願を米国特許商標庁に提出した。本件国際出願は,米国特許仮出願1及び2並びに米国特許本出願1及び2を優先権主張の基礎とする国際出願として受理された。 (甲17,乙5) セドケット管理部署は,平成28年9月22日,Bから本件国際出願の出願書類及び出願の電子受領書の写しを受領した。本来であれば,本件国際出願の期限管理ファイルの作成を担当したDが当該提出済みの出願書類及び出願の電子受領書の写しに基づいて,出願番号等の情報を本件期限管理ファイルに入力するはずであったが,同人は,病気のためオフィスに来ていなかっ た。そこで,ドケット管理部署における期限管理業務全般をモニターすることを主な業務とする補助者事務員であるEが,Dの業務を代行して,本件国際出願の出願日,出願番号等の情報を本件期限管理ファイルに入力したが,その際に本件誤入力を見過ごした。 ソ本件特許事務所においては,国内移行をするとの出願人からの指示を受領 した時点で,案件担当の特許 願番号等の情報を本件期限管理ファイルに入力したが,その際に本件誤入力を見過ごした。 ソ本件特許事務所においては,国内移行をするとの出願人からの指示を受領 した時点で,案件担当の特許弁護士や補助者事務員は,ドケット管理部署に対して,国内移行期限管理ファイルをIPマネージャーで作成するよう指示することになっており,平成30年3月15日,同部署は本件期限管理ファイルの情報に基づいて,本件国際出願の日本における国内移行用の期限管理ファイル(以下「本件国内移行期限管理ファイル」という。)をIPマネージャー で作成した。 その際,本件国際出願の優先日として,本件期限管理ファイルには誤った優先日(平成27年12月16日)が入力されていたにもかかわらず,ドケット管理部署はこれに気付かず,本件国内移行期限管理ファイルに本件期限管理ファイルの情報をそのまま転記し,その結果,本件国内移行期限管理ファ イルに誤った優先日が入力され,かかる誤った優先日に基づく誤った国内移 行期限,すなわち誤った国内書面提出期間満了日(平成30年6月16日)がIPマネージャー上で自動生成された。 タ Bは,平成30年4月12日,原告の日本における代理人であるユアサハラ法律特許事務所(以下「日本代理人事務所」という。)に対し,本件国際出願の日本における国内移行手続の指示書を電子メールで送信したところ,同 事務所から,既に国内書面提出期間を徒過している旨の電子メールを受信したことにより,本件期間徒過が発覚した。(甲19,20) 3 争点(1) 正当な理由の有無(争点1)(2) 本件国際特許出願につき補正命令を発しなかったことが憲法違反に当たる か否か(争点2)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1( (1) 正当な理由の有無(争点1)(2) 本件国際特許出願につき補正命令を発しなかったことが憲法違反に当たる か否か(争点2)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(正当な理由の有無)について(原告の主張)(1) 法184条の4第1項の趣旨 特許庁の「期間徒過後の救済規定に係るガイドライン【四法共通】(平成28年4月1日改訂版)」(甲43,以下「ガイドライン」という。)は,「出願人等が講じていた措置が,状況に応じて必要とされるしかるべき措置(以下『相応の措置』という。)であったといえる場合に,それにもかかわらず,何らかの理由により期間徒過に至ったときには,期間内に手続をすることができ なかったことについて『正当な理由』がある」(甲43・17頁)としている。 ここにいう「状況」とは,外国語特許出願の翻訳文提出に対する救済措置の場合,外国における出願人の具体的期限管理状況であると解すべきである。 (2) 本件で期間徒過の原因となった事象(以下「本件事象」という。)ア本件特許事務所における管理状況 原告が本件国際出願及び国内移行手続を委任した本件特許事務所は,知的 財産に関わる出願手続及び訴訟に特化した法律事務所であり,72名の特許弁護士,4名の弁理士,50名超のスタッフ,及び20名の契約社員が在籍している。 本件特許事務所では,担当特許弁護士と,パラリーガルを含む補助者事務員が,IPマネージャーで作成された各特許出願案件の期限管理ファイル,及 びIPマネージャーによって自動生成された各特許出願案件の提出期限のリマインダーに基づいて,各特許出願案件の期限を確認する業務工程が確立されており,このような厳重な期限管理体 管理ファイル,及 びIPマネージャーによって自動生成された各特許出願案件の提出期限のリマインダーに基づいて,各特許出願案件の期限を確認する業務工程が確立されており,このような厳重な期限管理体制を取ることにより,一度も提出期間を徒過することなく,特許出願手続の業務を行ってきた。 イ本件国際出願に関する従前の管理状況 本件国際出願及び国内移行手続については,特許弁護士A弁護士と,補助者事務員(パラリーガル)であるBが担当しており,また,IPマネージャーにおける本件国際出願の期限管理ファイルの作成については,ドケット管理部署に所属する補助者事務員(パラリーガル)であるDが担当していた。 本件国際出願が優先権を主張する米国特許仮出願1及び2,米国特許本出 願1及び2並びに本件国際出願については,本件特許事務所で定められた業務工程に従って提出期限が管理されていた。 そして,本件国際出願については,PCT国際特許出願を含む外国出願に関する提出期限日(すなわち,最先の出願である米国特許仮出願1の出願日から1年後の平成28年9月22日)に関するリマインダーが担当特許弁護 士及び補助者事務員(パラリーガル)に対して適切に送付されていたのであり(甲12,13),本件国際出願が優先権を主張する米国特許仮出願1及び2,米国特許本出願1及び2並びに本件国際出願については,本件特許事務所で定められた一定の業務工程に従って提出期限が管理されていた。 ウ本件事象は予測できないものであったこと DとEは,PCT国際出願及びPCT国際出願の国内移行出願を含む外国 特許出願の期限管理にそれぞれ23年という長年の経験ある補助者事務員(パラリーガル)であり,その長い経験の中 DとEは,PCT国際出願及びPCT国際出願の国内移行出願を含む外国 特許出願の期限管理にそれぞれ23年という長年の経験ある補助者事務員(パラリーガル)であり,その長い経験の中でこれまで一度も同様の問題を起こしたことはない。 