平成18年1月19日判決言渡し平成16年(ワ)第20498号不公正取引差止請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告の宅急便サービスの取次店であるコンビニエンスストアに対し,郵便局局舎の一部を市場価格を著しく下回る額の賃料で貸し付け,私設郵便差出箱からの取集料を免除する等の不当な利益をもって,被告の一般小包郵便物サービスの取引所となるよう誘引してはならない。 2 被告は,株式会社ローソンの直営店又は加盟店の店舗を取次所として,被告の一般小包郵便物サービスを提供してはならない。 3 被告は,株式会社ローソンに対し,同社の直営店又は加盟店の店舗での被告の一般小包郵便物サービスの取次の委託を撤回する旨通知せよ。 4 被告は,別紙一覧表(省略)記載の料金未満の料金で被告の一般小包郵便物サービスを提供してはならない。 5 訴訟費用は被告の負担とする。 6 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,宅配便事業を営む原告が,被告は,一般小包郵便物(ゆうパック)の新しい料金体系による役務の供給によって,「不公正な取引方法」(昭和57年公正取引委員会告示第15号)6項の「不当廉売」に当たる行為を行い,かつ,株式会社ローソンに対して,郵便局舎の余裕スペースを低額の賃料で賃貸したり,ローソン店舗内の私設郵便差出箱からの取集料を免除するなどの利益を提供して,一般小包郵便物(ゆうパック)サービスの取次所となるよう誘引することなどによって,同告示9項の「不当な利益による顧客誘引」に該当する行為を行っており,そのため,原告は利益を侵害されていると主張して,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律24条所定の差止請求権に基づき,これらの 示9項の「不当な利益による顧客誘引」に該当する行為を行っており,そのため,原告は利益を侵害されていると主張して,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律24条所定の差止請求権に基づき,これらの被告の行為の差止め等を求めた事案である。 なお,原告として訴えを提起した「ヤマト運輸株式会社」は平成17年11月1日に「ヤマトホールディングス株式会社」に商号を変更し,同日,同社から「ヤマト運輸株式会社」(平成17年3月31日に設立された「ヤマト運輸分割準備株式会社」が同年11月1日に商号変更した会社)への吸収分割により貨物自動車運送事業その他すべての営業が承継されたことに伴って,原告の地位は,同社に承継されている。 1 法令の定め(1) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。 以下「独占禁止法」という。)19条は,「事業者は,不公正な取引方法を用いてはならない。」と規定しているところ,同法24条は,「第8条第1項第5号又は第19条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者は,これにより著しい損害を生じ,又は生ずるおそれがあるときは,その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる。」旨を定めている。 (2) また,上記の「不公正な取引方法」については,同法2条9項において,次のとおり定義している。 「この法律において「不公正な取引方法」とは,次の各号のいずれかに該当する行為であつて,公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち,公正取引委員会が指定するものをいう。 一不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。 二不当な対価をもつて取引すること。 三不当に競争者の顧客 であつて,公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち,公正取引委員会が指定するものをいう。 一不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。 二不当な対価をもつて取引すること。 三不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し,又は強制すること。 四相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。 五自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。 六自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し,又は当該事業者が会社である場合において,その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように,不当に誘引し,そそのかし,若しくは強制すること。」(3) そして,同項の規定を受けて,公正取引委員会は「不公正な取引方法」(昭和57年公正取引委員会告示第15号。以下「一般指定」という。)を定め,不公正な取引方法に当たる行為を指定しているが,一般指定6項及び9項においては,それぞれ次のような行為が「不公正な取引方法」に当たると定めている。 「(不当廉売) 6 正当な理由がないのに商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し,その他不当に商品又は役務を低い対価で供給し,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。」「(不当な利益による顧客誘引) 9 正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて,競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること。」 2 前提となる事実以下の事実は,原則として,当事者間に争いがない事実であるが,証拠等によって認定した事実を含むものについては,末尾に当該証拠等を掲記した。 (1) (原告)ア原告は,昭和4年2月21日に設立された小口貨物輸送等を業とする株式会社である。 ( が,証拠等によって認定した事実を含むものについては,末尾に当該証拠等を掲記した。 (1) (原告)ア原告は,昭和4年2月21日に設立された小口貨物輸送等を業とする株式会社である。 (弁論の全趣旨)イ原告は,昭和51年1月に宅急便の事業を開始し,その年間取扱個数は,昭和58年度には1億個を,平成4年度には5億個を超えて,平成15年度には約10億1115万個となり,取扱個数において33.5パーセントのシェアを,売上金ベースにおいて40.8パーセントのシェアをそれぞれ有し,いずれも業界第1位の地位にある。 (2) (被告)被告は,平成15年4月1日,中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)33条1項に規定する国営の新たな公社として,独立採算制の下,信書及び小包の送達の役務,簡易で確実な貯蓄,送金及び債権債務の決済の手段並びに簡易に利用できる生命保険を提供する業務,当該業務を行うための施設その他の経営資源を活用して行う国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展に資する業務等を総合的かつ効率的に行うことを目的として,設立された法人である。 (3) (被告における一般小包郵便物の事業の推移)被告(以下,被告設立前の郵政省又は郵政事業庁による現業の時代の事柄については,これらの主体を特に区別せず,いずれも「被告」という。)は,昭和59年に一般小包郵便物(ゆうパック)の集荷を,平成7年には一部地域で翌朝10時郵便を,平成8年には保冷郵便サービスをそれぞれ開始し,平成11年には,20キログラムまで取扱いを拡大するとともに,配達時間帯指定サービスを開始し,平成12年には配達時間帯指定サービスを夜間の時間帯に延長するなどしてきた。 小包郵便物は,信書以外の物(その物に添付する無封の添え状又は送り状を含む るとともに,配達時間帯指定サービスを開始し,平成12年には配達時間帯指定サービスを夜間の時間帯に延長するなどしてきた。 小包郵便物は,信書以外の物(その物に添付する無封の添え状又は送り状を含む。)を内容とする郵便物で,その包装の表面の見やすい所に小包なる文字を掲げたもの(郵便法(昭和22年法律第165号)30条)であり,一般小包郵便物(ゆうパック)と冊子小包郵便物とがあるが,そのうち,一般小包郵便物(ゆうパック)の年間取扱個数は,昭和57年には約8300万個であったものが,昭和63年には1億1000万個を,平成2年には1億6000万個を超え,平成15年には,1億8218万個となり,取扱個数において6パーセントのシェアを,売上金ベースにおいて6.5パーセントのシェアを有し,いずれも業界第5位の地位にある。 (甲2,10の2,乙1,2)(4) (ローポスくんの設置)ローソン店舗約7700店内には,平成15年1月1日から,「ローポスくん」の愛称で呼ばれる郵便差出箱が設置されているが,この郵便差出箱について,被告は取集料を徴収していない。 (甲7の1,甲10の2,甲51)(5) (ポスタルローソンの出店)株式会社ローソンは,被告から,郵便局舎の余裕スペースを賃借し,平成15年8月5日代々木郵便局内に「ポスタルローソン代々木局店」を,同月26日青葉台郵便局内に「ポスタルローソン青葉台局店」を,平成16年8月5日被告北海道支社内に「ポスタルローソン道庁赤れんが前店」をそれぞれ出店した。 (各店舗の開設につき,甲8,10の2)(6) (被告と株式会社ローソンとの提携)被告は,平成16年8月18日,株式会社ローソンとの間で,ローソン国内全店(同年7月末現在で7851店)を取次所として同年11月中旬ころから被告の一般小包郵便物( 被告と株式会社ローソンとの提携)被告は,平成16年8月18日,株式会社ローソンとの間で,ローソン国内全店(同年7月末現在で7851店)を取次所として同年11月中旬ころから被告の一般小包郵便物(ゆうパック)サービスを提供する旨の提携を合意し,その旨を発表した。 (7) (原告と株式会社ローソンとの業務委託契約の解消)原告は,昭和63年5月に株式会社ローソンとの間で宅急便取扱店業務委託契約を締結し,継続してきたが,同契約は,同社と被告との業務提携に伴い,平成16年8月ころ,解消された。 (甲1,11)(8) (被告総裁の平成16年11月17日の定例会見における発言)被告の代表者である日本郵政公社総裁A(以下「被告総裁」という。)は,平成16年11月17日,定例会見において,株式会社ローソンとの間で,同年8月18日に一般小包郵便物(ゆうパック)取扱いに関して合意に達し,これに基づいてローソン全店舗で一般小包郵便物(ゆうパック)の取扱いを開始すること,取扱い店舗はローソン店舗全部(同年10月末現在で7911店)であること及び開始日は同年11月18日であることを明らかにした。 また,被告総裁は,記者から,その際,「他のコンビニでのゆうパックの展開は」との質問を受け,「前からいろんなコンビニさんが,郵政と組むということについて,今後民営化していくから,いろんなポテンシャリティーというか,潜在的な何かがあるのではないか,メリットがあるのではないかということで,いろいろ関心を示していらっしゃるところがありますけれど,今のところ,具体的にどこといった話はありません。まあ,様子を見ているのではないですか。」と発言し,さらに,他のコンビニエンスストアでの展開に関連して,記者から,「公社としては,どんどん増やしていくと」という質問を受けて, いった話はありません。まあ,様子を見ているのではないですか。」と発言し,さらに,他のコンビニエンスストアでの展開に関連して,記者から,「公社としては,どんどん増やしていくと」という質問を受けて,「公社としては,よほど強く,何が何でもと言われない限り,少なくとも今のところは静かに見ていたいと思います。やっぱり,コンビニさんの業種からみると,いろんな事業展開をしたいので,向こうから御覧になる時の,民営化された後の郵政事業というのは,特に窓口ネットワークに御興味があるのだと思います。だから,何もこっちが,どなたかを排除してなんていう考えを持たなくても,いろいろ御関心が示されるし,お話は自然にあるので,それを待ってお話しする。これは,ローソンさんも含めて,民業圧迫という次元のレベルではないです。民業圧迫と言われると,はてなと思わざるを得ないというのが実情です。」と発言した。 (甲26の2)(9) (ゆうパックの従来の料金体系)原告の宅急便サービスの料金体系は,荷物の縦・横・高さの寸法の合計と重量区分ごとに料金が決定されるものであり,別紙一覧表(省略)記載のとおりとなっているほか,1個につき100円の持込割引がある。 他方,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の平成16年9月30日までの料金体系は,次の表のとおりであり,荷物の重量を主な基準として料金が決定されるものであった。 2kgまで4kgまで6kgまで8kgまで10kgまで12kgまで14kgまで16kgまで18kgまで20kgまで25kgまで30kgまで市内(注)510円630円750円810円870円930円990円1050円1110円1170円1320円1470円その他610円 30kgまで市内(注)510円630円750円810円870円930円990円1050円1110円1170円1320円1470円その他610円770円930円1010円1090円1170円1250円1330円1410円1490円1690円1890円710円870円1030円1110円1190円1270円1350円1430円1510円1590円1790円1990円820円980円1140円1220円1300円1380円1460円1540円1620円1700円1900円2100円1020円1180円1340円1420円1500円1580円1660円1740円1820円1900円2100円2300円重量あて先第2地帯第3地帯第4地帯特別料金一般小包郵便物(無料となるもの,割引を受けるもの,料金受取人払又は料金着払いとするものを除く。)の差出個数に応じたゆうパックシールをゆうパックカードに貼る。ゆうパックシールが10枚たまると,一般小包郵便物1個を無料で差し出すことができる。 なお,ゆうパックカードの有効期間は,最初の差出日から1年である。 第1地帯(注) 「市内」とは,差出郵便局の配達区域内,東京23区内又は同一市町村内のみにおいてその引受け及び配達を行うものをいう。 なお,上記表のあて先欄における地帯については,差出地の都道府県とあて地の都道府県との掛合せにより,第1地帯から第4地帯までの地帯の区別を250とおり定めていた。 (甲7の1,甲38)(10) (被告の新料金体系の設定)被告は,平成16年10月1日から,一般小包郵便物(ゆうパッ せにより,第1地帯から第4地帯までの地帯の区別を250とおり定めていた。 (甲7の1,甲38)(10) (被告の新料金体系の設定)被告は,平成16年10月1日から,一般小包郵便物(ゆうパック)の料金体系を変更して,実施している(以下,変更後の料金体系を「新料金体系」という。)。 被告の新料金体系は,従来の重量を主な基準とすることに代えて,荷物の寸法を主な基準として料金を決定するものであり,次の表の料金を基本料金(1個からの差出しに適用するサイズ別料金のものである。そのほかに,①同時又は月間10個以上差し出された場合に適用する特別料金,②同時又は月間200個以上の差出しを対象とする郵便物の重量別の区分に応じた特別料金,③重量が6キログラム又は11キログラムを超えないものに対する1か月間の差出個数及び地帯に応じた一定重量まで均一の特別料金,④年間2万個以上差し出す場合に適用する年間契約による一定重量まで均一の特別料金がある。)としているほか,持込割引(郵便局等の窓口に持ち込んで差し出した場合に1個につき100円を割り引くもの),同一あて先割引(差出日前1年以内に差し出された一般小包郵便物(ゆうパック)で同一のあて先が記載されているものについて,1個につき50円を割り引くもの)及び複数口割引(あて先が同一のものを同時に2個以上6個以下差し出した場合に,1個につき50円を割り引くもの)がある。 なお,基本料金においては,サイズごとの重量制限はなく,すべて30キログラムまでとされていた。 サイズ(注1)あて先60サイズ80サイズ100サイズ120サイズ140サイズ160サイズ170サイズ県内(注2)600円800円1000円1200円1400円1600円 60サイズ80サイズ100サイズ120サイズ140サイズ160サイズ170サイズ県内(注2)600円800円1000円1200円1400円1600円1700円第1地帯700円900円1100円1300円1500円1700円1900円第2地帯800円1000円1200円1400円1600円1800円2000円第3地帯900円1100円1300円1500円1700円1900円2100円第4地帯1000円1200円1400円1600円1800円2000円2200円第5地帯1100円1300円1500円1700円1900円2100円2300円第6地帯1200円1400円1600円1800円2000円2200円2400円第7地帯1300円1500円1700円1900円2100円2300円2500円 (注1)「サイズ」とは,縦・横・高さの合計センチメートルを指している。 (注2)「県内」とは,同一都道府県内においてその引受け及び配達を行うものをいう。 上記表のあて先欄における地帯は,次の地帯表の地帯のとおりであり,地帯表の数字は,一般小包郵便物(ゆうパック)を左側に掲げるエリア内から上欄に掲げるエリア内のあて所に差し出す場合の地域の区別を表し,1は第1地帯を,2は第2地帯を,3は第3地帯を,4は第4地帯を,5は第5地帯を,6は第6地帯を,7は第7地帯を示している。 エリア北海道東北関東東京南関東信越北陸東海近畿中国四国九州沖縄(各エリアに属する都道府県) 第4地帯を,5は第5地帯を,6は第6地帯を,7は第7地帯を示している。 エリア北海道東北関東東京南関東信越北陸東海近畿中国四国九州沖縄(各エリアに属する都道府県)北海道青森岩手宮城秋田山形福島茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川山梨新潟長野富山石川福井静岡愛知三重岐阜大阪京都滋賀奈良和歌山兵庫岡山広島山口鳥取島根香川徳島愛媛高知福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄北海道県内 東北 関東 東京 県内 南関東 信越 北陸 東海 近畿 中国 四国 九州 沖縄 県内(甲36) 3 当事者の主張 (1) 原告の主張 ア 不当な利益による顧客誘引の存在─一般指定9項該当の主張 a 被告は,株式会社ローソンに対し (甲36) 3 当事者の主張(1) 原告の主張ア不当な利益による顧客誘引の存在─一般指定9項該当の主張a 被告は,株式会社ローソンに対し,郵便局舎の余裕スペースを低額の賃料で賃貸しているなどの拠点確保の利益,将来における郵便貯金,簡易生命保険の窓口業務の委託の可能性,不当廉売に当たる低価格及びローソン店舗内の私設郵便差出箱からの取集料の免除という一般指定9項の「不当な利益」に当たる利益を提供した。 b 被告が株式会社ローソンに郵便局舎の余裕スペースを低額の賃料で賃貸して提供した「拠点確保の利益」は,次のようなものである。 すなわち,日本郵政公社法施行法(平成14法律第98号)5条は,「権利義務の承継」として,「公社法の施行の際現に旧総務省設置法第4条第79号に掲げる事務に関し国が有する権利及び義務(郵政事業特別会計,郵便貯金特別会計及び簡易生命保険特別会計がそれぞれ国の他の会計及び資金(財政法(昭和22年法律第34号)第44条に規定する資金をいう。)に対して有する権利及び義務を含む。)は,附則第2条第2項に規定するものその他政令で定めるものを除き,その時において公社が承継する。」