主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中720日をその刑に算入する。 奈良地方検察庁で保管中の履歴書1通(同庁令和3年領第911号符号1)の偽造部分を没収する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は、カメルーン国籍を有する者で、平成29年4月頃、留学の在留資格で本邦に入国したが、平成31年2月頃から在留資格の変更を余儀なくされ、正規の方法で就労することが困難となり、そのような状況で、令和2年11月頃から、A(以下、「被害者」という。)方で同人と同居するようになった。 (罪となるべき事実)被告人は、第1 令和3年4月14日、奈良県大和郡山市(住所省略)所在のB株式会社奈良工場において、同社の従業員採用面接を受けた際、同社従業員Cに対し、氏名欄に「D」、ふりがな欄に「(Dのアルファベット)」、生年月日欄に「1994 11 03」などと記載されたD名義の偽造された履歴書1通(奈良地方検察庁令和3年領第911号符号1)を、真正に作成したもののように装って提出して行使した第2 被害者が同年7月8日、9日に現金合計約3000万円を銀行口座から出金し、同人方に保管していることを知ったことから、同人を殺害して現金を強取しようと考え、同日午後6時25分頃から同日午後10時16分頃までの間に、奈良県大和郡山市(住所省略)所在の同人方において、同人(当時56歳)に対し、殺意をもって、首を絞め るなどして窒息死させて殺害した上、同人管理に係る現金約3000万円を強取した第3 Eと共謀の上、同月12日午前4時51分頃から同日午前5時28分頃までの間に、上記被害者方において、同人(当時56歳)の死体を普通乗用自動車に積載し、同所から奈良市(住所省略)先(住所省略)交 3 Eと共謀の上、同月12日午前4時51分頃から同日午前5時28分頃までの間に、上記被害者方において、同人(当時56歳)の死体を普通乗用自動車に積載し、同所から奈良市(住所省略)先(住所省略)交差点西方約20メートル先雑木林付近路上まで同死体を運び、同雑木林に同死体を放置し、もって死体を遺棄したものである。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用)(省略)(量刑の理由)まず、量刑の中心となる強盗殺人についてみると、本件犯行態様は、同種事案の中では取り立てて悪質とまではいえないが、被告人の供述を前提にしても、すでに反応を示していない被害者の首を足で5回程踏みつけるなどしており、こうした事情は、殺意が強固であったことを示すものである。そして、一人の命が奪われた結果は、いうまでもなく重大であり、被害者の遺族らはいずれも厳しい処罰感情を示している。 また、本件犯行の経緯は、判示第2記載のとおりであるところ、困窮していたという被告人の当時の経済状況や、祖国の状況等の背景事情がある中で、極めて多額の現金がすぐそばに現れたという状況が本件犯行のきっかけになったといえ、本件は突発的な犯行といえる。しかしながら、困窮していた状況でありながらナイトクラブで遊ぶなどしていたという被告人の生活状況などに照らせば、困窮していたことなどから酌むべき点を見 出すことは困難である。さらに、被害者は、困窮していた被告人を自宅に住まわせ、同人が道路交通法違反で刑事裁判を受けた際にも、証人として被告人の身元を引き受ける旨証言していたのであり、本件犯行はそうした被害者の被告人に対する信頼を含む好意的な感情を裏切ったものともいえる。したがって、本件犯行に至った意思決定には厳しい非難が妥当する。 その後の死体遺棄についてみても、高度の計画性はない はそうした被害者の被告人に対する信頼を含む好意的な感情を裏切ったものともいえる。したがって、本件犯行に至った意思決定には厳しい非難が妥当する。 その後の死体遺棄についてみても、高度の計画性はないものの、自らが犯した強盗殺人の発覚を遅らせ、国外へ逃亡する時間を稼ぐために行ったものといえ、悪質である。さらに、判示第1の犯行もその責任は軽視できるものではない。 以上のことから、被告人の刑事責任は重大である。 そして、被告人は、公訴事実を認め、自分なりに反省の態度を示していると見受けられるものの、被害弁償はなされておらず、そのためになしうることを尽くした形跡もうかがわれないのであり、その反省が十分であるとは評価できない。以上の事情を総合すると、弁護人の主張する各事情を踏まえても酌量減軽を行うべき事情があるとはいえない。よって、同種事案の量刑傾向も踏まえ、主文のとおりの量刑とした。 (求刑-無期懲役及び主文掲記の没収)令和6年6月4日奈良地方裁判所刑事部裁判長裁判官澤田正彦裁判官木内悠介裁判官林香穂
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