今回の期限徒過は,①Dが,本来であれば,IPマネージャーにおける本件国際出願の期限管理ファイルの「Parent」(基礎出願)欄に,本件国際出願 の基礎出願として最先の出願の出願番号(すなわち,米国特許仮出願1の出願番号)及びその優先日(すなわち,米国特許仮出願1の出願日である平成27年9月22日)を入力すべきところ,D自身の錯誤により,米国特許仮出願2の出願番号(62/268,188号)及び優先日(平成27年12月16日)を誤って入力してしまったのにもかかわらず,その事実に気づか なかったこと,②入力ミスが起きた翌日(平成28年9月22日),Dが病気のためオフィスに来ていなかったため,Eが,Dの業務を代行して国際出願日,出願番号等の情報を期限管理ファイルに入力したが,本件国際出願の期限管理ファイルが通常の業務工程に従って出願前に事前に作成されたものではなく,C弁護士とBによる本件国際出願の出願準備と並行して作成さ れたという事情を知らず,上記Dの優先情報に関する入力ミスを見過ごしてしまったこと,③その入力ミスの結果,IPマネージャーによって誤った優先日に基づいて誤った30か月の移行期限(平成30年6月16日)が自動生成されていたことに気付かなかったこと,が重なって偶発的に起きた事象である。 (3) 本件に関して講じた措置が「相応の措置」であったこと特許庁は,原告が期限徒過を防ぐための相応の措置をとっていなかったと認定するが,以下のように,原告は ある。 (3) 本件に関して講じた措置が「相応の措置」であったこと特許庁は,原告が期限徒過を防ぐための相応の措置をとっていなかったと認定するが,以下のように,原告は,普段から期限徒過を防ぐために適切な人員,システム,工程に基づいて期限管理を行うなど相応の措置を講じていた。本件事象は,補助者個人の偶発的で予想不可能な錯誤によるものであり,原告が相 応の措置をとっていなかったことに基づくものではない。 ア措置を講ずべきは補助者であったことガイドライン,3.1.5(5)「補助者を使用し業務を行っている場合」の項には,当該期間徒過の原因となった事象の発生前に講じた措置が相応の措置ということの要件として,①補助者として業務の遂行に適任な者を選任していること,②補助者に対して的確な指導及び指示をしていること,③補 助者に対して十分な管理・監督を行っていることが挙げられているところ,以下のとおり,原告は,上記各要件を満たしている。 (ア) 補助者として業務の遂行に適任な者を選任していること(上記①)Dは,大手特許事務所において過去23年もの経験を有する,経験豊富な特許専門の補助者事務員であり,本件特許事務所への入所に当たって その適格性が入念に選抜され,十分な経験を有すると判断された者である。 Dは,米国特許仮出願からPCT国際出願,そして国内移行に到るまでの期限管理の業務をA弁護士の管理監督の下に行っており,各特許出願案件の絶対期限に向けて業務が適切に遂行されるよう設けられた事務所の業務工程に従っていた。Dは,熱心に業務に取り組んでおり,本件事象が生 じるまで,本件特許事務所で問題が生じたことは一度もなかった。 したがって,原告が選任し 遂行されるよう設けられた事務所の業務工程に従っていた。Dは,熱心に業務に取り組んでおり,本件事象が生 じるまで,本件特許事務所で問題が生じたことは一度もなかった。 したがって,原告が選任したDは,補助者として業務の遂行に適任な者であった。 (イ) 補助者に対して的確な指導及び指示をしていること(上記②)及び補助者に対して十分な管理・監督を行っていること(上記③) Dの業務を適切に管理監督するために,通常は,案件担当のA弁護士及び補助者事務員のBによって絶対期限等を含むIPマネージャー上の期限が何重にも確認されている。すなわち,出願人から新規の国際出願の提出に関する指示を受領した段階で,A弁護士及びBの指示に基づいて,Dは新規の国際出願の期限管理ファイルをIPマネージャー上に作成し,A弁護 士の指示に基づいて,IPマネージャーの「Bibliographic(書誌事項)」セ クションに案件の整理番号及び出願人等の基本的情報,「Parent(基礎出願)」セクションにParentNumber(基礎出願番号),ParentFilingDate(基礎出願日),FirstFilingDate(最初の出願日)等を適切に入力する。 そして,IPマネージャーでの入力後,国際出願の出願準備をする際にも, A弁護士(又は補佐役のC弁護士)及びBが,Dによって入力されたIPマネージャーの国際出願の期限管理ファイルの情報と優先権を主張する出願の出願番号及び優先日を含む優先情報とを照合させることによって再度確認することになっている。 その上,Dの通常の期限管理業務は,ドケット管理部署における期限管 理業務全般をモニターすることを主な業務とする補助者事務員であるEによっても適切 度確認することになっている。 その上,Dの通常の期限管理業務は,ドケット管理部署における期限管 理業務全般をモニターすることを主な業務とする補助者事務員であるEによっても適切に行われているか確認されている。Eの主な業務は,Dによって入力・作成されたIPマネージャーの案件情報をダブルチェックすることである。さらに,DがBから受け取った米国特許商標庁に提出した出願書類及び出願の電子受領書の写しに基づいて,国際出願日,出願番号等 の情報を期限管理ファイルに入力した後も,EによってIPマネージャーの情報をダブルチェックされることになっていた。 このように,原告は,補助者に対して的確な指導及び指示(上記②)及び十分な管理・監督(上記③)を行っていた。 イ原告の講じていた措置が相応の措置であったこと 本件期間徒過は,以下のとおり,経験豊かな特許弁護士の監督の下,ほぼ完全ともいえるドケット管理体制を持つ本件特許事務所において,国際出願期限間際に出願書類とドケッティング(ファイル作成)作業が異なる補助者により同時並行的に進められるという緊急事態の下,補助者の偶発的かつ予測不可能な錯誤により生じたものであり,原告が本件事象の発生前に講じた 措置は,「相応の措置」であった。 (ア) 通常であれば,ドケット管理部署の補助者事務員であるDは,提出期限の前にあらかじめ新規の国際出願の期限管理ファイルを作成し,担当特許弁護士であるA弁護士がその期限管理ファイルの情報に基づいて,PCT国際出願の明細書の作成及び優先権主張期限を管理する体制が確立していた。