とし,日本郵政公社法施行令(平成14政令第384号)附則3条は,「公社が承継しない権利義務」として,「日本郵政公社法施行法(以下「施行法」という。)第5条の政令で定める権利及び義務は,次に掲げる権利及び義務とする。」とし,同令附則3条1号で「郵政事業庁の所属に属する土地,建物及び工作物(その土地に定着する物及びその建物に附属する工作物を含む。)のうち,総務大臣が財務大臣に協議して指定するもの以外のものに関する権利及び義務」を,同条2号で「法の施行の際現に総務省の郵政企画管理局及び の土地に定着する物及びその建物に附属する工作物を含む。)のうち,総務大臣が財務大臣に協議して指定するもの以外のものに関する権利及び義務」を,同条2号で「法の施行の際現に総務省の郵政企画管理局及び郵政公社統括官に使用されている物品のうち総務大臣が指定するものに関する権利及び義務」を定めており,公社化の際にすべての不動産が被告に当然に承継されるわけではない。そのため,被告に属する不動産は,本来国有財産であり,余裕スペースがあるならば,これを財務省に返還して他の有効活用を図るのが当然である。しかも,被告が株式会社ローソンに賃貸した部分の賃料は,近隣の賃料相場の30パーセントから40パーセントという著しい低額である。例えば,ポスタルローソン道庁赤れんが前店については,近隣では3.3平方メートル当たり2万円の賃料であるところ,ローソンに対する賃料は3.3平方メートル当たり6000円から9000円までである。 宅配便業者がコンビニエンスストアチェーンに自己のサービスを提供するに当たって,自己の宅配便サービスの料金及び品質以外の利益を提供して取扱いを依頼する商慣習は存在しない。 このような国有財産であるべき余裕スペースを市場価格を著しく下回る額の賃料で貸し付けることは,一般指定9項の「正常な商慣習に照らして不当な利益」を提供したことに該当する。 c 被告の提供した「将来における郵便貯金,簡易生命保険の窓口業務の委託の可能性」とは,次のようなものである。 すなわち,被告総裁は,平成16年11月17日の記者会見において,「コンビニは,郵政と組めば,民営化の後,いろいろなポテンシャリティーというか,潜在的な何かがあるので,メリットがあるということで関心を示している。コンビニから見ると,民営化後の郵政事業は, いて,「コンビニは,郵政と組めば,民営化の後,いろいろなポテンシャリティーというか,潜在的な何かがあるので,メリットがあるということで関心を示している。コンビニから見ると,民営化後の郵政事業は,窓口ネットワークに興味があるのだと思う。だから,何もこっちがどなたかを排除してなんていう考えを持たなくても,いろいろ御関心が示されているし,お話は自然にあるので,それを待ってお話しする。」と発言しており,能力競争以外の要素で誘引したことは明らかである。 d 被告の提供した「不当廉売に当たる低価格」は後記のイと同じであるが,不当廉売を差し止めても,被告と株式会社ローソンとの関係は残るので,両者の関係を排除する必要があり,一般指定6項のほか,一般指定9項の「不当な利益」にも該当する。 e 被告の提供した「ローソン店舗内の私設郵便差出箱からの取集料の免除」の点は,次のようなものである。 すなわち,被告は,株式会社ローソンが平成15年1月1日にその直営店及び加盟店の店舗内に設置した約7700個の郵便差出箱からの取集料を免除しているが,この郵便箱は,ローソン店舗の来店者だけに利便を与える目的で設置され,その維持管理は株式会社ローソンが行っているから,実質的に被告が管理しているものとはいえず,私設郵便差出箱である。 私設郵便差出箱からの取集料については,設置場所が建物内であり,収集回数が少ないので,年間12万円の取集料が適用されると思われるところ,被告は,株式会社ローソンに対し,毎年12万円に7700個を乗じた9億2400万円の利益を与えていることになる。 これらの金額は多額であるうえ,郵便取集料の免除は結果として郵便という独占事業の利益を一般事業に投入して 円に7700個を乗じた9億2400万円の利益を与えていることになる。 これらの金額は多額であるうえ,郵便取集料の免除は結果として郵便という独占事業の利益を一般事業に投入していることになるから,不当であり,取集料の免除は,一般指定9項の「正常な商慣習に照らし不当な利益」の提供に該当する。 f 被告は,株式会社ローソンにbないしe記載の不当な利益を提供することによって,原告の取引相手であるローソンを誘引したものである。 仮に株式会社ローソンが取引業者であって原告の顧客でないとしても,株式会社ローソンが宅配便業者の代理商であるのは形式にすぎず,宅配便業者がコンビニエンスストアを取扱店として獲得すれば,その宅配便業者においてそのコンビニエンスストアに来店する消費者のほとんどを宅配便の顧客として獲得することができるのであるから,株式会社ローソンは,実質的には宅配便業者の顧客の塊であるとみることができる。 g 以上のとおり,被告は,株式会社ローソンにbないしe記載の不当な利益を提供することにより,平成16年11月中ころから,株式会社ローソンの直営店及び加盟店の店舗を取次所とし,株式会社ローソンを介する原告の顧客を誘引し,そうでないとしても,これらの利益の提供により,実質的に原告の顧客に不当な利益を提供し,これによって原告の顧客を誘引しているというべきである。 イ不当廉売の存在─一般指定6項の該当の主張a 「正当な理由がないのに役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し」ている場合に該当すること(a) 法人・個人を含む全体の平均価格は,原告の宅急便が683円であるのに対し,被告の新料金体系による被告の一般小包郵便物(ゆうパック) る対価で継続して供給し」ている場合に該当すること(a) 法人・個人を含む全体の平均価格は,原告の宅急便が683円であるのに対し,被告の新料金体系による被告の一般小包郵便物(ゆうパック)は605円であり,原告の宅急便よりも安い。 原告の宅急便の平成15年度の年間取扱個数は約10億1100万個であり,年間の経常利益が約347億円であるので,宅急便1個当たりの経常利益は約34.32円であり,原告以外の民間における宅配便サービスも,原告とほぼ同額の料金を徴収している。 これに対して,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の料金は,原告の宅急便の料金と比べて最低でも40円,最大で2220円も低く,これが原価を下回るものであることは明らかというべきである。 そもそも,個人向けには料金表をそのまま適用し,法人向けには物量に応じて料金表から値引きするので,個人向けと法人向けとでは,平均単価が異なり,法人向けの平均単価は,個人向けの平均単価よりも低くなるものである。原告は個人からの荷物が20パーセントであるのに対し,被告は個人からの荷物が50パーセントを占めているので,被告の平均単価は,原告の平均単価よりも高くなるはずであるにもかかわらず,被告の平均単価が,原告の平均単価よりも低いということは,被告の単価は,個人・法人とも,相当に低いとみるべきである。 宅配便においては,法人向けには物量に応じて料金表から値引きするのに対し,個人向けには料金表から値引きせずそのまま適用することから,個人向けと法人向けとでは市場が異なると考えられるとしても,少なくとも,被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパック)のサービスのうち,個人向けのサービスについては,そのまま料金表による比較が可能であり,原告の とでは市場が異なると考えられるとしても,少なくとも,被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパック)のサービスのうち,個人向けのサービスについては,そのまま料金表による比較が可能であり,原告の宅急便の料金を最低でも40円,最大で2220円下回る被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の料金が原価を下回っていることは明白である。 (b) 一般小包郵便物(ゆうパック)は,荷物の大きさや距離によって料金が異なるから,その供給に要する費用を一律いくらという形で表現することは極めて困難である。しかし,「その供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給」していることとは,その役務についての収支が継続的に著しく赤字であることと置き換えることが可能である。 被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の価格設定は,被告の企業努力によって達成した低価格ではなく,税金の免除をはじめとする種々の優遇措置,独占事業である信書事業によって得られた利益からの補てん,国の信用を背景とする郵便貯金及び簡易保険事業の利益からの調整等によって成り立っており,一般小包郵便物(ゆうパック)単独では,大幅な赤字である。 すなわち,まず,被告は,所得税,印紙税,登録免許税,法人税,都道府県民税,事業税,固定資産税,都市計画税,不動産取得税,市町村税等が非課税とされ,また,道路交通法関係において,車両通行止め,二輪自動車・自転車通行止めの規制を除外され,歩行者専用道路の通行及び駐車禁止区域での駐車を許され,さらに,貨物自動車運送事業法の適用を受けないため,事業所への自動車配置数の制限を受けず,また,農地法,都市計画法,建築基準法等の除外を受けているため,事業所の設置場所に制限を受けないなどの優遇措置がとられている。 そして,「供給に要す 業所への自動車配置数の制限を受けず,また,農地法,都市計画法,建築基準法等の除外を受けているため,事業所の設置場所に制限を受けないなどの優遇措置がとられている。 そして,「供給に要する費用」については,企業努力によらない特殊事情は考慮の外に置き,一般の独立業者が自らの責任で企業を維持するため経済上通常計上すべき費用を基準とすべきことは判例上確立している。 一般小包郵便物(ゆうパック)の事業は,歴史的にも郵便法に照らしても官の独占であったことはないうえ,信書を独占するに至った経緯からすれば,むしろ民間優先の分野である。そのため,被告は,一般小包郵便物(ゆうパック)の事業を廃止してもかまわないこととなっているから,被告に対して一般小包郵便物(ゆうパック)の事業について何ら優遇措置を講ずる必要はない。そうであるとすれば,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の事業については,民間との競争条件の平等を要求しないことを妥当とする政策目的は存在せず,被告が税金を支払うことを前提条件として判断すべきである。 被告は,被告の平成15年度決算を前提として試算をすると,固定資産税約495億5800万円,事業税の付加価値割約44億6200万円,住民税均等割り約26億7300万円が免除されており,これを加算すると最終損益が111億8300万円の赤字となる。これら税金の優遇措置による利益の合計は,約570億8000万円となるところ,これを郵便事業の中の各事業別の営業費用の割合に従って配賦すると,このうち,約52億6000万円が小包郵便物の事業の負担となるはずである。また,原告の試算によれば,被告は,駐車禁止の規制が除外される優遇措置により,約94億7753万円の費用も免れている。このように,被告の一般小包郵便物(ゆうパッ 郵便物の事業の負担となるはずである。また,原告の試算によれば,被告は,駐車禁止の規制が除外される優遇措置により,約94億7753万円の費用も免れている。このように,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)は,税金の免除をはじめとする種々の優遇措置によって成り立っており,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)単独では,赤字である。 また,被告の平成14年度及び平成15年度の郵便種類別収支によれば,小包郵便物の1個当たりの平均収支は,平成14年度では10.65円の赤字で,平成15年度も1.4円の黒字にすぎないのに対し,第一種郵便物の1個当たりの平均収支は,平成14年度で3.37円の黒字で,平成15年度も6.1円の黒字となり,第二種郵便物の1個当たりの平均収支も,平成14年度で0.21円の黒字で,平成15年度も1.5円の黒字となっている。総額でみても,小包郵便物の収支は,平成14年度で46億円の赤字で,平成15年度も10億円の黒字にすぎないのに対し,第一種郵便物の収支は,平成14年度432億円で,平成15年度も761億円となり,また,第二種郵便物の収支も,平成14年度で24億円の黒字で,平成15年度も156億円の黒字となっている。そして,被告の郵便事業には,約1693億円の長期融通と約1690億円の短期融通等の借入金があるため,年間約168億8000万円の利息を支払っている。借入金で事業を行う場合に,利息が払えなければ倒産するので,赤字か否かを判断するのには利息の支払を含めてする必要があるところ,被告の第1期事業年度(平成15年4月1日から平成16年3月31日まで)の郵便事業の営業外収支は,約149億9000万円の赤字であるから,これを郵便事業の中の各事業別の営業費用の割合に従って配賦すると,このうち約13億8000万円が小包郵便 平成16年3月31日まで)の郵便事業の営業外収支は,約149億9000万円の赤字であるから,これを郵便事業の中の各事業別の営業費用の割合に従って配賦すると,このうち約13億8000万円が小包郵便物の事業の負担となり,小包郵便物の事業の経常収支は約3億8000万円の赤字となるのに対し,同様の方法で計算した第一種郵便物の事業の経常収支は約692億3000万円の黒字となり,また,第二種郵便物の事業は約118億3000万円の黒字となるため,結果として,小包郵便物の事業の赤字は,第一種郵便物及び第二種郵便物の事業の利益で補てんされていることとなる。このように,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)は,独占事業である信書事業によって得られた利益からの補てんによって成り立っており,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)単独では,赤字であるし,営業利益のみで黒字であっても,支払利息の負担を計算に入れて計算すると赤字となる。 そのうえ,郵便事業と郵便貯金事業及び簡易保険事業との共通経費の配賦において,郵便事業への配賦が不当に少ない。すなわち,共通経費約1兆1998億円のうち約4970億円(41.42パーセント)が郵便事業に配賦されているところ,基礎年金拠出金として支払っている公経済負担約367億円のうち約204億円が郵便事業の負担であることからすれば,約55.6パーセントを郵便事業の負担とすべきであり,この配賦割合に従って,共通経費約1兆1998億円のうち郵便事業の負担とすべき部分を計算し直すと,約6670億円となり,前記4970億円との差額1700億円が不当に調整されている。これを郵便事業における小包郵便物の事情の占める営業費用の割合で配賦すると,156億6000万円の負担があるはずである。また,被告の平成15年度の貸借対照表によれば,土地 円が不当に調整されている。これを郵便事業における小包郵便物の事情の占める営業費用の割合で配賦すると,156億6000万円の負担があるはずである。また,被告の平成15年度の貸借対照表によれば,土地建物の資産合計約3兆2850億円であり,郵便業務の区分に係る貸借対照表の内訳に計上されている土地建物の資産合計約1兆8383億円であるから,被告の不動産のうち約55.9パーセントが郵便事業に割り付けられている。郵政三事業における人件費及び不動産の割合は,共通経費の適正な配賦割合を決めるに当たっての主要な指標というべきであり,原告と被告との競争条件の平等という観点からは,郵政三事業の共通経費のうち郵便事業に配賦されるべき割合は,約55.6パーセントとするのが相当である。これらの事情からすれば,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)は,国の信用を背景とする郵便貯金及び簡易保険事業の利益からの調整によって成り立っており,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)単独では,赤字である。 b 「不当に役務を低い対価で供給し」ている場合に該当すること(a) 一般指定6項後段の「低い対価」とは,市場価格を下回ることで足り,供給に要する費用を下回る必要はない。一般指定6項後段が一般指定6項前段とは別に規定されていることからすれば,一般指定6項後段には,供給に要する費用を下回らないけれども,不当性のある市場価格を下回る対価で役務を供給する場合を含むと解すべきであるからである。 個人向けの定価表で比較すれば,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)だけが,原告を含む外の宅配業者よりも低い価格であるから,被告の新料金体系は,市場価格よりも低い価格となっており,一般指定6項の「低い対価」に該当する。 (b) また,被告は,所得税,印紙税,登 ,原告を含む外の宅配業者よりも低い価格であるから,被告の新料金体系は,市場価格よりも低い価格となっており,一般指定6項の「低い対価」に該当する。 (b) また,被告は,所得税,印紙税,登録免許税,法人税,都道府県民税,事業税,固定資産税,都市計画税,不動産取得税,市町村税等が非課税とされている。また,被告は,道路交通法関係において,車両通行止め,二輪自動車・自転車通行止めの規制を除外され,歩行者専用道路の通行及び駐車禁止区域での駐車を許されている。さらに,被告は,貨物自動車運送事業法の適用を受けないため,事業所への自動車配置数の制限を受けず,また,農地法,都市計画法,建築基準法等の除外を受けているため,事業所の設置場所に制限を受けない。 しかし,被告のみがかかる優遇措置を受けているのは,不当であり,このような優遇措置によって被告の一般小包郵便物(ゆうパック)のサービスが低価格によることが可能となっていることからすると,被告の新料金体系による料金による役務の供給は,一般指定6項後段の「不当」に役務を低い対価で供給する場合に該当するというべきである。 また,被告が一般小包郵便物(ゆうパック)をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給すること又は官業である被告が民業である原告の事業を圧迫していることは,一般指定6項後段の「不当」性があるというべきである。すなわち,①被告は,前記のとおり,一般小包郵便物(ゆうパック)の役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給している。また,②被告が民業を圧迫する形で官業を肥大化させようとする動きをしていることは,そもそも国の政策に反し「不当」といえるうえ,被告は,信書事業を独占し,年賀状事業で莫大な利益をあげているところ,被告がそのような独 業を圧迫する形で官業を肥大化させようとする動きをしていることは,そもそも国の政策に反し「不当」といえるうえ,被告は,信書事業を独占し,年賀状事業で莫大な利益をあげているところ,被告がそのような独占的な利益を背景として競争すること,言い換えれば,競争分野における赤字を独占分野における利益で補てんし得る状況で競争することは,「不当」というべきである。被告の郵便事業のように官業であり,赤字は税金で補てんされるため,赤字の事業にも永続性があるような場合には,そもそも市場における競争を行う前提が欠けている。そのため,赤字になってもつぶれない事業者は,市場価格を下回る対価で競争をすることは一切許されず,そのような競争は「不当」というべきである。さらに,③一般指定6項後段は,不当性の一般規定であり,一般指定6項前段は原則として不当性が認められる一場合を例示的に規定したものと解されるから,前記①及び②の事情を併せ総合的に考慮して不当性の有無を判断することも許される。 このように,いずれにしても,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の廉売が「不当」であることは明らかである。 