それゆえ,もし,優先日の入力ミスがあっても,それにより優先権 主張期限だけでなく30か月の国内移行期限が計算されるから,今回 際出願の明細書の作成及び優先権主張期限を管理する体制が確立していた。それゆえ,もし,優先日の入力ミスがあっても,それにより優先権 主張期限だけでなく30か月の国内移行期限が計算されるから,今回のように優先権主張期限が正しく認識されている状態で30か月期限が誤っているという状況は発生し得ない。 しかし,本件では,Bによる本件国際出願の手続に必要な書類の準備と,A弁護士の補佐をしていたC弁護士による本件国際出願の手続に必要な 書類の最終確認が,Dによる本件国際出願に関する新規期限管理ファイルの作成と並行して行われるという緊急状況下にあったため,優先権主張期限は正しく認識されて正しく国際出願がされたにもかかわらず,Dが錯誤により米国特許仮出願2の優先日を誤って入力してしまったために,30か月の国内移行期限が誤って計算されたものである。 (イ) ドケット管理部署は,出願日翌日の平成28年9月22日,米国特許商標庁に提出した本件の出願書類及び出願の電子受領書の写しをBから受け取った。本来であれば,本件の期限管理ファイルの作成を担当したDが,本件特許事務所における通常の業務工程に従い,提出済みの出願書類及び出願の電子受領書の写しに基づいて,国際出願日,出願番号等の情報を期 限管理ファイルに入力するはずだったが,この日は病気のためオフィスに来ていなかったため,ドケット管理部署における期限管理業務全般をモニターすることを主な業務とする補助者事務員であるEが,Dの業務を代行して国際出願日,出願番号等の情報を期限管理ファイルに入力し,本件の期限管理ファイルを更新した。しかし,Eは,本件の期限管理ファイルが 通常の業務工程に従って出願前に事前に作成されたものではなく,C弁護 士とBによる本件 理ファイルに入力し,本件の期限管理ファイルを更新した。しかし,Eは,本件の期限管理ファイルが 通常の業務工程に従って出願前に事前に作成されたものではなく,C弁護 士とBによる本件の出願準備と並行して作成されたという事情を知らず,上記優先情報に関する入力ミスを見過ごしてしまったものである。 (ウ) 以上のとおり,本件事象は,専ら補助者事務員であるD及び病欠のDを引き継いで業務を行った同じく補助者であるEという各個人の多重的な錯誤が生じたため発生し,かつ発見できなかったものである。このような 事情がなければ,本件事象が発生したとしても,本件特許事務所のIPマネージャーを用いた特許弁護士による管理指導体制の下では正しい優先権主張期限(1年のPCT出願期限)が認識されている限り,正しい優先日に修正されていたはずであるので,原告が本件に関して当該事象の発生前に講じた措置は,「相応の措置」であったというべきである。 ウ本件に関して本件事象の発生後に講じた措置が「相応の措置」であったことA弁護士等は,日本において本件の国内移行の手続期間を徒過したことを知った平成30年4月12日の直後から,即座に問題の究明と本件の国内移行手続を救済するための最善の努力を行っているものであり,出願人等が本 件事象発生後に講じた措置は,ガイドライン3.1.4(2)の「システムの不具合等による誤った期限の告知の場合」における「救済が認められる可能性のある事例」の「期間管理用のシステムの不具合等により誤った期限が告知された場合であって,その事実を知った日(知るべきであった日を含む。)には,既に当該手続の所定の期間が徒過していたとき。」に近い事例である と考えられるため,ガイドラインに従った「相応の措置 知された場合であって,その事実を知った日(知るべきであった日を含む。)には,既に当該手続の所定の期間が徒過していたとき。」に近い事例である と考えられるため,ガイドラインに従った「相応の措置」というべきものであった。 (4) 特許庁の判断が誤りであること特許庁は,本件期限徒過について「正当な理由」がないと判断したが,この判断は誤りである。 ア特許庁の判断は,結局のところ,単に補助者の人為的ミスを補助者,同僚, 担当特許弁護士が発見できなかったことをもって相応の措置を講じていないと結論付けているものであり,本件特許事務所及び担当特許弁護士が「状況により必要とされる相当な注意」を払っていたかという具体的な「状況」,すなわち原告における具体的な期限管理状況を一切検討していない。すなわち,本件救済措置の審理においては,本来なら,当該補助者の入力ミスは相 応の措置を講じていないことに基づくものであるかを認定しなければならないにもかかわらず,本件却下処分においては,当該入力ミスが発生したことをもって相応の措置をとっていなかったと認定しているにすぎない。このような理論によれば,どのような期限徒過も救われず,特許法条約及びそれに基づいて規定された法184条の4第1項の立法趣旨にも反することに なる。 本救済制度の趣旨は,従来の制度では厳しすぎてほとんど誰も救済されない状況に鑑みて,「正当な理由」の要件を定めて救済要件を緩和したものであるのに,特許庁の認定は,正当な理由を一切勘案していないのであるから,本件却下処分の認定は誤りであり取り消されるべきである。 イ正当な理由の評価は,米国における基準によって判断すべきこと「正当な理由」は,「状況により必 ないのであるから,本件却下処分の認定は誤りであり取り消されるべきである。 イ正当な理由の評価は,米国における基準によって判断すべきこと「正当な理由」は,「状況により必要とされる相当な注意」を当事者が払っていたかを基準として,換言すると,当事者の規範意識を基準として判断すべきであり,原告及び利害関係人は,いずれもアメリカ合衆国において,実務を行っていることから,「正当な理由」の評価もアメリカ合衆国の実務 に基づいて判断すべきである。そして,以下の米国での法律的基準によれば,本件期限の徒過につき,正当な理由があることは明らかである。 弁護過誤法の専門家である米国弁護士ジョン・スティールが作成した本件鑑定書によると,本件事務所については,①米国で多くの出願を扱う特許法律事務所であること,②経験豊富なパラリーガル及びドケッティング(期限 管理)担当事務員からなるチームを擁するとともに最新の情報を織り込んだ ガイドブックを有していること,③期限管理に大手のソフトウエア「IPマネージャー」を使用していること,④適切な期限管理工程が確立されていたことが認められ,本件事象は極めて特異的なもので,偶発的に発生したものであり,合理的に予測できるものではなかったことからすれば,米国の「相応の措置」の基準を容易に満たしているとされている。 したがって,米国の基準に照らせば,本件特許事務所のA弁護士は,「相応の措置」をとっていたというべきである。 (被告の主張)本件特許事務所において,本件期間徒過を回避するために相当な注意を尽くしていたとはいえないから,本件期間徒過に正当な理由があるとはいえない。 (1) 補助者事務員及び担当部署が相応の注意を尽くしてい 所において,本件期間徒過を回避するために相当な注意を尽くしていたとはいえないから,本件期間徒過に正当な理由があるとはいえない。 (1) 補助者事務員及び担当部署が相応の注意を尽くしていないことア Dについて本件期間徒過について,「正当な理由」があるといえるためには,本件特許事務所のドケット管理部署が本件国内移行期限管理ファイルを作成する際に転記元として用いた本件期限管理ファイルを作成したDにおいて,本件期間 徒過を回避するために相当な注意を尽くしていたといえる必要がある。すなわち,本件特許事務所の通常の業務工程に従えば,国内移行手続開始の指示を出願人から受領した時点で,案件担当の特許弁護士及び(又は)外国出願業務担当の補助者事務員は,ドケット管理部署に新規の国内移行用の期限管理ファイルをIPマネージャー上に作成するよう指示し,かかる指示を受けたド ケット管理部署は,国際出願用の期限管理ファイル上の情報をIPマネージャーに転記することによって新規の国内移行用の期限管理ファイルを作成することになっていたというのであるから,国際出願用の期限管理ファイルを作成するに当たっては,既にある期限管理ファイルの情報を転記するとしても,対象となる国際出願を正確に把握した上で国際出願用の期限管理ファイルを 作成し,正確な情報を入力することが当然に求められる。 しかし,Dは,Bからの依頼に基づいて本件期限管理ファイルをIPマネージャー上で作成した際,正しくは,本件国際出願の優先権主張の基礎となる出願のうち最先の出願である米国特許仮出願1の出願番号及び優先日を本件期限管理ファイルに入力すべきであったのに,米国特許仮出願2の出願番号(62/268,188)及び優先日(平成27年12月16日)を入 のうち最先の出願である米国特許仮出願1の出願番号及び優先日を本件期限管理ファイルに入力すべきであったのに,米国特許仮出願2の出願番号(62/268,188)及び優先日(平成27年12月16日)を入力(本件誤 入力)した。Dが本件期限管理ファイルを作成する際に,本件国際出願の優先権主張の基礎とする特許出願を正確に把握するべく,他の資料や電子メールと照らし合わせて確認する必要があったが,同人がそのような確認をした事実は一切見当たらない。 したがって,Dが本件期間徒過を回避するために相当な注意を尽くしていた とはいえない。 イ EについてEの主な業務は,Dによって入力・作成されたIPマネージャー上の案件情報をダブルチェックすることであったというのであるから,Eにおいても,本件期間徒過を回避するために相当な注意を尽くしていたといえる必要がある。 しかし,Eは,Dによる本件誤入力を一切確認していない。また,Eは,Dの業務を代行して提出済みの出願書類及び出願の電子受領書の写しに基づいて国際出願日等の情報を本件期限管理ファイルの完成後に入力して更新したというのであるが,その際にも,Eが,本件期限管理ファイルの優先日情報等を確認したことはうかがわれない。 原告は,本件国際出願の出願書類の準備と本件期限管理ファイルの作成が同時並行で行われ,Eは当該事情を知らなかったため,本件期限管理ファイルの優先日情報に関する入力ミスに気付くことができなかったと主張するが,理由のいかんを問わず,EはDによって本件期限管理ファイルに入力された情報を確認しなければならなかったのであるから,原告の主張は理由がない。 したがって,Eが本件期間徒過を回避するために相当な注意を尽くしていた て本件期限管理ファイルに入力された情報を確認しなければならなかったのであるから,原告の主張は理由がない。 したがって,Eが本件期間徒過を回避するために相当な注意を尽くしていた とはいえない。 ウドケット管理部署について本件特許事務所においては,本件国内移行期限管理ファイルに入力された優先日の情報に基づきIPマネージャー上で自動生成された30か月の国内移行期限に従って各担当者にリマインダーが送信され,本件国際出願の期間管理を していたというのであるから,本件国内移行期限管理ファイルを作成したドケット管理部署(又は同部署における担当者)において,本件期間徒過を回避するために相当な注意を尽くしていたといえる必要がある。 しかし,ドケット管理部署は,Dによって誤入力された本件期限管理ファイルの情報(甲16参照)に基づいて本件国内移行期限管理ファイルを作成し,本 件国内移行期限管理ファイルの作成に際して,転記元の本件期限管理ファイル上の優先日をはじめとする情報が正確であるかについて,他の資料や電子メールと照らし合わせて確認していない。 したがって,ドケット管理部署が本件期間徒過を回避するために相当な注意を尽くしていたとはいえない。 エ BについてDに本件期限管理ファイルの作成を依頼したのはBであるから,Bは,本件期限管理ファイルの作成にあたってDが誤入力することがないよう,正確な情報を確実に伝える必要があった。そして,Bは,Dに本件期限管理ファイルの作成を依頼した日と同じ平成28年9月21日,同日午前11時48分のC弁 護士からの電子メール(甲14参照)で指摘されるまで,正しくは本件国際出願が米国特許本出願2の内容に基づくものであるところ,米 依頼した日と同じ平成28年9月21日,同日午前11時48分のC弁 護士からの電子メール(甲14参照)で指摘されるまで,正しくは本件国際出願が米国特許本出願2の内容に基づくものであるところ,米国特許仮出願1の内容に基づくものであると思い込んでいたというのであるから,Bは,仮に原告の主張のとおり早急に対応すべき状況下であったとしても,本件国際出願には,優先権主張の基礎となる出願が複数あるため,取り違えが発生しないよう,D に国際出願の期限管理ファイルの作成を依頼するに際して,同人が国際出願の 内容を正確に理解できる確実な方法で伝達する必要があることを十分理解していたはずである。 