c 「原告の事業活動を困難にさせるおそれがあること」について個人向けに全国一律に原告と同等の宅配便サービスを提供する事業者であって,原告よりも低価格の料金を設定している事業者は,被告以外にない。 原告は,被告に追随して値下げ競争をすることは不可能であり,被告の値下げによって,原告の事業活動は困難となる。短期的には,原告は,自らの必死の頑張りで,被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパック)によるサービス供給により余り影響を受けていないようにみえるが,長期的には影響を避けられない。仮に,原告が被告との平均単価の差である78円の値下げをしたとすると,原告 る一般小包郵便物(ゆうパック)によるサービス供給により余り影響を受けていないようにみえるが,長期的には影響を避けられない。仮に,原告が被告との平均単価の差である78円の値下げをしたとすると,原告は約788億円の減収となり,赤字に転落するし,個人発の荷物だけ78円値下げしたとしても,約176億円の減収となり,赤字にはならなくても,著しい損害が生ずる。このように,原告は,被告の新料金体系によって,中長期的には,宅配便市場から撤退を余儀なくされるから,原告の「事業活動を困難にさせるおそれ」が存在するというべきであり,現に,原告は,被告に東武百貨店を奪われるなど,競争への影響が生じている。 被告が,原告よりも事業規模が大きく,その態様も全国くまなく営業所及び取次所をおいて大々的に一般小包郵便物(ゆうパック)のサービス供給を行っており,一般小包郵便物(ゆうパック)の取扱い個数も原告の宅急便の取扱個数の約2割に及ぶほか,一般小包郵便物(ゆうパック)の廉売は定価表で定めた恒久的廉売であることなども考え併せれば,被告の不当廉売行為による競争への影響は極めて甚大であり,「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」が存在する。 ウ独占禁止法24条所定の「著しい損害を生じ,又は生ずるおそれ」の存在a 不公正取引として禁じられている行為を行い,これによって被害者に対し損害賠償義務を負う者について,差止請求は排斥されるが不公正取引に該当する行為を引き続き行うことができるという事態を認めることはできないから,独占禁止法24条の「著しい損害」については,損害賠償を許容する場合よりも高度の違法性を要すると解することはできない。 独占禁止法24条の「著しい損害」の要件は,不公正取引に対する排除措置を行って不公正取引を規制する本来的な機能 ,損害賠償を許容する場合よりも高度の違法性を要すると解することはできない。 独占禁止法24条の「著しい損害」の要件は,不公正取引に対する排除措置を行って不公正取引を規制する本来的な機能を果たす機関は公正取引委員会であって,裁判所が私人からの不公正取引の差止請求を認容することによって不公正取引の規制をするのは補完的なものであるとの位置付けを明らかにするために,事件性がはっきりしているもの,すなわち,明白な損害が発生し,又は発生するおそれがある事件に限定するためのものであるから,独占禁止法24条の「著しい損害」とは,明白な損害と解するべきである。 また,被告は,国営の公社であり,郵政事業に関する制度の企画及び立案に関することが総務省の所掌事務とされていることなどから,実質的には,総務省と一体の官庁であり,このような実質的行政官庁である被告に対して不公正取引の差止請求をしている本件においては,裁判所は公正取引委員会の補完であるべしとして「著しい損害」の要件が設けられた前提条件を欠くことになるから,そのこと自体で著しい損害の存在が擬制されるべきである。 b 現実にも,原告は,被告によって,株式会社ローソン,ミニストップ株式会社及び株式会社サークルKサンクスなどの取引先であるコンビニエンスストアを奪われ,その結果,年間約1397万個の荷物を失ったし,他にも,東武百貨店を奪われ,その結果,年間約280万個の荷物を失った。 このような損害は,明確なかつ顕著な損害であり,原告は,現実に著しい損害を被っている。 c また,被告は,原告よりも,資産,売上高及び従業員数において大きな事業者であり,不公正取引について故意を有し,原告が本件訴訟を提起した後も,対象とされている行為を継続し,又は同様の行為を繰り c また,被告は,原告よりも,資産,売上高及び従業員数において大きな事業者であり,不公正取引について故意を有し,原告が本件訴訟を提起した後も,対象とされている行為を継続し,又は同様の行為を繰り返していることからしても,被告には,原告に対し,著しい損害を与える能力と意図を推認することができ,原告に「著しい損害が生ずるおそれ」があると認めるのが相当である。 d 原告は,いずれ売上げの減少を避けるため,被告に対抗して値下げをしなければならず,その結果,赤字となって,いずれ宅配便市場からの撤退を迫られるおそれがある。他方,被告は,値下げ競争によって赤字がでても,優遇措置である独占事業の利益で補てんされ,また,それでも足りない場合には,優遇措置で税金で補てんされる可能性がある。 このように,被告の前記ア及びイの行為は,いずれも,原告に宅配便市場からの撤退を迫る可能性のある著しい損害をもたらすものであり,また,被告による不公正取引は,活力ある民間の事業を阻害して独占事業者だけを残すことになるから,それ自体著しい損害を発生させるというべきである。 (2) 被告の主張ア不当な利益による顧客誘引がないこと(一般指定9項非該当)についてa 原告は,宅配便サービスの利用者を「顧客」と主張しながら,「顧客」ではない株式会社ローソンを不当な利益の提供先と主張している。 しかし,一般指定9項の「不当な利益」の提供と「顧客の誘引」との間には因果関係があること,すなわち前者が後者の手段となることが必要であるところ,原告が「不当な利益」と主張する「拠点確保の利益」,「将来における郵便貯金,簡易生命保険の窓口業務の委託の可能性」及び「店舗内の私設郵便差出箱からの取集料の免除」は,宅配便の取扱業者に提供されるものであ 「不当な利益」と主張する「拠点確保の利益」,「将来における郵便貯金,簡易生命保険の窓口業務の委託の可能性」及び「店舗内の私設郵便差出箱からの取集料の免除」は,宅配便の取扱業者に提供されるものであって,宅配便サービスの利用者である顧客に提供されるものではない。 したがって,これらの利益提供をもって宅配便サービスの利用者である顧客との間の取引を誘引することとなる余地はない。 b 一般指定9項は,取引の本来的な給付内容における価格と品質による能率競争を阻害するような付随的なものを,本来的な取引の誘引手段として,通常は大々的な広告宣伝を利用して提供することによって,本来的な取引の顧客を誘引する行為を正常な商慣習に照らして不当とされる範囲で制限する趣旨の規定であるから,一般指定9項の「不当な利益」には,本来的にかつ独自に取引の目的となるものは含まれないというべきである。 原告の主張する株式会社ローソンに対する「拠点確保の利益」,「将来における郵便貯金,簡易生命保険の窓口業務の委託の可能性」及び「店舗内の私設郵便差出箱からの取集料の免除」は,いずれも,被告と株式会社ローソンとの間において,本来的にかつ独自に取引の目的となるものであって,実際にも,これらの利益提供は,独自の取引として行われている。 したがって,これらの利益提供が正常な商慣習に照らして不当な利益の提供となる余地はない。 c(a) 原告の主張する「不当な利益」のうち,「不当廉売に当たる低価格」については,宅配便サービスの利用者である顧客にとっては,通常利益となるものと認められるけれども,不当廉売は一般指定6項で規制されているので,一般指定9項の違反を問題とする余地はない。 (b) 株式会社ローソンは,被告から一般小包郵便物(ゆう ,通常利益となるものと認められるけれども,不当廉売は一般指定6項で規制されているので,一般指定9項の違反を問題とする余地はない。 (b) 株式会社ローソンは,被告から一般小包郵便物(ゆうパック)の取扱いを打診された際,従来からの原告との取引関係を維持し,ローソン店舗において,原告の宅急便と被告の一般小包郵便物(ゆうパック)を併売する意向であったが,原告の方が,ローソンにおける併売を拒否し,株式会社ローソンとの取引を打ち切ったものである。 したがって,仮に被告が株式会社ローソンに対して原告の主張するような利益の提供を行っていたとしても,それによって,原告の顧客である宅配便サービスの利用者に対して「自己と取引するように誘引」したということはできない。 (c) 被告が株式会社ローソンに対して郵便局舎の余裕スペースを賃貸したのは,郵便局を利用する顧客の利便性向上に資するとともに,そのイメージアップを図り,新たな顧客の誘致を図る契機とするという被告自身の利益のためであり,その賃料も,付近賃貸事例に基づき適正に算出された適正なものである。 したがって,被告が,株式会社ローソンに対し,郵便局舎の余裕スペースを低額の賃料で賃貸するなどの利益を与えている事実はない。 なお,被告は,日本郵政公社法施行法5条及び日本郵政公社法施行令附則3条の規定に基づき,必要と判断された不動産を承継しており,国から承継し被告所有となった資産について,国に返還することは予定されておらず,返還に関する手続もないから,被告に属する不動産は,日本郵政公社法施行法等の規定に基づき正当に被告に承継されたものであって,国有財産ではない。 (d) 株式会社ローソンの店舗内に設置された郵便差出箱は,被告が設置した被告の する不動産は,日本郵政公社法施行法等の規定に基づき正当に被告に承継されたものであって,国有財産ではない。 (d) 株式会社ローソンの店舗内に設置された郵便差出箱は,被告が設置した被告の所有にかかる一般の郵便差出箱であって,私設郵便差出箱ではない。 したがって,被告が株式会社ローソンから取集料を徴収しないのは当然であり,被告が株式会社ローソンから取集料を徴収していないことをもって「不当な利益」の提供ということはできない。 イ不当廉売ではないこと(一般指定6項非該当)についてa 「正当な理由がないのに役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し」ている場合に該当しないことについて(a) 一般指定6項前段の「供給に要する費用を著しく下回る対価」であることの主張・立証責任は原告が負うべきであるから,原告は,供給に要する費用の費目とそれらの各金額及び積算価格を示し,被告の対価がそれを下回ることを主張・立証する必要がある。 しかるに,原告は,これらの主張・立証をしていない。 したがって,この点において,既に原告の主張は理由がない。 (b) 一般指定6項前段の「供給に要する費用を著しく下回る対価」は,市場価格を著しく下回っていることを前提としている。 宅配便市場においては,この市場価格は,様々な荷主の様々なサイズ・重量の荷物が,様々な数量,距離,時間で,その他の様々な条件によって取引されるという競争の中で,多様なものが形成されており,これを比較することは困難であるが,宅配便の売上高を取扱個数で除したことにより得られる取扱荷物1個当たりの平均単価は,これらの複雑な条件をある程度平準化して,市場における価格レベルを比較可能な方法で把握する することは困難であるが,宅配便の売上高を取扱個数で除したことにより得られる取扱荷物1個当たりの平均単価は,これらの複雑な条件をある程度平準化して,市場における価格レベルを比較可能な方法で把握する一応の目安となり得るものである。この平均単価でみると,被告の平均単価605円は,原告の平均単価683円よりも低いけれども,被告よりも市場シェアの高い佐川急便株式会社の平均単価530円や日本通運株式会社の平均単価519円よりも高く,市場の中では高価格帯に属している。 したがって,市場価格を著しく下回っているとはいえない。 なお,委託者が,個人であれ,法人であれ,また大口の委託者であれ,小口の委託者であれ,受託荷物の配送先はいずれもこれらを区別することができないから,供給に要する費用という観点からは,原告の主張のように委託者を区別して論ずる合理性はなく,本件については,個人・法人,大口・小口を区別せず,宅配便市場を全体として捉えることが合理的である。 また,原告が指摘する最大の2220円の料金差は,沖縄発着の場合の料金差を指すと思われるが,沖縄発着の一般小包郵便物(ゆうパック)の料金に関する取扱いは,政府の沖縄振興策を反映して定められていたものであり,国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展に資するという被告の社会的責務を果たすために必要とされているものである。 (c) 被告の小包郵便物の事業は,平成14年度で46億円の赤字であったものの,平成15年度には,営業収益が1686億円で営業費用が1676億円となり10億円の営業利益があり,また,平成16年度には,営業収益が2345億円で営業費用は2264億円となり81億円の営業利益があるから,黒字である。他方,被告は,平成14年度には,第一種郵便物及 となり10億円の営業利益があり,また,平成16年度には,営業収益が2345億円で営業費用は2264億円となり81億円の営業利益があるから,黒字である。他方,被告は,平成14年度には,第一種郵便物及び第二種郵便物は黒字であるけれども,第三種郵便物,第四種郵便物及び特殊取扱の郵便物はかなり赤字となっており,通常郵便物の合計でも赤字となっていたので,平成14年度においても第一種郵便物及び第二種郵便物の黒字をもって小包郵便を廉売しているということはない。 また,被告の営業実態は,郵便,郵便貯金,簡易生命保険の三事業が一体として運営されているので,費用項目にはこれらの共通的経費として支出されているものもあるが,これらの共通的経費の各事業分野への配賦については,会計監査人の監査を受けて一般に公正妥当と認められる方法によっており,郵便事業に賦課された費用を基に郵便事業内部で郵便の種類別の収支計算を行う場合についても,郵便の各種類別に要した時間や運送便に掲載した郵便物の容積を勘案するなど,一般に公正妥当と認められる方法に準じた方法によって,配賦している。 さらに,原告が主張する税制上の優遇措置は,被告が,郵便法1条により,郵便の役務をなるべく安い料金で,あまねく,公平に提供することとされていること,郵便法23条,26条及び75条の2第2項5号により第三種郵便物及び第四種郵便物について低減料金の義務を負担していること,日本郵政公社法19条により業務範囲が限定されていることなどの各種の義務を負担していることと表裏の関係にあるものであり,その均衡はとれている。ちなみに,被告は,一般の民間企業に対して認められている国民年金の基礎年金拠出金の国庫負担が認められておらず,これを負担しており,税制上の優遇措置を実質的に相殺する結果とな ,その均衡はとれている。ちなみに,被告は,一般の民間企業に対して認められている国民年金の基礎年金拠出金の国庫負担が認められておらず,これを負担しており,税制上の優遇措置を実質的に相殺する結果となっている。そして,一定の範囲で道路交通法その他の法令による規制の対象外とされている措置も,郵便配達等の円滑な遂行等に必要なものとして道路交通法その他の法令に基づいて行われているものである。 したがって,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)に係る事業は,単独でも赤字であるとはいえないし,信書事業によって得られた利益からの補てん,又は郵便貯金及び簡易保険事業の利益からの調整によって成り立っているものでもなく,また,被告に税制上の優遇措置や道路交通法の前記措置によって,原告が主張するような経済上の利益が存在することを前提に,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)に係る事業の収支を算定し,対価の不当性を判断すべきであるともいえない。 b 「不当に役務を低い対価で供給し」ている場合に該当しないことについて一般指定6項の「低い対価」は,原告の主張のように単に市場価格を下回ることでは足りず,市場価格を下回り,かつ,「供給に要する費用」を下回る必要があるというべきであるから,「供給に要する費用」を下回る必要がないとの原告の主張は誤りである。 また,一般指定6項の「不当」性は,その行為の公正な競争秩序に及ぼす影響を個別的に判断するための要件であるところ,被告は国の政策に反して民業を圧迫する形で官業を肥大化させようとする動きをしているなどの原告の主張は,単なる政治的な主張又は価値観にすぎず,不当性を基礎付ける評価根拠事実とはいえない。 そして,被告が一般小包郵便物(ゆうパック)の役務をその供給に要する費用を著し るなどの原告の主張は,単なる政治的な主張又は価値観にすぎず,不当性を基礎付ける評価根拠事実とはいえない。 そして,被告が一般小包郵便物(ゆうパック)の役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給しているものでないことは前述したとおりである。 被告が国から一定範囲で税制上の優遇措置を受け,また,郵便配達等の円滑な遂行等に必要なものとして一定範囲で道路交通法その他の法令による規制の対象外とされている措置は,法律に基づいて適法に行われている。被告には,日本郵政公社有資産所在市町村納付金が賦課されているほか,郵便法1条の規定によって,郵便の役務をなるべく安い料金で,あまねく,公平に提供する義務,第三種郵便物や第四種郵便物の低減料金の義務,日本郵政公社法19条の規定によって業務の範囲が限定されている制限などが課されており,これらの義務ないし制限と前記の優遇措置とは均衡がとれているものである(ちなみに,被告は,国民年金の基礎年金拠出金の国庫負担が認められておらず,これを被告が負担することとされているので,平成15年度における郵政事業分で204億円を負担しており,税制上の優遇措置の効果を実質的に相殺する結果となっている。)。 したがって,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の役務の提供が,「不当に役務を低い対価で供給し」ている場合に該当するとの原告の主張には理由がない。 c 「原告の事業活動を困難にさせるおそれがある」とはいえないことについて被告の平均単価は,宅配便市場における有力競争事業者である佐川急便,日本通運等よりも相当高い水準にある。原告は,これらの有力競争事業者に対して高価な価格水準を維持しながら市場における最大シェアを維持してきたのであるから,原告の6分の1しかシェア 者である佐川急便,日本通運等よりも相当高い水準にある。原告は,これらの有力競争事業者に対して高価な価格水準を維持しながら市場における最大シェアを維持してきたのであるから,原告の6分の1しかシェアを有しない被告がこれらの有力競争事業者よりも高い水準の価格で営業を行ったとしても,それによって,原告の事業活動が困難となったり,困難となるおそれが存在するということは,およそ考えられない。 また,原告は,被告が一般小包郵便物(ゆうパック)の新料金体系を導入した平成16年10月1日以降も,宅急便の営業収益及び取扱高を増大させてきており,自らも,平成17年度以降においても宅配便分野における今後の原告の利益が増大する見込みであることを予測し,公表している(例えば,平成17年2月17日に発表した「ヤマトグループレボリューションプラン2007新価・革新3か年計画」では,平成19年度の宅配便個数目標を平成15年度実績に比べ約2割増の12億個としている。)。 したがって,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の新料金体系による役務の供給によって,原告の事業活動を困難にさせるおそれがあるとはいえない。 ウ 「著しい損害を生じ,又は生ずるおそれがある」とはいえないことについてa 独占禁止法24条にいう「著しい損害」とは,差止めに値する損害であり,具体的には,事後の金銭的な損害賠償によっては救済し切れないような即時の救済を必要とする量的にも質的にも甚大な損害というべきであり,また,そのような「著しい損害」の要件は,私人による差止請求を基礎付けるものであるから,原告において存在する必要がある。 本件においても,原告は,原告が著しい損害を生じ,又は生ずるおそれがあることを立証する必要があるにもかかわらず,被告との競争によっ 付けるものであるから,原告において存在する必要がある。 本件においても,原告は,原告が著しい損害を生じ,又は生ずるおそれがあることを立証する必要があるにもかかわらず,被告との競争によってどのようにして赤字が生じ,宅急便事業から撤退するという事態を招く高度の蓋然性があるかということについて,具体的な主張・立証をしていない。 したがって,原告の主張は主張自体で失当である。 b また,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の平均単価は,佐川急便,日本通運よりも相当程度高い水準であるところ,原告は,被告よりも更に低価格のサービスを提供するこれらの事業者を相手に競争し,宅配便市場において最大のシェアを維持してきたことからすれば,宅配便市場において6パーセントしかシェアを有しない被告が,併せて40パーセント以上のシェアを占める佐川郵便及び日本通運よりも高い水準の価格で営業を行っても,原告に著しい損害が生じ,又は生ずるおそれはあるとはいえない。現に,原告は,被告が新料金体系を導入した後も,宅配便の取扱高及び営業収益を増やしており,平成17年度の通期業績の見通しでも取扱高及び売上高の増加を予測している。 したがって,被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパック)のサービスによって,原告が宅配便市場から撤退を余儀なくされる蓋然性は全くなく,被告の行為によって,原告に著しい損害を生じ,又は生ずるおそれがあると認められる余地はない。 4 争点(1) 一般指定9項の不当な利益による顧客誘引の有無についてア被告が株式会社ローソンに対して正常な商慣習に照らして不当な利益を提供しているか否か。 イ被告は,上記の不当な利益の提供により,原告の顧客を自己と取引するように誘引したといえるか否か。 (2 が株式会社ローソンに対して正常な商慣習に照らして不当な利益を提供しているか否か。 イ被告は,上記の不当な利益の提供により,原告の顧客を自己と取引するように誘引したといえるか否か。 (2) 一般指定6項の不当廉売の有無についてア被告は,一般小包郵便物(ゆうパック)の役務を,一般指定6項前段の「その供給に要する費用を…下回る対価で継続して供給し」ていると認められるか否か。また,その程度は著しいといえるか否か。 仮に被告が一般小包郵便物(ゆうパック)の役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給していると認められる場合,そのことに正当な理由があるといえるか否か。 イ被告が,一般小包郵便物(ゆうパック)の役務を,一般指定6項後段の「不当に…低い対価で供給し」ていると認められるか否か。 ウ被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパック)の役務の供給が他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるものといえるか否か。 (3) 著しい損害の有無について仮に被告の不当な利益による顧客誘引又は被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパック)による不当廉売があると認められる場合,これらの不公正な取引方法を用いた行為によって,原告に著しい損害を生じ,又は生ずるおそれが存在するか否か。 第3 当裁判所の判断 1 一般指定6項の不当廉売の有無(争点(2))について(1) 不当廉売の規制の趣旨等についてア前記のとおり,独占禁止法は,同法2条9項各号のいずれかに該当する行為であつて,公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち,公正取引委員会が指定するものを「不公正な取引方法」と定めた(同条9項)うえで,「事業者は,不公正な取引方法を用いてはならない」(同法19条)と定めている。前 な競争を阻害するおそれがあるもののうち,公正取引委員会が指定するものを「不公正な取引方法」と定めた(同条9項)うえで,「事業者は,不公正な取引方法を用いてはならない」(同法19条)と定めている。前記の同法2条9項には,「不当な対価をもつて取引すること」が挙げられており(同項2号),公正取引委員会は,同号の規定を受けて,「正当な理由がないのに商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し,その他不当に商品又は役務を低い対価で供給し,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。」を不公正な取引方法の一つとして指定している(一般指定6項)。 このような不当廉売が不公正な取引方法として規制されているのは,自由競争経済は,需給の調整を市場機構に委ね,事業者が市場の需給関係に適応しつつ価格決定を行う自由を有することを前提とするものであり,企業努力による価格引下げ競争は,本来,競争政策が維持・促進しようとする能率競争の中核をなすものであるが,正当な理由がないのに商品若しくは役務を供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し,又は不当に商品若しくは役務を低い対価で供給することは,企業努力又は正常な競争過程を反映せず,競争事業者の事業活動を困難にさせるなど公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれが高いとみられるためであると考えられる(最高裁昭和61年(オ)第655号平成元年12月14日第一小法廷判決・民集43巻12号2078頁参照)。 イところで,一般指定6項においては,「正当な理由がないのに商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し…他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。」(一般指定6項後段)と「不当に商品又は役務を低い対価で供給し,他の事業者の事業活動を困難に 供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し…他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。」(一般指定6項後段)と「不当に商品又は役務を低い対価で供給し,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。」(一般指定6項後段)が指定されており,それぞれは,「その他の」ではなく,「その他」でつながれている。 これらの関係については,公正取引委員会事務局が昭和59年11月20日に明らかにした「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」においては「『供給に要する費用を著しく下回る対価』とは,不当に低い対価に該当する典型的な場合を例示したものとされる」との記載も存する。 しかし,一般に,法令においては,「その他の」は,「その他の」前にある字句が「その他の」後ろにある,より内容の広い意味を有する字句の例示として,その一部をなしている場合に用いられるのに対し,「その他」は,「その他」の前にある字句と「その他」の後ろにある字句とが並列の関係にある場合に用いられるところ,告示も公の機関が一定の事項を公式に広く知らせる行為であって,条文形式で定める場合には法令の作成方法に準拠して定められているとみるべきこと,公正取引委員会が平成12年11月24日に取りまとめて関係業界団体等に周知した「酒類の流通における不当廉売,差別対価等への対応について」及び平成13年12月14日に取りまとめて資源エネルギー庁及び業界団体に通知した「ガソリン等の流通における不当廉売,差別対価等への対応について」においては「問題となる廉売の態様としては,『供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給』する場合と,『その他不当に低い対価で供給』する場合の2つがあり,このような廉売によって,『他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ』がある場合に,不当廉 する費用を著しく下回る対価で継続して供給』する場合と,『その他不当に低い対価で供給』する場合の2つがあり,このような廉売によって,『他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ』がある場合に,不当廉売に該当する。」としていること,一般指定6項前段には「継続して供給」するという継続性が必須の要件とされているのに対し,一般指定6項後段の文言からはその中に継続性の要件が包含されているとは解し難いことなどに照らせば,一般指定6項前段は一般指定6項後段の例示とみるのではなく,それぞれは並列の関係にあると解するのが相当である。 ウa そして,不当廉売を規制した前記のような趣旨からすれば,一般指定6項前段の「その供給に要する費用を…下回る対価」は,事業者の効率性によって達成した低価格での商品又は役務の供給を抑制する趣旨を含まない一方で,採算を度外視した低価格での商品又は役務の供給を含むことを前提としているものと解される。 したがって,営業原価のみならず,販売費及び一般管理費も「その供給に必要な費用」であることは明らかであるところ,商品又は役務が,営業原価に,これらの販売費及び一般管理費を加えた総販売原価を上回る対価で供給されれば,事業者の効率性によって達成した対価以上の対価で供給しているとみることができるのに対し,商品又は役務が総販売原価を下回る対価で供給されているとすれば,事業者としては,採算を度外視した対価で供給しているとみることができるから,上記の「供給に要する費用」とは,営業原価に販売費及び一般管理費を加えた総販売原価を意味すると考えるのが相当である。 b 一般指定6項後段は,同項前段と異なり,役務等の供給の対価が供給に要する費用をわずかに下回る場合や,役務等の供給が継続的ではないが供給の対価が供給に要する費用を下 えるのが相当である。 b 一般指定6項後段は,同項前段と異なり,役務等の供給の対価が供給に要する費用をわずかに下回る場合や,役務等の供給が継続的ではないが供給の対価が供給に要する費用を下回る場合を含むものであるが,このような規制が設けられた趣旨は,同項前段と同様であり,同項後段の「不当に…低い対価て供給し」ているとは,市場価格を下回っているのみならず,「供給に要する費用」を下回る対価で供給していることを要すると解するのが相当である。 この点について,原告は,「一般指定6項後段が一般指定6項前段とは別に規定されていることからすれば,一般指定6項後段には,供給に要する費用を下回らないけれども,不当性のある市場価格を下回る価格で役務を供給する場合を含むと解すべきである。」旨主張する。 しかし,たとえ市場価格を下回る対価であっても,「供給に要する費用」を上回る対価で供給している場合には,当該事業者の効率性を反映していない対価とはいえず,その役務の供給によって利益を生み出す余地があるのであるから,このようなものまで一般指定6項後段の「不当に…低い対価」に含ませることは,かえって,効率性を有する事業者による公正かつ自由な競争を阻害するおそれがあり,同項を設けた趣旨に沿わない結果となるから,同項後段の「不当に…低い対価で供給し」ているとみることは相当でない。 (2) また,各項末尾掲記の証拠によれば,次の各事実が認められる。 ア (行政改革会議の最終報告書)行政改革会議は,平成9年12月3日,行政改革会議最終報告書において,郵政事業については,政策の企画立案機能と実施機能を組織的に分離するとともに,実施機能について自律的,効率的な運営の徹底を図るという中央省庁等改革の考え方に基づき,三事業一体として郵 告書において,郵政事業については,政策の企画立案機能と実施機能を組織的に分離するとともに,実施機能について自律的,効率的な運営の徹底を図るという中央省庁等改革の考え方に基づき,三事業一体として郵政公社が実施することとすること及び独立採算制の下,自律的,弾力的な経営を可能とし,予算及び決算は,企業会計原則に基づき処理するとともに,国による予算統制は最小限度とすることを示した。 (甲4)イ (政府規制等と競争政策に関する研究会の報告書)政府規制等と競争政策に関する研究会(座長・B専修大学経済学部教授)は,平成12年11月,郵便事業を取り巻く動きを踏まえ,郵便事業への競争導入の在り方等について競争政策の観点から検討を重ねてきた検討結果を,「郵便事業への競争導入と競争政策上の課題」という報告書として取りまとめた。 上記報告書には,「平成9年度から平成11年度までの郵便の種類別収支をみると,収入の5割以上を占める第一種郵便物を除いた通常郵便物及び小包郵便については,いずれも赤字となっている。特に,第三種郵便物,第四種郵便物,特殊取扱及び宅配便と競争関係にある小包郵便物については,収支が悪化基調にあり,独占分野である第一種郵便物の利益によって補てんされている状況にある」との記載があるほか,公正競争条件の整備として,「全面自由化までの過渡期においては,郵便事業体に一定の独占分野が留保される。仮に,郵便事業体が独占部門で得た利潤を競争導入部門に投入することになれば,競争導入部門における公正な競争が阻害されることになる。したがって,他の公益事業分野において採られているような仕組みを参考にして,郵便事業の特性を考慮しつつ,独占部門から競争導入部門への内部補助を防止する仕組みを制度化する必要がある。すなわち,部門別の区分経理情報,配賦基 業分野において採られているような仕組みを参考にして,郵便事業の特性を考慮しつつ,独占部門から競争導入部門への内部補助を防止する仕組みを制度化する必要がある。すなわち,部門別の区分経理情報,配賦基準及びその考え方を公開するとともに,中立的な第三者が検証する仕組みを設ける必要があると考えられる。」と指摘されている。 (甲48の7)ウ (郵政事業の公社化に関する研究会の最終報告)総務大臣主催の郵政事業の公社化に関する研究会(座長・C東京電力株式会社代表取締役)は,平成14年8月,その最終報告をまとめ,その「公社の骨格」の中で,「公社の会計は,企業会計原則に基づくものとする」こと,「公社は,毎事業年度,貸借対照表,損益計算書,利益の処分又は損失の処理に関する書類その他の書類及びこれらの附属明細書(以下『財務諸表』という。)を作成し,事業年度の終了後3月以内に総務大臣に提出し,その承認を受けなければならないものとする」こと,「財務諸表においては,事業区分ごとの内訳を明らかにしなければならないもの」とし,「この場合において,公社は,独立採算の考え方により事業区分ごとの経理を行う」こと,「公社は,財務諸表及び事業報告書(会計に関する部分に限る。)について,監事の監査のほか,総務大臣が選任する会計監査人の監査を受けなければならないものとする」こと,その考え方として「公社の財務諸表等の合規性及び客観性を担保するため,外部の独立した機関であり,企業会計に関する職業専門家である会計監査人(公認会計士又は監査法人)に財務諸表等を監査させることとする。会計監査人の独立性を確保する観点から,会計監査人の選任は,総務大臣が行うものとする」こと及び「郵政事業の公社化については,国営の新たな公社として設置される趣旨等を踏まえ,税制上の所要の措置を講ずる」こ 監査人の独立性を確保する観点から,会計監査人の選任は,総務大臣が行うものとする」こと及び「郵政事業の公社化については,国営の新たな公社として設置される趣旨等を踏まえ,税制上の所要の措置を講ずる」ことを報告し,また,「公社の業務」の中で,「郵便料金については,収支相償を原則としつつ,公社による料金設定を可能とする」と報告し,さらに,「公社化により期待される効果」の中で,「公認会計士等による外部監査の導入により,公社の作成・開示する財務情報の合規性,合法性が中立的・客観的な会計専門家の立場から確認され,透明性の向上が図られる」ことなどを報告した。 (甲4)エ (郵政民営化の基本方針の閣議決定)政府は,平成16年9月10日,「郵政民営化の基本方針」を閣議決定し,その中で,「2007年に日本郵政公社を民営化し,移行期を経て,最終的な民営化を実現する」としたうえで,基本的視点として,「4機能が,民営化を通じてそれぞれの市場に吸収統合され,市場原理の下で自立することが重要」とし,そのための必要条件の一つとしての「民間とのイコールフッティングの確保」の中で,「民間企業と競争条件を対等にする」こと及び「民営化に伴って設立される各会社は,民間企業と同様の納税義務を負う」ことなどを明らかにした。 (甲5の1)オ (被告総裁の平成15年5月21日の定例会見における発言)被告総裁は,平成15年5月21日の定例会見において,「小包のマーケット,パーセルを宅配の部分が今,たったの5.8パーセントしかなくて,ほとんど民業の方がやってらっしゃるわけなのですが,胸を貸していただくつもりでもう少しやらせていただいたらどうかなと思います。しかし,2年で余りやるとね,御迷惑かけてもいけないから,この部分だけは,15年,16年,17年と3年かけて,10パー が,胸を貸していただくつもりでもう少しやらせていただいたらどうかなと思います。しかし,2年で余りやるとね,御迷惑かけてもいけないから,この部分だけは,15年,16年,17年と3年かけて,10パーセントぐらいまで上がる努力をしてみたい。市場そのものがどんどん伸びていますから,10パーセントくらい胸を借りながらいただけるようにしても,民業圧迫ということにはならないのでないのかなというように思っているわけであります。今のところは完全に官業の方が,全く民業に追いつかない態勢にあるわけなので,少しやらせてくださいと,こういうことであります。」と発言した。 (甲15の2)カ (被告総裁の平成15年7月16日の定例会見における発言)被告総裁は,平成15年7月16日,定例会見において,「値下げ競争は,これは前も申し上げたけれども,公社はやるつもりはありません,値下げ競争は。まあ,これは市場を乱します。市場並みのプライシングはしますけど,自ら値下げ競争を展開するなんていうことは,これは厳に慎むべきことであろうと思っていますし,第一に,競争激甚とおっしゃって,僕もそのとおりなのだけれども,一番競争の激しい宅配,我々でいえば,小包便の分野については,我々のシェアというのは,一昨年5.8パーセントだったのが,去年は5.7パーセントまで落ちているのです。だから,それはもう,微々たる,今,まことに言うのも恥ずかしいようなシェアしかないわけなので,我々は大変大きなマーケットシェアを持っていらっしゃる2から3社のところに,値下げをかけて競争を挑むなんていうおこがましい気持ちは全くないわけで,胸を借りながら,3年かけて10パーセントぐらいやらせてくださいよと,こういう感じで努力していきたいと思っています。」と発言した。 (甲15の4)キ (被告総裁 ましい気持ちは全くないわけで,胸を借りながら,3年かけて10パーセントぐらいやらせてくださいよと,こういう感じで努力していきたいと思っています。」と発言した。 (甲15の4)キ (被告総裁の平成15年11月19日の定例会見における発言)被告総裁は,平成15年11月19日,定例会見において,「去年のちょうど今ごろから今年の2月ぐらいにかけて設立会議があったのですが,このとき一部委員から,民業圧迫にならないように民業の補完に徹せよという一文を設立趣意書に入れろという強硬な御意見があったのです。そのときに,私が申し上げたのは,そういうのは,法律上の要件じゃないし,そういうことをやるのなら,民業圧迫というのは何を意味するのかという定義が必要だし,それもなしに,単に抽象的にそういうことが入ると,非常に,何かに付け,それが引用されるだろうから,私としてはお断りしたいと。そのかわり,私は,その必要性というのは十二分に分かっているし,不当な民業圧迫というのは絶対避けるべきだということは十分認識しているので,経営者の良識,常識,モラル,これで,私自身に判断させていただきますと。