しかしながら,原告は,BがDに本件期限管理ファイルの作成を依頼した際に,「IPマネージャーで至急作成するように依頼した」と主張するだけで,具体的にBが本件国際出願の情報(優先権主張の基礎となる出願の出願番号及び 優先日を含む。)をDにどのように伝えたのか,何ら明らかにしておらず,Bにおいて,Dが本件国際出願の内容を正確に理解できる確実な方法で伝達したとはいえない。 したがって,Bも,本件期間徒過を回避するために相当な注意を尽くしていなかったといわざるを得ない。 (2) 本件特許事務所が組織として相当な注意を尽くしていたとはいえないことア本件特許事務所においては,IPマネージャー上に期限管理ファイルを作成し,入力された情報に基づいて自動生成された期限に合わせてリマインダーが送付され,このリマインダーを用いて期限管理を行っていたというのであるから,そうであれば,本件特許事務所には,組織として,本件期間徒過を 回避するべく,期限管理ファイルの情報の正確性を確保するのに必要な措置を講じることが求められ 管理を行っていたというのであるから,そうであれば,本件特許事務所には,組織として,本件期間徒過を 回避するべく,期限管理ファイルの情報の正確性を確保するのに必要な措置を講じることが求められる。 しかし,本件特許事務所は,上記のような措置を一切講じていない。すなわち,本件において,担当者及び担当部署は,IPマネージャー上の期限管理ファイルに情報を入力(転記)する際に,他の資料と照合して入力内容を確認 しておらず,また,正確な情報入力の前提として,ファイル作成の対象となる案件を明確に伝達する必要があるところ,担当特許弁護士及び(又は)補助者事務員が期限管理ファイルの作成をドケット管理部署に依頼する際の伝達方法(例えば,宛先を複数人とする電子メールを用いなければならないという業務工程)も確立されていなかった。 したがって,本件特許事務所は,本件期間徒過を回避するべく,IPマネー ジャー上の期限管理ファイルの情報の正確性を確保するのに必要な措置を講じていたとは認められない。 イこの点について,原告は,本件特許事務所の通常の業務工程では,各案件の担当特許弁護士及び補助者事務員は,出願書類の確認及び作成の際に,当該出願書類に記載された優先権主張の基礎とした出願の出願番号及び優先 日を含む優先情報をドケット管理部署によって作成された国際出願用の期限管理ファイルの情報と照合することによって確認することになっていたと主張する。 しかし,原告の主張では,IPマネージャー上の期限管理ファイルの情報が正確に入力されていることを前提として,当該期限管理ファイルの情報と提 出予定の出願書類とを照合し,当該出願書類の記載が期限管理ファイルの情報と同一であるかを確認していたというだけであ 情報が正確に入力されていることを前提として,当該期限管理ファイルの情報と提 出予定の出願書類とを照合し,当該出願書類の記載が期限管理ファイルの情報と同一であるかを確認していたというだけであって,IPマネージャー上の期限管理ファイルの正確性は全く確認されていない。 また,原告は,本件国際出願の出願書類を準備していた段階では,本件期限管理ファイルの作成が同時並行で行われていたため,本件期限管理ファイ ルの情報が誤りであることに気付くことができなかったと主張するものの,本件期限管理ファイルの完成後に改めて本件国際出願の情報と照合して本件期限管理ファイルの入力内容を確認したこともうかがわれない。 (3) 以上によれば,本件特許事務所において,本件期間徒過を回避するために相当な注意を尽くしていたとはいうことはできない。 2 争点2(本件国際特許出願につき補正命令を発しなかったことが憲法違反に当たるか否か)について(原告の主張)特許庁が本件国際特許出願につき補正命令を発しなかったことは,憲法14条,31条及び22条に反するものである。 (1) 法184条の5第2項は,国際特許出願の出願人が国内書面を国内書面提出 期限に提出しない場合(同項1号),「相当の期間を指定して,手続の補正をすべきことを命ずる」ことを規定しているにもかかわらず,特許庁は,現在,日本語の国際特許出願についてのみ当該補正命令を発し,外国語特許出願については,補正命令を発しないという実務を行っている。 法184条の4第3項は,外国語特許出願に関し,国内書面提出期間(優先 日から2年6月の期間)又は翻訳文提出特例期間(国内書面提出の日から2月の期間)に明細書等の翻訳文の提出がなかった場合,「その国 84条の4第3項は,外国語特許出願に関し,国内書面提出期間(優先 日から2年6月の期間)又は翻訳文提出特例期間(国内書面提出の日から2月の期間)に明細書等の翻訳文の提出がなかった場合,「その国際特許出願は,取り下げられたものとみなす」と規定しているところ,仮に外国語特許出願について,法184条の5の第2項の補正命令による救済が認められないとすると,国際特許出願の期限徒過の救済が認められるのは,法184条の4第4項 の規定する「正当な理由」があるときのみということになるから,日本語の国際特許出願との公平に反することは明らかである。 したがって,日本語の国際特許出願と,外国語の国際特許出願との取扱いを異にすることは,著しく公平に反し,憲法14条及び31条に反している。 (2) また,外国語特許出願の出願人は,外国語特許出願につき日本語の国際特許 出願と同様の補正命令の対象とされないことや,補正期間と同期間の追認期間が得られないことによって,当該国際特許出願に関し,日本国において特許を取得できる期間を喪失させられるという,日本国における経済活動上の著しい不利益を被ることになるから,特許庁が本件国際特許出願につき補正命令を発しなかったことは,憲法22条の職業選択の自由に反する。 (3) 以上のとおり,本件却下処分は違憲であるから,取り消されるべきである。 (被告の主張)以下のとおり,本件処分は憲法に違反するものではない。 (1) 憲法14条及び31条違反の主張について外国語による国際特許出願において明細書等翻訳文が国内書面提出期間内 に提出されない場合,当該出願は取り下げられたものとみなされ(法184条 の4第3項),補正を命じる対象となるべき客体が消滅する以 特許出願において明細書等翻訳文が国内書面提出期間内 に提出されない場合,当該出願は取り下げられたものとみなされ(法184条 の4第3項),補正を命じる対象となるべき客体が消滅する以上,特許庁長官が本件国際特許出願に関し同法184条の5第2項の規定により補正命令を行わなかったことに何ら手続的瑕疵はない。 