もしそれが,そういう話にもかかわらず,不当な圧迫になっていれば,その責めと責任は私が負うべきですというお話をしまして,それが設立会議で了承を得て,何にも書き込まなくて,皆さん,よく判断してくださいとなったので,私はその時の,自らの言葉の重みというものは,今も十二分に認識をしているということをまず申し上げたいと思います。」と発言した。 (甲15の7)ク (被告総裁の平成16年5月25日の定例会見における発言)被告総裁は,平成16年5月25日,定例会見において,「郵便の方,なかんずく今,小包便といいますか,宅配便の分野では,何といってもヤマトさんは極 16年5月25日の定例会見における発言)被告総裁は,平成16年5月25日,定例会見において,「郵便の方,なかんずく今,小包便といいますか,宅配便の分野では,何といってもヤマトさんは極めて立派な経営をしていらっしゃる大横綱ですよ。我々は5.7パーセントですからね。いわば,ふんどし担ぎから本格的に幕内に入れてくださいということで,幕内に入るにはマーケットシェア10パーセントぐらいないと入れないかなという感じで胸を借りている段階です。我々としては,やはり市場に残るためには10パーセントぐらいは必要だと思いますから,決してヤマトさんもそんなに過剰反応はしてらっしゃらないですし,ふんどし担ぎも大分努力し出したなというぐらいのお考えだと思うので,あんまり市場を乱すようなことは考えてないです。着実に努力を重ねていきたいと思っています。もちろんまだゆうパックの商品性というのは,過去は劣後にあったわけです。プライジングのところはやろうと思えば,すぐできるのですが,問題は品質だと思います。だから品質のアップというのは今もいろいろと検討中でありますし,近い将来,もう少し改善する内容も御披露できるのかなという感じであります。いわば2社程度が大きなマーケットでいらっしゃるよりも,我々のようなマイナーな人間でも入って,ある程度の競争が出るということは,競争する者同士にとっては,ある程度厳しいことではあるけれど,お互いに生産性は上がるし,お互いに商品価値は上がるし,利用者,消費者の立場からみればいいことだと思うので,お互いに良い意味で努力していきたいと思っています。」と発言した。 (甲15の14)ケ (被告総裁の平成16年7月21日の定例会見における発言)被告総裁は,平成16年7月21日,定例会見において,「事業税,法人税は免除していただ います。」と発言した。 (甲15の14)ケ (被告総裁の平成16年7月21日の定例会見における発言)被告総裁は,平成16年7月21日,定例会見において,「事業税,法人税は免除していただいているけれど,自己資本も頂いてないのです。公社スタートの時に,もし通常の物流会社であり,あるいは,金融機関であるというふうに仮定すれば,幾らの資本金でスタートすれば良かったのか。これはもういろんな方がいろんな数字をおっしゃいますから,どの数字が正しいとはいえませんけれど,大体,あのとき,いろんな新聞や評論家がおっしゃっていたのは,少なくとも10兆円と言っていた。人によっては,15,6兆円と言っていたわけです。だから,少なくとも10兆円はあっても良かったかと思うけれど,それを1兆3,000億円で公社はスタートしているのです。要するに,持参金なしに嫁に出された感じなのです。そのかわり自分で稼げと。自分で稼いだら,7兆円に達するまでは税金もまけてやる,まけてやるから,自分で持参金を,すなわち資本金を作りなさいと言われて,公社はスタートした。だから,資本金が1兆3,000億円だけでスタートして,今,自分で,本来あるべき資本金に向かって積み立てている第一歩がスタートしているわけです。初めから資本金10兆円を頂いていれば話は別ですが,自助努力をしながら7兆円までこれから積むわけです。そして,そうして積まれた資本金は貴重な『国民の見えない資産』です。 それで,7兆円になったらどうなるのか。7兆円になったら,今度は逆に,出た利益の50パーセントは国庫に納付しなさいと言われているわけです。50パーセント納付するということは,今の法人が支払う,法人税,事業税率が,約35パーセントです。それより高い実効税率になるわけです。だから,7兆円まで達してきたら,国民負担 言われているわけです。50パーセント納付するということは,今の法人が支払う,法人税,事業税率が,約35パーセントです。それより高い実効税率になるわけです。だから,7兆円まで達してきたら,国民負担ではなくて,逆に他の法人よりも高い率で,国民に我々の稼いでいるお金を,供出させていただける立場になるということなので,そういうふうに読んでいただかないと,非常にミスリーディングだなと思って,あの記事は読んでいました。」と発言した。 (甲15の16)コ (原告の平成16年8月26日付けの意見広告)原告は,平成16年8月26日付けの全国・地方新聞紙54紙に「クロネコヤマトは変えません」との題名の意見広告を掲載した。 原告は,その中で,「宅急便をご利用のみなさまへ。来る11月18日(木)より,コンビニエンスストアチェーン・ローソンで宅急便ならびに宅急便関連商品・サービスの取り扱いを停止することになりました。これでお客様の身近な窓口がひとつ減ることになりますが,この不便さを解消し,これまで通りの便利さでご利用いただけるよう,クロネコヤマトはより一層の努力を重ねていきます。」,「残念ながら,クロネコヤマトの契約がうち切られました。ローソン本部は8月17日(火),クロネコヤマトに対して宅急便の取扱店契約を中途解約するとの通告をしました。ローソン本部は,最終的に宅配サービスに『ゆうパック』を選んだことになります。かねてからローソン本部は,『宅急便』と『ゆうパック』のどちらも取り扱いたいとの意向を示していました。しかしながら,クロネコヤマトはどうしてもそれに納得できないのです。」,「みなさんはクロネコヤマトのわがままと思われるかもしれません。しかし。わたしたちクロネコヤマトは,お客様の便利を最優先で考える企業風土に生きています。そして,他の宅配業 に納得できないのです。」,「みなさんはクロネコヤマトのわがままと思われるかもしれません。しかし。わたしたちクロネコヤマトは,お客様の便利を最優先で考える企業風土に生きています。そして,他の宅配業者ともお客様のためという土俵で正々堂々競争したいと思っています。これまでもたくさんの競争があり,お互いに切磋琢磨しながらお客様によりよい商品・よりよいサービスを提供してきたという自負があります。公平な競争がしたいのです。公正な競争がしたいのです。その原則が守られない競争にはあえて挑みたくない。それがクロネコヤマトの企業姿勢なのです。そのことに,クロネコヤマトはお客様無視だ,とのお叱りもあるでしょう。けれども,それを覚悟で,あえてわたしたちはこの原則を貫き通したいのです。」,「日本郵政公社は独占事業であげた利益をもとに競争しようとしています。まずお伝えしないといけないのは,日本郵政公社の業務はすべて民間に開かれているわけではない,ということです。言いかえれば,日本郵政公社には,民間企業が手を出せない領域があり,それを独占しています。手紙やハガキは日本郵政公社の独占事業なのです。だから,手紙やハガキの料金に,自由競争はありません。その一方,みなさんは驚かれるかもしれませんが,日本郵政公社は民間と競合する冊子小包(民間でいうメール便)で,大口のお客様に大幅な料金割引制度を適用しています。」,「クロネコヤマトは日本郵政公社との競争に賛成です。ただし,公正ならば。民間企業はすこしでも大きな利益をあげ,法人税を払い,そしてなるべく多くを株主や従業員に還元するよう頑張っています。とくに宅配便業界は,わたしたち民間企業が,企業努力を重ねて新商品・新サービスを開発し,全国津々浦々にお届けできるネットワークをつくり,現在の規模まで市場を拡大させてきました。いま 頑張っています。とくに宅配便業界は,わたしたち民間企業が,企業努力を重ねて新商品・新サービスを開発し,全国津々浦々にお届けできるネットワークをつくり,現在の規模まで市場を拡大させてきました。いま,このわたしたちの市場に,日本郵政公社がローソンを足がかりに入ってこようとしています。さらに日本郵政公社は,税制面などでさまざまな優遇措置を受けているという事実があります。はたして,それが公平なのか。はたして,それが公正なのか。日本郵政公社が,民間が切り拓いた市場で競争をしかけるのはフェアプレーと言えるでしょうか。」及び「クロネコヤマトはお客様に支えられてはじめて存在できる民間企業です。クロネコヤマトはお客様のためにある,その企業姿勢を変えません。宅急便をはじめクロネコヤマトの商品・サービスは,すべてお客様の便利を追求してカタチになったものです。そしてこれからも,さらなる便利な商品・サービスを新しいアイデアで創出していきます。これこそが未来までクロネコヤマトが変えない企業姿勢であり,お客様から選ばれる民間企業としてあるべき企業姿勢であると考えます。」と意見を明らかにした。 (甲1,11)サ (原告の意見広告に対する被告の見解)これに対し,被告は,平成16年8月26日,「ヤマト運輸の各紙全面広告(16.8.26)について(公社見解)」を公表した。 被告は,その中で,「日本郵政公社の扱っている『ゆうパック』につきましては,平成15年度の市場シェアは,6%しかなく,現在,公社では,ゆうパック事業の生き残りをかけて,3年間で,シェアの回復を図るため『ターゲット10(市場シェア10%)』の目標に取り組んでいるところです。市場シェア30%を超えるヤマト運輸様を『不当に圧迫』するような状況にはありません。」及び「ヤマト運輸様は,『公社は税制面な 『ターゲット10(市場シェア10%)』の目標に取り組んでいるところです。市場シェア30%を超えるヤマト運輸様を『不当に圧迫』するような状況にはありません。」及び「ヤマト運輸様は,『公社は税制面などの優遇措置を受けており,公平・公正な競争にならない』と述べておられますが,公社として,それ故に安い料金を設定するような余地も考えもなく,常に公正な料金設定をしております。また,全国のお客様にユニバーサルサービスを提供する役割を担っており,実質的には,公平・公正な競争条件は,担保されていると考えております。」と見解を明らかにした。 (甲10の3)シ (新ゆうパック商品案内マニュアルの記載)被告が平成16年8月に作成した新ゆうパック商品案内マニュアルには,新しくなった一般小包郵便物(ゆうパック)の概要のうち,料金体系の変更について,「個人・中小口事業所向けには,サイズ制の料金体系を導入します。集荷時にはかりが不要になります。」,「地帯は,県別から地域(支社ブロック)別になります。県内料金も新設します。全サイズ・全地帯において,民間宅配便より低廉な料金を実現します。」,「個人・小口事業所向けに新たな割引を導入します。①持込割引,②同一あて先割引(前回と同じあて先に送る場合に割引),③複数口割引(同じあて先に複数個送る場合に割引)」,「中小口事業所向けに都度/月間10個以上,20個以上,50個以上,100個以上ご利用になる場合の割引料金を新設します。」及び「大口事業所(原則として月間200個以上)向けには,従来の重量制の料金体系を継続します。11kgまで均一料金としている特別料金に,6kgまでの均一料金を追加します。年間2万個以上から年間契約料金を新設します。」との記載がある。 また,同マニュアルには,一般小包の料金体系における営業のポ kgまで均一料金としている特別料金に,6kgまでの均一料金を追加します。年間2万個以上から年間契約料金を新設します。」との記載がある。 また,同マニュアルには,一般小包の料金体系における営業のポイントとして,「サイズ制の基本料金は,民間宅配便に準拠したサイズ・地帯区分で比較しやすく,全サイズ・全地帯とも民間宅配便より割安な料金でご利用いただけますので,個人・小口事業所にアピールしてください。」との記載がある。 (甲36)ス (被告総裁の平成16年10月20日の定例会見における発言)被告総裁は,平成16年10月20日,定例会見において,「ヤマト運輸の提訴に関する公社の考え方」として,本件訴訟についての被告の考え方を説明したが,その後,記者から「小包の収支が10億円の黒字とのことですが,冊子小包と一般小包と分けた場合,どうなのですか。」との質問が出された。これに対し,被告のD企画部長は,「そこは他の宅配業界も更にそういった詳しいところは公表していないので,私どもも公表していません。」と返答した。さらに,記者から「冊子小包というのは,民間のメール便に当たると思うのですよ。 そうすると彼らは宅配便で出しているということは,冊子小包の数字も考慮して比較しないと,イコールの数字が出てこないのですよ。そういう意味ではそこを出さないというのは,何かあるのかなという気がしないのでもないのですが。」と質問を受けたが,同部長は「法律に基づいた分類での公表はやっていますので,今のところそれ以上,公表するということは考えていません。」と述べ,被告総裁も「言われる御趣旨は分かるのですが,競争していますので,業界で皆さんがやっている程度の区分で情報を出すということで,御理解いただけないでしょうか。その前はもともとドンブリ勘定で分からなかったのを,公社化 れる御趣旨は分かるのですが,競争していますので,業界で皆さんがやっている程度の区分で情報を出すということで,御理解いただけないでしょうか。その前はもともとドンブリ勘定で分からなかったのを,公社化でものすごく明快に区分して,全部,開示するようになってきているので,ステップバイステップ。多少時間をください。」と述べた。 (甲26の1)セ (被告の公社化以前の平成14年度郵便の種類別収支)被告は,平成15年10月7日,次のとおり,平成14年度決算に基づく郵便の種類別収支を公表した。 通常郵便物は,収入が1兆8098億円,費用が1兆8258億円で,160億円の赤字であった。通常郵便物のうち,第一種郵便物については,収入が9898億円,費用が9466億円で,432億円の黒字であり,第二種郵便物については,収入が5181億円,費用が5157億円で,24億円の黒字であるけれども,第三種郵便物については,収入が526億円,費用が795億円で,269億円の赤字であり,第四種郵便物についても,収入が16億円,費用が57億円で,41億円の赤字であり,また,特殊取扱についても,収入が2477億円,費用が2783億円で,306億円の赤字であった。他方,小包郵便物は,収入が1615億円,費用が1661億円で,46億円の赤字であった。 また,被告は,その際,参考として,次のとおり,平成14年度決算に基づく郵便の種類別1通(個)当たり平均収支についても明らかにした。通常郵便物は,平均収入が70.78円,平均費用が71.41円で,0.63円の赤字であった。 通常郵便物のうち,第一種郵便物は,平均収入が77.22円,平均費用が73.85円で,3.37円の黒字であり,第二種郵便物は,平均収入が46.58円,平均費用が46.37円で,0.21円の黒字であるけれども 物のうち,第一種郵便物は,平均収入が77.22円,平均費用が73.85円で,3.37円の黒字であり,第二種郵便物は,平均収入が46.58円,平均費用が46.37円で,0.21円の黒字であるけれども,第三種郵便物は,平均収入が54.28円,平均費用が82.06円で,27.78円の赤字であり,第四種郵便物も,平均収入が43.92円,平均費用が153.57円で,109.65円の赤字であり,また,特殊取扱も,平均収入が397.1円,平均費用が446.16円で,49.06円の赤字であった。小包郵便物は,平均収入が369.24円,平均費用が379.89円で,10.65円の赤字であった。 (甲10の4)ソ (被告の会計と業務区分別整理)平成16年4月5日発行された郵政事業研究会監修の「日本の郵政・平成16年度版」(株式会社郵研社発行)には,被告の会計と業務区分別整理について,「公社は,郵便,郵便貯金及び簡易生命保険という性格,目的の異なる複数の業務を併せて行っていることから,各業務の実施状況に関する説明責任を充足するため,公社全体の財務諸表だけでなく各業務の財政状態及び経営成績を明らかにすることが求められており,業務区分別の財務諸表を作成することとなります。公社は,業務区分別の財務情報を明らかにするため,新たに取得又は発生する2以上の業務区分に関する資産,負債,収益及び費用を適正な基準により,それぞれの業務区分に整理しています。具体的には,次のように業務区分別に整理しています。①業務別が明らかな資産,負債及び収益は当該業務に整理し,2以上の業務に関連する資産はその取得時の業務区分別の支出額比,負債及び収益はその発生原因に基づく割合等によりそれぞれの業務区分に整理しています。②郵便局の郵便業務,郵便貯金業務及び簡易生命保険業務に従事してい 関連する資産はその取得時の業務区分別の支出額比,負債及び収益はその発生原因に基づく割合等によりそれぞれの業務区分に整理しています。②郵便局の郵便業務,郵便貯金業務及び簡易生命保険業務に従事している職員の給与等,各業務の運営に必要な費用は,それぞれの業務区分に整理しています。③本社,支社等の管理部門の費用及び郵便局等の費用のうち,その発生原因が明らかに一の業務に係るもの(例えば本社の郵便事業本部,郵便貯金事業本部及び簡易保険事業本部において必要な費用)はそれぞれの業務区分に整理しています。それ以外の費用は,職員の勤務時間比などの適性かつ妥当な割合によりそれぞれの業務区分に整理しています。」との記載がある。 (甲7の1)タ (被告の平成15年度郵便の種類別収支)被告は,平成16年6月30日,次のとおり,平成15年度(平成15年4月1日から平成16年3月31日まで)郵便の種類別収支を公表した。 通常郵便物は,営業収益が1兆6294億円,営業費用が1兆5715億円で,579億円の営業利益があった。通常郵便物のうち,第一種郵便物(封書)は,営業収益が9094億円,営業費用が8334億円で,761億円の営業利益があり,第二種郵便物(はがき)は,営業収益が4727億円,営業費用が4572億円で,156億円の営業利益があるけれども,第三種郵便物(新聞,雑誌)は,営業収益が443億円,営業費用が659億円で,216億円の営業損失であり,第四種郵便物(通信教育等)も,営業収益が16億円,営業費用が45億円で,30億円の営業損失であり,また,特殊取扱(書留,速達等)も,営業収益が2013億円,営業費用が2106億円で,92億円の営業損失であった。他方,小包郵便物は,営業収益1686億円,営業費用1676億円で,10億円の営業利益があった。 書留,速達等)も,営業収益が2013億円,営業費用が2106億円で,92億円の営業損失であった。他方,小包郵便物は,営業収益1686億円,営業費用1676億円で,10億円の営業利益があった。 なお,同種類別収支には,営業費用は,営業原価と販売費及び一般管理費の合計であり,郵便種類別収支においては,郵便法75条の2第4項の規定に基づき,郵便法の規定による郵便の業務を対象としており,郵便業務の区分に係る損益計算書の計とは一致しないとの注意書が付されていた。また,平成14年度の郵便の種類別収支との関係について,「公社化にあわせ,企業会計原則に基づく会計処理に変更したことのほか,種類別に配賦する収益・費用の範囲や,費用を種類別に計算する方法を変更したことから,平成15年度の計数と平成14年度の計数との単純比較はできません。」との注意書も付されている。 また,被告は,その際,参考として,次のとおり,平成15年度の郵便の種類別1通(個)当たり平均収支についても明らかにした。通常郵便物は,平均収益(種類別の営業収益を種類別の通(個)数で除したもの。以下同じ。)が66円,平均費用(種類別の営業費用を種類別の通(個)数で除したもの。以下同じ。)が63.7円で,2.3円の黒字であった。通常郵便物のうち,第一種郵便物は,平均収益が74円,平均費用が67.8円で,6.1円の黒字であり,第二種郵便物は,平均収益が43.2円,平均費用が41.7円で,1.5円の黒字であるけれども,第三種郵便物は,平均収益が51.7円,平均費用が76.9円で,25.2円の赤字であり,第四種郵便物についても,平均収益が38.3円,平均費用が111.3円で,73.1円の赤字であり,また,特殊取扱も,平均収益が382円,平均費用が399.4円で,17.5円の赤字であった。小包郵便物 第四種郵便物についても,平均収益が38.3円,平均費用が111.3円で,73.1円の赤字であり,また,特殊取扱も,平均収益が382円,平均費用が399.4円で,17.5円の赤字であった。小包郵便物は,平均収益が242.3円,平均費用が240.09円で,1.4円の黒字であった。 (甲10の5,乙5)チ (被告の平成15年度の財務諸表)被告の第1期事業年度(平成15年4月1日から平成16年3月31日まで)の財務諸表によると,同日現在の貸借対照表では,資産合計が404兆1916億9854万5191円,負債合計が399兆5841億5240万6352円で,資本合計が4兆6075億4613万8839円となっており,同事業年度の損益計算書では,経常収益が24兆6023億3253万7328円,経常費用が22兆0534億9726万6510円で,経常利益が2兆5488億3527万0818円となっており,特別利益が248億8287万9019円,特別損失が1060億9091万3386円,契約者配当準備金繰入額が1657億8523万9897円で,当期利益が2兆3018億4199万6554円となっていた。 また,郵便業務の区分に係る平成16年3月31日現在の貸借対照表の内訳では,資産合計が2兆2842億8405万0746円,負債合計が2兆8361億7746万2253円で,資本合計が5518億9341万1507円のマイナスであり,郵便業務の区分に係る同事業年度の損益計算書の内訳では,営業収益が1兆9666億9324万0427円,営業原価が1兆8136億6285万8792円で,営業総利益が1530億3038万1635円となり,これから販売費及び一般管理費合計925億2427万3724円を差し引いた営業利益が605億0610万7911円となり,これから,営 2円で,営業総利益が1530億3038万1635円となり,これから販売費及び一般管理費合計925億2427万3724円を差し引いた営業利益が605億0610万7911円となり,これから,営業外収益55億6089万8658円から営業外費用205億5738万8750円を差し引いた額を控除した経常利益が455億0961万7819円となり,更にこれから,特別利益43億6650万9294円から特別損失235億4950万7056円を差し引いた額を控除した当期利益が263億2662万0057円となっている。 営業原価明細書では,郵便業務の区分に係る営業原価1兆8136億6285万8792円のうち,人件費が1兆3513億3559万7260円,経費合計4623億2726万1532円であり,経費のうち,燃料費が59億3511万7980円,車両修繕費が56億9046万0288円,切手・はがき類購買経費が143億3553万7906円,減価償却費853億8130万8908円,施設使用料が291億3607万2657円,租税公課が3億6942万7124円,集配運送委託費が1845億7232万0908円,取扱手数料が335億0992万9764円,その他が1033億9708万5997円とされている。 (甲21の4)ツ (被告の平成16年度郵便の種類別収支等)被告が平成17年6月29日に公表した平成16年度の郵便の種類別収支によると,通常郵便物については,営業収益が1兆5247億円,営業費用が1兆5027億円で,220億円の営業利益があり,小包郵便物については,営業収益が2345億円,営業費用が2264億円で,81億円の営業利益がある(なお,同種類別収支には,営業費用は,営業原価と販売費及び一般管理費の合計であり,郵便法の規定による郵便の業務を対象とし 営業収益が2345億円,営業費用が2264億円で,81億円の営業利益がある(なお,同種類別収支には,営業費用は,営業原価と販売費及び一般管理費の合計であり,郵便法の規定による郵便の業務を対象としており,郵便業務の区分に係る損益計算書の計とは一致しないとの注意書がある。)。 (乙11)なお,同年度における一般小包郵便物(ゆうパック)の取扱個数は,2億1469万個である。 (当事者間に争いがない。)テ (平成15年度における平均単価について比較)平成15年度における次の企業における一般小包郵便物(ゆうパック),宅急便その他の宅配便の売上高及び取扱個数並びに売上高を取扱個数で除した平均単価は,次の表のとおりである。 企業売上高取扱個数平均単価被告1103億円1億8218万個605.4円原告6900億8700万円10億1115万個682.5円佐川急便4950億6100万円9億3369万個530.2円日本通運1978億円3億8115万個519円福山通運1145億1400万円2億9880万個383.2円西濃運輸491億6500万円1億3546万個362.9円(乙1から3まで)ト (原告の平成16年度の宅急便取扱個数の月別の推移)原告の平成16年度(平成16年4月1日から平成17年3月31日まで)の月別宅急便取扱個数は,次のとおりである。 平成16年4月 7673万4000個同年5月 7555万個同年6月 8265万8000個同年7月 1億1427万2 便取扱個数は,次のとおりである。 平成16年4月 7673万4000個同年5月 7555万個同年6月 8265万8000個同年7月 1億1427万2000個同年8月 8296万2000個同年9月 7755万3000個同年10月 7952万9000個同年11月 8850万3000個同年12月 1億5851万個平成17年1月 7095万5000個同年2月 7140万1000個同年3月 8443万個平成16年4月から同年9月までの合計5億972万9000個は,平成15年4月から同年9月までの合計4億8558万7000個と比べると,105パーセントであったところ,平成16年10月から平成17年3月までの合計5億5332万8000個は,平成15年10月から平成16年3月までの合計5億2556万2000個と比べても,105.3パーセントとなっていた。 (乙4)ナ (原告の平成16年度の宅急便取扱個数等)原告の平成16年度の宅急便総取扱個数は,10億6300万個で,平成15年度に比べ5.1パーセント増加した。また,原告の平成16年度の宅急便の営業収益は7085億300万円で平成15年度に比べ2.7パーセント増加した。 原告が関東財務局長に対して平成17年6月29日に提出した有価証券報告書には,「宅急便事業におきましては,昨年7月より『超速宅急便』のエリアを拡大するとともに,宅急便のお届け日・時間帯をeメールでお知らせする『宅急便お届け通知サービス』を開始いたしました。さらに,昨年11月より担当セールスドライバーの携帯電話にお客様のご要望を直接ご連絡いただける『ドライバーダイレク 日・時間帯をeメールでお知らせする『宅急便お届け通知サービス』を開始いたしました。さらに,昨年11月より担当セールスドライバーの携帯電話にお客様のご要望を直接ご連絡いただける『ドライバーダイレクト』を開始し,お客様の利便性の向上をはかってまいりました。その結果,宅急便の総取扱個数は10億63百万個となり,前連結会計年度に比べ5.1%増加し,営業収益は7085億3百万円となりました。」との記載がある。 (乙7)ニ (原告の平成18年3月期第1四半期の宅急便取扱個数等)原告の平成17年4月1日から同年6月30日までの宅急便取扱個数は,2億5100万個であり,平成16年4月1日から同年6月30日までの2億3494万個と比べ7パーセント増加した。また,原告の平成17年4月1日から同年6月30日までの宅急便の売上高は,1644億8400万円であり,平成16年4月1日から同年6月30日までの1573億4000万円と比べ4.5パーセント増加した。他方,原告の平成17年4月1日から同年6月30日までの宅急便の単価は,655円であり,平成16年4月1日から同年6月30日までの670円と比べ2.2パーセント減少した。 原告の平成18年3月期第1四半期決算説明会補足資料には,平成18年3月期(平成17年度)における宅急便取扱個数を前年比5.1パーセント増の11億1700万個と予想し,同期における宅急便の売上げを前年比3.5パーセント増の7330億円と予想し,同期における宅急便単価を前年比10円減の656円と予想する旨の記載がある。 (乙8から10まで)(3) そこで,まず,被告が一般小包郵便物(ゆうパック)の役務を,その供給に要する費用を下回る対価で供給しているといえるか否か(争点(2)ア)について検討する。 ア前記(1)ウ まで)(3) そこで,まず,被告が一般小包郵便物(ゆうパック)の役務を,その供給に要する費用を下回る対価で供給しているといえるか否か(争点(2)ア)について検討する。 ア前記(1)ウa記載のとおり,「供給に要する費用」とは,営業原価に販売費及び一般管理費を加えた総販売原価を意味すると考えるのが相当であるから,本件については,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の新料金体系によるサービス供給が被告における営業原価に販売費及び一般管理費を加えた費用を下回る場合に,初めて被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の新料金体系によるサービス供給が一般指定6項前段の「その供給に要する費用」を下回るものと認められることとなる。 イ被告は,郵政公社法の規定に従い,毎事業年度,貸借対照表,損益計算書,利益の処分又は損失の処理に関する書類その他総務省令で定める書類及びこれらの附属明細書(以下「財務諸表」という。)を作成して,当該事業年度の終了後3月以内に総務大臣に提出し,その承認を受けなければならない(同法30条1項)とされているうえ,財務諸表のうち,貸借対照表,損益計算書その他の総務省令で定める書類については,郵便業務,郵便貯金業務及び簡易生命保険業務の区分ごとの内訳を明らかにしなければならないとされている(同条2項)。そこで,これらの規定に基づき,前記認定事実のとおり,被告は,郵便業務の区分に係る営業原価を公表しているところ,第1期事業年度(平成15年4月1日から平成16年3月31日まで)では,郵便業務の区分に係る営業原価1兆8136億6285万8792円のうち,人件費が1兆3513億3559万7260円,経費合計4623億2726万1532円であり,経費のうち,燃料費が59億3511万7980円,車両修繕費が56億9046万0288 5万8792円のうち,人件費が1兆3513億3559万7260円,経費合計4623億2726万1532円であり,経費のうち,燃料費が59億3511万7980円,車両修繕費が56億9046万0288円,切手・はがき類購買経費が143億3553万7906円,減価償却費853億8130万8908円,施設使用料が291億3607万2657円,租税公課が3億6942万7124円,集配運送委託費が1845億7232万0908円,取扱手数料が335億0992万9764円,その他が1033億9708万5997円となっている。また,小包郵便物については,被告が公表した平成15年度郵便の種類別収支によると,同年度では,営業収益1686億円から営業費用1676億円を差し引いた営業利益が10億円となっており,また,被告が公表した平成16年度郵便の種類別収支によると,同年度では,営業収益2345億円から営業費用2264億円を差し引いた営業利益が81億円となっていることが認められる。 このように郵便事業全体(郵便には,小包郵便のほかに,通常郵便と国際郵便が含まれる。)における営業費用については被告において公表されているけれども,小包郵便(小包郵便は,一般小包郵便物(ゆうパック)のほか,冊子小包郵便物が含まれる。)における営業費用は,その総額しか公表されていないところ,本件においては,一般小包郵便物(ゆうパック)における総販売原価については,どのような項目で構成され,その額がいくらであり,その総額がいくらになるかについて具体的な主張,立証はない。 ウa 原告は,「原告の宅急便の平成15年度の年間取扱個数は約10億1100万個であり,年間の経常利益は約347億円であるから,宅急便1個当たりの経常利益は約34.32円であり,原告以外の民 ウa 原告は,「原告の宅急便の平成15年度の年間取扱個数は約10億1100万個であり,年間の経常利益は約347億円であるから,宅急便1個当たりの経常利益は約34.32円であり,原告以外の民間における宅配便サービスも原告とほぼ同額の料金としていることからして,原告の宅急便の料金を最低でも40円,最大で2220円も下回る被告の一般小包郵便物(ゆうパック)のサービスの料金が原価を下回ることは明らかである。」と主張する。 しかし,不当廉売の規制は,前記のとおり,公正な競争秩序を維持するために,当該事業者における効率性を反映していない価格を問題とするものであり,効率性に劣る他の事業者等を保護するものではないから,一般指定6項前段の「供給に要する費用」とは,当該行為を行っている者における「供給に要する費用」であって,業界一般の「供給に要する費用」又は特定の競争者の費用をいうものとは解されない。そして,原告の「供給に要する費用」と被告の「供給に要する費用」とが同一であると想定することはできないし,そもそも,経常利益は,営業利益のほかに,営業外の損益も計上して算出されるものであるから,「供給に要する費用」と供給の対価との比較をするに際し,経常利益を基準として用いることが相当であるとも解されない。 したがって,原告の料金との比較から直ちに被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の新料金体系による役務の供給が「供給に要する費用」を下回ると推認することはできない。 b 次に,原告は,「『その供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し』ていることとは,その役務についての収支が継続的に著しく赤字であることと置き換えることができる。」としたうえで,「被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆ る費用を著しく下回る対価で継続して供給し』ていることとは,その役務についての収支が継続的に著しく赤字であることと置き換えることができる。」としたうえで,「被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパック)の役務に係る事業は,継続的に赤字であり,そのため,上記役務が『その供給に要する費用』を下回る対価で供給されたと推認される」と主張する。 確かに,供給に要する費用を下回る対価であれば,取扱量が増加しても,損益分岐点に到達することはおよそあり得ず,取扱個数が増加するに連れ,赤字が増加する関係にあるから,役務についての収支が継続的に著しく赤字である場合のうち,取扱個数が増加しているにもかかわらず,赤字が増加しているときは,供給に要する費用を下回る対価で供給しているとの推認が働く余地がある。 しかし,前記認定事実によれば,被告においては,一般小包郵便物(ゆうパック)の取扱個数が平成15年度の1億8218万個から平成16年度に2億1469万個に約17.8パーセント増加し,小包郵便物の黒字も平成15年度の10億円から平成16年度に81億円に増加していることが認められる。小包郵便物には,一般小包郵便物(ゆうパック)のほか,冊子小包郵便物が含まれることから,冊子小包郵便物の取扱個数の増減も考慮する必要があるけれども,少なくとも,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)については取扱個数が増加しているにもかかわらず,赤字が増加しているといった状況は認め難い。 したがって,これらの事実に照らせば,被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパック)の役務に係る事業が継続的に赤字であり,そのため,上記役務が「その供給に要する費用」を下回る対価で供給されたと推認されるということもできない。 c 原告は,「被告の一般小包郵 物(ゆうパック)の役務に係る事業が継続的に赤字であり,そのため,上記役務が「その供給に要する費用」を下回る対価で供給されたと推認されるということもできない。 c 原告は,「被告の一般小包郵便物(ゆうパック)は,税金の免除をはじめとする種々の優遇措置によって成り立っており,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)単独では,赤字である。税金の優遇措置による利益の合計は,約570億8000万円となるところ,これを郵便事業の中の各事業別の営業費用の割合に従って配賦すると,このうち,約52億6000万円が小包郵便物の事業の負担となるはずであり,また,原告の試算によれば,駐車禁止の規制が除外される優遇措置によって,約94億7753万円の費用を免れている。」旨主張する。 確かに,「供給に要する費用」とは,前記のとおり,当該行為を行っている者の供給に要する費用であって,業界一般の供給に要する費用又は特定の競争者の費用を基準とすべきでないというべきであるが,原価を形成する要因が,いわゆる企業努力によるものでなく,当該事業者の場合にのみ妥当する特殊な事情によるものであるときに,これらの特殊事情の存在を考慮する必要があることは,原告の主張するとおりである。 しかし,まず,所得税,事業税及び住民税の支払が免除されていることについてみれば,これらは,本来利益に課せられるものであるか,利益の有無にかかわらず,一定の基準の下に課せられる性質のものであって,いずれも総販売原価を構成する性質のものではなく,所得税,事業税及び住民税の支払に要する費用は,一般指定6項前段の「供給に要する費用」とはいえないから,所得税,事業税及び住民税の支払を免れているとの事情を被告の「供給に要する費用」を形成する要因として考慮するのは相当とはいえない。 ,一般指定6項前段の「供給に要する費用」とはいえないから,所得税,事業税及び住民税の支払を免れているとの事情を被告の「供給に要する費用」を形成する要因として考慮するのは相当とはいえない。 次に,原告が主張するその他の優遇措置についてみると,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の役務における「供給に要する費用」の形成に影響を及ぼす可能性があることは否定できない。 しかし,郵便法は,「郵便の役務をなるべく安い料金で,あまねく,公平に提供することによつて,公共の福祉を増進することを目的」としている(同法1条)ところ,郵便に関する料金について,「郵便に関する料金は,郵便事業の能率的な経営の下における適正な費用を償い,その健全な運営を図ることができるに足りる収入を確保するものでなければならない。」と定めた(同法3条)うえ,「公社は,郵便に関する料金のうち次に掲げるものを定め,総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも,同様とする。」とし,認可を要するものとしては,「通常郵便物の料金」,「通常郵便物の特殊取扱(書留,速達,引受時刻証明,配達証明,内容証明,代金引換,特別送達及び年賀特別郵便に限る。)の料金」及び「国際郵便に関する料金(総務省令で定めるものに限る。次項第6号において同じ。)」を定め(同法75条の2第1項),「第三種郵便物及び第四種郵便物の料金の額が同一重量の第一種郵便物の料金の額より低いものであること」などを認可の要件として定め(同条2項),「公社は,郵便に関する料金(第1項各号に掲げるものを除く。)を定め,あらかじめ,総務大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも,同様とする。」とし(同条3項),さらに,「総務大臣は,この法律を施行するため必要があると認めるときは,公 除く。)を定め,あらかじめ,総務大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも,同様とする。」とし(同条3項),さらに,「総務大臣は,この法律を施行するため必要があると認めるときは,公社に対し,郵便に関する料金又は郵便約款を変更すべきことを命ずることができる。」(同法75条の5)と定めて総務大臣による料金等の変更命令を規定している。 