また,原告の上記主張を,外国語による国際特許出願に係る明細書等翻訳文提出手続と国内書面の提出手続における取扱いの差異を非難するものと善解 しても,両手続は,異なる趣旨に基づく別個の手続であり,法において,その取扱いに差異を設けることは,特許協力条約の規定に照らしても,不合理なものとはいえない(知財高裁平成30年12月20日判決参照)。 したがって,特許庁が本件国際特許出願について補正命令を行わなかったことが憲法14条及び31条に違反するということはできない。 (2) 憲法22条違反の主張について外国語による国際特許出願の出願人に対し,法184条の4第1項所定の期間内に明細書等翻訳文の提出を求めたからといって,そのこと自体,外国語による国際特許出願の出願人に過大な負荷を課すものではなく,また,前記(1)のとおり,外国語による国際特許出願に係る明細書等翻訳文提出手続と国内書 面の提出手続とで取扱いに差異を設けることが不合理ということはできないので,これをもって,外国語特許出願の出願人の経済活動を不合理に制限すると評価することもできない。 したがって,特許庁が本件国際特許出願について補正命令を行わなかったことが憲法22条に違反するということはできない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(正当な理由の有無)について(1) 判断基準法184条の4第 について補正命令を行わなかったことが憲法22条に違反するということはできない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(正当な理由の有無)について(1) 判断基準法184条の4第3項により取り下げられたものとみなされた国際特許出願の出願人は,国内書面提出期間内に当該明細書等翻訳文を提出することがで きなかったことについて正当な理由があるときは,その理由がなくなった日か ら2月以内で国内書面提出期間の経過後1年以内に限り,明細書等翻訳文等の翻訳文を特許庁長官に提出することができる(同条の4第4項)。同項が定める「正当な理由」があるときとは,国際特許出願を行う出願人(代理人を含む。)として,相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的にみて国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったときをいうものと 解するのが相当である(知財高裁平成29年3月7日判決・判タ1445号135頁参照)。 (2) 本件期間徒過の要因これを踏まえて本件につき検討するに,前記前提事実によれば,原告は,本件特許事務所に委任して本件国際出願及び本件国際特許出願を行ったもので あるところ,本件期間徒過は,①同事務所の補助者事務員であるDが,平成28年9月21日,Bからの依頼に基づいて本件期限管理ファイルをIPマネージャーにより作成する際,その「Parent」(基礎出願)欄に,優先日として米国特許仮出願1の出願日である平成27年9月22日と入力すべきところを,誤って米国特許仮出願2の出願日である平成27年12月16日と入力する本 件誤入力をしたため,IPマネージャー上,誤った優先日に基づき算出された国内移行期間の末日(平成30年6月16日)が本件期限管理ファイルに自動生成されたこと(前記前提事 月16日と入力する本 件誤入力をしたため,IPマネージャー上,誤った優先日に基づき算出された国内移行期間の末日(平成30年6月16日)が本件期限管理ファイルに自動生成されたこと(前記前提事実(2)シ),②翌22日にDの代わりに本件国際出願の出願日,出願番号等の情報を本件期限管理ファイルに入力したEは,本件国際出願の出願日,出願番号等の情報を本件期限管理ファイルに入力した際,本 件誤入力に気が付かなかったこと(同セ),③ドケット管理部署が,平成30年3月15日,本件期限管理ファイルの情報に基づき,本件国際出願の日本における国内移行用の本件国内移行期限管理ファイルをIPマネージャーで作成した際,本件期限管理ファイルに誤った優先日が入力されていたのに,これに気付かず,本件期限管理ファイルに記載の情報をそのまま転記したため,誤っ た優先日に基づく誤った国内移行期限(平成30年6月16日)がIPマネージ ャー上で自動生成されたこと(同ソ)によるものであると認められる。 (3) 補助者事務員等が相当な注意を尽くしたかどうかについてア本件誤入力について本件特許事務所においてはIPマネージャーを用いた期限管理がなされているところ,各国への国内移行期間の末日は,入力された優先日に基づいて 自動的に算出されて期限管理ファイルに自動生成されるのであるから,優先日を正確に入力しないと,その後の期限管理が適切に行えないことになる。 このため,優先日を正確に入力する必要性は高く,また,かかる業務は本件特許事務所における基本的な業務であるということができる。そして,本件に係る米国特許仮出願には,米国特許仮出願1及び2があり,それぞれの出 願日が異なっていたのであるから,優先日としていずれの出願日を入力 おける基本的な業務であるということができる。そして,本件に係る米国特許仮出願には,米国特許仮出願1及び2があり,それぞれの出 願日が異なっていたのであるから,優先日としていずれの出願日を入力すべきであるかを正確に把握した上で入力することが必要であったというべきである。 本件国際出願における優先日の入力の正確性を確保するためには,①国際出願手続及び各国への国内移行手続を担当する補助者事務員であるBにお いて,ドケット管理部署に所属する補助者事務員であるDに対して本件期限ファイルの作成を依頼するに当たり,優先日としていずれの出願日を入力すべきであるかを明確に伝えること,②本件期限ファイル作成のための入力を行うDにおいて,優先日としていずれの出願日を入力すべきであるかを十分に確認した上で,本件期限管理ファイルを作成すること,③本件国際出願の 担当弁護士であり,B及びDを監督・指導する立場にあったA弁護士及びC弁護士において,上記入力が正確に行われたかどうかを確認することが,それぞれ必要であった。 しかるに,本件においては,BがDに対していかなる依頼をしたかは証拠上明らかではなく,本件国際出願に係る優先日として米国特許仮出願1及び 2のいずれの出願日を入力すべきであるかについて明確に伝達・指示したこ とを示す証拠はない。そして,Bからの依頼を受けたDが,優先日としていずれの出願日を入力すべきであるかを十分に確認した上で,本件期限管理ファイルを作成したことを示す証拠も存在しない。そうすると,B及びDは,いずれも,必要な注意を尽くさず,その結果,本件誤入力が生じたものというべきである。 また,原告によれば,本件特許事務所においては,出願書類を作成・確認する際に,出願書類に記載された優先日を含む優先情 必要な注意を尽くさず,その結果,本件誤入力が生じたものというべきである。 また,原告によれば,本件特許事務所においては,出願書類を作成・確認する際に,出願書類に記載された優先日を含む優先情報を,担当弁護士及び補助者事務員が,ドケット管理部署により作成された国際出願の期限管理ファイル情報と照合することにより再確認しているとのことであるが,本件国際出願について,本件国際出願の前後において,A弁護士,C弁護士及びB がそのような照合作業を行ったと認めるに足りる証拠はない。本件国際出願については,本件期限管理ファイルの作成の依頼がその提出期限の直前となり,その出願前に出願書類に記載された優先情報とその期限管理ファイル情報とを照合する時間的な余裕がなかったとしても,同出願後に本件期限管理ファイルの情報と出願書類の照合を行うことは可能であり,それにより本件 誤入力を容易に発見し得たと考えられるが,A弁護士等はかかる照合作業を行っていない。 イ本件国際出願後のEによるチェックについて前記判示のとおり,本件国際出願の提出後,Eが本件国際出願の出願日,出願番号等の情報を本件期限管理ファイルに入力したが,同人は,その際に, 本件誤入力を発見することができなかったと認められる。原告によれば,Eの主な業務は,Dによって入力・作成されたIPマネージャーの案件情報をダブルチェックすることであったというのであるから,Eは,提出済みの出願書類及び出願の電子受領書の写しに基づいて,本件期限ファイルに本件国際出願の出願日,出願情報等の情報を入力するに当たり,その業務上,正しい 優先日を確認すべき注意義務を負っていたはずであるのに,漫然とこれを見 逃しているのであるから,原告主張のダブルチェックは機能していなかった を入力するに当たり,その業務上,正しい 優先日を確認すべき注意義務を負っていたはずであるのに,漫然とこれを見 逃しているのであるから,原告主張のダブルチェックは機能していなかったというべきである。 ウ本件国内移行期限管理ファイル作成の際のチェックについて本件特許事務所においては,平成30年3月15日,ドケット管理部署が本件期限管理ファイルの情報に基づいて,本件国際出願の日本における国内 移行用の期限管理ファイル(本件国内移行期限管理ファイル)をIPマネージャーで作成したが,本件国際出願の優先日として,本件期限管理ファイルには誤った優先日(平成27年12月16日)が入力されていたにもかかわらず,ドケット管理部署はこれに気付かず,本件国内移行期限管理ファイルに本件期限管理ファイルの情報をそのまま転記し,その結果,本件国内移行期 限管理ファイルに誤った優先日が入力され,かかる誤った優先日に基づく誤った国内移行期限,すなわち誤った国内書面提出期間満了日(平成30年6月16日)がIPマネージャー上で自動生成されたものと認められる。 このように,本件特許事務所では,国内移行期限管理ファイル作成の際に優先日を確認するという作業は行われていなかったか,行われていたとして も不十分であったというべきである。 エ以上のとおり,本件国際出願において優先日を正確に入力することは,本件特許事務所における基本的な業務であり,これを正確に入力する必要性は高かったと認められるところ,本件においては,国際出願手続及び各国への国内移行手続を担当するBから,ドケット管理部署に所属するDへの連絡が 適切であったということができず,これに基づいて本件期限管理ファイルを作成したDは本件国際出願に係る優先日として米国特許仮出 内移行手続を担当するBから,ドケット管理部署に所属するDへの連絡が 適切であったということができず,これに基づいて本件期限管理ファイルを作成したDは本件国際出願に係る優先日として米国特許仮出願1及び2のいずれの出願日を入力すべきであるかを十分に確認することなく誤った優先日を入力した上,本件国際出願に際してのA弁護士等によるチェック,本件国際出願後のEによるチェック及び本件国内移行期限管理ファイル作成 の際のドケット管理部署による優先日の事後的なチェックはいずれも行わ れなかったか不十分であったということができる。 そうすると,本件期間徒過について,原告から委任を受けた本件特許事務所の担当弁護士や補助者事務員が相当な注意を尽くしたということはできない。 (3) 本件特許事務所の組織的な態勢について ア原告は,本件期間徒過は,補助者の偶発的かつ予測不可能な錯誤により生じたものであり,原告が本件事象の発生前に講じた措置は「相応の措置」であったと主張するが,そもそも,本件国際出願に係る出願書類と本件期限管理ファイルの作成作業が異なる補助者により同時並行的に進められるという事態が生じたのは,Bが本件国際出願の内容を十分に理解していなかった からであると認められる(前提事実(2)ケ)。Bが本件国際出願の内容を十分に理解していなかった原因は証拠上明らかではないが,国際出願の担当弁護士による補助者事務員に対する指示が不適切であるか,又は補助者が業務遂行に関する知識や理解が不十分であることが原因であるものと考えられる。 イまた,国際出願手続及び各国への国内移行手続を担当するBから,ドケット管理部署に所属するDへの連絡が適切であったということができないことは前記のとおりであり,本件特許事務所において, イまた,国際出願手続及び各国への国内移行手続を担当するBから,ドケット管理部署に所属するDへの連絡が適切であったということができないことは前記のとおりであり,本件特許事務所において,国際出願手続及び各国への国内移行手続を担当する補助者事務員とドケット管理部署の補助者事務員との連絡が適切に行われ,それを担当弁護士が適切に管理・監督する態 勢が整っていたということはできない。 ウ本件特許事務所においては,国際出願書類を作成・確認する際に,当該書類に記載された優先日を含む優先情報を,担当弁護士及び補助者事務員が,ドケット管理部署により作成された国際出願の期限管理ファイル情報と照合することにより再確認することとしているとのことであるが,本件国際出 願については,A弁護士,C弁護士及びBがそのような照合作業を行ったと 認められないことは前記のとおりである。