また,被告は,郵便法の規定による郵便の業務,郵便貯金法(昭和22年法律第144号)の規定による郵便貯金の業務,郵便為替法(昭和23年法律第59号)の規定による郵便為替の業務,郵便振替法(昭和23年法律第60号)の規定による郵便振替の業務及び簡易生命保険法(昭和24年法律第68号)の規定による簡易生命保険の業務並びにこれらに附帯する業務を行うため,総務省令で定めるところにより,郵便局をあまねく全国に設置することが義務付けられている(日本郵政公社法20条1項)。 さらに,被告は,国家公務員共済組合の給付に要する費用のうち国民年金法(昭和34年法律第141号)94条の2第2項に規定する基礎年金拠出金の納付に要する費用については,当該事業年度において納付される基礎年金拠出金の額の2分の1に相当する額を負担するとされている(国会公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)99条3項2号)。 被告が,原告主張のような優遇措置を受ける一方で,法律上,このような郵便料金についての認可制等の負担や郵便局をあまねく全国に設置する義務を課されていることからすると,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の一般指定6項前段の「供給に要する費用」の算定に当たり,所得税等を除いた優遇措置による影響を経済的に考慮するとした場合には,これらの負担や義務が被告の事業に与える経済的な影響も併せて検討 パック)の一般指定6項前段の「供給に要する費用」の算定に当たり,所得税等を除いた優遇措置による影響を経済的に考慮するとした場合には,これらの負担や義務が被告の事業に与える経済的な影響も併せて検討する必要があるというべきである。 しかし,本件においては,被告にこれらの負担や義務が課されていることが被告の事業に与える経済的な影響などについては,何らの主張,立証もないことからすれば,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の一般指定6項前段の「供給に要する費用」の算定に当たり,単に所得税等を除く優遇措置による影響のみを経済的に算定して考慮することは相当とはいえないし,被告の財務諸表や郵便の種類別収支で示される原価が不当であると認めることもできない。 したがって,原告の主張するように,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)に関する事業は,税金の免除をはじめとする種々の優遇措置によって成り立っており,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)単独では赤字であるとの前提が存在するとして,一般小包郵便物(ゆうパック)の供給が「供給に要する費用」を下回っていると認めることはできない。 d 原告は,「被告の一般小包郵便物(ゆうパック)に関する事業は,独占事業である信書事業によって得られた利益からの補てんによって成り立っており,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)単独では,赤字である。」と主張する。 確かに,前記認定事実によれば,① 被告の平成14年度及び平成15年度の郵便種類別収支については,小包郵便物の収支が平成14年度は46億円の赤字で,平成15年度も10億円の黒字にすぎないのに対し,第一種郵便物の収支は,平成14年度は432億円の黒字で,平成15年度も761億円の黒字であり,また,第二種郵便物の収支も,平成14年度は24 字で,平成15年度も10億円の黒字にすぎないのに対し,第一種郵便物の収支は,平成14年度は432億円の黒字で,平成15年度も761億円の黒字であり,また,第二種郵便物の収支も,平成14年度は24億円の黒字で,平成15年度も156億円の黒字となっていること,② 小包郵便物の1個当たりの平均収支が,平成14年度は10.65円の赤字で,平成15年度も1.4円の黒字にすぎないのに対し,第一種郵便物の1個当たりの平均収支は,平成14年度は3.37円の黒字で,平成15年度も6.1円の黒字となり,また,第二種郵便物の1個当たりの平均収支も,平成14年度は0.21円の黒字で,平成15年度も1.5円の黒字となっていること,③ 他方,第三種郵便物の収支は,平成14年度は269億円の赤字であり,平成15年度は216億円の営業損失であり,第四種郵便物の収支も,平成14年度は41億円の赤字で,平成15年度も30億円の営業損失があり,また,特殊取扱の収支も,平14年度は306億円の赤字で,平成15年度も92億円の営業損失があったこと,④ 第三種郵便物の1個当たりの平均収支は,平成14年度は27.78円の赤字,平成15年度も25.2円の赤字であり,第四種郵便物の1個当たりの平均収支も,平成14年度は109.65円の赤字,平成15年度も73.1円の赤字であり,また,特殊取扱の1個当たりの平均収支も,平成14年度は49.06円の赤字,平成15年度も17.5円の赤字であったこと,⑤ 通常郵便物の全体の収支をみても,平成14年度は160億円の赤字であったものの,平成15年度には579億円の営業利益があったこと,⑥ 通常郵便物の全体の個当たりの平均収支も,平成14年度には0.63円の赤字であったものの,平成15年度には2.3円の黒字となったことが,それぞれ認められ 度には579億円の営業利益があったこと,⑥ 通常郵便物の全体の個当たりの平均収支も,平成14年度には0.63円の赤字であったものの,平成15年度には2.3円の黒字となったことが,それぞれ認められる。 上記の各事実に照らせば,被告の平成14年度の収支と平成15年度の収支については,被告の公社化に伴い,企業会計原則に基づく会計処理に変更したことのほか,種類別に配賦する収益・費用の範囲や費用を種類別に計算する方法を変更したことから,平成15年度の計数と平成14年度の計数を単純比較はできないものの,おおむね,第一種郵便物及び第二種郵便物は,黒字であるものの,第三種郵便物,第四種郵便物及び特殊取扱は,赤字であって,通常郵便物全体をみれば,平成14年度には赤字であったものが,平成15年度に黒字となったということができる。 したがって,原告が主張するように,通常郵便物による利益をもって,一般小包郵便物(ゆうパック)の事業が成り立っているという関係を認めることは困難というべきである。 なお,原告は,「被告の郵便事業には,約1693億円の長期融通と約1690億円の短期融通等の借入金があるため,年間約168億8000万円の利息を支払っている。借入金で事業を行う場合に,利息が払えなければ倒産するので,赤字か否かの判断には利息の支払も含める必要がある。被告の第1期事業年度(平成15年4月1日から平成16年3月31日まで)の郵便事業の営業外収支は,約149億9000万円の赤字であるから,これを郵便事業の中の各事業別の営業費用の割合に従って配賦すると,このうち約13億8000万円が小包郵便物の事業の負担となり,小包郵便物の事業の経常収支は約3億8000万円の赤字となるのに対し,同様の方法で計算した第一種郵便物の事業の経常収支は約692億3000万円の黒字 13億8000万円が小包郵便物の事業の負担となり,小包郵便物の事業の経常収支は約3億8000万円の赤字となるのに対し,同様の方法で計算した第一種郵便物の事業の経常収支は約692億3000万円の黒字となり,また,第二種郵便物の事業は約118億3000万円の黒字となる。そうすると,結果として,被告の小包郵便物の事業は,営業利益のみで黒字であっても,支払利息の負担を計算に入れて計算すると赤字であり,この赤字は,第一種郵便物及び第二種郵便物の事業の利益で補てんされていることとなる。」と主張するが,一般指定6項前段の「その供給に要する費用を著しく下回る対価」とは,最終的な収益が赤字であるということとは異なり,当該事業における借入金の返済をする必要がある場合であっても,「供給に要する費用」を上回る対価で役務を供給していれば,営業利益を得る余地はあり,これによって借入金を返済していくこともでき,一般指定6項前段の「供給に要する費用」とは,前記のとおり,営業原価に販売費及び一般管理費を加えた総販売原価をいうのであって,支払利息を含むものではないから,被告が郵便事業の借入金の利息として,原告主張のとおりの支払をしているとしても,この点を,被告の「供給に要する費用」の算定の際に考慮することが相当とは解されない。 e 原告は,「被告の一般小包郵便物(ゆうパック)は,国の信用を背景とする郵便貯金及び簡易保険事業の利益からの調整によって成り立っており,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)単独では,赤字である。」と主張し,その理由として,まず「郵便事業と郵便貯金事業及び簡易保険事業との共通経費の配賦において,郵便事業への配賦が不当に少ない。すなわち,共通経費約1兆1998億円のうち約4970億円(41.42パーセント)が郵便事業に配分されているところ,基礎年金 簡易保険事業との共通経費の配賦において,郵便事業への配賦が不当に少ない。すなわち,共通経費約1兆1998億円のうち約4970億円(41.42パーセント)が郵便事業に配分されているところ,基礎年金拠出金として支払っている公経済負担の総額約367億円のうち約204億円が郵便事業の負担であることからすれば,約55.6パーセントを郵便事業の負担とすべきであり,この配賦割合に従って,共通経費約1兆1998億円のうち郵便事業の負担とすべき部分を計算し直すと,約6670億円となり,前記4970億円との差額1700億円が不当に調整されている。これを郵便事業における小包郵便物の占める営業費用の割合で配分すると,156億6000万円の負担があるはずである。また,被告の平成15年度の貸借対照表によれば,土地建物の資産合計約3兆2850億円であり,郵便業務の区分に係る貸借対照表の内訳に計上されている土地建物の資産合計約1兆8383億円であるから,被告の不動産のうち約55.9パーセントが郵便事業に割り付けられている。郵政三事業における人件費及び不動産の割合は,共通経費の適正な配賦割合を決めるに当たっての主要な指標というべきであり,原告と被告との競争条件の平等という観点からは,郵政三事業の共通経費のうち郵便事業に配賦されるべき割合は,約55.6パーセントとするのが相当である。」旨主張する。 確かに,「日本の郵政・平成16年度版」(甲7の1)によれば,郵政三特別会計(郵政事業特別会計,郵便貯金特別会計及び簡易生命保険特別会計を指している。)において,総務省,郵政事業庁郵政局などの管理部門経費及び郵便局の総務部門経費等7300億円と郵政事業全体の減価償却費等4698億円の合計1兆1998億円の管理共通業務に必要な経費を,事業別,人員数,使用面積等の割合で負担 庁郵政局などの管理部門経費及び郵便局の総務部門経費等7300億円と郵政事業全体の減価償却費等4698億円の合計1兆1998億円の管理共通業務に必要な経費を,事業別,人員数,使用面積等の割合で負担した結果,郵政事業の負担は4970億円とされている旨の記載があることは,原告の指摘するとおりである。 しかし,これらの記載は,被告が公社となったことに伴い平成14年度限りで廃止された郵政三特別会計における共通経費の配賦に関する記載にすぎず,他方,前記認定事実によれば,被告は,公社化に併せ,企業会計原則に基づく会計処理に変更したことのほか,種類別に配賦する収益・費用の範囲や費用を種類別に計算する方法を変更したことから,平成15年度の計数と平成14年度の計数を単純比較はできないことが認められるところ,原告が指摘する郵便事業の負担割合は公社化後の経費に基づくものであることがうかがわれるから,これらの記載から1700億円が不当に調整されているとみることはできない。 また,原告は,「共通経費の配賦割合については,会計処理上の適法性の問題は幅が広いものであるから,競争条件の公正という観点からの検証が必要である。」と主張する。 しかし,中央省庁等改革基本法は,政府が総務省に置かれる郵政事業庁の所掌に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際に従う方針として,その公社の経営については,独立採算制の下,自律的かつ弾力的な経営を可能とすること(同法33条1項2号),予算及び決算は企業会計原則に基づき処理し,毎年度の国会の議決を要しないものとするほか,繰越し,移用,流用,剰余金の留保を可能とするなどその統制を必要最小限度のものとすること(同項4号)などを定めている。さらに,政府規制等と競争政策に関する研究会の報告書 議決を要しないものとするほか,繰越し,移用,流用,剰余金の留保を可能とするなどその統制を必要最小限度のものとすること(同項4号)などを定めている。さらに,政府規制等と競争政策に関する研究会の報告書及び郵政事業の公社化に関する研究会の最終報告等を踏まえて,郵政公社法においては,被告の会計は,総務省令で定めるところにより,企業会計原則によるものとするとされ(同法29条),また,被告は,前記のとおり,毎事業年度,財務諸表を作成し,当該事業年度の終了後3月以内に総務大臣に提出し,その承認を受けなければならないとされている(同法30条1項)うえ,財務諸表のうち,貸借対照表,損益計算書その他の総務省令で定める書類については,郵便業務,郵便貯金業務及び簡易生命保険業務の区分ごとの内訳を明らかにしなければならないとされ(同条2項),被告は,同条1項の規定により財務諸表を総務大臣に提出するときは,これに当該事業年度の事業報告書を添え,並びに財務諸表及び事業報告書(会計に関する部分に限る。)に関する監事及び会計監査人の意見を付けなければならず(同法30条3項),財務諸表及び事業報告書(会計に関する部分に限る。)について,監事の監査のほか,総務大臣が選任する会計監査人の監査を受けなければならないとされている(同法31条)。このように,郵便事業と郵便貯金事業及び簡易保険事業との共通経費の配賦については,法制度上,明確に区分するとともに,公認会計士等の外部者による監査を受けていることとされていることからすれば,郵便事業と郵便貯金事業及び簡易保険事業との共通経費の配賦において,郵便事業への配賦が不当に少なく調整されているとみることは困難である。 また,前記認定事実によれば,共通経費の配賦について,発生原因に基づく割合や職員の勤務時間比などの割合によって行 賦において,郵便事業への配賦が不当に少なく調整されているとみることは困難である。 また,前記認定事実によれば,共通経費の配賦について,発生原因に基づく割合や職員の勤務時間比などの割合によって行われていることがうかがわれるのに対し,本件各証拠を検討しても,被告が共通費用について不適切な配賦を行っているとの的確な証拠は存在しない。 したがって,被告における共通費用の配賦の結果について,郵便事業への配賦が不当に少ないなど不相当なものがあると認めることはできないから,これを前提とする原告の上記主張は理由がない。 エ以上のとおり,本件においては,一般小包郵便物(ゆうパック)における総販売原価については,どのような項目で構成され,その額がいくらであり,その総額がいくらになるかについて,具体的な主張,立証がされていないうえ,原告の主張する各事由を個別に検討しても,被告の新料金体系に基づく一般小包郵便物(ゆうパック)の役務が一般指定6項前段の「その供給に要する費用…下回る対価」で供給されているという事実を認めることは困難である。 (4) 次に,被告が,一般小包郵便物(ゆうパック)の役務を,一般指定6項後段の「不当に…低い対価で供給し」ていると認められるか否か(争点(2)イ)について検討する。 役務の供給の対価が一般指定6項後段の「不当に…低い対価」に当たるというためには,それが「その供給に要する費用」を下回る対価で供給されていると認められることが必要であることは,前述したとおりであるところ,本件において,被告の新料金体系に基づく一般小包郵便物(ゆうパック)の役務が「その供給に要する費用」を下回る対価で供給されていると認めることができないことは,既に(3)に詳述したとおりである。 また,原告は,被告が民業を圧迫する形で官業を肥 物(ゆうパック)の役務が「その供給に要する費用」を下回る対価で供給されていると認めることができないことは,既に(3)に詳述したとおりである。 また,原告は,被告が民業を圧迫する形で官業を肥大化させようとする動きをしていることは,そもそも国の政策に反し不当であると主張するが,一般指定6項は,「不当廉売」によることを「不公正な取引方法」として指定する規定であり,一般指定6項後段の「不当」も「商品又は役務を低い価格で供給すること」について判断されるべきものであって,原告主張のように民業の圧迫に該当するか否かなどが考慮されることは予定していないというべきであり,また,本件においては,被告の新料金体系に基づく一般小包郵便物(ゆうパック)の役務の提供が,税金や郵便事業による収益からの赤字の補てんを前提に成り立っているものとは認められないことも前記認定のとおりである。 以上のとおり,被告が,一般小包郵便物(ゆうパック)の役務を,一般指定6項後段の「不当に…低い対価で供給し」ていると認めることはできない。 (5) 一般指定6項の「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」の有無についてア一般指定6項の「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある」とは,他の事業者の事業活動を困難にさせる結果が招来される蓋然性が認められる場合を指すと解されるところ,他の事業者の事業活動を困難にさせる結果を招来させる蓋然性が認められるか否かは,不当廉売の規制の趣旨が公正な競争秩序を維持することにあることからして,①廉売を行っているとされる事業者の事業の規模及び態様,②廉売とされている役務又は商品の性質,その供給の数量及び期間,方法,③廉売によって影響を受けるとされる他の事業者の事業の規模及び態様等を総合的に考慮して判断するのが相当である。 業の規模及び態様,②廉売とされている役務又は商品の性質,その供給の数量及び期間,方法,③廉売によって影響を受けるとされる他の事業者の事業の規模及び態様等を総合的に考慮して判断するのが相当である。 イ 「前提となる事実」及び前記認定事実によれば,次の各事実が認められる。 a 平成15年度には,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)は,取扱個数において6パーセントのシェアで,売上ベースにおいて6.5パーセントで業界第5位であるに対し,原告の宅急便は,取扱個数において33.5パーセントのシェアで,売上ベースにおいて40.8パーセントで業界第1位であったことb 同年度の平均単価は,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)が605.4円であったのに対し,原告の宅急便は682.5円であり,また,佐川急便の宅配便が530.2円,日本通運の宅配便が519円,福山通運株式会社の宅配便が383.2円,西濃運輸株式会社の宅配便が362.9円であったことc 原告の宅急便取扱個数は,平成16年4月から同年9月までの合計5億0972.9万個が平成15年の同時期と比べると105パーセントであったところ,平成16年10月から平成17年3月までの合計5億5332.8万個も平成15年の同時期と比べても105.3パーセントとなっていたことd 原告の平成16年度の宅急便取扱個数は,10億6300万個で,平成15年度に比べて5.1パーセント増加し,原告の平成16年度の宅急便の営業収益は,7085億300万円で平成15年度に比べて2.7パーセント増加したことe 原告の平成17年4月1日から同年6月30日までの宅急便取扱個数は,2億5100万個で,平成16年の同時期と比べて7パーセント増加したことf 原告の平成17年4月1日から同年6月30日までの宅急便の売上高は,1644億84 ら同年6月30日までの宅急便取扱個数は,2億5100万個で,平成16年の同時期と比べて7パーセント増加したことf 原告の平成17年4月1日から同年6月30日までの宅急便の売上高は,1644億8400万円で,平成16年の同時期と比べて4.5パーセント増加したことg 原告は,平成16年7月から「超速宅急便」のエリアを拡大するとともに,宅急便のお届日・時間帯をeメールで知らせる「宅急便お届け通知サービス」を開始し,同年11月から担当セールスドライバーの携帯電話に顧客の要望を連絡する「ドライバーダイレクト」を開始したことh さらに,原告は,平成17年度(平成18年3月期)における宅急便取扱個数を,前年比5.1パーセント増の11億1700万個と予想し,同期における宅急便売上を,前年比3.5パーセント増の7330億円と予想していることウ以上のとおり,被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の事業の規模に比べ,原告の宅急便の事業規模が大きいこと,原告の平均単価が被告及び他の競争事業者と比較して高額であるにもかかわらず,最大のシェアを維持していること,宅急便の物流事業においては,価格の高低のみならず,配達時間の短さや配達の正確性その他のサービスによって需要が左右される傾向が見受けられること,原告は,被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパック)の役務の供給を開始した平成16年10月以降も,各種のサービスの改善等の営業努力によって,宅急便の単価を減少させる一方で,売上及び収益を増やしており,原告自身,そのような傾向は今後も続くものと予想していることなどが認められ,これらの事情を総合的に勘案すると,被告の新料金体系に基づく一般小包郵便物(ゆうパック)の供給によって,原告の事業活動を困難にさせるおそれが存在すると認めることは困難である。 ( どが認められ,これらの事情を総合的に勘案すると,被告の新料金体系に基づく一般小包郵便物(ゆうパック)の供給によって,原告の事業活動を困難にさせるおそれが存在すると認めることは困難である。 (6) 小括以上によれば,被告の新料金体系に基づく一般小包郵便物(ゆうパック)の役務の提供は,一般指定6項前段の「その供給に要する費用…下回る対価」で供給するものとも,一般指定6項後段の「不当に…低い対価で供給し」ているとも認められず,また,「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある」とも認められないから,一般指定6項所定の不公正な取引方法に当たるということはできない。 2 一般指定9項の不当な利益による顧客誘引の有無(争点(1))について(1) 一般指定9項の不当な利益による顧客誘引の趣旨等について前記のとおり,独占禁止法2条9項3号を受けて定められた「不公正な取引方法」(一般指定)の9項では,「(不当な利益による顧客誘引)」との見出しのもとに「正常な商慣習に照らし不当な利益をもつて,競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること。」が指定されている。 このような行為が不公正な取引として規制されているのは,顧客の勧誘は,競争の本質的な要素であり,それ自体は非難されるものではないけれども,本来的な取引対象である商品又は役務以外の経済上の利益を提供することにより顧客を誘引する不公正な競争手段が用いられると,商品又は役務の価格や品質による本来の能率競争が行われないおそれがあるばかりか,消費者による適正な商品又は役務の選択が歪められるおそれがあり,公正かつ自由な競争が阻害されるからであると考えられるから,一般指定9項の「不当な利益」とは,経済上の利益をいうと解すべきである。 (2) そこで,被告が顧客に対して正常な商慣習に照ら おそれがあり,公正かつ自由な競争が阻害されるからであると考えられるから,一般指定9項の「不当な利益」とは,経済上の利益をいうと解すべきである。 (2) そこで,被告が顧客に対して正常な商慣習に照らして不当な利益を提供しているか否かを検討する。 ア原告は,「被告が,株式会社ローソンに対し,①郵便局舎の余裕スペースを低額の賃料で賃貸しているなどの拠点確保の利益,②将来における郵便貯金,簡易生命保険の窓口業務の委託の可能性,③不当廉売に当たる低価格,④ローソン店舗内の私設郵便差出箱からの取集料の免除という一般指定9項の『不当な利益』をそれぞれ提供した。」と主張するので,順次,検討する。 イ原告は,被告は株式会社ローソンに対して,余裕スペースを賃貸して拠点確保の利益を与えていると主張する。 a 株式会社ローソンが,被告から,郵便局舎の余裕スペースを賃借して,平成15年8月5日代々木郵便局内に「ポスタルローソン代々木局店」を,同月26日青葉台郵便局内に「ポスタルローソン青葉台局店」を,平成16年8月5日被告北海道支社内に「ポスタルローソン道庁赤れんが前店」をそれぞれ出店したことは前記認定のとおりである。 b 各項末尾掲記の証拠によれば,以下の事実が認められる。 (a) (被告総裁の平成15年6月17日の定例会見における発言)被告総裁は,平成15年6月17日,定例会見において,記者から「郵便局の有効活用ですが,たしか,2つの局に,ローソンの店舗を設置すると思いますけど,これは6月末の予定が何か一部聞くところによると,何か延び延びになるのではないかと。その辺についてはいかがでしょうか。」との質問を受けて,「僕の理解では,まだローソンは決まっていないと思うけどな。」と返答し,さらに記者から「ローソンは6月末という予 延び延びになるのではないかと。その辺についてはいかがでしょうか。」との質問を受けて,「僕の理解では,まだローソンは決まっていないと思うけどな。」と返答し,さらに記者から「ローソンは6月末という予定で,部局で準備されていると思う。」と指摘を受けて,事務方に「知っていますか」と尋ねたうえ,「僕の理解ではね,まだ契約とか,きちっとした格好では決まってないと思いますよ。だけど,できたら,7月中旬ぐらいをめどに,できるように話を詰めてみましょうと,これ言っていいのかどうか知らないけれども,そういう段階だと理解しますけれども。」と発言した。 また,被告総裁は,記者から「ちょっと若干,先に延びている。」と言われ,「意識的に延ばしているとか,そういうあれはないと思いますけど。何か手続的なあれで。あるいは,ローソンさんのお考えかな。特に延ばそうなんていう考えは別にありませんけど。」と発言した。 さらに,被告総裁は,記者から,「何か具体的に課題として上がっているようなものはあるのでしょうか,両社で。」と質問を受け,「まあ,大変難しい質問ですけれども,郵便局を,まずお客様に喜んでいただけるようにきれいにしなければいけないのだけれども,きれいにした郵便局に余裕のスペースがあれば,郵便局はもう千差万別ですから,今でも窮屈でしようがないところもあれば,多少スペースの余っているところもあるから,余っているところで,使っていただける場所があれば,何か考えたいとは思っています。今,具体的に何ということを申し上げる段階ではないです。まあ,心に考えているのはやっぱり,社会にお役に立つということと,それから,民業圧迫になると言われるようなことはやらない方がいいだろう。 そういうことは極力排しながら,なおかつ,郵便局の採算性というのもありますから いるのはやっぱり,社会にお役に立つということと,それから,民業圧迫になると言われるようなことはやらない方がいいだろう。 そういうことは極力排しながら,なおかつ,郵便局の採算性というのもありますから,多少でも役立つことは,これから考えていきたいなと思っております。」と発言した。 (甲15の3)(b) (被告総裁の平成15年7月16日の定例会見における発言)被告総裁は,平成15年7月16日,定例会見において,「既に報道発表させていただいておりますけれども,ローソンが8月5日に,代々木郵便局,8月26日に青葉台郵便局でポスタルショップをオープンいたします。」と発言した。 (甲15の4)(c) (ポスタルローソンの賃料)代々木郵便局内の「ポスタルローソン代々木局店」は,賃貸面積78.63平方メートルで,賃貸料は月額38万5287円である。 青葉台郵便局内の「ポスタルローソン青葉台局店」は,賃貸面積89.97平方メートルで,賃貸料は月額31万4895円である。 被告北海道支社内の「ポスタルローソン道庁赤れんが前店」は,賃貸面積176.56平方メートルで,賃貸料は月額66万7396円(消費税額及び地方消費税額3万1780円を含む。)である。 (乙13の1から3まで)(d) (みずほ信託銀行株式会社による賃料水準の評価)みずほ信託銀行株式会社は,代々木郵便局内に設置されているポスタルローソンの賃料水準を一坪約7000円から約9000円までであり,ポスタルローソン青葉台局店の賃料水準を一坪約1万2000円から約1万4000円までであり,ポスタルローソン道庁赤れんが前店の賃料水準を一坪約8000円から約1万円までであるとそれぞれ評価した。 (甲43の1から3まで)c(a) 日本郵政公社法施行法5条は,「 000円までであり,ポスタルローソン道庁赤れんが前店の賃料水準を一坪約8000円から約1万円までであるとそれぞれ評価した。 (甲43の1から3まで)c(a) 日本郵政公社法施行法5条は,「権利義務の承継」として,「公社法の施行の際現に旧総務省設置法第4条第79号に掲げる事務に関し国が有する権利及び義務(郵政事業特別会計,郵便貯金特別会計及び簡易生命保険特別会計がそれぞれ国の他の会計及び資金(財政法(昭和22年法律第34号)第44条に規定する資金をいう。)に対して有する権利及び義務を含む。)は,附則第2条第2項に規定するものその他政令で定めるものを除き,その時において公社が承継する。」としている。 また,日本郵政公社法施行令附則3条は,「公社が承継しない権利義務」として,「日本郵政公社法施行法(以下「施行法」という。)第5条の政令で定める権利及び義務は,次に掲げる権利及び義務とする。」とし,同令附則3条1号で「郵政事業庁の所属に属する土地,建物及び工作物(その土地に定着する物及びその建物に附属する工作物を含む。)のうち,総務大臣が財務大臣に協議して指定するもの以外のものに関する権利及び義務」を,同条2号で「法の施行の際現に総務省の郵政企画管理局及び郵政公社統括官に使用されている物品のうち総務大臣が指定するものに関する権利及び義務」と定めている。 このように,公社化の際にすべての不動産が被告に当然に承継されるわけではないが,被告に属した不動産を国に返還することを定めた規定は見当たらず,原告の主張するような被告に属する不動産に余裕スペースがあるならば,これを財務省に返還して他の有効活用を図るのが当然であるとする根拠を見い出すことはできないから,郵便局舎の余裕スペースは「これを財務省に返還して他の有効活用 属する不動産に余裕スペースがあるならば,これを財務省に返還して他の有効活用を図るのが当然であるとする根拠を見い出すことはできないから,郵便局舎の余裕スペースは「これを財務省に返還して他の有効活用を図るのが当然である」ことを前提とする原告の主張を認めることはできない。 (b) また,前記認定事実によれば,代々木郵便局内に設置されている「ポスタルローソン代々木局店」の賃料は1平方メートル当たり4900円(一坪当たり1万6170円),青葉台郵便局内に設置されている「ポスタルローソン青葉台局店」の賃料は1平方メートル当たり3500円(一坪当たり1万1550円),被告北海道支社内に設置されている「ポスタルローソン道庁赤れんが前店」の賃料は1平方メートル当たり3600円(一坪当たり1万1880円)であると認められる。 これらの賃料は,みずほ信託銀行株式会社が評価した賃料水準(ポスタルローソン代々木局店につき一坪約7000円から約9000円まで,ポスタルローソン青葉台局店につき一坪約1万2000円から約1万4000円までで,ポスタルローソン道庁赤れんが前店につき一坪約8000円から約1万円まで)と比べても,不当に低額な賃料とはいえないから,被告が株式会社ローソンに対して郵便局舎の余裕スペースを不当に低額な賃料で賃貸していると認めることはできない。 なお,原告は,「被告が証拠として提出した賃貸借契約書は,賃貸借開始当時の賃料額を立証するものではなく,また,被告が株式会社ローソンに対する一般小包郵便物(ゆうパック)の勧誘をしていたと考えられる平成16年3月ころの賃料額は,何ら立証されていない。」旨主張する。しかし,株式会社ローソンが,代々木郵便局内に「ポスタルローソン代々木局店」を出店したのは平成15年8月5日,青葉台郵便局 えられる平成16年3月ころの賃料額は,何ら立証されていない。」旨主張する。しかし,株式会社ローソンが,代々木郵便局内に「ポスタルローソン代々木局店」を出店したのは平成15年8月5日,青葉台郵便局内に「ポスタルローソン青葉台局店」を出店したのは同月26日,被告北海道支社内に「ポスタルローソン道庁赤れんが前店」を出店したのは平成16年8月5日であるところ(原告が指摘の平成16年3月には,被告北海道支社に係る賃貸借はいまだされていない。),被告が提出した代々木郵便局に係る賃貸借契約書(乙13の2)は平成16年8月4日付けのものであり,青葉台郵便局に係る賃貸借契約書(乙13の1)は同月25日付けのものであり,また,被告北海道支社に係る賃貸借契約書(乙13の3)は同年6月30日付けのものである。 上記の被告北海道支社に係る賃貸借契約書は,契約当初のものであると認められ,その余の代々木郵便局に係る賃貸借契約書及び青葉台郵便局に係る賃貸借契約書についても,使用開始から1年ほど後のものであることからすれば,当初の賃料が,これらの契約書記載の賃料と大きく異なることは窺われない。 d したがって,被告が株式会社ローソンに対して,郵便局舎の余裕スペースを不当に低額な賃料で貸し付け,不当な利益を提供しているとは認めることはできない。 ウ次に,原告は,被告が,株式会社ローソンに対し,将来における郵便貯金,簡易生命保険の窓口業務の委託の可能性を提供したと主張する。 この点について,原告がその根拠として引用する被告総裁の発言は,コンビニエンスストアが被告の業務に関心を示す可能性があることを示唆しているにすぎず,株式会社ローソンに対して何らの利益提供をしていることを示すものとは認められないし,その他に,被告が株式会社ローソンに対し,具体的な アが被告の業務に関心を示す可能性があることを示唆しているにすぎず,株式会社ローソンに対して何らの利益提供をしていることを示すものとは認められないし,その他に,被告が株式会社ローソンに対し,具体的な経済上の利益を提供していると認めるに足る証拠もない。 したがって,被告は,株式会社ローソンに対し,将来における郵便貯金,簡易生命保険の窓口業務の委託に関し,不当な利益を提供しているとは認められない。 エさらに,原告は,被告が不当廉売に当たる低価格の提供をしたと主張する。 しかし,被告の新料金体系に基づく役務の供給が不当廉売に当たると認めることができないことは,既に前記1において詳述したところである。 したがって,被告が,株式会社ローソンに対し,このような不当な利益を提供しているとは認められない。 オまた,原告は,被告が,株式会社ローソンに対し,ローソン店舗内の私設郵便差出箱からの取集料を免除するという利益を与えていると主張する。 郵便差出箱は,一定の基準により,一般の利用者の差出し上利便と認められる位置に設置されるものであるが,特定の会社,工場等にとって,自己の建物内若しくは構内に出入し,勤務し,又は居住する者らの郵便物差出し上の利便を図るため,その維持に要する費用を負担して自己の希望する位置に自ら私設の郵便差出箱を設置することが認められており(甲7の2),郵便法47条おいて,郵便差出箱は,被告の承認を受けて,これを私設することができる(同条1項)と規定されたうえで,その郵便差出箱の私設に関する条件は,郵便約款でこれを定める(同条2項)とされている。 他方,郵便法75条の6第2項2号は,総務大臣が被告の業務方法書(日本郵政公社法23条1項に規定する業務方法書をいう。)の認可の る条件は,郵便約款でこれを定める(同条2項)とされている。 他方,郵便法75条の6第2項2号は,総務大臣が被告の業務方法書(日本郵政公社法23条1項に規定する業務方法書をいう。)の認可の基準の一つとして,「総務省令で定める基準に適合する郵便差出箱の設置その他の通常郵便物を随時,かつ,簡易に差し出すことを可能とするものとして総務省令で定める基準に適合する郵便物の引受けの方法が定められていること」を規定しており,郵便法施行規則(平成15年総務省令第5号)24条2項は,業務方法書の認可基準の一つとして,郵便法75条の6第2項2号の総務省令で定める郵便物の引受けの方法の基準として,日本郵政公社法の施行の際現にあまねく全国に設置されている郵便差出箱の本数を維持することを旨とし,かつ,次に掲げる基準に適合するものとして郵便差出箱を設置することとし,その基準の一つとして,「主として,郵便差出箱を公道上,公道に面した場所その他の常時利用することができる場所又は駅,小売店舗その他の公衆が容易に出入りすることができる施設内であって往来する公衆の目につきやすい場所に設置すること。」を定めている(郵便法施行規則24条2項2号)。また,これを受けて,被告の業務方法書12条1項は,郵便差出箱の設置については,「公社法の施行の際現にあまねく全国に公社が設置している郵便差出箱の本数を維持するよう努めるとともに,次の各号に掲げる基準に従って郵便差出箱を設置する」とされており,その基準の一つして「郵便差出箱を公道上,公道に面した場所その他の常時利用することができる場所又は駅,小売店舗その他の公衆が容易に出入りすることができる施設内であって往来する公衆の目につきやすい場所に設置すること」とされている(同項2号)。 そして,証拠(甲51)及び弁 所又は駅,小売店舗その他の公衆が容易に出入りすることができる施設内であって往来する公衆の目につきやすい場所に設置すること」とされている(同項2号)。 そして,証拠(甲51)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,自らローソン店舗内に郵便差出箱を設置したものと取り扱っていることが認められるところ,そのような取扱いは上記の郵便法施行規則24条2項2号及び業務方法書12条1項2号で定める基準に照らし直ちに不当であるとはいい難い。 証拠(甲51)によれば,「郵便20005・郵便のディスクロージャー冊子」には,コンビニエンスストアとの提携の欄において,平成17年6月1日「全国のミニストップ店舗(約1300店)及び全国のデイリーヤマザキ店(約1300店)内に郵便ポストを設置」及び平成17年7月4日「関東地域のam/pm店舗(約850店)内に郵便ポストを設置」した旨を記載したうえで,注意書としていずれも「同一敷地内に郵便ポストがある店舗を除きます。」と記載していることが認められるが,上記の記載は,同一敷地内に郵便差出箱があるミニストップ店舗,デイリーヤマザキ店舗及びam/pm店舗においては,郵便差出箱を設置していないことを示しているにすぎず,これらの記載があるからといってローソンに設置されている郵便差出箱が私設郵便差出箱であると評価すべきものとはいえない。 したがって,被告が株式会社ローソンに対し,ローソン店舗内にある郵便差出箱について本来徴収すべき取集料を徴収しないという不当な利益を提供しているとは認められない。 (3) 以上によれば,被告が株式会社ローソンに対し不当な利益を提供しているとは認められないから,その余の争点について判断するまでもなく,被告が一般指定9項所定の不公正な取引方法に当たる行為を行っていると 以上によれば,被告が株式会社ローソンに対し不当な利益を提供しているとは認められないから,その余の争点について判断するまでもなく,被告が一般指定9項所定の不公正な取引方法に当たる行為を行っていると認めることはできない。 第4 結論以上の次第であるから,被告の行為が独占禁止法19条に違反するとして,同法24条の規定に基づいて請求の趣旨1項ないし4項記載の差止め等を求める原告の請求はいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第8部裁判長裁判官市村陽典裁判官河合芳光裁判官山口和宏(別紙)代理人目録(原告訴訟代理人弁護士)有賀正明桑村竹則大坪麗(被告訴訟代理人弁護士)伊従寛小泉淑子山岸和彦菅尋史服部薫川越憲治寺上泰照(被告訴訟代理人)唐木徳子大西信弘斎藤貴宮崎順一郎(被告訴訟復代理人弁護士)高橋善樹
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