これによれば,原告が主張するような照合作業の重要性・必要性が担当弁護士や補助者事務員の間で十分に認識されて,同作業が徹底して行われていたということはできない。 エ本件特許事務所においては,Eが本件国際出願後に本件誤入力に気付かなかったように,期限管理ファイルに国際出願の出願日,出願番号等の情報を 入力する際に,出願書類と照合しつつ優先日等の正確性をチェックすることが十分に行われていたとは認められず,また,国内移行期限管理ファイルを作成する際も期限管理ファイルの情報がそのまま転記されるのみで,そこに記載された優先日等の正確性がチェックされていたとは認め難い。そうすると,本件特許事務所においては,期限管理ファイルに誤入力があった場合の チェック態勢は不十分であり,また,実際上も十分なチェックが行われていたということはできない。 オ以上のとお そうすると,本件特許事務所においては,期限管理ファイルに誤入力があった場合の チェック態勢は不十分であり,また,実際上も十分なチェックが行われていたということはできない。 オ以上のとおり,本件特許事務所においては,優先日の誤入力が起こらないようにするような補助者事務員間のコミュニケーションや担当弁護士による指導・監督が十分であるということができない上,誤入力をチェックする 態勢も十分ではなかったというべきである。 (4) 原告の主張についてア原告は,補助者として業務の遂行に適任な者を選任し,補助者に対する指導・指示や,管理・監督も適切であったと主張する。 しかし,本件期限徒過は,Bが本件国際出願の内容を十分に理解していな かったこと,BとDとの間の連絡が不十分であったこと,Dが優先日について十分な確認を行わなかったこと,Eも本件誤入力を漫然と見逃したことなど,複数の補助者事務員による優先日の入力の正確性について十分な注意が払われなかったことによるのであり,こうした複数の補助者事務員に対する担当弁護士の指導・監督も十分ではなかったというべきである。 そうすると,本件特許事務所における補助者事務員に対する指導・指示や 管理・監督が十分であったということはできない。 イ原告は,本件期間徒過は,国際出願期限の間際に出願書類と期限管理ファイルの作成が異なる補助者により同時並行的に進められるという緊急事態によるものであると主張する。 しかし,そもそも,本件国際出願について,出願書類と期限管理ファイル の作成が異なる補助者により同時並行的に進められることとなったのは,Bが本件国際出願の内容を十分に理解していなかったという本件特許事務所内の補助者事務員の知識 いて,出願書類と期限管理ファイル の作成が異なる補助者により同時並行的に進められることとなったのは,Bが本件国際出願の内容を十分に理解していなかったという本件特許事務所内の補助者事務員の知識・理解の不足又は弁護士による指導・監督態勢の不備によるものであり,また,本件国際出願に関する本件期限管理ファイルの作成の依頼がその提出期限の直前となり,その出願前に出願書類に記載され た優先情報とその期限管理ファイル情報とを照合する時間的な余裕がなかったとしても,同出願後に本件期限管理ファイルの情報と出願書類の照合を行うことは可能であり,それにより本件誤入力を容易に発見し得たと考えられるが,A弁護士等はかかる照合作業を行っていないことは前記判示のとおりである。 したがって,原告の主張する事情をもって,原告が本件期間徒過について相当な注意を尽くしたということはできない。 ウ原告は,本件において,正当な理由の有無は,米国における基準により判断すべきであると主張するが,我が国の特許法に基づく国内書面提出期間の徒過について我が国の基準が適用されるべきことは当然であり,米国の基準 を適用すべき理由はない。 (5) 小括したがって,原告が国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったことについて,正当な理由があるとは認められない。 2 争点2(本件国際特許出願につき補正命令を発しなかったことが憲法違反に当 たるか否か)について (1) 原告は,特許庁が,日本語の国際特許出願についてのみ法184条の5第2項の補正命令を発し,外国語特許出願についてはこれを発しない取扱いをしていることは,憲法14条及び31条に反すると主張する。 そこで検討するに,法184条の5 についてのみ法184条の5第2項の補正命令を発し,外国語特許出願についてはこれを発しない取扱いをしていることは,憲法14条及び31条に反すると主張する。 そこで検討するに,法184条の5第2項1号は,国際特許出願の出願人が,国内書面提出期間内に国内書面を提出しないときには,相当の期間を指定して, 手続の補正をすべきことを命ずることができる旨を規定しているが,外国語特許出願においては,国内書面提出期間内又は翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文の提出がなかったときは,その国際特許出願は,取り下げられたものとみなされ(法184条の4第3項),その場合には,もはや補正を命じる対象となる国際特許出願が消滅するのであるから,特許庁が外国語特許出願の上記 提出期間内に明細書等翻訳文の提出がない場合に,補正命令を発しないことにつき,手続的な瑕疵があるということはできない。 したがって,特許庁が本件国際特許出願について補正命令を行わなかったことが憲法14条及び31条に違反するということはできない。 (2) 原告は,特許庁が本件国際特許出願について補正命令を行わなかったことが 憲法22条の職業選択の自由に反すると主張するが,外国語特許出願の出願人に国内書面提出期間内等に明細書等翻訳文の提出を義務付けることは,外国語特許出願の出願人の職業選択とは関係がなく,その自由を制限するものということはできない。 3 結論 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 吉野俊太郎 裁判官 三井大有は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官 佐藤達文

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